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中国における新た な移転価格コンプラ イアンス要求:中国 国外の

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中国における新た な移転価格コンプラ イアンス要求:中国 国外の
中国における新た
な移転価格コンプラ
イアンス要求:中国
国外の本社へも影
響
2016年6月29日、国家税務総局は≪関連申告及び同時文
書管理の規範化に係る事項に関する公告≫(国家税務総
局公告2016年第42号)(以下、「42号公告」)を公布した。42
号公告は、同時文書と関連申告表を含む中国における移
転価格コンプライアンスの要求を改定した。1前回の移転価
格アラート により、既に42号公告の詳細な解説を公表して
いるが、今回のアラートにおいては、42号公告が、中国で
事業を展開する多国籍企業グループの中国国外の本社に
齎す最も重要な影響に焦点を当てる。
中国国外の本社にとっても、中国現地法人の経営陣及び
税務担当者と共に、中国の移転価格税制対応につき、幾
つか留意すべき事項がある。そのうち、最も基本的な事項
は、各中国現地法人(若しくは恒久施設)の中国ローカルフ
ァイルの義務の有無であろう。関連取引の金額が特定の
基準を超える場合、ローカルファイルの準備と保管が必要
となる。また、企業所得税の年度確定申告書の付表となる
≪企業年度関連業務往来報告表≫(以下、「関連申告
表」)に係る内容にも留意を要する。これらの記載事項のう
ち、バリューチェーン分析、地域性特殊要因及び実効税率
など重要なポイントにつき後述する。なお、関連者の財務
諸表の提供、バリューチェーンにおけるグループの利益配
分などの開示要求は、中国の納税者が有していない情報
の要求が含まれており、実質的に、中国の租税管轄権を超
えた要求とも考えられる。
国際租税の枠組みの世界的な再構築の過程において、中
国も、従来のローカルファイルの準備義務のほか、マスタ
ーファイルと国別報告書といった新たな移転価格文書の義
務を法制化した。マスターファイルと国別報告書に係る要
求は、基本的に、国際基準と一致しているものの、完全性
の観点から、本アラートにおいては、まずマスターファイル
と国別報告書について検討する。
1.
http://www.ey.com/Publication/vwLUAssets/EY-china-tp-alert-sat-issueshighly-significant-new-rules/$FILE/EY-china-tp-alert-sat-issues-highlysignificant-new-rules.pdf
中国における新たな移転価格コンプライアンス要求:中国国外の本社へも影響
1
国別報告書
マスターファイル
国別報告書の報告要求は、経済協力開発機構(以下、
「OECD」)が主導する税源侵食と利益移転(以下、
「BEPS」)プロジェクトのアクションプラン13における成果
の1つである。中国は、世界の多くの税務機関と共に国別
報告書の導入にかかるガイダンス策定に関与し、また、
国内税制をOECDが提案した要求に合致するものとなる
よう努めた。中国系の多国籍企業は、連結総収入が55
億人民元(2016年8月22日付けの為替レートで換算する
と、約7.3億ユーロ、8.3億米ドル)を超える場合、5月末ま
でに確定申告書と共に国別報告書を提出しなければなら
ない。施行開始年度は2016年度となる。中国は、OECD
の多国間協定或いは二国間の情報交換協定により、他
国、地域との間で国別報告書を交換する予定である。
マスターファイルに係る要求について、中国はOECDによるガイダ
ンスを忠実に踏襲した。OECDのアプローチにおいて、マスターファ
イルは、企業グループの事業活動、移転移価格ポリシーなどの情
報を開示するものであり、通常、企業グループの本社が準備し、こ
れを当該企業グループの各メンバー事業体が移転価格文書パッ
ケージに組み入れることができるよう、各メンバー事業体と共有す
る。
中国は国別報告書の提出方法について、条約方式を採
用し、原則としては、子会社方式は採用しなかった。中国
国外に最終持株会社が所在する多国籍企業は、本国で
国別報告書を申告したか、或いは中国国外の代理国に
おいて国別報告書を申告した場合、中国の税務機関は
中国現地法人からではなく、自動的情報交換システムを
通じて国別報告書を入手する。唯一の例外は、多国籍企
業グループがすでに他国に国別報告書を提出済みであ
るか若しくは他国の規定により国別報告書の準備が必要
とされているが、自動的情報交換システムが構築されて
いないか若しくは国別報告書が実際に中国へ交換される
に至っていない場合、中国税務機関は移転価格調査中
の中国現地法人に対して直接に国別報告書の提出を要
求することができる。
