Title Studies on Reactive Water-Dispersible Polyisocyanate and
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Title Studies on Reactive Water-Dispersible Polyisocyanate and
Title Author(s) Citation Issue Date URL Studies on Reactive Water-Dispersible Polyisocyanate and Polyurethane-Urea Micelle as Coating Materials( Abstract_要 旨) Tawa, Tsutomu Kyoto University (京都大学) 2008-03-24 https://doi.org/10.14989/doctor.k13847 Right Type Textversion Thesis or Dissertation author Kyoto University 【516】 た わ つとむ 氏 名 田 和 努 学位 (専攻分野) 博 士 (工 学) 学 位 記 番 号 工 博 第 2951 学位授与の日付 平 成 20 年 3 月 24 日 学位授与の要件 学 位 規 則 第 4 条 第 1 項 該 当 研究科・専攻 工 学 研 究 科 高 分 子 化 学 専 攻 学位論文題目 Studies on Reactive Water - Dispersible Polyisocyanate Polyurethane - Urea Micelle as Coating Materials 号 and (コーティング材料としての水分散性ポリイソシアネート及びポリウレタンウ レアミセルに関する研究) 論文調査委員 (主 査) 教 授 伊 藤 紳 三 郎 教 授 中 條 善 樹 教 授 瀧 川 敏 算 論 文 内 容 の 要 旨 本論文は,非常に低粘度であることを特長とする新規な水分散性イソシアネートの合成と特性について研究した成果をま とめたもので,序論を含め6章からなっている。 第1章では,コーティング材料としてポリウレタンがもつ優れた特長を述べ,また環境問題に対する社会的要請から注目 されている水分散性イソシアネート(WDPI)が開発される背景とその意義について概観している。さらに本論文の目的と 内容を紹介している。 第1部では新規に合成した WDPI に関する研究について述べている。 第2章ではヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート体とメトキシポリエチレングリコールを反応させることに より,新規な WDPI を合成した。この WDPI は非常に低粘度であることを特長とし,簡単な攪拌により水中で安定なミセ ルを形成する。この WDPI のイソシアネート基は水媒体中で一定の誘導時間の後,急激に失活するという特異な反応を示 した。この誘導時間はミセルの粒子径と密接な関係があることが示された。またこの誘導時間の要因は,WDPI ミセルのコ ア−シェル構造にあり,イソシアネート基の段階的反応がミセルの構造的要因によることを明らかにした。 第3章では水媒体中で起こるWDPIの反応に伴うミセル内部の構造変化を局所粘度から明らかにした。局所粘度は2種類 の蛍光法,つまりエキサイマー形成速度と蛍光偏光解消から定量的に評価された。蛍光色素はその疎水的な性質のため,ミ セル内部に存在する。従って,蛍光色素から得られる情報はミセルの内部状態を反映する。この2つの方法で見積もられた 局所粘度は,誘導時間の間はほぼ一定であるが,その後急激に上昇した。この変化は,WDPI のイソシアネート基の反応は ミセル内で進行し,誘導時間内はイソシアネート基が保持されるが,その後の突然の高分子化反応に伴い局所粘度が上昇し たものと考えられた。これらの結果は,個々の水分散ミセルの局所粘度と,その分散液から製膜されたフィルムの実用的な 機械強度との間の相関関係を解明する上で,重用な知見を与えた。 第4章ではより実用的な観点から,水酸基を持つポリウレタンウレアディスパージョン(PUD)と WDPI の水系2液型 システムに着目した。WDPI のイソシアネート基の反応は水媒体中とは異なり単調に減少した。これは PUD の水酸基と WDPI のイソシアネート基がコロイド状態においてミセル間反応をしたためである。そのフィルム形態は WDPI と PUD 混 合後の時間に依存し,時間経過とともに大きく変化した。この構造変化は,PUD と WDPI の分子間反応により形成した高 分子量体のためである。この高分子量体は他の低分子量成分との相溶性が小さいため凝集し,ドメインを形成する。混合後 の時間経過に伴う高分子量体の増加が,フィルム構造変化の要因であることを示した。 本論文の第2部では,PUD のハードセグメントがフィルムの物理的性質に与える影響について述べている。 第5章ではハードセグメント間距離を系統的に変化させた PUD を合成した。これらの PUD を用いて,粒子径で代表され るコロイド的性質,及びフィルムの粘弾性で示される物理的性質にハードセグメントが与える影響について評価した。