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(1)調査の方針 ヒアリング調査には

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(1)調査の方針 ヒアリング調査には
第3章 国内大学へのヒアリング調査
3-1 調 査 の 概 要
(1) 調 査 の 方 針
ヒ ア リ ン グ 調 査 に は、 各 大 学 の 早 期 修 了 制 度 の 制 度 上 の 理 解 の み な ら ず、 そ の 運 用 や 実
態、 関 係 者 の 問 題 意 識 な ど の 理 解 を も 可 能 に す る と い う 方 法 的 特 徴 が あ る。 ヒ ア リ ン グ 調
査 で は、 特 徴 あ る 大 学 ・ 大 学 院 教 育 に 取 り 組 ん で い る こ と で 知 ら れ て い る 大 学 を 調 査 対 象
と し て 選 定 し た。 調 査 に あ た っ て は、 管 理 職 に あ る 教 員 だ け で な く、 現 場 で 研 究 ・ 教 育 の
一 線 に 立 つ 教 員 、在 籍 中 の 大 学 院 生 、既 修 了 生 に も 可 能 な か ぎ り イ ン タ ビ ュ ー を 実 施 し て 、
複 眼 的 な 理 解 を 目 指 し た。
ま た、 大 学 組 織 を 対 象 と し た ヒ ア リ ン グ 以 外 に も、 様 々 な 分 野 で 既 に 学 位 を 取 得 し た 研
究 者( 課 程 博 士・論 文 博 士 )、学 位 取 得 を 希 望 し て い る 社 会 人 大 学 院 生 に も 別 途 イ ン タ ビ ュ ー
を 実 施 し、 個 々 人 の プ ロ フ ァ イ ル を 作 成 し た。 こ の 調 査 に 関 し て は、 担 当 者 そ れ ぞ れ の 個
人 的 な 知 己 を 頼 っ て 実 施 し た。
(2) 大 学 調 査 の 日 程 と 担 当 者
調 査 日 程 と 各 担 当 者 は 下 記 の 通 り で あ る。 各 大 学 に お け る ヒ ア リ ン グ 対 象 者 氏 名 ・ 所 属
は、 各 項 目 に 記 載 し た。 な お、 修 了 生、 在 籍 中 の 大 学 院 生 の 氏 名 は、 プ ラ イ バ シ ー 保 護 の
観 点 か ら 匿 名 に し て い る ( 以 下 、「 国 立 」 は 「 国 立 大 学 法 人 」 の 略 記 )。
2007 年
・3 月 5 日 ( 月 ): 高 知 工 科 大 学 ( 私 立 )( 小 場 瀬 令 二 )
・3 月 14 日 ( 水 ): 九 州 大 学 ( 国 立 )( 太 田 充 ・ 斎 尾 直 子 )
・3 月 16 日 ( 金 ): 東 北 大 学 ( 国 立 )( 熊 谷 良 雄 ・ 谷 口 綾 子 )
・3 月 19 日 ( 月 ): 立 命 館 ア ジ ア 太 平 洋 大 学 ( 私 立 )( 藤 川 昌 樹 ・ 太 田 充 ・ 斎 尾 直 子 )
・3 月 20 日 ( 火 ): 奈 良 先 端 科 学 技 術 大 学 ( 国 立 )( 吉 田 友 彦 )
・3 月 26 日 ( 月 ): 京 都 大 学 ( 国 立 )( 吉 田 友 彦 )
2008 年
・ 2 月 26 日 ( 火 ): 北 九 州 市 立 大 学 ( 公 立 )( 藤 川 昌 樹 ・ 斎 尾 直 子 )
・ 3 月 12 日 ( 水 ): 筑 波 大 学 ( 国 立 、 人 間 総 合 科 学 研 究 科 )( 藤 川 昌 樹 ・ 斎 尾 直 子 )
・ 3 月 14 日 ( 金 ): 政 策 研 究 大 学 院 大 学 ( 国 立 )( 藤 川 昌 樹 ・ 斎 尾 直 子 )
(3) 学 位 取 得 ( 希 望 ) 者 プ ロ フ ァ イ ル 調 査 の 担 当 者
学 位 取 得 ( 希 望 ) 者 の プ ロ フ ァ イ ル 調 査 は 、 斎 尾 直 子・谷 口 綾 子・吉 野 邦 彦・熊 谷 嘉 人・
藤 川 昌 樹 が そ れ ぞ れ の 知 人 を 対 象 に 随 時 実 施 し た。 プ ラ イ バ シ ー 保 護 の 観 点 か ら、 各 研 究
者 に つ い て の 情 報 も 匿 名 と し、 本 人 が 特 定 で き な い よ う に 情 報 を 簡 略 化 し て あ る。 担 当 は
下 記 の 通 り で あ っ た。
・P1、 P2、 P8: 谷 口 綾 子
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博士課程「短期在学コース」の創設に係る課題等に関する調査研究
・P3、 P5、 P6、 P9、 P11、 P13、 P19: 斎 尾 直 子
・ P4、 P7、 P10、 P15、 P18: 藤 川 昌 樹
・ P12、 P16: 熊 谷 嘉 人
・ P14、 P17: 吉 野 邦 彦
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第3章 国内大学へのヒアリング調査
3-2 各 大 学 の 実 情
3-2-1 高 知 工 科 大 学
特 徴 : 高 知 市 か ら 若 干 離 れ た 地 に あ る 大 学 で あ り、 情 報 化 を 武 器 に 新 し い 試 み を し て い る。
公 設 (県) 民 営 の 私 立 大 学 で あ る が、 県 の 林 業 試 験 場 の 跡 地 を キ ャ ン パ ス と す る た
め に 大 変 緑 豊 か な 空 間 を 確 保 し て い る。 建 物 も 日 建 設 計 の デ ザ イ ン で 斬 新 (写 真
3-1)。 博 士 後 期 課 程 に は 、 留 学 生 コ ー ス 、 企 業 家 コ ー ス 、 社 会 人 コ ー ス が 設 け ら れ
て い る。 こ の う ち 社 会 人 コ ー ス を 中 心 に 1 年 間 の 修 了 を 目 指 し て い る。 在 職 の ま ま
学 位 を と れ る 仕 組 み が 充 実 し て お り、 東 京 ・ 大 阪 の サ テ ラ イ ト を 結 ん だ 講 義、 土 日
集 中 講 義 等 を 実 施 し て い る。
(1) 担 当 教 員 ・ 職 員 ヒ ア リ ン グ
調 査 日 :2007 年 3 月 5 日
ヒヤリング対象者:
社 会 マ ネ ジ メ ン ト 研 究 所 長 社 会 シ ス テ ム 工 学、 起 業 工 学 教 室 教 授 那 須 清 吾 氏
学 生 統 括 部 長 、 図 書 館 事 務 室 長 浜 田 正 彦 氏
企画広報部長代理 福田直史氏
写真 3-1 高知工科大学キャンパス
早 期 修 了 制 度 の 施 策、 特 徴 的 な 取 組 み
社 会 人 大 学 院 生 を 中 心 に 1 年 で 博 士 修 了 を 目 指 す こ と が で き る。 在 職 の ま ま 学 位 が 取
れ る よ う に、 修 士、 博 士 と も 仕 組 み が 作 ら れ て い る。 東 京、 大 阪 の サ テ ラ イ ト を 結 ん だ、
TV 授 業 を 実 践 的 に 利 用 し て い る の が 特 徴 で あ る ( 写 真 3-2)。 ま た 、 博 士 課 程 の 社 会 人 大
学 院 生 が 単 位 を 取 得 し や す い よ う に、 土 日 に 集 中 講 義 が 実 施 さ れ て い る。
教 員 側 の 負 担 は 大 き い が、 社 会 人 受 講 生 に と っ て は 便 利 な 方 法 で あ る。 教 員 側 の 負 担 を
減 ら す た め に 特 別 講 師 を こ こ に 当 て て い る 模 様 で、 企 業 の ト ッ プ の 方 も 特 別 講 師 と し て 招
聘 し て い る。 科 目 に よ っ て は、 有 名 企 業 の ト ッ プ の 考 え に 触 れ ら れ る と い う こ と で、 魅 力
的 で あ ろ う。
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博士課程「短期在学コース」の創設に係る課題等に関する調査研究
写真 3-2 TV 講義スタジオ
海外の大学と連携したグローバルな教育
タ イ 大 学 と 提 携 し、 タ イ 大 学 の 教 授 陣 に よ る 授 業 も 実 施 さ れ て い る。 こ の 場 合 は す べ て
英 語 に よ る 授 業 で あ り、 通 訳 は な い。 相 互 授 業 で 講 師 料 が か か ら な い か 少 な く て す む な ら
ば 、 安 上 が り で 魅 力 的 な 方 策 で あ る 。 提 携 校 と し て 海 外 20 校 と 協 定 を 結 ん で お り 、 学 費
の 免 除、 単 位 互 換 制 度 が あ る。
博士後期課程の特徴ある取り組み
博 士 後 期 課 程 ( 以 下 、博 士 課 程 と い う ) で は 、通 常 の 博 士 課 程 で の 学 位 取 得 を 目 指 す 「 基
盤 工 学 コ ー ス」 に 加 え て 次 の 三 つ の 特 別 な コ ー ス が 設 け ら れ て い る。
留 学 生 コ ー ス レ フ リ ー 付 論 文 2 本 が 条 件 で 博 士 号 を 取 得 す る 制 度 で あ る。3 年 を 限 度
と し て 、 大 学 院 生 を RA と し て 雇 用 し 、 そ の 対 価 を 支 給 す る 仕 組 み に な っ て お り 、 学 費 は
事 実 上 無 料 と な る。
企 業 家 コ ー ス 3 年 の 博 士 後 期 課 程 の 内 、 2 年 目 で 予 備 審 査 を 実 施 、 3 年 目 で 最 終 審 査
を 行 う。 実 際 に ベ ン チ ャ ー な ど を 経 営 し て み る こ と に よ り、 レ フ リ ー 付 論 文 の 替 わ り に 実
績 を 評 価 し て い る。
社 会 人 コ ー ス ( 短 期 博 士 ) 博 士 後 期 課 程 の 予 備 審 査 を し て 入 学 を 許 可 す る 。 こ の 際 、 レ
フ リ ー 付 相 当 の 論 文 が 必 要 だ が 、 必 須 で は な い 。 試 験 は 口 頭 試 問 だ け で あ り 、 30 分 の プ
レ ゼ ン テ ー シ ョ ン を 受 験 生 が 行 い 、 そ の 後 に 20 分 間 の 試 問 が あ る 。
会 社 の 中 で す で に 実 績 が あ る 人 が 対 象 と あ る 。 H18 年 度 1 名 、 19 年 度 か ら 2 名 の 予 定
で あ る。
(2) 修 了 生 ヒ ア リ ン グ
現職:高知工科大学・社会マネジメント研究所助手
略歴
東京の私立大学理工学部土木学科卒業
民間会社に勤めた後
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第3章 国内大学へのヒアリング調査
東京工業大学の大学院修士課程修了
高 知 工 大 の 博 士 課 程 に 進 学、 博 士 を 取 得
指 導 教 員 と の 人 的 な つ な が り で 進 学 し た 。 RA 制 度 に よ り 事 実 上 学 費 の 免 除 が あ る こ と
が 魅 力 的 だ っ た。 大 学 院 に 入 学 し て か ら は、 自 治 体 を フ ィ ー ル ド ワ ー ク の 対 象 と し、 様 々
な 意 志 決 定 が 行 わ れ る 仕 組 み を 博 士 論 文 と し て ま と め た。
社 会 人 博 士 の う ち、 会 社 か ら 来 て、 博 士 を と り、 も と の 就 職 口 に 帰 る、 も し く は 就 職 し
た ま ま 博 士 を と る 人 向 き だ が、 博 士 を と っ て、 キ ャ リ ア ア ッ プ で 別 の 就 職 口 と い う の は 日
本 で は 考 え に く い。 ま た、 奨 学 金 制 度 の 拡 充 が 重 要 で は な い か と 思 う。
(3) 院 生 ヒ ア リ ン グ
A氏:地元から高知工大へ学部で入学した修士 1 年の院生
地 元 の 大 学 だ っ た の で 高 知 工 科 大 学 に 進 学 し た。 修 士 課 程 に 進 学 し た の は、 学 部 3 年 の
時 の 授 業 を 聞 い て 教 員 に 魅 力 を 感 じ た か ら で あ る。 学 部 4 年 の 時 に 修 士 課 程 1 年 の 授 業
を と っ て い た の で、 修 士 2 年 間 は 研 究 に 没 頭 す る こ と が で き る。 修 士 課 程 を 修 了 す る と 就
職 に 有 利 だ と 思 う が、 博 士 課 程 へ の 進 学 は 必 ず し も 就 職 に 有 利 だ と は 思 え な い。 た だ し、
研 究 室 に 博 士 課 程 の 人 や 留 学 生 が い る の は よ い。
B氏:和歌山県出身の修士 1 年の学生
研 究 テ ー マ は、 ア セ ッ ト マ ネ ー ジ メ ン ト 関 連 で あ る。 卒 論 で は 「計 量 シ ス テ ム 開 発」
を テ ー マ と し た。 社 会 シ ス テ ム 工 学 の 場 合、 学 部 1 年 か ら 専 門 教 育 が あ り、 卒 業 生 の う
ち 3 割 ぐ ら い が 大 学 院 に 進 学 す る。 博 士 を と っ て 民 間 企 業 に 就 職 で き る の な ら ば 進 学 し
た い。
3-2-2 九 州 大 学 総 合 理 工 学 府 物 質 理 工 学 専 攻 ・ 量 子 プ ロ セ ス 理 工 学 専 攻
「 魅 力 あ る 大 学 院 教 育 」 イ ニ シ ア テ ィ ブ 『 も の づ く り 型 実 践 的 研 究 人 材 の 戦 略 的 育 成 』
特 徴 : 分 野 は 物 質 理 工 学 と 量 子 プ ロ セ ス 理 工 学。 も と も と 博 士 課 程 へ の 進 学 率 が 高 い 分 野
で も あ り、 民 間 企 業 の 研 究 所 へ の 就 職 も 多 か っ た。 国 際・産 学・知 財 3 サ ブ コ ー ス
を 設 定 し た 修 士・博 士 一 貫 教 育。 従 来 の カ リ キ ュ ラ ム に 加 え、 国 際・産 学 で は 2 −
3 カ 月 の 海 外 研 究 研 修・企 業 研 修 を 付 加 、 知 財 で は 知 的 財 産 検 定 2 級 取 得 を 目 指 す 。
主 旨 と し て は 短 期 在 学 へ の 需 要 の 流 れ と は 逆 行 し て い る か も し れ な い。 従 来 よ り も
学 生 に と っ て は 負 担 と な る 付 加 価 値 を つ け 「質 の 高 い 学 位」 を ア ピ ー ル す る。
(1) 対 象 プ ロ グ ラ ム に 関 す る 担 当 教 員 イ ン タ ビ ュ ー
訪 問 日 :2007 年 3 月 14 日 14:00 – 15:30
イ ン タ ビ ュ ー 対 象 (3 名 ):
取組代表者:大学院総合理工学研究院長・大学院総合理工学府長 物質理工学専攻教授 寺岡靖剛氏
実施責任者:大学院総合理工学研究院 量子プロセス理工学専攻教授 本庄春雄氏
取組副代表者:大学院総合理工学研究院 物質理工学専攻教授 永島英夫氏
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博士課程「短期在学コース」の創設に係る課題等に関する調査研究
『も の づ く り 型 実 践 的 研 究 人 材 の 戦 略 的 育 成』 プ ロ グ ラ ム の 概 要
総 合 理 工 学 府 ( 学 生 組 織 、 研 究 院 は 教 員 の 組 織 ) の 沿 革 :1979 年 に 大 学 院 だ け の 組 織
と し て 設 立 し 現 在 に 至 る。5 専 攻。 当 該 プ ロ グ ラ ム は 物 質 理 工 学 専 攻 と 量 子 プ ロ セ ス 理 工
学 専 攻 と で 共 同 企 画 ・ 申 請 、 17 年 度 と 18 年 度 採 択 。 も と も と 、 大 部 分 の 博 士 の 学 生 は 企
業 の 研 究 所 に 就 職 し て お り、 物 質 材 料 系 の 研 究 を 行 っ て い る。 国 際 性 と 実 践 力 が 重 視 さ れ
て い る 分 野 と い え る。
当 該 プ ロ グ ラ ム で は、 国 際 サ ブ コ ー ス・産 学 サ ブ コ ー ス・知 財 サ ブ コ ー ス の 3 つ の サ ブ
コ ー ス を 導 入 し、 修 士 か ら 博 士 課 程 ま で 一 貫 教 育 を 行 う。 通 常 の 博 士 課 程 カ リ キ ュ ラ ム に
加 え 、国 際 サ ブ コ ー ス は 海 外 の 大 学 で の 研 究 研 修 を 3 ヶ 月 程 度 、産 学 サ ブ コ ー ス は 企 業 ( 関
連 企 業 研 究 所 等) へ 3 ヶ 月 程 度 長 期 イ ン タ ー ン シ ッ プ、 知 財 サ ブ コ ー ス は 知 財 検 定 試 験 二
級 の 取 得 を 目 指 し た 資 格 の た め の 勉 強 が 義 務 づ け ら れ る こ と が 大 き な 特 徴 で あ る。 そ れ ぞ
れ、 コ ー ス の 認 定 と 論 文 に よ り 博 士 の 審 査 と す る。
( カ リ キ ュ ラ ム 図 等 参 照 : 図 3-1 〜 3:http://www.semsoc.kyushu-u.ac.jp/jpn/features/operation.html)
図 3-1(現場体験実習を新たに付加)
図 3-2(修士・博士一貫教育)
図 3-3 修士 2 年からはじまるサブコースの概要
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第3章 国内大学へのヒアリング調査
カリキュラムの課題
今 後 の 取 組 み 方 も 含 め、 課 題 と し て 以 下 の 8 点 を 挙 げ て い た だ い た。
・専攻教育とのバランス
・各サブコースとの適正配置
・学府内規程改正・整備
・非常勤講師の定常的確保
・明確な教育目標
・ 運 営 資 金 確 保 (H19 〜 )
・ 恒 常 的 な 点 検 ・ 評 価 (学 生 ・ 外 部)
・多忙さとのつきあい方
新 コ ー ス 教 育 は 非 常 勤 講 師 に 委 ね て い る こ と が 多 く ( 知 財 サ ブ コ ー ス は 弁 理 士 等 )、 講
師 の 外 部 化 の 定 常 化 も 検 討 課 題。 研 究 テ ー マ に 直 接 関 係 の な い 事 柄 で 学 生 に 付 加 を か け る
こ と の 是 非 。 GP は 2 年 度 間 で 終 わ る が 、 立 ち 上 げ た 教 育 プ ロ グ ラ ム を 2 年 で 終 わ ら せ る
わ け に は い か な い た め、 そ の 後 の 予 算 措 置 が 課 題。 非 常 勤、 教 員、 事 務 職 員 へ の 負 担 が 大
き い と 認 識 し て い る。 社 会 人 ド ク タ ー は 必 ず し も コ ー ス に 参 加 し て い る わ け で は な い。 将
来 的 に は 国 際、 産 学 の 2 サ ブ コ ー ス 体 制 に す る 可 能 性 が あ る。
(2) プ ロ グ ラ ム に 所 属 す る 博 士 課 程 大 学 院 生 へ の イ ン タ ビ ュ ー
調 査 日 2007 年 3 月 14 日 15:30 – 16:30
(イ ン タ ビ ュ ー 対 象)
産 学 サ ブ コ ー ス D1 物 質 理 工 学 専 攻 年 齢 29 才 出 身 大 学 熊 本 大 学
国 際 サ ブ コ ー ス D3 量 子 プ ロ セ ス 理 工 学 専 攻 年 齢 28 才 出 身 大 学 東 京 大 学
知 財 サ ブ コ ー ス D1 量 子 プ ロ セ ス 理 工 学 専 攻 年 齢 25 才 出 身 大 学 九 州 大 学
知 財 サ ブ コ ー ス D1 量 子 プ ロ セ ス 理 工 学 専 攻 年 齢 25 才 出 身 大 学 佐 賀 大 学
院生生活の概要
毎 日 9 時 に 実 験 室 に 出 向 き、 実 験 漬 け の 毎 日 で あ る。 奨 学 金 を 現 に 受 け て い る の で、 バ
イ ト も あ ま り せ ず に 済 ん で い る 。 TA 等 は 行 っ て い る 。
産学サブコースに参加して
一 度、 民 間 の 会 社 に 就 職 し 再 度 修 士 課 程 に 入 学 し た。 イ ン タ ー ン シ ッ プ で 国 内 の 公 的 研
究 所 へ 3 ヶ 月 間 行 っ た。 そ の 間、 自 分 の 研 究 (実 験) は 止 ま る が、 就 職 前 に 公 の 機 関 を 体
験 す る の は も の の 見 方 が 広 く な り よ か っ た と 思 っ て い る。 将 来 は 国 連 関 係 で 途 上 国 等 で 国
際 貢 献 に 関 わ る 仕 事 が し た い。
国際サブコースに参加して
1 ヵ 月 半 、 大 学 の 支 援 で 米 州 立 工 科 大 学 へ 行 き 海 外 の 研 究 者 や 研 究 環 境 に 触 れ る の は 有
意 義 で あ っ た。 将 来 は 企 業 で 実 務 が し た い。 大 学 と し て 企 業 と の か か わ り に お い て 学 生 の
キ ャ リ ア デ ザ イ ン に 関 わ っ て 欲 し い。
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博士課程「短期在学コース」の創設に係る課題等に関する調査研究
知財サブコースに参加して
知 財 の 知 識 は 企 業 で 必 要 で あ る と 考 え 希 望 し た。 知 財 検 定 試 験 二 級 の 取 得 は 比 較 的 容 易
で あ っ た。 試 験 対 策 用 の テ キ ス ト 等 も 用 意 さ れ た。 学 会 発 表 で 知 財 の 保 護 に 関 し て 慎 重 に
な る よ う に な っ た。3 コ ー ス の 中 で は 負 担 は 少 な い 方 で あ る。
写真 3-3 インタビューの様子
参考・引用資料:
九州大学大学院総合理工学府
「魅 力 あ る 大 学 院 教 育」 イ ニ シ ア テ ィ ブ 『も の づ く り 型 実 践 的 研 究 人 材 の 戦 略 的 育 成』 関 連 資 料
3-2-3 東 北 大 学 大 学 院 工 学 系 研 究 科 マ テ リ ア ル 系 専 攻
特 徴 : 企 業 と 連 携 し た 人 材 育 成 の 一 環 と し て 社 会 人 ド ク タ ー を 受 入 れ。 鉄 鋼 企 業 と の 産 学
連 携 に よ る 先 進 鉄 鋼 教 育 研 究 セ ン タ ー を 創 設 し て い る。 工 学 研 究 科 で は、 早 期 修 了
の プ ロ グ ラ ム や コ ー ス は 存 在 し な い。 し か し、 大 学 通 則 や 研 究 科 細 則 に 課 程 短 縮 の
規 定 が あ り (短 縮 = 所 定 の 単 位 + 優 れ た 業 績)、系 あ る い は 専 攻 で 運 用 の 仕 方 が 異 な っ
て い る。 ま た、 博 士 前 期 課 程 と 後 期 課 程 の 一 貫 プ ロ グ ラ ム や コ ー ス も 存 在 し な い。
日 時 :2007 年 3 月 16 日 ( 金 ) 9:30 ~ 11:30
場所 :東北大学大学院工学研究科 マテリアル系 ファカルティ・ルーム
対 象 : 東 北 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科 原 信 義 教 授 (「 短 期 在 学 コ ー ス 」 的 取 組 み を 実 際 に 担 当 )
社会人対象の博士後期課程短縮の背景
社 会 人 を 対 象 と し、 課 程 短 縮 の 規 定 を 運 用 し て 学 生 を 集 め る も っ と も 大 き な 理 由 は、 大 学
院 の 定 員 充 足 率 を 上 げ る 必 要 が あ る こ と で あ る。 現 在、3 専 攻 の 博 士 後 期 課 程 の 合 計 定 員 は
32 名 で、 今 の と こ ろ 充 足 率 は 100%以 下 に は な っ て い な い。 し か し、 前 期 課 程 か ら の 進 学 者
は 30 ~ 40% で あ り、 残 り の 半 分 は 留 学 生、 半 分 は 社 会 人 と い う 比 率 が こ こ 数 年 の 傾 向 で あ
る。 社 会 人 ド ク タ ー を 常 に 受 け 入 れ て い な け れ ば、 充 足 率 は 100%に 満 た な く な る。 社 会 人
ド ク タ ー を 定 常 的 に 受 け 入 れ る た め、 教 員 が 個 人 的 に 依 頼 し た り、 企 業 と 連 携 し て 計 画 的 に
進 め よ う と し て い る (企 業 と の 連 携 に つ い て は、「外 部 へ の PR」 で 詳 述)。
充 足 率 の し ば り が き つ い た め 、 現 在 32 名 の 定 員 を 20 名 程 度 に 減 ら す こ と も 検 討 し て
い る。
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第3章 国内大学へのヒアリング調査
※ 充 足 率 の 計 算 方 法 は、 母 数 が 収 容 定 員 と 入 学 定 員 の 二 つ の 考 え 方 が あ る。 文 系 の 専 攻 は 在 学 期 間
が 長 い た め 収 容 定 員 で 計 算 し て お り、 充 足 率 が 高 く な っ て い る。 工 学 系 は 課 程 短 縮 等 で 短 期 間 に
修 了 す る こ と も 多 い た め、 入 学 定 員 を 母 数 と し て 計 算 し て い る。 今 後 は、 学 位 授 与 率 を も 考 慮 す
べ き で あ る と 考 え て い る。
※ 学 位 授 与 率 向 上 の た め、 退 職 し た 教 員 を 再 雇 用 し て 学 生 相 談 対 応 に 充 て て い る。 と て も 有 効 に 機
能 し て い る。
入学試験
一 般 入 試 通 常 の 博 士 後 期 課 程 の 試 験 は、 下 記 の と お り 実 施 さ れ て い る。 配 点 は 公 表 さ
れ て い な い。
①過去の成績証明書の提出
②指導受け入れ予定教員の推薦書または承諾書の提出
③ 学 力 試 験 : 外 国 語 (TOEFL or TOEIC の 点 数 ) + 一 般 専 門 試 験
④ 特 定 専 門 試 験 ( プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン ): こ れ ま で の 研 究 成 果 と 博 士 課 程 で の 研 究 計 画
社 会 人 の 課 程 短 縮 の た め の 入 試 課 程 短 縮 を 希 望 す る 社 会 人 に 対 し て は、 募 集 要 項 に は
記 載 し て い な い が、 社 会 人 ド ク タ ー の 負 担 を 軽 減 す る た め、 内 規 と し て 以 下 の よ う な 試 験
を 行 っ て い る。 こ の 場 合、 課 程 を 1 年 で 修 了、2 年 で 修 了 予 定 な ど と あ ら か じ め 決 め て も
ら っ て か ら 試 験 を 行 っ て い る。
・学 力 試 験 か ら 一 般 専 門 試 験 を 免 除 し 、 特 定 専 門 試 験 の み (45 分 発 表 、 30 分 口 頭 試 問 )
としている
・ 学 力 試 験 か ら、 場 合 に よ っ て は 外 国 語 試 験 を 免 除 : 英 語 論 文 の 有 無 や 国 際 会 議 で の 発
表 状 況 な ど か ら、 指 導 予 定 教 員 が 判 断 す る
こ れ ら の 措 置 は、 受 験 者 に、 受 け 入 れ 予 定 教 員 か ら 伝 え て い る。
※ 課 程 短 縮 を 前 提 に 入 学 し、 そ の 後、 諸 事 情 で 在 学 期 間 を 延 期 す る こ と も 可 能 で あ る が、 今 の と こ
ろ そ の よ う な 学 生 は ほ と ん ど い な い。 何 年 で 修 了 予 定 か、 と い う デ ー タ が 残 っ て い な い た め、 正
確 で は な い が、9 割 以 上 の 学 生 は 当 初 予 定 通 り 修 了 し て い る。
※ 課 程 短 縮 で の 修 了 は、 社 会 人 だ け で な く 一 般 の 学 生 に も 適 用 さ れ る。 た だ し、 修 士 課 程 か ら の 進
学 者 は 入 学 試 験 が 無 い た め、 入 学 時 点 で は 早 期 修 了 を 目 指 し て い る の か 通 常 の 修 了 な の か は 周 囲
か ら は 判 別 で き な い。
課程の概要と実際の運用
後 期 博 士 課 程 の 修 了 要 件 後 期 博 士 課 程 の 修 了 要 件 は 以 下 の と お り で あ り、1 年 で 修 了
予 定 の 学 生 は 最 初 に 全 て の 単 位 を 申 請 す る こ と に な る。
< 修 了 要 件 16 単 位 >
① 4 単 位 : 講 義
: 社 会 人 ド ク タ ー は 、 6 月 ~ 9 月 に 開 講 さ れ る 集 中 講 義 (3 ~ 4 日
間 で 15 回 分 の 講 義 を 行 う ) で 単 位 取 得 す る こ と が 多 い 。 集 中 講 義 は 研 究 科 全 体 の 取
り 決 め で 開 講 さ れ て お り、 他 専 攻 の 関 連 科 目 で の 単 位 取 得 も 可 能。 た だ し、 全 て 他 専
攻 の 単 位 は 不 可。
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博士課程「短期在学コース」の創設に係る課題等に関する調査研究
② 4 単 位 : セ ミ ナ ー: 一 般 学 生 は TA な ど を こ れ に 充 当 す る が 、 社 会 人 ド ク タ ー は TA
は 困 難 で あ る た め、 国 際 会 議 で の 発 表 な ど を こ れ に 読 み 替 え て 対 応 し て い る。
③ 8 単位:博士論文の作成
課程短縮のための要件
・上記単位を取得予定であること
・学位論文に関係する査読付き論文が 3 編以上(うち 1 編は英語) あること:査読付
き 論 文 は 審 査 中 で あ っ て も、 内 部 の 教 員 と の 共 同 研 究 で あ れ ば カ ウ ン ト さ れ る (投 稿
論 文 が 不 採 択 と な る よ う な 教 員 は 大 学 に い て 欲 し く な い )。
その他
・ 論 文 博 士 は 基 本 的 に 受 け 入 れ な い よ う に し、 課 程 に 入 学 す る よ う に 誘 導 し て い る。 論
文 博 士 は 学 内 の 助 手 や 碩 学 泰 斗 型 の み を 対 象 と し て い る。
・ 平 成 20 年 度 に 前 ・ 後 期 一 貫 コ ー ス を つ く る こ と も 検 討 し て い る ( 概 算 要 求 の 段 階 )。
・ 社 会 人 ド ク タ ー の 多 く は、 通 常 勤 務 を 続 け て お り、 完 全 に 両 立 し て い る。
・現 在、 学 部 か ら 修 士 課 程 へ の 進 学 率 は 9 割 程 度。 学 部 生 に 大 学 院 へ の 進 学 を 勧 め た り
は し て い な い が、 大 学 院 修 了 で な け れ ば 採 用 し な い 企 業 も あ る た め、 学 生 は 大 学 院 へ
の 進 学 を 特 別 な こ と と は 考 え て い な い よ う で あ る。
外 部 へ の PR
マ ス コ ミ 等 を 通 じ た PR は 特 に 実 施 し て い な い が 、 企 業 と 連 携 し た 取 組 み を 2005 年 よ
り 開 始 し た。 取 り 組 み 概 要 は 下 記 の と お り。
・文部科学省の 「派遣型高度人材育成協同プラン:環境に優しい鉄鋼材料創出教育プ
ロ グ ラ ム」 が 採 択 さ れ た た め、 系 内 の バ ー チ ャ ル 組 織 と し て 【先 進 鉄 鋼 教 育 研 究 セ
ン タ ー】 を 設 立 し た。 セ ン タ ー の 目 的 は、 共 同 研 究 と 人 材 育 成 を 円 滑 に 行 う こ と で
