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PDF形式 280 KB - 内閣府経済社会総合研究所

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PDF形式 280 KB - 内閣府経済社会総合研究所
セッション1:日本経済の新たな経済成長に向けて
議長:杉田伸樹
経済社会総合研究所
“What is Inflation? Theory and Praxis”
発表者:David Weinstein, Columbia University
討論者:青木浩介 東京大学
○杉田議長
2つ目のご発表に移りたいと思います。
コロンビア大学教授で、日本経済に関する研究をされていらっしゃいます、デビット・ワインシュタイ
ン先生です。プレゼンテーションタイトルは、「インフレーションとは何か? 理論と実践」です。
それでは、ワインシュタイン先生、お願いいたします。
○発表者:デビット・ワインシュタイン/ コロンビア大学 教授
ご招待いただきましてありがとうございます。
今日の発表は、ペンシルベニア大学ウォートン・スクールのJessie Handburyさん、そして、私の近く
に座っていらっしゃいます東京大学の渡辺努先生との共同研究です。時間がかなり限られておりま
すので、本題に入りたいと思います。その前にまず、日本に来られたことをとても嬉しく思っているこ
とをお伝えしたいと思います。
今回のテーマは、日本の消費物価指数(CPI)と価格指数一般についてです。日本銀行は、CPI
をインフレの指標として用いています。ただ、よく知られていることですが、このCPIには2つのエラ
ーが含まれています。第一は、方式上のエラーと言われるものです。実は、インフレ率を経済学的
な見地から測定する研究ではかなりの進歩が見られます。インフレ率の指標を組み立てていくうえ
で、新しいフォーミュラが考案されたわけですが、CPIを測定するために日本及び世界の国々が使
っているフォーミュラは正しいものではないのです。公式を変えれば当然答えは変わってきます。
私たちはこれを方式上のエラー、フォーミュラ・エラーと言っております。CPIに含まれているもう一
つのエラーが、いわゆるサンプル上のエラーです。これは実際にCPIに選ばれた消費サンプルは
必ずしも経済状況を代表するものではなく、また、サンプルというのはどの国でも非常に数が少なく、
すべての価格がサンプルとはなっていないため、価格指数はすべて本質的に推計学的なものとな
ってしまいます。
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ノイズの多い指標については多くの文献で述べられており、実際、私の討論者である青木先生も、
スベンソン、ウットフォード両氏と並んで、最も早くから、論文で警鐘を鳴らされている一人です。CP
Iとインフレにどういう相関関係があるか、そして、CPIを観察することで、インフレーションに関して
どのように結論付ければ良いかといったことがこのペーパーの中心になっています。
私たちは、素晴らしいデータセット、つまり日本にある200店以上の食品雑貨店から得た価格と数
量データをベースに、大変優れたTörnqvist指数を使って生活費のインフレを測定します。これは
実際、経済理論が説くあるべき姿のインフレなのです。続いて、この指数と食品CPIの構成要素の
間には一体どのような違いがあるのかについて、詳しくお話したいと思います。まず、肝心な点を2
つ説明させてください。仮に日本のCPI上昇率が1.6%だったとしますと、実はこれは物価の安定
を示す数字なのです。日本銀行は2%をインフレターゲットとしておりますが、これは大体25ベーシ
スポイントぐらいの幅での物価の安定が見込まれているという状況になります。CPIのエラーは、真
のインフレからどの程度乖離しているかを示しています。標準偏差は約0.96%と、非常に大きなも
のとなっています。CPIでインフレ率を見る場合、真のインフレはそれに±1%の誤差を加えると思
っておけば良いのです。
これは、どのようにインフレを類推すべきかを考える上でかなり重要です。CPI上昇率が高い時は、
CPIは真のインフレ率を測定する上で良い指標となり得ます。しかし、CPI上昇率が2.4%以下で
あれば、これは真のインフレを予想する上では非常に信頼性に欠ける指標となってしまいます。例
えば、CPIの1%の上昇は、真のインフレではわずか0.5%の上昇にしかならないのです。では、
内容を詳しく、分かりやすく説明しましょう。
Diewertの1976年の論文を始めとして、例えばTörnqvist指数あるいはフィシャー理想指数など、い
わゆる最良の価格指数は、これまでエコノミストが見つけた価格指数の中で最も理論的に優れてい
