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新光産業株式会社

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新光産業株式会社
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廃棄物処理先進事例調査
平成2
7年7月2
4日(金)13:
00より本会収集運搬部会の先進事例調査事業として吸引車両
タンクメーカーである株式会社タンクテックのライニング加工を担う、新光産業株式会社東
工場を訪問し、フッ素樹脂ライニングの製造ラインを視察・調査した後、特徴等について丁
寧かつ詳細な説明を受けました。
新光産業株式会社
第1
4回
山口県宇部市厚南中央二丁目1番14号
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p/
■概
社
要
名
新光産業株式会社
本社所在地
山口県宇部市厚南中央二丁目1番14号
TEL0836451111/FAX0836452535
工
東工場(山口県宇部市大字沖宇部5265番地)
西工場(山口県宇部市大字際波1640番地の1)
場
支店・営業所
東京/大阪/広島/九州/沖縄
従 業 員 数
330名
創業/設立
昭和10年10月8日/昭和39年2月1日
営 業 種 目
1.土木・建設設計施工、舗装工事
2.橋梁、水門、クレーン、除塵機、鋼構造物等設計製作及び据付
3.油圧フランジ、クランプ継手、セラミック等の精密研磨加工、
住宅基礎鉄筋ユニットの製造販売、フッ素樹脂ライニング加工、
超高真空機器の設計、製作、据付
4.圧力容器、医薬品・食品機械装置、マイクロバブルの設計・製作
5.電気・計装・コンピュータシステム開発
(同社ホームページより抜粋)
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■沿
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革
昭和10年10月
昭和20年11月
昭和22年01月
昭和22年03月
昭和24年11月
昭和31年10月
昭和36年03月
昭和37年02月
昭和37年07月
昭和39年02月
昭和39年02月
昭和39年08月
昭和40年09月
昭和41年02月
昭和42年10月
昭和45年11月
昭和49年12月
昭和53年04月
昭和53年10月
昭和54年02月
中沖之山炭鉱創業(宇部式組合組織)爾来山口、福岡、長崎県下に20数炭鉱を経営
新光製作所新設(現・機械事業部)
宇部新光製鋼所新設(旧・AMT事業部)
以上2事業所をもって宇部新光工業組合(宇部式組合組織)を組織
大阪営業所開設
同系地下部門7組合と合体して古谷鉱業株式会社に改組、資本金2億4千万円
宇部新光製鋼所フランジ工場竣工
建設事業部新設
九州営業所開設
上記地上部門事業所を古谷鉱業株式会社から分離して新光産業株式会社設立、資本金1
億2千万円
建設事業部鉄構工場新設
東京営業所開設
古谷鉱業株式会社解散
広島営業所開設
アスファルト合材製造開始
資本金を2億4千万円に増資
資本金を3億円に増資
本社事務所を居能町から厚南区中野口へ移転
鉄構工場を鉄構事業部として建設事業部から分離
沖縄営業所開設
昭和57年06月 オーストラリアビクトリア州ヒート、トランスファー・ビューティワイ社とスピフレッ
クス(熱交換器)の製作、販売につき技術提携
昭和58年10月 ファインケミカル(F・C)エンジニアリング事業部を設置
昭和59年07月 住宅用基礎鉄筋ユニットミレニアムベース製造販売を開始
平成04年01月 セラミックス研磨加工棟竣工
平成04年03月 本社新社屋新設
平成07年03月 妻崎寮新館新設
平成08年07月 防府営業所開設
平成12年10月 建設事業部にリフォーム専門店舗「リファイン際波」を開設
平成14年04月 鉄構事業部を建設事業部に統合
平成15年03月 ロトフロン※加工ライセンスを取得し製造販売を開始
平成17年04月 機械事業部とAMT事業部を統合し、機械事業部とする
平成17年10月 リファイン際波を株式会社クルスに統合
平成21年04月 メカトロ部を建設事業部から分離し、EI
Cソリューション部を新設
平成23年04月 開発グループを機械事業部から分離し、新事業開発部を新設
平成24年04月 鉄構部を建設事業部より分離し、鉄構事業部を新設
(同社ホームページより抜粋)
※ロトフロンとは?
