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Page 1 かご形三相誘導電動機設計への ニューラルネットワークの応用と

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Page 1 かご形三相誘導電動機設計への ニューラルネットワークの応用と
かご形三相誘導電動機設計への
ニューラルネットワークの応用と
過渡現象に関する研究
2005年3月
熊本大学大学院自然科学研究科
池田 雅博
目
次
本論分で使用した記号
記 1
第1章 序章
1.1 本研究の背景
1
1.2 本研究の目的
3
1.3 本論分の内容
4
第2章 誘導電動機
6
2.1 誘導電動機の原理と構成
6
2.2 誘導電動機の原理と構成種類
6
2.3 誘導電動機の理論と等価回路
11
第3章 ニューラルネットワークによる最適設計法
18
3.1 まえがき
18
3.2 ニューラルネットの概要
20
3.2.1神経系とニューロンのモデル
20
3.2.2ニューラルネットのモデル
21
3.2.3ニューラルネットの学習方式
22
3.3 ニューラルネットの学習アルゴリズム
23
3.3.1パーセプトロン
23
3.3.2バックプロパゲーション
25
3.3.3 伝達関数
33
3.3.4 最急降下法
35
3.3.5性能改善
37
第4章 ニューラルネットワークによる設計支援システムの構築
4.1 設計支援システムの概要
4.1.1設計支援システムの全体構成
4.2 設計書作成支援システムの構成
39
39
41
43
4.2.1第一層目ニューラルネットワークの構成
43
4.2.2 推定量
44
4.2.3第二層目ニューラルネットワークの構成
46
4.2.4参照テーブルを用いた補正
48
4.2.5第三層目ニューラルネットワークの構成
50
4.3 シミュレーション結果の検討と考察
52
4.3.1 ニューラルネットの学習訓練:
54
4.3.2ANN1についての考察
4.3.3ANN2についての考察
57
4.3.4 固定子内径Dの補正
62
4.3.5鉄心長しの算出
65
4.3.6推定、補正後の検討
69
4、3.7ANN3についての考察
71
60
4.4 ANN4による製作コスト推定システム
78
4.5 結論
82
第5章 過渡現象解析
84
5.1 誘導電動機の基本式
84
5.2 表皮効果
86
5.2.1深溝…係数 Kh
86
5.2.2抵抗増加係数 Kr
87
5.2.3 リアクタンス減少係数 Kx
87
5.3 飽和について
88
5.3.1固定子スロット部の漏れリアクタンス
88
5.3.2回転子スロット部の漏れリアクタンス
89
5.4 計算値と試験値の比較
90
5.5 始動と停止
91
5.5.1 シミュレーション
91
5.5.2始動
91
5.5.3停止
92
5.6 欠相
95
5.6.1 シミュレーションモデル
95
5.6.2 初期値設定
95
5.6.3一相欠相
96
5.7 地絡
98
5.7.1一相地絡
98
5.7.2二相地絡
99
5.7.3 三相地絡
100
5.7.4複合地絡
101
5.8 電源再投入
102
5.8.1検討結果
103
5.8.2 固定子電流への:影響
103
5.8.3正回転方向トルクに与える影響
104
5.8.4逆回転方向トルクに与える影響
105
5.8.5 回転数に与える影響
106
5.9 結論
107
第6章 総括
108
参考文献
111
謝辞
l13
付録
l14
本論文で使用した記号
本論文で使用した記号の意味を以下に示す。
用した
記号
:説明
a
:一次と二次の巻線比(2)
a
:出力(3)
a正
:回転子首部深さ(5)
a2
:回転子斜め肩部深さ(5)
b
bo
:固定子スロット幅(5)
:励磁サセプタンス(2)
b正
:回転子スロット首部幅(5)
b2
:回転子スロット幅(5)
Bg
:エアギャップ内の磁束密度(4)
Bra
:回転子鉄心の磁束密度(4)
Brb
:回転子歯部の磁束密度(4)
Bsa
:固定子鉄心の磁束密度(4)
Bsb
:固定子歯部の磁束密度(4)
COSφ1
D
:力率(2)
d
:固定子内径(4)
:導体深さの和(5)
D2L
:誘導電動機の体積を表わす指標(4)
di
:i番目の教師信号(3)
E
()内の数字は、その記号を使
:効率(4)
:電圧ベクトル(5)
El
Ea
:一次耐電圧(2)
:二次側電圧(2)
:固定子A相電圧(5)
ea
:回転子A相電圧(5)
Eb
:固定子B相電圧(5)
eb
:回転子B相電圧(5)
Ec
:固定子C相電圧(5)
E2
ec
:回転子C相電圧(5)
f
F
:伝達関数(3)
:伝達関数(3)
f
:周波数(4)
f
:ニューロンの入出力関数の微分値(3)
90
Gl
:励磁コンダクタンス(2)
G2
:回転起電野分係数(6)
H
:慣性定数(5)
l
I
:回転起電圧分係数(6)
:誘導電動機の電流ベクトル(5)
:誘導電動機に流れる電流(5)
一記1
10
:誘導電動機の無負荷電流(2)
Io
:誘導電動機の定格電流(5)
Il
:誘導電動機の端子電圧一次電流(2)
I1’
:誘導電動機の負荷電流(2)
12
:二次電流(2)
1a
:固定子A相電流(5)
ia
:回転子A相電流(5)
Ib
:固定子B相電流(5)
ib
:回転子B相電流(5)
Ic
:固定子C相電流(5)
ic
:回転子C相電流(5)
Iμ
=誘導電動機の励磁回路の励磁分電流(2)
1ω
:誘導電動機の励磁回路の鉄損分電流(2)
J
:評価関数(3)
JL
JM
Jr
:負荷機械の回転子慣性能率(5)
:誘導電動機の回転子慣性能率(5)
:回転子巻線の電流密度(4)
Js
K
:固定子巻線の電流密度(4)
Kh
:深溝係数(5)
Khs
:S・1.0の時の深溝係数(5)
KM
:電動機と負荷機械の軸のバネ定数(5)
Kr
Krs
:抵抗増加係数(5)
:S=1.0の時の抵抗増加係数(5)
kW
:出力(5)
Kwl
:一次側の巻線係数(2)
Kw2
:二次側の巻線係数(2)
Kx
Kxs
:リアクタンス減少係数(5)
L
:鉄心長(4)
Ll
:固定子および回転子の自己および相互インダクタンス(5)
:固定子自己インダクタンス(6)
L2
:回転子自己インダクタンス(6)
Lcr
:回転子巻線の銅損(4)
Lcs
:固定子巻線の銅損(4)
Li
:鉄損(4)
Lm
:機械損(4)
L
M
M1
:ANN4の出力値の評価係数(4)
:S=1.0の時のリアクタンス減少係数(5)
:励磁インダクタンス(6)
:固定子相互インダクタンス(6)
一記2一
m2
:相数(2)
M2
:回転子相互インダクタンス(6)
阻3
:相数(2)
n
:伝達関数のネット入力
Nl
:一次側巻線数(2)
N2
:二次側巻線数(2)
NNl
:第1層目ニューラルネット(4)
:第2層目ニューラルネット(4)
:第3層目ニューラルネット(4)
NN2
NN3
Ns
P
:同期速度(5)
:スカラー入力(3)
P
:極数(5)
Po
:機械的出力(2)
Pl
:一次入力(2)
P2
:二次入力
Pc2
:二次銅損(2)
PF
Pm
R
:力率(4)
:機械損(2)
R
:機械的出力に相当する消費電力を発生する抵抗(2)
:固定子および回転子の抵抗(5)
rl
:一次抵抗(2,5)
r2
:二次抵抗(2,5)
,
r2
:二次抵抗の一次換算値(2)
S
t
:スリップ(2,5)
TL
:負荷機械の反抗トルク(5)
TM
:誘導電動機の発生トルク(5)
Ui
:i番目のニューロンの状態(3)
Vl
:誘導電動機の端子電圧(2)
W
:スカラーの結合係数(3)
Wl
:固定子スロット部の固定子内径からマグウエッジまでの深さ(5)
W2
:固定子スロット部の固定子マグウエッジ厚み(5)
Wll
:ニューロンjからニューロン1へのシナップス結合強度(3)
Xl
X2
:一次リアクタンス(2,5)
:二次リアクタンス(2,5)
,
X2
:二次リアクタンスの一次換算値(2)
Xi
:ニューロンjからの信号(3)
Xj
:ニューロンJへの総入力(3)
Xm
:励磁リアクタンス(5)
yi
:i番目の出力層(3)
Z
Z
:誘導電動機の端子から見たインピーダンス(2)
:時間(5)
:絶縁の深さ(5)
α
:安定化定数又はモーメンタム(3)
δi
:i番目の学習信号(3)
一記3一
η
:学習定数(3)
θ1
:再投入時電源電圧の位相(5)
θi
:ニューロン1のしきい値(3)
θL
:負荷機械の回転子軸の涙れ角(5)
θM
:誘導電動機の回転子軸の涙れ角(5)
μ
:仁ヒ透磁率(5)
Φ
:総磁束(4)
φr
ω
:残留電圧の位相(5)
:回転子角速度(5)
ω0
:回転子同期角速度(5)
昭+1
岬
第n−1層の1番目のユニットのから第n層のi番目のユニットへの
結合の重み(3)
:第n層のi番目のユニットの出力値(3)
μ野
:第n層のi番目のユニットの内部状態(3)
犀
:第n層のi番目のユニットの内部状態のしきい値(3)
.n層のユニットiからn−1層のユニットへ向かって戻される学習信
δぞ
エ
ム略野一1(り
’尋rq、
.n−1層のユニットjとn層のユニットiの間の結合の重みにたいす
’る修正量(3)
△略野一1(’1)
.n−1層のユニットjとn層のユニットiの問の結合の重みにたいす
’る前回の修正量(3)
一記4一
第1章序章
1.1本研究の背景
誘導電動機の歴史は1820年のD.F.Aragoの円盤によって始まるとい
われている。これは図1.1に示すようにアルミや銅のような金属円盤と
磁石の簡単な構成で実験可能である。金属円盤を磁石の両極ではさみ、
この磁石を円盤の周辺に沿って回転させると、円盤が磁石の回転する方
向に回転をはじめる。これはレンツの法則と渦電流によるものである。
磁石回転方向
眠
銅板
、
i拙羅、欝
円板回転方向
図1.1 アラゴの回転円盤
1884年と1888年にNicola Tesla及びGalileo:Ferrarisはそれぞれ独
自に2相交流による回転磁界を発明したが、これらの特許はいずれもア
メリカのWestinghouse Elec. Co.に買収された。1890年代以降同社にお
いてB.G.:Lammeを中心として研究開発が盛んに行われ、初期の四極構
造を廃止して円筒形に変え、集中巻より分布巻に改良したのもこの時代
である。B.G.L、ammeは巻線のエンド部分を1個のリングにハンダ付け
して短絡し、かご形電動機を発明した。この時代のアメリカの交流は
125Hzまたは133Hzであり、電動機としての回転数が速すぎたためあ
まり利用されなかったが、Westinghouse Elec. Co.は1892年以降、60Hz
一1一
への周波数変更の運動を起こした。その効果が現れるにつれて誘導電動
機の需要が増加し、交流送電の発達がこれに拍車を加えた。このように、
1900年前後には三相かご形誘導電動機(以下誘導電動機と略す)の発展
が最高潮に達し、理論的解析、設計法ともに一応の完成を見た。20世紀
に入ってからは応用面の拡大や大容量化に向けて努力が集中され今日の
隆盛に至っている。
わが国においても、百年以上の歴史を通して誘導電動機は使用されて
いるが、その時々の技術を取り入れて電圧階級、絶縁方式、冷却方式、
軸受け構造、製作方法等に改善がなされて来た。そして、現在に至るま
で動力源として各種産業の発展と共に活躍の場を広げて来たと言える。
生産現場では工場の生産能力が増加すると共にポンプ・ファン・コンプ
レッサー等の機械の容量が大きくなり、それにともない当然誘導電動機
の出力も増加し続けてきた。第二次大戦の不幸な出来事があったが、戦
後復興から高度経済成長期の国内景気は多少の景気変動は有ったが全般
的に右肩上がりで活況を呈して来た。それに伴い製造業向けの動力源で
ある国内電動機メーカの生産台数も増加し続け、1985年頃∼199
5年頃には大形電動機の国内生産台数:はピークを迎えた。しかし、バブ
ル経済の破綻と共に国内製造業は生産規模の縮減方向に動きだし、国内
の設備投資は縮小し誘導電動機の需要も減少し、最近になってようやく
設備投資も増加に転じつつある。
バブル経済以降、日本の大形三相誘導電動機の市場は厳しい環境にあ
る。国内の大形の発電プラント、化学プラント、セメントプラントなど
の新設工事が激減してしまったためである。海外向けの発電プラント、
化学プラント、セメントプラントなどで使用される誘導電動機の需要は
有るが国際市場は値段・納期の面などで厳しい要求がある。更に為替レ
ートの影響を受けいわゆる円高により、国内メーカは受注面で苦戦して
おり、工場の操業度確保が難しくなって来ている。それでも電動機メー
カが日本国内で生き残るには、鉄鋼・化学等の工場の建設や発電所建設
を計画している海外市場に目を向け厳しい価格・納期競争に勝つだけの
競争力を持った機種の開発を行っている。その結果、最近では海外向け
の需要が伸びており、生産高で見ると輸出の割合は50%近くまで達し
.2一
ている。しかし、海外向けは受注競争が厳しく、短納期、低価格、高品
質の三拍子が揃わないとなかなか受注競争に勝てない。
短納期の生産を実現するためには、顧客からの発注情報で工場の設計
部門はすばやく電気・磁気設計と構造設計を完了し、資材部門に材料・
部品類の調達指示を出し、タイムリーに工場へ製作図面を流す必要があ
る。かつ少ない設計要員で効率良く最適な電気・磁気設計を行なえば、
設計費の軽減と設計リードタイムの短縮、材料費の低減など低コストの
実現に効果がある。最適な電気磁気設計書が作成できれば、生産プロセ
スでのトラブル発生も減少可能である。
1.2本研究の目的
設計のプロセスにおいては製品の設計基準を遵守しなければならな
い。この設計基準は製品に対する国際規格や国内規格を満足するための
設計ルールである。これは当然過去の失敗経験も織り込まれており、常
に最新に維持されている。この設計基準により電気磁気設計、構造設計
のための計算方法、部品材料の物性、冷却特性、誘導電動機構造等が事
細かに定められている。電気磁気設計書(設計書と以下略す)を作成する
ためにはこれらの基準類を満足させ、仕様が類似の設計書の試験結果を
参考にしながら、温度上昇、効率、力率、最大トルク、始動トルク、始
動電流、騒音等について検討することになる。従って設計のベテランと
初心者では、人数が同じであれば電気磁気設計のアウトプットである設
計書の質と量には大きな差が生じてくる。この差は結果的には製品の試
験成績と生産コストとに現れる。仕様書に特性の指定があれば、顧客の
仕様書に定められている固定子の温度上昇限度以内でかつ小型軽量に製
作して、特性値を満足することが求められる。具体的には2000kW6極
の誘導電動機で温度上昇80K:、効率96.1%保証、力率0.88以上、始動
トルク80%以上、始動電流は定格電流の600%以下、騒音無負荷時
82dB(A)以下が客先仕様書に指定してあるとき、設計のベテランと初心
者で設計内容に大きな差が出ることがある。両者の設計書で製作した結
一3一
果、誘導電動機の重量に6300kgと7300kgのように1000:kgも差が現れ、
誘導電動機の原価にも大きな差が生じることもあり得る。ベテランは経
験を生かして固定子鉄心長を短く設計し、固定子と回転子の合計重量を
軽くて、客先仕様はギリギリでクリャアするような設計を心がける。例
えば、固定子の温度上昇は77Kで、効率は96.2%、力率は0.89、始動
トルクは85%、始動電流は590%、騒音は81dB(A)のような試験結果で
ある。これを初心者が設計すると、温度上昇が50K以下であるが重量が
ベテランの設計より3割も重いとか、逆に95Kとオーバヒートし急遽作
り替えや改造が必要になるということがある。これらによりコストが受
注時の計画コストから大幅にアップし、納期が間に合わず顧客に迷惑を
かける等の不具合が発生する。
従って初心者でもベテランと同じレベルの設計書の作成が可能なシ
ステムの構築が急がれる。そこで人工知能の活用により初心者であって
も熟練した技術者と同程度の設計が可能となるシステムを開発すること
を本研究の目的とした。人工知能としては色々な方式があるが、ここで
はニューラルネットワーク(Artificial Neural Network:ANNと以下
略す)による最適設計法の採用を提案し、提案するシステムの有効性を
計算機シミュレ’一ションで明らかにする。
顧客の仕様で誘導電動機は始動・停止の他に瞬時停電、母線切り替え
等のスイッチング現象や欠相・地絡のような事故が生じる。これらの過
渡現象は、初期条件によっては大きな過渡電流や過渡トルクが電動機に
発生することがある。従って仕様書で、これらの過渡現象が生じる可能
性がある場合、過渡現象を解析し電流値やトルクを知ることは誘導電動
機の機械設計を遂行するうえで非常に重要な項目である。
1.3 本論文の内容
本論文の構成は5章からなっている。以下に二二の内容についての要
約を述べる。
第1章は序章として、本研究に関わる電動機の動向を説明し、電動機
設計の特徴及び問題点について概略を述べ、本研究の目的を示した。
.4一
第2章は本研究の対象である誘導電動機の原理と構造を述べる。次に
その設計法について述べる。
第3章はニューラルネットワークによる誘導電動機の最適設計法につ
いて述べる。ここではニューラルネットワークの概要とアルゴリズムを
述べる。
第4章は誘導電動機の電気回路・磁気回路・電気特性に関する設計書
(設計書と以下略す)作成を支援するニューラルネットワークの開発を説
明する。さらにこの設計支援システムのアウトプットを利用して電動機
原価の計画値が算出可能な原価算出支援ニューラルネットワークを開発
したので、それについても説明する。
第5章は誘導電動機の過渡現象について検討を行っている。過渡現象
の解析は通常d・q座標法で行われるが、ここでは電圧不平衡などの異常
時にも対応可能なように、三相瞬時値法を採用し各条件での初期値を明
確にして解析を行っている。これを用いて欠相・地絡事故時の解析が可
能になり、事故を想定した機械設計を最適に行えるようになった。本研
究では更に、飽和現象と深溝効果による回路定数の変化を考慮可能なシ
ミュレーションプログラムの開発を行い実測との比較も実施した。特に
始動電流のような大きな電流が流れる場合、回転子電流による回転子ス
ロット部の飽和の影響に着目して、回転子スロット部の漏れリアクタン
スを減少させることを検討した。
第6章は第2章から第4章までを総括するとともに、今後の展望につ
いて述べている。
最後に付録として、ニューラルネットワーク構築に使用したデータ及
び過渡現象解析に使用したMatlab1Simulinkのブロック図を載せてい
る。
一5一
第2章 誘導電動機(1)(2)
2.1 誘導電動機の原理
誘導電動機(induction motor)の原理は第1章の序章1。1項でも述べ
たが、金属円盤を磁石の両極ではさみ、この磁石を円盤の周辺に沿って
回転させると、円盤が磁石の回転する方向に回転をはじめる。これはレ
ンツの法則と渦電流の作用によるものである。すなわち誘導電動機は相
対的に回転しうる一次および二次の二つの導体を有し、一次から二次へ
電磁誘導作用によってエネルギーを伝達し、定常運転状態では非同期速
度で回転する交流電気機械である。
2.2誘導電動機の種類
誘導電動機を相数:でわけると、一般的に数:kW以上の出力では三相誘
導電動機が使用される。さらに数10kW以上のかご形の場合は深溝かご
形が採用される。
(1)電源の相数による分類
多相誘導辮{三相誘導電動機二相誘導電動機}
単相誘導電動機
(2)回転子構造による分類
かご形囎饒
}
巻線形
一6一
そのほか規格では外被構造により開放形と全閉形、通風方式によって
自己通風形と他力通風形、保護法式により防滴、防水、設置場所により
屋外形などいろいろ細かく分類される。大形のかご形全閉外扇形誘導電
動機の構造断面の例を図2.1に示す。図で固定子コイル(Stator Coil)と
固定子鉄心(Stator Core)を総称して固定子(Stator)と呼び、回転子バー
(Rotor Bar)、短絡環(Short・circuit Ring)および回転子鉄心(Rotor Core)
を総称して回転子(Rotor)と呼ぶ。固定子コイルに電圧を印加すると固定
子鉄心に回転磁界が発生する。この回転磁界が回転子バーと鎖交して誘
起電圧を発生し、回転子電流が流れて回転磁界との間に電磁力が発生す
と回転子がトルクを発生することになる。
固定子鉄心
固定子コイル
ニ‡=====ニ:=一
一一 一一一
=:====ニ
∠κ
騨一.一一.一
[㎜一
鼈鼈?