所属する多国籍企業グループの国別報告書の提出義務
の有無及び提出者の情報について、現時点において、中
国には、現地法人による中国税務機関への単独の報告
義務は設けられていない。ただし、OECDは、アクションプ
ラン13において、各国にそのような報告要求の実施を許
している。一方、中国においては、当該情報の開示は中
国税務機関向けのマスターファイルの記載事項としてい
る。
42号公告によると、中国現地法人の関連取引が10億人民元(約
1.3億ユーロ、1.5億米ドル)を超える 場合、或いは多国籍企業とし
て既にマスターファイルを準備した場合に、中国現地法人に中国
語のマスターファイルの準備が要求される。一方、ヨーロッパを含
む多くの租税管轄区域において、最終持株会社の租税管轄区域
ではマスターファイルの義務が生じていない場合であっても、現地
法人に対してマスターファイルの義務を課すとしている。当該42号
公告の準備義務要件を最終持株会社の所在地国における義務の
有無に限定しないと解釈すれば、このような兄弟会社の税務管轄
地域における義務により、中国現地法人にもマスターファイルの義
務が生じると考えられる可能性がある。
マスタファイルの記載事項については、些細な違いを除き、42号公
告はOECDによるガイダンスの要求とほぼ一致している。
►
企業再編のタイプにつき、より詳細な情報開示が要求されてい
る。例えば、グループ内企業の機能、リスク或いは資産の移転、
企業法律形式の変更、持分買収、資産買収、合併・分割など。
►
二国間事前確認 (OECDでは国内事前確認のみが対象とされ
ている) を含む租税裁定のリスト開示及びそれに対する簡潔な
説明が要求されている。
►
前述の通り、企業グループの国別報告書の提出義務の有無、
また、提出者に関する情報開示が要求されている。
つまり、企業グループのマスターファイルを大幅に変更する必要は
必ずしもないものの、本社もしくは中国現地法人の税務担当者は、
多国籍企業グループとしてのマスターファイルが中国の移転価格
税制の要求に合致するか否かについて、ハイレベルな評価を行う
こととなるであろう。
42号公告によると、マスターファイルの準備期限は、最終持株会社
の会計年度の終了の日から12ヶ月以内である。当該マスターファ
イルの準備期限のみから見れば、中国の要求は企業グループに
プレッシャーとなる可能性は低いかもしれない。ただし、留意すべ
き点は、中国におけるローカルファイルの準備期限は関連取引の
発生した年度の翌年6月30日までとなっていることである。そのた
め、本社又は中国現地法人の税務担当者は、中国のローカルファ
イルと準備中のマスターファイルの内容の整合性を確保できるよう、
対策を講じる必要がある。
中国における新たな移転価格コンプライアンス要求:中国国外の本社へも影響
2
ローカルファイル
ローカルファイルにおける記載事項については、OECDが既に
ガイダンスを公表しているが、各国における強制力はない。
OECDのガイダンスにおいても、各国が自由に、より多くの詳細
な情報開示を自国の納税者に要求することができるとされてい
る。42号公告におけるローカルファイルの記載事項はOECDが
ガイドラインとして示した要求の範囲を遥かに超えている。さら
に、留意すべきは、これらの超越した要求が中国の自国の納
税者が有する情報の範囲外にあり、租税管轄権を超えていると
も言える点である。その結果、本社の経営陣と税務担当者は、
どの情報を中国現地法人の税務担当者に共有するか、また、
どのように中国税務機関向けのローカルファイルに開示するか
について判断を下す必要がある。
中国現地法人は、年度に発生した関連取引が次のいずれかの
状況に該当する場合、ローカルファイルを準備しなければなら
ない。
►
有形資産の所有権の譲渡金額(来料加工業務については
年度の輸出入通関価格により計算)が2億人民元(約2600万
ユーロまたは3000万米ドル)を超える場合。
►
金融資産または無形資産の譲渡金額が1億人民元(約1300
万ユーロまたは1500万米ドル)を超える場合。
►
その他関連取引(関連者間のサービス取引、無形資産の使
用によるロイヤリティ取引、関連者間の融資取引等)の合計
金額が4000万人民元(約520万ユーロまたは600万米ドル)
を超える場合。
42号公告における租税管轄権を超越する要求事項として、ロー
カルファイルにおけるバリューチェーン分析が挙げられる。しか
しながら、42号公告には「バリューチェーン」の定義がなされて
いない。マスターファイルにおいてもグループのバリューチェー
ンに対する分析が要求されているものの、ローカルファイルに
おける分析については、中国現地法人の事業活動にかかわる
バリューチェーンに特化させる必要があると考えられる。そのた
め、経営陣は、例えば、次の点につき検討し判断を下すことと
なる。
►
中国現地法人は、単一のバリューチェーンに関与するか?