あ る。
・人 材 育 成 と し て 、企 業 と 大 学 の 両 方 に メ リ ッ ト の あ る 仕 掛 け( 以 下 の ① ② )を つ く っ た 。
① 企 業 に、 大 学 か ら 教 員 等 を 派 遣 し、 講 義 を 行 う。
② 大 学 に、 企 業 か ら 社 員 を 社 会 人 ド ク タ ー と し て 派 遣 し、 学 位 取 得 を 目 指 す。
・ 派 遣 型 高 度 人 材 育 成 の プ ロ ジ ェ ク ト で は 、 イ ン タ ー ン シ ッ プ 費 用 と し て 1,000 万 円 /
年 の 予 算 (5 年 間 ) が あ る た め 、学 生 全 員 が 1 ヶ 月 間 、鉄 鋼 関 連 企 業 で イ ン タ ー ン シ ッ
プ を 行 っ て い る。
そ の 他 に も、 教 員 が 個 人 的 に つ き あ い の あ る 企 業 と 相 談 し、 定 期 的 ・ 計 画 的 に 社 会 人 ド
ク タ ー を 受 け 入 れ る よ う 努 力 し て い る 。 こ れ は 組 織 的 PR と い う よ り は 、 教 員 の 個 人 的 PR
と な っ て い る。
※ 企 業 の 状 況 が 変 わ る こ と も あ り 得 る た め、 卒 業 し て い く 学 生 に 社 会 人 ド ク タ ー を 勧 め る こ と は し て
い な い。
※ 卒 業 生 の 動 向 は 常 に チ ェ ッ ク し て お り、 企 業 ・ 上 司 経 由 で 社 会 人 ド ク タ ー を 勧 め る こ と も あ る。 上
78
第3章 国内大学へのヒアリング調査
司 の 承 諾 を 得 る こ と は 非 常 に 重 要 で あ る (一 度、 上 司 が 知 ら な い 間 に 博 士 課 程 入 学 手 続 き が 進 め
ら れ て し ま い 、 ト ラ ブ ル と な っ た )。
写真 3-4 東北大 原教授へのヒアリング
3-2-4 立 命 館 ア ジ ア 太 平 洋 大 学 :APU ア ジ ア 太 平 洋 研 究 科
ア ジ ア 太 平 洋 学 専 攻 ( 博 士 後 期 課 程 ) PhD プ ロ グ ラ ム
特 徴 : 大 分 別 府 市 に 2000 年 開 学 し た 新 キ ャ ン パ ス 。 対 象 は 、「 ア ジ ア 太 平 洋 学 」 と い う
新 し い 教 育 研 究 領 域 の 構 築 と 発 展 に 資 す る と 共 に、 こ の 分 野 の 研 究 拠 点 と な る こ と
を 目 指 し ス タ ー ト し た 研 究 科。 ア ジ ア 太 平 洋 大 学 に お け る 博 士 後 期 課 程 の 歴 史 は 浅
く、 学 位 取 得 者 は ま だ 数 名 で あ る が、 ア ジ ア 諸 国 の 多 様 な 学 位 取 得 需 要 に 応 え る 一
つ の ビ ジ ネ ス モ デ ル と 捉 え ら れ る 。大 学 院 は 9 割 が ア ジ ア 諸 国 の 留 学 生 で 構 成 さ れ 、
う ち、 半 数 以 上 が 途 上 国 の 社 会 人 経 験 者。
(1) 担 当 教 員 ・ 職 員 イ ン タ ビ ュ ー
調 査 日 2007 年 3 月 19 日 13:00 – 14:00
大学院アジア太平洋研究科副研究科長 教授 三好皓一氏
アカデミック・オフィス 三好真紀氏
研究科の概要
博 士 後 期 課 程 に お い て は 「ア ジ ア 太 平 洋 学」 構 築 と 研 究 者 養 成 を 念 頭 に 置 き つ つ、 発 展
途 上 国 開 発 援 助 を 国 際 協 力 に よ っ て 実 施 す る た め の、 高 度 の 専 門 性 を 有 し た 国 際 的 な 人 材
育 成 も 目 指 し て い る ( 国 際 協 力 を 担 う 専 門 的 職 業 人 の 養 成 を 視 野 に )。
国 際 協 力 の 援 助 側 機 関 の 専 門 家 は 博 士 学 位 取 得 者 が 多 数 を 占 め る 状 況 に な っ て お り、 被
援 助 側 機 関 の 人 材 に も 同 等 の 専 門 性 が 要 請 さ れ る た め、 ア ジ ア 諸 外 国 の 学 位 取 得 需 要 に 応
え る プ ロ グ ラ ム で あ る。
留 学 生 が 中 心 で、 大 学 院 に 関 し て は、 講 義 ・ 指 導 は 全 て 英 語 で 行 う。 教 授 陣 も 半 分 は 外
国 人 。 90%が 留 学 生 で あ り 、日 本 人 学 生 は 1 割 程 度 。 博 士 論 文 も す べ て 英 語 。 主 に デ ー タ・
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博士課程「短期在学コース」の創設に係る課題等に関する調査研究
資 料 を 集 め て 書 く 社 会 科 学 系 の 論 文 が 中 心。 開 発 途 上 国 を 中 心 と し た 研 究 テ ー マ (留 学 生
は 自 国) が 多 い。
学 費 は 私 立 大 学 と い う こ と も あ り 決 し て 安 く は な い が、 入 学 前 に 奨 学 金 の 取 得 有 無 や 金
額 が 明 示 さ れ て お り、 入 学 決 定 し や す い よ う な 配 慮 が あ る。9 割 の 博 士 の 学 生 は 奨 学 金 を
も ら っ て お り 、 TA 等 を や っ て い る 例 も あ る 。
大 学 院 か ら 入 学 し た 留 学 生 へ の、生 活 に 必 要 な 日 本 語 は、学 部 の 日 本 語 ク ラ ス を 活 用 す る。
研究科の運営
京 都 本 校 ・ 草 津 校 と は 独 立 経 営 し つ つ、 職 員 の 人 事 交 流 は 行 っ て い る。 入 試 に 関 し て は
ア ド ミ ッ シ ョ ン ズ ・ オ フ ィ ス、 日 常 運 営 (研 究 科 の 経 営 そ の も の や 教 員 ・ 学 生 支 援 等) は
ア カ デ ミ ッ ク ・ オ フ ィ ス が 担 当 す る。 そ れ ぞ れ 十 数 人 ず つ の 職 員 を 配 し、 研 究 科 運 営 を 行
う 仕 組。 ア カ デ ミ ッ ク ・ オ フ ィ ス が 各 種 研 究 補 助 金 等 の 企 画 ・ 申 請 を 行 っ て お り、 教 員 ・
研 究 員 は 教 育 ・ 研 究 指 導 に 専 念 し 運 営 に ア ド バ イ ス を 行 う と い っ た、 事 務 職 員 ・ 研 究 者 相
互 の 分 業 体 制。 運 営 に 関 し て も オ フ ィ シ ャ ル ラ ン ゲ ー ジ と し て 英 語 ・ 日 本 語 を 併 用 し て い
る。 公 的 な 資 料 は 全 て 日 本 語 ・ 英 語 2 種 類 を 作 成 す る。
大学の立地とキャンパス
大 分 県 内 人 口 約 12 万 人 の 温 泉 観 光 都 市 、 市 街 地 か ら 公 共 バ ス で 35 分 の 郊 外 に 立 地 す
る キ ャ ン パ ス 。市 街 地 か ら の 交 通 の 利 便 性 は 決 し て よ く な い た め 、学 生 寮・食 堂 そ の 他 、キ ャ
ン パ ス 内 で 学 生 生 活 が 完 結 す る キ ャ ン パ ス 構 造 と な っ て い る。 学 生 へ の 生 活 支 援 と し て の
様 々 な 仕 組 が あ る。
写真 3-5 2000 年開学のキャンパス風景
(2) 博 士 課 程 大 学 生 へ の イ ン タ ビ ュ ー
博 士 後 期 課 程 3 年 女 性 ( 中 国 )、 1 年 男 性 ( ナ イ ジ ェ リ ア )、 1 年 男 性 ( 台 湾 ) 30 代
○ 志 望 理 由、 手 続 き 等
2 名 が イ ン タ ー ネ ッ ト で APU を 探 し だ し 、 選 択 し た 経 緯 が あ る 。 英 語 で 学 位 が 取 れ る こ
と が 重 要 な 条 件 で あ っ た。 手 続 き 等 の 多 く が イ ン タ ー ネ ッ ト で 出 来 る こ と、 入 学 手 続 き の
前 に 奨 学 金 授 受 の 可 否 と 金 額 が わ か り、 そ れ を 材 料 に 決 定 で き る こ と が 非 常 に よ い と の こ
と。
3 名 と も 自 国 で 社 会 人 経 験 が あ る 。 博 士 学 位 を 取 得 し た 後 は 、 日 本 の 大 学 や シ ン ク タ ン
ク で 勤 め た い 方、 自 国 で 元 の 職 に 戻 る 方 な ど。 途 上 国 で は 特 に、 博 士 の 学 位 は 自 国 に 帰 っ
て か ら 有 利 と 考 え て い る。
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第3章 国内大学へのヒアリング調査
○生活一般
学 生 寮 の 家 賃 は 博 士 で 4 万 円 / 月 程 度。 家 族 で、 別 府 の ア パ ー ト に 住 ん で い る ケ ー ス や
自 国 に 妻 子 が 居 る ケ ー ス 等、 様 々 な 留 学 生 が 存 在 す る。 現 在 の と こ ろ、 家 族 用 の 学 生 寮 が
な い の が 問 題。 家 族 連 れ で の 留 学 生 の 多 く は 別 府 市 内 の 市 街 地 に 住 ん で い る。
研 究 環 境 は 非 常 に よ い。 し か し、 市 街 地 に 出 よ う と す る と 交 通 費 (バ ス 代) が 高 い の が
課 題。
写真 3-6 インタビューの様子,6 学生寮
3-2-5 奈 良 先 端 科 学 技 術 大 学 院 大 学 情 報 科 学 研 究 科
特 徴 : 現 段 階 で 多 数 の 早 期 修 了 者 を 輩 出 し て い る 大 学 院 大 学 で あ る。 前 期 と 後 期 の 連 携 に
よ り 修 了 期 間 の 短 縮 化 を 図 っ て い る。4 学 期 制 の 導 入、 修 了 式 は 年 4 回、 入 学 式 は
年 2 回 開 催 す る な ど、 柔 軟 な 入 学・修 了 シ ス テ ム を 採 用 し て い る。 最 短 で は、 学 部
3 年 + 修 士 1 年 半 + 博 士 1 年 半 で 24 歳 で 博 士 取 得 が 可 能 に な る 。
(1) 研 究 科 長 及 び 指 導 教 員 ヒ ア リ ン グ
調 査 日 2007 年 3 月 20 日
氏 名 千 原 國 宏 教 授、 関 浩 之 教 授、 横 矢 直 和 教 授
現所属 奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科
・ 千 原 國 宏 教 授 ( 情 報 処 理 学 専 攻 ) 像 情 報 処 理 学 1992 教 授 1、 助 教 授 1、 助 手 3、 D 4、 M 21、 研 究 員 4
・ 関 浩 之 教 授 ( 同 専 攻 ) 情 報 基 礎 学 1998 教 授 1、 助 教 授 1、 助 手 3、 D 4、 M 10
・ 横 矢 直 和 ( 情 報 シ ス テ ム 学 専 攻 ) 視 覚 情 報 メ デ ィ ア 1995 教 授 1、 助 教 授 1、 助 手 3、 D 9、 M 16
大学の方針
早 期 修 了 の 見 込 み の あ る 博 士 学 生 の 研 究 指 導 は、 現 在 文 科 省 に よ っ て 定 め ら れ た 1 年
な い し は 2 年 の 修 業 規 定 に 基 づ い て 行 う だ け で 十 分 対 応 で き る と 考 え て い る。 特 別 の プ
ロ グ ラ ム は な い 。 大 学 独 自 の 制 度 と し て は 、 4 月 期 ( 春 学 期 ) の 入 学 と 10 月 期 ( 秋 学 期 )
の 2 回 の 入 学 機 会 が 設 け ら れ て い る こ と が 特 徴 と し て あ げ ら れ る。 ま た、4 学 期 制 を 採 っ
て い る こ と か ら 、 修 了 も 柔 軟 に な っ て い る 。 90 分 8 週 で 1 単 位 の 4 学 期 制 を 採 用 し て い
る。 入 学 式 を 年 2 回、 修 了 式 を 年 4 回 開 催 し て い る。 入 試 は 3 回。 博 士 早 期 修 了 の た め
の 特 別 な 制 度 は な い。 そ も そ も 特 別 な 制 度 を 作 っ て、 学 生 枠 を 作 る こ と に よ っ て 「定 員」
81
博士課程「短期在学コース」の創設に係る課題等に関する調査研究
と か 「充 足」 と か 数 的 な 指 標 が 生 ま れ る。 し か し、 学 生 に と っ て は、 所 属 す る 企 業 の 都 合
が あ り、 上 司 の 意 向 が 存 在 す る の で、 大 学 の 都 合 で 動 く と ど う し て も 学 生 に し わ 寄 せ が 行
く 。「 早 期 コ ー ス 」 で 入 学 し た の に 、 論 文 が な か な か 書 け な い と か 、 就 職 が 決 ま ら な い と
い う こ と に な っ て 困 る の は 学 生 で あ る。 学 生 が 困 ら な い よ う な 制 度 設 計 が 必 要。 社 会 人 以
外 の 博 士 後 期 学 生 に と っ て は、 就 職 で き な け れ ば 敢 え て 学 位 を 取 っ て も 意 味 の 無 い 場 合 も
あ る。 特 別 な 制 度 で 早 期 修 了 な ど と い う コ ー ス を 作 っ て し ま う と、 逆 に 無 理 が 生 じ る 可 能
性 が あ る。 平 成 5 年 か ら 博 士 後 期 課 程 学 生 を 受 け 入 れ 始 め て い る が、 当 初 か ら 設 置 の 主 旨
に 書 い て あ る 通 り に 運 用 し て い る だ け で あ り、 一 定 の 定 め ら れ た 基 準 を 満 た せ ば、 ル ー ル
に 則 っ て 博 士 学 位 を 出 す 。 本 学 で は 、入 試 制 度 の 中 に 「 留 学 生 枠 」 も 「 社 会 人 枠 」 も な い 。
一 般 入 試 を 3 回 行 っ て い る だ け 。 し た が っ て 、文 科 省 の 統 計 上 は 社 会 人 は「 ゼ ロ 」で あ る が 、
事 実 上 は 博 士 後 期 の 多 く に 社 会 人 が 入 学 し て い る 。「 枠 」 と か 「 コ ー ス 」 に 合 わ せ る の で
は な く、 学 生 が 大 学 の 制 度 に 合 わ せ る 柔 軟 性 が あ れ ば よ い。
博士後期課程の一般的状況
社 会 人 学 生 に は フ ル タ イ ム、 パ ー ト タ イ ム と い う 雇 用 形 態 や、 こ れ ま で の 論 文 執 筆 実 績
の あ る 人 な い 人、 上 司 に よ っ て は 早 く 帰 っ て 来 い と い う ケ ー ス も あ り 得 る の で あ り、 色 々
な 事 情 が あ る こ と を 把 握 し て お か ね ば な ら な い。 教 員 側 が そ う し た 個 別 事 情 に 合 わ せ る 意
向 が あ る か ど う か と い う こ と も 大 き い。 留 学 生 に つ い て は 大 阪 外 語 大 学 で 日 本 語 予 備 教 育
を 受 け る 者 が 多 い。 国 費 留 学 生 の 場 合 は、 通 常 の 年 限 内 で あ れ ば 奨 学 金 の 延 長 申 請 が 受 け
入 れ ら れ る 可 能 性 が 高 い の で、 早 期 に 修 了 す る メ リ ッ ト は 少 な い。 早 期 修 了 に つ い て は ほ
と ん ど 留 学 生 は い な い と 考 え て よ い 。 本 学 で は 10 月 入 学 が で き る の で 留 学 生 に と っ て も 、
メ リ ッ ト は あ る よ う だ。 社 会 人 の 博 士 課 程 学 生 の 場 合 は、 受 託 研 究 な ど で 元 々 教 員 と 共 同
研 究 を し て い る パ タ ー ン が 多 い 。 NTT、 特 許 庁 、 電 気 メ ー カ ー な ど が 実 績 と し て は 多 い 。
三 洋、 松 下 な ど。 早 期 修 了 す る 博 士 学 生 の 中 に は こ う し た 共 同 研 究 の パ タ ー ン も あ る の も
事 実。 社 会 人 ド ク タ ー で も 3 年 い る 場 合 も も ち ろ ん あ り、 両 方 あ る。
早期修了の状況
繰 り 返 す が、特 別 な 施 策 と 言 え る よ う な も の は な い。 査 読 付 学 会 誌 1 編 と 国 際 会 議 2 回
の 参 加 が 最 低 条 件 と な っ て い る。3 年 間 で は 1 年 に 1 件 で あ る が、 実 際 は 1 年 に 国 際 会 議
に は 2 回 参 加 す る 者 が 標 準 と 言 え る。 不 採 択 に な る リ ス ク も あ る こ と か ら、 発 表 は 2 回
試 み る よ う に な っ て い る の が 現 状 で あ る。 早 期 修 了 を 目 指 す 者 に 対 し て は、 教 員 と し て 国
際 会 議 を 指 定 す る 場 合 も あ る が、 基 本 的 に は 学 生 が ど の 会 議 に 発 表 す る か を 含 め て 研 究 計
画 を 立 て さ せ る 。コ ー ス ワ ー ク と い う も の は な い 。入 学 し て 1.5 年 目 に(2 年 次 の 中 間 期 )
に 中 間 報 告 会 を 行 う。 こ れ は 副 指 導 教 員 の み に よ っ て 行 わ れ る。 主 指 導 教 員 は 中 間 報 告 会
に は 参 加 し な い。 早 期 修 了 希 望 者 の 場 合 は こ れ を ス キ ッ プ で き る よ う に な っ て い る の で、
全 く の 義 務 で は な い。 分 野 の 異 な る 背 景 を 持 つ 学 生 や 卒 業 後 か な り 時 間 が 経 っ て か ら 入 学
し て き た よ う な 院 生 に 対 し て は 、 履 修 す る 科 目 を 指 導 す る 場 合 も あ る 。 4、 5 科 目 に つ い
て こ れ を 取 っ た 方 が 良 い と 指 導 す る。 そ の 程 度 の 指 導 で あ り、 コ ー ス ワ ー ク と 呼 ぶ よ う な
も の は な い。 院 生 研 究 費 は 一 般 的 な こ と は 言 え な い が、 派 遣 元 と の 受 託 研 究 の プ ロ ジ ェ ク
ト 等 に 社 会 人 学 生 と し て 参 加 す る 学 生 の 場 合 に は も ち ろ ん そ の 費 用 を 使 用 さ せ る。 そ の 他
82
第3章 国内大学へのヒアリング調査
は、 校 費 を 投 入 す る よ う な 一 般 的 な 資 金 援 助 は あ る。
修 士 課 程 ( 博 士 前 期 ) と 合 わ せ て 考 え る 必 要 は あ る 。 M2 + D1 = 3 で 修 了 す る パ タ ー
ン 。 M1.5 + D1.5 = 3 で 修 了 す る パ タ ー ン 。 M2 + D2 で 修 了 す る パ タ ー ン な ど 、色 々 あ る 。
情 報 科 学 研 究 科 が 独 自 に 行 っ て い る 「10 月 入 学 」 が 早 期 修 了 を 考 え る 上 で 重 要 な ポ イ ン
ト と 言 え る か も し れ な い 。 他 の 研 究 科 は 10 月 入 学 の 制 度 を 持 っ て い な い 。 企 業 に と っ て 、
4 月 期 の 入 学 だ け と い う の は 難 し い よ う だ 。平 成 10 年 ぐ ら い か ら 修 士 を 1 年 で 取 っ て か ら 、
博 士 に 進 学 す る 人 が 多 く な っ た。
早 期 修 了 者 の 就 職 先 だ け を 個 別 に 集 計 し た よ う な デ ー タ は な い の で わ か ら な い。 し か
し、 我 々 の 学 生 は 修 士 を も 含 め る と、 N T T、 松 下、 三 洋、 特 許 庁 な ど が あ っ た。
その他
論 文 博 士 の 制 度 は よ く な い。 必 要 な 制 度 と は 言 え な い。 本 学 に は 修 了 時 期 が 色 々 あ る の
で、 学 生 に と っ て は 選 択 肢 が 広 い の だ ろ う。3 月 期 に 合 わ せ て 修 了 す る 人 は も ち ろ ん 多 い
が 、 9 月 も 20 人 ぐ ら い 修 了 す る こ と も あ る 。 6 月 は 少 な い 。 奈 良 先 端 科 学 技 術 大 学 院 大
学 は 小 講 座 制 を と っ て い る こ と も 特 徴 の 1 つ。
写真 3-7 情報科学研究科長室及び情報科学研究科棟エントランス(ヒアリング場所)
(2) 院 生 ヒ ア リ ン グ
1) 1 年 で 修 士 学 位 を 取 得 し た A 氏 の 場 合
現職 国の審査機関
調 査 日 2007 年 3 月 20 日
修了課程 情報科学研究科・博士前期課程・情報生命科学専攻
性別 男
学歴
1999.3 有 機 化 学 大 学 卒
2001.3 有 機 化 学 同 大 学 院 修 了 ( こ の 時 最 初 の 修 士 学 位 を 取 得 )
2001-2006 国 の 審 査 機 関
2006.4-2007.3 上 記 審 査 機 関 か ら 派 遣 。 1 年 で 2 つ め の 修 士 号 取 得 。
入学まで
当 該 審 査 機 関 の 仕 事 は 民 間 企 業 の 活 動 を 審 査 す る こ と な の で、 融 合 領 域 に つ い て の 専 門
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博士課程「短期在学コース」の創設に係る課題等に関する調査研究
知 識 を 必 要 と す る。 バ イ オ テ ク ノ ロ ジ ー に つ い て の 審 査 を す る 部 門 に 5 年 間 勤 務 し た。 当
初 は 情 報 科 学 研 究 科 で は な く、 バ イ オ サ イ エ ン ス 研 究 科 に 入 学 し た。4 月 終 わ り 頃 に 奈 良
先 端 科 学 技 術 大 学 院 大 学 の 最 初 の 指 導 教 員 と コ ン タ ク ト を と り、 転 研 究 科 を 6 月 1 日 に
行 っ た。5 月 に 配 属 希 望 調 査 が あ っ た が、 転 研 究 科 も 認 め ら れ て い る。4 月 か ら 5 月 に か
け て バ イ オ サ イ エ ン ス 研 究 科 で 「現 代 生 物 学」 と い う 科 目 を 履 修 し、 エ ッ セ ン シ ャ ル バ イ
オ に つ い て の ひ と 通 り の 知 識 を 得 た。 研 究 は バ イ オ イ ン フ ォ マ テ ィ ク ス に 進 み た か っ た の
で、 自 由 度 の 高 い 制 度 を 利 用 し て 転 研 究 科 を し た。 職 種 に 応 じ て 奈 良 先 端 科 学 技 術 大 学 院
大 学 を 選 ん だ こ と も あ る が、 他 大 学 で 融 合 領 域 を 履 修 で き る 機 会 が 少 な か っ た た め、 本 学
を 選 ん だ。
入学後の就学
1 年 で 職 場 復 帰 を し な け れ ば な ら な い の で、1 年 で 20 単 位 の 取 得 を 目 指 し た。 そ の 結 果、
7 月 末 に は ほ ぼ 20 単 位 を 取 得 で き た の で、 修 了 を 目 指 す こ と と な っ た。 学 生 宿 舎 に 居 住 し、
ほ ぼ 毎 日 大 学 に 通 っ た。 前 の 大 学 で も 修 士 を 取 っ た た め、 今 回 の 修 士 学 位 は 2 つ め の 修 士 で
あ る。 前 の 大 学 で は 「探 索 型」 で 色 々 試 し な が ら 自 分 の テ ー マ を 探 す 時 間 が あ っ た が、 奈 良
先 端 科 学 技 術 大 学 院 大 学 の 場 合 は、 密 度 が 濃 く、 探 索 し て い る 時 間 は な い。 焦 点 を 絞 っ て 論
文 作 成 に 早 く か ら 取 り 掛 か っ た。 博 士 進 学 で も 私 の 分 野 で は 2 年 で 取 得 は 難 し い か も し れ な
い。 レ ポ ー ト 課 題 が 多 い。 プ ロ グ ラ ム も 自 分 で 書 く 経 験 を し た。 カ リ キ ュ ラ ム も 良 い の で は
な い か。
入学後の生活
相 部 屋 の ス ペ ー ス を 得 ら れ た。 パ ソ コ ン 環 境 等 問 題 は な か っ た。 収 入 は 派 遣 元 の 審 査 機
関 か ら 得 つ つ、 研 修 と し て 入 学 し た の で、 特 に 問 題 は な か っ た。 通 常 通 り で あ っ た。 授
業 料 も 研 修 派 遣 元 か ら 支 出 し て も ら う 形 だ っ た。 奈 良 先 端 科 学 技 術 大 学 院 大 学 は 異 分 野 の
人 間 が 参 入 す る 機 会 が あ る。 や っ た ら で き る の で は な い か と い う 気 に な る よ う な 環 境 が あ
る。 通 常 の 大 学 院 の 入 試 は 「内 部 生 有 利」 と い う 条 件 が 決 ま っ て し ま っ て い る が、 本 学 の
場 合 に は そ の よ う な こ と は な い。 内 部 生 有 利 の 条 件 下 で 受 験 す る の は コ ス ト が か か る。 通
常、 異 分 野 の 人 間 は 何 を 勉 強 し た ら よ い か わ か ら な い こ と が 多 い の で は な い か。 奈 良 先 端
科 学 技 術 大 学 院 大 学 の 場 合 は、 そ う し た 困 難 を 克 服 で き る 環 境 が あ る。
写真 3-8 院生ヒアリングの様子
84
第3章 国内大学へのヒアリング調査
2) 2 年 で 博 士 学 位 を 取 得 し た B 氏 の 場 合 (e-mail に よ る 補 足 調 査 )
現所属・職名 奈良先端科学技術大学院大学・情報科学研究科・特任助手
学歴
1998 年 4 月 国 立 A 大 学 基 礎 工 学 部 情 報 科 学 科 入 学
2001 年 3 月 同 大 学 中 退 ( 大 学 院 へ の 飛 び 級 入 学 の た め )
2001 年 4 月 奈 良 先 端 科 学 技 術 大 学 院 大 学 情 報 科 学 研 究 科 入 学
2003 年 3 月 同 博 士 前 期 課 程 修 了 修 士 学 位 名 修 士 ( 工 学 )
2005 年 3 月 同 博 士 後 期 課 程 修 了 博 士 学 位 名 博 士 ( 工 学 )
職歴
2003 年 4 月 ~ 2005 年 3 月 同 大 ・ 情 報 科 学 研 究 科 COE 奨 励 研 究 員
2005 年 4 月 ~ 2005 年 9 月 同 大 ・ 情 報 科 学 研 究 科 COE ポ ス ド ク 研 究 員
2005 年 10 月 ~ 現 在 同 大 ・ 情 報 科 学 研 究 科 特 任 助 手 ( 現 職 )
博士後期課程への進学までに関して
私 の 在 籍 し た 大 学 の 学 部、 大 学 院 の 双 方 で、 飛 び 級 に よ る 大 学 院 進 学 ま た は 短 期 修 了 に
よ る 学 位 取 得 が 奨 励 さ れ て い ま す。 在 籍 し た 大 学 の 学 部 で は、 内 部 進 学 と し て 同 学 部 の 大
学 院 に 進 む 際 に も 飛 び 級 で の 進 学 が 認 め ら れ て お り、 私 が 進 学 し た 別 の 大 学 院 で も 学 部 3
年 次 を 終 了 し て い れ ば 受 験 資 格 が あ る な ど、 大 学 院 入 学 試 験 の 受 験 資 格 に 対 し て は 柔 軟 な
姿 勢 が 取 ら れ て い ま す。 飛 び 級 で の 入 学 が 出 来 れ ば、 大 学 学 部 入 学 か ら 数 え て 合 計 5 年 で
修 士 の 学 位 を 取 得 す る こ と が で き、 例 え ば、 大 学 受 験 で 浪 人 し た 人 が 学 部 を 卒 業 す る 時 と
同 じ 年 齢 で 修 士 を 取 得 で き る こ と は 大 き な 魅 力 で し た。
博 士 前 期 課 程 の 入 学 の 際 に 大 学 を 変 え て い ま す が、 学 部 3 年 次 に、 所 属 し て い た 大 学 内
で 進 学 し た 大 学 院 の 説 明 会 が あ り、 そ の 際 に 研 究 内 容 に つ い て 興 味 を 持 ち、 オ ー プ ン キ ャ
ン パ ス 等 に 参 加 し て 受 験 を 決 め ま し た。
博 士 後 期 課 程 へ の 進 学 に つ い て は、 博 士 前 期 課 程 で 生 活 を 送 っ て い く 中 で、 指 導 し て く
だ さ る 先 生 方、 研 究 機 材 や 機 会 等 の 恵 ま れ た 研 究 環 境 に 居 る こ と を 実 感 し、 修 士 取 得 時 に
一 般 企 業 に 就 職 し て こ の 環 境 を 手 放 す の が 惜 し い と 思 い、 博 士 後 期 課 程 へ の 進 学 を 決 意 し
ま し た。
博士後期課程入学後の修学について
大 学 院 で は、 博 士 取 得 の 条 件 と し て、 博 士 の 学 位 を 取 得 す る た め の 規 定 を 満 た し て い る
こ と (主 に 論 文 誌 に 論 文 を 筆 頭 著 者 と し て 発 表 す る こ と が 必 要) と、 公 聴 会 や 最 終 試 験 を
経 て 博 士 論 文 を 提 出 す る こ と が 必 要 と な り ま す。 私 が 早 期 に 修 了 す る こ と が で き た の は、
研 究 が 軌 道 に 乗 り 早 い 段 階 で 論 文 誌 に 論 文 が 採 録 さ れ た こ と、 そ し て 学 位 取 得 後 の 就 職 先
が あ っ た こ と が 大 き な 要 因 だ と 考 え て い ま す。 在 学 中、 時 間 は 不 規 則 で し た が、 休 日 を
除 い て ほ ぼ 毎 日 登 校 し て い ま し た。
入学後の生活について
大 学 院 で は、 敷 地 内 に 学 生 宿 舎 が あ り、 半 数 以 上 の 学 生 が そ こ で 生 活 し て い ま す。 私 も
学 生 宿 舎 に 住 ん で い ま し た が、 一 般 に 下 宿 す る よ り も 必 要 経 費 が 安 く、 授 業 料 を 除 け ば 日
85
博士課程「短期在学コース」の創設に係る課題等に関する調査研究
本 育 英 会 (現 ・ 日 本 学 生 支 援 機 構) か ら 貸 与 さ れ る 奨 学 金 の み で 生 活 す る こ と が 可 能 で し
た 。ま た 、TA や 博 士 後 期 課 程 の 学 生 を 対 象 と し た 奨 励 研 究 員 制 度 等 、大 学 内 で の 収 入 が あ っ
た た め、 博 士 後 期 課 程 で は 授 業 料 も 親 に 頼 る こ と な く 自 分 で 支 払 う こ と が 出 来 ま し た。 博
士 前 期 課 程 に 入 学 以 降、 学 校 に 関 係 な い 一 般 で の ア ル バ イ ト は し て い ま せ ん。
個 人 の 研 究 ス ペ ー ス は、 研 究 室 の デ ス ク と 実 験 ス ペ ー ス 共 に 他 の 大 学 と 比 べ て も 広 い 方
だ と 思 い ま す。 ま た、 常 用 端 末 と し て ワ ー ク ス テ ー シ ョ ン 端 末 が 一 人 一 台 用 意 さ れ て い る
な ど、 計 算 機 環 境 も 恵 ま れ て い ま す。 た だ し、 こ こ で 述 べ た こ と が 早 期 に 修 了 す る た め に
重 要 な 要 因 に な っ た か ど う か は 不 明 で す。
その他
研 究 者 に と っ て 、 30 歳 ま で に ど れ だ け の 経 験 を 積 め る か が 、 そ の 後 の 研 究 人 生 に 大 き
