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ドイツにおける再生可能エネルギーの
導入促進施策等に関する動向調査業務
報告書
平成25年3月
目次
目次
1. ドイツにおけるエネルギー関連法改正動向 ........................................... 1
1.1. ドイツにおけるエネルギー関連の主な制度改正動向(まとめ) ................................................ 2
1.2. ドイツにおけるエネルギー関連政策動向の概要 ......................................................................... 5
1.2.1. ドイツ政府による緊急行動計画(2010 年 9 月) ................................................................ 5
1.2.2. エネルギー転換報告書及び施策の実施状況(2012 年 6 月~)......................................... 10
1.2.3. モニタリング報告書及び進捗状況(2012 年 11 月~) ..................................................... 12
1.3. 再生可能熱法の施行状況 ............................................................................................................ 13
1.3.1. 再生可能熱法の概要 ............................................................................................................ 13
1.3.2. 再生可能熱法報告書 ............................................................................................................ 16
2. ドイツにおける固定価格買取制度の施行状況 ........................................ 23
2.1. 固定価格買取制度の進捗状況 .................................................................................................... 23
2.2. 固定価格買取制度の見直しに向けた動き .................................................................................. 33
2.2.1. 最近の固定価格買取制度変更等の動き ............................................................................... 33
2.2.2. 太陽光発電の買取価格改定の議論 ...................................................................................... 38
3. 参考資料 ....................................................................... 43
再生可能エネルギー法(EEG)新規定の手続草案 .......................................................................... 44
注 1)本報告書では、全篇にわたり原則として以下の為替換算レートを利用
・1ユーロ
(€)
=100ユーロセント(ct) =110円
注 2)本報告書に掲載しているWebサイトのリンクは、2013 年 2 月末時点のもの
1 . ド イ ツ にお け る エ ネ ル ギー 関 連 法 改 正 動 向
ドイツでは、2010 年に「エネルギーコンセプト」に基づき「緊急行動計画」を、さらに 2011
年夏に、既存原子力発電所の段階的停止、再生可能エネルギーの導入促進等に関する一連の
エネルギー関連法案が国会に提出され、審議された。その後の実施期間を経て、2012 年には
いくつかの実施報告が公表されている。
本章では、エネルギー関連法案の背景、審議状況、概要等について、再生可能エネルギー
関連動向を中心として、2013 年 3 月時点で入手可能な情報をもとに整理した。
1
1.1. ドイツにおけるエネルギー関連の主な制度改正動向(まとめ)
2010 年 9 月、ドイツ政府によって長期エネルギー戦略「エネルギーコンセプト(Energiekonzept)
」
が策定されて以来、同コンセプトに基づく行動計画の策定や法案の改正等、エネルギーをめぐる
制度動向は著しい。本項では、2011 年 6 月の法案パッケージの可決から 2012 年 11 月のモニタリ
ング報告書発表までの動向一覧を掲載する。
次ページの表 1 ドイツにおけるエネルギー関連の主な制度改革動向を参照。
2
表1 ドイツにおけるエネルギー関連の主な制度改正動向
緊急行動計画
エネルギー関連法案パッケージ
エネルギー関連改正法案(H23報告書より)
緊急行動計画の実施状況及び今後の方針
エネルギー転換中間報告書 及び 進捗状況
モニタリング報告書及び進捗状況
2010年9月
2011年6月
2011年7月
2012年3月28日
2012年6月1日~
2012年11月9日~
送電系統
4.北海及びバルト海における洋上風力施設のクラスターでの連系
Clusteranbindung
5.新規揚水発電に対する系統費用の免除
Befreigung neuer Speicherkraftwerke
エネルギー経済法改正(解体、系統拡充、スマートメーター)
EnWG-Novelle (Entflechtung,Netzausbau, intelligente Zahler)
エネルギー経済法新規制に係る法 (EnWGÄndG)
Gesetzes zur Neuregelung energiewirtschaftsrechtlicher Vorschriften (EnWGÄ
ndG)
4.北海及びバルト海における洋上風力施設のクラスターでの連系
Clusteranbindung von Offshore-Parks in der Nord- und Ostsee
①エネルギー経済法規制に係る第二次改正法
Zweiten Gesetz zur Neuregelung energiewirtschaftlicher Vorschriften
5.新規揚水発電に対する系統費用の免除
Befreiung neuer Speicherkraftwerke von den Netzentgelten
②エネルギー経済法規制に係る第三次改正法
Dritten Gesetz zur Neuregelung energiewirtschaftlicher Vorschriften
③優遇策調整規則の改正
Novelle Anreizregulierungsverordnung
④システム安定化規則
Systemstabilitätverordnung
⑤電力及びガスの基礎供給規則の改正
Novelle Grundversorgungsverordnung (GVV) Strom und Gas
系統拡充加速法:連邦ネットワーク庁による州及び境界を越える送電線計画、配電線 送電系統拡充加速法に係る措置法(NABEG)
に関する具体的な承認プロセスの方法に関する権限は、連邦政府と州政府の同意の Gesetzes über Maßnahmen zur Beschleunigung des Netzausbaus Elektrizitä
下、規則に応じてネットワーク庁に移管できる;早い段階における一般市民の参加
tsnetze (NABEG)
Netzausbaubeschleunigungsgesetz(NABEG)
連邦容量計画法の閣議決定
Bundesbedarfsplangesetz
電力及びガス接続補償規則の策定に向けた規則案の提出
Storom - und Gasnetzentgeltverordnung
再生可能エネルギー
EEG改正法
再生可能エネルギーによる電力発電促進のための法的枠組み新規制に係る法
(EEG)
Gesetzes zur Neuregelung des Rechtsrahmens für die Förderung der
Stromerzeugung aus erneuerbaren Energien (EEG)
⑥再生可能熱法
EEWärmeG
再生可能熱法実施報告書
EEWärmeG
⑦省エネ規則及び省エネ法の改正
Novellierung der Energieeinsparverordnung und des
Energieeinsparungsgesetzes
省エネ規則及び省エネ法の改正案の提出
Novellierung der Energieeinsparverordnung und des Energieeinsparungsgesetzes
エネルギー効率
委託規則の改正(委託基準におけるエネルギー効率性の強化)
Novelle Vergabe-VO
関
連
法
律
第4次公共委託発注のための法根拠改正法案
Entwurf einer Vierten Verordnung zur Änderung der Verordnung über die
Vergabe öffentlicher Aufträge
エネルギー効率、特に省エネ規則(EnEV)に関する重点課題書
Energieeinsparverordnung(EnEV)
住宅におけるエネルギー関連の改良措置に対する税法上の支援に関する法律原案
(両院協議会で協議中)
Gesetzes zur steuerlichen Förderung von energetischen sanierungsmaßnahmen an
Wohngebäuden
住宅用エネルギー導入のための改良に関する租税特別措置に係る法案 →7月
8日に参議院否決
Gesetzes zur steuerlichen Förderung von energetischen sanierungsmaßnahmen
an Wohngebäuden
⑧エネルギー税・電力税法第二次改正法案
Zweiten Gesetz zur Aenderung des energiesteuer- und des
Stromsteuergesetz
⑨エネルギー消費識別法及び規則の改正
Energieverbrauchskennzeichnungsgesetz und -verordnung
8.テナント保護法令における熱供給契約
Warmeliefer-Contractng im Mietrecht
8.テナント保護法令における熱供給契約
Wärmeliefer-Contracting im Mietrecht
⑩テナント保護法改正法
Mietrechtsänderungsgesetz
発電設備
コジェネ法改正:2020年までのKWK補助の延長、いわゆる二重補助カバーの廃止
Anderung Kraft Warme- Kopplungsgesetz
⑪コジェネ法改正法
Novelle des Kraft-Waerme-Kopplungsgesetz
建築計画法の改正:特にリパワリングの簡易化(新規風力発電施設による旧式の補て
市町村における気候に適合した発展を強化するための法
ん)
Gesetzes zur Stärkung der klimagerechten Entwicklung in den Städten und
Gesetzes zur Förderung der klimagerechten Entwicklung in den Städten und
Gemeinden
Gemeinden
その他
原子力法改正(2022年までに原子力発電設備の段階的な廃止)
Atomgesetz-Novelle
原子力法第13次改正法
13. Gesetzes zur Änderung des Atomgesetzes (Atomgesetz)
特別基金「エネルギー・気候基金」設立に関する法律改正に係る法
Gesetzes zur Änderung des Gesetzes zur Errichtung eines Sondervermögens „
Energie und Klimafonds“ (EKFG-ÄndG)
特別基金「エネルギー・気候基金」設立に関する法律改正に係る法
Gesetzes zur Änderung des Gesetzes zur Errichtung eines Sondervermögens „
Energie und Klimafonds“ (EKFG-ÄndG)
1.洋上施設令
Seeanlagen-VO
1.洋上施設令
Seeanlagen VO
9.二酸化炭素回収貯留(CCS)
CCS
9.二酸化炭素回収貯留(CCS)
CCS
⑫CCS法
CCS-Gesetz
2.洋上風力50億ユーロ貸付プログラム
5Mrd.Kreditprogramm OffshoreWindenergie
2.洋上風力50億ユーロ貸付プログラム
5-Milliarden-Kreditprogramm "Offshore-Windenergie"
⑬KFWによる新たな発電所への投資支援策
3. 系統プラットフォーム
Netzplattform
3. 系統プラットフォーム
Netzplattform
⑭再生エネルギープラットフォームを開設
6.「環境にやさしいエネルギー供給のための系統」に関する情報キャンペー
ン
Informationoffensive "Netz fur eine umweltschonende Energieversorgung"
6.「環境にやさしいエネルギー供給のための系統」に関する情報キャンペーン
Informationsoffensive "Netze für eine umweltschonende Energieversorgung"
7.全国系統拡大計画(EnWG)
Deutschland weite Netzausbauplanung
7.全国系統拡大計画(EnWG)
Deutschlandweite Netzausbauplanung
10.市場透明性機関
Markttransparenzstelle
10.市場透明性機関
Markttransparenzstelle
施策等
施
策
等
⑮10ヵ年送電網開発計画の第2期コンサルテーションを実施
⑯中小企業におけるエネルギー効率化の投資支援策の実施
3
国家送電網開発計画の決定
Netzentwicklungsplan(NEP)
4
1.2. ドイツにおけるエネルギー関連政策動向の概要
1.2.1. ドイツ政府による緊急行動計画(2010 年 9 月)
