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1 分間で充電できる新型の高出力電池

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1 分間で充電できる新型の高出力電池
新機能素子・材料/生産技術
ユビキタス社会を支える新機能素子・材料の開発とその生産技術−負極材料に新素材のナノ粒子を用いた 1 分間で充電できる高出力
電池や,独自組成のハーフホイスラー型熱電材料による高出力熱電モジュールなどのように,新しい材料・基盤技術の開発は更に特長
ある製品づくりを支えています。
■ 1 分間で充電できる新型の高出力電池
1 分間で電池容量の 80 %まで充電できるキャパシタ並み
の急速充電性能と,リチウムイオン電池の特長である体積エネ
ルギー密度の高さを併せ持つ,新型の充電式電池を開発した。
従来の二次電池は,急速充電を行うと電極や電解液が分解・
劣化するためサイクル寿命性能が大幅に低下してしまい,その
ため数分間で急速フル充電することが困難であった。
そこで,この新型電池では,負極材料に新素材のナノ粒子を
採用した。この新素材はリチウムイオンをスムーズに吸蔵す
ることができ,かつ急速に充電しても有機電解液が分解するこ
(電池容量:3 Ah)
▲ 高出力用途向け 新型電池(試作品)
New battery for high-power use (prototype) (cell capacity : 3 Ah)
とがなく,従来の材料にはない際立った性質を持っている。ナノ
粒子を均一に固定化する新たな技術を開発したことで,初めて
電極化が可能になった。
4,000
この新技術を用いた新型電池は,急速充電性能に加え,ハイ
パワー密度(W/kg)
新型電池
パワーで長寿命,更に− 40 ℃といった厳しい温度環境でも
3,000
安定した性能を発揮できる。
電気二重層
キャパシタ
ハイブリッド自動車用
リチウムイオン電池
2,000
0
モバイル機器用
リチウムイオン電池
ハイブリッド自動車用
ニッケル水素電池
1,000
高出力用の試作品で実施した急速充電サイクル評価では,
1,000 サイクル後の電池容量低下がわずか 1 %であった。
− 40 ℃の低温環境でも室温(25 ℃)の 80 %の容量(1 時間
放電率)を放電でき,3,400 / 3,000 W/kg の高い入力/出力
0
50
100
150
エネルギー密度(Wh/kg)
密度(充電深度 50 %)を実現した。
エネルギーを有効活用できる環境に優しい新技術であり,モ
▲ 各種蓄電デバイスの性能比較
バイル端末はもちろん,ハイブリッド自動車など高出力が要求
Comparison with other batteries
される場面にも適用できる。また,ユビキタス社会の可能性を
広げるエネルギー源として,幅広い用途での利用が期待できる。
ハイブリッド自動車,
電気自動車
関係論文:東芝レビュー.61,2,2006,p.6 − 10.