@
ロ
≡
一
一
ヘ
一一
@ 一
一〇口
@ _一___一≡i }一一一・一一一・
Q__ …≡ _一_ _
Q_.≡≡…一一
《
ゼ
@
Q…≡≡
@ ,’
@ ’
一
一
1
転子バーと短絡環
回転子鉄心
図2.1 全閉外扇形誘導電動機
一7一
1
(1)かご形誘導電動機
固定子構…造はかご形も巻線形も同じであり。固定子鉄心は厚さ0.5mm
のケイ素鋼板を円形または扇形にスロット共に打ち抜き、これを積層し
て作る。鋼板の積み厚が大きい場合には、適当の間隔をおいて、冷却用
の約10mm幅の通風ダクトを設ける。高圧用の電動機では開放スロット
を用い、型巻にして十分に絶縁したコイルをそのままスロット内に納め、
十分にくさびを打ち込んで固定する。図2.2に高圧電動機の固定子スロ
ットの断面の例を示す。スロット内には2個のコイルが納められ、固定
子の導体は被覆絶縁電線を重ねたコイルで構成されている。
主絶縁
コロナ絶縁
自
口
[コ
口
口
□
目
口
口
〔コ
□
図2.2 固定子のスロット断面
一8一
導体
}グウエツ
普通かご形回転子の導体は積層鉄心の円形または方形の半閉スロッ
トに、同じ形の裸銅バーをはめ込み、その両端を銅の環でできた端絡環
にロー付けし電気的に短絡したたものである。この構造は小型機で採用
されるが、アルミニウムのダイキャスト製が一般的である。これは導体・
端二三および冷却ファンを同時に一体で製作するので低コストで短期間
に多数製作できるので広く採用されている。また、斜めスロットを採用
している理由は、固定子と回転子のスロット数の組み合わせが適当でな
いとクローリング現象を生じ、始動渋滞の原因となることがあるのでこ
れを避けるためである。
(2)深溝かご形誘導電動機
この電動機の回転子は、スロットの形が半径方向に細長く、いわゆる
深溝形状になり深溝効果を利用する構造であり、導体には通常銅バーが
用いられる。
深みぞの効果は、もし導体に電流が一・様に流れると、漏れ磁束の分布
は図2.3のようになりスロット底部に近い導体部分ほど多くの磁束と鎖
交し、漏れリアクタンスが大きくなる。従って、始動時、二次周波数が
高い問は、導体中の電流は漏れリアクタンスの小さい上部に集中し、あ
たかも導体の断面が小さくなったのと同様になり、導体の実効抵抗が増
加し、スロット部のリアクタンスが減少する。この現象を表皮効果と呼
んでいる。
従って、始動時は二次抵抗が大きく、二次リアクタンスの小さい誘導
電動機として動作し、大きな始動トルクを発生する事ができる。運転時
は二次周波数が小さくなって表皮効果がなくなり、電流は導体中にほぼ
一様に分布するようになるので、二次抵抗の小さい効率の高い普通のか
ご形電動機として動作する。中大容量の出力の電動機で標準的に採用さ
れている。
一9一
一
一
一 一 一 一 一 一 一 一 一
m!’
@
Y
韓一輔葡一一一冒一一、
、、、
@
旨レ!一一
}
電流密度→
9一卿鞠、
1
奄奄奄奄窒奄堰cレli!\、 、一一__
謄’
、ii’
一 一
一一
オ一
@ 一
@
iiiii
@’\i
桑i{i
?鞠
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一
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@ll
・ノ1
A!
_…: ’
● 一
● 輌
・ 一
冒 一
■ ■
@ 、
、一__一一__一の一r_儒輌_甲’
_・一一一一一一一一一一一一一一一一一一’
@、■●一_一一_●●一一響一一一一“一r騨欄’
_一_一一__一一一一一一一一一一一ノノ漏れ磁束
図2.3 深溝形導体中の電流密度分布
(3)巻線形誘導電動機
誘導電動機の固定子に一次巻線、回転子に二次巻き線を施したものを
巻線形誘導電動機と称する。回転子スロットの断面は図2.2の固定子の
場合と類似なものとなる。回転子二次巻線として通常三相巻線を施し、
それぞれの端子は3個のスリップリングに接続され、ブラシを通じて外
部の始動抵抗器などに接続できるようになっている。
巻線形回転子の鉄心構造は固定子とほぼ同じで、半閉又は開放スロット
に固定子まき線と同じ極数の巻線を施す。一般に、回転子巻線は固定子
巻線と同様に型巻コイルが採用される場合が多い。三相の接続には普通
星形結線であるが、極数の多い大型機には三角結線も採用される。
.10一
2.3誘導電動機の理論と等価回路
2.3.1 等価変圧器回路
一次回路と二次等価回路は互いに静止の状態で、回転磁束によって磁
気的に結合された形になるので、変圧器と同様に取り扱うことができる。
従って、誘導電動機の一次と二次回路は変圧器と同様に図2.4のように
表すことができる。一次と二次の巻線比ヨは式2.1で与えられる。
El
んw、ハ㌃
E2
死w2!V2
=α
(2.1)
ここで、左町は一次側の巻線係数:、左祓は二次側の巻線係数を表す。
誘導電動機の一次側から二次側に供給される電力、すなわち二次入力
乃(W)は、その一部が二次回路の抵抗∬2による銅損君2=〃22z212(W)とな
って失われるが、残りは機械的出力Po(W)に変換される。
P,一箪,互122
(2.2)
∫
駕「亀一凄脇・一鞭・
(2.3)
∫
ただし、R一短一馬とする.
∫
∫
従って、丑による消費電力が実際は機械的出力Poを表す。図2.5は以
上の理由で、二次等価抵抗均灼を実際の抵抗r2と.Poを代表する等価抵
抗刃に分けて表示したものである。
一11一
二次側諸量の一次側への換算
1)二次電圧の一次換算 式2.1より
E、一んw・瓦E、一αE2
(2.4)
んw22V2
E、=一E、=一αE2
(2.5)
2)二次電流の一次換算
二次電流乃の一次側への換算値を乃’とすると、変圧器と異なり二次加2
相を一次加1相に等価変換するのであるから、合成起磁力が両者等しい
ことが必要である。
石一紺ち一二
包6)
故に、
11’一一ノ、’一」h互
(2.7)
”21 α
3)二次インピーダンスの一次換算
二次抵抗∬2の一次側への換算値をr2’とすると、両者の銅損が等しいこ
とが必要である。すなわち
ヒ
配、7212=〃227212
(2.8)
∴妄一難即興
㈲
同様に、二次リアクタンスx2とその換算値x2の間には、両者の無効
電力が等しいことが必要である。従って
吻1κ212=〃22×212
(2.10)
’
κ2 ”露1 2
一=一
κ2 ”92
ソ
(2.11)
一12一
2.3.2 誘導電動機の等価回路
以上までに示した換算を行えば、加2相の二次回路は加1相の一次回路
に変換されて、図2.5から図2.6のような一相あたりの等価回路が得ら
れる。
(1)簡易等価回路
誘導電動機では磁気回路にエアギャップがあるため、励磁電流あの値
は変圧器よりも大きくなる。すなわち、励磁サセプタンスわ。の値が変圧
器に比べて大きくなる。出力、極数にもよるが乃の値は全負荷電流の
113∼112程度になる。
したがって、あによる一次側のインピーダンス電圧降下を無視するこ
とは、かなりの誤差を伴うが、特性の算定が簡単になるので、図2.7の
ような簡易等価回路が普通よく用いられる。
11
r1
X1
r2/S
X2
辱
ド
●
●
E↓
V1
↓画
図2,4 すべりSで運転中の誘導電動機の回路
11 「1
X1
r2
ド
V1
X2
●
E↓
R=(1−s/s)r2
図2.5 機械的出力を代表する等価負荷回路
一13一
rl
I1
Xl
ド㎝
r,2
1’1
X,
Q
↑「戒、鞘一ノ齢「
R’=(1−s/s)r’2
V1
E’
P
90
bo
図2.6 等価回路
11
1,1「1
XI
r,2
Q
鞘一ノ㎜rl
↑[ま、
V1
X,
R’=(1−s/s)r,2
90
bo
図2.7 簡易等価回路
(2)等価回路による特性の算定
図2.7の等価回路から、電動機の近似的な特性計算式が次のように得
られる。
(a)一次電流と力率
一次潮流・猶与(A)
一14一
伽2)
一z=
励磁電流:
゙+画ω
1。一Kg。2+砺2(A)
(2.13)
(2.14)
一・
’
弓+72/5
80+Z2
COSψ1=
力率:
←+劉←+割
一15一
(2.16)
2.2.3 電力の流れ
誘導電動機のパワーの流れは図2.8のようになる。
⇒
一次入力
二次入力
機械的出力
ー ↓↓
軸出カ
⇒
動力
機械損
二次銅損
一次銅損
鉄損
図2.8誘導電動機のパワーの流れ
一一一一 氈{割㈱
鉄損遭一刑、Klw一醒、K29。(W)
一次銅損・尾噸∴曜参(w)
(2.17)
(2.18)
(2.19)
二次入力:鳥=・君■君一」醜1
ノ
一峠∴鵬吟套(w)
一16一
(220)
ド
’
二次銅損・な幅一曜参鴫(W)
(2.21)
’2
機械的出力:1も=・ら一」醜2=”21・R字1
一砺ピ1蕩一(・一∫)尾(W)
(2.22)
実際の軸出力:P富1も一鳥 (W)
(2.23)
効率:η=P/P1
(2.34)
普通、効率の計算では機械三島を無視して近似的に、η雷島/p1で求
めることも多い。
以上、等価回路、簡易等価回路を用いて、誘導電動機の特性を示した
が、このように近似的に求める理論式で、誘導電動機の設計の複雑さが
確認できる。
後の章で触れるが、この誘導電動機の設計は実際には上記の理論式を
用いて設計書を作成する。本研究ではこの設計業務の支援のためニュー
ラルネットを使用したシステムの開発が目的である。
一17一
第3章 ニューラルネットワークによる最適設計法(3)∼(9)
3.1 まえがき
最近の科学技術の発展は驚異的であり、産業の各分野において
種々の革命的な変化をもたらしてきた。しかしながら、誘導電動
機の設計書を設計技術者のようにロボットが作成するような時
代はまだ到来していない。しかし、知能を持ったシステムの構築
という目標から見た場合、革新的なアプローチが期待される時代
になってきている。
誘導電動機の設計は、熟練した設計技術者の長年培われた経験
を基にして、スロット数固定子コイルの巻線数、起磁力などのさ
まざまなパラメータを理論に基づく計算式で求め、設計書が定め
られた設計基準を満たすように設計される。その基準は、各項目
について許容値下での運用が要求されるが、大形誘導電動機の場
合は顧客の製作仕様がそれぞれ個別に異なり、設計書作成プロセ
スをオーダ毎に繰り返すことになる。このための設計マンパワー
は莫大なものである。従って設計書作成プロセスでは、現状より
飛躍的に効率のよい設計支援システムの登場が期待されている。
近年、優れた知能を持つシステムの構築を目指すため、研究者
や技術者の問で、生物の神経系における特徴的な機能に着目して、
そのモデル化を行ったニューラルネットワーク(Neural
Network)とその関連分野が注目されている。この研究の歴史は
まだほんの数十年と浅いにもかかわらず、これほどまで一般に広
まったのは、Neural Networkが従来のコンピュータや人間にと
っては困難であったパターン認識を可能にしたからである。最近
のNeural Networkにおける展開は驚異的なものがあり、理論体
系がかなり整備されるとともに、数多くの応用例が報告されてい
る。しかも、その応用事例が、エアコンや洗濯機などの家電製品
から製鉄所の現場といった工学関係の幅広い領域に及ぶととも
に、医学の分野にまで応用されている。また、アプリケーション
一18。
分野において、パターン認識、同定、分類、音声、映像、制御シ
ステムなどの問題をNeural Networkを用いて解くように訓練:す
ることが可能であることが分かっている。
本研究では、この誘導電動機の設計において、この人間の脳の
メカニズムにヒントを得たニューラルネットを用い、設計者の手
助けとなる設計支援知能化システムの構築を目指している。これ
により、設計過程での莫大な労力および時間が費やされること、
設計技術者の個性が出てしまうことによる設計のずれ等を抑制
し、設計時間短縮、労力低減化による安価で高品質な誘導電動機
の製作の支援を目指した。また、余分な材料を抑えることによる
コスト低減、省画ネ設計などの効果も考えられる。ニューラルネ
ットの入力としては、誘導電動機の基本仕様を用い、本体サイズ、
総磁束などを推定した後、次のニューラルネット層へ移行する多
段構造の形をとっている。本論分では、誘導電動機基本仕様より、
ニューラルネットを用いた本提案システムを介して、誘導電動機
詳細設計を得るための設計支援システムの構築と検討を行った。
↓
ニュうレネットワークを用い騰ステム
ぐ
↓
醐
↓区
↓凪
團
團
一19一
3.2 ニューラルネットの概要
3.2.1神経系とニューロンのモデル
ニューラルネットワークとは生物の脳神経系すなわちニュー
ロンを模擬した単純な情報処理素子を多数個集めて複雑に結合
させ、その結合状態を変化させることにより情報処理を行うもの
であり、現在、数多くの情報処理に応用されている。生物の神経
系は多数の、ニューロン(neuron)が複雑に結合され、それぞれが
並列処理を行っている。各ニューロンの大まかな構造は、入力端
子である樹状突起、出力端子である軸索、ならびに本体の細胞体
から成り立っている。各ニューロンの樹状突起は、シナプス
(synapse)を通してほかのいくつかのニューロンからの入力信号
を受け取る。ニューロン間の信号伝達は、電気パルスによって行
われ、ニューロンの状態が変化する。このニューロンの状態の変
化は、シナプス結合の種類に依存する。(シナプス結合としては、
興奮性、抑制性、ならびに前抑制と呼ばれる三種類が知られてい
る。)興奮性シナプスの場合には、入力信号が加えられることに
よって細胞体内の電位が上昇し、あるしきい値をこえるとニュー
ロンはパルスを発生し、軸索を通じてそのパルスが伝わりほかの
ニューロンに刺激を及ぼす。
1943年に、McCulloch・Pittsは、こうした生物門内のニューロ
ンの動作原理に基づいて式(3.1)で示される非常に興味深いニュ
ーロンのモデルを提案した。
ろ圃
ここで、κ,はニューロンノからの信号を、%はニューロンノからニ
ューロンノへのシナプス結合強度を、θはニューロンノのしきい
’
値を、さらに1[κ]は、x≧0のとき1、 x〈0のとき0となる単位ス
テップ関数をあらわしている。(1は興奮状態、0は静止状態を示
一20一
す)・式(3・1)は・ニューロンノから伝わった信号κ,(6)が重み付けら
れて加算され、ニューロン∫に達し、それがあるしきい値を超え
るとニューロンゴが興奮することを意味している。
3.2.2 ニューラルネットのモデル
人工ニューロンをいくつか結合することによってニューラル
ネットのモデルができている。図3.1のように、入力ユニットか
ら出力ユニットまですべて順方向のみに結合されており、フィー
ドバック結合などの相互結合の形態を持たないようなニューラ
ルネットモデルを階層構造ニューラルネットモデル
(multi・layered neural network model)と呼ぶ。
一方、ユニット間の結合が必ずしも順方向のみとは限らないよ
うなモデルとして、相互結合ニューラルネットモデル(fully
connected neural network model)がある。
鎌
縣
飛欝ぢ
蕪
爆’
図3.1 階層構造ニューラルネットモデルと
相互結合ニューラルネットモデル
一21一
3.2.3 ニューラルネットの学習方式
ニューラルネットは、知能を有するシステムを構築するための
最も有力な道具の一つとして多くの人々に認められつつある。ニ
ューラルネットは、システムの知能化に役立つ。これは、ニュー
ラルネットが学習によって知能を獲得することができるからで
ある。
ニューラルネットの学習方式としては、図3.2,図3.3に示さ
れているように入力データに対して理想的と考えられる出力値
(教師信号)が与えられている場合とそうでない場合がある。前
者の学習形態を教師あり学習(supervised learning)と呼び、後
者の学習形態を教師なし学習(unsupervised learning)と呼ぶ。
教師あり学習の場合は、ニューラルネットからの出力と理想的な
出力(教師信号)を比較することによってその差をできるだけ小
さくするように結合強度の値を変更する。一方、教師なし学習の
場合は、理想的な出力は外部から与えられないので自分自身の評
価基準を内蔵しておくことが必要となる。教師あり学習の代表的
なものとしては逆誤差伝播則(BP法=Back Propagation法)が
あり、教師なし学習の代表的なものとしてはコホーネンの学習ア
ルゴリズムなどがある。
1噛一一一一一一一一一■■■一一卿喩噸鱒一一一一一一一一■
コ
1
1
ロ
結合強度変更指令
1
1
■
1
巳
1
・
P
「一一一暉暉一一一一−・一一一■■■■一口鴨鴨一一葡一一一一冒
璽
■
・
■
コ
…
i
i
…
内部評価
の
ロ
入力i
;
i
■
ロ
ロ
出力
1
B
き
■
■
■
■
I
l(教師信号)
比較1
ロ
コ
@1ネ。,
I
1
i理想的な出力
入力iニューラル
ニューラル
ネット
i
巳
■
結合強度変更指令
撃
■
■
1
■
1
l
i
i出力
l
陶輔鞠_____________o鴨噌__一_______,
図3.2 教師なし学習
図3.3 教師あり学習
一22一
3.3 ニューラルネットの学習アルゴリズム
序論でも少々触れたが、ニューラルネットは、今や、システム
の知能化を考える際になくてはならない技術となっている。とこ
ろでニューラルネットの学習アルゴリズムはこれまでいくつか
提案されてきたが、現在最もよく活用されているものは1986年に
Rumelhartらによって提案された逆誤差伝播法(Back
Propagation法)である。本節ではこの手法をできるだけ詳しく
述べる。Back Propagation法を生み出す母体となったのが1950
年代後半から1960年にかけて一世を風靡したRumelhartのパー
セプトロン(perceptron)である。まず、 Back Propagation捧に
ついて触れる前にパーセプトロンについて簡単に述べる。
3.3.1パーセプトロン(perceptron)
パーセプトロンの基本形は、図3.4に示すような3層の階層構造
をした単純パーセプトロンであり、次のような動作をする。まず
分類対象のパターンが入力されると、Sユニットが反応する。そ
してAユニットはSユニットからの入力を受けて反応し、信号を
出す。そして、最後にRユニットはAユニットからの信号を受け
て反応し、入力パターンの識別に対応する信号を出力する。単純
パーセプトロンは、当時としてはきわめて斬新なアイディアであ
り、ニューラルネットの研究の発展に大きな貢献を果たしてきた。
しかし、現在のニューラルネットの研究から振り返って眺めたと
き、いろいろな不都合な制約が存在する。それらの中で、もっと
も重大な制約は、AユニットとRユニットの間の結合強度は可変
であるが、SユニットとAユニットの間の結合強度は一定である
ということである。
パーセプトロンの発表後、しばらくして重大な問題点がいくつ
か指摘された。中でも、次の指摘はパーセプトロンおいて重大事
項である。“入力パターンに対するAユニットの出力が線形分離可
一23一
能の条件を満たす場合には有限界の計算で正しい認識を行うこ
とができるが、線形分離不可能の場合には必ずしも正しい認識を
行うようになるとは限らない”。
3
3
3
3
3
3
Rユニット
Sユニット
Aユニット
図3.4 パーセプトロン
単純パーセプトロンの限界を示すものとしてよく引用される
のが図3.5に示す排他的論理和(EX・OR)の学習である。図におい
て、白丸は入力が(0,0)または(1,1)のときは出力が0となること
を示しており、黒丸は入力が(1,0)または(0,1)のときは出力が1
となることを示している。この問題は先ほどの線形分離可能の条
件に当てはまらない例であるが、このような非常にやさしい問題
に対しても単純パーセプトロンは学習できないことが明らかに
なり、非常に多くの研究者から注目を浴びたにもかかわらず、や
がてほとんど顧みられなくなったのである。
y
X
図3.5 簡単なEX・OR問題
一24一
3.3.2バックプロパゲーション(Back Propagation)法
ニューラルネットワークはそれを構成するニューロンモデル
の結合状態から様々な種類に分類される。その中で1985年、米国
カリフォルニア大学サンディエゴ校のデッビト・ラメルハート教
授を中心とした認知科学者グループが、1960年頃に米国の心理学
者ローゼンブラットがパターン認識装置として提案したパーセ
プトロンを改良し、より実用的なBack Propagation則(誤差逆伝
播則)を考案し、発表した。
階層型のニューラルネットワークには、明確に区別された入力
層、出力層の2つの層がある。元来この2つの層だけでもある程
度の処理はできる。これらの層の間に図3.6の隠れ層と呼ばれる
1層以上の中間層を入れたものが、現在話題を集めているニュー
ラルネットワークの典型である。
○
O
○
う
1
i
I
O
O
入力層
○
→
O
○
i
1
一〉
0
0
○
○
隠れ層
i
I
O
O
出力層
図3.6 ニューラルネットワークの層構造
そしてこの階層型のニューラルネットワークは、入力層に与え
られた信号(パターン)が結合の重みによって変換されながら出
力層のユニットの値として出力される前向きの信号伝播を行う。
しかしこれだけでは、ただ入力パターンからある決まった出力
パターンが出るだけなので、特に有益というわけではない。問題
一25一
は入力パターンに対して望ましい出力が出るようにネットワー
クを調整することである。この調整方法の代表的なものがBack
Propagation(誤差逆伝播法)というものである。判断が入力層か
ら出力層への信号伝播だとしたら、Back Propagationによる学習
は、図3.7で出力層での誤差を入力層へ向かって伝播させること
で達成される。
巡○グ\)
○
第N層(出力層)
/
第N−1層
隠れ層
○
/
○
○
\
○
第2層
第1層(入力層)
図3.7 逆伝播
つまり何をどの方向へ伝播させるかにより、判断なのかが決ま
るわけである。
N階層からなるネットワークを考える。第1層目を入力層、第N
層を出力層と名付け、それらの間の第N・2層を中間層としておく。
一26一
i−1
■
i
i十1
『■一一…一一’■
第n層
款ツ
■
○聞 一一 一一一〇
j−1
j
第n−1層
j+1
図3.8 第n層への信号伝搬
層間の結合は、層番号nから次の層n+1へ結合しているだけで、
飛び越した結合はないものとする。またそれら層間の結合は、そ
れぞれの層ですべてのユニットが互いに結合している完全結合
型とする。
第n層のi番目ユニットの出力値を照とする。また第N−1層のj
番目のユニットから第n層のi番目のユニットへの結合の重みを
呪γ『1とする。
入力層から出力層への信号伝播を、第n層のi番目のユニットに
着目して考えてみる。ユニットを模式的に表現すると図3.9とな
る。
一27一
埼1
_wl:1−1
Σ
ノ⊃
1
f
Xl
しhl
図3.9 ユニットの模擬i的表現
第n層のi番目のユニットの出力値λ7は次のようにして求める。
・画一Σ鳴η一1・Xター1
(3.2)
超”=ノ(ザー1の
(3.3)
ここで搾は第n層のi番目のユニットの内部状態であり房はその
しきい値である。またfは伝達関数といい、これらの式がよく使
われる。
1
ノ(■)=
1+exp(α一.κ)
(3.4)
ノ(κ)=tanh(α+κ)
(3。5)
この関数はそのグラフを描いてみると図3.10のようにS字型
をしているために、シグモイド(Sigmoid;S字型)関数とも呼
一28一
ばれている。aは適当な実数、通常0とする。
照の計算は、まず式(3.2)により前の層n−1のユニットjからの
出力値とそれがたどるであろう結合路固有の重みの積を、層n・1
のすべてのユニットに対して合計する。
1長x)
f(x)
暉
.