な 影 響 を 与 え る と 言 わ れ て い ま す 。 早 期 修 了 や 浪 人 ・ 留 年 な ど が 無 け れ ば 通 常 27 歳 で 博
士 の 学 位 を 取 る こ と に な り ま す が、 私 は 博 士 前 期 課 程 へ の 入 学 時 に 1 年、 博 士 後 期 課 程 修
了 時 に 1 年 の 計 2 年 を 短 縮 し て 25 歳 で 博 士 の 学 位 を 取 得 し た た め 、 30 歳 ま で に 社 会 人 の
研 究 者 と し て 過 ご せ る 時 間 を、 よ り 長 く 得 る こ と が で き ま し た。 博 士 後 期 課 程 の 学 生 と 社
会 人 の 研 究 員 と で は、 給 料 の 有 無 な ど 生 活 面 で の 違 い だ け で な く、 出 張 や 機 材 の 購 入 な ど
に 使 用 で き る 研 究 費 の 有 無、 科 研 費 の 申 請 資 格 の 有 無 な ど、 制 度 と し て 明 確 に 差 が あ り ま
す。 ま た、 給 料 を も ら っ て 仕 事 と し て 研 究 を 行 う 研 究 員 と な る こ と で、 責 任 を 持 っ て 研 究
を 行 う よ う に な る、 指 導 教 員 に 頼 る の で は な く 何 事 も 自 分 で 手 配 を 行 う よ う に な る な ど、
学 生 に で き な い 経 験 を 積 む 機 会 も 多 く 得 る こ と が で き て お り、 早 期 修 了 し て 学 位 を 得 る こ
と が で き た こ と は、 自 分 に と っ て 非 常 に 良 か っ た と 思 っ て い ま す。
し か し、 博 士 後 期 課 程 の 学 生 の 間 と い う の は、 研 究 者 と し て そ の 後 の 人 生 を 送 っ て い く 上
で 必 要 な 知 識 や 常 識 な ど を 学 び、 博 士 論 文 に 関 す る 研 究 だ け で な く、 興 味 を 持 っ た 事 柄 に 対
す る 自 由 な 調 査 ・ 研 究 や、 研 究 室 運 営 の 手 伝 い な ど 多 く の 経 験 を 積 ん で、 一 人 前 の 研 究 者 に
な る べ く 修 行 す る 期 間 で も あ り ま す。 短 期 修 了 を す る と、 学 生 の 間 に 取 得 す る べ き 能 力 や 経
験 を 自 分 が 有 し て お ら ず、 戸 惑 う こ と も 多 く あ り ま し た。 こ の 点 で は、 学 生 と し て 守 ら れ た
環 境 で 自 由 な 研 究 や 学 習 が で き る 期 間 も、 社 会 人 に な っ て し ま う と 二 度 と 過 ご す こ と の で き
な い も の で あ り、 早 期 修 了 が 本 人 に と っ て 必 ず し も 良 い こ と ば か り で は な い と も 思 い ま す。
幸 い な こ と に、 私 の 場 合 は 学 生 時 代 に 所 属 し た 研 究 室 に 残 り、 理 解 の あ る 他 の ス タ ッ フ に も
恵 ま れ て い る た め、 学 生 時 代 に 得 る こ と の 出 来 な か っ た 分 の 経 験 も 同 時 に 積 む こ と が で き て
い ま す が、 学 生 時 代 と は 異 な る 場 所 に 入 学 し た 場 合 は、 苦 労 も 多 い と 思 い ま す。
博 士 の 学 位 取 得 者、 も し く は ポ ス ド ク 後 の 就 職 難 が 問 題 と な っ て い る 時 代 で も あ り ま す
の で、 博 士 後 期 課 程 の 早 期 修 了 に つ い て は、 修 了 後 の 就 職 先 や 仕 事 内 容、 短 い 中 で ど の よ
う な 学 生 生 活 を 送 っ た の か な ど、 多 く の 要 素 が 関 係 し て お り、 短 い か ら 良 い と 単 純 に 片 づ
け る こ と の 出 来 な い 複 雑 な 問 題 で あ る と 思 い ま す。
3) 2 年 で 博 士 学 位 を 取 得 し た C 氏 の 場 合 (e-mail に よ る 補 足 調 査 )
現所属・職名 奈良先端科学技術大学院大学・情報科学研究科・助教
学歴
1999 年 3 月 公 立 B 大 学 工 学 部 卒 専 攻 名 : 情 報 工 学 科
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第3章 国内大学へのヒアリング調査
2001 年 3 月 奈 良先端科学技術 大 学 院 大 学 博 士 前 期 課 程 修 了 修 士 学 位 取 得 修 士(工 学)
2001 年 3 月 奈 良 先 端 科 学 技 術 大 学 院 大 学 博 士 後 期 課 程 進 学
2003 年 3 月 奈 良 先 端 科 学 技 術 大 学 院 大 学 博 士 後 期 課 程 修 了
2003 年 3 月 博 士 学 位 取 得 博 士 ( 工 学 )
2003 年 4 月 ~ 現 職
博士後期課程への進学までに関して
元 々 博 士 後 期 課 程 へ の 進 学 を 念 頭 に 博 士 前 期 課 程 へ 入 学 し ま し た が、 配 属 研 究 室 の 研 究
の 質 お よ び 研 究 環 境 の 充 実 度 が 高 く、 後 期 課 程 へ の 進 学 を 決 断 し ま し た。
博士後期課程入学後の修学について
情 報 系 で は、 成 果 を 出 す た め に プ ロ グ ラ ミ ン グ ス キ ル が 必 要 な 場 合 が 多 い で す が、 入 学
前 か ら 趣 味 で 比 較 的 大 規 模 な プ ロ グ ラ ミ ン グ を 行 っ て い た た め、 ア イ デ ア を 計 算 機 上 に 実
装 し、 実 験 す る と い う 一 般 に は 時 間 の か か る 作 業 を 効 率 的 に こ な せ た こ と が 早 期 修 了 の 重
要 な 一 要 因 で あ る と 思 い ま す。 ま た、 研 究 の 方 向 性 に つ い て は、 ス タ ッ フ に 的 確 に 指 導 し
て 頂 く こ と で、 効 率 よ く 成 果 が で る よ う に 導 い て も ら え た と 思 い ま す。 こ れ も 短 期 修 了 の
大 き な 要 因 で す。
入学後の生活について
生 活 環 境 が 早 期 修 了 に 重 要 な 要 因 に な っ た と は 考 え て お り ま せ ん。
その他
特 に な し。
4) 1.5 年 で 博 士 学 位 を 取 得 し た C 氏 の 場 合 (e-mail に よ る 補 足 調 査 )
現所属・職名 奈良先端科学技術大学院大学・情報科学研究科・助教
学歴
1996 年 3 月 国 立 C 大 学 卒 専 攻 名 :( 理 学 部 )
1998 年 3 月 C 大 学 博 士 前 期 課 程 修 了 修 士 ( 理 学 )
1999 年 3 月 C 大 学 博 士 後 期 課 程 中 途 退 学
1999 年 4 月 奈 良 先 端 科 学 技 術 大 学 院 大 学 博 士 前 期 課 程 入 学
2000 年 3 月 奈 良 先 端 科 学 技 術 大 学 院 大 学 博 士 前 期 課 程 修 了 修 士 ( 工 学 )
2000 年 4 月 奈 良 先 端 科 学 技 術 大 学 院 大 学 博 士 後 期 課 程 進 学
2001 年 9 月 奈 良 先 端 科 学 技 術 大 学 院 大 学 博 士 後 期 課 程 修 了
2001 年 9 月 博 士 学 位 取 得
職歴
2001 年 10 月 ~ 現 職 (2007 年 3 月 ま で 職 名 は 助 手 )
博士後期課程への進学までに関して
学 歴 に 記 し た 通 り 一 度 C 大 学 理 学 研 究 科 の 博 士 後 期 課 程 を 1 年 で 中 退 し、 ア ル バ イ ト な
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博士課程「短期在学コース」の創設に係る課題等に関する調査研究
ど を 通 し て 以 前 か ら 興 味 を 持 っ て い た 情 報 科 学 へ と 研 究 分 野 を 変 更 し た。 大 学 院 の 選 択 に
あ た っ て は、 学 部 を 持 た ず 多 様 な 分 野 か ら の 進 学 者 を 受 け 入 れ て い る 奈 良 先 端 科 学 技 術 大
学 院 大 学 の 柔 軟 性 に 魅 力 を 感 じ た。 ま た 高 校 時 代 の 先 輩 が 助 手 と し て 在 籍 し て い た こ と、
3 月にも入試を実施しており 4 月からの入学が可能であったことも奈良先端科学技術大学
院 大 学 を 選 択 し た 要 因 で あ る。
博士後期課程入学後の修学について
学歴に記した通り奈良先端科学技術大学院大学の修士入学段階でストレートの学生よ
り も 3 年 余 分 に か か っ て い る 状 態 だ っ た た め、 修 士 入 学 時 か ら 早 期 修 了 を 視 野 に 入 れ て
い た。 奈 良 先 端 科 学 技 術 大 学 院 大 学 は 博 士 前 期 ・ 後 期 課 程 合 わ せ て 3 年 以 上 大 学 院 に 在
籍 す る こ と を 修 了 の 要 件 と し て 定 め て い る が、 こ の 期 間 に は 奈 良 先 端 科 学 技 術 大 学 院 大
学以外の大学院における在籍期間も含めることが可能であり (ということが奈良先端科
学 技 術 大 学 院 大 学 で 2 年 経 過 し た と き に わ か り )、 C 大 学 で の 大 学 院 在 籍 期 間 と 合 わ せ る
と 既 に 3 年 以 上 で あ っ た た め 早 期 修 了 し た。 早 期 修 了 に あ た っ て は 指 導 教 員 の 強 い 後 押
し が あ っ た。 修 了 時 の 業 績 は 査 読 付 き 論 文 1 本、 国 際 会 議 で の 発 表 3 回 で あ り 平 均 的 だ
と 思 わ れ る。
入学後の生活について
入 学 後 の 生 活 に は 早 期 修 了 の 要 因 と な っ た も の は 特 に な い。
その他
早 期 修 了 後、 同 じ 研 究 室 の 助 手 と し て 採 用 さ れ た た め、 身 分 が 保 証 さ れ た 上 で 研 究 も 継
続 し て 行 う こ と が で き た こ と は 幸 運 で あ っ た。 し か し も う 少 し 学 生 の 期 間 が 長 か っ た 方 が
自分の研究をより突き詰めた上で博士論文をまとめることができたのではないかという点
が 残 念 で は あ る。
3-2-6 京 都 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科
特徴:ほとんど論文の書き終わっている社会人研究者が最後に 1 年間でまとめる早期修了
パ タ ー ン で あ る 。 ま た 、 早 期 修 了 し て い る の は 、「 全 て 都 市 環 境 工 学 出 身 」 と の こ
と で あ っ た。
(1) 研 究 科 長 ヒ ア リ ン グ
2007 年 3 月 26 日 ( 月 ) 16:00 ~ 17:00
京都大学大学院工学研究科・研究科長 西本清一教授
工学研究科大学院課長 大西伸広氏
大学の方針
グ ロ ー バ ル COE 申 請 書 に は 博 士 課 程 の 充 足 率 を 書 く 欄 が あ る こ と に 見 ら れ る よ う に 、
博 士 学 生 の 充 足 率 は 1 つ の 論 点 に な っ て い る。 早 期 修 了 者 は、 在 籍 時 に 論 文 が ほ と ん ど 出
来 上 が っ て い る こ と が 前 提 で 入 学 す る。 論 文 の と り ま と め の 1 年 と し て 入 学 し て く る。 大
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第3章 国内大学へのヒアリング調査
学 と し て は、 博 士 課 程 に 在 籍 し た と い う 実 績 を 作 る こ と も 重 要 な 要 素。 早 期 修 了 コ ー ス 設
立 の 主 旨 は わ か ら な い で も な い が 、 強 制 す る も の で も な か ろ う 。「 早 期 」 と い う の は 2 つ
の パ タ ー ン が あ る。 既 に 業 績 の あ る 人 を 一 定 の ク ラ イ テ リ ア の 下 で 学 位 を 認 め る も の と、
スクーリング等を通して研究経験を積ませるのを前提として優秀だから早く出そうという
も の。 し か し 学 位 を 早 く 出 す か ら と い っ て、 市 場 で の 評 価 が 必 ず し も 高 い わ け で は な い こ
と を 肝 に 銘 じ る べ き で あ る。 ハ ー バ ー ド、 プ リ ン ス ト ン は だ い た い 5 年 か か る。4 年 で 博
士 を 取 る 人 は、 こ う し た 大 学 に は あ ま り い な い。 し か し ハ ー バ ー ド、 プ リ ン ス ト ン の 学 位
の 評 価 は 高 い。 全 米 で 見 る と、 だ い た い 4 年 で 学 位 を 取 る の が 平 均 的 と 言 え る だ ろ う が、
5 年 か け て も 評 価 の 高 い 学 位 を 出 し て い る。 つ ま り、 早 く 出 す か ら ト ッ プ な の で は な く、
ク オ リ テ ィ が 高 い か ら。 低 い 評 価 の 学 位 を 出 し て も し ょ う が な い。 若 く て 専 門 知 識 も あ る
が 幅 は 狭 い と い う の も よ く な い。 専 門 だ け で な く 幅 広 い 知 識 が あ る こ と が 重 要。 そ う い う
場 合 は ス ク ー リ ン グ に よ っ て ク オ リ テ ィ を 高 め る 必 要 が あ る。 単 に 外 形 的 な 数 字 だ け で は
ダ メ。 学 位 取 り に く い と い う の が 評 価 を 悪 く す る わ け で は な い。 い ま は 「論 文 博 士 や め ま
し ょ う 」 と い う 流 れ に あ り 、 早 期 修 了 も 多 く な っ て き て い る が 、「 優 秀 だ か ら 早 く 出 す 」
と い う 評 価 方 法 の 運 用 に つ い て、 守 っ て い る グ ル ー プ と 守 っ て い な い グ ル ー プ が あ る。 下
か ら 上 が っ て く る 優 秀 コ ー ス と、 社 会 人 の 経 験 を 論 文 に す る コ ー ス は、 議 論 を 混 同 し て は
な ら な い。 ど ち ら の こ と か ハ ッ キ リ さ せ る べ き。
博士後期課程の一般的状況
研 究 科 内 部 に お い て、 あ ま り に も 厳 し い と こ ろ と、 ド ン ド ン 学 位 を 出 す と こ ろ と バ ラ ツ
キ が あ る の が 現 実。 専 攻 に よ っ て 異 な る が、 早 期 修 了 の た め に は、 刊 行 さ れ た 査 読 論 文 3
報 プ ラ ス 投 稿 中 2 報 で 合 計 5 報 と い う の が こ れ ま で の 基 準 で あ っ た が、 最 近 は 3 報 と い
う よ う に 緩 和 さ れ て き て い る。 そ れ で も 社 会 人 の 学 生 に 対 し て は、 課 程 博 士 学 生 よ り も
抑 制 気 味 に 学 位 を 出 し て い る。 早 期 修 了 の 基 準 は 研 究 科 と し て 単 一 の も の が あ る の で は な
く、 そ れ ぞ れ の 専 攻 が 持 っ て い る。 研 究 科 は 持 た な い。 博 士 後 期 の 充 足 率 の 問 題 が 顕 在 化
し て き た の は 、 平 成 16 年 頃 か ら 。 早 期 修 了 者 は 単 位 を 6 単 位 を 取 っ た 時 点 で 学 位 論 文 を
提 出 さ せ る。 し か し、 博 士 学 位 を 出 す の に 易 し い と こ ろ ほ ど 充 足 率 が 低 く、 逆 に 難 し い と
こ ろ ほ ど 充 足 率 が 高 い と い う 現 状 も あ る。 こ の こ と を 認 識 す る の が 重 要。 単 年 度 の 博 士 後
期 充 足 率 は 8 割 程 度 に な っ て い る が 、「 学 位 取 り や す い イ コ ー ル 充 足 率 ア ッ プ 」 と は 考 え
て い な い。 公 表 論 文 数 を 減 ら す の で あ れ ば、 何 ら か の 広 い 知 識 を 習 得 さ せ る コ ー ス ワ ー ク
を 設 定 せ ざ る を 得 な い だ ろ う。 単 位 と し て き っ ち り 品 質 保 証 す る。 こ れ ま で の よ う に 「研
究 を み っ ち り や っ て、 授 業 は テ キ ト ー に」 の ま ま 早 期 修 了 を 創 設 す る と い う の で は、 落 と
し 穴 に は ま る の で は な い だ ろ う か。 早 期 修 了 の 場 合、 審 議 す る 会 議 が 1 つ 多 い の で、 通 常
2 ヶ 月 で 済 む 審 査 の 過 程 が 3 ヶ 月 か か る。 早 く 出 す の だ か ら し っ か り 審 査 し よ う と い う 形
に な っ て い る。 早 期 コ ー ス を 創 設 す る の で あ れ ば、 こ の 審 査 過 程 を 簡 素 化 す る こ と も で き
る か も し れ な い。 学 生 に と っ て は メ リ ッ ト に な り う る。 留 学 生 は 論 文 の 質 と い う よ り は、
取 得 自 体 が 目 的 に な っ て し ま っ て い る。 難 し い と こ ろ は 嫌 だ か ら、 よ そ に 行 こ う と い う こ
と に な っ て し ま い が ち 。 企 業 が 派 遣 す る 場 合 は 、「 こ の 人 は 頑 張 っ た か ら 取 ら せ た い 」 と
考 え て い る。
89
博士課程「短期在学コース」の創設に係る課題等に関する調査研究
早期修了の状況
あ ま り に も 論 文 数 の こ と を 言 い 過 ぎ る と 若 い 人 に し わ 寄 せ が い く。 若 い 人 が デ ー タ を 取
る 作 業 を や り、 先 生 が 論 文 を 書 く と い っ た 形 に な る 危 険 性 も あ る。 研 究 計 画 か ら 立 案 さ せ
て 企 画 さ せ る の が 教 育 と し て は 重 要。 先 生 か ら 言 わ れ た も の だ け を や っ て い く と い う 人 も
出 て き て し ま う 。「 短 縮 」 に 走 る と 落 と し 穴 に は ま る 。 何 と は な し に あ る 外 圧 「 学 位 は 早
い ほ う が 良 い」 と い う こ と に 屈 し て し ま う と、 値 崩 れ す る 危 険 が あ る。 少 な く と も ス ク ー
リ ン グ の 充 実 は 必 要 と な る。 学 ぶ 価 値 の あ る ス ク ー リ ン グ を 創 設 す る た め に は ど う し た ら
よ い か。 今 ま で の 日 本 で は 修 士 学 位 が 売 れ 口 で、 ど ん ど ん 出 し て き た。 原 理 原 則 は 欧 米 か
ら 来 て い る。 そ の 点、 日 本 の 大 学 も 落 と し 込 み が う ま か っ た。 マ ー ケ ッ ト が 拡 大 し て き
た。 し か し こ れ か ら は 違 う。 昔 の よ う に 修 士 学 位 で 事 足 り る と い う 分 野 は 競 争 力 を 失 う だ
ろ う 。「 研 究 す る 能 力 が あ る こ と 」 と 「 研 究 の 成 果 が あ る こ と 」 の う ち 、 ど っ ち が 博 士 と
言 え る か ? 前 者 で あ る。 い ず れ 博 士 の 時 代 が 来 る。 他 研 究 科 で は シ ニ ア オ ー サ ー な ど は 1
報 で 博 士 を 出 し て い る。 外 形 的 な 本 数 の 観 点 か ら 見 れ ば、 相 当 楽 な も の に な っ て い る。 し
か し、 ク リ エ イ テ ィ ビ テ ィ、 リ ー ダ ー シ ッ プ と い う 点 か ら 見 て、 こ う し た 学 位 取 得 者 を 企
業 が 歓 迎 す る か ど う か は わ か ら な い。 博 士 学 位 の 社 会 的 意 味 を 真 剣 に 考 え る 必 要 が あ る。
外 圧 に も 外 形 に も と ら わ れ ず、 抜 本 的 に 考 え る。
その他
本 来 的 に は 3 年 と い う 原 理 原 則 上、早 期 修 了 に は 手 続 き が 1 つ 多 く 設 け ら れ て い る。 こ
れ を 最 初 か ら 早 期 修 了 と し て 審 査 を 経 て 受 け 入 れ る こ と に よ り、 出 す 時 の 手 続 き を 簡 略 化
す る と い う コ ー ス は あ り 得 る。 し か し、 博 士 学 位 は さ っ さ と ド ン ド ン 出 す と い う も の で は
な い。
写真 3-9 京都大学工学部 8 号館(ヒアリング場所)
(2) 指 導 教 員 ヒ ア リ ン グ
2007 年 3 月 26 日 ( 月 ) 13:15 ~ 14:30
大西有三教授 京都大学大学院工学研究科都市環境工学専攻・図書館長
教 授 1、 助 教 授 1、 助 手 1、 技 術 職 員 1、 D5、 M9、 B4、 研 究 員 2
地 盤 工 学、 ジ オ サ イ エ ン ス、 土 木 工 学
90
第3章 国内大学へのヒアリング調査
研究スタイル
地 盤 工 学 会、 土 木 学 会、 材 料 学 会 な ど に 基 盤 を 置 く。 産 学 官 連 携 プ ロ ジ ェ ク ト で 5 年 く
ら い 国 交 省 を 中 心 に 研 究 会 が あ る。 国 は デ ー タ を 提 供 し て く れ る。 共 催 と い う 形。
博士指導の一般的状況
社 会 人 入 学 し て 博 士 を 取 得 し た 早 期 修 了 者 の 実 績 は 8 名。 全 員 社 会 人 入 学 で 早 期 修 了 し
た。 こ れ 以 外 に も 社 会 人 入 学 し た 人 は 何 人 も い る。1 人、 管 理 職 に 就 い た の で 忙 し く な っ
て あ き ら め た 人 も い る。 そ の 8 名 以 外 に、 現 在 在 籍 し て い る 者 が 2 名 い る。 阪 神・淡 路 大
震 災 の 後、 地 震 時 の 斜 面 防 災 研 究 で 社 会 人 ド ク タ ー が 何 人 か 続 け て 入 っ て き た。 そ の 後 は
若 干 減 少 気 味。 今 い る 2 名 は 2 年 ぶ り に 入 っ て き た。 現 在、 社 会 人 と し て 在 籍 し て い る 2
名 は 電 力 会 社 と コ ン サ ル タ ン ト に 勤 務 す る 人 で、2 名 と も 東 京 に 勤 務 し て い る。1 名 は あ
ま り 転 勤 が な く、 比 較 的 安 定 的 に 業 績 を 溜 め る こ と が で き る 立 場 に い る 人。 も う 1 名 は 共
同 研 究 を し て い る 企 業 か ら 来 た 人。 こ の 共 同 研 究 は 数 年 継 続 し て い る の で、 論 文 が た ま っ
て き た。 草 稿 を ベ ー ス に 書 き 上 げ る た め に 入 学 し た。 あ る 高 速 道 路 公 団 か ら 入 学 し た 技 術
者 は、 自 分 の 設 計 の 仕 事 を ど の よ う に 工 夫 す る か と い う こ と を テ ー マ に 学 位 を 取 っ た。 道
路 公 団 技 術 者 は 技 術 要 求 が 高 い。 企 業 の 合 意 が あ れ ば、 こ れ ま で の 経 験 を 研 究 に 出 来 る ポ
テ ン シ ャ ル が あ る。
早期修了の状況
8 名 の う ち 、 1 年 で 博 士 を 取 っ た 人 は 3 名 。 2 年 が 5 名 。 む し ろ 2 年 が 平 均 的 と 言 え る 。
長 い 人 で 5 年 か か っ て い る 。入 学 時 に 、テ ー マ に 関 す る 論 文 が 2 本 程 度 あ る か ど う か チ ェ ッ
ク す る 。 早 期 修 了 の 場 合 は 理 由 書 を 書 く の で 、業 績 が 多 く な い と 学 内 の 会 議 に 諮 り に く い 。
実 際 は 2 本 あ っ て も 厳 し い。 業 績 一 覧 が 2 ペ ー ジ に わ た る な ど、業 績 は 多 い 方 が 良 い。 早
期 修 了 で 入 っ て く る 主 な 動 機 は、 学 会 活 動 で 知 り 合 う う ち に、 学 位 を 取 り た く な っ て 入 学
す る 場 合 が ほ と ん ど。 役 所 の 担 当 者 や 企 業 の 研 究 者 な ど、 研 究 職 に 近 い 立 場 の 人 は 比 較 的
学 位 を 取 り や す い。 企 業 に 勤 め る 人 で、 納 期 に 多 忙 に な る よ う な 職 種 の 人 は ど う し て も 大
学 に 来 る の が 難 し く な る。 社 会 人 入 学 者 は 企 業 で の 勤 務 状 況 に つ い て の 配 慮 が 必 要。 し た
が っ て、 大 学 に 来 な く て も 認 め ら れ る 論 文 博 士 の 形 を あ る 程 度 残 す の が 望 ま し い。 大 学 に
通 う こ と 自 体 が 難 し い の で、 ス ク ー リ ン グ を 履 修 す る こ と が さ ら に 難 し い。 学 会 発 表 を 単
位 換 算 す る 等 の 運 用 が 必 要 。 イ ン タ ー ネ ッ ト 講 義 で も 良 い 。「 早 期 修 了 コ ー ス 」 を 大 学 が
創 設 す る こ と の メ リ ッ ト は む し ろ 、 入 学 者 が 社 内 を 説 得 し や す く す る こ と に あ る 。「 あ の
人 は 早 期 修 了 コ ー ス だ か ら」 と い う こ と で、 社 内 の コ ン セ ン サ ス を 得 や す く し、 通 学 し や
す く す る。 社 内 の 仕 事 を 打 ち 切 っ て 大 学 に 通 う 苦 労 を 減 ら し て あ げ る こ と が 重 要 と な る。
修 士 課 程 で も 新 し い 試 み を し て い る 。 経 営 管 理 大 学 院 で は 、 定 員 60 名 の う ち 、 社 会 人 入
学 者 の 目 標 が 20 名 と し た 。 い ま の と こ ろ 10 名 が 社 会 人 入 学 し て き て い る 。 鹿 島 、 大 林 、
建 設 技 術 研 究 所、 パ シ フ ィ ッ ク コ ン サ ル タ ン ト な ど 関 連 企 業 の 社 会 人 が 修 士 課 程 を と る た
め に 入 学 し て き て く れ て い る。 業 務 の デ ー タ や 技 術 の 蓄 積 を う ま く 取 り 込 め る の が 理 想
的。 プ ロ ジ ェ ク ト オ リ エ ン テ ッ ド で 学 位 を 取 れ る 人 が 多 い。 経 営 管 理 大 学 院 は 銀 行 や 証 券
会 社 か ら の 寄 附 講 座 が あ る。 授 業 を 提 供 し た い と い う 金 融 機 関 が あ る の で、 こ れ ら と 連 動
し て い る 。 修 士 学 位 を 1 年 で 出 せ そ う だ と い う 人 の た め に 、 一 貫 コ ー ス を 平 成 20 年 度 か
91
博士課程「短期在学コース」の創設に係る課題等に関する調査研究
ら 創 設 す る 予 定 と な っ て い る 。 工 学 研 究 科 は 修 士 課 程 の 定 員 の 約 1.46 倍 程 度 を 入 学 さ せ
て い る 。 こ れ を 1.15 倍 程 度 に 抑 制 す る よ う に 現 在 で は 指 導 さ れ て い る 。 修 士 課 程 の 進 学
が 多 い 一 方 で、 博 士 後 期 は 充 足 率 が 低 い こ と が 問 題 と な っ て き て い る。 こ の 問 題 を 解 決 す
る た め の 一 貫 コ ー ス が 必 要 と な っ て い る。 研 究 職 希 望 の 修 士 学 生 を 博 士 学 生 と 在 籍 す る と
み な す 一 貫 コ ー ス と 同 時 に、 論 文 博 士 を い か に 定 員 に 取 り 込 む か と い う 問 題 も あ る。
その他・社会人博士への要望 など
企 業 が 博 士 学 位 の 評 価 を し っ か り し な い と、 学 位 を 取 得 し て も 就 職 先 が な い。 昇 任 な ど
の 処 遇 は 入 社 年 次 で 決 ま る。 カ ウ ン ト さ れ る の は 修 士 ま で で、 博 士 は カ ウ ン ト さ れ な い。
給 料 に 上 乗 せ に な ら な い の が 問 題。 外 国 と の 付 き 合 い な ど、 国 際 交 流 の 場 で は、 同 じ レ ベ
ル の 技 術 者 は 大 抵、 博 士 学 位 を 持 っ て い る。 外 国 に 派 遣 さ れ る 人 は 博 士 を 持 っ て い た 方 が
良 い、 と 企 業 に は 説 得 し て い る。 だ い ぶ、 理 解 を 得 ら れ る よ う に な っ て 来 て い る。 い ま、
退 職 予 定 者 か ら 学 位 の 相 談 を 受 け て い る。 技 術 実 践 の 蓄 積 や 組 織 の 合 意 も 既 に あ る が、 論
文 の 形 に す る 方 法 が わ か ら な い と 言 っ て い る。 今 後 は こ う し た 退 職 者 の 入 学 も あ る の で は
な い か と 考 え て い る。 社 会 人 の ま ま 入 学 す る 人 は、 入 学 料 と 授 業 料 は 自 分 持 ち の 人 が ほ と
ん ど。 小 さ な 会 社 は 出 し て く れ る 場 合 も あ る。 中 以 上 の 会 社 は 前 例 が な い と い う こ と で、
出 し て く れ な い。 こ う し た 現 状 も 考 え る 必 要 が あ る。
写真 3-10 京都大学附属図書館(ヒアリング場所)
(2) 院 生 ヒ ア リ ン グ
(2 年 半 で 学 位 取 得 見 込 み の D 氏 の 場 合 )(e-mail に よ る 補 足 調 査 )
現所属・職名 原子力関連機関
事 業 環 境 調 査 研 究 プ ロ ジ ェ ク ト、 プ ロ ジ ェ ク ト マ ネ ジ ャ ー
学歴
1984 年 3 月 D 大 学 卒 専 攻 名 :( 海 洋 学 部 海 洋 資 源 学 科 )
1986 年 3 月 D 大 学 博 士 前 期 課 程 修 了 修 士 学 位 名 ( 理 学 修 士 )
2004 年 4 月 京 都 大 学 博 士 後 期 課 程 進 学
2007 年 3 月 京 都 大 学 博 士 後 期 課 程 中 途 退 学
職歴
1986 年 4 月 ~ 2003 年 4 月 コ ン サ ル タ ン ト 会 社 勤 務
2003 年 5 月 ~ 現 職
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第3章 国内大学へのヒアリング調査
博士後期課程への進学までに関して
放 射 性 廃 棄 物 の 地 層 処 分 事 業 に 関 連 し た 業 務 経 験 を 生 か し、 特 に 深 部 地 質 環 境 特 性 の う
ち 水 理 地 質 に 関 す る 研 究 を 進 め た い た め 、 京 都 大 学 を 選 択 し た 。 指 導 教 員 は 2000 年 か ら
開 始 し た 国 の 委 託 事 業 の 評 価 委 員 会 委 員 を 務 め ら れ、 当 該 研 究 内 容 お よ び そ の 必 要 性 を 理
解 さ れ て い た こ と が 最 も 大 き な 動 機。