複数のバリューチェーンについて分析の対象とすべきか?
►
中国現地法人は、マスターファイルで開示する必要のない
事業活動に関与しているか?その場合、中国現地法人につ
き、追加的な分析と開示が必要となるか?
►
中国現地法人が関与する事業は企業グループの一部のみ
であるため、ローカルファイルで検討すべきバリューチェー
ンの範囲をマスターファイルの開示対象よりは限定すること
ができるか?
►
バリューチェーンにおける研究開発又は無形資産の使用許
諾に係る開示はどの程度までとすべきか?
租税管轄権を超越した要求の最たるものは、バリューチェーン
に関与する関連者の直近年度の財務諸表の要求であろう。つ
まり、国外関連者の膨大な情報の開示要求は、各国がBEPSプ
ロジェクトにおいて議論した成果物である国別報告書の機密保
護と矛盾していると、一部の専門家から疑義をもたれている。
いずれにしても、本社の経営陣は、これらの機密情報に関する
取り扱い方針を決定しなければならない。
バリューチェーンにおける利益配分に関する情報の開示要求
は、バリューチェーン分析の中で最も敏感で、かつ挑戦的なも
のと言えるであろう。なお、国別報告書におけるデータは国ごと
の集計値となるが、42号公告のバリューチェーン分析において
は各メンバー事業体に焦点が当てられている。そのため、国別
報告書の入手により中国税務機関が把握することができる情
報よりも詳細で、多国籍企業グループが国別報告書において
開示しなければならない要求を遥かに超えている。仮に、企業
グループの事業セグメントのデータを取得できたとしても、本社
の経営陣は、これをさらに中国現地法人の関与するバリューチ
ェーンに切り出そうとする場合、作成作業が煩雑となるかもしれ
ない。従って、当該要求を満たすための分析方法の検討に早
めに着手されるようお勧めする。
さらに、ローカルファイルの記載事項として、地域性特殊要因に
対する検討及び価格設定への影響にかかる分析も要求されて
いる。中国市場における事業活動は顕著な優位性を有すると
いう国家税務総局の主張は、専門家の間で広く知られている。
この議論には、特定の業界における低廉な人件費などによる
「コストセービング」と、中国消費者が特定の商品には高値でも
購買意欲を持つとする「マーケットプレミアム」等が含まれる。仮
に、本社の経営陣が地域性特殊要因を一切享受していないと
主張する場合にも、中国のローカルファイルにおいては、当該
事項の検討の記載が義務となっている。そのため、本社は、中
国現地法人の税務担当者と共に、多国籍企業グループの立場
や移転価格上の調整の必要の有無につき、一旦、検討するこ
とになる。
これらのローカルファイルの要求にどのように対峙すべきかの
検討にあたっては、期限が重要な考慮要素となる。2016年度の
中国ローカルファイルの準備期限は2017年6月30日である。
中国における新たな移転価格コンプライアンス要求:中国国外の本社へも影響
3
関連申告表
まとめ
同期資料以外に、42号公告は、5月31日までに提出する必要の
ある確定申告書の付表となる関連申告表における記載事項も
大幅に増やした。関連申告表の作成過程において、中国現地
法人の税務担当者は、本社のサポートを必要とする。例えば、
注意すべき新たな記載事項には、表G112000における中国納
税者と取引を行った関連者の従来よりも詳細な情報が挙げら
れる。具体的に言えば、同表は各取引タイプ(有形資産、ロイヤ
リティ等)の関連取引の上位五位(取引金額順)の関連者の情
報を記入する必要がある。
42号公告により、中国の納税者も、世界的な移転価格税制の
変革の時代に直面しなければならなくなった。多国籍企業は、
中国法人のみならず、本社の経営陣と税務担当者も協調して、
対応プロセスを構築、管理し、開示内容と開示方法に関する複
雑な分析と困難な決断に対峙する準備を進める必要がある。
表G112000は関連者の実効税率の記入を要求している。国家
税務総局は関連申告表で提供された情報をデータベースに入
力し、「ビッグデータ」を利用することにより、調査対象の選定に
活用することも予想される。このようなデータを用いれば、例え
ば、低税率国に所在する関連者と多額の関連取引を行なって
いる納税者を容易にリストアップすることもできるであろう。
なお、昨今、国家税務総局は、サービスフィーとロイヤルティの
対外支出の税務管理強化に関する規定も公布している。42号
公告は、これらの一連の中国移転価格税制の独創的な規定の
一環とも考えられる。これらの規定は、BEPS対応の中国国内
法の落とし込みの過程における布石であり、今後、多くの移転
価格に関する実務指針が公布されることが予測される。
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