.
ロ
・
・
圏
ロ
■
■
■
●
■
■
●
隔
●
■
1
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
}
一
一
皿
一
05
0
0
X
一2
一1
L5
X
2
1
一1
冒
層
ロ
.
・
.
・
・
.
・
・
.
鱒
・
・
●
●
●
■
図3.10 シグモイド関数
その値配fが注目のユニットの内部状態となる。これからしきい
値1ずを引いた値を、伝達関数に作用させて出力値λ7を得る。
しきい値房は式(3.2)で考慮すると、
万7一Σ曜脅4−1・xクー1一ゼ
(3.6)
罵η=ア(一η乙4’)
(3.7)
となる。
さらに式(3.6) から一揮は、一二×10と考えれば常に1.0を出力す
るユニットが結合の重み一犀で結合しているとみなせる。
信号はこのように伝播されるが、入力層からの出力値だけは、
入力層に与えた値がそのまま出力される。つまり入力層のみは、
伝達関数、しきい値共に関係しないことになる。
学習段階ではある入力パターンに対して、ネットワークを動か
一29一
して得られる出力パターンをまず計算する。その出力パターンと
望ましい出力パターンとの誤差を計算し、それを学習信号として
入力層のほうへ伝播させながら結合の重みを改善していく。望ま
しい出力パターンのことを教師信号という。教師信号が存在する
学習法を教師付き学習と呼んでいる。
学習信号の与え方は、出力層のユニットが戻す学習信号と、そ
れより前段の層のユニットが戻す学習信号とでは異なる。
出力層のユニットiから戻される学習信号は、出力層からの出力
値と教師信号を使って、
δ野=@一ガ)ノ’(巧N)
(3.8)
となる。(図3.11)
01一>Xl一>d1
○
δ1
巡
○
,、
0・一〉刈一…>d・
1
ノ
/」孟・
○
/
○
N−1層
,
’ ノ
\
○・今xl一≡>d・(教師信号)
、
1
0、
N層(出力層)
図3.11 出力層からの出力値と教師信号
次にN−1層よりも前の層が戻す学習信号を決める。
n層のユニットiからn・1層のユニットへ向かって戻される学習
一30一
信号δ∬は次の式で求める。
δ7一ノ’(4)Σんδ髪+1・畷才劫
(3.9)
つまりn層のユニットiからn+1層へ結合している道を逆に伝わ
って、そのユニットに集まってくるn+1層からの学習信号は、結
合が固有に持っている重みをかけられて合計される。それと伝達
関数の微分との積がとられて、学習信号として扱われる。
以上のようにして学習信号が計算されると、次に結合の重みの
修正値を決めねばならない。それには次の式が使われる。
△略η一1(り一ηδ鰐一1+α△鴫η一1(’一1)
(3.10)
○
Ol
○
〆
δn
δ1−1
○
k
δ1−1
’
\
〆
2
ノ
,
O
O
n層
n−1層
○・
n刊層
図3.12 n層ユニットの学習信号
△鴨か1(’)はn・1層のユニットjとn層のユニットiの間の結合の重
一31一
みに対する修正量を示し、△略ル1(∫一1)は前回の修正量を示す。つ
まりここでは、収束計算を繰り返しているから、今回をtで表す
と、前回はt−1となる。ηは学習定数で収束の速さに関係するが、
大きな値を与えたからといって、学習が速く完了するとは限らな
い。αは安定化定数で、前回の重みの修正量を使い、収束時の振
動を抑える効果がある。その意味で式(3.10)の第2項は慣性項と呼
ばれる。η、αは共に1.0以下の正の実数の範囲で適当な値を与え
る。修正量が求まると、次式により結合の重みを修正する。
曜一1(’+1)一三4−1(り+△曜脅μ一1(り
(3.11)
しきい値の修正については、前述したように各ユニットに対し
て、常に1.0を出力するユニットからしきい値に相当する結合の
重みをもって信号が来ていると考える。したがってそれに対する
学習信号は式(3.9)、(3.10)で求められたものを使い、修正量は式
で三一1ぎ1と見なして次の式を得る。
岬(り=ηδ7+α岬(’一1)
(3.12)
したがって修正のための式は、
侮〃(’+1)=1ず(り+的タ(り
(3.13)
となる。
以上の手順を繰り返すと、出力層からの出力値と教師信号との
誤差が小さくなる。つまり、出力層の出力値と教師信号との誤差
の自乗和の極小値を与える最急降下法の手順を示している。
一32一
多層ネットワークは、このようなBack Propagationによって、
線形または非線形の計算を行う事が出来、また、合理的な任意の
関数に近似することも出来る。
ただし、ネットワークを多層構造にすると中間層のニューロン
数にも影響される。ニューロン数が少な過ぎるとアンダーフィッ
テングになる可能性もあり、多過ぎるといオーバーフィッテング
を招く可能性があるので、その点には注意する必要がある。
バックプロパゲーション訓練では、グローバルな誤差の最小値
ではなくローカルな誤差の最小値を見つける。見つけられたロー
カルな誤差の最小値で満足できる場合もあるが、そうでない場合
はネットワークのニューロンを増やすとよい結果が得られる場
合がある。しかし、ニューロンや層をいくつ追加すればよいかは
明らかではなく、さまざまな初期条件を使って問題を実行し、同
じ解が得られるかどうかを調べるなども一つの方法である。
この中間層の数の選定や層数は、現在でも最適数というのは明
確には判明していない。
3.3.3伝達関数
単入力のニューロンは、図3.13のように示される。スカラー
入力pには、その強さにスカラーの結合係数wが掛けられ、積
w㌔となる。ここで、重み付けされた入力w㌔は、スカラー出
力aを作成する伝達関数Fの唯一の因数となる。このとき伝達関
数のネット入力nが、伝達関数Fの因数となり出力aを作成す
る。このとき、伝達関数Fには線形伝達関数(Liner Transfer
function)、および対数シグモイド伝達関数(:Log・Sigmoid
Transfer Function)を用いる。
・線形伝達関数(:Liner Transfer Function)
線形伝達関数は、図3.14(a)に示すように与えられた値を単純
に出力する。
・対数シグモイド伝達関数(:Log・Sigmoid Transfer Function)
一33一
対数シグモイド伝達関数は、図3.14(b)に示すようにニューロ
ン入力を区間(・oO,+∞)から(0,1)に写像する。対数シグモイドは微
分可能な関数で、バックプロパゲーションを使って訓練されるニ
ューロンに適している。
Pユ了回r
図3.13入出力計算
F(κ)
F(κ)
1
1
Fα)=x
F(x)=
1+exp(一x)
0
κ
0
(A)線形伝達関数
(B)対数シグモイド伝達関数
図3.14伝達関数:
一34一
3.3.4最下降下法
Back Propagation法において、あるニューロンJへの総入力
は、ニューロンJとシナプス結合したニューロン。7fの出力とシ
ナプスウェイト職によって式(3.14)のように定義できる。
κ、一Σy・w・・
(3・・4)
ε
また、式(3.14)で計算されたニューロンJへの入力に対し、そ
の出力は
y」イrκノ,
(3・15)
と定義する。
式(3.14)、式(3.15)に基づいて入力層へ与えられた入力信号は、
Neural Networkの結合係i数にしたがって、入力層→中間層→出
力層へと順次計算を行う。このあと、出力層の計算結果が、教師
信号と比較され、結果が正しければ各シナプスの結合係数は修正
を行わず、誤りであれば結合係数の修正を行う。
Neural Networkが誤った判断を行った場合の結合係数の修正
方法を以下に示す。まず、出力層の計算結果と教師信号のズレの
度合いを定義する。第p番目の入力パターンに対するf番目の出
力層を.乃、教師信号をめとすると、ズレの度合いは誤差万とし
て、またすべての入力パターンに対する誤差(評価関数)」とし
て式(3.16),(3.17)のように定義できる。
E一去Σ@づ㌔)2
(3・・6)
星
」一ΣE
(3・17)
P
Back Propagationの学習とは、この♂を極小化するように、
ネットワークの結合係数を変化させることである。「結合係数の
変化=学習」であり、その過程で入力信号を認識するための「知識」
は、Neural Network上の結合係数へと変換される。しかし、結
果としての、各結合係数はそれ一つずつではほとんど何の意味も
一35一
持たず、学習結果は、すべて全体の結合係数に分散して配置され
る。
式(3.16)の誤差Eを極小化するように、各結合係数を修正する。
出力層から中間層への修正は、学習信号をδとすると、式(3.18)
のようになる。
δ、一(4、一y、)ノ,ω
(3.18)
ここで
召∫:式(3・14)で示したi番目のニューロンの状態
!’:式(3・15)で示したニューロンの入出力関数の微分値
また、各中間層間の学習信号は、式(3.19)を再帰的に各層に対
して解くことにより求めることができる。
4一ノ’ωΣ幅
(3・19)
そして、式(3.18)と式(3.19)で求められた学習信号δに基づいて、
式(3.20)により結合係数を求める。
w(κ・1)一w(た)・ηδ,y,
η:学習定数
(3.20)
δiyi:勾配ベクトル
最急降下法の考え方
STEP1まず結合係数wをランダムに与える。
STEP2 Neural Networkにxを入力することによって出力y
が求まる。この出力と教師信号d1を用いて評価関数J1が求まる。
ここで式(3.20)より次のw1が求まる。そしてさらに、入力xを
入力し出力yが求まり、そしてJ2が求まる。
STEP3ここで、 J1をJ2と比較し、 J2>J1であるなら修正量
を小さくするため学習比lrを小さくし、 J2<J1であるなら逆に
学習比lrを大きくする。そして、 J2>J1のときはw1をwに戻
し、J2<J1のときはw1をそのまま使う。
STEP4評価関数Jの最小値が見つかるまでSTEP2とSTEP3
を繰り返す。
一36一
3.3.5 性能改善
本論文で提案するNeural Networkではモーメンタム、適応学
習比と呼ばれる手法を使って、Back Propagationの速度および
信頼性を向上させている。単純なバックプロパゲーションは安定
した学習を行うために学習比を小さくしなければならないので、
非常に時間を要する。そこで、バックプロパゲーションの速度と
一般的な性能を向上させるいくつかの方法がある。
(1)適応学習比
学習の安定性を維持し、学習のステップサイズをできるだけ大
きく保とうとする適応学習比を使用することによって、(学習比
は局所的な誤差表面の複雑さに影響を受けるがたいていの場合
において)学習時間を短縮することが可能となる。
(2)モーメンタム
Back Propagationが誤差表面の細部から受ける影響を小さく
し、誤差表面内における極小値にNetworkが入り込むことを防
ぐ手段の一つとしてモーメンタムを用いる方法がある。この、モ
ーメンタム(慣性項)を導入することによって、学習速度を大き
くし誤差表面内の小さな変化を無視することができる。モーメン
タムは、より小さな誤差を持つ解の発見を妨げる浅い極小値にネ
ットワークが入り込むのを防ぐのに役立つ。つまり、式で示すη
とαの組み合わせを調整することにより、最急降下法の問題点で
ある極小値に入り込むことをある程度回避することができる。
△w(ん+1)=αw(ん)+(1一α)ηδρ㌃
(3.21)
α:モーメンタム
バックプロパゲーションでは、関数近似、パターン認識、ある
いはパターン分類を行うために、微分可能な伝達関数を使って多
層のフィードフォワードネットワークを訓練することができる。
一37一
バックプロパゲーションのアーキテクチャは、解かれる問題に
よって完全に制約されるわけではない。ネットワークへの入力数
は問題によって制約され、出力層のニューロン数はその問題に必
要な出力数によって制約される。ただし、ネットワークの入力と
出力層の間の層の数やサイズは設計者にまかされる形になる。
オリジナルのバックプロパゲーションでは、ネットワーク誤差
を最小化するために誤差表面上で勾配降下を実行する。極小値つ
まり、ローカルミニマムが採用される場合もでてくる。中間層ニ
ューロンを増やせば、ネットワークの自由度が上がり(つまり、
最適化のための変数がより多くなる)極小値でさえ誤差を十分小
さくする可能性が増すことになる。しかし、学習速度は遅くなる。
バックプロパゲーションにモーメンタムを適用することによ
って、ネットワークが誤差表面内の浅い極小値(ローカルミニマ
ム)に入り込む確率を下げ、訓練時間も短縮できる。さらには適
応学習比も取り入れれば、安定性を保証しながらしかも合理的な
高い学習比を維持しながらさらに訓練時間を短縮可能である。
バックプロパゲーションは、おそらく実用的なアプリケーショ
ンの80%から90%を占めるといわれている。改良法を適用するこ
とにより、バックプロパゲーションの信頼性を高め、小規模な問
題で少なくとも10倍から20倍、大規模な問題ならば、それ以上速
度を高めることができると言われている。
一38一
第4章ニューラルネットによる設計支援システムの構築(10)∼(12)
4.1 設計支援システムの概要
本章では、提案する設計支援システムの構築のために使用した
Neural・Network構成の概要と、Matlab環境下で作成したプログ
ラムの構成を述べる。図4.1に本研究で考えたニューラルネット
を用いた設計書作成支援システムによる設計手順を示す。図に示
すように、誘導電動機の基本仕様をニューラルネットワークに入
力することによって、誘導電動機の設計を支援するシステムの開
発を目指している。理想的には基本仕様を入力として、一段のニ
ューラルネットで詳細設計が算出できれば、より構造も簡単で便
利なのであるが、試行錯誤の結果、最終的に本研究の設計支援シ
ステムは、3段の多段構造をとる形となった。設計手順としては、
図に示すように、誘導電動機基本仕様を入力とし、第一段目ニュ
ーラルネット(ANN1)、第二段目ニューラルネット(ANN2)、第三
段目ニューラルネット(ANN3)の3段構造の設計支援システムを
介して誘導電動機の詳細設計を得ようとするものである。
次に、設計書作成支援システムで設計が完了した誘導電動機の
製作コストをニューラルネット(ANN4)で推定するシステムを設
けた。図4.2にその概要を示す。
Matlabは高性能な数値計算機能と、多彩な可視化機能を備え
た技術計算ソフトウェアで、従来のようにプログラミングしなく
とも、問題とその解をちょうど数学的に書くように表示できる、
使いやすい環境になっている。基本データ要素は行列で、配列宣
言する必要がなく、Fortran、 Basic、 Cといった言語でプログラ
ムを記述するのに必要な時間と比べ、Matlabは非常に少ない時
間で多くの問題を解くことが可能となる。
一39一
入力:基本仕様
設計支援システム
ANN1
@体積、総磁束、磁束密度、電流密度、効率、力率、損失など特性値の推定
↓
ANN2
U導電動機のサイズ推定
↓
ANN3
ェ線数の 定
出力:誘導電動機の詳細設計
図4.1 設計支援システムによる設計手順
入力 設計書のデータ
旦
ANN4
サ作コストの推定
↓
出力:製作コスト
図4.2 製作コスト推定システムの手順
一40一
4.1.1設計システムの全体構成
図4.3に本研究で考案した誘導電動機設計支援システムの全体
構成を示す。図4.3は、図4.1の設計書支援システムによる設計
手順と図4.2の製作コスト推定システムをリンクしている。誘導
電動機基本仕様として、定格出力、定格電圧、定格周波数、極数
を用い、ANN1を介して、総磁束、磁束密度、電流密度、力率、
効率ほかのパラメータを推定算出する。次に、その中の磁束、体
積の推定結果をANN2の入力情報とし、ANN2を介して誘導電動
機設計の土台ともなるサイズを推定・確定する。これにより、誘
導電動機のパラメータの決定へと移行することができる。体積、
総磁束は、ANN 1で推定算出されたパラメータの中で、最も誘導
電動機サイズの指標となる、固定子内径刀および鉄心長五はサ
イズに影響があるので入力として選定する。固定子内径刀を推定
後、参照テーブルの規格により補正を施し、固定子内径刀を実際
の設計値に沿うよう処理する。また、鉄心長五を固定子内径刀
に依存する形で算出し、参照テーブルは用いて基準上の値へと補
正処理を施す。その後、ANN2により、誘導電動機サイズの確定
した後は、電動機スロット内コイルの巻線数の推定をANN3によ
り行う。そして電動機サイズを決定した後の各パラメータの推定
ができるかどうかの確認を行っている。ANN3による巻線数の確
定ができると、電動機サイズによりスロット数などが基準により
選定でき、これらを用いて各種の電気・磁気定数ならびに電気特
性が算出できることになる。
最終的に以上までの流れにより、すべての誘導電動機詳細設計
を算出した後は、ANN 1で推定した効率、力率などの推定値と算
出値を比較検討し、誤差が無視できない場合は、サイズを決定す
るANN 2に修正のフィードバックをかけ、再設計ということと
なる。誤差が小ざく、ほぼ正確に詳細設計ができていれば、それ
により本研究の電動機設計支援への有効性が確認できたことと
なる。その後、ANN4でコストを推定して終了する。
一41一
Seci五cation
Rα’θ41ヤルγ8r、P
qα∫εのb伽9ε7
qα’ε4Fγeg㍑8ηρy∫
n励πわε7σPbZθ∫
Bias Signa1
4MV:1
がしφTBgB∫σ……L。.ウ埼
㎝2
Spe面ca髄on of
@
Estimated
Frame
@
values
Bias Signal
Next
@Selecεion
盾?Frame
@
Accepted
Errors
@
Cost
End
En of
mo
Design
cesign Process
Calculated
Slot Sizing
@ IDeternlination of
鼎
地
3
@va藍ues
mumber of ConductOI・s
Ca畳cu畳ation of
lachine Constan吐s
E・・畳・・ti…fφT Bg 8、σ・・一L・・々物
図4.3設計支援システムの全体構成
一42一
Estimation
4.2 設計書作成支援システムの構成
本研究では、多層構造のニューラルネットを用いたシステム構
成であり、各ニューラルネットにより構成の違いがある。本節で
は各ニューラルネット(ANN1、 ANN2、 ANN3、 ANN4)の役割、
構造、構成、目標量などを詳細に説明する。
4.2.1 第一層目ニューラルネットワークの構成(ANN1)
図4.4にニューラルネットワークの構成図を示す。 本論文で
は、入力層、中間層、出力層の三層構造で構成される階層構造フ
ィードフォワードニューラルネットを使用している。
中間層を構成するすべてのニューロンの入出力特性は、図4.5(B)
に示すシグモイド関数で表される。これにより、ニューラルネッ
トワーク全体の特性は、非線形特性となる。また、出力層は自由
な出力を持たせるために、制限を受けない線形ニューロン(線形
伝達関数(図4.5(A))を持つニューロン)を使用している。入力層
の入力情報は、誘導電動機設計の基本仕様となる出力、電圧、周
波数、極数からなる基本仕様4入力である。学習には、逆誤差伝
播法(Back Propagation法)を用いている。ここでの、中間層
のノード数は、学習回数、教師信号との誤差を検討した結果、10
としている。また、第二層目ニューラルネット(ANN2)は学習セ
ットの数などの影響により、誤差収束に用途ごとに違いが見られ
たため、用途ごとに中間層のノード数を若干変更している。詳細
は付録1.1を参照のこと。
一43一
出力
電圧
例えば
一
総磁束
周波数
極数 一一→’
バイアス信号
バイアス信号
図4.4ニューラルネットワークの構成
F(κ)
F(詫)
1
1
F(κ)=κ
F(κ)=
1+exp(一x)
0
κ
0
(B)対数シグモイド伝達関数
(A)線形伝達関数
図4.5 伝達関数:
4.2.2 推定量
誘導電動機の基本仕様を入力情報とし、ニューラルネットワー
クにより推定する目標量(教師信号)として、次に挙げる諸量を
選択し、その推定のためのニューラルネットワークを構築した。
ANN1では、まず基本仕様と相関のあるパラメータを確認すると
ともに、最終的に詳細設計パラメータをすべて算出したあとに、
一44。
κ
誤差の評価をするために、この15のパラメータを推定している。
1.