電力設備
(研究開発センター/電力・社会システム社)
電動アシスト自転車
エレベーター
新型電池
コピー,プリンタ
▲ 新型電池の応用分野
Application for new battery
28
東芝レビュー Vol.61 No.3(2006)
■ 高出力新型熱電モジュール
4 cm 角サイズで 26 W の発電が可能な熱電モジュールを開発した。
工場から家庭まで広く存在する廃熱から電気を取り出す熱電変換技
術は,省エネを推進する技術として期待されているが,取り出せる
電気出力が低く,なかなか実用化が進まなかった。当社では,400 ℃
付近の温度で最高性能(従来比 1.5 倍)を示す独自組成のハーフホイス
ラー型熱電材料を開発した。更に,この材料に適したモジュール接合
4 cm
技術を東芝マテリアル(株)と共同で開発することによって,温度差
500 ℃(高温側 550 ℃,低温側 50 ℃)において過去最高の出力密度
(1.6 W/cm2)を示し,かつ信頼性に優れた熱電モジュールを実現した。
▲ 高出力新型熱電モジュール
(研究開発センター)
High-power thermoelectric module
1.6
p型熱電材料
正孔
材料性能指数(ZT)
1.4
絶縁基板
温める
n型熱電材料
電子
電極
冷やす
絶縁基板
ZT=1.5
東芝ハーフホイスラー材料
(Ti,Zr,Hf)Ni(Sn,Sb)
1.2
1.0
Bi-Te
Ti
:チタン
Zr :ジルコニウム
Hf :ハフニウム
Ni :ニッケル
Sn :スズ
Sb :アンチモン
Bi-Te :ビスマス−テルル
Si-Ge:ケイ素−ゲルマニウム
スクッテルダイト
0.8
0.6
Si-Ge
0.4
0.2
0.0
−200
0
200
400
600
800
温度(℃)
試作モジュールの発電特性
T(℃)
h
⊿T(℃)
V(V)
o
Pmax(W)
550
500
13
26
Th :高温端温度
Vo :開放電圧
▲ 熱電発電の原理
⊿T :上下端の温度差
Pmax :最大電気出力
Mechanism of thermoelectric power generation
▲ 開発材料と熱電モジュールの特性
Thermoelectric properties of material and module
捨てている熱を電気にリサイクル
省エネルギー
Sn
Ni
Zr
ハーフホイスラー型
結晶構造
自動車
工場
70%
廃熱エネルギー
60%
廃熱エネルギー
オリジナル材料
Ti
Hf
Zr
従来材料
高い電気出力
東芝の開発材料
TiとHfの同時置換で熱伝導率低下に成功!
熱電モジュール
▲ 熱電発電技術のコンセプト
Concept of thermoelectric power generation
東芝レビュー Vol.61 No.3(2006)
29
新機能素子・材料/生産技術
■ 高駆動電流のショットキー ソース/ドレイン
トランジスタ
ゲート
32 nm
▼
ソース/ドレイン
(新S/D電極)
新電極構造の試作
トランジスタの断面
TEM 写真
Cross-sectional TEM
image of
demonstrated
transistor with novel
S/D electrodes
これまでの MOS(Metal Oxide Semiconductor)
トランジ
スタは,素子のサイズを小さく(微細化)することで性能向上を
図ってきたが,近い将来には,ソース/ドレイン(S/D)電極の
寄生抵抗の影響が顕在化し,もはや微細化だけでは性能向上を
進めることが困難となってくる。
今回,金属/半導体接合界面に不純物を偏析させることで,
1,600
電子・正孔それぞれに対するエネルギー障壁を低減できる,
新ショットキー ソース/ドレイン電極技術を,現行の電極表面
駆動電流(μA/μm)
新S/D電極
1,200
金属シリサイド化技術を使って,実現した。
25 %
この技術を適用した 65 nm 世代のトランジスタ(ゲート長
50 nm 以下)を試作した結果,同じ待機電流で従来型電極構造
従来S/D電極
800
のトランジスタと比較して,トランジスタのスピードを表す駆動
電流が,25 %改善されていることを確認した。
この改善は,一世代先の性能に相当するものである。今後,
400 −9
10
10−8
10−7
10−6
10−5
製品化に向けて開発を加速する。
待機電流(A/μm)
(研究開発センター)
▲ 新電極と従来型電極の性能比較
Comparison of device performance with novel and conventional S/D
electrodes
■ LSI プロセスにマッチした
フルシリサイド ゲート(FUSI)技術
−仕事関数制御メカニズムを解明