前 期 課 程 で は、 自 然 地 震 の 走 時 を 利 用 し て 地 質 構 造 を 逆 解 析 で 推 定 す る 研 究 を 実 施 し て
い た こ と、 ま た 前 職 で は 物 理 探 査 (地 震 探 査) に よ る 地 下 構 造 探 査 を 行 っ て い た た め、 こ
れ ま で の 経 験 を 生 か す 研 究 が で き る こ と を 期 待 し た。
博士後期課程入学後の修学について
入 学 初 年 度 に、 修 了 ま で の 必 要 単 位 数 を 取 得 し、 併 せ て 当 該 研 究 を 進 め て き た。 で き る
だ け 講 義 に 出 席 し た が、 仕 事 の 都 合 上 欠 席 す る こ と が 多 く、 業 務 に か ら め て 指 導 教 員 か ら
個 別 に 指 導 を う け る こ と が 多 か っ た。
入学後の生活について
と く に あ り ま せ ん。
その他
早 期 修 了 を 目 指 し、 指 導 を 受 け て き ま し た が、 研 究 の 区 切 り が う ま く い か ず、 未 だ 学 位
未 取 得 で す。
3-2-7 北 九 州 市 立 大 学 社 会 シ ス テ ム 研 究 科
特 徴 : 北 九 州 市 内 に 立 地 す る 市 立 大 学 。 小 倉 駅 よ り モ ノ レ ー ル で 10 分 、 徒 歩 5 分 の 位 置
に 立 地 す る 。 昭 和 21 年 (1946) 設 立 の 小 倉 外 事 専 門 学 校 に 始 ま り 、 北 九 州 外 国 語
大 学 (1950)、北 九 州 大 学 (1953) を 経 て 、平 成 13 年 (2001) に 現 名 称 に 改 称 し た 。
平 成 14 年 (2002) に は ヒ ア リ ン グ 対 象 と し た 博 士 後 期 課 程 社 会 シ ス テ ム 研 究 科 が
開 設 さ れ て い る 。 こ の 間 、 順 次 学 部 ・ 大 学 院 が 増 設 さ れ て お り 、 平 成 20 年 4 月 の
改 組 後 に は、5 学 部 (外 国 語 学 ・ 経 済 学 ・ 文 学 ・ 法 学 ・ 国 際 環 境 工 学) の 他、 社 会
シ ス テ ム 研 究 科・国 際 環 境 工 学 研 究 科 ( 以 上 、 博 士 前・後 期 課 程 )、 法 学 研 究 科 ( 修
士 課 程 )、 マ ネ ジ メ ン ト 研 究 科 ( 専 門 職 学 位 課 程 ) を 有 す る 。 社 会 シ ス テ ム 研 究 科
で は 早 期 修 了 の 大 学 院 制 度 に よ り 既 に 7 人 ( 全 体 で 24 人 ) の 博 士 号 取 得 者 を 輩 出
し て い る。
(1) 研 究 科 長 ヒ ア リ ン グ
調 査 日 :2008 年 2 月 26 日 ( 火 ) 15:00 〜 16:30
ヒアリング対象者:北九州市立大学社会システム研究科・研究科長 谷村秀彦教授
学位取得状況
博 士 後 期 課 程 完 成 年 次 の 2004 年 度 以 降 の 4 年 間 で 24 人 の 博 士 号 を 輩 出 し た (2007 年
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博士課程「短期在学コース」の創設に係る課題等に関する調査研究
写 真 3-11 キ ャ ン パ ス 風 景
写 真 3-12 イ ン タ ビ ュ ー の 様 子
度 の 9 月 28 日 現 在 )。 2007 年 度 末 ま で だ と も う 少 し 増 え る 予 定 で あ る 。 定 員 は 一 学 年 8
名 で あ る 。 な お 、 北 九 州 市 立 大 学 卒 の 博 士 号 取 得 者 は 24 人 中 3 人 だ け で あ る 。
分 野 は、 人 口 ・ 社 会 ・ 経 済 ・ 社 会 工 学 ・ 文 学 ・ 福 祉 ・ 経 営 ・ 外 交 史 ・ 言 語 ・ 商 業 史 な ど
の 社 会 科 学 関 係 全 般 に わ た る。 全 体 と し て 学 際 的 で 旧 来 の 学 問 領 域 の 枠 に 収 ま ら な い 分 野
の 博 士 号 を 輩 出 し て い る。
学 部 ・ 博 士 前 期 課 程 を 経 由 し て 博 士 号 取 得 に 至 る 通 常 の 大 学 院 生 よ り も、 ① 博 士 号 未 取
得 の 大 学 教 員、 ② 市 役 所 等 に 勤 務 す る 近 隣 の 社 会 人 大 学 院 生、 ③ 定 年 後 の 高 学 歴 の 大 学 院
生 の 割 合 が 多 い こ と が 特 徴 で あ る。
① に つ い て は、 近 年 大 学 教 員 の 博 士 号 取 得 が 必 要 と さ れ る よ う に な っ た こ と が 背 景 に あ
る。 修 士 卒 な ど の 教 員 が 博 士 号 を 取 得 し よ う に も、 出 身 大 学 に か つ て の 指 導 教 員 が 在 籍 し
て い な い な ど の 理 由 に よ り、 論 文 博 士 の 授 与 を 頼 み に く い と い う 事 情 が あ る。 一 方、 ③ は
北 九 州 市 の 特 殊 事 情 が あ る。 北 九 州 市 に は、 市 内 に 位 置 す る 大 手 企 業 を 退 職 し た 高 学 歴 O
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第3章 国内大学へのヒアリング調査
B が 多 数 お り、 彼 ら の 中 に は 仕 事 を 通 じ て 得 た 知 識 を 学 術 的 な 形 で ま と め た い と い う 希 望
を 持 つ 人 が い て、 大 学 院 生 と し て 入 学 し て く る 場 合 が あ る。
早期修了の状況
24 人 の う ち 、早 期 修 了 者 は 7 人 で あ り 、修 業 期 間 は 1 年 が 3 人 、1.5 年 が 1 人 、2 年 が 2 人 、
2.5 年 が 1 人 で あ る 。
入 学 後 1 年 で 出 来 る の は 、 そ れ ま で に 書 き た め た 論 文 を 「 綴 じ る こ と 」、 す な わ ち 過 去
の 業 績 を 整 理 し て 博 士 論 文 と し て 体 系 づ け る こ と だ け で あ る。 し た が っ て、 入 学 試 験 で は
業 績 の 確 認 を 行 っ て い る。 単 著 を 有 し て い る か、 審 査 付 論 文 1 本 以 上 が あ る こ と を 入 試 時
に 義 務 づ け て い る。 た だ し、 早 期 修 了 を 目 指 し た 場 合 で も 1 年 で は 無 理 な こ と も あ り、7
人 中 3 人 だ け が 1 年 の み の 期 間 で 可 能 で あ っ た。
こ れ ま で 比 較 的 順 調 に 博 士 号 授 与 が 可 能 で あ っ た の は、 大 学 院 専 任 教 員 が い る こ と が 大
き い。 専 任 教 員 は 4 人 お り、 い ず れ も 他 の 大 学 で 研 究 指 導 を 行 っ て き た。 し た が っ て、 博
士 論 文 が い か な る レ ベ ル を 満 た す べ き か を 知 っ て い る。 必 要 な レ ベ ル を 知 ら な け れ ば、 自
信 を 持 っ て 学 位 授 与 は 出 来 な い だ ろ う。 大 学 院 生 た ち は、 こ れ ら 専 任 教 員 の 個 人 的 な ネ ッ
ト ワ ー ク の 中 か ら 応 募 し て 来 た 場 合 が 多 い。
早 期 修 了 の 大 学 院 生 に は、 大 学 教 員 ・ コ ン サ ル タ ン ト ・ シ ン ク タ ン ク 研 究 員 ・ 研 究 所 研
究 員 な ど が い た 。 年 齢 は 何 れ も 40 代 か ら 50 代 で 入 学 時 に 既 に 単 著 ・ 論 文 が あ っ た 。 大
学 教 員 で あ れ ば 昇 進、 研 究 員 で あ れ ば 大 学 へ の 転 出 の 希 望 が あ り、 学 位 取 得 が 必 要 で あ っ
た。 中 に は 既 に 希 望 通 り 昇 進 や 転 出 を 成 功 さ せ て い る 場 合 が あ る。
こ れ ら の 大 学 院 生 は 社 会 人 と し て の 業 務 と 平 行 し て 学 位 取 得 を 行 っ て い る。 だ が、 北 九
州 市 周 辺 の み な ら ず、 東 京 や 香 港 な ど か ら 通 っ て 来 た 人 も い る。
単位認定
卒 業 ま で に 20 単 位 を 取 得 す る こ と が 条 件 で あ る 。 こ の う ち 12 単 位 が 論 文 執 筆 に 関 わ
る も の で、 残 り 8 単 位 が 講 義 で あ る。 講 義 の う ち 4 単 位 は 指 導 教 員 以 外 の 講 義 を 選 択 し
な け れ ば な ら な い (2008 年 度 以 降 は 2 単 位 に 変 更 )。 し た が っ て 、 修 業 期 間 中 1 学 期 だ け
は、 大 学 に 来 て 講 義 に 出 席 す る 必 要 が あ る。 こ の た め、 土 曜 日 や 夜 間 に も 講 義 を 開 講 し て
大 学 院 生 の 需 要 に 応 え て い る。
ま た、 各 年 次 毎 に 研 究 の 進 捗 状 況 を 把 握 し て い る。1 年 次 の 終 了 時 に は 研 究 報 告 を、2
年 次 の 終 了 時 に は 予 備 論 文 を 提 出 さ せ て い る。 全 体 と し て は 3 年 で 博 士 号 を 取 得 す る も の
が 多 い が、 順 調 に 学 位 授 与 を 出 来 て い る の は こ の よ う な シ ス テ ム が あ る か ら で は な い か。
た だ し、 基 礎 力 の 欠 如 し て い る 大 学 院 生 に は 退 学 勧 告 を す る 場 合 も あ る。
短期在学制度について
大 学 に と っ て、 博 士 課 程 の 大 学 院 を 持 つ こ と は 経 営 上 さ ほ ど メ リ ッ ト は な い。 し か し、
博 士 号 を 授 与 で き る か 否 か は 大 学 の 格 付 け に 関 わ る。 本 研 究 科 が 開 設 さ れ た こ と の 理 由 の
一 つ に 、 北 九 州 市 は 100 万 都 市 で あ る に も か か わ ら ず 、 市 内 に 文 化 系 の 博 士 号 授 与 機 関
が な か っ た こ と が あ っ た。 こ の た め 前 市 長 が 熱 心 に 博 士 大 学 院 の 開 設 に 尽 力 し た。
短 期 在 学 を 制 度 化 す る の で あ れ ば、1 年 で 単 位 取 得 で き な い 人 を ど の よ う に 扱 う か が ポ
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博士課程「短期在学コース」の創設に係る課題等に関する調査研究
イ ン ト に な る で あ ろ う。 ま た、 他 の 制 度 的 な 問 題 が 制 約 に な る こ と も 考 え ら れ る。 た と え
ば 、 現 在 の 規 定 で は 他 大 学 で の 取 得 単 位 の 認 定 は 10 単 位 ま で と な っ て い る が 、 こ れ が 足
か せ に な る 可 能 性 も あ る。 現 に イ ン ド ネ シ ア の 大 学 と の 間 で の 大 学 院 生 の 交 換 を す る た め
の 協 定 締 結 を 模 索 し て い る が こ れ が ネ ッ ク に な っ て い る。 ま た、 北 九 州 市 立 大 学 の 場 合 に
は、 内 規 で 定 年 ま で 3 年 を 切 っ た 教 員 は 指 導 教 員 に な れ な い こ と に な っ て い る が、 こ れ も
早 期 修 了 と で は 制 度 上 の 矛 盾 が あ る こ と に な る。
(2) 院 生 ヒ ア リ ン グ
調 査 日 :2008 年 2 月 26 日 ( 火 ) 16:30 〜 17:00
ヒアリング対象者:北九州市立大学社会システム研究科・大学院生 2 年次
名 古 屋 市 に あ る 国 立 大 学 を 卒 業、 大 手 鉄 鋼 メ ー カ ー に 就 職 し 定 年 に な っ た。 そ の 後、 第
三 セ ク タ ー に 再 就 職 し、 そ こ で 北 九 州 空 港 建 設 計 画 の 策 定 業 務 に 携 わ っ た。 こ の 過 程 で 北
九 州 市 立 大 学 の 教 員 と の 共 同 研 究 を 実 施 す る こ と に な っ た。 業 務 と し て は 旅 客 ・ 貨 物 そ れ
ぞ れ に 関 し て 1 冊 ず つ の 報 告 書 を ま と め た。 こ の 成 果 を も と に 大 学 院 に 入 学 し て 論 文 と し
て ま と め よ う と し て い る。
大 学 院 生 と し て の 研 究 活 動 は 非 常 に 楽 し い。 業 務 と し て 行 っ て い た 段 階 で は 様 々 な 提 案
を し て も 取 り 上 げ て も ら え な か っ た の で、 学 術 的 な 成 果 と し て ま と め 直 し て 世 に 問 い た い
と 思 う。
ポ ス ド ク の 学 位 取 得 後 の 境 遇 が 昨 今 問 題 に な っ て い る が、 学 位 取 得 後 の フ ォ ロ ー が 必 要
で は な い か 。こ れ は 就 職 先 の み に 限 ら な い 。取 得 者 が 活 躍 で き る よ う な 筋 道 を 付 け る こ と 、
大 学 が 社 会 に 訴 え か け て 学 位 取 得 者 の 将 来 を バ ッ ク ア ッ プ す る こ と も 必 要 で は な い か。
3-2-8 筑 波 大 学 人 間 総 合 科 学 研 究 科
特 徴 : つ く ば 市 内 に 立 地 す る 国 立 の 総 合 大 学 。 つ く ば セ ン タ ー よ り は バ ス で 10-15 分 。 つ
く ば 市 は 2005 年 よ り つ く ば エ ク ス プ レ ス で 東 京 と 直 結 さ れ 、東 京 の 郊 外 都 市 に な っ
た 。 市 内 に は 多 く の 国 立 ( 独 立 行 政 法 人 )・ 民 間 研 究 所 も 立 地 す る 。 ヒ ア リ ン グ 対
象 と し た 医 学 系 の 大 学 院 は 現 状 で は 博 士 課 程 5 専 攻 (分 子 情 報・生 体 統 御 医 学、 社
会 環 境 医 学 、 先 端 応 用 医 学 、 病 態 制 御 医 学 、 機 能 制 御 医 学 )、 修 士 課 程 2 専 攻 ( フ
ロ ン テ ィ ア 医 科 学 、 看 護 科 学 ) か ら な る 。 2008 年 度 か ら 博 士 課 程 は 改 組 さ れ る 予
定 で 、基 礎 系 の 生 命 シ ス テ ム 医 学 専 攻 と 臨 床 系 の 疾 患 制 御 医 学 専 攻 の 2 専 攻 に な る 。
(1)研 究 科 長 ・ 教 員 ヒ ア リ ン グ
調 査 日 :2008 年 3 月 12 日 ( 水 ) 11:00 〜 12:00
ヒアリング対象者:筑波大学人間総合科学研究科副研究科長 吉川裕之教授
同 社会環境医学専攻 熊谷嘉人教授
学位の性格
医 学 の 場 合、 学 部 卒 ま で に 6 年 間 か か り 修 士 相 当 の 修 業 と み な さ れ る。 し た が っ て、 大
学 院 で は 直 接 博 士 課 程 に 進 学 し 4 年 が 修 業 年 限 に な っ て い る。 こ れ は 世 界 的 に は 特 殊 で、
96
第3章 国内大学へのヒアリング調査
日 本 や 韓 国 ・ 台 湾 な ど に み ら れ る 教 育 シ ス テ ム で あ る。
欧 米 で は 学 部 4 年、 メ デ ィ カ ル ・ ス ク ー ル 4 年 の 8 年 間 の 修 業 で 医 師 免 許 と と も に 医
学 博 士 号 (MD) を 取 得 可 能 で あ る 。 日 本 で は 医 師 免 許 を 取 得 し て も 博 士 号 は 取 れ な い た め 、
課 程 博 士 ま た は 論 文 博 士 の 形 で 学 位 を 取 得 す る 必 要 が あ る。 特 に 公 立 病 院 で 管 理 職 に つ く
場 合 は 博 士 号 が 必 須 に な り つ つ あ る 。博 士 号 を 取 得 す る と MD, PhD. と 名 乗 る こ と が で き る 。
学 部 卒 業 直 後 の 大 学 生 で 博 士 号 の 必 要 性 を 感 じ て い る の は 7% 程 度 に 過 ぎ な い が 、 後 述 の
第 二 の 専 門 資 格 を 取 っ た 医 師 の 場 合 は 、 70% が 必 要 と 感 じ て い る 。
た だ し、 臨 床 医 学 系 と 基 礎 医 学 系 で は 研 究 の 事 情 は 全 く 異 な る。
臨 床 医 学 で は 臨 床 が 研 究 行 為 で あ る と 認 識 さ れ て い る。 そ の た め 臨 床 勤 務 の 傍 ら で 論 文
を 書 い て 論 文 博 士 を 取 得 す る か、 博 士 課 程 で の 修 業 期 間 こ そ 臨 床 か ら 離 れ て も 学 位 取 得 後
す ぐ に ま た 臨 床 に 復 帰 し て そ こ で 研 究 活 動 を 継 続 す る こ と が 前 提 と な る。
こ れ に 対 し て 基 礎 医 学 は 他 の 分 野 の 博 士 号 に 近 い か も し れ な い。 し た が っ て、 基 礎 医 学
系 で は 博 士 課 程 の 定 員 の 充 足 が 難 し い。 ア カ デ ミ ッ ク ポ ス ト だ け に 卒 業 生 と し て 輩 出 す る
よ う な 大 学 院 の あ り 方 か ら、 広 く 産 業 界 等 へ も 人 材 を 送 り だ す 形 へ の 改 革 が 求 め ら れ て い
る の で は な い か。
な お 、筑 波 大 学 の 場 合 、授 与 さ れ た 学 位 全 体 の う ち 、7 割 が 臨 床 系 、3 割 が 基 礎 系 で あ る 。
大学院生のライフステージと博士号
・臨床系
医 学 部 を 卒 業 し 医 師 免 許 を 取 っ た あ と、 す ぐ に 大 学 院 に 入 る こ と は な い。 ま ず、2 年 間
の 初 期 研 修 が 2004 年 度 か ら 義 務 化 さ れ て お り 、 通 常 さ ら に 3 年 の 後 期 研 修 を 積 ん で 専 門
医 資 格 を 取 る こ と が 多 い 。 大 学 院 に 入 る と す る と そ の 後 に な る が 、 こ こ 10 年 く ら い で さ
ら に 専 門 性 の 高 い 資 格 を も う 一 つ 取 る こ と が 求 め ら れ つ つ あ る。 し た が っ て、 こ の 医 師 免
許 を 含 め て 3 つ め の 資 格 の 取 得 時 期 と 博 士 号 の 取 得 時 期 が 重 な り つ つ あ る。3 つ め の 資 格
が 必 要 と さ れ る に し た が い、 こ の 資 格 取 得 と 博 士 号 取 得 を 同 時 に 行 う よ う な 教 育 シ ス テ ム
の 設 計 が 視 野 に 入 っ て 来 て い る。
大 学 院 で は こ れ ま で、4 年 間 の う ち の あ る 期 間 を 基 礎 医 学 系 の 教 員 に 預 け、 実 験 の 指 導
を 依 頼 し て き た。 筑 波 大 学 で は 他 大 学 と 比 べ る と か な り の 長 期 間 を 大 学 院 生 が 実 験 に 費 や
し て き た 。 4 年 間 を 実 験 に 明 け 暮 れ て お り 、東 大 な ど と 比 べ て も そ の 期 間 は 長 い 。 た だ し 、
あ ま り 長 期 間 現 場 を 離 れ る と、 臨 床 が 出 来 な く な る と い う こ と も あ る。
・基 礎 系 (非 臨 床 系)
臨 床 系 と 異 な り、 大 学 院 に 入 っ て く る 学 生 達 の バ ッ ク グ ラ ウ ン ド も 多 様 で あ る。 筑 波 大
学 の 場 合 は、 学 部 卒 業 後 ま ず 修 士 課 程 ・ フ ロ ン テ ィ ア 医 科 学 専 攻 に 入 学 す る 形 に な る が、
理 学 ・ 農 学 ・ 薬 学 ・ 工 学 な ど の 多 様 な 専 門 を 学 部 レ ベ ル で 修 め て い る。 こ の 専 攻 で は イ ン
タ ー ン シ ッ プ も 行 っ て い る 。 た だ し 、優 秀 な 人 は 修 士 修 了 後 に 企 業 に 就 職 す る こ と が 多 く 、
こ れ も あ っ て 博 士 課 程 の 充 足 率 に 難 を 抱 え て い る。
博 士 課 程 進 学 後 は 、大 半 の 学 生 達 は 実 験 科 学 を 中 心 と し た ラ ボ ワ ー ク に 専 念 す る 。 一 方 、
社 会 医 学 関 係 の 大 学 院 生 は、 フ ィ ー ル ド 調 査 や 疫 学 デ ー タ の 解 析 を 中 心 に 行 う。 博 士 号 取
得 後 は、 大 学 教 員、 国 公 立 の 研 究 所 お よ び 製 薬 会 社 等 の 研 究 者 の 道、 あ る い は 国 内 外 で の
ポ ス ド ク を 数 年 経 験 す る 場 合 も 少 な く な い。
97
博士課程「短期在学コース」の創設に係る課題等に関する調査研究
「短 期 在 学 コ ー ス」 に つ い て
・臨床系
基 本 的 に は 論 文 博 士 制 度 の 維 持 を 希 望 す る。 廃 止 す る に し て も 十 分 な 猶 予 を も っ て 実 施
し な い と 混 乱 す る。 既 に 5 年 先 の 論 文 博 士 取 得 を 目 指 し て 日 常 の 研 究 を 行 っ て い る よ う な
医 師 が い る。
た し か に 、こ の 論 文 博 士 取 得 希 望 者 を 1 年 程 度 在 学 さ せ る よ う な 形 は 可 能 か も し れ な い 。
し か し、 こ れ ま で 事 実 上 指 導 を 無 料 で 行 っ て き た に も 関 わ ら ず、 あ る 年 か ら 突 然 お 金 を 取
る と い う の は 難 し い。 医 学 の 場 合、 博 士 号 を 取 得 し よ う と す る よ う な 医 師 達 と 大 学 と は 一
生 涯 に わ た る 付 き 合 い を 持 っ て い る。 勤 務 先 の 斡 旋、 研 究 の 実 施、 論 文 発 表、 学 位 取 得 な
ど を 含 め た 全 体 が 大 学 と の 関 係 の 中 で 機 能 し て い る。 大 学 院 生 と し て 大 学 に 在 籍 す る と い
う 形 だ け で な い 関 係 が こ れ ま で に 育 ま れ て い る。
た だ し、 大 学 と 医 師 と の 関 係 が 変 化 し つ つ あ る の も 確 か で あ る。 初 期 研 修 が 義 務 化 さ れ
て か ら 、 大 学 に そ の ま ま 残 る 卒 業 生 は 従 来 の 8-9 割 か ら 5 割 程 度 に 減 っ た 。 ま た 、 勤 務 先
を 自 ら 探 し て 就 職 す る 医 師 も 増 え て き て い る。 し た が っ て、 大 学 と 医 師 と の 関 係 は 従 来 よ
り も 弱 く な っ て き て い る。 こ う い う 変 化 の 中 で、 母 校 以 外 の 大 学 で 博 士 号 を 取 る 希 望 を 持
つ 人 が 出 て く れ ば 、「 短 期 在 学 コ ー ス 」 の 制 度 も 意 味 が 出 て く る か も し れ な い 。
・ 基 礎 系 (非 臨 床 系)
「 短 期 在 学 コ ー ス 」 は 基 礎 医 学 系 で は 今 後 の 可 能 性 を 広 げ る 一 つ の あ り 方 で あ る と 認 識
し て い る。 こ れ ま で 実 質 的 に 指 導 し て き た 論 文 博 士 も 実 績 と し て 評 価 し て も ら い た い と い
う 希 望 が あ る 。ま た 、医 学 の 場 合 4 年 が 標 準 年 限 だ が 、こ れ ま で は 短 縮 し て も 3 年 が 限 界 だ っ
た ( 大 学 院 設 置 基 準 第 32 条 )。 し か し 、 勤 務 し て い る 人 に と っ て 3 年 も 職 場 か ら 離 れ る こ
と は 難 し く、 博 士 号 授 与 ・ 取 得 の 可 能 性 が 狭 め ら れ て い た。 こ れ を 緩 和 し て 社 会 人 の 需 要
を 取 り 込 み た い。 社 会 人 と し て は、 製 薬 会 社、 国 の 研 究 所 や 保 健 所 に 勤 務 し て い る 人 に 加
え て 産 官 学 マ ネ ー ジ ャ ー、 サ イ エ ン ス コ ミ ュ ニ ケ ー タ ー に も 需 要 が あ る か も し れ な い。
3-2-9 政 策 研 究 大 学 院 大 学
特 徴 : 政 策 及 び 政 策 の 革 新 に か か わ る 研 究 と 教 育 を お こ な う 国 立 の 大 学 院 大 学。 英 語 名 は
National Graduate Institute for Policy Studies “GRIPS”。 1997 年 設 立 で あ る が 、 前 身 は 埼
玉 大 学 大 学 院 政 策 科 学 研 究 科 (1973 埼 玉 大 学 行 動 科 学 情 報 解 析 セ ン タ ー ) で あ り 、
四 半 世 紀 以 上 の 歴 史 を 持 つ。 一 研 究 科 一 専 攻 : 政 策 研 究 科 政 策 専 攻 の 編 成、 修 士 課
程 定 員 120 人 、 博 士 課 程 定 員 20 人 程 度 。 学 問 分 野 は 政 治 学・行 政 学・国 際 関 係 論・
経 済 学 ・ 数 理 科 学 ・ 社 会 工 学 等。 論 文 博 士 を 輩 出 し た こ と は な く、 こ れ ま で 全 て 課
程 博 士 で あ る。
主 な 特 徴 は 以 下 の 3 点 。 ① ア ジ ア を 中 心 と す る 留 学 生 が 多 く 、 2006 年 度 修 了 生
の う ち 日 本 人 68 人:留 学 生 140 人 。 ② 各 国 か ら 現 役 の 行 政 官 を 受 入 れ 教 育 に 貢 献 。
留 学 生 は 帰 国 後、 各 国 政 府 の 幹 部 職 員 と し て 活 躍 し て い る 人 も 多 い。 ③ 研 究 者 を 数
多 く 抱 え る だ け で な く、 現 実 の 政 策 課 題 に 詳 し い 官 僚 を 教 員 と し て 受 け 入 れ、 官 界
と 緊 密 な 関 係 を 構 築。
1997 創 立 、 当 初 新 宿 区 に キ ャ ン パ ス を お い た が 、 現 在 の 六 本 木 キ ャ ン パ ス は
2005 年 度 竣 工 、移 転 。 東 大 生 産 研 跡 地 の 文 科 省 PFI 事 業 第 一 号 、山 下 設 計・リ チ ャ ー
98
第3章 国内大学へのヒアリング調査
ド ロ ジ ャ ー ス 設 計 共 同 体 に よ る 設 計 で あ る。 霞 ヶ 関 や 永 田 町 に 程 近 く、 中 央 省 庁、
政 府 関 係 機 関、 他 大 学 や 研 究 所 と の 積 極 的 な 研 究 交 流 が し や す い 立 地 と い え る。
写 真 3-13 キ ャ ン パ ス 風 景
(1) 副 学 長 ・ 研 究 科 長 ヒ ア リ ン グ
調 査 日 :2008 年 3 月 14 日 ( 金 ) 13:30 〜 15:00
ヒアリング対象者:政策研究大学院大学副学長・研究科長 大山達雄教授
修 士 ・ 博 士 課 程 の 運 営 方 法, 学 位 取 得 状 況 等
教 員 は プ ロ パ ー 約 60 人 + 客 員 20 人 、 修 士 課 程 学 生 240 人 程 度 ( う ち 170 人 程 度 が 外
国 人 )、博 士 課 程 学 生 50-60 人 程 度 と い う 規 模 で あ る 。授 業 は ほ ぼ 全 て 英 語 で お こ な わ れ る 。
1 研 究 科 1 専 攻 で あ る が、 1 研 究 科 の 中 で 現 実 の 必 要 に 応 じ て 多 様 な プ ロ グ ラ ム を 用 意
す る 方 式 を と り、 各 教 育 プ ロ グ ラ ム は 政 策 研 究 の 進 展 や 社 会 的 変 動 に 伴 う 行 政 課 題 の 変 化
に 即 応 し て 柔 軟 に 見 直 さ れ る し く み。 英 語 の み で 提 供 さ れ る プ ロ グ ラ ム も 数 多 く、 多 数 の
留 学 生 を 集 め て い る。
IDS ( 国 際 開 発 研 究 ) プ ロ グ ラ ム で は 、 修 士 1 年 + 博 士 3 年 の し く み で 、 外 務 省 系 の 国
際 機 関 予 算 で ま か な う プ ロ グ ラ ム で あ る。 4 学 期 制、 1 年 間 で 終 え る 修 士 課 程 は 留 学 生 や
派 遣 元 官 庁 等 に は 非 常 に 好 評。 こ れ ま で の 一 律 修 士 2 年 課 程 の 充 足 率 計 算 方 法 だ と 満 た さ
な く な っ て し ま う の で、 短 期 履 修 プ ロ グ ラ ム を お こ す 場 合 は 検 討 が 必 要 と い っ た 課 題 も あ
る 。 新 規 の PAP ( 政 策 分 析 ) プ ロ グ ラ ム で は 、 標 準 修 業 年 限 5 年 と し て い る が 最 短 3 年 で
の 学 位 取 得 が 可 能 な 仕 組 等 々 、 現 在 修 士 課 程 11、 博 士 課 程 4、 一 貫 1 の プ ロ グ ラ ム が 提
供 さ れ て い る。
博 士 課 程 在 籍 50-60 人 、う ち 10 人 程 度 が 現 在 休 学 中 。最 初 の 1 年 目 の コ ー ス ワ ー ク の 後 、
筆 記 と 口 述 の 試 験 が あ り、 そ れ が キ ャ ン デ ィ デ ー ト 制 度、 ス ク リ ー ニ ン グ に な っ て い る。
優 秀 な 留 学 生 獲 得 の た め の 奨 学 金 制 度、 学 生 寮 の 確 保
現 在、 博 士 課 程 の 留 学 生 で 私 費 の 学 生 は お ら ず、 多 種 多 様 な 国 際 機 関 の 奨 学 金 等 も 活 用
99
博士課程「短期在学コース」の創設に係る課題等に関する調査研究
し つ つ 研 究 を お こ な っ て き た。 日 本 に 留 学 希 望 の あ る 国 の、 政 府 機 関 ・ 中 央 銀 行 ・ 開 発 関
係 機 関 ・ 大 学 教 官 等 の 留 学 を 促 し て き た 。 そ の た め 、 大 学 と し て 、 IMF ( 国 際 通 貨 基 金 )、
WB ( 世 界 銀 行 )、 ADB ( ア ジ ア 開 発 銀 行 ) 等 の 奨 学 金 は 努 力 し て 確 保 し て い る 。 国 際 機 関
の 奨 学 金 は ま だ 修 士 課 程 が 主 で あ り、 博 士 課 程 増 を 交 渉 中。 た だ し、 博 士 課 程 の 奨 学 金 の
多 く は 3 年 が 期 限 で あ り こ れ ま で の 課 題 で あ っ た。 今 後 も、 優 秀 な 学 生 獲 得 及 び 入 学 し た
学 生 に 確 実 に 学 位 を 取 得 し て も ら う た め に、 奨 学 金 制 度 の 充 実 は 非 常 に 重 要 な 事 項。 修 士
課 程 最 初 か ら 5 年 間 保 証 す る 奨 学 金 や、 オ ー バ ー し て も 支 援 で き る 方 策 を 検 討 中。
学 生 寮 は 、 お 台 場 の 国 際 研 究 交 流 大 学 村 に 80 部 屋 確 保 し て い る こ と は 大 き い が 、 今 後
も 支 援 体 制 強 化 は 必 要。
優 秀 な 社 会 人 学 生 獲 得 の た め の プ ロ グ ラ ム 整 備 (短 期 在 学 制 度 活 用 の 可 能 性 ?)
