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「ケルトと東北」 完結編
プロフィール 古山拓︵ふるやまたく︶ 岩手県出身・宮城県仙台市 在住。水彩画家・イラスト レーター。個展と広告イラ ストレーションの二本柱で 活動。東北とケルトの地を 描く事で独自のアイデンテ ィティを模索中。 www.termnet.co.jp/ furuyama/ trumpet-tugboat.seesaa.net に流れる水脈には大きな共 ド、ブルターニュと、地下 イルランド、スコットラン 決して同じ色ではない。ア ﹁ケルトの地﹂というと 一 つ の カ ラ ー と 思 い だ が、 特の色を持つ。ひとつの地 在し、それぞれの地方に独 えないボーダーラインが存 という境界線以上に目に見 るのは簡単だけれども、県 いうひとつのくくりで考え 東 北 も 同 じ だ。 東 北 と 前に横たわったのがフラン でを意識したときに、目の 今から十年程前のことに なるけれど、ケルトの地詣 したときの体験だ。 ンスブルターニュ地方を旅 る、と実感したのが、フラ facebook.com/taku.furuyama 通項はあれど、人々が暮ら 方の中にある無数の価値 スの西部、ブルターニュ半 ◇ す家並み、言葉、歴史と当 観、風土。それらをひとつ ブルターニュの旗 然ながらそれぞれに違った 「ケルトと東北」 完結編 島だ。何がきっかけでケル 色を持っている。 引っ張られ、意識の赴く先 きっかけはさておき強烈に と な っ て は 思 い 出 せ な い。 トの地とわかったのかは今 見て回った後、ベネツィア だ。イタリアをひとしきり ふさわしいと思ったから タリアが、出発地点として にあるローマ帝国の本山イ た。ある意味ケルトの対局 し て だ ろ う ね?﹂﹁ な ん で じ 感 想 を 口 に し た。﹁ ど う ことを同行の妻に話すと同 を滞在中感じていた。その 町 ﹂ と い う、﹁ 居 や す さ ﹂ い け れ ど、﹁ 気 の 置 け な い が、どう、という訳ではな の端にある共通するものを がある。ユーラシアの東西 い 醸 し 出 す、 確 か な﹁ 気 ﹂ 人々の気質が複雑に絡み合 前回の連載でも書いたけ れ ど、 土 地 が 持 つ 歴 史 や たことを確信した。 覚が決して偶然ではなかっ を見つけ、私と妻の皮膚感 た空気を感じたという著述 台を訪れた時に、故郷と似 べると、レンヌ関係者が仙 の姉妹都市締結の由来を調 る。帰国後、仙台とレンヌ 偶然にも仙台とレンヌは 姉妹都市の関係を結んでい が暮らす町と似ている事に ぬブルターニュ旗があるの ている事。そう、国旗なら そして驚いたのは、ブル ターニュが独自の旗を持っ き起こしたくらいだ。 の言葉だ︶復興運動をも巻 語なるゲール語︵ケルト系 模索する機運は、ブルトン 人々のアイデンティティを 感 じ た こ と を 覚 え て い る。 けれど展示からその気質を も、言葉はわからなかった ヌに博物館を訪れたとき 切にする空気がある。レン ﹁そうか、仙台の﹁気﹂ からだろうか、いまだに独 自のアイデンティティを大 だよ、ここは⋮﹂ 気がついた。 だ。 ◇ った歴史がある。それ故だ フランスに組み込まれてい の流れの中、意志に反して ーニュ旗だ。旗は、アイデ してしまうのが、ユーラシ う。そんな今、つい思い出 ジもまた千差万別だと思 違うだろうし、復興イメー ィールドそれぞれで主張は るように感じている。︶ すこしだけ意味合いが異な ズにも見ることができるが スコットランド、ウェール ︵ 同 じ よ う な 地 方 の 旗 は、 に あ っ た と い っ て も い い。 ブルターニュ旗を見たこと きな収穫のひとつは、翻る 大切さ。この時の旅での大 して抽象表現ではなく、厳 を掲げる﹂という言葉を決 ﹁旗印のもとに⋮﹂とか﹁旗 それらを大きく包み込むシ アの西の果てに翻るブルタ 東北復興が叫ばれてい る。自分が生計をたてるフ ◇ 然と目の前に掲げることの に次々とブルターニュ情報 発パリ行きの夜行列車でフ なんとうらやましいこと だろう、と、素直に私はそ が横たわる、そんな導きに 感じた。 も似たものを感じ、私は旅 居やすいんだろう?﹂そん ンティティが共通ならば異 ランスに入り、TGVで州 う思った。独自のアイデン に出た。 ◇ な話をしていたが、ふと町 なる思想、立場であっても、 都レンヌへと辿り着いた。 ティティを持つ人たちが ブルターニュには、歴史 が持つ﹁気﹂が、自分たち 初めて訪れたレンヌ。何 旅のルートを私はイタリ ア発ブルターニュ行きとし ンボルだ。 だれもが認める東北人の 気質を結晶させた旗が、三 陸の被災地に翻っている光 景 ⋮。 被 災 地 東 北 に 立 ち、 ブルターニュに思いを馳せ るとついついそんなシーン を想像してしまうのだ。 ◇ ﹁旗を揚げた日﹂という タイトルの拙作がある。こ の絵を仕上げた時、思って いたのは、いままで綴った ことだった。どんなにつら く と も 旗 を 揚 げ 続 け た い。 そうすることで未来は開か れる、そう思いたい。 【東北復興】 掲載の記事 ・ 写真 ・ 図表などの無断転載を禁止します。 Copyright YUMUYU INC. All rights reserved. ブルターニュの旗 そして東北の旗へ にまとめるアイテムがあ 2012 年 (平成 24 年) 12 月 16 日 (日曜日) 第 7 号 http://tohoku-fukko.jp/ 古川拓氏