2010 年 9 月、ドイツ連邦政府は、環境にやさしく、信頼性のある、入手可能なエネルギー供給
のためのガイドラインとして、
「エネルギーコンセプト」と呼ばれる長期エネルギー戦略を公表し
た。同時に、
「エネルギーコンセプト」を具体化する最初の第一歩として、連邦政府は 10 項目の
緊急行動計画を採択した。この行動計画は、2011 年 12 月 31 日までに実施することとなっており、
政府は連邦議会(Bundestag)に対し、本行動計画の進捗について 2012 年 3 月 31 日までに報告を
行うことになっている。また、第一回は 2013 年に、その後 3 年ごとに、政府は「エネルギーコン
セプト」の実施状況について、モニタリングレポートを公表することになっている。
(1) 「エネルギーコンセプト」に基づく 10 項目の緊急行動計画
2010 年 9 月に公表された緊急行動計画の 10 項目は、以下の通りである。
①「洋上施設令(SeeAnIV:Seeanlagenverordnung)」
「洋上施設令」は、開発許可のバンド化(単一化)及び洋上プロジェクトの開発許可の囲い込
みを防ぐため、迅速に改正される予定である。将来的には、投資家が具体的な実施措置(建設計
画、資金計画、スケジュール等)の証拠を提供した場合に限り、開発許可が更新されることにな
る。具体的な実施措置が示されない場合、当該サイトを開発する許可は他の市場プレイヤーに与
えられることになり、実施のための具体的な条件が課されることになる。また、政府は、開発に
当たって必要なすべての許可を含めた単一許可決定を提供したいと考えている。
②洋上風力 50 億ユーロ貸付プログラム
投資家が洋上技術の技術リスクを管理するための必要な経験を得られるようにするため、最初
10 ヶ所の洋上風力発電施設に対し、迅速な建設のための支援が必要である。このため、ドイツ復
興金融公庫(KfW)は、50 億ユーロにのぼる「洋上風力」特別貸付プログラムを実施する。
③系統プラットフォーム
効率的な電力系統を確保するため、政府は、重要な関係当事者である系統運用者および州政府
と対話を行う。そして、連邦経済・技術省(BMWi:Bundesministerium für Wirtschaft und Technologie)
に系統に関するプラットフォームを設置し、これを重要なステークホルダーと情報を交換し、系
統拡大の取組に応じたコンセプトを作っていく常設的な場とする。
5
④北海及びバルト海における洋上風力施設のクラスターでの連系
政府は、北海及びバルト海における風力発電施設のグリッドクラスターへの集約的な連系を促
進するため、
「エネルギー事業法(EnWG:Energiewirtschaftsgesetz)」の関連条文(第 17 条及び第
118 条)の改正を行う。クラスターの構築は、複数の洋上風力発電施設を単一の連系線に連系す
るために必要であり、また、効率的かつ環境にも配慮したものである。
⑤新規揚水発電に対する系統費用の免除
政府は、新規揚水発電施設を適用除外とするため、
「エネルギー事業法(EnWG)」の関連条文を
改正し、特に揚水発電施設とその他の電力貯蔵システムに対し、長期間系統費用が免除されるよ
うにする。本改正により、ドイツにおける新規揚水発電の容量拡大に向けてインセンティブを与
える。
⑥「環境にやさしいエネルギー供給のための系統」に関する情報キャンペーン
政府は、必要不可欠な系統拡大措置への支援を強化するため、国民の理解を得るための情報キ
ャンペーンを行う。
⑦全国系統拡大計画
2011 年における「第三次国内市場パッケージ」を実施する枠組みにおいて、政府は、明確な、
全国系統拡大計画を策定する。10 年にわたる系統増強計画は、系統拡大計画に対する拘束力の基
礎となるべく、今後すべての系統運用者間で調整されることになる。
⑧テナント保護法令における熱供給契約
賃貸部門における省エネを効率的に実現するため、エネルギー契約の範囲を拡大する。政府は、
統一的な熱供給契約の枠組みを構築するよう法案を策定する予定である。
⑨二酸化炭素回収貯留(CCS:Carbon dioxide Capture and Storage)
政府は、二酸化炭素の安全な貯留を試験するための法的基礎を創るため、近い将来、CCSに関
する法案を採択する。必要な経験を得るために設計されたCCSの試験を基に、立法府は今後のCCS
の具体化について決定する。同法では、安全な貯留を確保する、最先端の科学及び技術に基づく
高い予防基準を規定することになる。
⑩市場透明性機関
政府は、電力及びガスの卸取引に対する市場透明性機関を設立する法案を策定する。中央機関
は連邦カルテル庁(Bundeskartellamt)に置くこととし、継続的に市場関連データを収集し、分析
を行う。本機関は、価格形成における不備をより効率的に明らかにすることを目的とする。
6
(2) 緊急行動計画の実施状況報告(2012 年 3 月 28 日)
前項で延べた緊急行動計画に関して、ドイツ政府は、2012 年 3 月 28 日、進捗状況を報告した。
報告内容は以下の通りである。
①「洋上施設令(SeeAnIV)」
洋上施設令については、下記のポイントについて改正を行った。
1.開発許可の単一化を図り、全ての要件に適用される計画確認決定が下されればよいこととな
った。
2.開発地に対する申請手続きの受付をワンストップとする規定を導入した。
3.今後、風力発電設備の操業開始までのすべての手続きについて日程表及び実施計画の作成が
義務付けられる。
4.管轄当局であるドイツ連邦海事水路庁(BSH:Bundesamt für Seeschifffahrt und Hydrographie)
は、期限の設定により手続きの迅速化を促す可能性がある。
5.連邦交通・建設・都市開発省(BMVBS:Bundesministerium für Verkehr, Bau und Stadtentwicklung)
は、連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU:Bundesministerium für Umwelt, Naturschutz und
Reaktorsicherheit)及び連邦経済・技術省(BMWi)と共に、申請書類の処理の順番について、
最良の電力を送電網に供給できる計画を優先的に決定するよう基準を設けることができる。
特に、海岸及び送電線に近い計画を対象としている。
6.ドイツ連邦海事水路庁(BSH)は、洋上における電力網の建設について一時的に手続きを許
可しない、開発凍結の決定を下すことができる。従って、ドイツ連邦海事水路庁(BSH)は、
エネルギー事業法(EnWG)第 17 条 2a項に基づく洋上における電力網開発について、新たな
役割を担うこととなる。
②洋上風力 50 億ユーロ貸付プログラム
2011 年 6 月よりドイツ復興金融公庫(KfW)は 50 億ユーロにのぼる「洋上風力」特別貸付プロ
グラムを実施。既に 2 件のウィンドファームが同プログラムによる金融支援の承認を受けた。こ
れにより、ドイツ連邦議会によって決議されたエネルギー転換の法案パッケージが保証されたも
のとなった。たとえば、ドイツ復興金融公庫(KfW)の洋上プログラムは中小企業にとっても魅
力的である政策であることが周知されている。ドイツ復興金融公庫(KfW)は、現在、プログラ
ムに興味を持つ、特に中小の事業団体の問い合わせを受け付けているほか、貸付申請の処理を行
っている。現在、1 つの申請が決定し、残り 7 件については、近く審査される。
③系統プラットフォーム
2010 年 6 月よりエネルギー、経済、環境、消費者等の各団体の代表者、送電及び配電ネットワ
ーク事業者、連邦政府および主政府とその省庁の参加するプラットフォームを設置。2011 年 2 月
に作業グループを設け、半年毎に会合を開催している。2011 年 11 月以降は連邦議会の全ての党
派の出席する諮問委員会を支援しており、プラットフォーム設置の効果は立法過程にも現れてい
る。プラットフォームは、法律・規則策定に関してより具体的な勧告を行うことを目的にさらに
活動を進める。重要なテーマは、洋上ウィンドファームの系統連系における損害補償問題、系統
の安定を目指した系統拡充緊急事業の実施、送電網の規制、スマートグリッドの拡充など。
7
④北海及びバルト海における洋上風力施設のクラスターでの連系
2011 年 8 月に施行された送電系統拡充加速法に係る措置法(NABEG:Gesetzes über Maßnahmen
zur Beschleunigung des Netzausbaus Elektrizitätsnetze)によって本項目は実施された。エネルギー事
業法(EnWG)の改正により、洋上ウィンドファームの系統連系は集約グリッドとして実施される
ことが法律上も規定された。ドイツ連邦海事水路庁(BSH)は毎年洋上送電計画を公表し、系統
連系させる洋上設備を特定し、連系線として必要な設定を決定する。ドイツ連邦海事水路庁(BSH)
において、初の洋上送電計画を検討予定。
⑤新規揚水発電に対する系統費用の免除
2011 年 8 月のエネルギー事業法(EnWG)の改正法が施行され、新規設置及び容量拡大した揚
水発電施設について操業開始後 20 年間にわたり系統費用が免除されることとなった。また、現在、
太陽光発電の法制度及び再生可能エネルギーの法制度の改正に関する法案が提出されているが、
これは、揚水発電等の新規及び既存の電力貯蔵システムについては、FITサーチャージの負担を免
除されるものである。これにより現在の電力貯蔵を行う事業者に対する法的な曖昧さは是正され、
投資条件も改善される。
⑥「環境にやさしいエネルギー供給のための系統」に関する情報キャンペーン
幅広いステークホルダーの関与の下、プラットフォーム「持続可能なエネルギー系統」のワー
キンググループ「情報キャンペーン及び系統構築のための社会的対話の推進」において、系統建
設を促進する措置を検討・合意した。これによって、情報と対話キャンペーンのコンセプトが構
築され、今後活動が開始される。
⑦全国系統拡大計画
系統運用者は、2011 年 8 月のエネルギー事業法(EnWG)の改正において、2012 年 6 月までに、
共通の系統拡大計画(シナリオ大枠)を作成・提出する必要がある。それに基づく送電網開発計
画(NEP:Netzentwicklungsplan Strom)は、連邦容量計画(Bundesbedarfsplan)の基礎になるもの
であり、定期的に修正され、特に重要な計画については、エネルギー経済上の必要性や緊急性が
判断される。連邦容量計画の原案は連邦ネットワーク庁(Bundesnetzagentur)によって策定され
る。現在、送電網開発計画(NEP)が系統運用者によって策定されている。同作業の終了後は、
連邦容量計画の原案が作成される。
⑧テナント保護法令における熱供給契約
連邦司法省(BMJ:Bundesministerium der Justiz)は、2011 年 11 月、「賃貸住居のエネルギー関
連改修、及び立ち退きの一斉実施に関する法律(Mietrechtsanderungsgesetz)」のドラフト法案を提
出し、州及び連盟に意見聴取した。この法律の策定により、ドイツ民法典(BGB:Bürgerliches
Gesetzbuch)第 556C条(新)には、熱供給契約の切り替えによって、現在契約を結んでいる賃借
人に対し、その同意なしに熱供給コストを課すことができるとする賃貸者の法的要求の項目が挿
入される。これによって、これまでの個別暖房に比べて持続可能な省エネになり、また従来の暖
房費用に比して公平性のあるものとなる。連邦政府は閣僚調整を終了し、州及び連盟の意見聴取
を反映させた内閣決議(政府原案)に移る予定である。
8
⑨二酸化炭素回収貯留(CCS)
2011 年 4 月 13 日、連邦政府は二酸化炭素の分離、運搬、長期貯留技術のデモンストレーショ
ン及び利用に対する法案について可決した。二酸化炭素貯留の実証事業については高度の予防策
及び科学技術の水準が求められる。連邦参議院は、2011 年 7 月 7 日のCCS法の連邦議会の決定を
否決し、政府はその後調停委員会の開催を呼びかけている。連邦政府はCCS法の通過を目指し、
2012 年 3 月現在、連邦及び州が作業グループを作り、妥協の可能性を探っている。
⑩市場透明性機関
連邦経済・技術省(BMWi)は、連邦カルテル庁(Bundeskartellamt)における市場透明性機関設
立に対するドラフト法案を提案し、2012 年 3 月初旬に閣僚調整が開始された。競争上の制限に対
する課題、権限、公開義務は法律内の新たな条項において具体化される。さらに同法では、市場
透明性機関が、国の市場監視機関の課題についても、エネルギー市場の統合性.及び透明性確保に
関するEU規則Nr.1227/2011(draft Regulation on Energy Market Integrity and. Transparency, REMIT)
の範囲内において、統一と透明性を図ることが規定されている。市場透明性機関設立に対するド
ラフト法案は 2012 年 4 月に内閣によって可決され、2013 年に同機関が開設される予定である。
9
1.2.2. エネルギー転換報告書及び施策の実施状況(2012 年 6 月~)
2012 年 6 月、連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU)よりエネルギー転換中間報告書が
公表された。これは、2011 年 6 月に行われた、エネルギー関連法改正パッケージについて、1 年
後の進捗状況及び関連する施策の動向をまとめたものである。報告書における報告概要及びその
他法案の動向については、次ページの表 2 ドイツにおける 2012 年 6 月 1 日以降のエネルギー関
連法改正及び施策状況を参照。
10
表2 ドイツにおける2012年6月1日以降のエネルギー関連法改正及び施策状況
法律または施策名
概要
送電系統
①エネルギー事業法規制に係る第二次改正法
Zweiten Gesetz zur Neuregelung energiewirtschaftlicher Vorschriften
電力及びガス網において競争環境と同様の生産性を向上させるため、セクターごとの生産性ファクターを再導入。
②エネルギー事業法規制に係る第三次改正法の内閣決議
Dritten Gesetz zur Neuregelung energiewirtschaftlicher Vorschriften
主に、法的拘束力を持つ洋上電力網開発計画の導入により、統一的かつ効率的な連系拡充計画へのシステム転換を実施する。これにより将来、電力網と洋上ウィンドファームの接続促進が図られる。さら
に、洋上ウィンドファームとの系統連系の構築と稼働に対する補償規則を整備し、洋上風力エネルギーの拡充におけるコスト管理と透明性を確保させる。
③優遇策調整規則の改正
Novelle Anreizregulierungsverordnung
流動性ギャップ及び財政欠如を避けるため、いわゆる投資措置において、大規模な送電網への投資のリファイナンス開始までの時間ロス(2年間)を廃止する。
