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平成21年度ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー研究活動報告書
平成21年度ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー研究活動報告書 研究開発課題代表者 (所属・職名・氏名) 飯田弘之(北陸先端科学技術大学院大学・ 情報科学研究科・教授) 研究開発課題名 ゲームアンドアートメディアクリエーション (研究開発期間) (平成19年度~21年度) 1. 研究開発課題の概要 本プロジェクトでは,ゲームおよびアートメディアを設計し,商品開発を目指す.同時に,創作に伴う技術特許を取 得する.設計の根本原理は,代表者が考案した相手モデル探索(1993),教授戦略(1995),ゲーム洗練度の 理論(2003)などに基づく.具体的には,囲碁や将棋などの古典的なゲームのソフト開発に主眼を置く. 2. 研究成果(途中年度の場合は進捗状況) これまで重点的に開発を進めてきた将棋ソフトTACOSは「裂将の轟」(任天堂)として市場販売 することになった.同様に,AMAZONSソフトや囲碁ソフトなどの開発も進めている.また,本プ ロジェクトの自然な拡張として,ソフトウエアの開発環境にゲーム性を導入するプロジェクトを企 業と共同で進めてきた.さらに,ゲームソフトにおける教育的環境を高める研究開発を企業と共同 で進めることとなった. 将棋ソフト「TACOS」は,2009年5月にスペインで開催されたコンピュータオリンピック(将棋 部門)において優勝し,三年連続の金メダル獲得となった.ボナンザ法と呼ばれる最適化手法を用 いて局面評価部分を洗練した.また,n-gram 統計解析手法を応用して,将棋における手筋と呼ば れる手順の認識と評価を強化することで探索部分をこれまで以上に充実させることに成功し,棋力 の向上を実現した.寄せ合いの場面でのさらなる幅広い先読み,そして,序盤での緻密な戦略選択 を実現することでプロあるいは名人のレベルに到達できるものと期待している. 囲碁ソフト「能美譚(ノミタン) 」は,2009年6月に開催されたCGF(コンピュータ囲碁フォー ラム)オープン選手権(9路盤)で優勝した.能美譚は,モンテカルロ木探索をベースに開発され たものであるが,コンピュータ将棋で成功した局面評価の最適化手法であるボナンザ法を用いて, 指し手のパターン評価に用いたことである.こうすることで,有望そうな指し手を迅速に見出し, プレイアウトと呼ばれるシミュレーションを多く実行することが可能となり,能美譚のパフォーマ ンス向上に大きく寄与した. AMAZONSソフトCAMPYAは,先のコンピュータオリンピックで銅メダルを獲得した.上位者と も何度か対戦した結果,五分五分であったので,ほぼ最強レベルと言える.下位のソフトに負けた のが優勝を逃した原因と考えられる.CAMPYAは,モンテカルロ木探索と局面評価を組み合わせた 独自のアイデアを用いてその性能を高めている.モンテカルロ木探索の新たな応用として,序盤の 定跡を自動的に構築する手法を開発した.また,終盤での寄せ合いには,TACOSで培ったアイデ アを駆使して強力なソルバを実現した. このほかにも,いくつかのゲームのソフトを設計および実装した.市販を視野に入れて開発して いる.そのために,展示会などに積極的に出展し,企業側との接点を得た.本プロジェクトに参画 した学生は,ゲームソフトの開発工程を経験し,かつ,作成したソフトを市場に製品として出荷す るプロセスを学び,将来の起業について動機付けられた. 以上