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多摩ニュータウン再生に係る調査・検討報告書 多摩市

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多摩ニュータウン再生に係る調査・検討報告書 多摩市
多摩ニュータウン再生に係る調査・検討報告書
〈概要版〉
平成24(2012)年1月
多摩市
はじめに
多摩ニュータウンは昭和 41(1966)年から新住宅市街地開発法による事業として開
発がスタートしました。最初の入居が昭和 46(1971)年に諏訪・永山地区で行われて
以来、既に 40 年が経過しました。
時間の経過に伴う建物等の老朽化とともに、社会状況や人々のライフスタイル等も
この 40 年の間に大きく変化しています。
長い事業期間を要して段階的にまちづくりが進められてきた多摩ニュータウンにお
いては、全てのエリアが同様の状況にあるわけではありませんが、初期入居エリアで
ある諏訪・永山地区、愛宕地区においては、こうした時間の経過、時代の変化がもっ
とも大きく影響を及ぼしており、再生に向けた取り組みの必要性が指摘されていると
ころです。
以上のようなことから、本調査においては、今後の人口減少社会の到来を前提に、
特に、多摩ニュータウンの中でも課題が顕在化している第一次入居エリア(諏訪・永
山地区、愛宕地区)に着目しながら、再生に向けた取り組みの方向性を示そうとする
ものです。
40 年にわたって整備された多摩ニュータウンの再生・再編・活性化には、やはり長
い年月をかけた取り組みが必要であり、また、そこでは市民や民間企業と連携をとり、
様々な主体によるハード、ソフトの両面からの取り組みが必要と考えます。
本調査の成果を活用することにより、様々な主体が連携する多様な取り組みが実現
され、多摩ニュータウン再生の実現につながればと考えております。
平成24年1月 多摩市 - -
1.多摩ニュータウン再生の検討の考え方
多摩ニュータウンが完成までに要した事業期間を他のニュータウンと比較すると、
千里ニュータウンが約 9 年、泉北ニュータウンが約 18 年であるのに対し、多摩ニュー
タウンは約 40 年間という期間を要している。
一般に多摩ニュータウンと呼ぶ場合、新住宅市街地開発法による新住区域と土地区
画整理事業による区整区域をあわせたものが多いが、本調査では、基本的に新住区域
を指すことにする。
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大都市圏就業者のための住宅不足解消という初期の目的に沿って短期間に整備が進
められた千里ニュータウンや泉北ニュータウンに対して、変化する時代のニーズに対
応しながら長期に渡って段階的に整備を進めた多摩ニュータウンにおいては、その整
備時期によって住区の状況や課題が異なる。
こうした認識から、本調査では多摩ニュータウン全体を俯瞰、分析しつつ、具体の
検討については、もっとも整備時期が古く、また、画一的な公的集合住宅(賃貸・分譲)
が大量に立地する初期入居エリア(5・6住区 / 諏訪・永山地区、17 住区 / 愛宕地区)
に着目して検討することとした。
なお、当検討では、多摩ニュータウンに係る課題の一つとして、初期入居エリアに
おいて、一時期に大量供給されたために画一的である地域住宅ストックと、地域に呼
び込みたい子育て世帯層のニーズの間に、住戸規模に関する乖離があることを上げて
いる。
この指摘は、地域全体を俯瞰した際の住宅ストック全体の特性から導き出したもの
であるが、地域には公営住宅、UR賃貸住宅、分譲住宅等、多様な住宅が立地しており、
まちづくり上、これら住宅が担う役割はそれぞれに異なるものである。
よって後述する多摩ニュータウン再生の取り組み等については、一様に全ての住宅
における将来像として議論されるものではない。
特に、上記のような市場ニーズとの乖離の問題については、政策的に供給されてい
る公営住宅は該当しないと考える。
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2.再生に向けての背景 ~ 本格的な人口減少社会の到来
多摩市全体の人口は平成 3(1991) 年に 14 万人を突破し、その後ほぼ横ばいで推移し
ている。また、このうち多摩ニュータウン ( 多摩市域の新住区域 ) においては、平成
3(1991) 年の約 8.8 万人をピークに以降減少に転じ、平成 16(2004) 年頃から約 7.1 万
人前後でほぼ横ばいとなっている。
また、本調査において平成 62(2050)年までの多摩ニュータウンにおける将来人口
を推計したところ、今後は本格的な人口減少が始まると予測され、一方で高齢化率は
継続して上昇し続けると推計された。試算では平成 62 年に現在約 10 万人の多摩ニュー
タウンの人口が 8 万人を割り込み、高齢化率は約 40%になるとされた。
今後もまちが活力を失わずに良好な都市経営を維持していくためには、こうした状
況に少しでも歯止めをかけるため、若年層の呼び込みと定住化を図り、人口減少の抑
制、バランスのとれた人口構成を目指す必要がある。
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3.多摩ニュータウンの課題