現 在、 六 本 木 (東 京 都 心) に 立 地 す る 地 の 利 を い か し、 留 学 経 験 の あ る 省 庁 職 員 が 通 学
で き、 学 位 取 得 を 支 援 す る よ う な プ ロ グ ラ ム も 試 行 し て い る。 既 に 米 国 の 大 学 な ど で 修 士
の 学 位 を も っ て お り 学 位 取 得 を 希 望 す る 省 庁 職 員 等 を 対 象 と す る。 純 粋 に ア カ デ ミ ッ ク な
学 位 で は な く、 政 策 プ ロ フ ェ ッ シ ョ ナ ル な 人 材 育 成 を 目 指 す プ ロ グ ラ ム。
1 年 間 毎 日 通 学 し コ ー ス ワ ー ク を こ な し、 キ ャ ン デ ィ デ ー ト 後 は パ ー ト タ イ ム で 通 学 し
て い る の で、 実 質、 通 学 は 1 年 間 と い う 意 味 で は 短 期 在 学 と な っ て い る。 最 後 の 1 年 在 学
で は な く、 最 初 の 1 年 在 学 と い う こ と に な る。
(2) 院 生 ヒ ア リ ン グ
調 査 日 :2008 年 3 月 14 日 ( 金 ) 15:00 〜 15:30
ヒ ア リ ン グ 対 象 者 : 大 学 院 生 博 士 課 程 3 名 (学 年 は 修 士 課 程 か ら の 年 数)
・31 歳 4 年 生 ( フ ィ リ ピ ン ) 男 性 , 六 本 木 在 住 , 母 国 で は 大 学 講 師 ,
研究テーマは交通ネットワーク
・32 歳 5 年 生 ( キ ル ギ ス ) 女 性 , 浅 草 在 住 , 母 国 で は 中 央 銀 行 勤 務
研究テーマは中央アジア貿易
・35 歳 2 年 生 ( イ ン ド ネ シ ア ) 女 性 , 千 葉 在 住 , 母 国 で は 経 産 省 勤 務
研究テーマは水道ネットワーク
3 名 と も 、 文 科 省 や 外 務 省 (IMF) 等 の 奨 学 金 を 利 用 し 、 文 科 省 や 日 本 大 使 館 等 の 紹 介
に よ り、 こ の 大 学 に 所 属 す る こ と に な っ た。 キ ャ ン パ ス が、 日 本 の 首 都 東 京 の 都 心 に 立 地
す る こ と に 関 し て は、 家 賃 や 物 価 が 非 常 に 高 い た め、 課 程 博 士 留 学 生 の 研 究 生 活 に と っ て
は 有 効 に 機 能 し て い な い と の こ と。 博 士 学 位 取 得 は 非 常 に 厳 し い が、 教 育 プ ロ グ ラ ム 等 は
充 実 し て お り 満 足 し て い る 。 大 学 院 内 は 全 て 英 語 で 履 修・コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン で き る た め 、
そ の 点 は 大 き い。 奨 学 金 を 担 保 す る 制 度 と 英 語 で 履 修 可 能 な プ ロ グ ラ ム が、 大 学 院 選 択 と
取 得 の た め の 重 要 な 要 素 と な っ て い る。
100
第3章 国内大学へのヒアリング調査
3-3 学 位 取 得 ( 希 望 ) 者 プ ロ フ ァ イ ル
プロファイル 1
工学・28 才
生年:1980 年
現所属:道路系社団法人
課程博士(在籍中)
性別:男
役 職:研究員
学歴・取得学位(社会人博士課程に●)
職歴・役職(社会人博士課程在学中の職に●)
1998-2002 X大学工学部土木工学科 ● 2004- 研究員
学士
基 2002-2004 X大学大学院工学研究科 建設工学専攻 修士
本
情
● 2004 - Y大学大学院工学研究科 博士課程在学中
報
大学側は、博士課程在学中に、社員としての
身分が継続していたことを公式に知っていた
か?
a. 知っていた
b. 知らなかった
○ c. 指導教員は知っていた
d. その他 ( )
①学位取得の動機、②大学/専攻選択の動機・基準、③大学/専攻選択時に必要な情報 など
①学位取得の動機
上司(社会人 Dr で学位取得)及び周りの学位取得者や社会人 Dr の影響が大。尊敬する諸先
輩と同じフィールドに立って、議論したいと思った。
社
会
人
博
士
課
程
②大学/専攻選択の動機・基準
・
(費用面)私大の大学院に進む学費を自ら捻出することは困難であったこと。
・指導教員と業務を通じ、接しさせていただけたこと。
③大学/専攻選択時に必要な情報 ・現在の職場は大学の先生との繋がりが強いため、情報は直接、聞いて入手した。
・Dr 進学においての最適な情報入手方法は人との繋がりによるものだと思う。
入
学
ま
で
101
博士課程「短期在学コース」の創設に係る課題等に関する調査研究
④取得単位について、⑤在学中の登校頻度と是非、⑥社会人博士課程への要望 など
④取得単位について
指導教員の講義のみ受講している。
⑤在学中の登校頻度と是非
講義以外の登校頻度は 1 ヶ月に 2 回程度。研究室のゼミに参加。
在
なお、業務の繁忙期はゼミに参加することは出来ていない。
学
中
⑥社会人博士課程への要望 社会人 Dr ということで大変、優遇していただいていると感じるため、要望は無い。
⑦学位取得前後の職務の変化、⑧将来ビジョンの変化、⑨学位取得によるメリット など
学
位
取
得
後
そ
の
他
102
第3章 国内大学へのヒアリング調査
プロファイル 2
工学・31 才
生年:1976 年
現所属:道路系社団法人
課程博士(在籍中)
性別:女
役 職:研究員
学歴・取得学位(社会人博士課程に●)
職歴・役職(社会人博士課程在学中の職に●)
1997-2001 X大学畜産学部 ● 2003 道路系社団法人
基
本
情
報
畜産環境科学科 学士
研究員
2001-2003 X 大 学 大 学 院 畜産環境科学専攻修士
● 2005-2007 Y大学大学院工学研究科 北方圏環境政策工学専攻 博士
大学側は、博士課程在学中に、社員としての
身分が継続していたことを公式に知っていた
か?
○ a. 知っていた
b. 知らなかった
c. 指導教員は知っていた
d. その他 ( )
①学位取得の動機、②大学/専攻選択の動機・基準、③大学/専攻選択時に必要な情報 など
①仕事の上で、必須となるような資格ではないが、自身の研究を深めるためのひとつの目標と
して取得したいと思った。また、取得の過程で、様々な知識やスキルを身につけられると考
えたため。
社
会
人
博
士
課
程
入
学
ま
で
②自身が元々属していた学部は畜産学部であり、所属研究室は野生動物管理学研究室と、自身
の研究テーマである野生動物と交通に関する問題の動物側の知識・技術・価値観等を大学在
学中に培ってきた。しかし、交通問題は、人間側へのアプローチが必要であることから、選
択時には、自身の出身大学への進学も検討したが、交通工学的な視点を培うという視点から、
現在在籍している大学院を選択した。
この他、出身大学は現在の勤務先から遠いということも、選択しなかった動機のひとつである。
自身が所属した分野(野生動物研究)とは異分野(土木)に属する人との交流や考え方の違
い等を理解する機会と捉えたことも理由のひとつである。
③研究テーマについては、すでに決めており、所属を希望する教員の選択に関しては、直属の
上司と相談して決めていたため、具体的に必要な情報は、受験時の諸事項(受験スケジュール、
手続き等)
であった。しかし、
それらの情報を入手する手段は、ほぼWEBに限定されており(ど
のように情報収集したらよいのか、不明な点が多かった)、しかも、WEB上には過去の情報
のみが掲載されていることが多かったため、あやうく、受験のための手続きをし損ねる危険
性があった。
103
博士課程「短期在学コース」の創設に係る課題等に関する調査研究
④取得単位について、⑤在学中の登校頻度と是非、⑥社会人博士課程への要望 など
④取得単位については、基盤となる分野が違っていることもあり、教員から授業への参加を促
されている。しかし、毎週の授業に出るのは非常に困難であり、単位取得にかなり苦労して
いるのが現状である(学位を取得した際に、この分野の基礎知識をある程度養っておくほう
がよいという教員と自身の判断があり、通常講義の単位取得を試みていた)
。今後は、集中講
義を積極的に活用していこうと考えている。
在
学
中
⑤登校頻度は 1 週間~ 1 ヶ月に 1 回程度、所属研究室のゼミに参加と、講義への参加という形
であった。
通常は、業務が多忙であることもあり、論文執筆などの教員とのやり取りは電子メールで行っ
ている。論文執筆時には、比較的集中して登校し、教員に指導を受けている。
⑥単位取得の仕方を工夫してほしい(集中講義は共通の内容が多く、必修の取得が困難)
。特に
仕事上定期的に大学に通えない状況があることから、大学の掲示板等に掲載している情報で
特に重要なものについては、メール等で配信してほしい(休講等については、WEB上で閲
覧可能だが、集中講義の実施日、場所等の情報を得られなかったため、講義に出席すること
が不可能であった)
。
⑦学位取得前後の職務の変化、⑧将来ビジョンの変化、⑨学位取得によるメリット など
現在、博士課程在籍中である。
学
位
取
得
後
自身の直属の上司が社会人博士課程で学位を取得していたため、学業と業務の両立に対し非常
そ
に協力的であり、学会等にも参加しやすい雰囲気が職場に存在している。やる気と時間さえ確
の
保できれば、研究論文の執筆をしやすい状況にある。
他
104
第3章 国内大学へのヒアリング調査
プロファイル 3
工学・36 才
生年:1971 年
課程修士(在籍中)
性別:男
学歴・取得学位(社会人博士課程に●)
基
現所属:都市計画コンサルタント
現 職:研究員
(Y大学修士課程在学中)
職歴・役職(社会人博士課程在学中の職に●)
1992 X工業高等専門学校建築学科卒業
1992 最初の都市計画コンサルタントに入社
2007 Y大学システム情報工学研究科
(東京都新宿区,社員 20 名)
経営政策科学研究科修士課程入学(MPP コース) 1997 現在勤務する実家近くの
本 (修士課程入学試験時に学士資格相当と認定される) 都市計画コンサルタント に転職,
情 …なるべく継続的に博士学位取得をめざす予定
現在に至る(社員 70 名)
報
大学側は、博士課程在学中に、社員としての
身分が継続していたことを公式に知っていた
か?
○ a. 知っていた
b. 知らなかった
c. 指導教員は知っていた
d. その他 ( )
①学位取得の動機、②大学/専攻選択の動機・基準、③大学/専攻選択時に必要な情報 など
今後、博士課程への進学を前提に、現在修士課程在学中。
①都市計画コンサルタント業務実績 15 年間の中では、自治体等がクライアントとなる場合がほとんどであり、
大学の研究者を交えた共同研究や、学識経験者の意見を反映させた資料づくり等の業務が多かった。近年は、
業務実績を評価され、研究機関研究者に推薦されて省庁関連の委員会委員になることも増えてきた状況。同様
に、業務実績を評価され、学会でのゲスト講演者経験をきっかけに、学会の支部研究会に参加(主査実績も)、
社
会
人
博
士
課
程
入
学
ま
で
学会研究論文発表は 5 編程度。
動機は主に以下の3点。
a)キャリアにハクをつけるための資格が必要と考えたとき、「技術士」「博士学位」が候補に。技術士取得も修
士卒以上だと有利。2002 年からの学会諸活動参加を通して、研究者仲間を増やし意見交換する中で、学位
取得を志向するようになる。
b)知り合いの研究者等に学位をとることを薦められる機会も多くなり、自身も考えるようになった。ここで一
度基礎勉強をしなおすことにも非常に興味を持った。
c)業務実績があっても、学歴が工専卒であると、給与体系は修士課程新卒以下であるし、学歴による理不尽な
扱い等によるコンプレックスの打開。
②主に2点
a)これまでの業務や学会活動の中でのテーマが研究できるところ。
b)まずは学士相当で修士課程から入学できるところ。コンサル業務と並行しての試験勉強は困難であったため、
これまでのコンサル業績が評価され推薦入学も可能なところ。
c)家族を養う必要があるため、とりあえず修士課程に関しては、仕事を減らしつつも続けながら、自宅から登
校・通勤できる立地と体制が条件であった。また、公立大学で学費がリーズナブルであることと、もともと
公立志向もあった。
③博士課程に関しては、会社を一度やめ、研究活動に専念する期間としたいし、専念しないと取得は難しいと認
識している。
☆ 入学前に奨学金の制度内容や、奨学金取得可能性などが事前にわかるとよい。
105
博士課程「短期在学コース」の創設に係る課題等に関する調査研究
④取得単位について、⑤在学中の登校頻度と是非、⑥社会人博士課程への要望 など
今後進学予定であるが…
在
学
博士学位に関しては、会社を一度退職、あるいは休職し、研究活動に専念する期間とせざるを
得ないであろうと現在は考えている。
中
⑦学位取得前後の職務の変化、⑧将来ビジョンの変化、⑨学位取得によるメリット など
学
位
取
得
今後取得予定であるが…
⑦⑧自身で都市計画コンサル起業を目指す予定。
⑨業務の中で、様々なクライアントや研究者と共同研究していきやすいのではないか。
後
<研究テーマと業務との関連性>
・都市計画コンサルを続けていく上で必要な基礎的研究テーマを模索中
<その他>
・修士学位取得に継続して(研究意欲の勢いのあるうちに)博士学位の取得を目指したい。
・博士課程の間は、会社を一度やめ、研究活動に専念する期間としたいので、まず、長期間か
かるようなら無理。現在、35 歳という年齢もあり、短期コースは非常に魅力的に聞こえる。
そ
の
・通常3年コースと短期コースの選択に関しては、研究実績が足りないため、短期コースは、
修士学位取得後、数年働きながら論文数を増やし、入学を考える、というイメージ。
他
・勤務先の会社(都市計画コンサルタント)1度目、2度目とも、上司(起業した社長)自身
が社会人博士課程で学位取得をしていた、あるいは目指していたため、非常に理解はあったが、
しかしながら、多忙な業務との両立はこれからも困難であろうし、積極的な支援を望むのは
業種・業界的に難しいであろう。
106
第3章 国内大学へのヒアリング調査
プロファイル 4
工学・45 才
生年:1963 年
現所属:Z大学教
課程博士(1993)
性別:男
現 職:教授
学歴・取得学位(社会人博士課程に●)
基
職歴・役職(社会人博士課程在学中の職に●)
1981-1985 X大学工学部建築学科
● 1990-1994 Y大学 助手
1985-1990 X大学大学院工学系研究科修士課程
1994-
Z大学専任講師・助教授・准教授・教授
1987-1990 X大学大学院工学研究科
本 博士課程(単位取得退学)
情 1993 博士(工学)X大学
報
a. 知っていた
勤務先は、あなたが博士論文を作成していた b. 知らなかった
ことを公式に知っていたか ?
c. 指導教員は知っていた
d. その他 ( )
①学位取得の動機、②大学/専攻選択の動機・基準、③大学/専攻選択時に必要な情報 など
①学位取得の動機
博士課程に進学した時から、研究者としてキャリアを積むのなら、いつかは学位を取らなければならないと
思っていた。ただし、先輩達の就職状況をみていて、本当に研究者としての職が得られるかどうか確信が持てず、
どうしようか迷ってもいた。学位を取得する目途が立たないまま最初に勤めた就職先が 4 年の任期付だったの
で、次の就職先を探すためには学位取得が必須だと思った。母校の大学院博士課程では、単位取得退学後 3 年
社
会
以内であれば課程博士扱いで審査してもらえるという内規があったため、規定ぎりぎりの 3 年で学位を取得し、
最後の 1 年で就職活動をしようという計画を立てた。結果的に大学院での 3 年+就職後の 3 年の計6年で学
位を取得できた。幸い学位取得後の 1 年で現在の大学での仕事が見つかったが、見つからなければ博士号を持っ
人
てコンサルタントなどの就職先を探そうと思っていた。
博
もっとも出身の研究室では、課程博士は論文博士よりも価値が低いものと認識されていた。課程博士であっ
士
ても3年程度で博士号を出すような研究室はいい加減であるという意識が支配的だった。出身の研究室では当
課
程
時最短でも学位を取得するのに 4 年間かかっており、しかもその事は拙速であるように評価されていた。その
後も日本人の場合、その研究室では 3 年で取得した人は 1 人出ただけである。人文系的な側面を持つ分野の特
徴からして 3 年程度で生み出せる成果は極めて限られる。ある程度時間がかかるのは致し方ないと思うが、公
入
募などでは他分野との競争にさらされて不利になる場合もあり、こういう状況を放置していて良いのかどうか
学
は難しい問題だろうと思う。
ま
で
②③大学/専攻選択の動機・基準
学部・修士・博士とそのまま進学したので、特に選んだということはない。何となくそのまま進学するのが
当たり前であるという意識があった。
107
博士課程「短期在学コース」の創設に係る課題等に関する調査研究
④取得単位について、⑤在学中の登校頻度と是非、⑥社会人博士課程への要望 など
④取得単位について
博士課程にあがってからは講義出席の義務はなかった。ただし、非常勤で来られた他大学の先生の講義への
出席は奨励されており、勉強になるので必要単位とは関係なく出席した。研究室側としてはある程度の出席者
を確保しないと先生に失礼なので博士課程の院生の出席を奨励するという面もあった。
⑤在学中の登校頻度と是非
在
ほぼ毎日大学に行った。ただし、ほとんど教員からの指導はなかった。安い授業料で東京の真ん中の便利な
ところに机と電話をもらい、オフィスワークが出来るという意識だった。今でいうとインキュベーション施設
学
に入るような意識だった。同年代の仲間が何人もいたことも大きい。梁山泊のようで楽しかった。時間が溢れ
中
るほどあり、毎日お茶を飲みながら色々な話をしていた。当時話しながら考えていたことが現在の仕事のベー
スになっている。彼らとは現在も親しい付き合いが続いており、仕事上の最も重要なネットワークになってい
る。
⑥社会人博士課程への要望 現在と異なり当時は学位がなくても助手の仕事があり、業務と平行して学位取得することが可能だった。単
位取得退学後 3 年以内は課程博士でも可、という規定は論文博士と課程博士の中間的な制度であって、ありが
たかった。助手になっていたため科研費が取れて調査が心配なく出来たことは直接に研究レベルの向上につな
がった。このような中間的な制度を模索することは出来ないか?
⑦学位取得前後の職務の変化、⑧将来ビジョンの変化、⑨学位取得によるメリット など
⑦学位取得前後の職務の変化
博士取得後に教員の公募に出願することができて、何とも言えない晴れ晴れとした気分になったのを覚えて
学
位
取
いる。それまでのただ待つだけの就職活動から、自ら動いて仕事を探すことができるようになり、本当に嬉し
かった。こうして現在の職を得られた。
⑧将来ビジョンの変化
得
当初はコンサルタントへの転職も視野に入れていたが、博士論文の執筆に集中することを通して研究職への
後
執着が強くなったかもしれない。さらに続けたいという気持ちが強くなった。
⑨学位取得によるメリット
やはり研究職としてのパスポートを得たことだろうか。私の分野では当時 30 才前後で博士号を取っている
人が少なく、就職上有利に働いた。その後は急速に価値が下がったので、最近の若い人は気の毒だと思う。
出身の研究室は大学院生を育てあげる力量を持っていたと思う。丁寧な指導はほとんどなかったが、技官・事務官を含め
た教員団のマインドがそういう側面を持っていた。制度の善し悪しとは別に、大学にこのようなマインドが醸成されるよう
にすることが重要だと思う。ただし、博士論文の質の維持・向上を優先するために、学位授与を媒介として院生・OBに対
する一種の支配が行われていた(る)側面もある。
そ
の
他
108
第3章 国内大学へのヒアリング調査
プロファイル 5
経済学・41 才
Ph.D.(エンジニアリング ・ エコノミック ・ システムス
・ アンド ・ オペレーションズ ・ リサーチ)
生年:1966 年
性別:男
学歴・取得学位(社会人博士課程に●)
基
1990 X大学経済学部卒業
本 1992 同大学経済学専攻修了
情 1993 米国Y大学修士課程修了(M.A.)
現所属:X大学
(社会人対象の専攻)
役 職:准教授
職歴・役職(社会人博士課程在学中の職に●)
1998 Z大学経済学部助教授
2000- 現職
報 1997 同Y大学 Ph.D. 取得
①学位取得の動機、②学位取得の決断時期、③審査付論文等の基礎業績執筆時の指導状況、④
学位論文指導教員選択の理由、⑤指導教員選択時に困ったこと、⑥指導教員とのコンタクト頻
指
度と内容、など
導
①② 動機・経緯:修士課程までは日本の大学。就職活動をしつつも、経済分野で大学研究
教
者としてやっていくことを決意。様々な方面からのアドバイスの中、米国の大学に留学し、
員
Ph.D. を取得することが必要と考え、留学。留学先やアドバイザーも様々なアドバイスの中で決
の
定。
選
択
ま
で
⑦執筆中に欲しいと思ったもの(時間・資金・スペース・施設・情報等)、⑧審査の過程で感じ
たこと(制度の不備、透明性、各種ハラスメントなど)、⑨執筆・審査に必要だった費用とその
評価、⑩ 1-2 年程度で学位が取得できる短期在学コースがあったとしたら、どのようなサービ
論
文
執
筆
・
スが提供されている必要があるでしょうか? 最初から少なくとも5年、あるいはそれ以上時間がかかることは覚悟していた。精神的にかな
りきつい生活。
(⑩ その他に記入)
審
査
中
109
博士課程「短期在学コース」の創設に係る課題等に関する調査研究
学
位
取
⑪学位取得前後の職務の変化、⑫将来ビジョンの変化、⑬学位取得によるメリット など
日本に帰国後、助教授の職を得、その後、学部母校の新設社会人専攻に転職。今に至る。
得
後
短期・学位取得のコースに限らず、<金融工学分野>の学位について
大学教員になりたい人、日銀や経産省、政府系のシンクタンク、外資系金融機関のエコノミ
ストやストラテジストといったリサーチ担当の仕事に就きたいのであれば、経済学系の博士学
位はあったほうが可能性は高くなる。博士学位がステータスというよりも、たとえば英文を読
みこなすとか、外人と会話できるとか、それなりの能力を示す必要があり、博士学位はそれな
りのスクリーニングとして利用されるようになってきており、このあたりは、良い傾向。
ただ、経済系で博士をとっても、今はなかなか職はみつからない。民間の銀行や、霞ヶ関系
の研究機関、日銀、とかといった選択肢が出てくる可能性はあるが、10 年前と比べると、さら
に状況が厳しくなった。博士学位をとる人の人数が多くなったのも事実。
学位をとったあとに、大学教員になるのは、非常に難しい時代になっている。格差社会みた
いになっていて、その中でも明らかに優秀であるとされる人たちに需要が集中し、多くの博士
修了者が漂流しはじめている状況。一番優秀な層は大学に職を得て、次が日銀とか経産省、民
間シンクタンクなどの研究員、その下になると転職したり、漂流したりというかんじ。それな
りに金融関係の会社に職を得る人は、特にここ数年は採用増のため、増えてきているようには
そ
思うが。
の
ここ 5 年くらいの厳しい状況についていえば、たとえば日銀の研究員や政府系の有名な研究
他
機関に期限付きのポジションをもらえる人というのは、アメリカのそれなりの大学、もしくは
東大とか一部の国内有名大学の出身になっている。他の大学だと、研究機関の関係者がかなり
ひっぱってくれるとかでないと、難しい状況。
また、経済分野ということであれば、1-2 年の短期間で博士学位がとれるというのは非常に
考えにくいと思う。国際的な学術雑誌の場合、特に上位のものは、最初に送ってから、順調に
進んだとしても、最終的にアクセプトされるまでに2、3年。へたすると、5年くらいかかる。
多少、ランクを落としても、査読付きということになると、正式な評価がでて掲載までの時間
が1年というのは非常に順調なケース。送ってすぐに採用してもらえるのは、それなりの有名
人でないとなかなかない。すでに立派な論文を数本持っているという特殊ケースでないと、一
般的には短期間で学位取得は非常に考えにくいのではないか。質を落とさずに短期で学位をと
る、というしくみは考えにくいかもしれない。
110
第3章 国内大学へのヒアリング調査
プロファイル 6
文化人類学・41 才
生年:1967 年
現所属:Z大学
課程博士(1998)
性別:男
役 職:専任講師
学歴・取得学位(社会人博士課程に●)
基
1993 X大学建築学専攻修士卒
本 11993.4-1998.9 博士 ( 学術 ) 取得
情 課程博士(文化人類学分野)
職歴・役職(社会人博士課程在学中の職に●)
1998-1999 A大学プロジェクト研究員
1999- Z大学・助手
2002 − 同大学・専任講師
報 Y大学,文化科学研究科
①学位取得の動機、②学位取得の決断時期、③審査付論文等の基礎業績執筆時の指導状況、④
学位論文指導教員選択の理由、⑤指導教員選択時に困ったこと、⑥指導教員とのコンタクト頻
度と内容、など
①② 動機・経緯:修論は工学・建築分野で中国のある地域を対象として、空間構成や空間秩序にかんする研究テー
マに取り組む。研究をすすめながら、文化人類学の著書を多く読むようになり、「もの・機能」より「人間」
により興味を抱くようになる。研究職で生きていけるならば天国だと思いはじめ、Dコースを志向する。出身
の工学系建築分野で文化人類学的な基礎分野の研究があまり奨励されていなかったこともあり、深く興味をい
だいていた文化人類学分野での学位取得に挑戦することにした。この分野の学位授与機関は選択肢は少ない。
出身大(建築)の教官の紹介もあり、大学・指導教官を決定。出身の大学は東京であったが、関西の自宅から
指
通学できることも金銭的に大きかった。
導
③ MからDで分野を変えたので、基礎的な勉強に時間がかかった。授業は提供されるものではなく、D生各人が
教
やりかた全て企画し、それに対して複数の教官が対応・指導してくれるゼミ形式、という厳しくも恵まれた環
員
境であった。おもしろい企画なら多くの教官や院生が参加するし、あまり興味深くないものなら指導教官のみ
の
選
の参加となるような、厳しい世界。
④⑤ 修士のときに読んだ著書で決めた教官。受け入れてくれたので迷いはなかった。
択
ま
⑥「文化人類学」という分野では、
で
STEP 1:リサーチプロポーザルまで1年半 →在学
STEP 2:2年前後のフィールドワーク(その間休学扱いで対象地の中国在住,天津大学所属)
STEP 3:復学後、2 年の執筆期間 →在学
計5年かかった。
STEP1 と 3 では、週に1回、自分の発表は年に2−3回。
1回の論文発表につき、50-100 ページ程度の資料を作成し、1週間前までに指導教官+α意見をもらいた
い教官に配布、ゼミ参加要請をするしくみ。自分のゼミの司会・コメンテーターも自分で要請する。1回のゼ
ミは 3-4 時間。非常にきつかったし、他のコメント希望教官が自分のゼミにどれだけ多く参加してくれるかス
リルのある世界で鍛えられたのはとてもよかったと思っている。
その他 STEP1 では、上記③の授業単位に当たるオリジナル企画ゼミ2週に1回。
111
博士課程「短期在学コース」の創設に係る課題等に関する調査研究
⑦執筆中に欲しいと思ったもの(時間・資金・スペース・施設・情報等)、⑧審査の過程で感じ
たこと(制度の不備、透明性、各種ハラスメントなど)、⑨執筆・審査に必要だった費用とその
論
評価、⑩ 1-2 年程度で学位が取得できる短期在学コースがあったとしたら、どのようなサービ
文
スが提供されている必要があるでしょうか? 執
筆
・
⑦ 関西の自宅から通学していたことと、授業料免除や奨学金がとれていたので、特にない。ゼミの日以外は自宅
で勉強・執筆したため、大学内に空間も必要なかった。また、5年間のうち、2年間はフィールドワークで大
学に来ない。大学の書庫は非常によく利用した。かかった金額は入学金のみ。
審
⑧ 大学にいる期間は、毎週1回ゼミ、自分の番は年に2−3回であった。
査
⑨ 大学にいる期間は奨学金を利用した。人数が少ないこともあり、ほとんどのD生は授業料免除か、返金義務の
中
ない奨学金が取得できる状況だった。フィールドワーク前に研究助成金を獲得し、調査費・生活費をまかなっ
た。2年間は休学扱いで授業料ナシ。多くのD生はそうしていた。
(⑩ その他に記入)
⑪学位取得前後の職務の変化、⑫将来ビジョンの変化、⑬学位取得によるメリット など
⑪⑫ 文化人類学で学位取得、ということは研究活動を一生継続するということに等しい。学位取得途中に条件の
学
位
いい研究者ポストがあれば就き、論博で取得を目指していたであろう。課程博士で取得したので、取得後はよ
り条件のよい研究職を探すという流れ。
⑬ 国内ではこの分野内ではメリットは特にない。現に、40 歳代半ば以上の教授等は学位を持ってない人も多い。
取
持っていなくても、D論の審査員ができる世界であった。学位よりもオリジナルの著書の有無とその質が重要
得
な世界。ただし、准教授以下、教授退官後は、特に海外の活動において、学位保持の有無による扱いの違いは
後
大きいため、40 代半ば以下は持っている人が多い。昇進のために学位の保持が有利となったのは最近のこと
なので、少しずつ状況は変わってはいるが。
ただし、自分のように別の分野の職に就く場合、学位保持が条件になる場合も多い。この意味では、研究職の
分野の選択肢を広げることができた、ともいえる。
短期・学位取得のコースについて
1)「文化人類学」という分野では、少なくとも計5年以上が必要。当該大学院は8年間在籍可能。
途中 “ フィールドワーク要2年 ” という条件は 1920 年代?から変わらない慣習らしいので今後も続くことを
想定すると、一からはじめて早期修了なんてあり得ない分野だと思う。
自分の場合も、「5年でとらせてもらえるの?!」という世界だった。
2) 「文化人類学」の文化は、学位の保持よりも、単著の有無やその質が問われる分野。従来は、教授クラスで
も保持する人は少数であり、退官前後に研究人生の集大成として取得する人も多かった。今後もしばらくは、
そ
の
他
学位取得より、研究職ポストに就くタイミングが重要なので、職を得てから改めてD取得する場合は「論博」
制度は非常に有効であるため、無くなると困るであろう。
3) 従来、論博(課程博ではなく)の場合、元々研究職であるので、フィールドワーク期間はこなし済みの場合
が多く、執筆期間のみが必要となり、1-2 年(短期間)で取得することとなる。
4) 数十年前まで文化人類学分野での国内学位取得機関が少なかったため、イギリスやフランスで(比較的短期
に)とってくる人が多かったと聞く。「論博」がなくなると、海外(EU)で短期に取得するか、あるいは、国
内に短D制度(執筆期間のみ 1-2 年)ができるならば、需要は確実にある。
5) コースワークは至れり尽くせりのお膳立てはやめるべき。研究者としての企画力・調査力・行動力が養える
ような方法が重要なのではないだろうか。
112
第3章 国内大学へのヒアリング調査
プロファイル 7
経済学・50 才
生年:1957 年
現所属:X大学
課程博士(2000)
性別:男
役 職:准教授
学歴・取得学位(社会人博士課程に●)
1976-1980 X大学 第一学群 社会学類 学士
基
職歴・役職(社会人博士課程在学中の職に●)
1980-1986 広告代理店マーケティング・プランナー
1983-1985 X大学大学院 経営・政策科学研究科 1986-1989 同社 研究員
修士
本 ● 1996-2000 Y大学大学院 経済学研究科
● 1989-1998 同社 主任研究員
● 1998-2003 同社 グループヘッド
情 企業・市場専攻 博士
2003-2007 X大学 講師
報
2007- X大学 准教授
大学側は、博士課程在学中に、社員としての
身分が継続していたことを公式に知っていた
か?
a. 知っていた
b. 知らなかった
c. 指導教員は知っていた
d. その他 ( )
①学位取得の動機、②大学/専攻選択の動機・基準、③大学/専攻選択時に必要な情報 など
①それまで企業内での研究で考えていた問題意識を,学術的観点から練り直したい
②日頃学会で指導を受けている先生が教鞭を執っているので
社
③指導教員の研究や教育スタイル
会
人
博
士
課
程
入
学
ま
で
113
博士課程「短期在学コース」の創設に係る課題等に関する調査研究
④取得単位について、⑤在学中の登校頻度と是非、⑥社会人博士課程への要望 など
④私の進学先の場合,基本的にはゼミへの参加と,形式的な小論文の提出で単位だけは取得で
きた。
在
学
中
⑤週に1~2回
⑥社会人修士の増加により,今後博士課程進学者が増えることは間違いない。修士課程の時代,
あるいはその後博士課程に進むまでの間,学会等で活動して自分が研究者に向いているかど
うかの判断をすべき。大学院側は,修士論文だけでなく,その前後の研究活動を見て編入を
決めないと,お互いに不幸になるケースが今後増えそうに思う。
⑦学位取得前後の職務の変化、⑧将来ビジョンの変化、⑨学位取得によるメリット など
⑦博士論文の執筆中は,仕事(特に管理職としての)の成果が大幅に低下,給与も下がり,転
職の動機付けとなった
⑧上のような理由で,在職し続けるより大学に移ろうという気持ちが高まった。
学
⑨学位取得とともに大学に転職したので,企業内にいた場合のメリットを体験的に語ることは
位
できない。大学教員として学位が重要なのは一般的にいえることなので,特筆すべきことは
取
ない。
得
後
そ
の
他
114
第3章 国内大学へのヒアリング調査
プロファイル 8
工学・34 才
生年:1973 年
現所属:Z大学
課程博士(2003)
性別:女
役 職:専任講師
学歴・取得学位(社会人博士課程に●)
1991-1995 X 大学工学部土木工学科 学士
職歴・役職(社会人博士課程在学中の職に●)
1997-2003 建設コンサルタント
1995-1997 X 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科 技師
基
本
土木工学専攻修士
● 1999-2003 道路系社団法人 研究員
● 2001-2003 X 大学大学院工学研究科 2003-2005 Y 大学大学院 特別研究員(PD)
都市環境工学専攻 博士
2005- Z 大学 講師
情
報
大学側は、博士課程在学中に、社員としての
身分が継続していたことを公式に知っていた
か?
