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「図書館は情報の宝庫」、図書館のイメージを変えた地域活性化
地方経済 トピック 「図書館は情報の宝庫」、図書館のイメージを変えた地域活性化の取組み ~県民に役立ち、地域貢献を使命とする「鳥取県立図書館」は、地域の人と人がつながる場~ 中国財務局 鳥取財務事務所 平成14年、鳥取県立図書館は、図書館を「知の地域づくり」の拠点と位置づける片山善博知事(平成11~19年、現:慶大教授)より命を受け、運営改善等の改革に 着手。県民の役に立つサービスを提供しつつ、地域の様々な問題解決をサポートする図書館のコンセプトを明確に打出し、人脈作りや情報収集に奔走。一般書店で 購入できない専門書の配置など、貸出冊数など成果指標に固執しない他との差別化に意識的に取組む。 地域経済活性化が大きな課題の中、図書館の新たな魅力発信につながる「ビジネス支援サービス」は、当館の最大の特徴であり、販路開拓など月50件以上の相談 にのる。徹底した情報収集等により、飛躍的に起業が早まった地元ベンチャー企業社長などから、図書館の存在意義を高く評価する声。 鳥取財務事務所では、イベントの共同開催やパネル展へのジョイントなどにより、当館の周知をサポートしていくほか、中小企業支援等に向けた新たな方策に関 し意見交換を行っていくなど、ビジネス支援図書館と協働して地域貢献に取組んでいく。 1.鳥取県立図書館(鳥取市)の独創的な取組み 転 機 【外観】 2.取組みの成果等 ○ 平成24年、慶応大学が全国の公立図書館を対象 に行った調査(1,279館から回答)で、「活動に ○ 鳥取県立図書館は、平成2年の開館以降、約6,400冊の図 【闘病記文庫】 【内観】 注目する図書館」として、国立国会図書館を除 書が行方不明となるなど、運営改善が迫られる中、県の財 きトップを獲得。回答は館長や司書等で、いわ 政畑が長い“齋藤明彦氏”(現:鳥取県東部振興監)が平成14年に館長就任、初めての図 ゆる“本の玄人”から最高評価を得る。 書館勤務で改革に着手。同館長は、在任中に司書資格も取得。 ○ 年間図書購入費1億円を維持。地元書店が提案した新刊本を複数司書が吟 ○「無料貸本屋」のイメージを払拭し、従来の図書館にはない発想を取入れ。平成16年4月、 味し購入する「見計らい」を実施。地元との共存共栄を図る。 「ビジネス支援サービス」を開始。平成18年には、「闘病記文庫」を設置。「不安な治療 ○ エコで高性能な家庭用生ゴミ処理機を開発しながら、販路拡大に悩む市内 期」の心安らぐ情報の充実を図る。さらに、26年11月からは、鳥取県よろず支援拠点 【齋藤氏】 の事業者親子は、コンサルを雇う経費もなく、思い悩み当館へ相談。一週 (経産省事業)と合同の相談会を開催。常勤職20名強の少人数体制で他との差別化に 間で販路先のリストを提示し、同事業者に最適な答え“最適解”を導く。か 取り組み、継続的に図書館のイメージチェンジを図っている。 かった経費は、コピー代の300円程度にとどまる。 ○ 入口横のラックに窓口では聞きづらい離婚問題等図書の場所を示すパンフを備え ○ 台風からシャッターを守る補強器具の製造・販売を手掛ける地元ベンチャ 置くなどの利便を図る。「利用者のための魅力発信」を掲げる高橋紀子前館長や、 【小林課長】 【高橋前館長】 ー企業は、起業に難航し当館へ相談。徹底した情報収集や製品開発関係者 ビジネス支援のための情報提供に注力する小林隆志支援協力課長など、館職員の の紹介等により、起業は飛躍的に早まり、製品は2万本(小型製品単価: 取組みの根底には、“図書館は情報の宝庫”との考えや、“図書館は営業が必要”との方針が根付く。 2~3万円台)を売上。「地方の中小企業には、情報収集等の部署まで余裕 ミッション実現のための3つの柱 はない。図書館の存在意義は大きい。」(同社社長弁) 『県民に役立ち、地域に貢献する図書館』を実現していく ための3つの柱 を整理。目指す方向性を具体的に明示。 (1)仕事とくらしに役立つ図書館【第1の柱】 ○ 「ビジネス支援サービス」による起業、販路開拓など、「問題解決型図 書館」は全国から注目。産業支援機構など、広範囲なネットワークによる サポート体制を整備。強みは機関の紹介ではなく、顔の見える信頼関係が 築いた、ネットワーク内の熱意を持った“人物”の紹介。 ○ 館内では、マーケティングなどの専門書の配置のほか、日経テレコン等 有料データベースの無料利用も可能。地方の中小企業でも、都市部に負け ない情報と戦略、“情報環境の整備”が必要。 (2)人の成長・学びを支える図書館【第2の柱】 ○ 全国で発刊された児童書は全て購入、各地域図書館の購入判断のための閲覧に供するなど、バック ヤードに真価。また、市町村図書館、県内高等学校・特別支援学校等と 連携し、リクエスト図書を当日11時までに申込めば、翌日に届ける 「必要な情報の特急便」体制を整備。 (3)鳥取県の文化を育む図書館【第3の柱】 ○ 当館2階に「郷土資料館」を開設。情報・文学・人物・まんがの4コーナー 構成により、郷土資料の普及、郷土理解の深化等を図る。 ≪ビジネス支援事例マンガ≫ 3.今後の課題と鳥取財務事務所の対応 ≪当館が抱える課題≫ ○ 地域活性化に向けた取組みの継続が必要な中、当館の取組みを十分に知ら ない県民も多い。図書館の更なる活用推進に向けた周知努力が必要。 ≪鳥取財務事務所の対応≫ ○ 26年12月、当所、鳥取県よろず支援拠点等の主催で、中小企業経営支援 の担い手のためのセミナーを開催。当館は後援で共同、会場を提供。 ○ 引続き、企業支援イベントの共同開催(27年6月頃)や当所企画のパネ ル展、多重債務相談広報へのジョイントなども検討しながら、当館の周知 をサポートしていく。 今後は、経済・商工団体等とは一線を画す当館の特徴に着眼しながら、 中小企業支援等に向けた新たな方策に関し意見交換を行っていくなど、 ビジネス支援図書館と協働して地域貢献に取組んでいく。 61