④システム安定化規則
Systemstabilitätverordnung
送電系統の周波数が50.2Hzを超過した場合の一斉停電を回避するため、比較的古い10kW規模以上の太陽光設備の変換を指示。
⑤電力及びガスの基礎供給規則の改正
Novelle Grundversorgungsverordnung (GVV) Strom und Gas
供給業者の変更促進のため、エネルギー事業法(EnWG)で定められた3週間に合わせて解約申告期間を短縮した。また、消費者に対し透明性をより高めるための規則を規定した。
再生可能エネルギー
⑥再生可能熱法
EEWärmeG
2012年半ばに、再生可能熱の実施評価と実施報告を作成予定。(その後、2012年12月19日に議会に提出)
エネルギー効率
11
⑦省エネ規則及び省エネ法の改正
Novellierung der Energieeinsparverordnung und des
Energieeinsparungsgesetzes
建築物のエネルギー効率に関するEUガイドラインの改正を受けて改正。
⑧エネルギー税・電力税法第二次改正法案
Zweiten Gesetz zur Aenderung des energiesteuer- und des
Stromsteuergesetz
環境税に関して、製造業に対して供与されている税制優遇である最高負担額調整について、2013年から10年間、有効となる規則が定められている。さらに、企業のエネルギー効率を改善するためのエネ
ルギーマネジメントシステムの導入も義務付けられている。
⑨エネルギー消費識別法及び規則の改正
Energieverbrauchskennzeichnungsgesetz und -verordnung
消費者の購買決定時におけるより有益な情報の提供と効率のよい商品の競争力強化を図る。
⑩テナント保護法改正法
Mietrechtsänderungsgesetz
賃貸物件のエネルギー関連改修に係る規制緩和を図る。初めて改修の法的定義を行い、考慮すべきエネルギー基準を整理した。
発電設備
⑪コジェネレーション法改正法
Novelle des Kraft-Waerme-Kopplungsgesetz
コジェネレーション設備に対する補助の引き上げ、熱供給網への投資支援、蓄熱設備への投資コストの補助。
その他
⑫CCS法
-
⑬ドイツ復興金融公庫(KfW)による新たな発電施設への投資支援策
ドイツ復興金融公庫(KfW)が2012年6月1日より新しい貸付プログラムを開始。同プログラムでは、有利な利率による長期支援で、ガス・蒸気発電及びコジェネレーション設備を開設する公営企業への投資
を支援する。
⑭再生可能エネルギー・プラットフォーム
再生可能エネルギーの拡充には様々な関係者の協力と協調的なアプローチが必要なため、ドイツ連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU)は2012年4月に「再生可能エネルギープラットフォーム」を開設
した。本プラットフォームは、多様な関係者―再エネ部門、電力供給事業者、都市施設局、送電網事業者、州及び自治体等―とさらなる再生可能エネルギーの充実を促進し、さまざまな工程でお互いに協
力し合うための枠組みである。再生可能エネルギー、従来型エネルギー、蓄電、消費分野における協力に加え、再生可能エネルギー拡充及び系統拡充のためのより緊密な協力を重視している。
⑮10ヵ年送電網開発計画
本計画は今後10年間に新設する送電網を示している。シナリオに則って国内の4送電系統運用者が作成したもので、連邦ネットワーク庁によって、点検・コンサルテーションにかけられた後、連邦容量計画
の原案となる。具体的には、推奨される手続きや方法、利用するデータ等を示すと同時に、2022~32年までに必要な最適化や強化、送電網促進のための施策等が含まれている。
⑯中小企業におけるエネルギー効率化の投資支援策の実施
中小企業において、エネルギー効率のよい装置等への転換に対し支援を実施するほか、同プログラムでは、需要の向上及び高効率技術の普及も支援する。また、補助は個々の取組(装置の転換)だけで
なく、複数を組み合わせた省エネ措置にも適用される。2012年10月1日から施行。(連邦経済・技術省輸出局(BAFA:Bundesamt für Wirtschaft und Ausfuhrkontrolle))
1.2.3. モニタリング報告書及び進捗状況(2012 年 11 月~)
2012 年 11 月に、2010 年から推進されてきたエネルギー転換に関するモニタリング報告書が公
表された。これは、エネルギー事業法(EnWG)及び再生可能エネルギー法(EEG:Gesetzes zur
Neuregelung des Rechtsrahmens für die Förderung der Stromerzeugung aus erneuerbaren Energien)に
規定された報告義務に則ったものである。本報告書の情報をもとに、関連所管庁による報道発表
資料を加える形で、関連する法制度及びその概要を記載する。
①連邦容量計画法の閣議決定
2012 年 12 月 19 日、内閣は連邦容量計画法の法案を閣議決定した。本法案は、同年 11 月末に
連邦ネットワーク庁が公表した、送電系統運用者に対する初の国家送電網開発計画の全ての内容
を連邦容量計画に引き継ぐもので、エネルギー経済上の共通目的を持った施策をまとめている。
本法は、送電系統拡充加速法に係る措置法(NABEG)の第二次改正法の一部である。
②電力及びガス接続補償規則の策定に向けた規則案の提出
2013 年 3 月 7 日、連邦経済・技術省(BMWi)は、電力及びガス接続補償規則の策定に向けた
案文を提出した。本案は、必要事項の明確化とともに、接続インフラへの必要な投資に向けた法
的・計画の安全性をもたらすものである。需要家が支払う接続補償の算出をより予測しやすくす
るため、接続費用の算定に関する明確な規則を規定するとしている。また、高圧送電網への投資
のための条件を改善するものである。さらに、接続費用に応じた参加を可能にするため、大規模
電力需要家に対する、消費及び利用時間に応じて段階付けた電力接続補償の導入を目指している。
③再生可能熱法報告書の公表
2012 年 12 月、内閣は再生可能熱法(EEWärmeG:Gesetz zur Förderung Erneuerbarer Energien im
Wärmebereich)に関する連邦政府の初の実施報告書を承認した。本報告の中心は、法に基づく施
策の実施に対する記述及び今後の開発に向けた行動指針である。例えば冷熱に対する最終エネル
ギー利用における再生可能エネルギーの割合を 2020 年までに 14%にする目標に対するコメント
や、新設時の実施オプションのコストやその経済性についても記載されている。報告書に記載さ
れた指針及び検討課題は、今後の本法の改正の基礎となる。※詳細は、本報告書の 16~22 ページを
参照。
④省エネ規則及び省エネ法の改正案の提出
省エネ規則の改正案では、新規建造物に対し、2014 年及び 2016 年の 2 段階に分けた最低効率
化水準の引上げを予定している。既存建築物への基準値の強化、新規建造物の拡充義務は含まれ
ておらず、情報ツールとしてのエネルギー表示がさらに強化される。特に、EU法の基準において
は、エネルギー表示は将来的に審査されるべきとされている。
⑤国家送電網開発計画の決定
送電網開発計画(NEP)は、送電網の容量に応じた新設・改築及び供給安定の保障のために必
要な全体的措置である。送電網開発計画(NEP)は通常、送電系統事業者によって策定され、大
規模なコンサルテーションの後、連邦ネットワーク庁によって公表される。送電網開発計画(NEP)
は連邦容量計画の基礎なるものであり、全部で 36 計画(うち 3 本の南北ドイツをつなぐ電力基幹
線を含む)となっている。
12
1.3. 再生可能熱法の施行状況
本項では、ドイツにおいて 2009 年より施行されている再生可能熱法(EEWärmeG)について、
その概要をとりまとめるとともに、2012 年 12 月に、その進捗状況を報告するために連邦議会に
提出された再生可能熱報告書の要約を紹介する。
1.3.1. 再生可能熱法の概要
2008 年 8 月に公布された再生可能熱法は、熱供給における再生可能エネルギーの利用を拡大す
ることで、温室効果ガスを削減し、気候を保護する目的で、2007 年ドイツが発表した、包括的な
気候保護・エネルギー政策の一施策として制定されたものである。本法の施行により、ドイツは、
熱供給に占める再生可能エネルギーの割合を 2020 年までに 14%とすることを目指している。本法
は 2009 年 1 月 1 日に施行された。
(1) 概要
① 義務対象者
2009 年 1 月 1 日より、新築建造物の所有者は再生可能エネルギーを利用しなくてはならない。
個人、国、企業にかかわらず、全ての所有者がこの義務の対象となる。また、当該建物が賃貸に
出されていたとしても本法の適用対象となる。
なお、義務対象となる新築建造物の所有者は、
「市場促進プログラム」による財政的支援を受け
る資格を有している。
② 対象エネルギー源と達成基準
本法の対象エネルギー源は、太陽熱、地熱エネルギー、空気・水などの周辺熱(ambient heat)
ヒートポンプ、バイオマス(植物油・バイオガス・木質ペレット・木材チップなど)である。建
物所有者は、どのエネルギー源を利用するかについては自由に決定できる。どの再生可能エネル
ギーを利用することが最適であるかは、地域的条件による。再生可能エネルギーの利用を望まな
い者は、建物の断熱効果を高める、地域熱供給システムから熱供給を受ける、あるいはコジェネ
レーションによる熱を利用するといった、他の気候変動軽減策を採用することが可能である(義
務達成の代替手段については、(2)で後述する)。
下表に示す通り、固形バイオマス、地熱、又は空気・水など周辺熱ヒートポンプを利用する者
は、少なくとも熱需要の 50%をこれらエネルギー源によって供給しなくてはならない。同様に、
太陽エネルギーについては熱需要の 15%、バイオガスについては 30%を満たさなければならない。
さらに、当該技術が環境に与える総合的な影響を最小限に抑える目的で、技術要件が定められて
いる。例えば、ヒートポンプの熱生産実績には、一定の季節性能係数(SPF:Seasonal Performance
Factor)が設定されている。
13
表 3 再生可能熱法:対象エネルギー源ごとの達成基準及び技術要件
エネルギー源
達成基準
太陽エネルギー
15%
地熱
50%
周辺熱(空気・水)ヒートポンプ
50%
固形バイオマス
50%
バイオガス
30%
バイオ油
50%
出典)ドイツ連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU)
技術要件
“Solar Keymark” 認証済
効率
効率
効率
コジェネレーション
効率、持続可能性
“Heat from Renewable Energies”
③ 財政的支援
再生可能エネルギーの利用に対し、政府による財政的支援が行われる。政府は、既存の市場促
進プログラムのための財源を年間 5 億ユーロ(550 億円)まで増やす形で、さらなる資金投入を
予定している。これは、設備投資計画が立てやすくなることを意味する。政府による財政的支援
については、
(3)にて詳述する。
④ 熱グリッド
本法により、熱グリッドの拡張がしやすくなる。本法は、地方自治体に対し、気候保護に資す
るように熱グリッドへの接続及び利用について規定を置くよう定めている。
(2) 代替手段
全ての建物所有者が再生可能エネルギーを利用できるわけでもなく、また、利用することが常
に適切とは限らない。従って、再生可能エネルギーを利用する代わりに、同様に気候に優しい他
の対策をとることが可能である。以下のような代替策が認められている。
✓ 廃熱の利用。廃熱の熱生産には既にエネルギーが使われているため、再生可能エネルギ
ーの形態としては認められない。とはいえ、廃熱を「再利用」することはその分の資源
が節約されるため、この方法も妥当だといえる。廃熱を利用する建物所有者は、建物の
熱需要のうち最低でも 50%をこの方法で供給しなくてはならない。
✓ コジェネレーションによる熱の利用。コジェネレーションプラントは電力と熱を同時に
生産するために資源を利用している。コジェネレーションについても、
最低供給量は 50%
と規定されている。
✓ 法律で規定された基準を著しく超えた建物の断熱改修の実施。省エネ令の下に義務付け
られている基準より熱効率を 15%以上向上させて建物を改修した所有者については、当
該建物のエネルギー消費量が著しく低いことから、再生可能エネルギーの利用を義務付
けない。
✓ 地域グリッド又は地域熱供給グリッドへの接続。但し、当該グリッドが、大きな割合で
再生可能エネルギーを利用している、もしくは熱供給量の 50%以上をコジェネレーショ
ンプラント又は廃熱から供給していることを条件とする。
14
再生可能エネルギー及び代替手段のどちらも利用できない所有者については、義務が免除され
る。対策をとることが不当な困難を招く場合、所轄の州当局は、当該建物所有者に対し再生可能
エネルギーの利用義務を免除することができる。
また、再生可能熱法は、建物所有者がとり得る対策の範囲を広く設定している。異なる再生可
能エネルギーを組み合わせて利用したり、複数の代替手段を互いに組み合わせ、かつ再生可能エ
ネルギーと併用して利用したりすることも可能である。
義務達成に異なる手段を組み合わせて用いる場合、再生可能エネルギーのみの利用もしくは代
替手段のみの利用を選択した場合と同じ基準を満たさなくてはならない。太陽エネルギーによっ
て熱需要の 7.5%(規定の 15%ではなく)しか満たしていない所有者は、再生可能エネルギー利
用義務の半分しか果たしていないことになる。従って、残り半分の義務を他の手段によって達成
しなくてはならない。例えば、木質ペレットを利用して規定の 50%の半分=25%を供給する、も
しくは省エネ令によって求められている基準を規定の 15%の半分=7.5%を上回って熱効率を高
める、といった方法がある。
(3) 国による財政的支援
建物所有者は、政府による財政的支援施策である市場促進プログラムによって支援される。2010
年度は、連邦政府の予算削減により、
前年度よりも 3 分の 1 予算が削られた形で 2.65 億ユーロ(318
億円)の予算が配分されたが、5 月にはこの予算を費消してしまい、しばらく補助金は凍結され
た。その後 7 月 7 日に 1.15 億ユーロ(127 億円)の予算が追加されることが決定し、補助金申請
が再開されたところである。
原則として、熱供給のために再生可能エネルギーを利用する者は全て、補助金を受ける資格が
ある。補助金の申請は、連邦経済・輸出管理庁(BAFA:Bundesamt für Wirtschaft und Ausfuhrkontrolle
-連邦経済・技術省(BMWi)の外局)に対して行う。
15
1.3.2. 再生可能熱法報告書
本項では、1.2.3 モニタリング報告書及び進捗状況(2012 年 11 月~)の項で概要を述べた再生