【多摩ニュータウンの現状課題と今後想定される課題】
多摩ニュータウンの課題の要因には 「 計画的に整備されたまち 」 という特性が基礎
にあり、大量の一斉入居による世代層の偏り、住宅不足に対応するためのベットタウ
ンとしてまちづくりが行われた画一性、まちが一気に整備されたことから全体が同時
に老朽化する、といったことがある。
こうしたまちの特性が要因となっている課題が、近年、更には今後、人口減少、医
療や介護等といった高齢者の問題、社会状況や人々のライフスタイルの変化等、時代
や社会動向の課題と連動してより複雑な課題へと広がることが予測される。
【第一次入居エリアのある諏訪・永山地区および愛宕地区での課題】
上記の課題は多摩ニュータウン全体を俯瞰したものであるが、第一次入居エリアの
諏訪・永山地区、愛宕地区においては、最も整備時期が古く、同じニュータウンエリ
ア内の他地区に比べ、ハード面での老朽化、計画の考え方と現代ニーズとの乖離等、
一部の課題ではより顕著な傾向を示している。
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【多摩ニュータウンの可能性/再生・再編・活性化への強み】
様々な課題がある一方で、多摩ニュータウンは計画的に整備された水準の高い都市
基盤を有するまちである。これらは地域の資産として評価されるものであり、課題解
決の取り組みとともに、こうした資産を有するまちとしてのアピールも重要である。
また、東日本大震災以降の防災への意識の高まりから、多摩ニュータウンのエリア
では地盤が強固であるという点にも注目が集まっている。
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4.多摩ニュータウン再生の基本的な考え方
【多摩ニュータウン再生の理念と目標】
人口減少や高齢化が更に進行した場合、商業の衰退や交通機能の低下、地域コミュ
ニティの衰退、まちの魅力の低下と更なる人口減少へと繋がり、事態が連鎖的に進行
することも考えられる。
多摩ニュータウンの強みであり、地域の資産である高質な都市基盤と豊かな緑を活
かしながら、地域環境及び地域コミュニティを維持・発展させていくためには、時代
の要請である多様なニーズに応える質の高い市街地へと再生し、持続可能なまちとす
ることが必要であり、これを再生の基本理念とした。
また、再生にあたっては、環境問題といった今日的な課題も視野に入れる必要があ
る。こうしたことを加味し、まちの活力の源である住民の流入を図りつつ、生活の場
としての再生を目標として掲げた。
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【再生に向けた基本的方向性】
①再生の方向性に向けた柱と切り口
基本的な方向は、多摩ニュータウンを持続可能なまちとし良好な都市経営を念頭に
置き、今住んでいる人とこれから住む人のために、2つの柱と5つの切り口とした。
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②住宅ストックの再生・再編・活性化に向けた取り組みとその進め方
多摩市内のニュータウンにおいては、諏訪・永山地区及び愛宕地区から整備を始め、
概ね西方に開発が進んでいったことから、西方ほど新しいまちになっている。
都市基盤はいずれの整備時期のエリアも水準が高いが、地形の高低差のバリアに関
しては、第一次入居エリアに比べて西方の方が緩やかである。
第一次入居エリアは既に 40 年が経過しており、道路・公園等の基盤に大きな問題は
見られないが、施設や住宅は今日のニーズに応えられていない状況にあり、建物とし
て老朽化も進んでいる。
また、住戸規模の観点から見ると、ほとんどが 40 ~ 60 ㎡未満の規模である第一次
入居に比べて、第二次入居以降は 70 ㎡超のものが過半を占めており、住戸プランも豊
富で、多様な世代に魅力ある住宅品質を保っている。
こうしたことから、多摩ニュータウン再生の具体的な検討については、古さや住宅
性能の低さ等から、初期入居エリアから始めることが妥当と考える。
ただし、第二次入居エリアである貝取・豊ヶ丘地区 (7・8 住区 ) および落合地区 (9
住区 ) についても、駅からの徒歩圏外に位置し、人口減少の進行によっては土地ポテ
ンシャルの低下という影響が早くに現れる可能性もあることから、第一次入居エリア
に並行して、早期に検討に着手することが望まれる。
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③再生に向けた取り組みテーマ
再生の方向性に向けた2つの柱と5つの切り口を踏まえ、多摩ニュータウン再生を
実現していくための取り組みテーマとしてA~Iの9つのテーマを設定し、20 ~ 30
年後に向けた将来イメージを整理した。
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④活力あるまちに向けた都市構造 ( まちの再生・再編 ) イメージ/ 50 年後
20 ~ 30 年後を目処とする、中・長期にわたる取り組みメニューに加え、将来的に建
て替えをした場合のイメージをまとめた。
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