粉体を加工対象基材(以下「基材」)の中に入れ、炉内において二軸+α方向に回転させながら焼成し、
皮膜を形成させる加工方法。この方法では加工面の表面積により必要皮膜を調整し、継ぎ目のない樹脂層
を作り出すことができる。詳細は、「ロトフロンの特徴」の項で説明。
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■フッ素樹脂ライニングについて
フッ素樹脂を基材に溶融させ、耐熱性・耐薬品性・低摩擦性・非粘着性・絶縁性等の優れた性質を兼ね
備えるライニングを施した仕様をいう(「テフロン」は、デュポン社が製造するフッ素樹脂の登録商標で
あるが様々な商品名も存在する)。
フッ素樹脂加工の多くは数μm薄膜厚コーティングであり、一般家庭でもよく知られる焦げ付きがない
フライパン等が代表的だが、新光産業株式会社(以下「新光産業」)は、数少ない最大8mm程度の厚み
までライニング可能であるほか、大型装置への加工を得意とする。
またフッ素樹脂ライニングは、酸、アルカリ、有機溶剤、油脂類等の耐薬品性に優れているため、産業
廃棄物輸送タンクの他に様々な薬品を利用する食料品製造業、化学工業、電子部品・デバイス・電子回路
製造業等にも幅広く利用されている。
ライニング一例(同社ホームページより抜粋)
フッ素樹脂ライニングの代表的な施工方法を以下に示す。
以降、先に述べた「ロトフロン」を中心に説明する。
内容
施工概要
施工法
ロトフロン
シートライニング法
静電粉体塗装法
機械による自動焼成
熟練職人の人手による
熟練職人の人手による
熟練職人の人手による
皮膜の厚み
0.
5~8㍉程度まで
調整可能
シートの厚み(2~3㍉)
最高でも0.
8㍉以下
成型パイプの厚み
密着・剥離
焼付けのため強固
衝撃、高温で剥離
層間剥離が心配
最初から剥離したまま
薄膜のため進行が早い
パイプ厚みの性能の分
浸透性
焼付けと厚膜により耐性は
溶接部などが心配
強
継ぎ目
継目無しの一体皮膜
シートとシートの継目を溶
継目無し
接
継目無し
不問
複雑形状は困難
フランジ付直管だけ
耐衝撃性
熱的、物理的衝撃にも強い
弱い。特に溶接部に問題あ
関係なし
弱い。層間剥離の恐れあり
り
元々密着してない
後加工性
機械加工・部分補修ともに
機械加工不可、部分補修可 機械加工・部分補修不可
可
不可
負圧使用
焼付けのため強い
使用不可
基材の形状
基本的に不可
形状は限定
使用可
施工仕様比較一覧(同社ホームページより抜粋)
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ルーズライニング法
基材内面に継目無しの厚膜 シートを接着剤で貼り付け 塗装ガンで粉体を吹き付け 直管の中に成型パイプを押
を焼付ける
継目を溶接する
焼成を繰返し皮膜を重ねる し込み、両端をフレア加工
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■ロトフロンの特徴
ロトフロンの最大の特徴は、フッ素樹脂溶融のために基材を局部加熱するのではなく、焼成機内全体を
加熱し、基材の加熱温度分布を均一にして加工することにある。焼成設備内に基材を固定し、フッ素樹脂
粉末を投入し、二軸+α方向に回転させながら加熱させ、樹脂を溶融し、基材内面に皮膜が形成される。
他のライニング加工と比較して、①基材に密着しない、②ピンホールの要因となる溶融ガスの残留、③熱
膨張・熱収縮が激しい、④層間剥離、⑤隙間間腐食等の問題を抑制することが可能となる。
この施工方法を「ロトライニング」といい、製法特許の加工法に独自の加工ノウハウを加えてライニン
グした商品が「ロトフロン」である。
(執筆者作成)
従来の施工技術イメージ
ロトフロンライニングイメージ
【化学プラント】
蒸留塔、吸着塔、反応塔、交換塔、濾過槽、凝集塔、分離器、
ロトフロンの主な用途
脱脂槽、一般配管類、三次元配管、ヘッダー管、遠心分離器
【貯槽】
鍍金槽、受槽、ホッパー、スクラバー、精錬槽、ストレーナー、
電解槽、撹拌槽
【その他】
サニタリー管、フェノール管、コンテナ、ローリータンク、ポ
ンプケーシング、バタフライ弁、ダイヤフラム弁、半導体関連
機材、目皿、攪拌機、ミキサー
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生産体制
ロトフロンの加工焼成機を三機有し、要求される基材により使用する機器を選定している。
焼成機/ROTO2565
焼成機/ROTO1620
焼成機/ROTO0708
ライニングフロー
フッ素樹脂は非粘着性、離型性に優れた材料であることから基材内部にブラスト処理し、凹凸をつけ、