可能熱法報告書からその要約を報告する。
再生可能熱法に関する実施報告書要約(EEWärmeG -Erfahrungsbericht)
EEWärmeG 第18条に基づき、連邦政府により連邦議会に提出
(2012年12月19日)
1.再生可能熱法の効果
再生可能熱法(EEWärmeG)は2009年1月1日に施行された。同法は、新築建造物において再
生可能エネルギーの利用義務を定めた最初の法規定であり、加えて、法的な根拠に基づく市場促
進プログラムによる経済的支援を規定したものである。
再生可能熱法は、成立後3年において既に熱及び冷熱利用に対する再生可能エネルギーの拡充を
大幅に促進した。同法の利用義務は建造物の新築において効果を発揮しているほか、同法におい
て定められた市場促進プログラムも、既存の熱市場、特に建造物の分野における再生可能エネル
ギーの占める割合の増加に貢献している。2011年の熱分野全体における再生可能エネルギーの割
合は、熱の最終エネルギー消費量の約11%、熱及び冷熱においては10.2%に上っている。また、
建造物の分野においては、法規定(再生可能熱法(EEWärmeG)、省エネ規則(EnEV))におけ
る様々な施策と同時に、補助策(市場促進プログラム、CO2建造物改修プログラム)が効果を上
げている。特に再生可能熱法は、再生可能エネルギーの利用促進を目指した設備技術の分野で効
果を発揮しているが、様々な施策が相乗的に効果を上げており、明確に効果を分類することは不
可能である。
1.1.熱市場における再生可能熱法の効果
2009年~2011年の調査によると、少なくとも、全新築建造物の半数が、熱生産に再生可能エネ
ルギーを導入している。非集中型(熱供給網に接続していない)技術の場合には、ヒートポンプ
が最も多く使用されており(新築の27%)、続いて太陽熱設備(同約20%)、固形バイオマス設備
(同約5~7%)である。新規居住用建造物における遠隔暖房への接続数は、2000年以降減少をた
どっていたが、2008年以降再び上昇している。非居住用建造物の分野においては、2008年以降緩
やかな上昇傾向が見られる。
熱供給の全市場と比較すると、新築建造物分野における再生可能エネルギーの市場は、利用義
務の導入によって、再生可能熱法施行前よりも安定して推移している。そのため、利用義務を達
成する必要のある全ての種類の再生可能エネルギーにおいて、新築建造物分野における市場割合
は2008年以降拡大している。
一方、新築率の緩やかな上昇のため、新築建造物分野の再生可能エネルギーの増加に対する影
響はむしろ低い。しかし、ヒートポンプ及び集中バイオマス暖房の分野においては、全体の増加
に対して、新築における増加が著しい。2011年は、増築されたヒートポンプの約60%、集中バイ
オマス暖房の約3分の1が新築建造物である。
16
また、代替措置、とりわけ効率化措置も大きくかつ安定的に成長している。2010~11年には、
新築建造物の約40%で熱回収装置が使用されており、新築建造物の約60%は、非常に優れた効率
水準で、再生可能熱法の代替措置「エネルギーの節約」(第7条)を満たしていた。実際には、第
7条は、再生可能エネルギーの導入と組み合わせられており、予想以上の達成率になっているが、
この進展には、新築建造物に対するドイツ復興金融公庫(KfW)による KfW プログラムの助成
の影響が大きい。
1.2.熱分野への再生可能エネルギーの導入による国民経済への効果
熱供給における再生可能エネルギーの増加は国民経済の観点からも効果的な費用対効果をもた
らしている。
・ 2011年、熱分野では、11%(2011年は再生可能エネルギーによる143億 kWh の熱供給のうち、
133億 kWh は木材による固形バイオマスが占めていた)の熱供給のシェアを達成するのに、
約12億ユーロ(2010年:18億ユーロ、2009年:15億ユーロ)の追加費用が生じた。2011年
及び2010年には、環境負荷の削減(温室効果ガス及び大気汚染物質削減の金銭換算から算出)
という形で、2011年は総額約21億ユーロ、2010年は26億ユーロの(粗)便益をもたらした。
・ 上に引用された追加費用は、金銭換算した温室効果ガスの全削減分の3分の1に相当する。
・ すでに今日、76,000人を超える雇用者が再生可能熱供給の分野(投資、燃料、経営、整備等)
で働いている。これは再生可能エネルギー分野の全ての雇用の約20%にあたる。建築技術及
びコジェネレーション技術、及び関連する業種の国内での付加価値が高まることによって、
熱部門は国内の、特に中産階級かつ手工業の分野において効果的な雇用を確保、創出してい
る。
・ 増築された設備は供給の安全性を高め、化石燃料に対する需要家の依存度を低くしている。
2.行動指針
実施期間が短期間のため、再生可能熱法のあらゆる効果を包括的に分析するのは不可能である。
しかし、新築建造物分野における発展は、利用義務によって再生可能エネルギーの比較的安定し
た市場促進が進んでいることを既に示しており、再生可能熱法の効果が実証されている。
第13条以下による経済的支援の法的規定において、現時点で構造的な変更は必要ではない。補
助の詳細は、さらにガイドラインによって規定されており、既存建造物に対する再生可能エネル
ギーの利用についても更なる効果をもたらしている。今後は、特に、現在まだ慎重な市場促進プ
ログラムの利用が、標準的な熱市場において中期的にどう発展していくのかを注視していく必要
がある。
2.1. 再生可能熱法における行動指針
2.1.1. 利用義務のさらなる発展
新築建造物における市場拡大、技術の発展、学術的研究による知見、再生可能エネルギーガイ
ドラインによる EU 基準や建造物ガイドラインなどに基づき、今後、再生可能熱法において下記
のような変更が加えられることが望ましい。主なものを以下に記載する。
17
技術的考察:
・ 太陽光エネルギー:
短期的には変更は必要ではない。
・ バイオマス:
短期的には変更は必要ではない。
・ ヒートポンプ:
<現状>
建造物の熱及び冷熱エネルギー需要の最低50%をヒートポンプから賄い、再生可能熱法に定め
られた附則Ⅲ(地熱及び環境熱)によるその他の要件を満たしてれば義務は満たしたとされる。
そのためには、特定の品質保証の付いたヒートポンプを使用し、電動ヒートポンプの場合は、基
本的に4.0の最低総合エネルギー効率(COP)を維持しなければならない。熱源を空気より賄うヒ
ートポンプの場合は異なり、総合エネルギー効率要件は3.5である。さらに化石燃料によるヒート
ポンプの場合は、総合エネルギー効率要件は1.2となる。温水の供給がヒートポンプもしくは明ら
かに他の再生可能エネルギーによって行われる場合は、電動ヒートポンプでは総合エネルギー効
率要件が0.2引き下げられる。モデル的な意味合いを持つ公共施設においては、さらに総合エネル
ギー効率要件が0.2引き下げられている。加えて、基本的に、総合エネルギー効率の算出が可能と
なる熱量計測器及び電力計器を備えなければならない。暖房設備の入口温度が摂氏35度以下であ
ることを証明することができる場合には、太陽/水式および水/水式ヒートポンプにはこの証明義務
は免除される。
<今後の指針>
利用義務の履行を目的としたヒートポンプ導入についての規則は効果を上げており、細かな部
分についてのみ変更すべきである。検討の必要な箇所は以下の分野である。
・ 輻射暖房の利用及び総合エネルギー効率に対する証明義務の検討
・ 再生可能熱法外において、設備事業者に対し、稼動中に効率化(総合エネルギー効率
及びその他の重要数値の表示)及び誤作動の排除に資する情報を提供する適切な装置
の検討
・ 技術の発展に応じた最低総合エネルギー効率に関する要件の定期的検討
・ 導入されたヒートポンプの負荷調整問題への適応方法の中・長期的な検討
・ 総合エネルギー効率の算出における、供給された利用冷熱及びそのために使用された
電力算入の検討
・ 代替措置
熱回収:
代替措置については、利用の方法を明確かつ簡素に新しく取りまとめることが望ましい。住居
用建造物と非住居用建造物に対する要件については、様々な建築手法及び技術基準が使用されて
いるため、別個に規定することが重要だと思われる。また評価基準の検討も必要である。
18
・ 遠隔熱及び遠隔冷熱:
<現状>
遠隔熱/冷熱に関する要件は、2011年5月1日、第7条及び附則Ⅷ(以前はⅦ)の変更によって
明確に規定され、建造物と供給網に関する最低要件がある。第一に、第5条、第5a 条、第7条に基
づく再生可能エネルギー、廃熱、もしくは高効率コジェネレーションの建造物に関する義務が履
行された場合、法的義務が履行されたとみなされる。さらに、第8条に基づき、建造物におけるそ
の他の非集中型措置の義務履行との組み合わせも可能である。第二に、供給網に関する要件は、
附則Ⅷに基づき遵守されなければならない。これは、以下の全ての熱及び冷熱供給網において、
導入された割合が以下の場合において遵守されている。
a)再生可能エネルギーが大部分
b)廃熱利用設備が50%以上
c)コジェネレーション設備が50%以上
d)上の a から c までに挙げた措置の組み合わせによる熱が50%以上
熱供給網によって賄われている熱及び冷熱が需要の100%を超えない限り、供給網におけるコ
ジェネレーション、再生可能エネルギーもしくは廃熱の割合が50%以上でなければならない。あ
るいは、再生可能エネルギーもしくは代替措置の利用を目的とした、他の措置との組み合わせが
考えられる。よって、組み合わせの多様性に対する、熱供給網を用いたフレキシブルな解決策が
可能である。
<今後の指針>
・ 現在50%である熱供給網における高効率コジェネレーションの割合について、最低割合の中
期的な引き上げの検討
・ 再生可能エネルギーもしくは廃熱による、熱及び冷熱に関する適切な最低割合の設定の必要
性の検討、及び中期の段階的な引き上げの検討
・ 化石燃料から賄われる新規の熱供給網における熱の最大損失値の基準(15%)の検討
・ 主に再生可能エネルギーから賄われている熱供給網について、今後使用される要件の検討
・ 低温熱供給網の設置に向けた促進策の検討
2.1.2. 実施における検討
・証明手続きの共通化:
証明手続き及び証明検査を共通して行うため、第10条に基づく証明書類は、通例、所轄庁に対
する許可及び免除手続きに対する建築資料の提出の枠組内で提出されるべきである。各州には、
異なる規則を採用する可能性を残さなければならない。提出義務のない建造物においては、証明
期間は暖房装置の使用開始後3ヶ月に変更されるが、既存の証明制度がオプションで継続されるべ
きである。
・再生可能熱法第10条第2項による保存義務の統一化:
バイオマス設備における燃料供給の証明書類の保存期間を統一し、場合に応じて延長する。
19
・様式の統一:
実施費用の軽減のため、第10条に基づく証明、届出、証書の全州における統一様式の導入を検
討する。これに関連する行政規則も規定することができる。
・有資格の専門家による無作為抽出検査:
証明書の公正審査は、第10条に基づき、基本的には、所轄庁による無作為抽出検査によって行
われる。しかし、州政府には、行政規則によって、認定された専門家に本業務を委託する権限が
与えられるべきである。さらに、専門家に対し特別な資格条件が規則に規定された場合には、州
政府は、第10条に定められた証明形式とは別に、認定された専門家による証書を証明審査に含め
るべきである。
・建築関係者に対する情報義務:
建築に携わる関係者(建築家、配線工など)には、新築の場合、それぞれの施工主に対して、
再生可能熱において定められた法的な義務を情報提供するよう義務付けるべきである。
・指示権限:
再生可能熱法では、所轄庁の介入権限を明確にするべきである。
2.1.3.再生可能熱法第13条に基づく経済的支援のさらなる発展(再生可能エネルギー市場促進プ
ログラム)
市場促進プログラムの助成の実施は、再生可能エネルギーの市場導入に重要な刺激となり、今
後も続くであろうことを示している。同時に、安定的な市場発展のためには、信頼性が高い、計
画可能な支援が必要であることも示している。このプログラムは、大規模設備と小規模設備で、
異なった方向に発展している。大規模設備の分野(ドイツ復興金融公庫(KfW)対応、支援の期
限無し)では、安定的な市場の発展が認められている。小規模設備の分野(連邦経済・輸出管理
庁(BAFA)対応、2010年で支援打ち切り)では、支援の一時的な中止が今日までの市場の不安
定さに影響を及ぼしており、他の要素(例えば、太陽光設備の補修増築、経済性考慮)も含めて、
大規模設備のような持続可能な市場発展を妨げている。
信頼性の向上及びその他のツールによる経済的な支援のために以下のような措置が必要である
と考えられる:
・ 市場促進プログラムは、熱市場における再生可能エネルギーの拡充、及び既に安定した化石
燃料技術と比較した、再生可能エネルギー利用の技術競争力の強化に貢献するものである。
一年を通したプログラムの継続性が保証されるよう整備されるべきである。
・ 支援は、優先されるべき気候保全目標の達成のために戦略的に使われなければならない。さ
らに、再生可能エネルギーの導入は最も気候変動に影響を及ぼす分野に、場合によっては、
効率化の可能性がない既存建造物の分野に、中長期にわたって集中的に行われることが必要
である。
20
・ そのため、予算決定者には、相応の法的規制の成立まで、市場促進プログラムの財政を政府
予算及びエネルギー・気候基金(EKF:Energie- und Klimafonds)の資金によって確保し、再
生可能な熱及び冷熱技術の支援が、これまでと同等水準で継続されるよう、同プログラムを
整備することが求められる。同等水準というのは、予算に依存しない刺激策が導入されたか
どうか、もしくは既存建造物が規制上含められるかどうか、には関係がない。
2.1.4.既存建築物への取組み
既存建築物に将来どのように取り組むかは、本報告書の時点で完全に判断することは不可能で
ある。しかし、既に、最初に考えられる行動の選択肢は、本報告書によって示されている。本法
の改正前に着手すべき具体的内容は以下の通りである。
・ 既存建造物に対する行政規制の適用:
新築建造物の要件に応じた、再生可能エネルギーの賄う最低割合の変動や、目標を大幅に達
成した場合における経済的支援に加えて、削減された供給割合による変動などが考えられる。
・ 予算独立型の支援策の導入:
再生可能エネルギーに対する市場促進プログラムによる補助として、予算独立型の支援策を
導入する。再生可能熱の予算独立型支援について、連邦環境省(BMU)は委託調査を実施し、
施策に関する初めての提案を行った。さらに、連邦政府は、2015年からの中期において、熱
分野における支援が、市場を基にした予算独立型の方策で可能になるかどうか、調査を実施
した。特に着目した点は、基本的見地及び憲法に合致した形態、行政に依存しない運営、需
要家価格(特に賃料及び暖房費用)への影響、及び変更の実施費用の適正な見積もりである。
最終的には、これらの提案は、あらゆる専門的かつ法的課題や、可能な形態の詳細が明らか
にはなっておらず、現時点では不可能であると評価された。市場促進プログラムは、本法の