るとされています。しかし、大きな問題は、政府統計局の限られたデータ・リソースではこのような指
標をうまく組み立てられないということです。ですから、Törnqvist指数を適切に組み立てるための十
分なマンパワーがないことを改めて皆さまに説明する必要はありません。これは日本だけではあり
ません。米国でもそうなのです。そして世界中でそうなのです。したがって、価格指数は、世界中で
異なる機能的フォームを使って作られているわけです。その結果、測定エラーが出てしまっていま
す。この測定上のエラーというのは一貫性がなく、また長期的な測定で平均化することによって消
すこともできません。
直感的に分かりやすい言い方をすれば、真実の公式では数字を掛け合わせるべきなのに、足し合
わせてしまったようなものです。そうならば、答えは違ったものになってしまいます。足すことと掛け
ることは同じではありません。本来正確な答えが掛け合わせることで得られるものであるなら、いくら
足しても正確な答えに近づくことはありません。ですから、正しい公式を使っていないのであれば、
答えは違ったものとなり、いくら大きなデータを使ったとしてもそれは何の役にもならないのです。
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さて、ここで聞きたいのは、CPIが変化したとき、真のインフレ率はどの位変化したと推定すべきか、
ということですが、その答えはシグナル対ノイズ比率によって大きく変わってきます。シグナル対ノイ
ズ比率が高い場合、CPIの動きのほとんどは真のインフレの変化に対応しているため、真のインフ
レの変化が1ならば、CPIの動きもほぼ1になると見込めます。別の言い方をすると、シグナル対ノイ
ズ比率が無限になると、すべてのCPIの動きは真のインフレの動きとなるということです。しかし、シ
グナル対ノイズ比率が低い場合、CPIの変動はノイズによる部分が多くなり、真のインフレとの相関
関係は弱くなります。非常にノイズの多い指標にはさしたる情報は含まれておらず、CPIが動いたと
してもインフレ予想を変更すべきではありません。
この論文をCPIのバイアスに関する膨大な論文との関係で見てみると、文献のほとんどはCPIのバ
イアスについての第一次モーメントに重点を置いています。CPIにはどのようなバイアスがかかって
いるのでしょうか?ここでお話するのは、測定上のエラーの分散である第二次モーメントです。言い
たいポイントは、この分散が大きい場合、CPIが動いたとき、真のインフレに関して統計的に多くの
ことを推定することはできないという点です。
この結果を直感的にどのように見ておけばいいのかについて少しお話させてください。インフレ率
が高い状態ではインフレのボラティリティも高い傾向にあります。これは少なくともオークンにまで遡
る、かなり昔から言われている経済的な結論です。実際、CPI上昇率が2.4%以上になると、真の
インフレの分散は約500%になります。インフレが高い状態では、真のインフレ率も非常に大きく動
いているわけですから、たくさんのシグナルが出てくるわけです。しかし、インフレ率が低い場合に
は、真のインフレがあまり動いていないわけですから、シグナルも非常に少なくなります。
第二は、CPIのノイズというのは非常に古典的な測定エラーに近いものと考えられる点です。言い
換えると、CPIのノイズはインフレとともに若干増加するにしても、インフレほどには大きく増加するこ
とはないのです。つまりインフレが低いときには真のインフレは大きくは動いておらず、シグナルも
少なく、CPIはノイズだけになるという意味です。そして、インフレ率が高いときには、真のインフレ
からのシグナルも多く出ているということになり、ノイズの割合が低くなってきます。そうすると、シグ
ナル対ノイズ比率が大きく上昇することになります。
さて、インフレが高い状況において、インフレの分散が急速に拡大している一方で、ノイズは動いて
いない場合、これは、シグナル対ノイズ比率が高くなっていることであり、それを信頼することができ
ます。ここでも、お風呂場に置いてある体重計は、人間の体重の増減を測るには非常にふさわしい
ものですが、ネズミの体重の増減を測るにはうまくいかないということをイメージしていただくと分かり
やすいと思います。繰り返しになりますが、インフレが高いときにはCPIは信頼できますが、インフレ
が低いときには信頼できないのです。
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では、ごく簡単にCPIとは何ぞやという点をお話ししたいと思います。日本のCPIは国際的な基準
にかなり沿った標準的なもので、ILOの基準にも合致しています。私が「インフレ」という言葉を使う