導電動機の体積を表わす指標(D2:L)
2.
磁束(Φ)
3.
エァギャップ内の磁束密度(Bg)
4.
固定子側コアバックの磁束密度(B、a)
5.
固定子側ティース部の磁束密度(B,b)
6.
回転子側コアバックの磁束密度(B,a)
7.
回転子側ティース部の磁束密度(B,b)
8.
固定子巻線の電流密度(J、)
9.
回転子巻線の電流密度(J,)
10.鉄損(:Li)
11.機械損(:Lm)
12.固定子巻線の銅損(Lcs)
13.回転子巻線の銅損(L,,)
14.力率(PF)
15.効率(E)
ここで、誘導電動機の体積(D2:L)は厳密に言うと体積を示す
ものではないが、名称の簡略化の理由およびD2:Lをスカラー倍
したものが体積であるため、体積と今回においては、表現しても
差し支えないと判断し、便宜上このように定義している。
図4.6に誘導電動機の外観図、図4.7にスロットの外観図を示
す。図4.6におけるD,:Lはそれぞれ電動機の固定子(stator)内
径および鉄心長を表している。
また、推定量3∼7までの磁束密度は図4.6に示す位置の磁束
密度を算出したものを指す。
一45一
stator
瓢篶
・・艶
α’B
54
わ’・B5わ
、,感熱.孟繍
1)
黒?Q
a1「gap
わ’
βrb
驚,
←一一
slot
rotor
k一一一→
図4.6 誘導電動機の外観図
slot
α’B
r4
図4.7スロットの外観図
4.2.3 第二層目ニューラルネットワークの構成(ANN2)
第一層目ニューラルネット(ANN1)では、電動機基本仕様か
ら総磁束、その他のパラメータを推定算出した。第二層目では、
これらの第一層ニューラルネットから算出されたパラメータを
用いて、推定を行い誘導電動機のサイズを推定している。
第二層目(ANN2)のニューラルネットワークの構成を図4.8に
示す。全体構成で示したが、第二層目ニューラルネット(ANN2)
は、第一層目ニューラルネット(ANN1)により推定された総磁束
φおよび体積刀2五より、誘導電動機設計の際の土台、核とも言
える外形サイズの推定・決定を行う。また、同じく前節で一度触
れたが、用途ごとの学習セット数の違いにより時間短縮などを考
慮して中間層は10の一定のノード数でなく、若干の変更をして
いる。誘導電動機の固定子内径刀および鉄心長五を決定するこ
とにより、後の詳細設計を進行することが可能になる。使用する
伝達関数は、ANN1と同様、対数シグモイド伝達関数である。ま
た、中間層にシグモイド伝達関数、出力層には自由な出力を持た
一46一
せるための線形伝達関数を使用するなどの点はANN1と同様で
ある。
目標量としては、サイズ決定において、重要な要因である誘導
電動機の固定子内径Dを設定している。この固定子内径Dを推
定後、後に説明する補正を施し、サイズを確定し、この固定子内
径DとANN1により求めた体積D2:Lを用いて、もう一つのサイ
ズ決定の重要な要因である鉄心長五を算出する。流れとしては、
全体構成図に示す流れで進行するものである。
総磁束Φ
D2L
固定子内径D
バイ’アス信号 →
バイアス信号
図4.8 ニューラルネットワークの構成(ANN2)
ここで、第一層目ニューラルネット(ANN1)と同様、推定を行
うが、本研究で使用している誘導電動機の、固定子内径Dおよび
鉄心長五の仕様は、ある程度の枠番内での制限を受けるため(決
められた基準内での枠番で設計されるため)、推定後に小数点以
下の端数の切り捨てを兼ねて、ある基準による参照テーブルを用
いて、補正処理を施している。
一47一
4.2.4参照テーブルを用いた補正
図4.9に補正の一例を示す。固定子内径Dの推定値は必ず少数
を含む実数である。工場では鉄心抜き工具を用いてプレスで打ち
抜くが、工具製作費用の面から基準上の参照テーブル値に集約し
ている。実際の設計このテーブルを参照しておこなわれている。
したがって、この補正処理を施すことにより、本システムで算出
した推定値はより実際の設計値に近くなる。
ここで0の推定値の補正例について説明する。D=696.4の場合
の補正は、まず、最も近い710に補正をかける。また、もう一例
の固定子内径D=621。8のような場合は、最も近い615に補正を
かける。このような補正をかけて後の詳細設計を進めたときに、
サイズ確定後に決まるほかのパラメータに深刻なズレなどが生
じた際は、サイズ決定のパートまで戻る。今度は先ほどの補正で
次点であった参照テーブルの値に補正をやり直して進める。ニュ
ーラルネットによる推定値は必ずといっていいほど、若干の誤差
を含んでいる。人間の手によるこの補正処理を施すことにより、
電動機設計のサイズはニューラルネットを介して、電動機基本仕
様から決定できることになる。
710
藁霧
一 一 一 一 一 一
一
一
一
一
一
実際の推定値
一
@
690
@
670
D=696.4
汐う
@ 630一 一 一 一 一 一 一
∼嶋£・
@
615
@
600
@
560
@
530
実際の推定値
D=621.8
図4.9 サイズ決定のための補正の一例
一48。
図4.10に示す流れのように、ニューラルネットワークを介し
て固定子内径刀を推定する。その推定した固定子内径0を、参
照テーブルを用いて補正を行い、補正した固定子内径刀と体積刀
2、乙から計算により鉄心長五を算出し、さらに鉄心長五は小数点
以下の端数を切り捨てて、規定内の刻み幅で固定子内径刀と同様
な補正をかける。これにより、誘導電動機のサイズ、つまり固定
子内径刀鉄心長五が決定される。
この補正処理を施すことにより、ANN1から推定値の誤差を無
くし、さらにすべてシステム任せにせず、人間の途中での確認作
業を入れるという観点からもシステムとして必要かつ有用な処
理であると考える。
以上の工程を経て、サイズを決定した後に巻線数、巻線方式の
決定、スロット数の決定、機械定数などその他の電動機詳細パラ
メータの決定へと移行することになる。
体積
総磁束
ANN2
固定子内径D
Dの決定
D2L
参照テーブル
(補正)
D補正、しの計算
確定した
D,L
\1
図4.10 補正によるサイズ決定の流れ
一49一
スロット
サイズ
4.2.5 第三層目ニューラルネットワークの構成(ANN3)
本節では、ANN2での固定子内径D、鉄心長しの決定による電
動機サイズ確定後、巻線数の決定を検討している。
図4.11にニューラルネットワークの構成を示す。入力は、
ANN2により決定した誘導電動機サイズである固定子内径、0、鉄
心長五に加えて、巻線数に非常に関係の深いと思われる周波数云
電圧玖体積比2五を組み合わせて最も誤差収束がよく、効率的
な範囲内といえる時間で訓練を可能な入力を検討した。また、
ANN2と同様に中間層の数も若干用途ごとに変更をしている。全
体構成では、巻線数の推定でのニューラルネットワークをANN
3としている。また、中間層にANN1、 ANN2と同様、対数シグ
モイド伝達関数を使用し、出力層には線形伝達関数を使用してい
る。
ANN3の目標量は、誘導電動機のスロット内に収められるこ
とになる巻線数である。
固定子内径D
鉄心長L
巻線数
周波数 ___レ
電圧
一一→
体積
バイアス信号
バイアス信号
図4.11 ニューラルネットワークの構成(ANN3)
一50一
また、実際の誘導電動機は用途に応じて結線方式が△結線、Y
結線と分かれる。本研究で用いている誘導電動機のデータも双方
の結線方式が混在している。そこで、推定する巻線数はY結線で
換算した値で統一している。
ここまでで各ニューラルネットの構成についての説明である。
この後、巻線数を推定し詳細設計により各部の磁束密度、損失、
効率、力率、電気特性などが確定でき最終的にすべての詳細設計
が終了することになる。詳細設計特性値がANN1で推定した値と
比較して、誤差が大きいなどで問題が生じた際は、サイズ推定な
らびに確定部であるANN2へ戻ることでフィードバックをかけ、
再びサイズ推定・確定を行い、詳細設計特性値を算出しなおすこ
とになる。ANN1で推定した値と比較して問題がない場合は設計
完了となる。
一51一
4.3シミュレーション結果の検討および考察
ニューラルネットワークによる設計支援システムの結果およ
び検討・考察を中心に説明する.学習セットには実際の設計エン
ジニアが設計した34のデータセットもとにすべてのニューラル
ネットの学習訓練を行った。同じく目標量となる理想的な値の、
教師信号も実際に設計されたデータセットを用いている。この教
師信号に沿ってニューラルネットワークを訓練することにより、
ハ的な入力に対して最適な解が得られる。学習セットは誘導電
動機の用途別に、コンプレッサ、ファン、ポンプの三つに分け、
それぞれについてニューラルネットを構築している。
一一
表4.1 誘導電動機の基本仕様
(a)コンプレッサー用
No.
極数
出力(kW)
電圧(kV)
周波数
iHz)
1
2
1678
6.6
50
2
2
2470
6
50
3
4
600
6
50
4
4
1450
6.6
60
5
4
6.6
60
6
4
6
50
7
4
6.6
60
8
4
6.6
60
9
10
2450
2650
5100
5700
330
6.6
60
一52一
(b)ファン用
No.
極数
出力(kW)
電圧(kV)
周波数(Hz)
1
4
6
50
2
4
6
50
3
6
4.16
60
4
6
6
50
5
6
6.6
60
6
6
6.6
50
7
8
6.6
60
8
8
6.6
60
9
8
6.6
50
10
8
6.6
60
11
8
6
50
12
8
6.6
50
13
8
6.6
50
14
10
6.6
50
15
10
6.6
60
16
10
1470
5500
890
2000
2750
2450
1100
1200
1560
1620
2610
3230
4000
330
1800
3100
6.6
50
(c)ポンプ用
No.
極数
出力(kW)
電圧(kV)
周波数(Hz)
1
2
940
6.6
60
2
2
1400
4.16
60
3
6
800
6.6
60
4
8
500
6.6
60
5
8
6.3
50
6
8
520
680
6.6
50
7
8
6
50
8
10
6.6
50
9
10
6.6
60
1400
850
1460
一53一
4.3.1 ニューラルネットの学習訓練
前述の学習セットを用いてNeural・Networkの学習を行った状
況を図4.12に示す。下中、右には学習の中間部あたりの拡大図
を表す。
また、中間層のノード数については、教師信号との誤差である
二乗和誤差、及び、学習回数について検討している。つまり、中
間層のノード数を増やすと二乗和誤差はより小さくなるが、その
最小値にたどり着くまでに計算時間がかかってしまう。一方、ノ
ード数が少ないと学習回数は減るが、最小値ではなく極少値にネ
ットワークが入り込んでしまう恐れがある。本研究では、この両
問題の影響が最も小さいノード数を選定している。
罰固■山眠∫躍1傷ρ9ρ恥勘
103
伽蜘寛10房卿馳
毒1。・
壽1♂
1、,
喜
毒
毒且♂
0
且
2
3
㌔轟6739.1註0
4 45 劇
∴
i5 6,
翼!0
謹:::
1・・
1㎝
0.6
0
0 1
2
3
E且。
4論6789P
‘ 生’ 論 ’5 ㌦
図4.12 学習状況の一例
表4.2 Neural・Networkの訓練パラメータ設定
最大
訓練回数
二乗和
誤差ゴ
学習
学習比
学習比
モーメン
最大
比
増加率
減少率
タム
誤差比
エη0η1θ内診α
θrr_1。ヨ
加
6∫o
0.90
1.04
一ル
」m3X_θ、ρ0
θπ_8081
1r
11ゴ刀〇一
1r 6θ〇一
oゐ
50,000
0.0001
0.Ol
1.05
一54一
0.7
制御システムに用いられているNeural・Networkの学習には、適
応学習比及びモーメンタムを用いて学習効率の改善をはかって
いる。適応学習比及びモーメンタムの説明を表4.2に示す
Neural・Networkの訓練パラメータを交えながら以下に説明する。
適応学習比は、学習の安定性を維持し、学習のステップサイズ
をできるだけ大きく保とうとするものであり、これにより学習時
間の短縮化が可能となる。まず、最初に初期のネットワーク出力
と誤差が計算される。次に、エポック毎に、現在の学習比を使っ
て新しい重みとバイアスが計算され、これにより新しい出力と誤
差が計算される。このとき、新しい誤差が古い誤差より予め定義
されている比率(θrr_■∂6/o)より大きくなった場合、新しい重み、
バイアス、出力、誤差は更新されず、その学習比は(1rゴθo倍)
引き下げられる。これ以外の場合、新しい重み、バイアス等はそ
のまま更新される。また、新しい誤差が古い誤差より小さくなっ
た場合、その学習比は(1zfηo倍)引き上げられる。このような
変化の様子が、図4.12の下段の図に見られる。
この適応学習比を用いる方法では、誤差が大幅に増加すること
なくネットワークが学習できる範囲内で、学習比が引き上げられ、
最適な学習比に近い値が局所的な部分に対して得られる。また、
より大きな学習比で安定した学習が行なわれる場合、学習比は引
き上げられるが、学習比が大きすぎて誤差の減少を保証できない
場合には、安定した学習が再開されるまで、学習比が引き下げら
れる。
モーメンタムは、バックプロバゲーションが誤差表面から受け
る影響を小さくし、誤差表面内における極小値にネットワークが
入り込むのを防ぐために用いられる。このモーメンタムを導入す
ることによって学習速度を大きくし誤差表面内の小さな変化牽
無視することが出来る。
モーメンタムは、重みの変化を、現在の重みの変化とバックプ
ロパゲーションルールによって計算される新しい重みの変化の
和に等しくなるようにして、バックプロパゲーション学習に加え
一55一
られる。現在の重みの変化が与える影響の大きさは、モーメンタ
ム定数α(η10刀2θ刀6α五口)によって調整される。モーメンタム定数
が0の場合、重みの変化は勾配だけに基づき、定数が1の場合、
新しい重みの変化は、最後に現在の重みの変化と等しい値に設定
され勾配は完全に無視される。以上のことを数式で表したものが、
第3章の式(3.21)である。
式(3.21)を用いることで、重み変化行列とバイアス変化行列を
作成し、これらを用いることで重みとバイアスの更新が可能とな
る。しかし、新しい重みとバイアスが誤差を大きくし過ぎる場合、
これらの重みとバイアスは採用されないようになっている(最大
誤差比θ■7・■・3が。)。このため、モーメンタムがネットワークのパ
ラメータを誤差表面の深い谷間から外に押し出してしまうのを
防ぐ。
結果として、適応学習比及びモーメンタムを有効的に用いるこ
とで、ネットワークが極小値に入り込むのを防ぎ、純粋なバック
プロパゲーションよりも短い時間で最小値を探索することがで
きる。
さらに、本研究でのNeural・Networkの学習においては、最小
値を探索する際に誤差である二乗和誤差(θπ_go81)が予め設定
しておいた値より小さくなるか、もしくは、設定しておいた学習
回数(加∂x_θpoo乃)にいたるか、これらの条件にかかることで学
習を終了している。
一56一
4.3.2 ANN1についての考察
学習後、付録の表A.1∼表A.10に示す結合係数:及びバイアス
係数を用いてNeural−Networkのシミュレーションを行い、その
結果を図4.13∼図4.18に示す。これらの図から分かるように、
総磁束Φについて教師信号との誤差もさほど無く、適応学習比及
びモーメンタムを用いたBack Propagationにより期待する
Neural−Networkが構築できたといえる。同様に、図4.16∼図
4.18の体積D2しについても若干の誤差は見られるものの、期待
するNeural・Networkが構築できたといえる。
誘導電動機の設計において、その体積D2:しおよび総磁束密度
Φは固定子及び回転子のサイズに非常に深く関係があり、この総
磁束Φ、体積D2しの算定が誘導電動機の設計の第一段階となる。
各回は実際の設計での値(教師信号)、推定値および絶対誤差を示
している。結果より、電動機の体積はポンプ、ファン、コンプレ
ッサの各用途において、ほぼ正確に推定されていることがわかる。
また、この誘導電動機体積の推定結果に基づいて、鉄心:しと固定
子内径Dが推定されることになる。これにより、第二層目(ANN2)
の段階へと進行可能となる。
磁束密度の推定結果を付録図A.1∼図A.5に示す。磁束密度の
各測定位置の関係は図4.7に示すとおりである。固定子側スロッ
トの磁束密度(Bsa)、固定子側スロットの磁束密度(Bsb)、回
転子側スロットの磁束密度か(Bra)、回転子側スロットの磁束密
度(Brb)エアギップ内の磁束密度(Bg)、以上の5つの測定点
での磁束密度について設計データをもとに推定を行っている。用
途別に見ても若干の誤差が見られるものの推定はほぼ出来てい
ることが確認できる。ただし、ファン用についてはポンプ用・コ
ンプレッサー用に比べて全体的に誤差が目立つ。この理由として
は、一つには負荷のGD2によって電動機の体格は変化し磁束密
度もバラツキが多いためである。電流密度、効率、力率、損失に
ついても検討したが誤差は此んど無視できるレ’ベルであった。
一57一
32000
翻
鑑
国教師信号
碧 禽漁憂
撮’ 聡懲櫛 避
一
ヨ
@F
焔
/
ド
ハ戸
f
.