行動の選択肢においては補足的なものであり、高度に革新的な支援や、まだ支援の前段階に
ある技術に制限されるとされた。
・ 市場促進プログラムによる既存建造物の経済的支援以外:
市場促進プログラムは、刺激策として実証されており、将来的に本プログラムがさらに効果
的になるかを検討する必要がある。
2.1.5.熱及び冷熱行動計画の導入
熱及び冷熱供給における再生可能エネルギーの拡充のための関与を高めるため、各州は再生可
能熱法に基づき「熱及び冷熱行動計画」を作成する権限を持つとされる。ここでは、熱分野に対
する再生可能エネルギーの拡充と管理を強化する有効な施策が重要である。本計画の実際の様式
については、市町村及び州レベルで情報が提供されるため、連邦レベルでは提示しない。
2.1.6.その他の指針
・ 統計データ、特に熱生産における再生可能エネルギー分野に関する公式の統計データの整備
・ 電力及び熱市場、国民経済的コストの最小化、環境負荷に関する包括的考察の強化
21
・ 有効な電力負荷調整に伴う、熱及び冷熱市場で消費者向けに提供されるヒートポンプ及びそ
の他の電力の導入に関する研究の推進
・ 産業、共同住宅、及びその他の非居住建造物及び熱供給網における再生可能エネルギーの利
用分野での研究及び市場導入活動の強化
・ 政府のエネルギーコンセプトによって規定された長期的なエネルギー及び気候変動目標への
転換には、「カーボンニュートラルに近い既存建造物」という長期目標や、「総エネルギー消
費量における再生可能エネルギーの割合を2050年に60%にする」とした目標を、熱市場がさ
らに掲げていくことが必要である。
【原典リンク:http://www.bmu.de/fileadmin/Daten_BMU/Download_PDF/eewaermeg_erfahrungsbericht.pdf】
22
2 . ド イ ツ にお け る 固 定 価 格 買 取 制 度 の 施 行 状 況
ドイツでは、再生可能エネルギー法(EEG)に基づく固定価格買取制度を主要な導入促進施策
として、電力分野における再生可能エネルギー導入拡大を図っている。
本章では、ドイツにおける固定価格買取制度について、買取実績やそれに伴う費用負担の動向、
今後の制度見直しに向けた議論の概要等をとりまとめた。
2.1. 固定価格買取制度の進捗状況
次ページ以降に、ドイツの再生可能エネルギー法に基づく固定価格買取制度の施行状況につい
て、直近の買取実績や費用負担、再生可能エネルギー産業への投資・雇用効果等のデータをとり
まとめた。
23
ドイツにおける固定価格買取(FIT
ドイツにおける固定価格買取(
FIT)制度の買取対象エネルギーの導入実績
)制度の買取対象エネルギーの導入実績
• 再生可能エネルギー法による固定価格買取(FIT:Feed-in Tariff)制度のもとで、再生可能発電設備の導入量
が順調に増加。
• 2000年初頭は風力発電と水力発電が大部分を占めていたが、2004年以降、バイオマス発電、太陽光発電の
導入量が急増する傾向にある 2011年における買取電力量のうち 風力発電が50% バイオマス発電が
導入量が急増する傾向にある。2011年における買取電力量のうち、風力発電が50%、バイオマス発電が
25.6%、太陽光発電が21.2%となっている。
• なお、一定規模以上の水力発電、バイオマス発電は、固定価格買取制度の買取対象に含まれていない。
図表1 ドイツにおける固定価格買取制度の対象となる再生可能発電設備容量、買取電力量の推移
発電設備容量(MW)
買取電力量(GWh)
100,000
70,000
24
水力
バイオマス
太陽
60,000
風力
ガス
地熱
80,000
51,364
91,225
風力
ガス
地熱
80,700
75,054
50,000
67,053
買取電力量(G
GWh)
累積設備容量
量(MW)
水力
水力*
バイオマス
太陽
60 077
60,077
42,505
40 000
40,000
31,486
34,661
27,855
30,000
23,923
20,508
20,000
60,000
51,545
43,966
38,511
40,000
24,969
17,270
13 944
13,944
71,149
20,000
10,000
28,418
18 145
18,145
13,854
0
0
2002年
03年
04年
05年
06年
07年
08年
09年
10年
11年
出典)(2010年まで)連邦ネットワーク庁(Bundesnetzagentur) 、
(2011年)エネルギー・水管理事業者協会
(BDEW:Bundesverband der Energie- und Wasserwirtschaft)
2000年 01年
02年
03年
04年
05年
06年
07年
08年
09年
10年
11年
* 2003年実績までは、水力のデータにガスの買取電力量の数値が含まれる
2003年実績までは 水力のデ タにガ の買取電力量の数値が含まれる
出典)エネルギー・水管理事業者協会(BDEW), "Erneuerbare
Energien und das EEG: Zahlen, Fakten, Grafiken (2013)"
固定価格買取制度に基づく買取電力量の推移の要因分析
• 2004年以降のバイオマス発電設備の拡大には、
2004年の再生可能エネルギー法改正による買取
価格引き上げが寄与したと考えられる。
【2004年再生可能エネルギー法改正】
 2004年8月に施行された改正法に基づき、以降
の新規設備に適用する買取価格を改定。
 一定条件を満たした太陽光、バイオマス発電設
備の買取価格が引き上げられた。
図表2 ドイツにおける固定価格買取制度の対象
となる買取電力量の推移(GWh)
エネルギー源
100,000
水力*
バイオマス
太陽
風力
ガス
地熱
91,225
太陽光
80,700
80,000
買取電力量(GWh)
25
60,000
(屋上設置30kW以下)
バイオマス(木材燃焼
75,054
67,053
2004年再生可能
エネルギー法改正
71 149
71,149
設備、150kW以下)
51,545
43,966
38,511
40,000
24,969
20,000
28,418
18,145
13,854
0
2000年
01年
02年
03年
04年
05年
06年
07年
08年
09年
10年
* 2003年実績までは、水力のデータにガスの買取電力量の数値が含まれる
出典)エネルギー・水管理事業者協会(BDEW), "Erneuerbare
Energien und das EEG: Zahlen, Fakten, Grafiken (2013)"
11年
改正前
改正後
(2004年7月)
(2004年8月)
43.4ユーロセント
57.40ユーロセント
9.9ユーロセント
16.83ユーロセント
【バイオマス、太陽光発電設備の実態】
 ドイツの固定価格買取制度では、風力発電以外
ドイ
固定価格買取制度 は 風力発電以外
の各エネルギー源による対象発電設備は、当該
設備の設備容量に応じて、異なる買取価格が適
用される。
 特にバイオマス発電は、比較的に小規模の発電
設備の導入促進を意図した制度設計がなされて
おり、2011年末時点における対象発電設備数は
12,123設備、1設備あたりの平均容量は
444kW。また、太陽光発電も、1,104,437設備、
平均容量が21.7kWと小規模設備を中心とした
導入促進が図られている。
固定価格買取制度に基づく買取総額とサFIT
固定価格買取制度に基づく買取総額とサ
FITサーチャージ総額の推移
サーチャージ総額の推移
• 電力価値を除く再生可能エネルギー法に基づく需要家の負担費用
(以下、「FITサーチャージ」という)の推移を見ると、相対的に買取価
(参考)2000年を基準とした変化率
格の高いエネルギー源(太陽光、バイオマス)の買取電力量の増加
格の高
ネルギ 源(太陽光、 イオ
)の買取電力量の増加
2000年
年 2005年
年 2011年
年
に伴い、増加傾向にある。
100%
322% 1,421%
FITサーチャージ総額
• 2000年を基準とした場合に、2011年は、買取電力量が6.6倍となっ 買取電力量
100%
317%
658%
ているのに対して、FITサーチャージ総額は14倍超に増えている。
図表3 ドイツにおける固定価格買取制度に基づく買取総額の推移
買取総額(電力価値を含む、百万€)
FITサーチャージ総額(百万€)
水力*
ガス
16,000
風力
太陽
バイオマス
地熱
12,500
買取総額(百万
万€)
14,000
1 3 ,182
12,000
1 0 ,780
10,000
9 ,016
7 ,653
8,000
5 ,810
6,000
4 ,499
3 ,612
612
4,000
2,000 1 ,177 1 ,577
0
2 ,226
150,000
1 6 ,735
735
2 ,604
FITサーチャージ総額
F
額(百万€)
26
18,000
水力*
風力
バイオマス
ガス
太陽
地熱
12,475
買取電力量
9,830
10,000
100,000
7,500
75,000
4,606
5,000
2,463
2,500
889
1,139
2000年
01年
2 863
2,863
5,116
5,619
50,000
3,537
25,000
1,664 1,765
0
2000年
01年
02年
03年
04年
05年
06年
07年
08年
09年
10年
11年
125,000
0
02年
03年
04年
05年
06年
07年
08年
* 2003年実績までは、水力のデータにガスの買取電力量の数値が含まれる
出典)エネルギー・水管理事業者協会(BDEW), "Erneuerbare Energien und das EEG: Zahlen, Fakten, Grafiken (2013)"
09年
10年
11年
買取電力量(G
GWh)
15,000
固定価格買取制度に基づくFIT
固定価格買取制度に基づく
FITサーチャージの推移
サーチャージの推移
• 固定価格買取制度に基づく買取総額の増加に伴い
固定価格買取制度に基づく買取総額の増加に伴い、買取に伴うFITサーチャージ単価は、制度導入時の
買取に伴うFITサ チ
ジ単価は 制度導入時の
2000年は0.2ユーロセント/kWhであったのが、2013年には5.277ユーロセント/kWhとなっており、一般的な家
庭需要家が支払う電気料金の18.5%を占めるに至っている。
• 2009年以降、FITサーチャージの費用負担が特に急増する傾向(2009年1.31→2011年3.53ユーロセント)。
• その後、2012年は3.592ユーロセント、2013年は5.277ユーロセントに増加(詳細は後述)。
図表4 ドイツにおける平均的家庭需要家(年間需要3,500kWh)の電力料金単価の推移(ユーロセント/kWh)
発送配電、販売費用
付加価値税
公道使用料金
洋上義務割当
再生可能エネルギー法買取費用(FITサーチャージ)
コジェネレーション法買取費用*
電力税(環境税)
第19条に基づくサーチャージ
27
*コジェネレーション設備を対象とした買取制度に基づく費用
出典) エネルギー・水管理事業者協会(BDEW), “Erneuerbare Energien und das EEG: Zahlen, Fakten, Grafiken (2013)“
固定価格買取制度に基づくFIT
固定価格買取制度に基づく
FITサーチャージの増加傾向に関する要因分析
サーチャージの増加傾向に関する要因分析
• 2009年以降のFITサーチャージの急増要因としては、以下のような要素が挙げられる。
ⅰ)買取電力の平均買取単価の増額 (2000年 8.5ユーロセント → 2010年16.35ユーロセント/kWh)
ⅱ)FITサーチャージ算定の回避可能原価に用いる卸電力取引市場における取引価格の下落
(2009年 68.8ユーロ → 2010年 53.7ユーロ/MWh)
ⅲ)大規模需要家を対象としたFITサーチャージの費用負担免除額増による、その他需要家の負担額増加
図表5 固定価格買取制度に基づくFITサーチャージ
総額と卸電力取引価格の推移
10,000
額(百万€)
FIT
T サーチャージ総額
8,000
2 ,5 0 0
68.8
5 ,1 1 6
5 ,66 1 9
53.7
60
4 ,6 0 6
4,000
40
3 ,5 3 7
2 ,4 6 3
2,000
889
1 ,1 3 9
2 ,8 6 3
1 ,6 6 4 1 ,77 6 5
20
0
01年
2 ,0 0 0
費用負担免除額
(単位:億円)
1 ,5 0 0
1 ,0 0 0
適用企業数
(単位:社)
02年
03年
04年
05年
06年
07年
08年
09年
10年
* 2003年実績までは、水力のデ
2003年実績までは 水力のデータにガスの買取電力量の数値が含まれる
タにガスの買取電力量の数値が含まれる
出典) エネルギー・水管理事業者協会(BDEW), “Erneuerbare
Energien und das EEG: Zahlen, Fakten, Grafiken (2011)“
FITサーチャージ
単価の増額に伴
う差額の拡大
500
0
2005年
0
2000年
3 ,0 0 0
80
57.0
卸電力取引価格の下落によ
り
りFITサーチャージ増額
サ
ジ増額
6,000
100
9 ,8 1 9
風力
ガス
地熱
卸電力取引価格
卸電力取引価格
格(€/MWh)
28
水力*
バイオマス
太陽
図表6
費用負担を免除される企業数と免除額の推移
2008年
2009年
2010年
2011年
【単位:ユーロセント/kWh】
2005年
2011年
一般需要家に課されるFITサーチャージ
0.54
3.53
減免措置を実施しなかった場合のFITサーチャージ
0.51
2.96
出典) ドイツ連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU)
【参考情報】
参考情報】ドイツにおける卸電力取引市場の価格推移①
• 再生可能エネルギー法に基づくFITサーチャージの算出にあたっては、制度開始当初は各電力小売事業者に
よる実際の平均電力購入費用を用いることとなっていたが、2009年改正法によって、卸売電力取引市場(欧州
エネルギー取引所、EEX:European
取 所、
p
Energy
gy Exchange)の1年物先物価格(ベースロード)の平均値(対象年
g )
年物先物価格(
)
均値(対象年
の2年前の10月1日から前年の9月30日までの取引期間の平均値)を用いることが可能となった。
• 2009年をピークに卸電力取引価格が下落傾向であり、FITサーチャージ増額の要因となっている。
図表7 欧州エネルギー取引所(European Energy Exchange)における卸電力取引価格の推移(ユーロ/MWh)
Phelix ベースロード(スポット)
29
ベースロード先物(10~9月平均)
2010年以降、
卸電力取引価
格が下落傾向
出典) ドイツ連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU)
