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木質系廃棄物の燃料化技術
No.09014 木質系廃棄物の燃料化技術 キーワード:木材,廃棄物,ガス化,液体燃料化 はじめに これらプロセスの中で発生するタールは、 昨今、地球温暖化防止に向けて、再生可能 ガス冷却時に凝縮することから配管などの閉 なエネルギー源としてのバイオマスの利用が 塞原因となり、熱分解の運転継続に支障をき 徐々に進められています。2002 年に建設リサ たす恐れがあります。また、液体燃料化にお イクル法が完全施工され、木質系建築廃材の ける触媒毒とも考えられていることから、タ 分別解体および建築廃材の再資源化が義務付 ールの発生抑制及び完全除去が大きな課題と けられました。その結果、収集・輸送ルート なっています。 が確立され、木質系建築廃材が大量に入手で きるバイオマスとなりつつあります。一方、 気体 バイオマスを資源としたエネルギー変換技術 として、輸送用燃料および化学原料を製造で きるガス化技術が注目されています。 て当所で検討した結果を紹介します。 バイオマスのガス化の原理 バイオマスのガス化の概要を図 1 に示しま す。まず、バイオマスは、200~600℃、無酸 素状態において熱分解され、原料の 75~90% がガス(CO,H2 ,CH4 ,CO2 ,H2O)及びター ル等のガス状物質に、残りの 10~25%がチャ ーと呼ばれる固定炭素に転換されます。 次に、供給された酸素または空気によって、 熱分解生成物質であるガス・タールおよびチ ャー等が部分燃焼されます。燃焼時に発生す る熱は、熱分解反応の熱源となります。 液体 固体 バイオマス 図1 チャー バイオマスのガス化の概要 木質系廃棄物を用いたガス化試験 夾雑物を含む木質系廃棄物のガス化試験に は、炉構造が簡単、かつ一般的にタールの発 生が少ないダウンドラフト型固定床炉を採用 しました。試験炉は、図 2 及び図 3 に示すと おり、炉中部よりガス化剤として空気を、炉 上部より押込み空気を供給することによって、 炉内に上部から乾燥領域及び熱分解領域、燃 焼領域、還元領域を形成するように製作しま した。試験には建築廃材を破砕処理した木材 チップをそのまま使用しました。 原料 原料の組成及び発熱量 押込み用 空気 乾燥 ス化が生じ、主に Boudouard 反応(C+CO2 熱分解 燃焼用空気 より、CO と H2 が生成します。 以上述べた 3 つのプロセスを経て、バイオ C+CO2→2CO C+H2O→H2+CO タール 続いて、700~1200℃においてチャーのガ →2CO)と 水 性 ガ ス 反 応 (C+H2O→H2+CO)に 低分子炭化水素 芳香族 CO,H2,CO2 CH4,H2O, 本稿では、木質系廃棄物を対象とし,それ らの液体燃料化を目指したガス化技術につい 1200℃ 200~600℃ 2.8 m C wt% 46 H wt% 6.5 O wt% 45.3 N wt% 0.1 S wt% 1.1 wt% 1.2 灰分 発熱量 MJ/kg 20 燃焼 還元 生成ガス マスのガス化は進行します。 図2 試験装置の概略(内容量 325 lit) ガス化炉内の各 における最適な値が 2 であることから、メタ 測定点における平 ノール合成用のガスとしては H2 の割合が CO 均温度分布を図 4 に比較し少ないことが分かります。メタノー に示します。炉内温 ル合成における最適なガス組成を確保するた 度分布は、いずれの めには、水蒸気をガス化炉内に投入すること 酸素空塔速度でも 60 により、H 2 の増大を図る必要があります。 50 ガス濃度(%) 炉上部から中部空 気吹込み部(酸化領 域)までなだらかに 温度上昇しており、 図3 試験装置の外観 N2 40 30 H2 20 CO2 CO CH4 O2 10 燃焼領域が上部に 0 広がらず、乾燥・熱分解領域がガス化炉内に 0 5 10 経過時間(時) 一定範囲で存在していることが分かります。 図5 また、ガス化剤吹込み部の温度がもっとも高 くなっていることから部分燃焼部が安定して 存在していることも確認できます。しかも、 H2/CO その温度がタールの分解温度域である 800℃ 以上に達する場合には、タールの分解が起こ っていると想定されます。 3 2 3 2 m /hm 酸素空塔速度:17.7 m3/hm2 3 2 m /hm 酸素空塔速度:35.4 m3/hm2 2.5 炉高さ(m) 3 酸素空塔速度:7.9 m3/hm2 m /hm 1.5 20 生成ガス組成 (酸素空塔速度 17.7 m3/hm2) 1.6 1.4 1.2 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0 0 乾燥領域 2 15 10 20 30 40 酸素空塔速度(m3/hm2) 図6 熱分解領域 H2/CO と酸素空塔速度の関係 酸化領域 1 まとめ 還元領域 0.5 木質系廃棄物を用いてガス化試験を行った 0 0 200 400 600 800 温度(℃) 1000 結果、H2 及び CO を高濃度に含むガスを得る 1200 図 4 炉内温度分布 次に、酸素空塔速度 17.7 m3/h・m2 における ことができました。また、その H2/CO 値が 水蒸気を除いた生成ガス組成を図 5 に示しま メ タ ノ ー ル ( CH3OH)、 ジ メ チ ル エ ー テ ル す。ここで,酸素空塔速度は炉内に投入され (CH3OCH3)の液体燃料合成が可能であるこ たガス化剤の酸素量を炉内断面積で割った値 とが分かりました。 1.0~1.5 であったことから、ガス質としては (=投入酸素量 [m3/h]/炉内断面積 [m2])で 本技術についてご興味のある方は下記にお す。ガス組成は多少変動しているものの、H2 問合せください。 は平均 18.5 %、CO についても平均 15.3 % 参考文献 の濃度を有するガスが得られています。 1)バイオマスからの気体燃料製造とそのエネ 酸素空塔速度を変化させた時の H2/CO を図 ルギー利用 エヌ・ティー・エス(2007) 6 に示します。H2 /CO 値は 1.0~1.5 であり、 2)バイオマス液体燃料 メタノール合成反応(2H2 + CO→CH3OH) (2007) 作成者 発行日 環境・エネルギー・バイオ系 Phone: 2010 年 3 月 2 日 エヌ・ティー・エス 大山 将央 、井本 泰造 、岩崎 和弥 0725-51-2565、 -2629 、 -2630