。NN1での推定値
仔
/
七
臨
、
こ
・翻
7
尋病
/
/
”
ノ鰹
匙
、
^
.畷唱計
∵燃 ヒゴ、い肘
》
1器
藷、 備
? 躍懸
刀D
’、
W昏 毒装
\
き
ぐ
丁
九漁網毘∫賢
w}
告竭ホ誤差
【
・鰹・
ド
盗
多灘
2霊
琉
昏
㌣舞干隈丁目
鴫泌
h
漉鯛
、獺
要翻
器
∼
獣琉
7
^
μ
≦
琉お
ノ
多
き
@
?
髪
1
鄭
中
、
2
3
4
5
7
6
9
8
データナンバー
図4.13総磁束推定結果
用途コンプレッサ
国教師信号
鑑
鑑
濃
■NN1による推定値
ロ絶対誤差
も鑑
交・㎝
雲1蝋’
器
畿
霊
ユ
ヨ
さ
る
フ
り
ゆ
13
ユユ
14
15
16
データナンバー
図4.14総磁束推定結果
用途ファン
20000
團教師信号
18000
圏NNIでの推定値
16000
ロ絶対誤差
14000
や 12000
妥、。。。。
雲8㎜
㎜
欄
2000
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
データナンバー
図4.15総磁束推定結果
一58一
用途ポンプ
800
團教師信号
700
■NN1による推定値
ロ絶対誤差
600
500
も
巽400
n目
300
200
100
0
データナンバー
図4.16体積推定結果 用途コンプレッサ
120D
国教師信号
:嵩
■NN1による推定値
ロ絶対誤差
=
穿
∼〈伽
8500
400
鋤
珈
100
0
カ
エ
ヨ
る
さ
る
フ
り
ロつ
る
さ
る
データナンバー
図4.17体積推定結果 用途ファン
700
600
饗}野讐搾響聾ぐ響遡野=:ぞ饗 難ド、欝
〃;懐蕎澱鷲1さ 馨鍵無題諏;1
500
」 、
三一撫毒難謙鑓’魂呼騨響ジ 灘
‘も400
i選=鮮轡・淺義
交
n日300
;∼1響
馬叢1ゾ㌔
200
、4
・’
臥
・㌔1
ii、.’
ト
ル ヨぼ ド
ホとヘ
が
や
ガ
ユ ミ
リ リヒヤ
㌦、怨難
ヰモ
撫鍼
’
㌦蝿
寮 ヲ
・毒
100
季
0
磐
詠
2
1
データナンバー
図4.18体積推定結果 用途ポンプ
一59一
国教師信号
圏NN1による推定値
ロ絶対誤差
4.3.3 ANN2についての考察
全体構成で示したが、第二層目ニューラルネット(ANN2)は、
第一層ニューラルネットワーク(ANN1)により推定された総磁束
Φおよび体積D2Lより、誘導電動機設計の際の土台、核とも言
える固定子内径サイズの推定を行った。この誘導電動機の総磁束
Φおよび体積D2しの推定結果に基づいて、固定子内径Dと鉄心
長しが指定されることになる。
まず、ニューラルネットの訓練パラメータ設定を表4.3に示す。
誘導電動機サイズ決定の核となる固定子内径Dの推定は、詳細設
計における土台となる重要なパラメータとなるものである。
ANN1のパラメータ設定より二乗和誤差ゴールをより引き下げ、
多少時間は長くなるが、精度を高める設計とした。試行錯誤の結
果、その他のパラメータはあまり時間短縮などにつながらかった
ため、変更はない。
また、中間層ノード数については、教師信号との誤差である二
乗和誤差、および学習回数について検討した。本節では、最も誤
差および所要時間の小さいノード数:を選定して、用途別に若干の
変更を行った。
表4.3Neural−Networkの訓練パラメータ設定
最大
P練回数
二乗和
学習比
?キ
学習比
学習比
モーメンタ
揄チ率
ク少率
@ ム
最大
?キ比
Sール
血ax_epoch
err_goal
1r
100,000
0.00005
0.01
1r inc 一
1.05
lr dec 一
0.7
momentum
0.90
err ratio 一
1.04
図4.19に固定子内径Dの推定結果を示す。入力情報は、ANN1
で推定した総磁束Φおよび体積D2:しの2入力であり、ANN1の
場合と同様、ネットワークを訓練して理想的な出力を得るもので
ある。コンプレッサー、ファン、ポンプにおいてほぼ正確に推定
されていることがわかる。
一60一
コンプレッサー用
1000
憲il
囲教師信号
■推定値
ロ絶対課差
鰯
1窯
123456789
データナンバー
国教師信号
■推定値
ロ絶対誤差
も く㌧
7一タナンハ一
ポンプ用
900
800
§700
翻
醐P
團教師信号
■推定値
ロ絶対誤差
隼…
10
1
2
3
4
5
6
7
8
9
データナンバ’一
図4.19 固定子内径D推定結果
一61一
4.3.4固定子内径Dの補正
固定子内径Dを総磁束Φ、体積D2:Lより推定したあと、補正
をかけることになる。誘導電動機のサイズである固定子内径D、
鉄心長:Lは実際の設計において、この二つの取りうる組み合わせ
ば、ある基準上の枠三内に制限・制約を受けている。そのため、
これらを検討し最適な組み合わせを指定することで、最終的な固
定子サイズ、回転子サイズが決定可能である。
組み合わせが適切であれば、設計後の誘導電動機パラメータは
適切なものとなると予想される。固定子内径Dについて、実際の
電動機設計の参照手テーブルによる補正を行い、適切な固定子内
径Dの値を選択する。そして、その固定子内径Dの値と体積D2:し
から鉄心長:しの値を計算、選定という流れで進行ができる。
参照テーブルについては、データの機密の問題からここには特
に提示はしないが、あるトビで固定子内径の大きさが極数などの
条件とともに参照できる表である。(例えば、8極の極数を持つ
50Hzの誘導電動機の取り得る固定子内径Dは580,630,740,
800,980といった具合に記されており、その中から条件に合わせ
て参照し、もっとも近い参照テーブルの値に、固定子内径Dを補
正する。)
この参照テーブルによる補正で、小数点以下の端数をカットし、
実際の設計基準に沿う固定子内径を算出できる。また、この参照
テーブルによる補正は、すべてをネットワークに任せるのではな
く、途中で人間による確認を行うという意味合いも持っている。
ただし、実際に本システムを実用する際は、自動的に参照テーブ
ルに補正をかけるプログラムを用いることは考えられる。
表4.4∼表4.6に固定子内径Dの補正の表を示す。表4.4のコ
ンプレッサー用においては、推定結果を補正することにより、教
師信号である実際の設計値と完全に一致するのが確認できた。
次に、ファン用の表4.5であるが、推定した値を補正すること
で、ほぼ教師信号と一致を見た。ただし、斜線で区別している2
一62一
ケースについて教師信号と補正後の値にずれが生じている。しか
しながら、この理由としては教師信号である実際の設計値が、参
照テーブルにない固定子内径Dの値を使用しているためのズレ
であり、推定→補正は正確に出来ているものと思われる。(実際
には、参照テーブルでの補正値は1000である。ところ教師信号
では975となっている。参照テーブルを確認するとこの型番の極
数、周波数では975という固定子内径は見当たらない。) 明確
な理由は、設計者本人しかわからないが、恐らく誘導電動機の設
置場所の据付寸法制限などで、固定子内径を参照テーブル上の基
準から特別に変更して設計したものではないかと思われる。よっ
て、これはANN2の推定精度が悪く、訓練がうまく行っていない
と言うことではない。
次に、ポンプ用の表4.6であるが、こちらもほとんどが参照テ
ーブルによる補正をかけることによって、教師信号との一致を見
ることが出来た。斜線部分で示す1ケースのみ、ファン用の場合
と同様に規格外の枠番で固定子内径を設計しているため教師信
号との不:一致が存在した。(補正後の値690であるが、教師信号
670である。) 本研究で目指すシステムは、ニューラルネットの
一般化の特性を利用したシステムであり、特異な例については対
応できないと考えられる。この規格外の枠番による設計ケースに
ついては、補正を行った後も教師信号との不一致が見られたのは、
逆に言うとニューラルネットが特異な例以外の一般的なケース
に対して、しっかりと訓練されているので理想的な出力を出して
いるということでもあると考えられる。
一63一
表4.4 固定子内径Dの補正(コンプレッサー用)
推定値
参照テーブルによる補正値
教師信号
459.8833
460
460
515.0441
515
515
474.6285
475
475
530.1255
530
530
613.7542
615
615
615.6482
615
615
778.6771
775
775
869.1697
875
875
559.8036
560
560
表4.5 固定子内径Dの補正(ファン用)
推定値
参照テーブルによる補正値
教師信号
527.1328
530
530
874.1365
875
875
510,302
515
515
672.5299
670
670
744.8283
750
750
965.8283
950
950
617.3524
615
615
682.6867
690
690
776.3079
775
775
774,969
775
775
669.6462
675
675
983,336
1000
1000
976,504
1000
975
626.8676
630
630
893.9025
900
900
975.4566
1000
975
一64一
表4.6 固定子内径Dの補正(ポンプ用)
推定値
参照テーブルによる補正値
教師信号
409.9138
410
410
409.8401
410
410
513.5421
515
515
529,181
530
530
535.3568
530
530
610.8087
615
615
669.9072
690
670
710,066
710
710
799.8662
800
800
4.3.5 鉄心長しの算出
前項で補正後、確定した固定子内径Dと体積D2:Lより、鉄心
長hを算出した。また、算出後に鉄心長も小数点以下の端数を除
くための補正をかけている。
まず、コンプレッサ用の結果である表4.7であるが、表に示す
結果からも分かるとおり、教師信号と完全な一致を見せている。
これにより、総磁束Φ、体積D2しから固定子内径Dと鉄心長:L
を参照テーブルによって、確定することができたことになる。ま
た鉄心長しの算出結果に、参照テーブルとの大きな誤差がなかっ
たということは、体積D2しも非常に精度良く推定できているこ
とが言える。
次に、表4.8にファン用の結果を示す。ファン用については前
項で確認できているように、参照テーブルの基準外の固定子内径
Dを設定して、実際の設計を進められた教師信号を用いているの
で、当然のごとく、固定子内径Dと体積D2Lより算出される鉄
心長:しも、同じケースナンバーでズレが発生するはずである。推
一65一
定結果からも、ケース13および16で固定子内径Dが基準外の
値に教師信号とズレがあった。鉄心長Lへもその影響が出て、教
師信号とのズレが見受けられた。固定子内径Dでは教師信号が推
定後の補正値に比べて小さかったので、鉄心:しでは今度は逆に、
教師信号は算出された値より大きくなっている。このような推定
結果が出たのは、体積D2Lはほぼ正確に推定できていたための
結果と思われる。
ところで、ケース7,ケース8にも計算および補正後の鉄心長
しに不一致が見られる。これは、先ほどのケース13およびケー
ス16の場合と違い、体積D2しの推定結果の誤差が影響している
ための不一致である。体積D2:Lはほぼ正確に推定できているの
であるが、やはり若干の誤差が生じているため、固定子内径Dは
補正処理を施して完全に一致したことを考えると、この若干の
D2:しの誤差により鉄心長:しに不具合が生じていると考えられる。
このケースについては、再度サイズ決定の段階に戻り、補正をか
けなおして再評価を行う。
次に、ポンプ用の結果であるが、表4.9にその結果を示す。ポ
ンプ用についてもコンプレッサ用と同様に、参照テーブルにない
基準外の値を何らかの理由により使用してあることが原因で、そ
の影響が当然鉄心長:L算出にも出ている。ケース7においてその
現象が確認できる。その他のケースについてはまったく教師信号
と一致している。
以上、鉄心長しの補正結果を示したが、固定子内径Dに基準外
の枠番を使用してあるのを除けば、ほぼ正確にこれまでの推定が
できている。また鉄心長しについては補正後と教師信号との一致
が見られた。一致が見られなかったケースについては、再度のサ
イズ確定を行うのであるが、教師信号とのズレもまったくかけ離
れた値ではなく、ごく近辺でのズレであるため、より推定精度を
上げれば一致するのではないかと考えられる。
これまでにより、ほとんどのケースにおいて、誘導電動機基本
仕様から誘導電動機のサイズ(固定子内径、鉄心長)が決定できた
一66一
ことになる。誘導電動機を設計する際、初心者や素人で個人差が
出るのは電動機サイズである。例えば、出力500kWで、周波数
50H:z、極数4の誘導電動機の概略サイズ(大きさ)は、この情報だ
けではすぐには分かりにくく、設計を進めていくに従って徐々に
わかるものである。本研究での支援においても、この点を最初に
重要な点として、システム構築を考えている。
表4.7 コンプレッサー用の鉄心長L
計算による
補正後のL
(教師信号)
@ L
748.465028
750
912.762749
900
750
900
467.340499
450
450
579.036668
600
600
856.83839
850
850
888.178994
900
900
1103.05548
1100
1100
896.943412
900
900
553.664541
550
550
表4.8 ファン用の鉄心長:L
計算による
補正後の:L
(教師信号)
@ h
681.737273
700
700
1094.66122
1100
1100
732.585541
750
750
881.265315
900
900
一67一
735.288889
750
750
791.578947
800
900
850
800
1000
1100
950
1000
650
800
1000
800
884.3921
832.178114
784.183143
996.295525
1080.27435
952
999.2
634.920635
791.851852
999.9
850
900
800
1000
1100
950
1200
650
800
1200
表4.9ポンプ用の鉄心長L
計算による
補正後のL (教師信号)
@ L
625.273052
748.237954
631.821284
558.329655
745.450338
602.948509
954.423702
850.079151
1000.55
600
750
650
550
750
600
600
950
850
1000
600
750
650
550
750
一68一
900
850
1000
4.3.6 推定、補正後の検討
前述までの通り、ニューラルネットを用いて、誘導電動機の設
計支援となるシステムを構築する際に、核となる固定子内径Dと
体積D2:しの推定および補正を行った結果を示した。しかし、表
4.8において基準外の固定子内径Dを用いたためという理由でな
く、本システムの推定精度の問題で鉄心長しの補正でズレが生じ
たパターンが2箇所存在した。そのためその検討をここで行って
いる。表4.10、表4.11に再設計の比較である最終評価を示す。
比較しているのは、ニューラルネットの推定精度の問題で補正後
に鉄心長にずれが生じた2ケースについてである。第一層目
(ANN1)で推定した効率、力率、固定子、回転子問のギャップ磁
束密度を比較している。このパラメータを評価の指標として選択
したのは、ANN1の推定パラメータの中でも特に精度がよいもの
を選んだためである。
まず、表4.10であるが、教師信号は実設計1で鉄心長は850
であるが、本システムにそって推定を行い、補正まで完了した時
点での鉄心長は900であった。そのため、巻線のターン数など、
他の値は全く変更せずに鉄心長だけを900に変更したときの効
率、力率、ギャップ内の磁束密度Bgを再設計したのが提案シス
テムによる設計書1である。ANN1で推定した結果と比較してみ
ると、効率、力率、Bgにおいて致命的な大きな誤差は見られな
かった。若干、Bgにおいてバラツキが見られるが特に問題にす
るほどではない。
また、同様に表4.11についても教師信号は実設計書2で、鉄
心長を900から850に変更して再設計したのが提案システムに
よる設計値2である。こちらの場合についても、効率・力率・B
gにおいて致命的な大きな誤差は見られなかった。
これにより、現時点で効率・力率。Bgを指標として評価を行
った段階で、本システムによる推定は有効的に電動機設計支援に
適用できると考えられる。最終的にすべての誘導電動機詳細設計
一69一
を数値で算出した後に誤差の評価を行い、問題が発生した場合は、
固定子内径D、鉄心長しのサイズ決定の段階に修正をかけること
になる。
表4.10 最終評価(1)
設計書
鉄心長
固定子
効率
icm)
? 径
i%)
力率
Bg
iWblcm2)
icm)
実設計書1
850
615
95.8
0,842
7.82
提案システムによる設計
900
615
95.9
0,852
7.41
一
一
96.1
0,834
7.56
力率
Bg
l1
ANN1での推定
表4.11 最終評価(2)
設計書
鉄心長
固定子
効率
icm)
? 径
i%)
iWb/cm2)
icm)
実設計書2
900
690
96.3
0,831
7.02
提案システムによる設計
850
690
96.3
0,820
7.41
一
一
96.1
0,839
7.32
l2
ANN1での推定
一70一
4.3.7 ANN3についての考察
前節までで、電動機基本仕様よりサイズを確定する段階までが
完了した。本節では、巻線数の推定を行っている。
誘導電動機サイズを確定することにより、その他の詳細設計を
進めることが可能になる。前節までの進行により、サイズ確定が
出来たので、全体構成に示すように巻線数を推定するネットワー
クを訓練した。表4.12にニューラルネットワークの訓練パラメ
ータ設定を示す。
表4.12 Neural・Networkの訓練パラメータ設定を示す。
最大訓練
二乗和誤
@回数
@差
学習比
学習比
学習比
揄チ率
ク少
モーメン
@タム
最大
?キ比
Sール
max_epoch
err_goal
lr
100,000
0.00005
0.01
lr inc一
1.05
lr_dec
mo皿entum
0.7
0.90
err ratio 一
1.04
以上に示すパラメータにより、巻線数推定のネットワークを構築
した。全体構成では、巻線数を推定するネットワークをANN3
としている。巻線数は誘導電動機のスロット内に巻く際の巻線の
まき回数を表している。従って、誘導電動機のサイズが決定しな
いと巻線数を確定することは困難である。
図4.20にコンプレッサーの場合を示す。固定子内径D、鉄心
長:L、周波数f、体積D2Lを入力し、ほぼ正確に巻線数が推定で
きているのが確認できた。
一71一
18
16
14
12
鎌10
蜘8
6
4
2
0
γ
F
一
干
い
許、
ト」
図教師信号
■NN3による推定値
ロ絶対誤差
几
123456789
データナンバー
図4.20 コンプレッサー用誘導電動機
図4.21にファン用の推定結果を示す。データ13及び16を除
いていずれのデータナンバーにおいてもほぼ正確に推定できて
いることが確認できた。これは数回のシミュレーションを行った
が結果はあまり変わらなかった。
18
16
14
12
療10
u
」、 」
唱、
㌧
F外F
@{占 、
ヨ骨⊃
筆
唱u
v定
叶
’
癩
、㌧
サ
、ゐ
■教師信号
■NN3による推定値
ロ絶対誤差
“
丼
い
り
鞄8
6
4
2
0
い
占甘
“
丼
F≡
「甜
「一
@〇 〇 卜 o = ;2 2
データナンバー
図4.21 ファン用誘導電動機
一72一
図4.22にポンプ用の推定結果を示す。ポンプ用については、
ほぼ正確に推定ができていることが確認できた。
16
14
12
10
讐8
6
4
2
0
團教師信号
■NN3による推定値
ロ絶対誤差
123456789
データナンバ『
図4.22 ポンプ用誘導電動機
巻線数の推定については、入力情報を固定子内径D、鉄心長:L、
電圧V、周波数f、体積D2:しの5入力でほぼ推定が可能と確定で
きた。しかし、ファン用のデータ13とデータ16は誤差が大きい
いことを確認している。これについては、データ数が他の用途に
比べて多いため、収束に時間がかかっているということも考えら
れるため、中間層数を増やすなど検討したが結果は期待したもの
は得られなかった。最終的にこの結果から考えられることは、デ
ータ自体に何らかの特異性があるためこのような出力が出たの
ではないかと考えられる。そこで、データ13とデータ16を除い
てシミュレーションを行った結果を図.4.23に示す。これから、
除いた残りでシミュレーションを行った場合ほぼ正確に推定で
きることがわかった。その後、データ13とデータ16はファン用
の実際の設計において例外的な設計であったことを確認した。
ニューラルネットの特性である一般化特性を用いて設計の支
援システムを構築するのが本研究の核であり、実際の誘導電動機
の設計での例外的なものに対して対応は困難なものである事例
と言える。
一73一
18
16
14
12
掻10
囲教師信号
■NN3による推定値
勲8
6
4
2
0
ロ絶対誤差
1234567891011121314
データナンバー
図4.23 ファン用 データ13,16erase