【参考情報】
参考情報】ドイツにおける卸電力取引市場の価格推移②
• 2012年
2012年、2013年も卸電力取引市場の価格は50ユーロ/MWh前後で推移しており、太陽光発電やバイオマス
2013年も卸電力取引市場の価格は50ユ ロ/MWh前後で推移しており 太陽光発電やバイオマス
発電による買取電力量の増加に伴い、再生可能エネルギー法に基づくFITサーチャージの総額は引き続き増
加傾向にある。
電力価格*****
(ユーロ/MW
Wh)
30
FITサーチ
チャージ総額((百万ユーロ)
図表8 再生可能エネルギ
再生可能エネルギー法に基づくFITサーチャージ総額と欧州エネルギー取引所における卸電力取引価格の推移
法に基づくFITサ チャ ジ総額と欧州エネルギ 取引所における卸電力取引価格の推移
地熱***
太陽光
バイオマス**
風力(陸上)
水力
電力価格****
風力(洋上)
*2012年分で、市場プレミアム、調整プレミアム、太陽光自家消費及び変動プレミアムの費用を含む(2012年合計:14億3000万ユーロ)
**バイオガス、埋立ガス、メタンガスを含む固形、液体、ガス形状のバイオマス
***目視のできない地熱(2012年:1500万ユーロ)
****FITサーチャージ総額算出のための電力価格は、2009年までは前年のPhelixベースロード先物平均(7月1日~6月30日)、2010/11年は市場予測に基づき計算。
2012/13年は前年のPhelixベースロード先物平均(10月1日~9月30日)
出典) エネルギー・水管理事業者協会(BDEW), “Erneuerbare
Energien und das EEG: Zahlen, Fakten, Grafiken (2013)“
再生可能エネルギー関連産業の状況①
• ドイツでは、連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU)が、委託調査を通じて、再生可能エネルギー分野へ
の投資額や関連産業の雇用効果(推計値)を算出、公表している。
• 再生可能エネルギー設備への投資額は増加傾向にあるが、2010年の内訳を見ると、太陽光発電設備への投
資が195億ユーロと大部分を占めている。
• 但し、2011年に入ると太陽光関連の投資額が減少し、全体でも減額の傾向にある。
図表9 ドイツにおける再生可能エネルギー設備への投資額と内訳(推計)
2010年推計:279億ユーロ
投資額(10億€)
31
30 再生可能
再生可能エネルギーへの投資額
ネルギ
の投資額
再生可能エネルギ
再生可能エネルギーへの投資額
への投資額
26.4
再生可能電力分野への投資額
25
22.0
23.2
23.4
20
16 5
16.5
15
10
5
12.7
6.8
500 850
950
20.3
2,500
9.9
19,500
0
2004
2005
2006
2,450
18.6
12.5
9.4
1,150
13.7
10.6
8.8
84
8.4
水力
地熱*
太陽熱エネルギ
太陽熱エネルギー
バイオマス(熱)
バイオマス(電力)
風力
太陽光
2007
2008
2009
2010
2011
単位:100万ユーロ
*地熱には大規模設備とヒ トポンプが含まれる
*地熱には大規模設備とヒートポンプが含まれる
出典) ドイツ連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU)
再生可能エネルギー関連産業の状況②
図表10 ドイツにおける再生可能エネルギー関連産業の雇用創出効果
96,100
102,100
風力
85,700
63,900
122,000
128,000
119,500
バイオマス
56,800
120,900
32
80,600
太陽エネルギ
太陽エネルギー
49,200
25,100
7,600
7,800
8,100
9,500
水力
増加分: 約129 %
(2004年~2010年)
13,300
14,500
10,300
地熱
1,800
7,500
6,500
4,500
3,400
公的支援研究
/管理
0
20,000
40,000
60,000
160,500
雇用
277,300
雇用
2004
2007
80,000
100,000
339,500
雇用
367,400
雇用
2009
2010
120,000
140,000
* 2009年、2010年は、暫定的な推計値
年
年は 暫定的な推計値
出典) O’Sullivan/Edler/van Mark/Nieder/Lehr: "Bruttobeschäftigung durch erneuerbare Energien im Jahr 20010 – eine erste Abschätzung", as at: March 2011;
interim report of research project „Kurz- und langfristige Auswirkungen des Ausbaus erneuerbarer Energien auf den deutschen Arbeitsmarkt“
2.2. 固定価格買取制度の見直しに向けた動き
ドイツでは、2011 年 8 月 4 日付け官報で、「2012 年再生可能エネルギー法改正法」が公布され
た。主な改正事項は以下のとおり。
(1) 導入目標の長期化・引き上げ
改正法第 1 条において、再生可能エネルギーによる発電の割合を、2020 年までに 35%、2030
年までに最低 50%、2040 年までに最低 65%と段階的に引き上げていき、2050 年には最低 80%に
するという目標を設定している(現行法では、2020 年に少なくとも 30%)。
(2) 市場プレミアム制度オプションの導入
今回の改正を受けて、再生可能エネルギー発電事業者には、従来どおりの固定価格での売電に
加えて、発電電力を直接市場で販売し、規定の計算式に従って算出される市場プレミアムを受け
取るオプションが導入された。なお、2014 年以降、2012 年以降に新規稼動したバイオガス発電設
備は、固定価格での売電することはできず、市場プレミアム制度に基づく買取オプションのみが
選択可能となる。
(3) エネルギー源別の買取価格改定
上述の進捗報告書における発電コスト分析等の評価に基づき、2012 年以降の新規設備に適用す
る買取価格の改定が行われた。主な改定の方向性は以下のとおり。
・陸上風力:新規設備に適用する買取価格の年低減率を、1%から 1.5%に引き上げ
・洋上風力:通常よりも高い買取価格を短い期間適用する「前払いモデル」の導入
・バイオマス:複雑な買取価格帯を簡素化し、買取価格水準を平均 10~15%引き下げ
新設の廃木材の焼却発電や液化バイオマス発電を、買取対象から除外
・太陽光: 2012 年以降、半年ごとに買取価格を調整する仕組みを導入(2011 年同様)
・地熱:買取価格を全体的に引き上げ
・水力発電:新規設備に適用する買取価格低減の廃止
(4) 大規模需要家を対象とした費用負担軽減措置の対象企業の拡大
費用負担軽減措置の対象要件について、1 需要サイトにおける年間電力使用量のしきい値を
10GWh超から 1GWh超に引き下げるなど、対象企業の範囲を拡大した。あわせて、年間電力使用
量の大きさに応じて、軽減措置によって支払うべきFITサーチャージ額をスライド式に決定する方
式に変更し、対象企業と非対象企業の差が大きくならないような配慮を行った。なお、2012 年 1
月 1 日に関連条項が施行されるため、2013 年からFITサーチャージの減免が適用される(対象企
業の申請締切:2012 年 6 月 30 日)。
本項では、こうしたドイツにおける最近の固定価格買取制度に関する改定動向をとりまとめる。
2.2.1. 最近の固定価格買取制度変更等の動き
2010 年以降の主な制度改定の動向は以下のとおり。
33
最近の制度変更等の動き①:【
最近の制度変更等の動き①:
【2012
2012年以前
年以前】
】太陽光発電の買取価格の改定
• ドイツの再生可能エネルギー法に基づく固定価格買取制度は、投資の安定性を保証する観点から、法令で規
定された年低減率に則して、翌年以降の買取価格を低減させていく仕組みを基本としている。
• 2009年改正法では、太陽光発電についてのみ、前年の新規導入設備容量実績に応じて、適用する買取価格
を調整する仕組みを導入した しかし 太陽光発電の導入量が予想を超えて急増したこと それに伴い電力
を調整する仕組みを導入した。しかし、太陽光発電の導入量が予想を超えて急増したこと、それに伴い電力
需要家のFITサーチャージ負担額が急増したことを受けて、2010年に改正法を制定し、7月、10月の2回にわ
たって買取価格の緊急的な引き下げが行われた。
• 以降、半年ごとに直近の導入量に応じて買取価格を調
整する仕組みが導入されたが、買取価格改定の前月に
累積設備容量
年
増加分
(MW)
(MW)
は、駆け込み需要が発生する傾向がある。
(参考)FITサーチャージの内訳と単価の推移
34
2011年FITサ チ
2011年FITサーチャージ
ジ
2012年FITサ チ
2012年FITサーチャージ
ジ
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
合計
10,136
10,300
10 631
10,631
11,085
11,658
13,767
14,430
14,794
15,448
15,783
16,148
17,292
222
163
331
454
573
2,109
663
363
654
335
365
1,143
7,378
【参考】設備数
7,248 ← 買取価格引き下げ
6,533
16 883
16,883
20,654
24,297
<緊急実施>
65,062
20,670 ← 買取価格引き下げ
11,832
27,843
<緊急実施>
12,527 ← 買取価格引き下げ
12,435
23,749
249,733
2011
1月
2月
3月
4月
5月
17,558
17,658
17
658
17,805
18,004
18,375
266
100
147
199
371
5,601 ← 買取価格引き下げ
3,680
3
680
6,336
9,515
18,876
陸上風力
洋上風力
合計
出典) エネルギー・水管理事業者協会(BDEW), “Erneuerbare
Energien und das EEG: Zahlen, Fakten, Grafiken (2011)“
(参考)太陽光発電設備
の設備容量の推移
670
951
843
1,271
1,950
3,794
2010
太陽光
バイオマス
他エネルギー源
435
1,105
2,056
2 899
2,899
4,170
6,120
9,914
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
出典)連邦ネットワーク庁(Bundesnetzagentur)
最近の制度変更等の動き②:大規模需要家を対象とした費用負担軽減措置の改定
• 再生可能エネルギー法に基づく買取費用(FITサーチャージ)の増額に伴い、費用負担軽減措置の対象需要
家と、軽減措置対象外の需要家の負担額との格差が大きくなってきたことを一因として、2012年1月施行の改
正法で、以下の制度変更を実施。
ⅰ)対象企業の範囲を拡大 :年間電力使用量のしきい値を10GWhから1GWhに引き下げ
年間電力使用量のしきい値を10GWhから1GWhに引き下げ
ⅱ)年間電力使用量に応じて軽減措置の対象とする電力量をスライド式に決定
• 本制度改正に伴い、FITサーチャージ費用負担軽減措置の対象事業者(2011年:592事業者)が大幅に拡大
する見込みとなっている(改正法は、2013年のサ チャ ジ負担から適用)。
する見込みとなっている(改正法は、2013年のサーチャージ負担から適用)。
図表11 ドイツにおける中圧供給需要家※の電力料金単価の推移
35
※契約電圧が年間最大電力100kW (6万kWh) ~ 年間最大電力 4,000kW
4 000kW (2,000万kWh)
(2 000万kWh)
発送配電、販売費用
再生可能エネルギー法買取費用(FITサーチャージ)
コジェネレーション法買取費用*
公道使用料金
電力税(環境税)
洋上義務割当
第19条に基づくサーチャージ
図表12 制度改正前後における対象要件の
しき 値に近 需要家 FITサ チ
しきい値に近い需要家のFITサーチャージ負担額
ジ負担額
※FITサーチャージ単価を3.53ユーロセントと仮定した場合
年間電力
改正前
改正後
軽減措置
使用量
9GWh
10GWh
9GWh
の対象有無
×
○
○
10GWh
○
(参考)
FITサーチャー
ジ総額
317,700 €
39,800€
63,540€
負担軽減額
0€
313,200 €
254,160 €
67,070€
285,930 €
対象事業者と対象外事業
者の差が非常に大きかった
ことが課題となった
*コジェネレーション設備を対象とした買取制度に基づく費用
出典) エネルギー・水管理事業者協会(BDEW), “Erneuerbare Energien und das
EEG: Zahlen, Fakten, Grafiken (2013)“
最近の制度変更等の動き③:2012
最近の制度変更等の動き③:
2012年
年4月1日以降の太陽光発電の買取価格改定
• 2012年2月24日に、ドイツ連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU)及び連邦経済・技術省(BMWi)は、再
生可能エネルギーの固定価格買取制度のうち、太陽光発電に関して改定案を発表。
• 閣議決定を経て、ドイツ連邦議会、連邦参議院で審議されたが、両院協議会に委ねられた。
• 2012年6月27日に両院協議会で合意がされ、2012年4月1日に遡って改正法を施行。
【改正の主な内容】
 2012年4月1日以降の新規太陽光発電設備に適用する買取価格を20~29%引き下げ。
2012年4月1日以降の新規太陽光発電設備に適用する買取価格を20~29%引き下げ
 屋上設置の中規模クラス(10~40kW)の買取価格区分を新設。
 設備容量10MW以上の太陽光発電設備は買取対象から除外。
36
 2012年4月1日以降に系統連系す
る10~1,000kWの設備は、買取対
象電力量を年間発電量の90%に
制限する(2014年から制限開始)。
 2012年5月から買取価格の改定頻
度を半年毎から月ごとに変更。5~
10月は毎月1%ずつ引き下げ。
 11月以降は、新規設備の導入状況
に基づいて引き下げ幅を決定し、官
報に公示。
 累積設備容量が52GWに達した時
点で固定価格による買取を終了。
但し、その後設置される設備に対し
ても優先給電・優先買取は保証。
図表13 ドイツにおける2012年4月以降の新規太陽光発電の買取価格改定
単位:ユーロセント/kWh
形態
屋上設備
露地設備
出力
10kWまで
40kWまで
1MWまで
10MWまで
10MWまで
買取量
100%
90%
90%
100%
100%
19.50
18.50
16.50
13.50
13.50
12.74
12.74