プライマー(接着剤の役割)を塗布し、溶融したフッ素樹脂を密着させている。皮膜中の泡を除去した後、
表面調整し、加工面が滑らかになった時点で冷却・硬化させることによって、機器類の形状を問わず強密
着で継ぎ目の無い厚膜のライニング層を得る加工法である。ライニングする対象物サイズの大小にかかわ
らず同じ施工時間を必要とする。
①基材受け入れ
・ライニング施工基材を受け入れ、数量その他を確認
②基材検査
・検査基準に沿って、寸法・溶接・その他異常がないか確認、必要に応じ欠陥補修処
置
③空焼・脱脂
・油分その他異物等を除去
④下地処理
・密着力増強、異物除去、ライニング面活性化を目的に表面ブラスト処理、プライマー
処理実施
⑤ライニング
・ロトフロンライニングを実施
⑥皮膜仮仕上げ
・トリミング、フランジ面の粗仕上げ後、自主検査を実施
皮膜検査
・皮膜最終本仕上げの上、塗装・酸洗い等を実施
最終本仕上げ
・検査記録等の提出図書の作成
⑦養生/梱包/出荷
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・施工箇所を緩衝材等で養生梱包し出荷
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施工限界
品名
直径(mm)
長さ(mm)
タンク類
φ2500
6500
配管類
φ2000
5500
挿入管・撹拌翼
φ1000
3000
目皿・平板
φ2000
-
配管口径別
最大膜厚(mm)
最大長さ(mm)
20A
1.
0~1.
5
500
25A
1.
0~1.
5
1500
40A
1.
0~1.
5
3000
50A
1.
0~1.
5
5000
65A
3.
0~
5500
フッ素樹脂原料および投入方法
ETFE、PFA、FEP仕様によりそれぞれ専用プライマー・フッ素樹脂原料が使用され、国内フッ素樹脂
製造事業者より共に購入している。フッ素樹脂は要求されるライニングの厚みから加工総面積を乗じて計
算し、フッ素樹脂粉体投入量を決定し、焼成機の中心にセットされた基材の開口部一部にノズルブラケッ
トをセットし、焼成機外接にフッ素樹脂のバケットを接続し投入される。またフッ素樹脂は二軸+α方向
に回転する加熱加工面に触れることにより粉体から液状となり、ロトフロンライニングが形成される。
フッ素樹脂原料(粉体)
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焼成機の実地調査
新光産業の厚意により、ロトフロンライニング加工済
みの基材を固定した状態で運転を停止した焼成機
(ROTO2565)の内部および仮運転状況について調査を
行うことができた。本施設は国内最大規模の装置である
(右写真)。
焼成機の内部では横軸回転するH綱枠が設けられ、ライニングの厚みを均一化する必要があることから
基材を治具とH綱アングルによって焼成機中心位置に固定していた。基材の大きさや長さや形状が様々で
あることから、固定方法も多種多様であるとのことである。
本施設へは、前段(「ライニングフロー」の節)で述べた「②基材検査」を経た後にセットされ、「⑥皮
膜検査」を終えるまで固定された状態で運用されている。理由は検査結果においてロトフロンの不良箇所
等が発生していた場合に再度装置を熱入れし、「⑤ライニング」を行うためである。
基材の開口部には治具が設けられノズルブラケットと同様に、開口面に要求されるリブライニング長さ
を確保し、余助材と一体型で完成され、後にカットし研磨仕上げを行われていた。
装置両側面部は回転板が設けられているほか、正面側側面にはフッ素樹脂原料のバケットを複数箇所か
ら選定し、接続できるよう工夫されている(下写真)。
本装置は深さ4mのピット内に設置されている(下写真)。理由は本体が最大60度角まで左右に傾斜す
ることにより複雑な二軸+α方向のライニング加工を与える環境を整える為であった。なお、本施設内を
直接燃焼させる熱源はLPGガスを採用している。
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焼成機より撤去された基材は天井クレーンで移動され、開放口の治具を外した状態を確認することがで
きた(下写真)。余助材のカットは一般的なカッターで行われた後に小口を研磨処理し仕上げを行う。ま
た焼成機(ROTO2565)の内部に設置された治具材等を撤去し、実際にロトライニング加工時と同稼働
状況を拝見する機会を得た(右下写真)。
■質疑応答
Q.建設業を主体とした事業活動を行われているが、どのような背景から製造業を行うこととなったのか?