次に、表4.13∼4.15に巻線数(ターン数)の推定結果の詳細を示
す。今回推定している巻線数というのは実設計値であるデータが
△結線、Y結線を両方含むため、ニューラルネットワークANN3
での推定時には一時的に△結線でのデータをY結線に等価換算
した巻線数を用いている。電機機器の結線の特性からも明らかの
ように、推定後にr3倍乗ずることにより、△結線時の値に戻す
ことが可能である。
結果をみても分かるように用途ごとにみても、端数を処理する
ことで、Y結線に等価換算した巻線数より、実際に実設計で必要
な巻線数(ターン数)を算出できていることは確認できる。
操作の流れとしては、等価Y結線で変換された△結線電動機の
データはノー3倍することで△結線(並列回路数1)に変換される。
よって、等価Y結線(並列数1)の推定値で明らかにきりのいい整
数でない場合は、推定巻線数の値を》「3倍すればほぼ整数に近い
値になるはずである。それでも整数になってない場合は、結線方
法がY結線および△結線で並列回路(コイル内の並列回路数)が構
成できるときは、並列数を乗ずることで整数に近づけることにな
る。並列数はしたがって、表では候補となる値をあげている。等
価Y結線の推定値をスカラ倍することで、巻線数は整数にほぼ近
・74一
い値となる。またY、△結線双方で算出されているケースはどち
らの結線でも設計が可能であることを示している。また、ファン
用でのデータ13とデータ16については、やはり推定精度に若干
問題が見られる。この結果から何らかの原因でこの2ケースには
特異性が有るものと考えられる。参考までに他のデータと同様に
ターン数の算出を行っているが教師信号とは一致しなかったこ
とが確認できる。
表4。13 巻線数の推定値の詳細(コンプレッサー用)
等価Y結
NN3でのY結
Y結線
△結線に変更
△結線で
Y結線タ
△ 結線
@ 線
?^ーン数の
ナの最
オた場合
フ最小並
[ン数
^ 一 ン
i並列数1)
?闥l(並列
ャ並列
ナのター
P)
回路数
路数
@ン数
6.93
6.929911329
一
12.00295851
1
12
4.62
4.622113085
一
8.005734701
1
8
10.39
10.39014827
一
17.9962647
1
7
7.07576287
1
一
一
7
4.5
4.49169866
2
一
一
9
4.5
4.499188985
2
一
一
9
一
2.5
2.501014858
4
一
}
10
一
1.75
1.754291417
4
一
一
16
15.93553004
1
一
一
一75一
一
7
16
18
一
一
『
一
表4.14 巻線数の推定値の詳細(ファン用)
等価Y結
NN3でのY結
Y結線
△結線に変更
△結線で
Y結線タ
△ 結線
@ 線
?^ーン数の
ナの最
オた場合
フ最小並
[ン数
^ 一 ン
i並列数1)
?闥l(並列
ャ並列
ナのター
回路数
路数
P)
@ン数
6.5
6.490597475
2
一
一
13
一
1.88
1.868718325
一
3.236715084
4
一
13
5.5
5.491531969
2
一
一
11
一
5
4.989671268
1
一
一
5
5
4.991495501
1
一
一
5
一
4.67
4.660204475
1
8.071710925
1
14
8
7
6.991348527
1
一
一
7
一
6.5
6.487441364
2
一
一
13
一
6.93
6.918379825
一
11.98298536
1
一
12
5.5
5.491580486
2
一
一
11
一
3.18
3.169513485
『
5.489758391
2
一
11
3.46
3.44853628
『
5.973040048
1
一
6
3
5.80009721
一
10
一
一
一
10
一
叢
ド㍗
ア
冨 甲 」
い
P
一
16
15.99087751
1
4.5
4.490041225
2
一
一
16
一
一
5.854773804
候補なし
候補な
一
野饗
@し
一76一
表4.15 巻線数の推定値の詳細(ポンプ用)
等価Y結
NN3でのY結
Y結線
△結線に変更
△結線で
Y結線タ
△ 結 線
@線
?^ーン数の
ナの最
オた場合
フ最小並
[ン数
^ 一 ン
i並列数1)
?闥l(並列
ャ並列
ナのター
P)
回路数
路数
@ン数
11
10.99253766
1
5.2
5.18888184
一
10
9.927735985
1
14
14.06137896
1
12
11.99241435
1
11
11.00107951
1
6
5.012982191
1
7
5.978315867
1
4.62
4.620573559
一
11
一
一
9
一
10
一
一
一
14
『
一
一
12
一
一
一
11
一
一
一
6
一
一
一
7
一
8.003068164
1
一
8
一
一
8.987406982
1
一
一77一
4.4 ANN4による製造コストの推定
誘導電動機の詳細設計が完了したら次は製造コストの推定の
プロセスである。製造コストについてはコストが材料費・加工
費・経費の分野で精査されたデータを仕様してニューラルネット
ワーク(ANN4)を構成した。入力は出力、極数、固定子内径D、
鉄心長しであり、出力は製造コストである。中間層に対数ジグモ
イド伝達関数を使用し、出力層には線形伝達関数を使用している。
出力
極数
固定子内径D
鉄心長L
製造コスト
ー
バイアス信号一一一一一レ
図4.31
製造コストの正確さを評価するために、ANN4の推定コスト
は実績コストと(4.1)式の比率Kを用いて比較した。
E3∫伽α∫αJ Co5’勿1仏ηV4
K =
(4.1)
Rθα1CO∫’
一78一
高速誘導電動機のデータ
表4.16
Da
ta
Rated
Output
No.
(kW)
1
710
750
800
850
900
1000
1120
1250
1400
1800
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
..
Q…3
24
25
26
27
2000
710
750
850
900
950
1000
1060
1250
1400
1600
2000
950
1600
800
1120
1800
Number
Diamete
Core
r刀
1・ength五
Cost
500
500
500
550
600
650
700
750
600
800
850
500
500
500
600
650
650
700
750
600
700
850
0.4053
4
450
450
450
450
450
450
450
450
500
500
500
450
450
450
450
450
450
450
450
500
500
500
2
4.50
6510
0..4280.
2
500
450
450
500
7Q.0
0.5620
500
0.3740
750
800
0.4067
of Poles
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
4
4
4
4
4
4
4
4
4
4
4
4
4
一79一
Tota1
0.4053
0.4053
0.4140
0.4213
0.4280
0.4353
0.4420
0.5313
0.5787
0.5867
0.3740
0.3740
0.3740
0.3880
0.3940
0.3940
0.4007
0.4007
0.4613
0.4853
0.5100
0.5020
中速誘導電動機のデータ
4.17
Data
No.
Rated
Output
Number of
Poles
Diameter刀
Core Length
Total Cost
五
(kW)
1
710
6
450
650
0.3733
2
750
850
900
950
1000
1060
1120
1400
1600
1800
2000
710
750
800
850
900
950
1000
1060
1120
1250
1600
1800
2000
800
1250
1400
6
8
500.
8
500
500
500
500
500
560
560
630
630
450
500
560
700
800
550
600
650
700
700
900
750
850
900
650
650
700
700
750
800
850
850
900
750
900
800
900
750
0.3793
8
450
450
500
500
500
500
500
500
560
560
560
500
500
500
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
6
6
6
6
6
6
6
6
6
6
8
8
8
8
8
8
8
8
8
8
6
6
8
一80一
800
S50
0.3887
0.4167
0.4247
0.4327
0.4407
0.4407
0.4740
0.6233
0.6447
0.6533
0.4513
0.4513
0.4560
0.4560
0.4627
0.4680
0.4733
0.4733
0.4780
0.6193
0.6533
0.7700
0.7960
0.3840.
0.4580
0.6360
表4.16および表4.17は、高速および中速のデータである。表
中で製造コストは絶対金額ではなくある指数で表示している。表
4.16の高速誘導電動機でNo.1∼No.22を学習してNo.23∼No.27
の製造コストを推定し、その時の比率Kを表4.18に示す。同様
に表4.17の中速誘導電動機においてNo.26∼No.28の推定コスト
と製造コストの比Kを表4.19に示す。これから分かるように比
率Kはほとんど1.0(約)であり、ANN4は正確なコストを推定して
いることが分かる。
表4.18 製造コストの推定精度
(High Speed Motor)
(kW)
Number of
Poles
Ratio 1【
23
950
2
1.01
24
1600
2
1.02
25
800
4
1.01
26
1120
4
1.01
27
1800
4
1.04
Data No.
Rated Power
表4.19 製造コストの推定精度
(Middle Speed Motor)
Data No.
Rated Power
@
(kW)
Number of Poles
Ratio 1ζ
26
800
Q7
P250
P.02
Q8
P400
P.01
668
一81一
1.01
4.5 結論
本論分では、提案するNeura1−Networkを用いた誘導電動機最
適設計支援システムの性能の検証を行うために、実際の誘導電動
機の設計データを用いて、シミュレーションを行った。以下に本
研究で得られた結果をまとめる。
(1)誘導電動機基本仕様である定格出力、定格電圧、定格周波数、
極数を入力としてニューラルネットを訓練し、シミュレーショ
ンを行い、総磁束、磁束密度、効率、力率などのパラメータを
ほぼ正確に推定できることが確認できた。
(2)電動機基本仕様より算出されたパラメータ、および実際の電
動機設計に使用される参照テーブルによる補正を用いること
で、誘導電動機のサイズを確定できた。
(3)誘導電動機のサイズを確定することにより、電動機設計に必
要な詳細設計のパラメータをすべて算出できる可能性を確認
した。
(4)電動機設計において、何らかの特異性を持つ設計ケースをニ
ューラルネットにより分別グループ化できる可能性が明らか
となった。
(5)誘導電動機の設計において、ニューラルネットを用いた本シ
ステムにより、莫大な労力、時間を低減でき、設計支援が可能
であることを確認した。
(7)製造コストの推定もニューラルネットを用いほぼ正確に推
定できた。
今後の課題としては、今回フィードフォワードバックプロパゲ
ーションネットワークを用いたが、その他の相互結合型ネットワ
ークをもちいること、また、フィードフォワードニューラルネッ
トワークのバックプロパゲーション以外の巧妙な手法である
:Levenberg・Marguardt法を用いることによりさらに高速かつ正
一82一
確に高精度推定ができる可能性がある。
今後、本研究における設計支援システムの有効性を実際の設計
で評価しシステムの改良を推進していく必要がある。
一83一
第5章 過渡現象解析(13)∼(22)
5.1 誘導電動機の基本式
三相誘導電動機の過渡現象を解析する方法としてd卜g座標法により表現され
たモデルが使用されることが多いが、不平衡状態に対するシミュレーションは
困難である。本文では、三相平衡電圧の他、一相および二相の欠相や一相、二
相および三相地絡の不平衡状態でのシミュレーションを可能とするため三相瞬
時値を用いて誘導電動機のモデル化を行っている。
誘導電動機の電圧・電流方程式は次式で与えられる。(17)
E−4
ッII)側畷稽1・
(5.1)
』L.璽+π.1
4’
ただし、電圧ベクトルβおよび電流ベクトル1は次式で与えられる。
E一画,4,現,ら,乾,らr
(5.2)
1一[ろ,ろ,孔,ら,ら,らr
(5.3)
ただし、
易,易,瓦:固定子相電圧
θ。,θわ,θ。:回転子相電圧
ム,為,ゐ:固定子相電流
窃,あ,ル:回転子相電流
ここで、五は固定子および回転子巻線の自己および相互インダクタンス、亙は
固定子および回転子巻線の抵抗を示す。五と丑’の詳細を付録3.1に示す。
一84一
機械系の運動方式は次式(5.4)にて与えられる。
」M4 P穿+KM(θM一θ画
」亭+脚θM一θL)一・
(5.4)
η:誘導電動機の発生トルク
乃 :負荷機械の反抗トルク
布:誘導電動機の回転子慣性能率
ム :負荷機械の回転子慣性能率
鰯:電動機と負荷機械の軸のバネ常数
〃μ:誘導電動機の回転子軸の涙じれ角
疏 :負荷機械の回転子軸の涙じれ角
ここで、θは軸のねじれ角、」は回転子慣性能率、κは軸のバネ定数を示す。
上式中の誘導電動機の発生トルク窃および負荷の反抗トルク町は次式(5.5)、
(5.6)で記述される。ただし、(5.6)式中の(71は付録3.1による。
布=GIrぜα’α+1α∫,+ろ’α
(5.5)
一1、’c−1。∫。+1。ち)
T。昌丁。α一8♪2
(5.6)
ただし、
5:スリップ
%:負荷機械の定格トルク
974×ゐ躍
鴇= ×102
2V∫
C媚璽
ゐ躍=出力
3一%一ω
αち
1V∫:同期回転数
%:回転子同期角速度
一85一
P
5.2表皮効果(19)
誘導電動機の表皮効果については第2章2.2項で概要を説明したが、ここで
はシミュレーションのための誘導電動機の電圧電流方程式で一次の漏れリアク
タンス、二次の漏れリアクタンス、二次抵抗に対しどのように表現するかにつ
いて説明する。
5.2ユ深溝係数皿
深溝かご形誘導電動機において表皮効果が長方形の回転子バ
ーの抵抗及びリアクタンスに与える影響については深溝係数、陥
を(5.7)式とし、、Kみと抵抗増加係数燈とリアクタンス減少係数
血の関係を(5.8),(5.9)式にて近似した。
すなわちシミュレーションにおいては回転数からスリップS
を算出し、(5.7)式からその回転面での.磁を求め、二次抵抗につ
いては、回転子バーで回転子鉄心内部に位置し磁束と鎖交する部
分については設計書で求めた二次抵抗に(5.8)式の痘倍して補正
を行った。二次漏れリアクタンスについては回転子スロットの漏
れリアクタンスの内、バーが挿入されている部分のリアクタンス
を(5.9)式の血倍して補正を行った。
紐一α・乃・5
(5.7)
一盈、畜
5:スリップ
α:銅の時 0.1405
f:電源周波数
力:導体の高さ
∬カ:
3=1.0の時の深溝係数
3
一86一
5.2.2抵抗増加係数魚
働と抵抗増加係数:燈の関係を(5.8)式に示し、付録3。2に図
を示す。燈は表皮効果により抵抗が増加する割合を示す。
翫.t2の時
、蔭=1.0
舐卜12の時
一(1.2Kな一ん妬♪+(梅」1.0♪1ζ乃
駈
Kん∫一:L2
(5.8)
痘5:S=1.0の時の抵抗増加係数
5.2.3リアクタンス減少係数、鹸
勘と回転子鉄心のバーの漏れリアクタンス減少係数の関係を
(5.9)式で近似する。この式によるκ乃と翫の関係を付録3.2に
示す。血は表皮効果により漏れリアクタンスが減少する割合を
示す。
働.L2の時
血=1.0
働兄2の時
叢一警一(10調
Kκ=
〔戯)
(5.9)
κxθ:3=1.0の時のリアクタンス減少係数
一87一
5.3飽和について
5.3.1固定子スロット部の漏れリアクタンス
固定子コイルに流れる電流値がある値以上流れると、固定子ス
ロット部のマグウエッジ部が飽和して比透磁率μが1になるよ
うにした。固定子スロット断面を図5.1で示す場合の固定子スロ
ット定数抽1を(5.10)式に示す(19)。漏れリアクタンスとスロット
定数は比例関係にあるので比透磁率μが小さくなる分、漏れリア
クタンスは減少する。その変化を図5.2に示す、図において∫は
誘導電動機に流れる電流、∫oは誘導電動機の定格電流を表わす。
4 3Z〃「1〃「2
面・=1募+冨+τ+μ●τ
ゴ:導体深さの和
(5・10)
Z:絶縁の深さ
μ:磁性懊の比透磁率
N◎
1
Z2
マゲウエゾ
1
N
1
◎
Z4
盟
M
山
図5.1固定子スロット
5
4
3
こ12
1
Z/∫o
0
0
2
4
6
8
図5.2電流倍率と磁性懊の比透磁率
一88一
5.3.2回転子スロット部の漏れリアクタンス
回転子バーを流れる電流がある値以上流れると、飽和によりあ
たかもスロット歯部の漏れリアクタンスが小さくなる。回転子ス
ロット断面を図5.3で表わすと、回転子スロット定数κ52は(5.11)
式で示される(19)。ここではスロット歯の先端部が飽和したとみ
なし、スロット開口部の寸法b1がb2に近づいていくとして計算
した。その変化を図5.4に示す。従って回転子スロット部の漏れ
リアクタンスもKs2の変化と同じ比率で減少する。
K・2−K・舌・わ、21∼2・舞
‡
(5.・・)
01
G2
℃
挿
図5.3.回転子スロット
b1=2, b2=6の場合
7
6
5
ぞ4
、ξ
コ3
2
1
0
O
2
4
6
1/IO
8
図5.4電流倍率とbl寸法の変化
一89一
5.4計算値と試験値の比較
ここではシミュレ・ション結果の妥当性を確認するために計算
値と試験値の比較を行った。供試機は1100kW 4極の誘導電動機
で表5.1に仕様と設計書で計算した回路定数を記載している。こ
の誘導電動機において商用電源で運転した時の始動トルク、最大
トルクと始動電流値について計算値と試験値(JEC・37)の比較
を行い、表5.2に示す良好な結果を得た、表で100%は定格トル
クおよび定格電流を意味する。
表5.1三相かご形誘導電動機の仕様
出力:1100kW,極数:4
電圧:6600V,周波数:60 Hz,定格電流:115 A
定格トルク:6.01x104 kg・cm
負荷機械:ポンプ
電動機の回転子JM:300 kg℃m・sec2負荷機械の回転子J】ゴ100 kg℃m・sec2
機体系のバネ定数:1.67×108kg・cm/rad
回転数:1784 min・1
回路定数(Y結線)
r1=0.2673Ω1相
x1=3.952Ω1相
r2=0.2918Ω1相(運転時) x2=4.584Ω1相(運転時)
r2=1.0307Ω1相(始動時)x2ニ4.555Ω1相(始動時)
x=120.4Ω1相
m
正(hs=3.85
スリップS=0.89(%)
】血s=3.85
Kxs=0.39
表5.2計算値と試験値の比較
始動トルク(%)
最大トルク(%)
63
212
計算値(*)
102
220
459
585
試験値
103
223
581
計算値
始動電流(%)
*:計算には回転子の深溝効果と飽和現象を考慮している。
一90一
5.5始動1停止(13)(15)
5.5.1 シミュレーション
誘導電動機の過渡特性のシミュレーションを行うために、本論文ではMatlab
およびSimul血kを用いてそのモデルを構成している。始動および定常運転、そ
の後の電源遮断から停止を精細にシミュレーションするために、シミュレーシ
ョンは次の二段階に分けて実施している。すなわち、第一段階では連続運転時
のシミュレーションで誘導電動機を電源直入れ始動し、負荷を一定として連続
運転をさせ電流・トルク・回転数が安定した状態になるまでシミュレーション
を継続する。
第二段階は電源遮断であり、第一段階の計算結果を初期状態として誘導電動
機の残留電圧の計算を行っている。この第二段階では、固定子電流は0となる
ため電動機の発生トルクの計算は不要となる。
付図A.8に第一段階(連続運転中)のシミュレーションのためのブロック図を
示す。また、付図A.9には第二段階(電源遮断)におけるシミュレーションのた
めのブロック図を示す。これらのブロックの切り替えにより、誘導電動機の連
続運転、電源瞬停、さらに電源再投入まで含めた一連の誘導電動機過渡現象の
詳細なシミュレーションが可能となる。
5.5.2 始動
定格出力1100kW 4極の表5.1に仕様を示す三相かご形誘導電動機の電源直
入れ始動から定常連続運転への移行時の過渡応答を図5.5に示す。図5.5には始
動後5秒間の過渡応答を示している。山中、上段より固定子電流、電動機トル
ク、回転数の始動直後5秒間の過渡現象を示す。なお、本シミュレーションで
は各相の抵抗値は周囲温度を40℃として、実際の温度上昇値から求めた値を使
用している。
一91一
1
宣
曾
§
り
一1
0
05
1
15
2
25
3
35
4
45
5
宣
量
昌.