○ a. 知っていた
b. 知らなかった
c. 指導教員は知っていた
d. その他 ( )
①学位取得の動機、②大学/専攻選択の動機・基準、③大学/専攻選択時に必要な情報 など
①業務を遂行する上で特に学位が必要なわけではなかったが、何らかの目標が欲しかった。
論理的思考や論文執筆のスキルを身につけたかった。
②出身大学であること、また指導教員との共同プロジェクト(業務)に携わっており、教員の
社
会
人
博
士
課
程
入
学
ま
で
人柄や論文執筆の進め方等について十分に議論する機会があり、安心感があったことなどか
ら、当該大学院を選択した。
また、当時の勤務先と近く登校が容易であったこと、また国立大学で学費がリーズナブルで
あったことも選択理由のひとつであった。
③研究テーマや論文構成を社会人博士課程入学以前に決めていたため、それに合致する指導教
員がいるか否か、入学試験の科目やスケジュール、取得単位数と学位取得までのスケジュー
ルなどの情報が有用であった。
情報は WEB に記載されていると非常に有用であるが、一般に大学のホームページは複雑であ
り、必要な情報にたどり着くまでに時間がかかったり、結局よくわからなかったりするため、
記載方法に工夫が必要と思う。
115
博士課程「短期在学コース」の創設に係る課題等に関する調査研究
④取得単位について、⑤在学中の登校頻度と是非、⑥社会人博士課程への要望 など
④取得単位については、ほとんど留意せずに卒業することができた。
⑤登校頻度は 2 週間~ 1 ヶ月に 1 回程度、所属研究室のゼミに参加という形であった。
業務が多忙であったため論文執筆などの教員とのやり取りは電子メールで行っており、上記
以上の登校は困難であった。幸い、
教員がその状況に理解を示してくれたため問題なく進んだ。
在
⑥必修単位などが多い場合には、社会人の学位取得は困難であると思われる。当方の勤務状況
学
では、週 1 回午前中のみ、等の登校義務であればなんとか対応可能であったと思われる。
中
また、当方は課程短縮(早期修了制度)で学位を取得したが、その手続きが煩雑であったため、
課程短縮など様々な可能性を考慮したカリキュラムがあることが望ましい。
<その他>
直属の上司自身が社会人博士課程で学位を取得していたため、学業と業務の両立に対し非常
に協力的であり、学会等にも参加しやすい雰囲気が職場にあった。
⑦学位取得前後の職務の変化、⑧将来ビジョンの変化、⑨学位取得によるメリット など
⑦取得前後の職務の変化は特になし。
(出向前の会社では博士の学位取得で月 3 万円の手当てが
出ていたが、当方の学位取得とほぼ同時期に手当て廃止となった。)
学
⑧将来ビジョンの変化は特にない。
位
取
得
後
⑨学位取得前の勤務先では業務と学位の有無はほぼ無関係であったが、その後転職する際に学
位を持っていたことで学術振興会の PD や大学教員など選択の幅が広がった。
また、国内よりも海外において、
「学位」が一定のステイタスであることを国際学会等で再認
識した。
(それによる具体的メリットは今のところない。)
そ
の
他
116
第3章 国内大学へのヒアリング調査
プロファイル 9
工学・38 才
生年:1969 年
現所属:シンクタンク
課程博士(2005)
性別:女
現 職:主任研究員
学歴・取得学位(社会人博士課程に●)
基
職歴・役職(社会人博士課程在学中の職に●)
1992 X 大学社会工学科 卒業
● 1994 シンクタンクに入社,現在に至る
1994 X 大学社会工学専攻 修士課程修了
(社員約 800 名)
本 ● 2001 Y 大学先端科学技術研究センター
情 都市計画分野 博士後期課程入学
報 2005 同 博士課程修了,5年間で博士学位取得
大学側は、博士課程在学中に、社員としての
身分が継続していたことを公式に知っていた
か?
○ a. 知っていた
b. 知らなかった
c. 指導教員は知っていた
d. その他 ( )
①学位取得の動機、②大学/専攻選択の動機・基準、③大学/専攻選択時に必要な情報 など
シンクタンクに勤務しつつ、通常の Dr コースに社会人入学し、5年間在学期間の末、博士学位取得。研究テー
マは都市計画分野
社
①動機は主に以下の2点。
会
a)シンクタンクの仕事はやりがいがあるが、一つの研究内容を深めることは困難な業種。
人
一度、きちっと研究をする、という経験が必要だと思った。
博
士
b)よく動機を聞かれることが多いが、「キャリアにハクをつけるための資格」
というと露骨なので、学位取得は「趣味」と説明することにしている。
(名刺・履歴書に記載できるが、給与等には関係ない)
課
②主に2点
程
a)今後も専門分野としていきたい研究テーマで研究が可能な指導教員。
入
b)これまでの業務の中で、おつきあい、意見交換の機会があった教授に指導を依頼。
学
ま
で
仕事を継続しながら(減らすことは無理だった)なので、
3−5年で取得できればよい、と考えて入学。
③会社の通常業務をこなしながら、行き来ができることが絶対条件だった。
自分が研究したいテーマから、知り合いの指導教員・研究室をたずねる、という方法だったので、大学/専攻
についてこだわったわけではない。学位取得基準がみえない大学(分野・研究室)だったので、果たして何年で
取得できるものなのか、情報は全くなかった。
④取得単位について、⑤在学中の登校頻度と是非、⑥社会人博士課程への要望 など
在
学
中
④講義出席のために在学期間中、2学期間、週に1日登校
研究室ゼミと日程が合わなかったため、講義出席の際は研究室には寄らずに、業務の合間に登校出席し、帰社、
というスタイル。
⑤年に2—3回研究室ゼミにて発表。ゼミ参加のために月に1回程度登校。
研究室に席と、メールアドレスを用意してくれていたが、普段は会社に通常勤務しているため、ほとんど利用
しなかった。
論文執筆は、休日を利用してほとんど自宅で行った。
117
博士課程「短期在学コース」の創設に係る課題等に関する調査研究
<資料収集のための図書館の利用>
大学図書館はあまり利用価値がなかったが、都市計画分野の図書室は活用した。
しかし、最も活用したのは国会図書館。実際に頻繁に訪問したわけではなく、
資料名をネットで検索し、コピーを会社に郵送してもらうシステムを非常によく活用した(有料)。
<研究遂行のためのデータと業務との関係>
業務内容をそのまま論文とすることは、会社やクライアントとの関係から困難。
業務の中で築いたネットワークを駆使してデータを収集した。対象地域の自治体(業務上のクライアントでも
あった)には、研究論文のことはことわりを入れた。
⑥社会人博士課程への要望など
a)取得レベル・基準を明示してくれると将来計画が立てやすい
何年間で、どの程度のレベルで、取得できるかが全くわからなかった。
所属した研究室・専攻では社会人ドクターの前例が少なく、入学後2年ほど経っても、大学や指導教員から
も取得レベル・基準がはっきりとは示されなかったので、将来計画は非常に立てにくかった。
学費の心配がなかったこと、取得期限もなかったので、結局5年で取得できてよかったが、業務との両立が
困難になればあきらめよう、と考えていた。
勤務しながら博士学位を取得しようとする場合、何かしらの基準を示して欲しいと強く思ったが、結果、高
い基準や規制を示されてしまうと自分の首を絞める場合もありそうだ。
b)事務の方の社会人の状況への理解
担当者の個人差が大きかったが、在学中の様々な手続きにおいて、会社に勤務しながらなので、頻繁に事務
室に来ることはできないということを理解して頂きたかった。
(メールや郵送等の便宜は積極的にはかって欲しい)
学
⑦学位取得前後の職務の変化、⑧将来ビジョンの変化、⑨学位取得によるメリット など
位
⑦特にない、給与も関係ない
取
⑧大学教員などへの転職は、のちのち考える可能性がある。
得
⑨クライアントからの扱いが変わった。
後
2007 年度1年間クライアントの民間企業に出向中(会社と兼務)であるが、出向先の職位は博士学位の有無
でランクが高くなった。
<社会人博士学位取得者の情報共有がなされにくい>
社会人で博士学位を取得する場合、個別状況の違いが様々、多様なため、取得・通学ノウハウなどについて、
情報共有されにくく、継承もされにくい。従って、個別に模索せざるを得ない状況。
<学費の面での短期コースの魅力>
そ
結局、5年間の学費とその他雑費を考えると、会社の支援等も受けていなかったので、奨学金などがない限り、
私立では無理であったかもしれない。ゼミ回数や大学の空間利用率等を冷静に考えれば、国立でも高かったと
の
いう思いは残る。その意味で、短期コースは様々な条件がはっきりしており、条件が自分にあえば、魅力的に
他
聞こえる。
<学位取得への会社の理解>
勤務先(シンクタンク)の研究員は修士卒が大半。過去に論文博士取得者は存在するが、兼務で博士課程学位
取得はまだ少数。学位取得を目指すことに理解はあっても通常業務を減らすことは難しい状況。積極的な支援
を望むのは業種・業界的に難しそう。
118
第3章 国内大学へのヒアリング調査
プロファイル 10
文学・43 才
生年:1964 年
現所属:Z 大学
課程博士(2005)
性別:女
役 職:技術補佐員
学歴・取得学位(社会人博士課程に●)
1984-1988 X 大学文学部 学士
基
職歴・役職(社会人博士課程在学中の職に●)
1988-1995 教育関係企業に勤務
1997-2000 Y 大学大学院文学研究科 国文学専攻 修士
本 2000-2005 Y 大学大学院文化学研究科 情
文化構造専攻 博士
報
大学側は、博士課程在学中に、社員としての
身分が継続していたことを公式に知っていた
か?
a. 知っていた
b. 知らなかった
c. 指導教員は知っていた
d. その他 ( )
①学位取得の動機、②大学/専攻選択の動機・基準、③大学/専攻選択時に必要な情報 など
①大学院に入る前に、放送大学学生・通信教育での資格の取得、聴講生としての講義の聴講な
どを行ったが、
学問的なアウトプットを自分でもやってみたいと思った。そのためには、トレー
ニングを受ける必要があるので、修士課程にまず入学し、ついで博士課程に進学した。
社
会
人
博
士
課
②学部で文学を専攻していた、また大学院での指導教員が極めて魅力的な教員であったため。
自宅からの通学が容易であったことも要因の一つだが、なによりも教員の魅力が大きく、他
の大学院は候補にはならなかった。
③聴講生として大学に出入をしている時に、教員や大学院生から直接大学院についての情報を
得た。教員陣の魅力が最終的な決断の決め手となった。
程
入
学
ま
で
119
博士課程「短期在学コース」の創設に係る課題等に関する調査研究
④取得単位について、⑤在学中の登校頻度と是非、⑥社会人博士課程への要望 など
④修士では教員免許と学芸員資格を取得するため多くの単位を取得した。博士課程については、
ほとんど留意せずに卒業することができた。
⑤週に3—4日程度。演習への出席、図書館の利用が主な登校の理由。
在
学
中
⑥種々の年齢制限を撤廃して欲しい。奨学金はもらえたが、学術振興会の特別研究員に応募で
きなかった。そのほか、学位取得後も年齢制限による不利益を多く蒙っている。
また、
事務や一部の教員に社会性が欠けており、ストレスがたまることが多かった。アカデミッ
ク・ハラスメント、パワー・ハラスメントがまかり通っているので、改善してほしい。
⑦学位取得前後の職務の変化、⑧将来ビジョンの変化、⑨学位取得によるメリット など
⑦常勤職員ではないが、アカデミック系の機関に勤務している。ただし、文系のためか、学位
の有無が直接雇用に有利に結びついているかどうかは定かではない。時給などの点で若干の
配慮がなされているのかもしれない。
学
位
⑧修士課程に入った段階で学問を継続することを目的にしていたので、学位の取得自体はそれ
ほど大きな意味はない。したがって、ビジョンの変更はない。
取
得
後
そ
の
他
120
⑨一生涯消えない肩書きを得ることができたこと。公募などでは有利なのだろうと思う。
第3章 国内大学へのヒアリング調査
プロファイル 11
工学・41 才
生年:1966 年
現所属:Y大学
論文博士(2000)
性別:女
役 職:専任講師
学歴・取得学位(社会人博士課程に●)
職歴・役職(社会人博士課程在学中の職に●)
基
本 1992 X大学建築学専攻修士卒
情
2000 博士 ( 工学 )(X大学,論文博士)取得
1992-1996 民間シンクタンク研究員
1996-2003 X大学にて助手
2003 − Y大学
報
a. 知っていた
勤務先は、あなたが博士論文を作成していた b. 知らなかった
ことを公式に知っていたか ?
c. 指導教員は知っていた
○ d. その他(指導教授の講座の助手として勤務しながら論博)
①学位取得の動機、②学位取得の決断時期(1 中長期の目的として決断した時期、2 短期の具
体的目的として決断した時期)
、③審査付論文等の基礎業績執筆時の指導状況、④学位論文指導
教員選択の理由、⑤指導教員選択時に困ったこと、⑥指導教員とのコンタクト頻度と内容、な
ど
① 動機・経緯:修士卒で就職した○○研究所と称する民間シンクタンクは、かかわるテーマは全て興味深く業務
の中で企画力も養うことができ、魅力と刺激ある職場であったが、一方で、クライアントの要望や受注金額の
制限により業務内容や勤務形態が左右される世界であった。休日出勤や徹夜はあたり前な業界であり、個人が
プライベートに研究に携わる時間的体力的余裕はなく、「一つのテーマに対して、更に深く丁寧に分析してみ
たい」というストレスがたまってきていた。新卒入社4年目後半に元指導教授から助手ポストの話(勤務しな
がら論博取得も可能)があり、転職を決意、5年目に転職。
指
② 学位取得よりも、民間シンクタンク→大学教員という「転職」が個人的には大決断であった。取得後、民間シ
導
ンクタンク業界に戻れるという選択肢は薄く、大学教員という業界に居続けるのであれば学位取得は必須とな
教
員
の
るので、助手として勤務しながら(給料をもらいながら)学位を取得できることは非常に魅力であった。論博
制度がなければ転職することは今でもなかったように思う。
③ 指導教員との相談の末、4年間のシンクタンクでの研究蓄積は利用せず、全く新たに研究テーマ決めからスター
ト。助手勤務の傍らだったためと、途中で出産もあり(休み3−4か月)、転職後5年後に取得。
選
大学(分野)の内規により、課程博士は指定学会審査論文3本、論文博士は5本必要。課程より条件はきつ
択
い状態であったが、修論生、卒論生を計3名つけてもらい(学生の指導も兼務)、共同研究として調査などを
ま
進めやすい状況ではあった。
で
④ 卒論・修論の指導教員である。4年のブランクがあり、再び指導学生(兼 部下)となった。
⑤ 他の選択肢は考えられなかった。転職を伴わなければ今でも最初の職場に勤務していた可能性は高い。
⑥ 勤務先上司であるので、日常的にコンタクトは可能であり、個別ゼミは2週に1回程度
121
博士課程「短期在学コース」の創設に係る課題等に関する調査研究
⑦執筆中に欲しいと思ったもの(時間・資金・スペース・施設・情報等)、⑧審査の過程で感じ
たこと(制度の不備、透明性、各種ハラスメントなど)、⑨執筆・審査に必要だった費用とその
評価、⑩ 1-2 年程度で学位が取得できる短期在学コースがあったとしたら、どのようなサービ
スが提供されている必要があるでしょうか?
論
⑦ 特にない。学部学生からお世話になっていた指導教授の部下の仕事をしながらの執筆なので、時間など、業務
文
上の様々な配慮はしてくださったと感謝している。民間の超多忙な前職場と比較して「大学という職場」は時
執
筆
・
審
査
中
間が止まっている!と感じたことを強く記憶している。年収は民間企業から公務員並になって 2/3 以下と減収
だったが、課程博士(責任は無いが指導教授に助手的仕事をさせられながら授業料を払っており、しかも収入
はない)と比較すれば、インセンティブは高かった。
前職の勤務状況と比較し時間の余裕ができたため、子どもを持つことができたこと、一級建築士の資格も取得
できたこと、これらは学位取得以上の収穫だったと思う。
⑧ 当時 (1990 年後半 )、助手(現・助教)という立場のほとんどの同僚は、修士卒・学位取得前であり、論博あ
るいは課程博士中途退学あるいは満期単位取得・延長B規定?の状況であったので、現在の状況とはかなり異
なる気がしている。
⑨ 最後の審査料(5万円?)のみしか支払っていない。確かに安い。ただ、課程なら取得は考えなかった、とい
うのは事実。前職から 1/3 減収を考えると、勤務もしたわけだからトントン?という側面もある。その他執筆
のための調査研究費は科研やその他の研究助成金を取得してそれを活用できたため、やりやすかった。
(⑩ その他に記入)
⑪学位取得前後の職務の変化、⑫将来ビジョンの変化、⑬学位取得によるメリット など
学
⑦⑪ 学位取得した 2000 年頃、所属大学の定年延長が決まり人事がストップ、人事も完全公募制になるなど学内
位
の大きい変化があり、学内で昇進できる可能性はなくなった。その他、子どもも小さかったため、学位取得後
取
得
後
1年程度(2001 年度)は、比較的ゆっくり勤務体制で過ごさせてもらった。
⑫ 2002 年度、完全公募による現職に決まり、2003 年度異動。2度目の転職。大学教員業界で生きていくこと
を決意。
⑬ 大学教員業界なので、学位取得は必須。民間企業であればステイタスとなる場合があるかもしれないが、大学
にいる以上メリットは特になくなったといえる。本格的研究生活のはじまりか。
短期に限らず、学位取得のコースについて
1) 2000 年頃までは、少なくとも学位取得した母校(某・国立の工業大学)では、課程博士コースと別に、論
博制度などを活用した学位を取らせるレールの一つとして助手ポストが存在していたように思う。取得後、講
師や准教授に昇進・転職していったわけである。しかしながら今現在、大学業界の人事状況は一変し、ポスド
クでかなり業績がある方でも助教に甘んじていることが多い。しかも何の保証もない任期付きで、転職活動を
常にやりながら勤務しなければならない。その状況を考えると、短期コースの整備と同時に、その後の道筋と
そ
の
他
セットにすることが非常に重要であると思う。
2) 論博は透明性が低いことは問題があるかもしれないが、分野により柔軟に対応でき、公式には5万円と安価
に取得できることに存在意義があったように思う。論博を廃止して短期コースを新設するならば、「会社をや
めなければ時間がつくれない人(しかし生活費は稼ぐ必要がある人)」への奨学金などの配慮や、優秀な人に
は次のステップを用意する・紹介するなどの準備が必要だと考える。
122
第3章 国内大学へのヒアリング調査
プロファイル 12
医学・45 才
生年:1963 年
現所属:X大学
論文博士(2002)
性別:男
役 職:准教授
学歴・取得学位(社会人博士課程に●)
1982-1986 X大学 学士
基
本
情
職歴・役職(社会人博士課程在学中の職に●)
1991-1994 Z大学校数学物理学教室助手
1986-1988 X大学大学院理工学研究科理工学専攻 1994-2003 X大学講師
修士課程修了
2003- 現在 X大学助教授
1988-1991 X大学大学院数学研究科 単位取得退学
報 2004-2005 米国Y大学公衆衛生学部 留学
2002
博士(学術)(X大学) 取得
○ a. 知っていた
勤務先は、あなたが博士論文を作成していた b. 知らなかった
ことを公式に知っていたか ?
c. 指導教員は知っていた
d. その他(指導教授の講座の助手として勤務しながら論博)
①学位取得の動機、②学位取得の決断時期(1 中長期の目的として決断した時期、2 短期の具
体的目的として決断した時期)
、③審査付論文等の基礎業績執筆時の指導状況、④学位論文指導
教員選択の理由、⑤指導教員選択時に困ったこと、⑥指導教員とのコンタクト頻度と内容、な
ど
①研究者として活動する上で必要と考えた .
指
導
教
員
の
選
択
ま
で
②学位取得の決断時期
医学研究に携わり始めたときに考えた。
③基礎業績執筆時については , X大学在勤中に教授との議論などを通して独習した .
④出身大学であり , 当時の上司であった .
⑤特になし
⑥本論文執筆とは別な内容ではあるが , 週に 1 ~2回程度研究に関する議論を行った .
123
博士課程「短期在学コース」の創設に係る課題等に関する調査研究
⑦執筆中に欲しいと思ったもの(時間・資金・スペース・施設・情報等)、⑧審査の過程で感じ
たこと(制度の不備、透明性、各種ハラスメントなど)、⑨執筆・審査に必要だった費用とその
評価、⑩ 1-2 年程度で学位が取得できる短期在学コースがあったとしたら、どのようなサービ
スが提供されている必要があるでしょうか?
論
⑦特になし
文
執
⑧特になし
筆
・
⑨審査員の先生からは忙しいなか貴重なコメントをいただき深く感謝している .
審
査
⑩定期的に指導教官と議論する時間
中
⑪学位取得前後の職務の変化、⑫将来ビジョンの変化、⑬学位取得によるメリット など
⑪職務自体は変化ないが , 研究に対する意欲 , 誇りが強まった .
学
位
取
⑫将来ビジョンにも大きな変化がないが , 自分のための研究ではなく , より大きな観点から研究
を見つめるようになった .
得
後
⑬研究者としての資格を得たという意味で , 内面の変化が大きいが , 特に外部からのメリット
は感じていない .
そ
の
他
124
第3章 国内大学へのヒアリング調査
プロファイル 13
農学・39 才
生年:1968 年
現所属:国立研究所
論文博士(2004)
性別:女
役 職:研究員
学歴・取得学位(社会人博士課程に●)
基
本
職歴・役職(社会人博士課程在学中の職に●)
1992 X大学の農業経済系を卒業
1993— 国立研究所に入所
1993 X大学農業土木系の修士課程M1で退学
1993-1998 (5年間北陸の研究所で勤務)
2004 Y大学(東京都)学位取得(論文博士)
1998- 国立研究所に戻る 現在に至る
情
報
○ a. 知っていた
勤務先は、あなたが博士論文を作成していた b. 知らなかった
ことを公式に知っていたか ?
c. 指導教員は知っていた
d. その他(指導教授の講座の助手として勤務しながら論博)
①学位取得の動機、②学位取得の決断時期(1 中長期の目的として決断した時期、2 短期の具
体的目的として決断した時期)
、③審査付論文等の基礎業績執筆時の指導状況、④学位論文指導
教員選択の理由、⑤指導教員選択時に困ったこと、⑥指導教員とのコンタクト頻度と内容、な
ど
①② 動機・経緯など:学部時代から、純粋研究職に就くことを志向していた。’90 年前後、当時のX大学では、Dコー
スの学生も少なく、アジアの留学生が大半を占めていた。研究者になるには5年コースしかなかったわりには、
進学・卒業しても、研究職・教員として大学に残れるような雰囲気は全くなく、魅力がなかった。そのため、
指
修士2年コースに進学するが、M1のときに公務員試験に合格し、修士課程は1年で退学、某省の研究所に就
導
職を決意。5年後、現在の勤務地に戻ったときに、M1 のときの最初に勤務地となった北陸での 5 年間の研究
教
成果をまとめたいという気持ちもあり、学位取得のため動き出す。’90 年代から研究所内では、学位取得を推
員
の
選
奨するうごき(プレッシャー)も強くなっていた。
③ 既に、材料はそろってきていたので、審査論文の投稿や、学位論文としてとりまとめる時間をどう確保するか
どうか、という問題になった。
④⑤ 修士1年間のみ所属した研究室の教授が、
「学位をもっていた方がよいので、いつでもとりに来い(論博で)」
択
と声をかけていただいていたことが非常に大きい。他の選択肢はあり得なかった。指導教授は、その後、X大
ま
からY大に異動されており、退官も近かったため、時期の制約はあった。結果的に、退官の年に論文提出。
で
⑥ 同一市内の大学→職場 ( 研究所 ) となったこと、指導教員が異動後も同一都市内に居住していたことから、論
文指導は、教授の自宅で約半年間、月に1回 2-3 時間程度、指導を受けた。
結局、大学には、数回の発表会以外、ほとんど行くことはなかった。
125
博士課程「短期在学コース」の創設に係る課題等に関する調査研究
⑦執筆中に欲しいと思ったもの(時間・資金・スペース・施設・情報等)、⑧審査の過程で感じ
たこと(制度の不備、透明性、各種ハラスメントなど)、⑨執筆・審査に必要だった費用とその
評価、⑩ 1-2 年程度で学位が取得できる短期在学コースがあったとしたら、どのようなサービ
論
文
執
筆
スが提供されている必要があるでしょうか?
⑦ 職場(研究所)では、’90 年代から積極的に学位を取らせる動きがあり、最後とりまとめる1年間程度は仕事
の量も配慮してくれたため、比較的やりやすい環境だった。論文執筆作業は主に職場でおこなった(自宅は子
どもがいたので)。職場が研究スペースなので、遠隔地の大学には二重のスペース等は必要なかった。
・
⑧⑨ とはいえ、執筆当時、学位論文テーマとは関係のない受託研究などもやりながらだったので、お金と時間が
審
ある人であったならば課程博士はうらやましいな、と感じていた。一時的にも無職・無給+学費を払う身分に
査
中
なることは困難な社会人にとって、論博という制度は非常にありがたかった。
(⑩ その他に記入)
⑪学位取得前後の職務の変化、⑫将来ビジョンの変化、⑬学位取得によるメリット など
学
位
取
得
後
⑪⑫⑬ 入省した ‘90 年代前半、特に上司の研究員は学位をもっていない学士卒がまだ大半であった。一方で、近
年の新入所員は修士卒か課程博士卒。国立研究所の独立法人化等の動きもあって、2000 年前後、40-50 歳代
の研究員もあわてて学位をとりだした時期であった(論博で)。学位を取得したことによる業務上のメリット
は特に感じない。取り終えた(持っている)、次の研究にじっくり着手できる、という安心感はある。
一部の所員には、学位取得後、大学教員などの職をみつけて転出する方もいるが、多くはない。研究所の職は、
教育業務がないのが魅力的だと思っている。
短期コースについて
1)「論博」の制度は自分の事情の中ではありがたいしくみであったが、あらかじめ指導してくれる指導教官との
師弟関係や信頼関係があっての論博。かなり危ういしくみであったことは事実。その意味では、ビジネスライ
クな短期コースは望まれているのかもしれない。
2)研究所員の学位取得需要は非常に多いはず。しかしながら、人によっては、既に学生時代の指導教員とは関
係が切れている・遠隔地の大学で密なコンタクトは不可能、などの様々な事由で指導教授をみつけることが困
そ
の
他
126
難な人も確実にいる。学位取得格差的な今の状況を、短期Dコースで救うことができればよいのではないか。
この場合、重要になるのは、見ず知らずの学生と教授でも、受け入れる窓口があることであろう。国立研究所
の場合、近年の新人所員は既に取得している場合も多いので、永遠に続く需要ではないが…
第3章 国内大学へのヒアリング調査
プロファイル 14
経営情報学・34 才
生年:1973 年
現所属:某独立行政法人
論文博士(2004)
性別:
役 職:任期付研究員
学歴・取得学位(社会人博士課程に●)
1992-1996 X大学教養学部 教養学士
基
本
情
職歴・役職(社会人博士課程在学中の職に●)
[1998]-[2002] 某省研究所 1996-1998 Y大学大学院環境科学研究科 重点研究支援協力員
環境科学専攻 環境修士
●[2003]-[2004] 某独立行政法人 ● 2004 Z大学大学院 アルバイト
経営情報博士(論文博士)
報
[2004] – [2005] 某独立行政法人 非常勤研究助手
[2005] - 某独立行政法人 任期付研究員
a. 知っていた
勤務先は、あなたが博士論文を作成していた b. 知らなかった
ことを公式に知っていたか ?
c. 指導教員は知っていた
d. その他(指導教授の講座の助手として勤務しながら論博)
①学位取得の動機、②審査付論文等の基礎業績執筆時の指導、③学位論文指導教員選択の理由、
④指導教員選択時に困ったこと、⑤指導教員とのコンタクト頻度と内容、など
①学位がなくては正規研究職への就職が不可能であるから
②研究所での研究が業務であったため直属の上司が指導
大学で学んできた内容とは違うため、出身大学とはまったく関係なし。
指
導
教
員
の
選
択
ま
で
③既に決まっていた研究内容について指導が可能で学位を出せる指導教官である。
いままでの業務における上司の知り合いであること。
学会等で既にある程度の面識があった。
できるだけ早く学位取得が可能そうなところ。
④既に決まっていた研究内容について指導が可能で学位を出せる指導教官が少ないため選択の
幅は非常に狭かった。
⑤当初は数ヶ月に1度。学位取得半年前ぐらいから約 1 ヶ月に1度。取得前はほぼ毎週 1 回。
大学より指導教官の自宅のほうが近かったため自宅での指導も数回
127
博士課程「短期在学コース」の創設に係る課題等に関する調査研究
⑥執筆中に欲しいと思ったもの(時間・資金・スペース・施設・情報等)、⑦審査の過程で感じ
たこと(制度の不備、透明性、各種ハラスメントなど)、⑧執筆・審査に必要だった費用とその
評価、⑨短期在学コースへの要望 など
⑥学位取得の時間を作るため、あえて就職をしないでアルバイト等の身分でいた。そのため収
入が少なく生活が苦しかった。この時期に支払えなかった各種税金・社会保険は就職後に少
論
文
執
筆
・
審
査
中
しずつ支払った。一方、非常勤ながら研究所にて研究補助を業務としていたため、時間と研
究施設についてはそれほど不自由しなかった。
⑦大学側で論文博士を出す前例がなかったため、各種スケジュールが直前に決まる場合があり、
慌てさせられた。
⑧大学まで遠かったため(車で2~3時間)交通費がかさんだ。
審査費用は私立であるため国公立と比べると割高。
また製本費用などもかなりの負担であった。
⑥に書いたようにあえて低収入の苦しい生活を選択したことも間接的な必要費用と考えられ
る。
⑨私は論博であるが、在学した場合、あまり関係のない必修単位に時間をとられると苦痛であ
ると思う。
⑩学位取得前後の職務の変化、⑪将来ビジョンの変化、⑫学位取得によるメリット など
学
⑩取得前後の職務の変化は特になし(取得時は非常勤であったため)
位
取
⑪将来ビジョンの変化は特にない。
得
後
⑫任期付という形ではあるが、就職し正規職員になれた。
今後、パーマネント職を得るためには必須
独立行政法人研究機関の多くでは新卒試験採用がなくなり、公募による採用のみになった。
また、35 歳以下でパーマネント採用はなく、PD や任期付き等の不安定な形態で再就職を繰り
返していくしかない。学位無しで就職はできない以上、学士や修士で一度就職した人間の学位
そ
の
他
128
取得手段は必須といえる。
第3章 国内大学へのヒアリング調査
プロファイル 15
経工学・35 才
生年:1973 年
現所属:Z大学工学部
論文博士(2004)
性別:男
役 職:客員研究員
学歴・取得学位(社会人博士課程に●)
1991-1995 X大学工学部建築学科 学士
職歴・役職(社会人博士課程在学中の職に●)
1997-2000 A一級建築士事務所
基 1995-1997 X大学大学院工学研究科 2000-2002 B一級建築士事務所
本
情
報
建築学専攻 修士
2003-2004 C博物館主事 ( 学芸員 ) 2004 Y大学大学院工学系研究科 ※市町村合併に伴い解散
博士 ( 工学 )
2004- D大学 非常勤講師
2004- Z大学客員研究員
2005- E一級建築士事務所 主任研究員
2005-2006 F一級建築士事務所 特別研究員
a. 知っていた
勤務先は、あなたが博士論文を作成していた ○ b. 知らなかった
ことを公式に知っていたか ?
c. 指導教員は知っていた
d. その他(指導教授の講座の助手として勤務しながら論博)
①学位取得の動機、②学位取得の決断時期(1 中長期の目的として決断した時期、2 短期の具体
的目的として決断した時期)
、③審査付論文等の基礎業績執筆時の指導状況、④学位論文指導教
員選択の理由、⑤指導教員選択時に困ったこと、⑥指導教員とのコンタクト頻度と内容、など
① 設計事務所勤務で知り合ったクライアントから、歴史的建造物と町並みの調査を依頼されたことが、修士論文
の研究を、より実証性の高いものとして、まとめたいと考えるようになった直接の動機である。ただ、私の出
身大学には、博士学位取得者が教員に少なく、あまり実感はなかった。
② 1)これは、Z大学のG先生と知り合った時(2000.1)である。修士論文に目を通していただき、研究課題は
その場で決まった。すぐにZ大学では、学位取得が厳しい状況となったので、研究生として所属し、他大学で
指
導
教
員
の
選
択
ま
で
の論文博士に照準を合わせた。G先生からは、論文博士なら 5 本の審査付という課題を賜った。この時には 5
年と考えていたが、実際には研究着手から約 4 年(2004.10)、初出の審査付は 6 本で取得できた。2)2004
年初旬に、G先生から着手することを勧められ、学位請求論文の執筆に取り掛かる。順調に来ていたので、特
に焦ることもなく、約 5 ヶ月後に審査用の論文を提出する。審査が、夏休みでずれ込み多少の不安も覚えた時
期はあったが、9 月に口頭試問が行われ、10 月に取得。期間は 10 ヶ月、実質は約 7 ヶ月である。
③ 審査付論文等の基礎業績執筆時の指導については、すべてG先生にご指導いただいた。大学時代は、学会も知
らなかったので、まったくすべてが一からG先生のご指導による。
④ 当初、社会人での後期を検討していた。何人かの先生とお会いする中で、G先生と知り合う機会を得て、具体
的に意識できるようになる。G先生とは面識がなかったが、名刺交換をさせていただいた時に、この先生だと
直感で思い、翌週には修士論文を持参して、お願いに伺う。G先生のことをまったく知らなかったので、分野、
研究内容に関係なく、名刺交換時に感じた、まったくの第一印象で決める。当時、G先生は後期の学生を持て
なかったので、研究生として所属し、ご指導を賜る。
⑤ 学位請求のためにご指導いただくG先生を探すのは、さほど難しくは無かった。けれども、学位を請求するに
あたり、審査を賜る主査の先生と大学を探すのは難航した。結果的には、G先生が紹介してくださった。主査
を引き受けていただいたH先生は、私が建築史の道を選択するきっかけとなった著書を執筆されており、単純
に一ファンとして著書も多数購入していたので、とても嬉しかったことを記憶している。
⑥ 基本的には、一審査付論文に対して、1~2週間に 1 度は指導をいただいた。基本的には、指摘された点が改
善されたと自分なりに感じた時点で、メールでアポイントをとっていた。この他でも研究室を訪ねることはあ
るが、論文指導としては、このくらいの頻度である。
129
博士課程「短期在学コース」の創設に係る課題等に関する調査研究
⑦執筆中に欲しいと思ったもの(時間・資金・スペース・施設・情報等)、⑧審査の過程で感じ
たこと(制度の不備、透明性、各種ハラスメントなど)、⑨執筆・審査に必要だった費用とその
評価、⑩ 1-2 年程度で学位が取得できる短期在学コースがあったとしたら、どのようなサービ
スが提供されている必要があるでしょうか?