ハー ― 1214 ― ドセグメント間距離は粒子径に大きく影響し,ハードセグメント間距離が短くなると粒子径は小さくなった。これは親水性 基であるカルボキシル基の分布が影響しており,ハードセグメント間距離が短い,すなわちカルボキシル基がポリウレタン 鎖中に均一に分布することによりミセルの粒子径が小さくなることが示された。また粘弾性曲線は2つのガラス転移点 (Tg )を持ち,この PUD から得られるフィルムがミクロ相分離構造を取ることを示した。低温側 のTg(Tgs )はソフトセグ メントに,高温側の Tg(Tgh )はハードセグメントのTgに帰属された。ハードセグメント間距離はこの相分離構造にも影響 を与える。ハードセグメント距離の減少は,Tgs を上昇させ,Tgh を低下させた。これはハードセグメント間距離の減少によ り,ソフトドメイン内に存在するハードセグメント,ハードドメイン内に存在するソフトセグメントの割合が増加するため であり,その結果,Tgs は上昇し Tgh が低下することを示した。 第6章ではハードセグメントと酸素ガスバリア性の関係が議論された。通常 PUD はガス透過性のポリマーである。一般 的な PUD はソフトセグメントとハードセグメントからなる相分離構造で構成され,ソフトセグメントの存在はウレタン, ウレア基濃度を低下させる。また相分離構造の形成によりソフトドメインがガスの通り道として働くため,よりガスバリア 性を低下させる。本章ではハードセグメントのみからなる新規な PUD を合成した。この新規な PUD は優れた酸素ガスバリ ア性を発揮し,ウレタン,ウレア基濃度を増加させることにより酸素ガスバリア性は向上した。更にこの新規な PUD とモ ンモリロナイト(MMT)からなるハイブリッド材料は優れたガスバリア性を達成した。このハイブリッド材料において, MMT の分布がガスバリア性に与える影響について明らかにした。この PUD - MMT ハイブリッド材料は代表的なガスバリ アコーティング剤である塩化ビニリデンを凌ぐものである。加えて,この PUD - MMT ハイブリッド材料は塩素を含まず水 系であることから,環境に優しい新たなガスバリアコーティング材料を提供することに成功した。 以上,本論文は,水系ポリウレタンの開発に必要となる,水分散ミセルの反応,構造,ならびに製膜後の物性に関して, 基礎的な視点から体系的に研究した結果をまとめている。 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨 ポリウレタンは優れた力学特性,耐水・耐溶剤性,密着性を示すことから,産業分野で広く使用される重要な高分子材料 である。近年の環境意識の高まりとともに,有機溶剤系ではない水分散系ポリウレタン材料の開発が強く要請されている。 本論文は,水分散性イソシアネートとポリウレタン−ウレアミセルの反応性ならびに分子構造に基づく膜物性の変化につい て研究を行った成果をまとめたものである。本論文は序論を含め6章からなっており,得られた主な成果は次のように要約 される。 (1)水中での長時間安定性と低い粘度をもつ新規な水分散性イソシアネート(WDPI)を開発した。この WDPI は水中で一 定の誘導期間の後,急激に反応するという特異な挙動を示した。粒子径や反応率,pH などの組成依存性や時間依存性 を検討した結果,特徴的な反応の要因は,WDPI ミセルのコア‐シェル構造にあり,イソシアネート基が親水性の外層 により保護されつつ,段階的反応が進行するためであることを明らかにした。 (2)2種類の蛍光プローブ法を相補的に用いて,反応性 WDPI ミセルの内部粘度をリアルタイムで測定することに成功し た。蛍光色素はその疎水的な性質のため,ミセル内部に存在してミクロ環境を示すことができる。得られた局所粘度の 測定結果は,誘導期間の後にイソシアネート基が高分子化反応を起こすため,局所粘度が急激に上昇することを示した。 これによりミセルの局所粘度が膜の力学的強度と密接な関係をもつことを明らかにした。 (3)水酸基を持つポリウレタンウレアディスパージョン(PUD)と WDPI の水系2液型システム混合後の分子間反応を, 粒径と分子量の時間変化により追跡し,両者の反応過程を明らかにした。また,生成した高分子量体が製膜時に相分離 構造を形成することを蛍光顕微鏡観察により明らかにした。これにより混合後の時間経過に伴う高分子量体の生成とフ ィルム構造ならびに力学特性に与える要因を明らかにした。 (4)ポリウレタン材料がソフトセグメントとハードセグメントからなるミクロ相分離構造をとることを示した。さらに分子 間力の強いハードセグメントが力学特性の向上に重要な役割をもつことを,系統的に分子構造を変化させることにより 証明した。またこの概念を用いて,ハードセグメントのみからなる新規な PUD を合成し,無機材料とこれとを複合さ せることにより,高いガスバリア性をもつコーティング材料の開発に成功した。 ― 1215 ― 以上のように,本論文は,近年,環境問題から社会的にも注目されている水分散性の WDPI 及び PUD の反応,構造,物 性について基礎的観点からその特性を明らかにしたもので,学術上,実際上寄与するところが少なくない。よって,本論文 は博士(工学)の学位論文として価値あるものと認める。また,平成20年2月27日,論文内容とそれに関連した事項につい て試問を行った結果,合格と認めた。 ― 1216 ―