1
0051152253354455
宣
書・
身
陶
日
0 05
1 15 2
25
3
35
4
45
5
図5.5 始動後の固定子電流・電動機トルク・回転数
5.5.3停止
ここでは三相かご形誘導電動機の定常連続運転中に瞬停が発生した場合の過
渡応答について検討している。そのためには、瞬停発生直後の固定子電流およ
び回転子電流の初期値を設定する必要があるが、これらの初期値は次式で決定
される。(13)’㈹
}
ご。(0+)=∬。(〇一)+∫。(0一)
%(0+)=1わ(0一)+%(0鱒)
(5.12)
∫。(0+)=1。(0一)+∫。(〇一)
なお、0’は瞬停直前の、また0+は瞬停直後の値である。
電動機と負荷機械の回転子の慣性能率を痂およびみとし、負荷機械を含め
た電動機の慣性定数を∬(sec)とすると、∬(sec)は次式で定義される。
(JM+JL)・確
H=
(sec)
(5.13)
1.86×左耳7×106
一92一
母線電圧と残留電圧の位相関係については、母線電圧のA相電圧をEsin(2
ππ+θo)、A相の残留電圧をEr sin(2π伽+θザθ,)として、6=0にて瞬停
が発生するものとしてシミュレーションを実施している。ここで丘は残留電圧
の周波数であり、以下のシミュレーションではA相電圧位相をθo=0と設定し
ている。
定格出力1100kW 4極の三相かご形誘導電動機において∬=1.5(。肋=300
kg・cm・sec2、。吃=650 kg・cm・sec2)および∬=15(。肋=300 kg・cm・sec2、
ゐ=9200kg・cm・sec2)とした場合の100%負荷時の残留電圧と回転数の瞬停
後2秒間のシミュレーション結果を図5.6および図5.7に示す。
15
.。1
喜・
》“ F1
・1.5
0
02
0.」} 0.6
0.8
1
12
1.4
1.6
1.8
2
1.5
塞
曇・,
コる
ロ
お
ユ
コゆる
な
ロ
時間
図5.6 残留電圧と回転数の時間変化(∬=1.5)
図中、上段より残留電圧および回転数の過渡応答を示している。 これらの図
から、残留電圧の過渡特性が∬に依存しており∬が大きくなるほど残留電圧の
減衰時定数が大きくなっていることがわかる。また、母線電圧と残留電圧との
間の位相差と四四時間の関係を図5.8に示す。図5.8より残留電圧の位相差θr
は丑の値が小さい程、母線電圧からの位相遅れが大きくなっていることがわか
る。
一93一
1.5
1
リロ
愚。
畢“5
・1
・1。5
0
02
0.4
0.6
0.8
1
12
1.4
1.6
1.8
2
1.5
茎1
書。,
0
O
O2
0.4
0.6
0.8
1
12
1.4
1,6
1.8
2
時間
図5.7 残留電圧と回転数の時間変化(E=15)
一◆一H=15+H=15
’ψ 、
琉w 恟Jし犀
趣む
話30
鐸⑳
週10
0
?f圭ヒ
瞼
0
丁
Q①
QO4
006
008
01
曙二二秒
図5.8 母線電圧と残留電圧との位相差〃1の時間特性(〃炉=0)
なお、瞬停開始のタイミングを変更して、同様のシミュレーションを実施し
ているが、瞬停開始のタイミングをずらしても得られた結果には、ほとんど影
響がないことが明らかとなった。
一94一
5.6 欠相(21)
5.6.1シミュレーションモデル
シミュレーションモデルは付録A.8に示す第一一段階で誘導電動機を電源直入
れ始動し、負荷を一定として連続運転をさせ電流・トルク・回転数が安定した
状態になるまでシミュレーションを継続する。続いて欠相運転であるが、一相
欠相時については連続運転中のブロックの変更により第一段階のままでシミュ
レーションが可能である。二相欠相および三相欠相は付録A.9に示す第二段階
でシミュレーションが実行される。これらにより、誘導電動機の連続運転時、
面相による端子電圧異常時のシミュレーションが可能となる。
5.6.2 初期値設定
シミュレーションに際しては電源電圧については次のように考えている。A
相分をE∫’η(2π方+θ)、B薬嚢をE鋤(2πア’+2/3π+θ)、 C相分を.E伽(2πア∫+
4βπ+θ)とし、欠相発生のタイミングを欠相時のθの変更により設定している。
定格回転で運転中の誘導電動機の回転磁束をφ。とすると時刻仁0において電
源電圧が遮断された場合、遮断前後においてφ。(一〇)=φ。(+0)となるように一次及
び二次電流が流れる。欠相による電源電圧異常時の電流の初期値設定について
まとめると以下のようになる。ここで、電動機はスター結線として検討を行な
った。
一相欠相(C相欠相)時:
IaO+=Ia
IbO÷ =Ib
ll綿3
iaO+ =ia
(5.14)
ibO+ @旨ib
icO+ @=ic
一95一
二相欠相(B、C相欠相)時:
ii/l;}騨
(5.15)
二相欠相(B、C相欠相)時の初期値の設定条件及びシミュレーションは前述5.5.2
項の停止(三相欠相)と同じ要領である。
5.6.3 一相欠相
表5.1に示す仕様の誘導電動機のA相分をE5’η(2πノ∫+θ)、B相分をE∫’η(2πf
’+2/3π+θ)、C相分をE5’η(2πノ∫+4/3π+θ)とし、θ=0度において無負荷運転
時にC相が一相だけ欠相した場合のシミュレーション結果を図
5.9に示す。図で上から固定子のA相電流(pu)、 B相電流(pu)を
縦軸とし横軸は時間(秒)を表わす。 時刻t=0秒で、三相平衡電
圧での運転から一相欠相運転になった時のA相及びB相電流と時
間の関係を示す。一相欠相の時の実測電流波形としては図5.10
がある。図5.9の電流波形は実測波形の図5.10と同様な波形を
示した。このとき、電流値は約1.75倍大きくなっている。
1
05
喜・
殿燭軽糠特l1
一〇5
−1
0
0.1 02 0β
04
05
0β
OJ
Oβ
0£
1
1
05
喜・雷
一{〕5
−1
0
0.1
02
0β
0,4
05
0.6
0.7
0.8
09
1
図5.9 一相欠相運転(θ=0度)
一96一
Iu
Iv
Iw
図5.10 三相運転から一相欠相運転移行時電流オシロ
一97一
5.7地絡
地絡時のシミュレーションモデルは付録図A.8を使用してい
る。
5.7.1 一相地絡
運転中にA相が地絡した場合のシュミレーション結果を図5.11
に示す。図5.llにおいて上から固定子のA相電流(pu)、 B相電
流(pu)、 C相電流(pu)、電動機の発生トルク(pu)、電動機の回転
速度(PU)を縦軸とし横軸は時間(秒)を表わす。
A相電流は地絡電流で、最初の第一波は一13puの過度電流でその
後は始動電流に近い5pu程度の電流が持続的に流れる。健全相の
B相、C相電流はA相電流より小さく3.7∼4.5pu程度の電流が流
れる。
電動機発生トルクはMax.5.Opuを超える過度トルクが発生する
が0.2秒程度で減衰する。平均トルクは負荷の要求トルクとバラ
ンスするが片振幅1.2puを超える2f成分の振動を含む。
ハ ね
⇒ o
量凋。
(
0
0.51t522.533.544.55
5
⇒ 0
9 .5
2
−10
0
^
0.5
1
t5
2
2.5
3
3.5
4
4,5
5
5
⇒ o
e ,5
2.10
35 00.51t522.533.544.55
量・
ぎ一5
享、 0
0.5
1
t5
2
2.5
3
3.5
4
4,5
5
書・・
甚・
00.51t522.533.544.55
図5.11 一相地絡運転
,98一
5.7.2 二相地絡
運転中にA相及びB相が同時に地絡した場合のシュミレーショ
ン結果を図5.12に示す。図5.12において上から固定子のA相電
流(pu)、B相電流(pu)、 C相電流(pu)、電動機の発生トルク(pu)、
電動機の回転速度(PU)を縦軸とし横軸は時間(秒)を表わす。
A相電流は地絡電流で、最初の第一一波は一13puの過度電流でその
後は2pu程度の電流が持続的に流れる。 B相電流はMax.9pu程度
で0.2秒以降は1.3pu程度の定常電流が流れる。健全相のC相電
流は8puの始動電流と同程度の電流が流れる。
電動機発生トルクはMax.8.Opuを超える過度トルクが発生する
が0.2秒程度で減衰する。平均トルクは負荷の要求トルクとバラ
ンスするが片振幅1.2puを超える2f成分の振動を含む。
発生トルクが小さいので電動機の回転数は減衰していき一定回
転に維持するのは不可能。
ハ ゆ
≒ 0
量.1。
100
0.5
1
1.5
2
2,5
3
3.5
4
4.5
5
言・
互.10
コ
む
むロ
で
〇
〇.5
1
コゆ
コ
ロ
言。
互
ご10
t5
2
2.5
3
3.5
4
4.5
5
ま5
否。
二
言10
0.5
1
1.5
2
2.5
3
3.5
4
4.5
5
書・・
甚・
0
0.5
1
1.5
2
2.5
3
3.5
4
4.5
5
図5.12 二相地絡運転
一99一
5.7.3 三相地絡
運転中にA相、B相及びC相が同時に地絡した場合のシュミレ
ーション結果を図5.13に示す。図5.13において上から固定子の
A相電流(pu)、 B相電流(pu)、 C相電流(pu)、電動機iの発生ト
ルク(Pの、電動機の回転速度(Pのを縦軸とし横軸は時間(秒)を表
わす。
A相、B相、 C相共Max.10∼8puの地絡電流が0.2秒程度流れ
るが定常的な持続電流は流れない。
電動機発生トルクは地絡電流により振動トルクが発生する。振
動トルクの大きさはMax.7pu程度。
振動トルクだけなので電動機の回転数は急激に減衰していく。
窪・
亙.10
100
0.5
1
1.5
2
2.5
3
3.5
4
4.5
5
窪・
互.10
0
0.5
1
1.5
0
0.5
1
0
0,5
1
1.5
0
0.5
1
1.5
2
2.5
3
3.5
4
4.5
5
2.5
3
3.5
4
2
2。5
3
3.5
4
4.5
5
2
2.5
3
3.5
4
4.5
5
宣言
量濡
言5
t5
2
4.5
5
量。
ぎる
牽、
書・・
募・
図5.13 三相地絡運転
一100一
5.7.4 複合地絡
運転中にA相、B相、 C相が順に2秒後、3秒後、3.5秒後
に地絡した場合のシュミレーション結果を図5.14に示す。図
5.14において上から固定子のA相電流(pu)、 B相電流(pu)、 C
相電流(PU)、電動機の発生トルク(PU)、電動機の回転速度(PU)を
縦軸とし横軸は時間(秒)を表わす。
A相、B相、 C相それぞれに地絡電流が流れるが定常的な持続
電流は流れない。
電動機発生トルクは地絡電流により振動トルクが発生する。振
動トルクの大きさはMax.7pu程度。
振動トルクだけなので電動機の回転数は急激に減衰していく。
ハ
≒ o
量.1。
_100
0.5
1
1.5
2
2.5
3
3.5
4
4.5
1
1.5
2
2.5
3
3.5
4
4.5
5
5
垂・
£一10
0
05
ハ
≒ o
量一1。
りてむ
喜。
00.511.522.533.544.55
喜.。
誉、 0
0.5
1
1.5
2
2.5
3
2.5
3
3.5
4
4.5
5
4.5
5
量・・
甚・
0
0.5
1
1.5
2
3.5
4
図5.14 複合地絡運転
一101一
5.8電源再投入後(15)(18)(20)
シミュレーションは第一段階の直下入れ始動から定常運転となり、瞬時停電
を第二段階でシミュレーションし、電源再投入は再び第一段階でシミュレーシ
ョンする。
瞬停発生後電源再投入時のシミュレーション結果を図5.15に示す。図5.15
には、慣性定数を∬=1.5、 瞬停時間を0.015秒、母線電圧と電動機の残留電
圧との位相差を120。と設定した場合の固定子過渡電流、発生トルク、回転数の
電源再投入後1秒間の過渡応答を示している。適中、上段より電流、発生トル
ク、回転数の時間変化となっている。
ここで再投入電源電圧と残留電圧の位相関係についても以下のように想定し
ている。再投入電源のA相電圧をEsin(2ππ十〃1)、 A相の残留電圧をErsin(2
π伽+〃1一ψ∂とし、t=0にて電源を再投入するものとする。なお、以下のシ
ミュレーションでは6戸0と設定している。
う り
昼
に む
婁
O−10
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
0.9
1
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
0.9
1
0
0.1
0,2
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
0.9
1
り
邑
ゆ
む
曇
β.10
t5
ε1
曾
80.5
冴
0
図5.15 電源再投入時の固定子電流、トルク、
(〃1=0。,ψr=120。)
一102一
回転速度
5.8.1検討結果
瞬停後の電源再投入までの時間を0から0.005秒刻みで0.050秒まで変化さ
せ、さらに再投入される母線電圧と電動機の残留電圧との位相差を0。から
330。まで30。刻みで変化させた場合の固定子電流のピーク値、正回転方向お
よび逆回転方向トルクのピーク値、さらに、回転群落込みのピーク値の変化の
様子を調べた結果を図5.15から図5.19に示す。
5.8.2 固定子電流への影響
再投入時間、再投入電源電圧と残留電圧の位相差とA相固定子電流のピーク
値の関係を図5.16
に示す。ここで位相差ψ,は再投入電源電圧の残留電圧からの位相遅れ角を示す。
15
10
A相電流(pu)
一5
一10
0.050
一15
025
一20
瞬停時間(秒)
¶一・一 苺 8
位相差ψ,(度)
図5.16 電源再投入後の固定子電流ピーク値
図5.16をZ軸方向から見た平面図(等高線)を図5.17に示す。この図より、
位相差ψ,が180。近辺で固定子電流のピークは・15puを越えていることがわ
かる。また位相差ψ,が0度近辺ではピークは+10puを越えていることがわか
る。また、瞬停継続時間が0.050秒程度の短時間であれば固定子電流には瞬停
時間による影響はないといえる。すなわち、瞬停時間が短い場合には電源再投
入時の固定子電流は位相差ψ,に大きな影響を受けていることになる。
一103一
0.050
0.045
0.040
0.035
0.030
0.025瞬停時間(秒)
0.020
0.015
0.010
0.005
0.000
0 ■一8 8▼層8 ひ」
專 cり8
口10−20
口0−10
■一10−0
■一20一一10
位相差ψ,(度)
図5.17 電源再投入後の固定子電流ピーク値(II)
5.8.3 正回転方向トルクに与える影響(20)
再投入時間、再投入電源電圧と残留電圧との位相差、正回転方向トルクのピ
ーク値の関係を図5.18
に示す。ここで、正回転方向トルクとは、トルクの向きと回転方向が一致して
いる場合のトルクであり、正回転方向トルクのピーク値は最大でも7pu程度で
ある。また、このピーク値は瞬停の継続時間により変化している。これは残留
電圧を発生させている回転子電流が瞬停開始時点から回転子の回転速度に対応
した周波数で変動しながら電動機の開路時定数で減衰しているため、再投入時
の回転子電流の初期値が瞬停時間の長さにより変化することに起因している。
0.050
0.045
0.040
0.035
0.030
0.025
0.020
0.015
呂 8 § 婁 § §
o
位相差ψ,(度)
0.010
0.005
0.000
瞬停時間(秒)
口6.00−8.00
【ユ4.00−6.00
■2.00−4.00
■0.00−2.00
図5.18電源再投入後の正回転方向トルクのピーク値
一104一
5.8.4逆回転方向トルクに与える影響(20)
再投入時間、再投入電源電圧と残留電圧の位相差、逆回転方向発生トルクのピ
ーク値の関係を図5.19に示す。ここで逆回転方向トルクとは、トルクの向きと
回転方向が逆の場合のトルクであり、図より、逆回転方向トルクのピークは最
大10puを越える値となることがわかる。逆回転方向トルクのピーク値は前述
の正回転方向トルクと同様に回転子電流の変化の影響を受け瞬停時間の長さに
より変化している。つまり、瞬停時間0秒の場合にはこれまでの報告(n)どおり
120。近辺で最大となるがそれ以降は瞬停継続時間により過渡トルクがピーク
値をもつ位相差ψ,は、ほぼ1/f周期で変化していることがわかる。
0.050
0.045
0.040
0.035
0.030
0.025
瞬停時間(秒)
0.020
0.015
口 ・一6∼0
0.010
國一10∼一6
0.005
0.000
呂 8 § § § §
■ 一10以下
o
位相差ψ,(度)
図5.19 電源再投入後の逆回転方向トルクのピーク値
一105一
5.8.5 回転数に与える影響
再投入時間、再投入電源電圧と残留電圧の位相差、回転数落込みのピーク値
の関係を図5.20に示す。図より、∬=1.5の時は回転数の落込みのピークは最
大15%程度であり、この図5.20が図5.19と同じパターンを示していることか
ら考えて、落込みは主に逆回転方向トルクの影響によるものとと考えられる。
0.050
0.045
0.040
0.035
0.030
0.025
瞬停時間(秒)
0.020
0。015
0.010
0.005
88§§§§
位相差ψ,(度)
0.000
口95.0−100.0
口90.0−95.0
囲85.0−90.0
團80.0−85.0
■75.0−80.0
図5.20 電源再投入後の回転数の落込みのピーク値
一106一
5.9 結論
三相誘導電動機の瞬停後電源再投入時のトルク、固定子電流および回転数に
ついて、三相瞬時値ベースの詳細モデルを用いたシミュレーションにより検討
した結果をまとめると以下のようになる。
(1)過渡時の固定子電流のピーク値の絶対値は残留電圧と投入電源電圧との
位相差ψ,および瞬停時間により変化するが、常に位相差ψ,が180度近辺で電
源が再投入された場合に非常に大きな固定子電流が流れる。
(2)正方向及び逆回転方向過渡トルクも残留電圧と投入電源電圧との位相差
ψ,に依存する。さらにこれらのトルクは回転子電流の大きさの影響を受けるた
め、瞬停継続時間のも影響されることとなる。
(3)電源再投入後の回転数の落ち込みは、逆回転方向過渡トルクのピーク値
と同様に残留電圧と投入電源電圧の位相差ψ,および、瞬停継続時間に影響され
ることが明らかとなった。
なお、本研究において、MATLABおよびSIMU:LINKにより構成した誘導電動
機詳細モデルを用いて、DSPボード上での実時間シミュレーションが可能であ
り、これをモジュール化することにより、誘導電動機の実時間シミュレータを
構成することができる。この誘導電動機実時間シミュレータにより、誘導電動
機の各種制御方式の制御性能の実験的検証を簡便に実施することができる。
一107一
第6章 総括
本研究では、大きく二つのことについて提案している。一つは、近年
各分野で応用されているニューラルネットワークを大形誘導電動機の電
気・磁気の設計書に応用する設計支援システムの構築方法についての提
案である。もう一つは、完成した設計書で誘導電動機を製作した場合の
誘導電動機の過渡現象解析法についての提案である。以下に、本研究に
よって得られた結論を各章別に要約して述べる。
第4章「ニューラルネットワークによる設計支援システムの構築」で
は学習セットの誘導電動機は出力が330∼5700kW、極数が2∼10極、
電圧が4.16∼6.6kV、周波数が50又は60且zで冷却方式が全閉外扇形で
絶縁階級がF種を対象としている。ニューラルネットの学習セットは誘
導電動機の用途別に、コンプレッサ用9ケース、ファン用16ケース、
ポンプ用9ケースに分けている。