論
文
執
筆
⑦ 時間である。当時は、史料を探すにも、既往研究を調べるにも、今のような便利なものはなかったので、平日
しか開いていない図書館などに足を向けるのは容易ではなかった。
⑧ 特にない。主査・副査の先生には、公平に、純粋に研究を審査していただき、とても感謝しているのが本音である。
⑨ 執筆に必要だった最大の費用は、現地調査を行うための交通費である。これは、何回かの研究助成金の獲得で
多少賄うことはできたが、やはり困難であった。審査に係る費用の捻出は、たしかに難しかった。けれども、
・
前記の先生方が日程を調整し、平日の2時間を割いて審査にあたってくれたことを考えれば、むしろ安いくら
審
いである。それよりも、学会への投稿審査費は、しっかりと論文を読まないで審査をしている感がある再査読
査
中
書などを拝見すると、高いと感じることはしばしばある。
⑩ 端的には、サービスは必要ないと考える。取得したいとする者の意欲で進学するもので、仮にそれまでに実績
があり、それが勘案できる材料であれば、後期課程の短縮はあってもよいのだと思う。ただし、現実として、
すでに後期課程は、様々な面で論文博士よりも優遇されている。後期在籍中での研究者番号、科研費申請、日
本学術振興会に関連するものが代表的である。公募によっては、後期を出ている必要があることが謳われる場
合もある。また、後期の学生を指導する教員の問題だと思うが、後期に在籍しても、自らの研究の位置付け、
視点などが明確にされない、整理できない後期課程者が多いように見受けられる。博士は、修士ではない。
⑪学位取得前後の職務の変化、⑫将来ビジョンの変化、⑬学位取得によるメリット など
⑪ 特にない。
学
位
取
得
後
⑫ 専任として、研究活動、学生の育成に携わりたいという考え方は、学位取得を目指してから今まで変化してい
ない。
⑬ 学位による特別なメリットは感じたことはない。前項⑩が整理されれば、それを感じることがあるかもしれな
い。ただし、自分自身が寛容に、そして客観的、論理的に学生の指導にあたれるようになったことは、社会人
でありながら取得できたという後ろ盾ができたからではないかと思う。また、研究者として携わっていく上で
は、今後もっと強く感じることがあるかもしれない。自分自身の気持ちの面では、希望した先生にご指導を賜
ることができ、憧れていた先生に審査をしていただけたことは、とても有意義で大切な時間であった。この苦
労を達成できたことがメンタル的には、大きなメリットではないかと思う。
そ
の
他
130
第3章 国内大学へのヒアリング調査
プロファイル 16
医学・36 才
生年:1971 年
現所属:某国立研究所
論文博士(2004)
性別:女
役 職:任期付研究員
学歴・取得学位(社会人博士課程に●)
1990-1994 X大学農林関係 学士
職歴・役職(社会人博士課程在学中の職に●)
1996-1997 医療機器関係企業に勤務
基 1994-1996 X大学大学院環境科学研究科環境科学 1997-2000 製薬関係企業に派遣勤務
本
情
専攻 修士
2000- 某国立研究所
2004 X大学論文博士 ( 医学 ) 取得
報
a. 知っていた
勤務先は、あなたが博士論文を作成していた
b. 知らなかった
ことを公式に知っていたか ?
○ c. 直属の上司のみ知っていた
d. その他(指導教授の講座の助手として勤務しながら論博)
①学位取得の動機、②学位取得の決断時期(1 中長期の目的として決断した時期、2 短期の具体
的目的として決断した時期)
、③審査付論文等の基礎業績執筆時の指導状況、④学位論文指導教
員選択の理由、⑤指導教員選択時に困ったこと、⑥指導教員とのコンタクト頻度と内容、など
①研究活動を進めていく上で、パーマネント職を考えた場合、学位の取得が必須であったこと。
また、研究業務内容については学位が無い場合と変わらないのにも関わらず、給与などの待
遇面でかなり異なることから、学位取得を考えた。
指
導
教
員
の
選
択
ま
で
② 2000 年より国立研究所に勤務するようになってから。
③審査付論文等の基礎業績執筆時の指導状況については、現勤務先である国立研究所の上司か
ら指導を受け、習得した。
④学生の頃から指導教員との面識があり、現在の研究内容についても理解が深く、研究業績及
び人格からも信頼できると考えたから。また、出身大学でもあり、現在の勤務先からも近かっ
たから。
⑤特に無い。
⑥平日は業務があるため、ゼミなどには参加できなかったが、学位取得前には研究内容につい
てプレゼンを行い、指導教員及び現役の大学院生から意見や指摘を頂く機会を作った。
131
博士課程「短期在学コース」の創設に係る課題等に関する調査研究
⑦執筆中に欲しいと思ったもの(時間・資金・スペース・施設・情報等)、⑧審査の過程で感じ
たこと(制度の不備、透明性、各種ハラスメントなど)、⑨執筆・審査に必要だった費用とその
評価、⑩ 1-2 年程度で学位が取得できる短期在学コースがあったとしたら、どのようなサービ
論
文
執
筆
・
審
査
中
スが提供されている必要があるでしょうか?
⑦業務を遂行しながらの執筆だったので、まとまった時間が取れず思うように進まなかった。
⑧特に無い。
⑨論文投稿に関する経費は勤務先での研究内容にかかわることなので、実質的な自己負担はな
い。審査については、所定の経費がかかったがそれ程高額ではなかった。
⑩業務とも並行する場合は、配慮が欲しい。
⑪学位取得前後の職務の変化、⑫将来ビジョンの変化、⑬学位取得によるメリット など
学
位
取
得
後
そ
の
他
132
⑪学位取得後、現勤務先で契約職員から任期付き職員になることができた。
⑫特に無い。
⑬たとえ業績があっても、学位がなければパーマネント職を含め、研究職での就職はかなり困
難といわざるを得ない。その意味から、学位取得は大きなメリットになると考える。
第3章 国内大学へのヒアリング調査
プロファイル 17
農学・48 才
生年:1959 年
現所属:X大学
論文博士(2006)
性別:男
役 職:准教授
学歴・取得学位(社会人博士課程に●)
基
職歴・役職(社会人博士課程在学中の職に●)
1978-1982 X大学農学部農業工学科 学士
1982-1983 某省係員
2006
1983・1988 同省東海地区出先機関係員並びに事業所係長
X大学にて博士(農学)取得
1988-1991 同省係長
本
1991-1994 在オランダ日本国大使館一等書記官
情
1994-1999 同省課長補佐
1999-2001 某県課長
報
2001-2003 財団法人研究所部長
2003-2006 独立法人研究所研究室長
2007~
X大学大学院准教授
○ a. 知っていた
勤務先は、あなたが博士論文を作成していた
b. 知らなかった
ことを公式に知っていたか ?
c. 直属の上司のみ知っていた
d. その他(指導教授の講座の助手として勤務しながら論博)
①学位取得の動機、②学位取得の決断時期(1 中長期の目的として決断した時期、2 短期の具体
的目的として決断した時期)
、③審査付論文等の基礎業績執筆時の指導状況、④学位論文指導教
員選択の理由、⑤指導教員選択時に困ったこと、⑥指導教員とのコンタクト頻度と内容、など
① OECD、APEC、ICID、INWEPF、IMPIMなどの国際会議、特に専門家会合に出席して発表
や議論を行う業務を遂行する上で、国際社会における学位の重要性を感じたことと、農業水利・水管理の分野
に関する自らの経験と論理的考察をきちんとまとめてみたかった。
② 1)独立法人研究所に転任してきたからには早期に学位論文をとらねばならないという義務感、使命感により
指
導
教
員
の
選
択
ま
で
決意してから約3年6ヶ月、2)2006年の秋口までに必ず学位論文をとるという不退転、崖っぷちに立っ
た決意をしてから約11ヶ月
③ 審査付論文等の基礎業績執筆技術については、財団法人研究所並びに独立法人研究所在勤中に、先輩・同僚・
部下の業績に学ぶと共に彼らとの議論を通じて独学で習得した。
④ 出身大学であり、様々な業務を通じて指導教員との交流があり、業績及び人柄を知っていたこと、並びに勤務
先の諸先輩からの評判も良く、安心感があったから。また、自宅から大学まで至近の距離(徒歩 25 分)にあり、
通いやすかったから。
⑤ 自分の研究テーマを包含する専門分野の研究を行っている指導教員が見つからなかったため、指導教員を依頼
するにあたり、別途交流のある他大学の複数の教員にも論文の内容について指導を受けながら進めることを了
解してもらう必要があった。
⑥ 毎週一回開催される研究室ゼミには可能な限り参加し、現役の大学院生等の研究からも参考とすべき点を吸収
し、自らの研究についても頻繁に発表を行って指導教員及び大学院生等から意見や指摘をもらう機会をできる
だけ多く作ることに努めた。
133
博士課程「短期在学コース」の創設に係る課題等に関する調査研究
⑦執筆中に欲しいと思ったもの(時間・資金・スペース・施設・情報等)、⑧審査の過程で感じ
たこと(制度の不備、透明性、各種ハラスメントなど)、⑨執筆・審査に必要だった費用とその
評価、⑩ 1-2 年程度で学位が取得できる短期在学コースがあったとしたら、どのようなサービ
スが提供されている必要があるでしょうか?
⑦ 様々な業務を遂行しながらの執筆なので、1~2週間程度連続して執筆に没頭出来る時間がなかなかとれな
かった。1~2週間の期間にわたり仕事が追っかけてこない環境が欲しかった。
⑧ 審査は公開発表の後に主査1名副査4名(うち他大学1名)によって厳正に実施され、大変有益なコメントを
論
文
執
筆
・
審
多数頂き、制度が良好に運営されていると感じた。
⑨ 勤務先において業務を遂行しながら論文を執筆することが許されており、内容的にも業務との関連が深かった
ので、付加的な費用はほとんどかからなかった。審査には所定の審査費用がかかったが、他大学出身者よりも
本学出身者が優遇されていて助かった。
⑩ 1.社会人は、一般的に先行研究論文の検索と取り寄せを研究者のようにてきぱきとこなせない。これは、先
行研究論文をどこまで集めればよいのか、どこまで読み込めばよいのか、という値踏みができないからである。
可能であれば、これを手伝いアドバイスをくれる専門のアシスタント(あるいは専門スタッフグループ)があ
ると大変助かる。
査
2.一般的に論文の目次立てが固まれば半分以上書けたも同然と言われるが、社会人の場合は「目次立ての確立」
中
→「項目毎の執筆」という流れは一般に不得手である。なぜならば、社会人は学位論文に書く内容の材料は一
般に豊富に持っており、各材料の文章化も時間さえあれば質的にも量的にも十分にこなせる。それで、どうし
ても各論の文章化を先に進めたい傾向がある。ところが、指導教員の側から見るとそもそもの論文の筋立てに
注文が付くので、何度も目次を改訂し、折角書き上げた項目をばっさり切り落とすこともあり得る。これは、
社会人にとって極めて苦痛(書いた時間が無駄になったのと、肝心の目次立てが固まらない焦燥感)な事態で
ある。指導教員側は、学位論文に盛り込まれなくても書いたものは無駄にはならないという感覚を抱きがちだ
が、1年間の年限が切られた社会人との間に価値観の大きなギャップが生じる。したがって、年限を切る場合
には、各指導教員のポリシーの違いに左右されないように、上述のような苦痛が社会人側に生じることを未然
に防ぐサポートプログラムを準備いただく必要がある。
⑪学位取得前後の職務の変化、⑫将来ビジョンの変化、⑬学位取得によるメリット など
⑪ 学位取得により、出願条件を満たすこととなったので、現職の公募に応募して採用となった。勤務先が変わっ
たことにより職務内容も大幅に変化し、学内においては研究のほか教育にも携わることとなった。学外では、
学
行政関係の各種委員を拝命し、委員会等で発言する機会が増えた。また、海外での調査、国際会議への出席・
発言も以前よりも円滑に行えるようになった。
位
⑫ 自分の将来ビジョンに、学位取得と大学勤務で得た経験を行政分野に活かす道が加わったほか、退官後も執筆
取
活動やオピニオンリーダーとして活動する選択肢が広がった。学位取得により、論文をはじめ様々な著述に対
得
する自信と意欲が向上し、自分の能力を「世のため人のため」に使うことができる場が広がり、耐用年数も延
後
びたのではないかと考える。
⑬ この先も研究者あるいは大学人として生きていくならば学位取得のメリットは大きいが、行政官に戻る場合は
学位取得のメリットは海外でのみ感じることになるであろう。しかし、これら職業上のメリット以上に、自由
な発言の場での自分の発言に一層責任が生じることや、プライベートな場においてもアカデミックなステイタ
スを得られることが、今後一生涯のメリットとして確保されたことが大きいと考える。
そ
の
他
134
第3章 国内大学へのヒアリング調査
プロファイル 18
造形学・30 才
生年:1978 年
現所属:コンサルト会社
論文博士(2008)
性別:男
役 職:技師
学歴・取得学位(社会人博士課程に●)
1996-2000 X大学造形学部 学士
職歴・役職(社会人博士課程在学中の職に●)
2003- 現在 コンサルタント会社 技師
基 2000-2002 X大学大学院造形研究科 修士
本 2008 X大学 博士 ( 造形 ) ( 審査中 )
情
報
a. 知っていた
勤務先は、あなたが博士論文を作成していた
b. 知らなかった
ことを公式に知っていたか ?
○ c. 直属の上司のみ知っていた
d. その他(指導教授の講座の助手として勤務しながら論博)
①学位取得の動機、②学位取得の決断時期(1 中長期の目的として決断した時期、2 短期の具体
的目的として決断した時期)
、③審査付論文等の基礎業績執筆時の指導状況、④学位論文指導教
員選択の理由、⑤指導教員選択時に困ったこと、⑥指導教員とのコンタクト頻度と内容、など
① 学部から約 10 年ほど継続して行っている研究を 1 つの成果としてまとめたいと感じたため。また、会社の業
務遂行において学位は特に求められていないが、業務を進めていくうちに、客先への発言や成果品の信頼性を
高めるという点を考慮した際、学位の必要性を感じた。
② 1)修士修了後、長期的に 30 歳までに学位取得を目指した。業務に追われ途中 2 年弱、査読付論文の執筆を
中断したが、約 6 年。 2)目標とした 30 歳が近づくと共に、論文博士の廃止案が文部科学省に提出された
指
導
教
員
の
選
択
ま
で
時点で焦りを感じ、査読付論文の提出を再開。この時点から 3 本の査読付論文の発表を含め、博士論文執筆ま
でに約 2 年半。
③ 審査付論文等の基礎業績執筆技術については、現職在籍時、メール ・ 郵送等のやりとりや、休祭日等を利用し
て大学へ通うことにより、指導教員からの指導で習得した。なお、修士課程から継続している梗概執筆も下地
となった。
④ 出身大学であり、学部の頃から熱心に指導を受けていたこと。博士論文を執筆するための基礎研究が指導教員
と共同で行われており、情報の共有化が簡便であること。
⑤ 特になし。困ることはまったく無かった。
⑥ 基本的にメール・郵送のやりとりによって、かなり高い頻度でコンタクトを取った。査読付論文等の締切直前
には電話で数時間にわたるやりとりを行うこともあった。直接の指導を受ける必要がある際には事前に連絡し、
大学に行った。博士論文執筆時は、計画を立てて章毎に仮提出日を定め、文章を積み重ねた。
135
博士課程「短期在学コース」の創設に係る課題等に関する調査研究
⑦執筆中に欲しいと思ったもの(時間・資金・スペース・施設・情報等)、⑧審査の過程で感じ
たこと(制度の不備、透明性、各種ハラスメントなど)、⑨執筆・審査に必要だった費用とその
評価、⑩ 1-2 年程度で学位が取得できる短期在学コースがあったとしたら、どのようなサービ
スが提供されている必要があるでしょうか?
⑦ 会社としては研究の奨励はするが、時間的 ・ 資金的補助は全く無かったため、業務繁忙期と論文執筆の時間配
分に苦しむことが多かった。特に、論文の執筆は自分で時間の遣り繰りが可能であるが、既往研究等の検索・
確認等、基礎的な研究には図書館の開館時間等、制限があるため、研究に必要なまとまった時間を取ることが
難しいと感じた。
⑧ 審査は公開発表の後に主査 1 名、副査 4 名 ( うち他大学1名 ) によって実施された。公開発表では審査員以外
からも大変有益なコメントを多数頂くことができた。
⑨ 審査には所定の審査費用がかかりましたが、主査含め 5 名の審査料としては適当(もしくは安い)と感じた。
⑩ 1.研究に必要な関連図書は全て購入する訳にいかないため、必然的に貸与 ・ 複写を第一に考える。現在は図
論
文
執
書館 ・ インターネット等で必要な図書の検索は簡単だが、これを取り寄せても、図書館外への持ち出し禁止等
の場合、複写に多くの時間が費やされてしまう。文献コピーの郵送サービス等はあるが、必要な頁が判明して
いる場合は有効だが、書籍全体の内容を確認し、必要部分のみを複写したい場合はあまり有益ではない。私の
場合、これら作業を行ったのは、基本的に会社の休祭日であった。休祭日はまとまった時間が確保されるため、
筆
本文執筆 ・ 資料作成等に打ち込みたいところであるが、これを基礎的な調査に費やすと ( 実際は必要な作業で
・
あるが ) 論文全体が進んでいない錯覚に陥り、不安になることがあった。研究に必要な図書の検索と複写に関
審
査
中
するサポート体制が整うと非常に助かるのではないか。
2.私の研究の場合、研究室所有の資料も多用したが、自宅から大学まで往復で約 2 時間かかる。大学まで行き、
資料を探し、貸与 ・ 複写を行うだけで半日が消費されることもあった。私の場合、同期生が大学に籍を置いて
いたため、この作業を依頼することもあったが、一般的な社会人の場合、同じことが可能とは限らない。研究
室所有の資料の一部を整理 ・ 管理するスタッフグループ等があると、個人だけでなく、研究室単位で大いに活
用されるのではないだろうか。
3.論文等をまとめるにあたっては、設備機器等の準備に苦しんだ。印刷、複写は早く、綺麗であることが望
ましく、一社会人 ( 個人 ) でこれを用意するのは難しい。私の場合、会社設備の借用許可を頂いたが、全ての
人が同じ状況にあるとは限らない。会社もしくは大学で印刷、複写に関するサポート体制 ( 一定量の借用許可等 )
があると助かるのではないか。
4.社会人にとって論文研究は生活 ・ 時間 ・ 業務のバランスを取ることが一番難しいと感じた。業務をこなし、
生活するための給与を頂きながら、いかに自分の時間を作って調査研究を進めるかが大きな課題となる。もし、
可能であれば学位取得が会社に対するメリットに繋がるのであれば、フレックス制や博士号取得に関する長期
( もしくは有給 ) 休暇等のように、学位取得者希望者自らが生活 ・ 時間 ・ 業務のバランスを取れるようなサポー
ト体制が整うことが必要と感じた。
5.研究者 ・ 学生という証明がされれば、社会的サポート ( アカデミック版ソフト等の購入、旅客割引等 ) を
受けることが可能であるため、大学からこの証明書を発行されれば少なからずサポートになると感じた。
⑪学位取得前後の職務の変化、⑫将来ビジョンの変化、⑬学位取得によるメリット など
学
⑪ 学位論文審査中のため、今現在での実感はありませんが、私としては、学位取得後も研究を継続する意志があ
位
るため、今後、今までのように業務と平行して研究を進めることについて、会社の理解が得られるよう、社員
取
が学位を取得すること、研究を継続することのメリットについて業務を通して会社に示すことが今後の課題と
得
後
考えます。
⑫ 学位取得によって、これを活かした別の研究職などの可能性を得たと考えます。
⑬ 自らの発言や執筆物に関して、信用性を得られることがメリットとして確保されたと考えます。一方で、その
責任についても再認識する必要もあると考えます。
そ
の
他
136
社会人で博士論文を執筆するためには、会社や大学などをはじめ、周囲のサポート体制が必須と感じた。自らの
計画性も必要ながら、特に業務と論文執筆の繁忙期が重ならないような制度 ・ 体制を採る必要を感じた。
第3章 国内大学へのヒアリング調査
プロファイル 19
工学・43 才
生年:1964 年
現所属:Z大学土木分野
論文博士(準備中)
性別:女
役 職:研究員
学歴・取得学位(社会人博士課程に●)
1990 X大学土木系の専攻 修士卒
職歴・役職(社会人博士課程在学中の職に●)
1991-1995 民間シンクタンク研究員
基 2008 〜 Y大学論文博士取得準備中
1995-2006 同シンクタンク嘱託研究員
本 2002 − コンサルタント
2007 − Z大研究員(3年任期)
情
報
○ a. 知っていた
勤務先は、あなたが博士論文を作成していた
b. 知らなかった
ことを公式に知っていたか ?
c. 直属の上司のみ知っていた
d. その他(指導教授の講座の助手として勤務しながら論博)
①学位取得の動機、②学位取得の決断時期(1 中長期の目的として決断した時期、2 短期の具体
的目的として決断した時期)
、③審査付論文等の基礎業績執筆時の指導状況、④学位論文指導教
員選択の理由、⑤指導教員選択時に困ったこと、⑥指導教員とのコンタクト頻度と内容、など
①②動機・経緯など:修士当時もそれ以降の研究志向は高かった。修士卒後、助手ポスト(兼・論博取得)の話があっ
たが、出身大学の土木分野では、女性研究者は時期尚早との大学側の結論により残ることができなかったため
研究生活の継続を断念。就職せざるを得なくなり、東京の民間シンクタンクに就職することとなった。その後、
結婚等の理由により札幌市に移住。前職の嘱託研究員を続けながら、札幌市にて民間のフリーランス・コンサ
ルタントとして地位を築く。
指
導
教
員
の
選
択
ま
で
コンサル業務の中で知り合った先生の誘いにより 2007 年度よりZ大学の研究員としての職を得た。そのため
時間に余裕ができた。これまでの「空いた時間に研究」ではなく、「研究が主の職」を得たので、学位取得を
考えるならば今しかないと思い、準備をはじめた。
③④X大学学部・修士時代の助手の方が、現在はY大学に異動し教授となっており、学位取得するのであれば、
指導教員はこの先生の可能性が非常に高かった(在住地からは遠隔)。一方で、現在研究員をしているZ大学(在
住地から近い)でも論博が可能なので、論博であるならば、Y大ではなく、職場のZ大で取得する可能性もま
だゼロではない。
⑤⑥常に学位取得について声をかけてもらっていた出身大学の先輩でもあるY大学教授に指導を仰ぐのが自然な
流れである。しかし、在住地から遠隔地であるので、E-mail 指導などがどの程度可能であるか、直接指導の頻
度がどの程度必要かが重要な課題となる。
137
博士課程「短期在学コース」の創設に係る課題等に関する調査研究
⑦執筆中に欲しいと思ったもの(時間・資金・スペース・施設・情報等)、⑧審査の過程で感じ
たこと(制度の不備、透明性、各種ハラスメントなど)、⑨執筆・審査に必要だった費用とその
評価、⑩ 1-2 年程度で学位が取得できる短期在学コースがあったとしたら、どのようなサービ
スが提供されている必要があるでしょうか?
論
文
執
筆
・
審
査
中
⑦ 近年の論博縮退の流れから指導教員には課程博士(十分な研究スペース保証)を勧められたが、相談を重ねる
うちに、遠隔地かつフルタイム研究員という職もある社会人なので、論文指導のみ求める側とのミスマッチが
表出し、論博(論文指導と提出・審査のみ希望)が適していることがわかってきたため、論博に変更を希望した。
⑧⑨ 遠隔地でフルタイム勤務であるため、自由度が高い勤務態勢であったとしても、高い飛行機代と授業料を考
えると、課程博士(コース)は非常に考えにくい。コストパフォーマンスが悪い。これまでの論博制度は魅力
的に思える。
また、指導教員との相談の中で、従来型の大学人というものは指導下のドクターの学生に対して、従来の助手
的な役割(※学部修士生の指導の手伝いや教授の担当研究プロジェクトの手伝い等の業務)を期待しているこ
とがわかってきた。退職していない若い世代の現役の社会人は、※のような業務は現職での仕事の中で現役で
おこなっているわけで、二重におこなうのは困難であるし、多大な負担となる。この点は十分な話し合いが必
要と思う。当然、片手間で学位論文の執筆は不可能であることも理解しているので、自分の論文と関係のない
研究室運営のための業務負担は余計無理であると感じている。
(⑩ その他に記入)
⑪学位取得前後の職務の変化、⑫将来ビジョンの変化、⑬学位取得によるメリット など
学
位
取
得
後
⑪ フリーランスのコンサル業務において学位の価値とは、国内では特に無いが、海外との関係では非常に大きい
と感じていた。
⑫ 学生指導や教育がかなりの業務の率を占めるタイプの大学はあまり魅力が無く、できれば、質の高い研究をし
ていく研究員を志向している。
⑬ これまで片手間でしかできなかった研究をきちっと深め一度大成したい、ということと、質の高い研究を継続
していくための資格に相当する。
短期コースについて
1) 今後は社会人経験者が大きいターゲットとなるのだと想定すると、真剣さは一緒であるが、大きく2種類あ
りそうなのでコース整備時には配慮が必要ではないだろうか。
○前期社会人(30-40 歳代?)…キャリアパスを変える・上げるための資格、人生リセット?
○後期社会人(一線を退職後の高齢層?)・・・ これまでの集大成、改めて学び直して社会貢献志向?
