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オープンシステム構築に最適化した情報システム開発標準の
特集論文 オープンシステム構築に最適化した 情報システム開発標準の整備 林 和史* 山下洋徳* 中原智哉* Implementation of Information System Development Standard for Open Systems Kazufumi Hayashi, Hironori Yamashita, Tomoya Nakahara 要 旨 情報システムの2000年問題が収束したあと,C/S 発をターゲットとして開発プロセス・開発技法の体系化・ (Client Server)型システムに代わり,オープンシステム, 標準化に取り組んできた。 特にWebシステムが主流となりつつあった。 標準化にあたり,自前主義を廃して業界標準を広く取り 情報システムに求められる要件が高度化・複雑化するに 入れ,①開発プロセスの標準化,②ソフトウェア生産技術 したがい,システム構築技術も進化を続け,設計・実装技 の標準化,③技術者育成を3本柱として並行して推進し, 術や開発方法論の大きなパラダイムシフトが起きていた。 全社へ展開中である。すべての成果物は情報共有ポータル また,オープンシステムでは様々なベンダーのソフトウェ サイトで公開されており,当社のグループ会社も含め広く アやハードウェアを組み合わせてシステムを構築するため, 入手可能としている。現在は,④システム開発への適用展 技術的なリスク要因が多く,かつソフトウェアの設計が属 開を行う中で,プロジェクトの見える化,及び⑤定量的品 人的になりやすいことから,生産性や品質の向上を図るた 質管理を推進し,プロセス改善に向けたPDCA(Plan−Do− めには開発手順の標準化が必要であった。 Check−Action) サイクルの定着に取り組んでいる。 そのため三菱電機では,2004年度からWebシステム開 UML基礎 システム開発への適用展開 初級 Javaプログラ ミング基礎 開発標準教育 L Webシステム開発標準教育 (概要編) Javaデータベース プログラミング L Webシステム開発標準教育 (要件定義編) L Webシステム開発標準教育 (システム分析編) 初級 ※UMLによる モデリング実践 開発者 ・標準化されたプロセス,検証済みの アーキテクチャに基づきシステムを 開発 ・プロジェクト及び品質の見える化 Webシステム 構築実践 e−Learning 14.0 300 12.0 250 10.0 200 8.0 150 6.0 100 4.0 50 2.0 0 Find Bugs指摘率(%) 要件定義 ・開発標準を電子的に公開 ・開発ノウハウの共有 ・グループ会社もアクセス可能 適用 開発プロセスの標準化 ・開発プロセスガイド ・仕様書作成ガイド,テンプレート, チェックリスト ・設計規約,実装規約 文 書 ・ツール活用ガイド ほか Webシステム開発プロセス (UML,ユースケース駆動) システム分析 システム構築 テスト 初期運用 プロジェクト実績データ蓄積(フェーズ単位でプロジェクトを見える化) (規模,工数,レビュー実施率,レビュー指摘率,テスト密度,カバレッジ,障害検出率, リリース後障害発生率,静的解析データ,等) 適用 実績 適用 Plan ・Webシステム開発に最適化した開発プロセス ・仕様変更への柔軟な対応 Checkstyle指摘率(%) Do Webシステム パフォーマンス評価 情報共有ポータルサイト 公開 0.0 日付 オープンソースによる Webシステム構築 Webシステム開発標準教育 (システム構築編) 16.0 350 総行数(KL) L 集合講座 静的解析結果 400 静的解析ツールの活用 ・品質のモニタリング ・手戻り削減 ・レビュー効率化 ・スキルアップ 指摘率(%) 要素技術教育 総行数(KL) 技術者育成 ・開発標準を幹とした体系 的な教育カリキュラム ・e−Learningによる受講 機会の拡大 定量的品質管理 ソフトウェア生産技術の標準化 ・自前主義からオープンソースソフトウェアの活用へシフト ・アーキテクチャ,フレームワーク,開発ツールを標準化 アーキテクチャ標準化 ・データに基づく品質管理 Action 開発実績データ オープンソースソフトウェアの活用 フレームワーク 統合開発ツール ベストプラクティス (再利用可能) 静的解析ツール プロセス 改善 分析/ 評価 Check UML:Unified Modeling Language Webシステム開発標準に基づくプロセス改善のPDCAサイクル 2005年度までに開発プロセスの標準化,再利用可能なアーキテクチャの標準化を行い,2006年度にはフレームワークや静的解析ツールな どのオープンソースソフトウェアの活用手順を標準化した。また,並行して開発標準を幹とした体系的な教育カリキュラムを作成し,新技術を 活用したWebシステム開発に対応できる技術者の育成を進めた。これら開発標準に基づきプロセス改善のPDCAサイクルを回す。 58 (670) * 情報システム技術センター 三菱電機技報・Vol.82・No.10・2008