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インテリジェント基準点に関する調査研究(第2年次)

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インテリジェント基準点に関する調査研究(第2年次)
インテリジェント基準点に関する調査研究(第2年次)
実施期間
平成 16 年度~
測地部測地基準課
平井
英明
田中
愛幸
河和
宏
1.はじめに
国土交通省では,「ユニバーサル社会」の実現に向けた事業の一環として,社会参画や就労等にあ
たって必要となる「移動経路」,「交通手段」,「目的地」等の情報が,いつでも,どこでも,誰で
も,必要な精度で得られる社会の実現に向けた環境整備を進めている.
国土地理院は,世界最先端のユビキタスネットワーク技術を活用して,移動に関する情報を「いつ
でも,どこでも,だれでも」が利用できる環境作りを目指す「自律移動支援プロジェクト」と連携し,
プレ実証実験の一環として平成 16 年9月,神戸市三宮に全国で初めてインテリジェント基準点を設置
した.その後,「自律移動支援プロジェクト」実証実験本番用として,神戸市三宮の「さんちか」街
と旧居留置地にインテリジェント基準点を 94 点設置した(写真-1,2).
本報告では,神戸において設置したインテリジェン
ト基準点から位置情報を簡便に得られる新しい測量機
器の開発とインテリジェント基準点の利活用として,
基準点維持管理業務の効率化等の調査研究を実施した
ので報告する.
写真-1
地下街のインテリジェント基準点
写真-2
地上部のインテリジェント基準点
2.研究内容
現在,わが国の測地基準点体系は,電子基準点を骨格として全国に均一に配置している三角点,そ
れらを基にした街区基準点や各種公共基準点により構成され,位置情報の基盤を形成している.第6
次基本測量長期計画で目指す位置情報基盤の整備と利活用を効率的に進めるため,これら基準点を利
用し,基準点に IC タグを活用した機能を付加して,これまでの位置情報(緯度・経度など)に加え,
場所情報,地理情報等の把握がその場で可能となるインテリジェント基準点の整備に向け,今年度は
以下の検討を行ったものである.
2.1
新しい測量・測位機器の開発
インテリジェント基準点が測量技術者にとって便利なものになるには,測量に用いる機器の開発も
必要であり,インテリジェント基準点の位置情報を自動的に読み取り,周辺に設置されている IC タグ
(境界杭,点字ブロック,各種マーカーなど)の位置を簡単に測定することのできる測量機器の開発を
目指し,既存の測量機器(TS)と IC タグのリーダ/ライタを組み合わせ,インテリジェント基準点との
通信が行え,簡単に測定情報を表示できるようなシステムの開発を進めた.
開発したシステム(「インテリジェント基準点用測量
システム」という)は,トプコン製の画像トータルス
テーション「GPT-7000i」
(写真-3)と富士通製の IC
タグのリーダ/ライタ(ショートレンジ型)がノート
パソコンを介在し,両者間の通信が行えるもので,画
像トータルステーションにより取得した位置情報と内
蔵されているデジタルカメラによる画像を組み合わせ,
簡易的な3次元的な画像や地図をその場で表示するこ
とも可能である.
写真-3
2.2
TS の画像表示部
インテリジェント基準点の利活用
神戸市の実証実験地(三宮地区)において,開発したインテリジェント基準点用測量システムによ
る測量の効率化,IC タグのリーダ/ライタ(情報端末装置)を用いた基準点維持管理の効率化および
同基準点を用いた「基準点情報管理・提供システム(仮称)」の設計・開発の検討を行い,インテリジェント基準
点の利活用についての実験を行ったものである(写真-4).
写真-4
測量風景
写真-5
観測例(画像表示)
3.得られた成果
3.1
測量の効率化
IC タグに記録された基準点の成果を直接インテリジェント基準点用測量システムに取り込み,既知
点の成果として入力できることにより,手入力による手間が省けると同時に,入力ミスによる間違い
が防げる.
また,写真-5に示すように,器械には画像撮影機能がついており,撮った画像上に測定した測点
をプロットすることができる(図-1).これらの機能は,これまで測量結果と画像を別々に処理し,
机上で合成していたことが一緒にできることを検証でき,各分野で広く利用されることが期待できる.