(FUSI電極)
ゲート
ソース
ドレイン
3.0
次世代以降の電界効果型トランジスタの更なる高速動作化
ボロン
添加効果
2.0
▼
電気容量(pF)
電界効果型
トランジスタ
リン
添加効果
1.0
0
−1.5
−1.0
−0.5
0
ゲート電圧(V)
偏析不純物に
よる仕事関数
変調効果
Segregated
impurity
induced work
function
modulation
のためには,ゲート電極をシリコンから金属に置き換える必要
がある。
フルシリサイド(注 1) ゲート(FUSI)電極は,FUSI 電極/絶
縁膜界面への不純物(リン,ボロンなど)偏析によりその仕事
関数を変調できることから,トランジスタの動作電圧を適正に
制御できる有望な技術である。しかしながら,これまで,その
偏析したボロンの結合状態
偏析したリンの結合状態
リン元素
ボロン元素
FUSI電極
絶縁膜
絶縁膜
強度
金属状態
強度
FUSI電極
仕事関数変調の物理的なメカニズムが明らかにされていな
かった。今回,SPring-8(注 2)放射光を使った高度分析技術を
積極的に利用することで,偏析不純物の結合状態を評価するこ
とに成功し,これにより,界面における不純物位置が仕事関数
酸化状態
変調方向を決定することを明らかにした。
この原理に基づく材料及び構造設計により,FUSI 電極の
次世代ゲート電極としての開発を加速していく。
2150
2145
2140
束縛エネルギー(eV)
195
190
185
束縛エネルギー(eV)
▲ X 線光電子分光法による偏析不純物状態の解明
Identification of chemical states of segregated impurities using
X-ray photoelectron spectroscopy
30
(注 1)シリサイド :シリコンと金属の化合物
(注 2)SPring-8 :世界最高(2006 年 2 月現在。)性能の大型放射光施設(兵庫県)
(研究開発センター)
東芝レビュー Vol.61 No.3(2006)
コイル
■ ランドリー用 S-DD モータ
磁石
近年,需要が急速に伸びている洗濯乾燥機(ランドリー)には,低消費
電力(省エネ)及び低騒音化が求められている。
新型ランドリーに適用したS-DDモータ(新型ダイレクトドライブ
モータ)は,従来使用していたフェライト磁石よりも約 3 倍の磁力を
もつ高磁力希土類マグネットの採用と,磁気回路内の磁束密度を向上さ
せる構造設計によって薄型化を実現したもので,薄型化によって,コイル
抵抗が減少し,モータ消費電力量を従来比で 18 %低減することができた。
ステータ
ロータ
更に,磁束密度分布に影響を与えるロータの形状を適正化することで
低騒音化を図り,業界最小(注)の脱水時 42 dBを実現した。
▲ S-DD モータ
S-DD motor
(注)2005 年 2 月現在。
ロータフレーム
磁石
ロータコア
関係論文:東芝レビュー.60,5,2005,p.60 − 61.
(生産技術センター)
▼
S-DD モータ回転子
Rotor of S-DD motor
■ 70 nm 世代向け 半導体フォトマスク検査装置
70 nm 世代の半導体デバイス用フォトマスクの欠陥を画像検査する
装置を開発した。この装置は,下記の改良により,70 nm 以下の欠陥
が検出可能となった。
●
高感度な深紫外光裏面照射型 TDI(Time Delay & Integration)センサ
による検査精度向上(感度従来比 5 倍)
●
検査画像と比較する設計データの精度向上(誤差 1/3 化)
●
プログラマブル画像処理回路によるアルゴリズム変更
リードタイムの低減(1/5 化)
この検査装置は,2005 年 7 月に稼働を開始し,NAND 型フラッ
▲ マスク検査装置
シュメモリなどの高品位フォトマスクの生産に貢献している。
Mask inspection system
(生産技術センター)
量子効率(EQ)
(%)
100
80
60
40
20
0
画像処理速度 400 M 画素/s
▲ プログラマブル画像処理回路
Programmable image processing circuit
東芝レビュー Vol.61 No.3(2006)
裏面照射型
TDIセンサ
B社
(裏面照射型)
駆動電極
エリアセンサ
感度5倍
従来TDIセンサ
(表面照射型)
A社
(裏面照射型)
1
10
100
1,000
深紫外光
裏面
裏面照射型TDIセンサの断面構造
(裏面からの照射で電極による光吸収を排除)
読出し速度(M画像/s)
▲ 深紫外光 TDI センサ
Deep-UV TDI (Time Delay & Integration) sensor
31
Fly UP