二心支援システムのニューラルネットワークはANN1、ANN2、 ANN3
の三段構造で構成された設計書作成支援システムとANN4の製造コス
ト推定システムからなっている。まず設計書作成支援システムであるが
初段のニューラルネットワークは設計の対象となる誘導電動機の定格出
力、極数、電圧、周波数などの基本仕様を入力して設計後の総磁束、D2b
(回転子体積に相当する量)、電動機の各部における磁束密度、力率、効
率などを推定するものである。ANN2は総磁束、 D2Lを入力して固定
子内径Dを推定し、参照テーブルを用いてDの補正を行い、鉄心長L
を確定させる。ANN3はDとしを入力して固定子コイルの巻線数、巻線
方式、機械定数を決定する。これらの値とスロットサイズをインプット
として電気回路、磁気回路、電気特性などを計算するプログラムで処理
され詳細設計が完了する。この詳細設計のD2L、総磁束、各部磁束密度、
効率、力率などの設計値とANN1の出力との比較を行う。 誤差が小さ
ければ設計書の作成は完了するが、誤差が大きければ再度ANN2のステ
ップに入り、Dの修正を行い、 NN3を経て詳細設計プログラムで新しい
設計値を求めANN1の出力との比較を行うことになる。
シミュレーションを行い以下の結果を得た。即ち、誘導電動機の基本
一108一
仕様である定格出力、定格電圧、定格周波数、電源周波数を入力してニ
ューラルネットを訓練し、総磁束、磁束密度、効率、力率などのパラメ
ータをほぼ正確に推定できることが確認できた。次に、このパラメータ
と実際の誘導電動機設計に使用される参照テーブルにより補正を用いて
誘導電動機のサイズを確定できた。そして、この誘導電動機のサイズか
ら誘導電動機設計に必要な詳細設計のパラメータをすべて算出すること
ができることを確認した。
次に製造コスト推定システムはANN4を構築しその精度を評価し十
分に使用できることを確認した。ここでは製造コストが明確になってい
る高速及び中速の誘導電動機のデータを使用している。
誘導電動機の設計において、ニューラルネットを用いた本設計支援シ
ステムにより、初心者でも熟練技術者並の設計書の作成が短時間に可能
である。また従来に比べ、設計書作成時間の相当大きな低減が可能であ
る。
第5章「過渡現象解析」では、従来のd・q座標法に対し三相瞬時値を用
いたシミュレーションモデルを構築した。d・q座標法では電圧不平衡に
ついての解析が困難であったが、提案するモデルは欠相、短絡などの電
源電圧の不平衡も検討可能である。誘導電動機のモデルは電圧・電流方
程式と機械系の運動方程式から成り立っている。
電圧・電流方程式に使用されるインダクタンスと抵抗については、大
形深溝かご形の誘導電動機の特性を表現している。すなわち、深溝効果
を数式化して、回転速度の変化に応じて深溝係数Khを計算し、回転子
の抵抗値に影響を与える抵抗増加係数Krと回転子のスロット部の漏れ
リアクタンスに影響を与えるリアクタンス減少係数Kxを使用している。
始動時には深溝かご形誘導電動機には始動電流が流れる。これは通常、
定格電流の6倍前後流れる。この始動電流は飽和現象を含んでおり、固
定子の鉄心部に定格電圧を印加した時の固定子の励磁電流もある程度飽
和している。しかし、励磁電流は従来からの設計基準である磁化特性曲
線のデータを使用すれば計算可能である。本研究では、固定子コイルや
回転子バーに大きな電流が流れた時の各部の飽和を検討した。具体的に
は固定子スロット部のマグウエッジ(磁性襖)と回転子スロットの首部の
一109一
飽和に着目した。飽和の影響を考慮するために、それぞれのパーミアン
スに対し補正の計算式を提案している。実際に1100kW,4極,6600V,
60H:zの深溝かご形の誘導電動機において、始動電流、始動トルクに関
し、深溝効果と飽和の影響を考慮したシミュレーションプログラムの計
算三二と試験値の比較を行い良好な結果を得た。
不平衡電源の過渡現象としてはまず欠相を検討した。各山相状態での
初期値の設定を明確にした。二相三相と三相二相が生じると固定子電流
はカットされ流れず、欠相した相にはそれぞれ残留電圧が発生する。一
相欠相の場合、誘導電動機は運転が可能で三相平衡電圧運転時に比べ
1.75倍程度大きな電流が流れた。計算値と実測値の比較では、残留電圧
の波形と一相欠二時の電流波形はほぼ実測値と近似している。
次に地絡について検討した。一相地絡は短時間であれば運転可能であ
るが電流値が非常に大きくなるので固定子、回転子の焼損事故につなが
るので、瞬時に電源から切り離す必要がある。二相地絡、三相地絡は共
に定格点で運転を継続するだけのトルクが発生しない。二相地絡も大電
流が流れるので瞬時に電源から切り離す必要がある。
誘導電動機の設計に当たっては上記のような異常電圧下での運転の
他に、瞬時停電からの電源再投入と母線切り替えの問題がある。特に瞬
時停電からの電源復帰までの時間が短いと、残留電圧の減衰が小さく、
再投入される電圧によっては過渡電流が大きくなり過大なトルクを発生
する。本研究では瞬時停電時間と投入電源の電圧位相と残留電圧の電圧
位相の差により過渡電流のピーク値、正回転トルクのピーク値、および
逆回転トルクのピーク値の変化を計算した。投入時の過渡電流ピーク値
による過渡トルクピークの絶対値の大きさは正回転トルクに比べ逆回転
トルクの方が一桁大きな値となる。過渡電流ピーク値は位相差が120∼
180度の範囲で大きくなる。この研究は、客先の要求仕様に対し、最適
設計を行うのに有効な手段となる。
一110一
参考文献
(1)野中作太郎:“電気機器【丑】”森北出版株式会社 1994年
(2)野中作太郎:“電気機i器【1】”森北出版株式会社 1994年
(3)馬場 則夫・小島 史夫・小澤 誠一:“ニューラルネットの基礎と応用”
共立出版 1994年
(4)小国 力:“MATLABグラフィック集” 朝倉書店 1997年
(5)芦野 隆一一・Remi Vaillancourt:“はやわかりMATLAB”共立出版 1997年
(6)Colin R.Reeves:“モダンヒューリスティック組合せ最適化の先端手法”
日刊工業新聞 1997年
(7)小国 力:“MATLABと利用の実際 一 現代の応用数学とCG”
サイエンス社 1995年
(8)年合原 一幸:“ニューロ・ファジィ・カオス” オーム社 1993年
(9)T.R.マッカーラ 三浦 功/田尾 陽一共訳:“計算機のための数値計算法概論”
サイエンス社 1998年
(10)T.Hiyama, M. Ikeda, T.Nakayama, ‘‘Artificial Neural Network Based Induction Motor
Design” , Prceeding of IEEE/PES 2000 Winter Meeting (CD−ROM)
(1D T.Hiyama,M. Ikeda, ‘‘ANN Based designing System for Industrial Induction
Motors ” , Proceeding of IEEE International Conference on Machine Learning and
Cybernetics Aug. 2004 (CD−ROM)
(12)池田,中山,檜山:「ニューラルネットワークを用いた誘導電動機設計支援システム
の開発」,電気学会誌論文D,vol.125, No.1, pp.84−90(2005−1)
(13)新良,東覚,永石:「誘導電動機の過渡現象及び異常現象の直接的シミュレーション」三菱電
機高畠、Vol.48, No.10, pp.1177−l184,1974
(14)A.Smilh, R.Healey, S.Williamson :”A transient induction motor model including
saturation and deep bar effec書”, IEEE Transactions on Energy Conversion, 11−1,8
∼15(1996)
(15)一杉,金田,森安,難波:「誘導電動機の母線切換時の過渡現象」,電気学会誌論文
D,vol.120, pp.1360−1368(2000−11)
(16) Reynaud and Pillay : ‘‘Reclosing traHsients in induction machines including the
effects of saturation of lhe lnagnetizing branch a丑d practical case study” , IEEE
Trans. on Energy Conversion, Vol。 9, No.2, June 1994, PP.383−389.
(17)B.T. Ooi andT. H. Barton:”StarHng transients i設1nductionmotorswith inertia
loads”, IEEE Trans., Vol.PAS−91, Sep./Oct. 1972, pp.1870−1874
(18)Jaward Faiz, M. Ghaneei, A. Keyhani : ”Performance analysis of fast reclosing
transients in induct董on皿otors”, IEEE Trans. on Energy Conversion, Vol. 14, No.
1, March l999, pp.101−107
(19)片山仁八郎編:「誘導機i」日刊工業新聞社,電力機器講i座3,pp.78∼80
(20) F.P.F亜ynn and W. S.Wood :”Transient negative torques in induction motors due
to rapid reconnection of the supply”, PROC. IEE, Vol. 116, No. 12, Dec. 1969,
pp.2009−2014
(21)竹谷是幸:「誘導電動機の欠相保護について」,電気設備学会誌,pp.186−192
(1988−03)
一111一
(22)電気学会技術報告第891号「誘導機の過渡現象解析技術」(2002・7)
一112一
謝辞
本研究を遂行するに当たり、始終熱心なご指導、ご鞭燵を賜りました
熊本大学大学院自然科学研究科 檜山隆教授、蛯原健治教授、秋山
秀典教授、宮原邦幸教授、村山伸樹教授に心より感謝致します。
本研究の遂行に当たっては、熊本大学大学院生の中山誠章氏(現、
三菱電機(株))に多大なご協力を頂きました。
本研究は、以上に挙げた方々の御助力のもとにはじめて完遂し得たも
のであり、ここに記して心より感謝の意を表わします。
2005年3月
池田 雅博
一113一
付
録
目
次
1.Neural・Network関係
115
1.1 Neural−Networkの形態と学習条件
115
1.2 Neural−Networkのシミュレーション結果
116
図A1磁束密度Bsa
図A2磁束密度Bsb
図A3磁束密度Bra
図A4磁束密度Brb
図A.5磁束密度Bg
119
2.誘導電動機
2.1 誘導電動機の基本式の行列L及びR
119
2.2 抵抗増加係数とリアクタンス減少係数
120
2.3 シミュレーションのためのブロック図
121
2.4 Matlabのブロック四
122
一114一
1. Neural・Network関係
1.1Neural・Networkの形態と学習条件
本文 第4章で導出されたニューラルネットワークANN1,ANN2,ANN33
のおよびANN4の入力数、隠れ層の数、出力数を表A1に、学習条件を表A2
に示す。
表A1
ニューラルネットワークの形態
Ne皿田
me幡
細
細
柵
脳
12yer
C叫】㎜r
Ih ut
5
10
H董dden
Ou ut
晦
5
10
Fan
5
10
1
1
1
hut
3
10
3
3
10
20
0皿ut
1
1
1
hut
5
5
Hidden
5
10
10
20
Out ut
1
1
1
hut
5
10
5
10
5
10
1
1
1
Hidden
Hidden
Ou ut
表A2
学習条件
Neural
metwork
㎝
鼎
細
鼎
Maximum
hterations
Target
keast Square
Learning Rate
@ Error
100,000
0.0002
0.01
100,000
0.00005
0.01
100,000
0.00005
0.01
50,000
0.0001
0.01
一115一
1.2Neural・Networ:kのシミュレーション結果
本文第4章 4.3.2項に記載した磁束密度の推定結果を下記に示す。
勿
20
1:
18
16
箏:;
一14
琴・2
ぎ1
量10
多:
:
窪
:
1
2
3
4
5
6
7
8
0
9
データナンバー
123456789
データナンバー
コンプレッサー用
コンプレッサ・用
20
20
袖
螺
@
▼
サ
是}
18
18
16
16
る
る
零12
琴12
蟄・
蟄・
窪・
雲・
6
4
2
0
6
4
2
G
12345678910111213141516
データナンバー
12345678910111213141516
データナンバー
ファン用
ファン用
20
藷
18
16
る
琴1:
畢・2
量・o
ぎ1:
垂8
6
4
2
0
:
:
123456789
123456789
データナンバー
データナンバー
ホoンプ要
ホoンプ用
図A.2磁束密度B、b
図A.1磁束密度:B。。
一116一
18
器
::
ll
写::
§・2
量・
華11
:
茸
:
ま
1
2
3
4
5
6
7
8
123456789
9
データナンバー
データナンバー
コンプレッサ・用
コンプレッナ用
釜
盈
1:
1:
写・2
零・・
豊:
量・・
婁8
6
4
2
0
:
二
2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16
1
データナンバー
ファン用
12345678910111213141516
データナンバー
ファン用
20
20
18
16
15
14
写
餐12
塾。
ぎ:
塞
5
:
:
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
123456789
データナンバー
データナンバー
ポンプ用
ホ.ンプ用
図A.3 磁束密度B訟
図A.4 磁束密度B由
一117一
9
茸
辱:
ぎ・
:
二
123456789
データナンバー
コンプレッ1卜用
9
茸
写:
室・
:
二
1 2 3 4 5 6 7 8
9
皇0 11 12 13 14 15 16
データナンバー
ファン用
9
茸
辱:
睾・
:
二
1
2
3
4
5
6
7
8
9
データナンバー
ポンプ用
図A.5 磁束密度Bg
一118一
2.誘導電動機
2.1 誘導電動機の基本式の行列五および丑’
L1
2しf1
1匠1
M
−1匠12 −1匠/2
MI L1 ルf1 一ルf/2
L=
M1 1匠1
M
一ハ∬12
L1 −M12 ■1匠12
1レf 一ルf/2口M12
−M!2 M
−M12
■M!2−M/2
L.
1レf
M2
1匠2
ノレf2 L2 ルf2
2レf 1し∬2 1匠2 L2
R1
R1
Rl
RL
ωG1『ωG1R2 ωG2曜ωG2
ωGズωG2 R、ωG2
一ωG1
ωG1一ωG1
ωG2一ωG2 R2
ただし、
2
M
2
M=7㌔=万訪側
M・=一7側
M
M・=一一7側
L、。2L.M側 L、.ム.+M但,
2メゲ
21げ
また
㊤一隻綱 ら一雨(五2−M2)側
五1:固定子自己インダクタンス(H)
五2:回転子自己インダクタンス(且)
丑1:固定子相抵抗(Ω)
島:回転子相抵抗(Ω)
為:励磁リアクタンス(Ω)
品:固定子漏れリアクタンス(Ω)
あ:回転子漏れリアクタンス(Ω)
」P:極数
!:電源周波数(砺
一119一
2.2抵抗増加係数とリアクタンス減少係数
4
3
ミ2
1
0
0
1
2
3
4
肋
図A.6加係数血(協θ=385;廊=38とジ
Z2
1
08
避・6
04
02
0
0
1
2
3
4
陥
図A.7クタンス減少係数血(協θ=385;肋=0,3翻
一120一
2.3 シミュレーションのためのブロック図
E
Vbltage and
Power
■
てbrque of
motor
r111770n十〇r℃
鑑
Motion eq. of motor
〃M
ω班
115
ω乃Tbrque of
Motion eq. of load
load
115
図A.8 始動、運転中、一相欠年時、地絡時のシミュレーションブロック
Vbltage and
”,ゴ
burrent eq.
ヨM
Motion eq. of motor
〃
115
ωL
Motion eq. of load
工brque of
@ load
115
丑
図A.9三相欠相(電源遮断)および二相欠相時のシミュレーション
。121一
2.4 Matlabブロック図
TlME
12:34
Digital Clock
To Worl帽pace
Va
To Wo慮space1
日
Va
Va
Power
Voltage
Vb
Vb
To Wor㎏pace2
VC
Power
To Wo由space3
VC
図A.10 電源
・122・
lM
L
Mux
Clock
Constant
f(u)
×
2★p桝
Mux
Product1
Mux
2★pi13
Con乱ant1
Mux2
Fcn
f(u)
Fcnl
E
×
Produd
1
Gain
Ea
E
×
Product2
Gain1
Eb
Sum1
Mux
十
Sum2
Mux1
f(u)
×
Fcn2
Product3
Step
Step1
Step2
門
Sum
Step3
図A.11三相電圧回路
一123・
ε
Gain2
②
Ec
la
1
Current
Voltage
la
ia
lb
lc
ib
ic
Voltage
WR
8
([ )
10
<i)
lb
lc
ib
ic
Induction Motor
WR2
Current
TMI
ThetaR
ThetaL
WRI
WR
Motion of Motor
Motion of machine
ThetaL
5
WL
WLI
6
TL
TM
'nieteR
m
paA .12
=- ma esgas wh ue
-124-
2
ia
0.0
亀
Gain
ぴ
MuxMATしAB
十
−
FunC踊on
in》1−
Voltage
Ic
1 _
3
Surn
Funα価on
ユ
日
書a3
2 Cu爬nt
伽
Funσ貿on
la1
MUX1
脇
。。含。1
□
lc
2
F・nα1。・
ib
ia
Mux
MAτLAB
b
la
K頭t
□
ia2
[コ
thbar
図A.12誘導電動機の電圧電流方程式
℃
Current
α0
@(=⊃
Functbn
Consヒantg
TM
十
O.0
7Gain
K
や
×
唱
WRl
1S
1S
×
2
ThetaL
1W・・
TM1
Constant6 Product4
Sum4
Sum3
Product2
11u
JM.
WR
thetaR
ThetaR
図A.13 誘導電動機軸の運動方程式
1
TheteR
Funσtion
Constant10
TL
K
令口
1−S
1−S
WL
thetaL
X
X
や
1
Sum6
JL
11u
ThetaL
2
WL1
TU
3
図A.14負荷機械軸の運動方程式
匿125・
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