2012.04.01~
稼働
買
取
価
格
以降毎月1%引下げ
2012.10.01~
18.36
17.42
15.53
稼働
2012 11 01~
2012.11.01
2012年7月 8月および9月の実績による
2012年7月、8月および9月の実績による
稼働
(2012年10月31日までに官報で告示)
最近の制度変更等の動き④:2013
最近の制度変更等の動き④:
2013年の再生可能エネルギー法サーチャージと制度改定議論
年の再生可能エネルギー法サーチャージと制度改定議論
• 2012年10月15日に、ドイツ連邦経済・技術省(BMWi)は、ドイツ国内の電力系統運用者4社から報告を受け、
再生可能エネルギー法に基づく2013年以降の再生可能エネルギー法に基づくFITサーチャージが1kWhあた
り3.592セントから5.277セントに増額となることを公表。
• この公表に先立って、2012年10月11日、連邦環境相は、再生可能エネルギー法に基づく固定価格買取制度
の抜本的見直しに向けた手続きの草案を公表。
• 今後、2013年6月の改正法案作成に向けて作業が進められる予定。
37
【改革の主な内容】
 2050年に電力供給の80%を再生可能エネルギー源とする現行目標は維持(2020年目標は35%から40%に修正)。
 太陽光発電に設定されている累積導入量の買取上限について、風力・バイオマスについても設定することを検討。
太陽光発電に設定されている累積導入量の買取上限について、風力 バイオマスについても設定することを検討。
 上限枠の設定とあわせて、十分な買取価格の低減規則を設けて、再生可能エネルギー市場化の加速を目指す。
【改革の基本原則】
 市場経済の原則に則した法律とする。市場プレミアム制度や自家消費の拡大による市場への統合を検討するととも
市場経済の原則に則した法律とする 市場プレミアム制度や自家消費の拡大による市場への統合を検討するととも
に、競争入札制度やクオータ義務付け制度が適しているかも検討する。
 個別の再生可能エネルギー源が不利益を被らないように「テクノロジー・オープン」なものとする。
 供給の安定性という観点を考慮。特に様々なエネルギー源によるポートフォリオを組むことを促進。
 計画の安定性を考慮し、頻繁な改正や突然の方針転換を回避できるような制度構築。
計画の安定性を考慮し 頻繁な改正や突然の方針転換を回避できるような制度構築
【改革に向けた工程表】
 2012年11月から2013年5月末まで、設定されたテーマ別に、ステークホルダーでの対話を進めて、2013年6月以降に
再生可能エネルギー法の改正法案を議会に提出することを目指す。
2.2.2. 太陽光発電の買取価格改定の議論
ドイツでは、2010 年以降、太陽光発電の買取価格について、絶えず見直しの議論が行われてい
る。以下では、2009 年以降の新規太陽光発電設備に適用する買取価格改定の動向をまとめる。
(1) 太陽光発電:導入実績に応じた買取価格低減率の調整(2009 年改正法)
再生可能エネルギー法 2009 年改正法から、太陽光発電設備についてのみ、前年の新規導入設備
容量に応じて、適用する買取価格を調整する仕組みが導入された。あらかじめ定められたしきい
値となる設備容量との対比において、次年度に適用する買取価格が調整される。
例えば、2010 年に新規稼働する太陽光発電設備については、2008 年 10 月 1 日~2009 年 9 月 30
日の 1 年間の新規導入設備容量が 1,500MWを超過した場合には、買取価格低減率を既定よりも 1%
増やし、逆に 1,000MWに満たない場合には低減率を 1%減少させることが定められていた。当該
期間における 1 年間の新規導入設備容量は約 2,340MWとなり、したがって 2010 年新規設備に適
用する買取価格の低減率がそれぞれ 1%増えることとなった。
(2) 太陽光発電:導入設備容量の急増に対応した緊急買取価格見直し(2010 年 7 月実施)
上述の再生可能エネルギー法 2009 年改正法に基づく既定の買取価格をさらに引き下げる形で、
2010 年 7 月以降に設置する新規太陽光発電設備に適用する新たな買取価格を定めた再生可能エネ
ルギー法改正法が、2010 年 8 月 17 日に、官報に公布された。
2010 年 5 月に連邦議会で承認された改正法案では、2010 年 7 月以降に設置される新規太陽光発
電設備について、例えば屋根設置型の設備ではさらに 16%、適用する固定買取価格を引き下げる
ことを予定していた。しかし、その後に連邦参議院での反対を受けて両院協議で修正され、7 月
から 10 月までに 13%、10 月以降さらに 3%を段階的に引き下げることとなった。太陽光発電設
備に適用される買取価格の推移は下表のとおり。
表 4
2010 年に稼動開始する太陽光発電設備に適用する買取価格
エネルギー源
屋根設置型
自家消費分
オープンスペース
30kW以下
30~100kW
100~1,000kW
1,000kW超
自家消費率
30kW以下
30~100kW
100~500kW
区分なし
2009 年
43.01
40.91
39.58
33.00
2010 年
1~6 月
39.14
37.23
35.23
29.37
-
-
25.01
買取
対象外
31.94
22.76
買取
対象外
28.43
出典)連邦ネットワーク庁資料をもとに作成
38
単位:ユーロセント/kWh
対象設備稼働年
2010 年
2010 年
7~9 月
10 月~
34.05
33.03
32.39
31.42
30.65
29.73
25.55
24.79
30%
30%
30%
30%
未満
以上
未満
以上
17.67
22.05
16.65
21.03
16.01
20.39
15.04
19.42
14.27
18.65
13.35
17.73
25.02
24.26
なお、本改正において、自家消費分については、30kW以上の発電設備にも買取の適用範囲が拡
大され、500kW未満の設備まで適用となった。買取価格は、年間の自家消費率によって異なり、
自家消費率 30%をしきい値として異なる価格が適用される。
また、2010 年に改正された新法では、翌年の低減率を増減させる年間の導入設備容量のしきい
値を 3,000MWとし、3,000MWから前年の導入設備容量が 500MW増えていくごとに(例:3,500MW)
低減率を+1%(2011 年)もしくは+3%(2012 年)、500MW減るごとに低減率を-1%(2011 年)も
しくは-3%(2012 年)とすることを規定していた。
本見直しは、議会に提出される再生可能エネルギー法の進捗報告書の提言に基づく、定期的な
買取価格の改定プロセスとは異なる緊急的な措置である。
(3) 太陽光発電:導入実績に応じた買取価格低減率の調整(2012 年改正法)
2012 年 1 月 1 日以降に稼働する新規設備に適用される再生可能エネルギー法 2012 年改正法で
は、太陽光発電の買取価格低減について、以下のように規定している。
表 5
再生可能エネルギー法 2012 年改正法での太陽光発電の買取価格低減規定
再生可能エネルギー法2012年改正法 第20条a 太陽光発電の買取価格低減
(1)
第32条および33条の買取価格は、2011年12月31日以降に稼動を開始した施設での発電電
力に対し、第2項から7項に従って低減する。
(2)
第32条および33条の買取価格は、第3項および4項を留保して、2012年から毎年1月1日付
で、それぞれ前年の1月1日に適用されていた買取価格に対して9%低減する。
(3)
第2項の低減率は、2012年以降、以下のとおり上昇する:それぞれ前年の9月30日までに、
第17条2項1号により過去12ヶ月内に登録を行った施設の設備容量が
1. 3,500メガワットを上回る場合、3.0%、
2. 4,500メガワットを上回る場合、6.0%、
3. 5,500メガワットを上回る場合、9.0%、
4. 6,500メガワットを上回る場合、12.0%または
5. 7,500メガワットを上回る場合、15.0%である。
(4)
第2項の低減率は、2012年以降、以下のとおり減少する:それぞれ前年の9月30日までに、
第17条2項1号により過去12ヶ月内に登録を行った施設の設備容量が
1. 2,500メガワットを下回る場合、2.5%、
2. 2,000メガワットを下回る場合、5.0%、
3. 1,500メガワットを下回る場合、7.5%である。
(5)
第32条および33条の買取価格は、2012年以降、それぞれ1月1日より適用されている買取
価格に対し付加的に、それぞれの年の6月30日以降、翌年の1月1日前に稼動する施設での電
力に対し低減する:これは前年の9月30日以降、それぞれの年の5月1日前の、第17条2項1
号により登録された施設の設備容量に、12を乗じて7で除した場合、
1. 3,500メガワットを上回る場合、3.0%、
2. 4,500メガワットを上回る場合、6.0%、
3. 5,500メガワットを上回る場合、9.0%、
4. 6,500メガワットを上回る場合、12.0%、または
5. 7,500メガワットを上回る場合、15.0%である。
出典)再生可能エネルギー法 2012 年改正法をもとに作成
39
2010 年に実施された法改正時と同様に、買取価格低減を調整するしきい値は、1 年間に新規登
録された設備容量 3,000MWとしている。登録設備容量実績としきい値が±500MWより乖離した場
合には、買取価格の低減率が調整される。また、半年ごとの買取価格調整の仕組みも導入されて
おり、前年の 10 月 1 日から当該年の 4 月 30 日までに新規登録した設備容量に応じて、7 月 1 日
以降に稼働する新規設備に適用する買取価格が調整される。
2009 年改正法以降の太陽光発電設備に適用する買取価格低減率の変遷は以下のとおり。
表 6
2009 年改正法以降の太陽光発電設備に適用する買取価格低減率の変遷
※下線が実際に適用された低減率
基準低減率
2009年1月施行
再生可能エネルギー法
2010年7月施行の改正法
(2011年に適用)
2012年1月施行の改正法
屋根設置型 100kW未満:
年率-8% (2010年)
年率-9% (2011年~)
年率-9%
年率-9%
前年1年間に登録した施設
の設備容量が下記を超えた
場合、翌年の低減率をそれ
ぞれ追加
前年1年間に登録した施設
の設備容量が下記を超えた
場合、翌年の低減率をそれ
ぞれ追加
上記以外(オープンスペース等)
年率-10%(2010年)
年率-9%(2011年~)
低減率を拡大
する場合
前年1年間(2年前の10月
1日~前年の9月30日ま
で)の新規導入設備容量
が下記を超えた場合、翌
年は低減率を1%追加
1)2009年に1,500MW
2)2010年に1,700MW
3)2011年に1,900MW
低減率を縮小
する場合
前年1年間の新規導入設
備容量が下記に満たな
い場合、翌年は低減率が
1%減少
1)2009年に1,000MW
2)2010年に1,100MW
3)2011年に1,200MW
1)3,500MW:1%
2)4,500MW:2%
3)5,500MW:3%
4)6,500MW:4%
(-10%)
(-11%)
(-12%)
(-13%)
1)3,500MW:3% (-12%)
2)4,500MW:6% (-15%)
3)5,500MW:9% (-18%)
4)6,500MW:12%(-21%)
5)7,500MW:15%(-24%)
前年1年間に登録した施設
の設備容量が下記に満たな
い場合、翌年の低減率がそ
れぞれ減少
前年1年間に登録した施設
の設備容量が下記に満たな
い場合、翌年の低減率がそ
れぞれ減少
1)2,500MW:-1%(-8%)
2)2,000MW:-2%(-7%)
3)1,500MW:-3%(-6%)
1)2,500MW:-2.5%(-6.5%)
2)2,000MW: -5% (-4%)
3)1,500MW:-7.5%(-1.5%)
出典)各種資料をもとに作成
なお、ドイツの再生可能エネルギー法では、太陽光発電についてのみ、電力市場の規制機関で
ある連邦ネットワーク庁に固定価格買取制度の対象設備の登録簿が設置されている。固定価格買
取制度の適用を受ける太陽光発電設置者は、この登録簿への登録申請が義務付けられている。
この登録簿の実績データに基づいて、連邦ネットワーク庁は、連邦環境・自然保護・原子力安
全省(BMU)および連邦経済・技術省(BMWi)と合意のもと、毎年 5 月末、10 月末までに次の
半期に登録される新規太陽光発電設備に適用する買取価格を、ドイツ官報に公布することが義務
付けられている。
40
表 7
連邦ネットワーク庁による太陽光発電の買取価格公表に関する規定
再生可能エネルギー法2012年改正法 第20条a 太陽光発電の買取価格低減
(6) 連邦ネットワーク庁は、連邦環境・自然保護・原子力安全省および連邦経済・技術省と合
意のもと、連邦官報に以下を公布する
1. それぞれ10月31日付で、第2項に付随して第3項および4項により翌年に適用される低減
率および、その結果として得られる、それぞれ翌年1月1日より適用される買取価格、
2. 第5項によりそれぞれ5月30日付で決定する低減率、およびその結果として得られる、そ
れぞれの年の7月1日以降に適用される買取価格
出典)再生可能エネルギー法 2012 年改正法をもとに作成
各期に適用する
買取価格
図 1 連邦ネットワーク庁ホームページにおける太陽光発電の買取価格の公表方法1
2011 年 10 月 24 日、連邦ネットワーク庁は、2010 年 10 月 1 日から 2011 年 9 月 30 日に登録簿
に登録された太陽光発電設備容量が約 5,200MWであると公表した。この実績に基づき、2012 年 1
月 1 日以降の新規設備に適用する買取価格は、2011 年の適用価格から 15%低減した価格となる。
表 8
2011 年、2012 年に稼動開始する太陽光発電設備に適用する買取価格
エネルギー源
屋根設置型
自家消費分
オープンスペース
30kW以下
30~100kW
100~1,000kW
1,000kW超
自家消費率
30kW以下
30~100kW
100~500kW
区分なし
単位:ユーロセント/kWh
対象設備稼働年
2011 年
2012 年 1~3 月
28.74
24.43
27.33
23.23
25.86
21.98
21.56
18.33
30%未満
30%以上
30%未満
30%以上
12.36
16.74
8.05
12.43
10.95
15.33
6.85
11.23
9.48
13.86
5.60
9.98
21.11
17.94
出典)連邦ネットワーク庁資料をもとに作成
1
http://www.bundesnetzagentur.de/cln_1912/DE/Sachgebiete/ElektrizitaetGas/ErneuerbareEnergienGesetz/
VerguetungssaetzePVAnlagen/VerguetungssaetzePhotovoltaik_Basepage.html?nn=135464
41
(4) 太陽光発電:買取価格の緊急見直し(2012 年 4 月施行)