3.2
インテリジェント基準点の利活用
国土地理院では,全国にある約 13 万点余りの三角点や水準点等の維持管理を行っている.基準点維
持管理業務は,基準点の現況を把握し,正確な基準点成果の確保や提供など,我が国で安心して測量
のできる環境を維持していくためにも必要である.従前は,直営作業により行っていたが,担当職員
の減員等で進捗率もあまりよくなく,近年は外注化へと移行しつつある.しかしながら,費用対効果
や迅速性等の面で効率的でないことや位置情報基盤整備のさらなる推進強化等が求められており,よ
り効率的な維持管理の実現にむけ早急な検討が必要となっている.このような状況のなか,最近,各
種分野において「IC タグによる管理」の方法が用いられており,この方法を基準点の維持管理に応用
すべく検討を行ってきた.
本研究では,神戸三宮地区に設置したインテリジェント基準点において維持管理のための実験を実
施した(写真-6,7).
その結果,専用の IC タグリーダ/ライタ(情報端末装置)を用いて,基準点のデータ(ucode など)
を読み取り,その読み取りデータと読み取った日時(タイムフラッグ)を付加した形でパソコン等に
取り込むことにより,どの基準点をいつ調査したかなど,基準点の管理について有効であることが裏
付けられた.
写真-6
情報端末装置(UC)
写真-7
情報端末装置( ショートレンジ 型)
4.まとめ
今後の課題としては,TS などの測量機器に IC タグのリーダ/ライタが内蔵され,インテリジェン
ト基準点上に整置した瞬間に情報を取り込み,自動追尾やノンプリズム,画像計測などの機能と組み
合わせ,作業の効率化,軽減化が図れるものを目指したい.
また,基準点の維持管理の効率化については,次年度に,都道府県単位でモデル地区を設定し 1000
点規模での実用に向けた実証実験を実施する予定である.
今回,神戸における実験ではネットワークを介在しないオフラインでの情報取得であったが,将来,
ユビキタスネットワーク社会の実現などにより,測量を始め,様々な用途に利用された基準点のその
時点の状況がサーバーに送られ,データベースを確認することで現況を把握することも可能となる.
今後,IC タグから読み込んだデータの処理や IC タグへ書き込むデータの内容について,さらに測
量以外でのインテリジェント基準点の利活用の面も含め検討していく予定である.
近い将来,インテリジェント基準点と GIS を組み合わせることにより,インテリジェント基準点
を始め,測定した IC タグの位置情報や関連する地図情報などもインターネットや携帯電話を通じて
リアルタイムに提供できるようになるものと期待する.
点字ブロック中心
R2-9-3
R2-9-4
R2-9-N-48
R2-9-N-49
R2-9-N-50
R2-9-N-51
R2-9-N-1
R2-9-N-2
R2-9-N-3
R2-9-N-4 R2-9-N-52
R2-9-N-53 R2-9-N-5
R2-9-N-7
R2-9-N-6
R2-9-N-9
R2-9-N-8
R2-9-N-16 R2-9-N-15
R2-9-N-18 R2-9-N-17
R2-9-N-54
R2-9-N-10
R2-9-N-55
R2-9-N-11
R2-9-N-12
R2-9-N-56
R2-9-N-13
R2-9-N-14
R2-9-N-57
R2-9-N-58
1
R2-9-N-59
第1号インテリジェント基準点
R2-9-N-60
R2-9-N-47
R2-9-N-45
R2-9-N-46
図-1
R2-9-N-43
R2-9-N-44
R2-9-N-41 R2-9-N-63 R2-9-N-39
R2-9-N-61 R2-9-N-37 R2-9-N-35
R2-9-N-33 R2-9-N-32
R2-9-N-42
R2-9-N-40 R2-9-N-62 R2-9-N-38
R2-9-N-36 R2-9-N-34
R2-9-N-30
R2-9-N-31
R2-9-N-28
R2-9-N-29
方位標
R2-9-N-27
インテリジェント基準点を用いた誘導用点字ブロックの位置出し
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