A.現在では主体事業売上6割が建設事業となっているが、当東工場においてはロトフロン製造のほかに
住宅用基礎鉄筋ユニットを山口県、広島県、福岡県の住宅メーカーへ製造販売している。当社の事業
起源は石炭採掘に端を発し創業し、後に炭鉱を輸送する機材の製作等を開始し「ものづくり」が始まっ
ている。本年(2
015年)、創業80周年を迎えることもあり、今後も事業の多角化・高度化の観点から
成長していくためにも引き続き「ものづくり」に取り組んでいく。
Q.ロトフロンライニングの国内製造業者は複数存在するのか?
A.本技術特許は長崎県に拠点を持つ事業者が有している。当社はその技術を利用し製造しているところ
であるが国内においては、この二社に限られている。
Q.製造過程で発生する成形されたフッ素樹脂の余助材(ライニング残材)等は産業廃棄物として処理さ
れているのか?
A.有価物として売却している。
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Q.使用者によるフッ素樹脂ライニングの自主的膜厚検査等と管理方法は?
A.目視による確認程度で詳細検査は困難と思われる。当社製造物においては納品より一年程度を目安に、
①通電検査測定器を使用しピンホールの有無調査、②膜厚測定器にて施工後のライニングの厚みを確
認し、膜厚状況を確認し、使用頻度等を鑑み経過観察を行っている。また、ライニング表面にキズが
つくような運転条件は避けること。
Q.ライニング表面にキズを発見した場合は?
A.程度によるが出向し部分的に溶接補修は可能。補修例は以下の通り。
皮膜
基材
①ピンホール発見
②開先取り
③溶接肉盛り
④研磨仕上げ
Q.ロトフロンライニングによるハッチ稼働部分等の接合箇所が損傷した場合の補修方法は?
A.状態によっては補修が難しい可能性があるが可能な限り対応する。
Q.ロトフロンが高密着のフッ素樹脂ライニングであることから廃棄する場合には、どうすれば良いのか?
A.今まで製造した商品を廃棄する相談を受けたことはないが、プライマーによって部材間が高密着となっ
ていることから、熱をかけ、フッ素樹脂を溶融するほかないと推測される。
Q.貴社は数少ないステンレス材へのライニング可能を得意とされていると伺ったが、強みの確保はどの
ようにしてなされているか?
A.鉄材に比べステンレス材は部材の性格から局部加熱した場合、熱伝導率が低く、均等にフッ素樹脂を
溶融することができないため、ライニングに不向きな素材であるが、ロトフロンの場合、加熱温度分
布を均一に加工できる特性から施工することが可能である。
Q.シートライニング法と比較した場合、ロトフロンとの優位性は?
A.ロトフロンに比べ、シートライニング法の方が加工費は安価であるが、仕様条件については加圧式に
は適当なものの、減圧式の場合には低密着の問題から不向きである。ロトフロンにおいては、それら
の問題がない。
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質疑応答の風景(左:会議室にて/右:工場内にて)
■タンクローリーライニングタンクについて(株式会社タンクテック)
株式会社タンクテックは、液体・粉体輸送用各種タンクローリー等の設計・製作・修理・販売等の事業
活動を行っており、ステンレス加工を得意とする。タンクのロトライニングを新光産業に委託している。
本商品は「タンクテックHi
ghQual
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ngi
nAr
madi
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o《ハイクォリティ ロトライニング イ
ン アルマジロ》」として、タンクの内面に耐薬性を要求するユーザーへ販売提供している。本先進事例
調査時にライニング完成品を現地で保管されていたことから現物に触れる機会を得た。
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“ハイクォリティ ロトライニング イン アルマジロ” タンク断面図イメージ
アルマジロロトライニング加工完成品
ロトライニングカガミ連結部/内部
■まとめ
訪問にあたり、誠実にご対応くださった、新光産業株式会社 機械事業部の河内保之様,中野耕嗣様、
東京営業所の倉富孝志様、その他スタッフの方々、そして株式会社タンクテック様に心からお礼申し上げ
ます。
(文責:上出広幸)
正門前にて記念撮影
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