2012 年 2 月 24 日に、連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU)及び連邦経済・技術省(BMWi)
は、新規の太陽光発電設備を対象とした固定買取価格のさらなる改定案を発表した。新規太陽光
発電設備に適用する買取価格を 20~29%引き下げるとともに、設備容量 10MW以上の太陽光発電
設備は買取対象から除外すること、買取価格の改定頻度を半年ごとから月ごとに変更等が提案さ
れた。
本改定案は、ドイツ連邦議会において、買取価格引き下げの施行日を 2012 年 4 月 1 日にするな
どの修正を経て、2012 年 3 月中に承認を得た。しかし、連邦参議院が、ドイツ連邦議会において
承認された再生可能エネルギー法改正案の審議を一時的に停止し、両院協議会を招集してさらな
る審議を行うこととなった。
2012 年 6 月 27 日に、ドイツ連邦議会とドイツ連邦参議院の代表者によって構成される両院協
議会において、新規の太陽光発電設備を対象とした買取価格を改定する再生可能エネルギー法改
正案について合意が成立し、連邦官報での公布を経て、2012 年 4 月 1 日に遡って改正法が施行さ
れた。主な改正内容は以下のとおり。
・2012 年 4 月 1 日以降の新規太陽光発電設備に適用する買取価格を 20~29%引き下げ。設備
容量 10MW以上の太陽光発電は買取対象から除外。
・買取対象の屋根設置設備に対する新たな出力区分として 10~40kWの区分を導入し、買取価
格を 18.5 セント(20.4 円)/kWhに設定。
・2012 年 4 月 1 日以降に系統連系する 10~1,000kWの設備は、買取対象電力量を年間発電量の
90%に制限する。但し、買取量の制限の開始は、2014 年 1 月 1 日以降となる。
・買取対象とする太陽光発電設備の累積導入目標値を 52GWとし、目標達成以降の新規設備は
買取対象外となる。一方で、系統への優先接続・アクセスは、その後の新規設備にも保証さ
れる。
表 9
ドイツにおける 2012 年 4 月以降の新規太陽光発電の買取価格改定
単位:ユーロセント/kWh
形態
屋根設置
出力
~10kW
10~40kW
40~1,000kW
1~10MW
~10MW
100%
90%
90%
100%
100%
買取量
買取価格
オープンスペース
(稼動時期)
2012年4月1日~
19.50
18.50
16.50
13.50
13.50
5月1日~
19.31
18.32
16.34
13.37
13.37
6 月 1 日~
19.11
18.13
16.17
13.23
13.23
7 月 1 日~
18.92
17.95
16.01
13.10
13.10
8 月 1 日~
18.73
17.77
15.85
12.97
12.97
9 月 1 日~
18.54
17.59
15.69
12.84
12.84
10 月 1 日~
18.36
17.42
15.53
12.71
12.71
11 月 1 日~
17.90
16.98
15.15
12.39
12.39
12 月 1 日~
17.45
16.56
14.77
12.08
12.08
2013 年 1 月 1 日~
17.02
16.14
14.40
11.78
11.78
2 月 1 日~
16.64
15.79
14.08
11.52
11.52
3 月 1 日~
16.28
15.44
13.77
11.27
11.27
4 月 1 日~
15.92
15.10
13.47
11.02
11.02
出典)連邦ネットワーク庁
42
3 . 参考 資 料
43
再生可能エネルギー法(EEG)新規定の手続草案
2012 年 10 月 11 日に、連邦環境大臣が公表した「再生可能エネルギー法に基づく固定価格買取
制度の抜本的見直しに向けた手続きの草案」の暫定訳は以下のとおり。
2000年の再生可能エネルギー法(EEG)可決以降、同法は、ドイツにおける再生可能エネルギ
ーの普及に大きな役割を果たし、今では電力供給の約25%までをまかなうようになった。ドイツ
の再生可能エネルギー法は50か国以上の国々で、類似規定の模範となっている。その点で、再生
可能エネルギー法は成功例であり、同法に寄せられた期待に十分応えたといえる。
しかし、現在までの到達水準では、現行の再生可能エネルギー法がエネルギー転換のさらなる
拡充を促す状況にはないことも明らかである。問題点は以下のとおりである。
・買取価格の低減に関する規定が不十分であるため、支援過剰による誤った(予算)配分と、再
生可能エネルギー賦課金が著しく上昇するという事態が、短期間のうちに生じる。それは、再生
可能エネルギーが速やかに市場性を獲得する上でも支障となる。すなわちエネルギー転換が実施
された場合、コスト上昇が避けられず、国民および企業の負担となる危険がある。国民経済が責
任を負い、その支払いができる場合にのみ、エネルギー転換は成功するものである。
・さらに現行の再生可能エネルギー法は、再生可能エネルギーの量的拡充のみをめざしており、
再生可能エネルギーの質的組成の向上、開発の速度、地域配分または従来型エネルギー電源や送
電網の拡充との組み合わせには影響力を持たない。
・エネルギー転換のこれまでの経過における本質的な問題のうちの一つであるが、公共レベルと
民間レベルの参加者間における調整が不十分である。
電力供給における再生可能エネルギーの比率が限られた範囲にとどまっていた間は、上述の欠
陥はさほど重大な事態をもたらさなかったが、再生可能エネルギーが迅速かつ順調に拡大してい
くほど、その重要性はより高まっている。
したがってこれまでの修正や適合の枠を超えた、再生可能エネルギー法の根本的改革が必要で
ある。改革なしでは、今後数年間のエネルギー転換は成功しない。
この手続草案により、再生可能エネルギー法の新規定をめぐる政治的議論が着実に進み、、近い
将来、広く議会および社会全般に支持される、中長期的に持続性のある一つの成果をもたらすこ
とになる。
1. 改革の目標設定:
新しい再生可能エネルギー法によって、個々の再生可能エネルギー種に対する考察に代わり、
エネルギー転換とその効果に関する全体的考察が必要になる。
したがって再生可能エネルギー法は、将来下記の項目のための中心的手段となる。
・ あらかじめ定められた範囲内での再生可能エネルギーの、不断かつ将来を見据えた拡充、
・ 可能な限り迅速な市場力・競争力の獲得、
・ 地域的調整、
・ 再生可能エネルギーの拡充と送電網拡充との適合、
・ 再生可能エネルギーの拡充と従来型エネルギー電源との適合
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これらの目標は、達成に必要な手段が整っていなかったため(各州および自治体の計画法がか
ろうじてあったが、その枠を超えたアプローチは認められなかった)、これまで実現が不可能だっ
たが、新しい再生可能エネルギー法によってはじめて実現可能となる。
2. 改革の内容:
・ 新しい再生可能エネルギー法により、再生可能エネルギーの拡充の時間的・量的目標が法
により確定される2。
・ その際、2050年には電力供給の80%を再生可能エネルギーとする目標3を維持する。再生
可能エネルギーの最小拡充目標の35%が2020年に達成されるだけでなく、それを大幅に
超過するだろうという見通しが現在あるので、最小拡充目標は調整され、40%をめざす
ことになる。
・ 過剰な進行を避けるため、2020年までの(そして2050年までの)再生可能エネルギーは、
可能な限り同じ速度で拡充をすすめる。草案の拡充目標では、近い将来に国内総生産の
通常の成長を上回るとする。ただし拡充の速度を上げれば、コストの大幅上昇と供給網
への統合に支障が出ると思われる。
・ 一般的な拡充目標設定のほかに、個々のエネルギー種に対する特別な考慮も必要である。
先の再生可能エネルギー法改正法時に、太陽光発電設備に対し発電量が52GW に達した
時点で買い取りを終了する、と法律で定めたため、風力やバイオマスに対しても類似の
枠設定が考えられる。これは十分な買取価格の低減規則と合わせれば、市場力と競争力
の獲得を大いに早める可能性がある。
・ 法定拡充目標の承認により、エネルギー転換を無理に規制することへの疑念は最終的に
取り除かれた。連邦政府だけでなく議会も各党議員団もこのプロジェクトを共に望み、
推進しようとしていることが、国内外のあらゆる人々に対し明確となった。
・ 同時に、法によって市場力の獲得が目標として承認された。これにより、エネルギー転
換が成功するためには、再生可能エネルギーが延々と補助金に依存するべきではないこ
とが明確となった。こうしたことが革新とコスト削減をめざす重要なシグナルとなった。
・ 再生可能エネルギーの拡充と送電網拡充との適合、および従来型エネルギーの状況への
配慮は、新しい再生可能エネルギー法が地域的管理を行う可能性を内包している場合に
のみ、成果を出すことができる。発電設備の増設が多い地域では再生可能エネルギー法
は付加価値の著しい上昇をもたらすため、これは(東西連邦州間の、南北間の)
「公正な
分配」を実現するためにも利用できる。
・ 再生可能エネルギー法の構築にあたっては、負荷管理の重要性が増していることも考慮
に入れる必要がある。
・ 短期的・中期的に見て独自の「エネルギー貯蔵法」が可決される可能性は低いため、再
これは、促進手段(固定価格買取制度など)により達成される目標であることを強調しておきたい。ある種類の
再生可能エネルギーが市場に参入できるだけの強さを獲得した段階で、そこから先の拡充は法によってではなく、
市場によって定められることになる。
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こうしてドイツ連邦政府の再生可能エネルギー構想において、はじめて目標が定められた。
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生可能エネルギー拡充のために重要となるエネルギー貯蔵の観点は、新再生可能エネル
ギー法で合わせて考慮する必要がある。
3. 改革の基本原則:
・ 再生可能エネルギー法は、上述の目標と内容の達成が可能である限りにおいて、とくに
市場経済の原則に立たなければならない。その際とくに吟味すべきなのは直接販売と、
その結果としての市場統合が強力に進められるかどうかである。これらは、市場プレミ
アムや自家消費の拡大などにより、実現できる。しかし入札モデルや割り当てモデルな
どが適しているかどうかも、吟味されなければならない。
・ しかし、新しい再生可能エネルギー法は、いずれにせよ「テクノロジー・オープン」で
なければならない。そのためモデルの選択によって、個々の再生可能エネルギー種が排
除または著しい不利益をこうむることがあってはならない。こうしたテクノロジーの開
放原則は、個々のエネルギー種の発展可能性が、早い時期に切り捨てられるのを避ける
ために重要である。
・ 供給の安定性という観点が(規定の重点がエネルギー事業法にあるとしても)、新再生可
能エネルギー法により考慮されなければならない。これは再生可能エネルギーの拡充を
戦略的備蓄(2018年頃から、特にドイツ南部で行われる)の拡充とともに考えるという
ことである。さらに安定的な供給のために、さまざまなエネルギー種の組み合わせを促
進することが考えられる。
・ 誤った(予算)配分とコスト発生を避けるためには、計画の安定性が非常に重要な意味
を持つ。そのため再生可能エネルギー法は、頻繁な改正や突然の方向転換を回避できる
よう、構築されなければならない。
4. 改革の諸条件:
・ まず必要なのは、拡充目標と拡充対象の絞り込みを政治的に確定することであり、新し
い再生可能エネルギー法はそれを確実に遵守しなければならない。
・ それには今後10年から15年という見通し可能な期間内に、それぞれの拡充目標に関する
各連邦州間の合意を取り付けることも含まれる。未調整の拡充計画が原因で、送電網拡
充のために大幅な追加コストの発生と過剰消費を避けるためにも必要なことである。他
の連邦州への販売用に定められた電力には、実際に購買者が確保されているなど、保証
がされていなければならない。
・ 2013年当初に連邦送電網需要計画を可決するには、送電網拡充の必要性を明らかにしな
ければならない。また、拡充目標および拡充速度を定めたうえで、緊急に実現されるべ
き送電網に優先順位を設けなければならない。それには欧州電力市場をより強力に結合
するという観点も考慮する必要がある。
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5. 改革の進展/進行表:
・ このような大規模な改革は、根本的な政治的議論と専門分野における入念な準備を必要
とする。
・ 問題の複雑さと利害の多様性(財政的、経済的、地理学的、分野など)にかんがみ、調
停委員会での手続の可能性について不確実性を回避するために、合意的な手続を目指さ
なければならない。
・ 専門分野での準備のために、
(連邦経済・技術省(BMWi)との共同議長職就任および各
連邦州および関係者の適切な参画のもと)連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU)
の「再生可能エネルギー」プラットフォームが用意されている。現在そこで、各連邦州
の拡充計画の調整および送電網拡充と、再生可能エネルギーの拡充を適合させる作業が
行われている。
・ 加えて入札モデルの有意義性などの、個々のテーマについての具体的な委託研究が行わ
れている。
・ 政治的議論は一般市民に対し影響力を持つ対話シリーズ(「再生可能エネルギー法に関す
る対話」)により、告知される。そこでは影響を受ける人々、関係者、市民、市民専門家
が、問題点、論争点、決定時のオプションについて、早期に包括的に議論することにな
る。2012年11月から2013年5月末までに、以下のテーマで合計5つの討論会が実施される。
1. 太陽光電池-市場性獲得への道、
2. バイオガスの潜在能力とその役割、
3. 陸上および洋上の風力エネルギー、
4. 貯蔵(再生可能エネルギーの貯蔵法(Power to gas)を含む)、
5. 拡充の道筋、シナリオ、モデル、コスト。
再生可能エネルギー法に関する対話ではレジュメが準備され、インターネットによる経過報告
もなされることになる。各討論会の後で、具体的な結論が導かれた場合、それが公開される。
・ 再生可能エネルギー法に関する対話は、各連邦州、議会、ならびに経済界などからの20
名までのアドバイザーグループによる助言を受けて、ヒアリングが行われる。
・ エネルギー転換遂行のためのモニタリング報告の決議は、改革プロセスのための本質的
な基礎となる。
・ 時間をかけて、各連邦州間、および連邦との政治的コンセンサスを形成する。
・ 連邦送電網需要計画の決定は、ドイツ連邦議会の決議により成立する。
・ 討論会シリーズ終了後、論争となった問題点に様々な解決方法を掲げた法案がまとめら
れる。この法案は、個々の問題についての合意形成がされ次第、連邦議会に提出可能と
なる。
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