一概には言えないが、前期社会人層はコスト・時間・仕事への負担などに対して非常にシビアにカリキュラム
を評価するはずであり、個人の研究作業と研究室や講座の助手的な運営業務の混同に違和感を持つ人が多いの
そ
ではないか。従来、学位を取る人は大学の研究者になる方が多かったので、助手仕事も将来のために必要であっ
の
たが、今後は助手仕事—ドクター研究は切り離して考えてもらえるとよいのかもしれない。一方で、後者社会
他
人層は、生涯学習的な志向に達しており、これまでの長年の業務経験を活かした社会貢献意識も高いので、現
役の若い学生達への教育業務に積極的に携わってもらえる人も多そう。
2) 負担するお金・時間に対してシビアな判断をする学位取得希望者に対して、優秀な人材に対しては、1年学
費がいくら、というよりも、学位指導一式いくら(3年でも5年でも)という方がよい場合もありそう。様々
なメニューがあるとよい。
3) 優秀なモチベーションの高い人材に対して、奨学金の制度や、万が一指導教員がいなくなった場合の保証制
度などは明示してもらうといいと思う。
138
第3章 国内大学へのヒアリング調査
3-4 ま と め
大 学 で の ヒ ア リ ン グ 結 果 を ま と め た の が 表 3-1 で あ る 。 こ の 作 業 と 研 究 者 プ ロ フ ァ イ ル
の 作 成 作 業 を 通 じ て 得 ら れ た 知 見 は 以 下 の 通 り で あ る。
3-4-1 博 士 学 位 需 要 の 特 性
1) 学 位 取 得 希 望 者 の 様 々 な ニ ー ズ
大 学 ・ 研 究 者 へ の ヒ ア リ ン グ か ら、 博 士 号 取 得 希 望 者 に も、 そ れ ぞ れ の ラ イ フ ス テ ー ジ
に 応 じ 、 様 々 な 現 実 や 動 機 が あ る こ と が 判 っ た 。「 短 期 在 学 コ ー ス 」 が 満 た す べ き 要 件 に
つ い て 検 討 を 進 め る 前 に、 ま ず は 博 士 号 の 需 要 を め ぐ る 昨 今 の 情 勢 に つ い て 少 し 広 い 視 野
か ら 述 べ て お き た い。
一 般 に 博 士 号 に は 、「 資 格 」 と し て の 博 士 号 、「 称 号 」 と し て の 博 士 号 と い う 二 つ の 側 面
が あ る よ う に 思 わ れ る。 博 士 号 を 資 格 と し て 捉 え る の で あ れ ば、 な る べ く 少 な い 労 力 ・ 費
用 と 短 い 期 間 で 博 士 号 を 取 り た い と 取 得 希 望 者 は 考 え る で あ ろ う。 こ れ に 対 し 称 号 と し て
博 士 号 を 捉 え れ ば、 研 究 の 達 成 度 の 高 さ が 最 も 重 視 さ れ る の で あ り、 労 力 ・ 費 用 や 期 間 は
二 次 的 な 問 題 に な る も の と 思 わ れ る 。「 短 期 在 学 コ ー ス 」 は こ の う ち 資 格 と し て の 博 士 号
を 円 滑 に 効 率 よ く 授 与 す る た め の 仕 組 と 位 置 づ け る こ と が 出 来 る で あ ろ う が、 取 得 希 望 者
の 属 性 ・ 動 機 に よ り そ の 必 要 度 は 様 々 で あ る と 推 測 さ れ る。
た と え ば 大 学 学 部 の 新 卒 者 や 留 学 生 に は、 学 位 取 得 後 の 将 来 の 見 通 し を な る べ く 早 く 立
て る た め に も 短 期 の 在 学 コ ー ス が 魅 力 的 に 映 る 可 能 性 が あ る。 特 に 人 文 ・ 社 会 系 分 野 の よ
う に、 こ れ ま で 学 位 取 得 が 長 期 間 化 す る こ と が 避 け ら れ な い と 思 わ れ て き た 分 野 に お い て
は、 短 期 で の 取 得 可 能 性 が 明 示 さ れ る こ と に よ っ て 新 た な 需 要 を 発 掘 す る こ と も 可 能 で あ
ろ う。 取 得 後 の 就 職 等 の キ ャ リ ア 形 成 に お い て 年 齢 的 に 有 利 に な る か ら で あ る。 し か し 一
方 で、 人 文 ・ 社 会 系 等 の 分 野 で は 長 期 間 の 研 究 活 動 を 継 続 す る こ と 自 体 に 大 学 院 生 が 意 義
を 見 出 し、 む し ろ 長 く 大 学 院 生 と し て の 身 分 を 保 持 で き る こ と が 魅 力 と な っ て い る 側 面 も
あ る。 大 学 院 生 の 肩 書 き を 持 つ こ と で 社 会 に 説 明 し や す い 立 場 を 得 る と と も に、 図 書 館 や
研 究 室 な ど の 研 究 環 境、 各 種 調 査 に お け る 対 外 的 な 信 用 を 手 に 入 れ る こ と が で き る か ら で
あ る。 こ の よ う な 場 合 で も 研 究 職 へ の 公 募 で は 博 士 号 が 必 須 の 資 格 に な っ て 来 て い る の は
言 う ま で も な い が、 博 士 号 の 取 得 は 目 的 と い う よ り は 通 過 点、 あ る い は 一 種 の ケ ジ メ と し
て 認 識 さ れ て い る こ と が 多 い よ う で あ る。
社 会 人 の 場 合 に も 同 様 に 大 き く 二 つ の タ イ プ が あ る よ う で あ る。 こ れ は、 そ れ ぞ れ 前 期
キ ャ リ ア 形 成 途 上 の 社 会 人 と 後 期 社 会 貢 献 ・ 生 涯 学 習 型 社 会 人 と 言 う べ き タ イ プ で あ り、
両 者 に は 大 き な 相 違 が あ る。
ま ず、 前 期 キ ャ リ ア 形 成 途 上 社 会 人 の 場 合 は、 時 間 ・ 予 算 ・ コ ス ト パ フ ォ ー マ ン ス に シ
ビ ア に な ら ざ る を え な い 現 実 が あ る。 取 得 後 の 昇 進 ・ 転 職 や 独 立 の き っ か け に し た い と い
う 資 格 取 得 的 な 志 向 が あ り、 な る べ く 早 く 安 く 博 士 号 を 取 得 し た い と い う 希 望 が あ る の
で 、「 短 期 在 学 コ ー ス 」 は こ の 希 望 に 応 え る も の に な る 可 能 性 が あ る 。 た だ し 、 現 在 の 大
学 で は、 博 士 課 程 在 籍 中 の 大 学 院 生 が 研 究 室 内 や 講 座 の 研 究 ・ 教 育 業 務 を 請 け 負 っ て い る
こ と が 多 い。 教 員 側 に も 「研 究 室 の 中 で 様 々 な 業 務 を 通 じ て ゆ っ く り と 学 び な が ら 博 士 号
取 得 に 導 け ば 良 い」 と い う 考 え 方 が あ る の は 確 か で あ る。 し か し、 前 期 キ ャ リ ア 形 成 途 上
社 会 人 の 場 合 は 本 務 を 抱 え て い る、 家 計 を 支 え て い る な ど の 理 由 が あ る た め、 こ の よ う な
139
博士課程「短期在学コース」の創設に係る課題等に関する調査研究
業 務 の 遂 行 は 多 忙 で 困 難 で あ る こ と が 多 い。 ま た、 研 究 指 導 に お い て 先 の 見 え な い 形 で よ
り 高 い 到 達 を 大 学 院 生 に 課 そ う と し が ち な 教 員 の 態 度 は、 社 会 人 大 学 院 生 に 対 し て は 不 安
を 与 え る こ と が 多 い よ う で あ る。 し た が っ て、 あ る 程 度 ビ ジ ネ ス ラ イ ク に 到 達 度 ・ 期 限 な
ど の ゴ ー ル を 明 確 化 す る 必 要 性 が あ る。 ま た ゴ ー ル を 明 示 す る こ と に よ っ て、 現 状 で は 課
程博士は時間的・経済的制約から難しいと考えている潜在的な需要を取り込むことも可能
で あ る と 考 え ら れ る。
こ れ に 対 し 後 期 社 会 貢 献・ 生 涯 学 習 型 社 会 人 の 場 合 は、 時 間 に 余 裕 が で き た 世 代 の 生
涯 学 習 的 な 色 彩 が 強 い。 こ れ ま で の 社 会 人 生 活 で 培 っ た 蓄 積 を ま と め る と 共 に、 視 点 を
変 え て 学 び 直 し た い と い う 志 向 が あ る。 し た が っ て 資 格 と い う よ り も 称 号 と し て 博 士 号
を 捉 え て い る た め、 必 ず し も 短 期 で の 取 得 が 必 要 な わ け で は な い。 ま た、 分 野 に も よ る
で あ ろ う が、 取 得 後 は 社 会 貢 献 志 向 が 高 い も の と 推 測 さ れ、 そ の 経 験 を 生 か し た 活 躍 の
場 の 提 供 が む し ろ 重 要 に な る。 こ の 場 合 の 活 躍 の 場 と は、 収 入 を 得 る た め の 職 業 で あ る
必 要 は 必 ず し も な く、 本 人 の 自 己 実 現 に つ な が る よ う な 活 動 そ の も の と 理 解 す べ き で あ
ろ う。
2) 大 学 立 地 と 取 得 者 希 望 者
上 述 の よ う な 様 々 な 取 得 希 望 者 は 地 理 的 に 均 一 に 分 布 し て い る わ け で は な い。 し た が っ
て、 大 学 は そ の 立 地 に よ っ て、 特 定 の タ イ プ の 潜 在 的 な 取 得 希 望 者 を 獲 得 し や す い 場 合 が
あ る し、 予 め 立 地 か ら 需 要 を 類 推 し て 供 給 を 計 画 す べ き で あ ろ う。
典 型 例 は、 筑 波 研 究 学 園 都 市 や 関 西 学 研 都 市 の よ う な 研 究 学 園 都 市 で あ る。 研 究 学 園 都
市 に は 多 く の 公 的 ・ 民 間 研 究 所 や 大 学 が 立 地 し て い る が、 こ れ ら の 組 織 に は 学 部 卒 ・ 修 士
修 了 、 あ る い は 博 士 課 程 を 単 位 取 得 退 学 し て 就 職 し た 研 究 員・教 員 が 少 な か ら ず 存 在 す る 。
最 近 で は、 昇 進 や 転 職 時 に は 博 士 号 が 必 要 に な っ て き て い る の で、 博 士 号 取 得 の 潜 在 的 な
需 要 は 大 き い と 見 込 ま れ る。 組 織 に 在 籍 し た ま ま 博 士 号 を 取 得 し よ う と 思 い 立 っ た 時、 今
ま で で あ れ ば 論 文 博 士 を 目 指 し た で あ ろ う が 、「 短 期 在 学 コ ー ス 」 が で き れ ば 重 要 な 選 択
肢 に な る こ と は 間 違 い な い。 た だ し、 こ れ ら の 研 究 所 ・ 大 学 で も 新 し く 正 規 採 用 さ れ る 場
合 に は 博 士 号 が 必 須 と な っ て い る の で、 正 規 研 究 員 ・ 教 員 の 間 の 需 要 は 遠 か ら ぬ う ち に な
く な る 可 能 性 が 高 い。 い ず れ は そ れ ぞ れ に 在 籍 す る 非 正 規 雇 用 の 研 究 員 な ど が 需 要 の 中 心
に な る も の と 思 わ れ る。
ま た、 企 業 城 下 町 な ど の よ う に、 都 市 内 に 引 退 し た 高 学 歴 の 社 会 人 が 多 く 居 住 し て い る
ケ ー ス も あ る。 ヒ ア リ ン グ で は 北 九 州 市 立 大 学 が こ の よ う な 需 要 を 取 り 込 ん で い る こ と が
確 認 で き た。 こ れ ら の 社 会 人 の 中 の あ る 程 度 の 人 々 が 今 後 博 士 号 取 得 を 目 指 す こ と も 考 え
ら れ る が、 こ の よ う な 場 合 に 「短 期 在 学 コ ー ス」 が 必 要 と さ れ る か ど う か は 疑 問 で あ る。
先 に 述 べ た と お り 彼 ら の 学 位 取 得 は 生 涯 学 習 的 な 色 彩 が 強 い 場 合 が 多 い か ら で あ る。
こ の 他 に も 各 都 市 の 特 性 に 応 じ て、 特 定 分 野 ・ 属 性 の 潜 在 的 希 望 者 が 存 在 し て い る 可 能
性 が あ る。 各 大 学 の 自 主 的 な 需 要 発 掘 が 期 待 さ れ る と こ ろ で あ る。
3)「 短 期 在 学 コ ー ス 」 の 可 能 性 と 注 意 す べ き 点
一 方 、「 短 期 在 学 コ ー ス 」 に は 、 た だ 「 短 期 」 の 取 得 を 可 能 に す る と い う だ け で な い 制
度 と し て の 可 能 性 も あ る。
140
ものづくり型実践的研究人材 :環境に優しい鉄鋼材料
の戦略的育成プログラム」
2006- プログラム開設
・留学生特別コース
1999- 博士課程開設
2003- 博士課程開設
1995- 博士後期課程受入開始
修了
大正9年の旧制以前から
項ただし書きに準拠した早期 の在学期間短縮
大学院設置基準第 17 条第 1 研究科内規による課程博士
地盤工学、土木、材料
工学研究科
国立
京都大学
立地
キャンパス立地とその考え方
のネットワーク
都心サテライトキャンパスと 都心立地
支援)
留学生コースを設置(経済的
留学生への支援
支援
都心立地
程で博士取得を発意する
学会や研究会で交流を持つ過
が多い
キャンパス
キャンパス
研 究 生 活 に 集 中 で き る 郊 外 研 究 生 活 に 集 中 で き る 郊 外 都心立地
クォーター制の導入
細が決まる明快なシステム、
な 対 応、 入 学 前 に 奨 学 金 詳
国ごとの事情に応じた柔軟
員も変更しやすい
つ社会人
がら両立
ターゲットはアジア留学生か 転研究科がしやすく、指導教
設立)
起業家コース(都心サテライ 勤務(企業研究員)を続けな
グラム
ティブによる新規大学院プロ ン(産学連携研究センターの
個々の教員の事情に依存する
で対応可能 .
社 会 人 特 別 コ ー ス( 短 期 )
、 社会人ドクターの多くは通常
トキャンパス)を設置
特徴
ではなくなる
魅力ある大学院教育イニシア 派遣型高度人材育成協同プラ
ことも覚悟の上
売りに . 現行の早期修了制度 ても職場環境に依存すること
質の向上
生活スタートを早めることを 解に差異があり、期間につい
ンテージに
た工学博士対象コース
に応える
アジア諸外国の学位取得需要 低年齢での短期取得をアドバ 学位レベル維持
以上と、短期取得を可能とし 取得可能な学生が長期化する すく、取得期間はあまり問題
産学連携とセット
短期取得推奨で、プロの研究 職場において博士取得への理
質の向上
社会人特別コースは原則1年 カリキュラム負担増で短期で 産学間で行ったり来たりしや
学生
社会人への支援
時限付センター等の活用
資金
活用
教 育 GP 等 時 限 付 補 助 事 業、
外部
短期−長期に関わる特徴
生
新卒学生の他、社会人・留学 学位レベル維持
ターゲットの絞り方
性が高い
勤務する
い分野
究者以外の就職先が比較的多 究者以外の就職先が比較的多 大学・省庁等に再就職の可能
い分野
多く、そのままの職場に継続
メーカーの研究所等、大学研 メーカーの研究所等、大学研 が多く、学位取得後は自国の バンテージに就職活動できる
しての学位
D学位取得後の進路
可能
ターン
キャリアパスとして、資格と ド ク タ ー の 学 位 を と っ て も ド ク タ ー の 学 位 を と っ て も アジア諸外国の社会人経験者 若い年齢での学位取得をアド 在職しながら学位を取る者が
義務)
最短 24 歳で博士学位取得が
にしたビジネスモデルの一つ
シップ,知財系資格取得等の
れる仕組み
期修了制度による短期取得を 年 間 で ま と め る 早 期 修 了 パ
アジア留学生を「ターゲット 推奨
講義等、在職のまま学位をと 学研究研修,企業インターン クター受入れ
テムを使った講義、土日集中 レベルアップを図る(海外大 環としての継続的な社会人ド 学生支援体制の充実
を結んだIPテレビ会議シス ラムを付加し、学位の価値の センター設立、人材育成の一 した営業活動とサービスと、 に多く、優秀な学生に対し早 いる社会人研究者が最後の1
東京・大阪の都心サテライト あえて従来の学位にカリキュ 鉄鋼企業との産学連携による アジア諸外国留学生への徹底 短期学位取得者輩出数が非常 ほとんど論文の書き終わって
創出教育プログラム」
ラン
「派遣型高度人材育成協同プ
料)
・社会人特別コース
工学
情報科学研究科
国立
奈良先端科学技術大学院大学
学位取得後
特徴
アジア太平洋研究科
私立
立命館アジア太平洋大学
物質理工学・量子プロセス理 知能デバイス材料学(金属材 アジア太平洋学
工学研究科
イニシアティブ:
工学一般
コース名等
理工学府
国立
東北大学
「魅力ある大学院教育
工学研究科
ヒアリング対象
国立
九州大学
・企業家コース
私立
分野
・基盤工学コース
高知工科大学
表 3-1 大学院ドクターコースカリキュラムの特徴
第3章 国内大学へのヒアリング調査
141
142
社会システム研究科
社会科学学際全般
ヒアリング対象
コース名等
医学(臨床系/非臨床系)
人間総合科学研究科
国立
筑波大学
経済学・数理科学・社会工学等
政治学・行政学・国際関係論・
政策研究科 ( 1研究科 )
国立
政策研究大学院大学
非臨床系の状況の違い
・論博による学位取得の状況
1997 設立 ( 前身は 1973-)
フェッショナルの養成手法
おり、長期化は少ない。
立地
キャンパス立地とその考え方
都心立地
郊外立地(大学病院と一体)
ら至近)
都心立地(霞ヶ関中央省庁等か
でコミュニケーション可能な環境
奨学金や学生寮の斡旋、全て英語
省庁職員等の学位取得需要に応
える
首都圏都心立地を活かし、中央
属機関からの派遣制度の利用
手厚い
くみの検討
現場を離れず学位取得できるし 際機関の奨学金の活用、学生所
臨床系にて、
特色 GP 等を活用し、 文科省・外務省系、及び各種国
可能性はある。
1年を短期コースに移行できる 年 ) を超えない指導を目指して
特徴
留学生への支援
画・実施
・臨床系の論博の場合、最後の ・留学生の場合、奨学金限度 ( 3
と制度が異なること
年数が異なること、欧米の MS 等多様なプログラムを柔軟に企
全体に後期課程院生への指導が
びる場合がある。
1 年の早期修了を目指しても延 ・他分野と学士・修士・博士の ・修士1年+博士3年 ( 計4年 )、
「中央省庁学位取得需要」
「諸外国の社会人留学生」
2つのターゲット
が高い
支援
学生
社会人への支援
時限付センター等の活用
資金
活用
教 育 GP 等 時 限 付 補 助 事 業、
外部
短期−長期に関わる特徴
教員ネットワークの利用
学位レベル維持
省庁等に再就職・復帰の可能性
する
ターゲットの絞り方
多く、学取得後は自国の大学・
く、そのままの職場に継続勤務 は医療系研究機関等が多い。
D学位取得後の進路
輩出してきた経緯がある。
という特殊性から論博を数多く ル人材育成。講義等は全て英語。
持ちつつ学位論文をまとめる、 えつつ、政策プロフェッショナ
床系は現場(病院)との関係を 省庁職員等の学位取得需要に応
在職しながら学位を取る者が多 臨床系は大学病院等、非臨床系 アジア諸外国の社会人経験者が
でまとめる早期修了パターン
る社会人研究者が最後の1年間 比較的類似した状況。一方、臨 生と、都心立地を活かして中央
ほとんど論文の書き終わってい 非臨床系は工学等自然科学系と アジア諸外国を中心とする留学
2002- 博士後期課程開設
学期間短縮
学位取得後
特徴
市立
研究科内規による課程博士の在 ・医学分野における、診療系/ 日 本 及 び 諸 外 国 の 政 策 プ ロ
北九州市立大学
分野
表 3-1 大学院ドクターコースカリキュラムの特徴
博士課程「短期在学コース」の創設に係る課題等に関する調査研究
第3章 国内大学へのヒアリング調査
こ れ ま で、 論 文 博 士 を 取 得 希 望 す る 人 は、 以 前 か ら の 師 弟 関 係 や 信 頼 関 係 の あ る 大 学 教
員 に 指 導 と 審 査 を 頼 る の が ほ と ん ど で あ っ た。 教 員 側 に 指 導 ・ 審 査 の メ リ ッ ト が ほ と ん ど
無 く、 良 く 知 ら な い 教 員 に は 依 頼 し に く か っ た か ら で あ る。 し か し、 母 校 の 指 導 教 員 の 定
年 退 職 ・ 転 出 ・ 死 亡 や 教 員 と の 人 間 関 係 の 悪 化、 卒 業 後 の テ ー マ の 変 更 な ど が あ る と、 博
士 号 取 得 を 事 実 上 断 念 せ ざ る を 得 な か っ た こ と が 多 か っ た も の と 思 わ れ る。 ま た、 職 場 を
や め な け れ ば 時 間 を つ く れ な い が、 生 活 費 を 稼 ぐ 必 要 が あ る よ う な 場 合 に も、 経 済 的 事 情
か ら 博 士 号 取 得 を あ き ら め ざ る を 得 な い よ う な 現 実 も あ っ た。
こ の よ う な 現 状 に 対 し、 適 切 に ① こ れ ま で 関 係 の な か っ た 院 生 を 受 け 入 れ る 仕 組 み と、
② 奨 学 金 な ど の 経 済 的 援 助 を 整 備 す れ ば 、「 短 期 在 学 コ ー ス 」 は 「 大 学 に 関 係 の な か っ た
希 望 者 へ の 受 付 窓 口 」「 飛 躍 へ の 誘 導 機 関 」 と し て 機 能 す る 可 能 性 が あ る 。
た だ し、 近 年 ポ ス ・ ド ク の 就 職 が 社 会 問 題 化 し て い る よ う に、 博 士 号 取 得 後 の 対 応 も 考
え て お く 必 要 が あ る。 研 究 者 の プ ロ フ ァ イ ル か ら 判 断 す る と、 博 士 号 取 得 前 の 職 場 に 戻 る
場 合 も 多 い が、 博 士 号 を 取 得 し た こ と で そ の 後 の 仕 事 の 仕 方 や 志 向 が 変 わ る 場 合 も 多 々 み
う け ら れ る。 大 学 教 員 や 純 粋 研 究 機 関 の 研 究 員 だ け が 博 士 号 取 得 者 の 勤 め 先 だ け で は な く
な っ て い る 以 上、 分 野 ご と に 次 の ス テ ッ プ を 用 意 し た り 紹 介 し た り す る 仕 組 も 必 要 で は な
い か。 こ の 点 は こ れ ま で 教 員 の 個 人 的 な 才 覚 と ネ ッ ト ワ ー ク 頼 み で あ っ た が、 よ り 組 織 的
に 整 備 す る 必 要 が あ る も の と 思 わ れ る。
3-4-2 学 生 層 か ら み た 需 要 の 4 類 型
前 項 で も 述 べ た よ う に、 学 位 取 得 者 の 属 性 ・ 分 野 な ど は 様 々 で あ り、 全 て の 博 士 号 取
得 希 望 者 が 「短 期 在 学 コ ー ス」 へ の 入 学 を 望 む わ け で は な い の は 明 ら か で あ る。 長 い 時
間 を か け て で も 高 い レ ベ ル の 研 究 成 果 を 出 す こ と が 不 可 欠 な 分 野 や、 社 会 人 の う ち で も
後 期 社 会 貢 献 ・ 生 涯 学 習 型 社 会 人 の 場 合 な ど に は 不 向 き で あ ろ う。 こ の よ う な 認 識 か ら、
想 定 さ れ る 「 短 期 在 学 コ ー ス 」 の 需 要 を、 A 新 卒 学 生、 B 社 会 人 ( B - 1 業 界 密 着 型、
B - 2 キ ャ リ ア ア ッ プ 型 )、 C 留 学 生 の 4 類 型 に 分 類 し て 把 握 す る こ と が 有 効 で は な い か
と の 認 識 に 至 っ た。 特 に B 内 部 に 2 つ の 類 型 を 想 定 す る べ き と し て い る 点 に 調 査 し た 成
果 が 反 映 さ れ て い る。
以 下 で は、 各 類 型 ご と に 特 徴 と 「短 期 在 学 コ ー ス」 を 適 用 す る 場 合 の 課 題 を 学 生 の 立 場
( 学 )、大 学 経 営 の 立 場 ( 経 ) か ら 素 描 し た い 。 な お 、各 項 目 は ヒ ア リ ン グ 内 容 そ の も の と 、
ヒ ア リ ン グ 内 容 か ら 類 推 し た 記 述 の 双 方 を 含 ん で い る。 ま た、 各 類 型 名 の 末 尾 に 示 し て あ
る ”P * ” は 、 3-3 節 で 示 し た プ ロ フ ァ イ ル 番 号 を 示 し て い る 。
1) A 新 卒 学 生 型 : 奈 良 先 端 科 学 技 術 大 学 院 大 学
旧 来 の 大 学 院 と 基 本 的 に 変 わ ら な い が、 学 部 ・ 修 士 ・ 博 士 と の 連 携 に よ り 早 期 修 了 を 可
能 に し よ う と す る も の。 現 時 点 で は こ の 形 で の 早 期 修 了 者 が 最 も 多 い と 思 わ れ る。 奈 良 先
端 科 学 技 術 大 学 院 大 学 は こ れ を 最 も 積 極 的 に 推 進 し て い る 大 学 で あ る。
特徴:
( 学 ) 限 ら れ た 年 限 で よ り 高 い レ ベ ル の 研 究 能 力 ・ 肩 書 き を 取 得 可 能 。 早 け れ ば 25 才
で 博 士 の 学 位 の 取 得 が 可 能。
狭 義 の ア カ デ ミ ー 内 部 で の 研 究 者 と し て の 地 位 確 保 と な る。
143
博士課程「短期在学コース」の創設に係る課題等に関する調査研究
狭 義 の ア カ デ ミ ー 外 部 で の 就 職 の 機 会 が 増 え る (特 に 応 用 系 研 究 分 野 の 場 合)
(経) 工 学 系 の 場 合、 顧 客 候 補 で あ る 修 士 課 程 (博 士 前 期 課 程) の 院 生 が 目 の 前 に 大 量
に 存 在 し て お り、 進 学 の 勧 誘 が 容 易 で あ る。
今 ま で と 同 様 の 方 針 で 指 導 が 可 能。
課題:
(学) 既 に 規 定 さ れ て い る 早 期 修 了 条 件 を 満 た す 形 で も 対 応 可 能 で あ る (コ ー ス 化 が 自
由 度 を 奪 う ? )。
早 期 の 修 了 は、 社 会 人 と し て の 成 熟 に は つ な が ら な い。
狭 い 専 門 の み に 特 化 し た 能 力 の 獲 得 に つ な が り、 バ ラ ン ス の 取 れ た 知 識 が 得 ら れ な
い?
就 職 に つ な が り や す い 分 野 と そ う で な い 分 野 が 併 存 す る。
研究計画における指導教員の影響が過大化?
(経) 大 学 (教 員 ・ 院 生) の 不 安 定 化 (精 神 的 な 意 味 で)
大 学 に お け る 知 の 狭 隘 化 / 安 易 化 を 招 く お そ れ が あ る。
分 野 に よ っ て は 大 量 の ポ ス ド ク が 発 生。
教員の指導負担が増大する?
2) B − 1 社 会 人 業 界 密 着 型 : 九 州 大 学 、 京 都 大 学 、 東 北 大 学 、 筑 波 大 学 ( 医 学 臨 床 系 ・
非 臨 床 系 と も )、 P1、 P2、 P8、 P17、 P18
業 界 の 研 究 開 発 等 の 動 向 と 大 学 院 の 研 究 が 密 接 な 関 係 を 持 っ て お り、 大 学 院 も 含 め て 業
界 全 体 の 研 究 者 コ ミ ュ ニ テ ィ が 成 立 し て い る よ う な 場 合 に 可 能 な 社 会 人 向 け の 大 学 院。 現
時 点 で は 数 は 限 ら れ る が、 既 に 大 学 側 の 取 り 組 み が 開 始 さ れ て い る。 通 常 業 務 を こ な し な
が ら 研 究 す る 場 合 と、 一 定 期 間 の 研 究 専 念 が 可 能 な 場 合 が あ る。 理 学 ・ 工 学 の 一 部 分 野 が
該 当 す る の で は な い か。
特徴:
( 学 )企 業・研 究 所 な ど に 属 し た ま ま 学 位 取 得 が 可 能 → 学 位 取 得 後 の 再 就 職 の 心 配 な し 。
所 属 先 か ら の 経 済 的 支 援 (含 学 費) が 期 待 で き る。
企 業 ・ 研 究 所 の 本 来 業 務 と の 関 連 性 が 強 く、 実 験 ・ 調 査 な ど が や り や す い。
(経) 論 文 博 士 の 場 合 よ り も 授 業 料 収 入 ・ 指 導 実 績 の 確 保 な ど の 点 で 有 利 で あ る。
就 職 の 世 話 の 必 要 な し。
社 会 性 教 育 面 で の 負 担 な し。
企 業 ・ 研 究 所 と の 共 同 研 究 と し て 受 け 入 れ れ ば、“ 持 参 金 ” と し て の 研 究 費 を 期
待 で き る。
教 育 ・ 研 究 の 社 会 化 に 関 し て 相 乗 効 果 が あ る。
課題:
(学) 必 ず し も 早 期 修 了 す る メ リ ッ ト な し。
( た だ し 、 早 期 修 了 に 限 り 、 企 業 側 が 学 位 取 得 支 援 を す る 場 合 は あ り う る 。)
入 学 以 前 に 相 当 の 研 究 実 績 が 必 要。
転 職 の 可 能 性 が 広 が る は ず だ が、 業 界 は 狭 い の で そ れ ほ ど や り や す く な い ?
研 究 テ ー マ に 自 由 度 が 低 い。
144
第3章 国内大学へのヒアリング調査
結 果 の 出 や す い 手 堅 い 研 究 ス タ イ ル に な る 傾 向 が あ る。
(経) 大 学 (教 員 ・ 院 生) の 主 体 性 が 欠 け る 傾 向 が あ る。
3) B − 2 社 会 人 キ ャ リ ア ア ッ プ 型 : 北 九 州 市 立 大 学 、 政 策 研 究 大 学 院 大 学 ( 社 会 人 )、
高 知 工 科 大 学 、 P3、 P4、 P7、 P9、 P11、 P12、 P13、
P14、 P15、 P16、 P19
シ ン ク タ ン ク ・ コ ン サ ル タ ン ト 業 界 な ど で、 社 会 人 自 身 の 自 律 性 と モ チ ベ ー シ ョ ン が 高
く、 博 士 学 位 取 得 を 機 に 独 立 ・ 転 職 ・ 昇 進 な ど を 目 指 す 場 合 に 相 応 し い 社 会 人 向 け の 大 学
院 で あ る。 こ れ ま で 論 文 博 士 の 形 で の 学 位 取 得 が 多 か っ た の は こ の 型 で あ ろ う か。 既 に 北
九州市立大学や筑波大学大学院博士後期課程で大学全体としての組織的な取り組みが始
ま っ て お り、 大 学 側 の 対 応 が な い 場 合 で も 個 人 レ ベ ル で 実 践 さ れ 始 め て い る。 通 常 業 務 を
こ な し な が ら 研 究 す る 場 合 と 所 属 先 を 休 職 ・ 辞 職 し て 大 学 院 に 所 属 す る 場 合 が あ る。 後 者
の 場 合、 大 学 院 進 学 が 退 職 の 口 実 に な る 場 合 も あ る。 社 会 科 学 系 や 工 学 系 の 分 野 に 必 要 と
さ れ る の で は な い か。
特徴:
(学) 企 業 ・ 研 究 所 な ど に 属 し た ま ま の 場 合 → 学 位 取 得 「直 後」 の 再 就 職 の 心 配 な し。
早 期 修 了 は 経 済 的 負 担 ・ 労 力 的 負 担 の 軽 減 に つ な が る。
企 業・研 究 所 の 本 来 業 務 と の 関 連 性 は あ ま り な い が、 実 験・調 査 結 果 の 流 用 は 可
能 な 場 合 も あ る。
( 経 ) 論 文 博 士 の 場 合 よ り も 授 業 料 収 入 ・ 指 導 実 績 の 確 保 な ど の 点 で 有 利 で あ る 。
就 職 の 世 話 の 必 要 な し。
社 会 性 教 育 面 で の 負 担 な し。
課題:
(学) 所 属 し た ま ま の 場 合、 キ ャ リ ア ア ッ プ に 結 び つ く か ど う か は 不 明 で あ る。
辞 職 し た 場 合 は、 独 立 ・ 転 職 が 可 能 か ど う か は 不 明 で あ る。
所 属 先 か ら の 経 済 的 支 援 (含 学 費) は あ ま り 期 待 で き な い。
入 学 以 前 に 相 当 の 研 究 業 績 が 必 要 で あ る。
早 期 修 了 の 場 合、 入 学 以 前 に 相 当 の 研 究 業 績 が 必 要 で あ る。
所 属 し た ま ま の 場 合 、 大 学 の サ ー ビ ス ( 講 義・ゼ ミ・個 別 指 導・図 書 館・実 験 室 )
を 受 け に く い。
授 業 料 は 受 け た サ ー ビ ス に 対 し て 高 い も の に な り が ち。
(経) 潜 在 的 な 候 補 者 の 数 に 限 り が あ る ?
ス ク ー リ ン グ ( コ ー ス ワ ー ク ) は 難 し い 。( → サ テ ラ イ ト ・ オ フ ィ ス の 利 用 が あ
れ ば 可 能 ?)
都 心 キ ャ ン パ ス を 持 た な い 大 学 の 場 合、 企 業 等 に 所 属 し た ま ま の 学 生 を 集 め る の
は 困 難。
4) C 留 学 生 型 : 政 策 研 究 大 学 院 大 学 ( 留 学 生 )、 立 命 館 ア ジ ア 太 平 洋 大 学
大 学 側 の 組 織 的 な 取 り 組 み は ま だ な い と 思 わ れ る が 、 上 記 A 、 B—2 の 形 式 に は 既 に 留
学 生 も 含 ま れ て い る 可 能 性 が あ る。 諸 外 国 の 大 学 に 早 期 修 了 制 度 が な い た め、 あ る 程 度 の
145
博士課程「短期在学コース」の創設に係る課題等に関する調査研究
需 要 は あ り そ う だ が 、日 本 語 習 得 の 時 間 が 取 れ な い た め 、英 語 あ る い は 留 学 生 の 母 国 語 ( 中
国 語 な ど) で の 教 育 が 前 提 と な る。
特徴:
(学) 企 業 ・ 研 究 所 な ど に 属 し た ま ま の 場 合 → 学 位 取 得 後 の 再 就 職 の 心 配 な し。
所 属 先 か ら の 経 済 的 支 援 (含 学 費) が 期 待 で き る。
各 種 留 学 生 用 奨 学 金 も 期 待 で き る。
早 期 修 了 は 経 済 的 負 担 ・ 労 力 的 負 担 の 軽 減 に つ な が る。
(経) 就 職 の 世 話 の 必 要 な し。
大 学 の 国 際 化 が 図 れ る。
課題:
(学) 日 本 で の 人 的 ネ ッ ト ワ ー ク は 作 り に く い。
入 学 以 前 に 相 当 の 研 究 業 績 の 蓄 積 が 必 要 で あ る。
(経) 教 員 側 の 負 担 が 増 大 す る。
教 員 側 に 相 当 な 語 学 能 力 が 必 要 と さ れ る。
3-4-3 考 察
以 上 4 つ の 類 型 に 分 け て 記 述 し て 来 た。 あ る い は B 類 型 に つ い て は さ ら に き め 細 か く 需
要 を 見 定 め て い く 必 要 が あ る か も し れ な い。
各 組 織 は、 個 々 の 大 学 の 特 性、 お よ び 各 分 野 の 特 性 に 応 じ、 上 記 の タ イ プ の う ち 適 切 な
も の を 選 択 す る 必 要 が あ る 。「 短 期 在 学 コ ー ス 」 の メ ニ ュ ー も 、 そ れ ぞ れ の タ イ プ の 存 在
に 配 慮 し た も の と な る べ き だ ろ う。
ま た 、 あ え て 現 時 点 で 制 度 的 工 夫 が 最 も 必 要 な 類 型 を 指 摘 す る と す れ ば 、 B-2 の 場 合 で
は な い か と 思 わ れ る 。 業 界 に よ る 積 極 的 な 支 援 が 期 待 で き な い B-2 タ イ プ の 場 合 、 院 生 の
授 業 料 負 担、 時 間 的 負 担、 情 報 獲 得 に 関 す る 労 力 な ど が 相 当 な も の に な っ て い る と 推 定 さ
れ る か ら で あ る。 授 業 料 の 軽 減、 特 別 な 奨 学 金、 サ テ ラ イ ト ・ オ フ ィ ス の 設 置、 夜 間 や 土
曜 ・ 日 曜 日 の 講 義 開 講、 既 取 得 単 位 認 定 の 融 通 性 確 保、 チ ュ ー タ ー 制 度 の 設 置 な ど、 様 々
な 支 援 メ ニ ュ ー の 整 備 が 必 要 で あ り、 そ の こ と に よ っ て 多 く の 入 学 生 を 受 け 入 れ る こ と が
可 能 に な る の で は な い か。
ま た 、「 短 期 在 学 コ ー ス 」 と は 一 見 無 関 係 の よ う だ が 、 長 期 間 に わ た っ て 緩 い 関 係 を 大
学 と 院 生 が 結 ぶ よ う な 仕 組 み も 必 要 と さ れ て い る。 こ れ ま で の 論 文 博 士 号 も、 こ の よ う な
緩 い 関 係 の 継 続 が 大 学 教 員 と の 間 に あ っ た こ と を 忘 れ る べ き で な い と 思 わ れ る。 緩 く 長 く
教 員 と の 指 導 関 係 を 持 っ た 上 で、 短 期 に 密 な 指 導 を 受 け な が ら 論 文 を 仕 上 げ る よ う な 「長
期 履 修 学 生 制 度 ( 平 成 14 年 2 月 21 日 中 央 教 育 審 議 会 答 申 「 大 学 等 に お け る 社 会 人 受 け
入 れ の 推 進 方 策 に つ い て 」)」 を 、 よ り 活 用 す べ き で は な い だ ろ う か 。
146
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