ときには、価格を前年同月と比較した12カ月のインフレ率について話しています。そして、お話す
る食品価格ですが、これはCPIの約17%を占めています。このCPIの構成要素は測定エラーが最
も少ない構成要素だと言えると思います。ですから、例えば、ある特定の店のコカコーラ300ml缶
の30日間(あるいは12カ月間でさえ)の価格の変動を見ることは、帰属家賃やレジャー・サービス
価格といったその他のCPIの構成要素と比べて、かなり容易です。特にサービスの価格を測定す
ることは非常に難しく、それと比べれば、缶コーラの価格を比較するのは非常に簡単です。したが
って、CPIに関しては、測定エラーが最も少ないサンプルに焦点を絞りたいと思います。ただし、こ
ういった分野でも測定エラーが大きくなる理由を組み立てることは可能です。
私たちは今CPIの17%を占める一つの構成要素、つまり食品を見ているわけですが、これは全体
的なCPIの動きをかなりトラックするものなのです。ここに全体的なCPIと食品CPIをプロットした図
があります。その相関係数は0.8となっています。したがって、食品CPIを見ることで、価格変動の
大きなトレンドを把握することができます。データの一部分は単にCPIデータです。データの2つ目
は、いわゆる日経ポイント・オブ・セールス・データ、日経POSと言われるデータです。この観測単
位は、特定の日に店舗にて購入されたバーコード上に記された商品価格と数量です。ですから、
標準的な月には、全国の何百という食品雑貨店やコンビニエンスストアで売られている25万近い
食品雑貨品目の販売総額(価格と数量のデータ、このデータには数量が含まれている点が非常に
重要)が示されます。このデータが本当にユニークである点は、23年間に及ぶデータがあるという
期間的な側面です。
これが他と比べてどれほど規模が大きいデータであるかを分かりやすく説明すると、例えば日本の
CPIでは、この期間中に観測した価格は恐らく1000万ですが、日経POSでは約50億の価格を観
測したことになります。ですから、日本で売られている全ての食品雑貨の小さなサンプルではなく、
その全てを網羅したデータを見ているということになります。では、私たちが真のインフレを測定す
るために使うこのTörnqvist指数ですが、これは、支出に関する2回微分可能なホモセティック関数
の第二次近似です。これはマクロモデルで使う関数のほぼすべての第二次近似です。
続いて、エラーがどこから出てくるかについて、いくつか簡単にお話ししたいと思います。まず、3つ
の異なるインデックスについて話をしたいと思います。日本のCPI(つまりJCPI)、PCEデフレータ
(個人消費支出デフレータ、連銀がターゲットとしているもの)、そして、私たちが真のインフレと呼
ぶTörnqvist指数です。
まず、サンプリング・エラーに関してですが、日本のCPIは目的別のサンプルを使っており、実際の
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小売価格は無視しています。これについては、明日、渡辺努先生から詳しくお伺いすることになる
と思います。そしてPCEデフレータですが、これはランダムな価格サンプルを使っており、小売価
格を含んでおり、Törnqvist指数とはサンプリングに関して大きな違いがあります。Törnqvist指数は
サンプリングを行わず、すべてを網羅した小売価格を使います。
フォーミュラに関しては、日本のCPIというのは低位レベルのDutot指数であり、低位レベルでラス
パイレス指数にネスティングされた算術的価格指数です。PCEデフレータは低位レベルのJevons
指数であり、Törnqvist指数に準じた幾何平均です。詳しく説明する時間はありませんが、これは上
位レベルでは本当のTörnqvist指数とは言えませんが、Törnqvist指数のようなものです。
これらの指標ではウェイティングの仕方が本当に異なっています。これらの指数は、長期的な平均
をベースとして歴史的なウェイトを使っていますが、Törnqvistを計算するのであれば、これはやるべ
きではありません。いずれの指数も下位レベルのウェイティングは使ってはいません。これは非常
に大きな問題となります。下位レベルで商品の質が分からなくなるからです。さらに、Törnqvist指数
では、ウェイトは価格変動に連動する格好で月ごとに変わることになります。それに対し、CPIとPC
Eデフレータでは低位レベルのウェイトは、そのようには動きません。
ですので、こういったことが間違いを招きます。このペーパーでは一体何が重要なのかを詳しくお
話しますが、皆さまは現在何が起きているのかを直感的に理解されることと思います。
ではTörnqvist指数を計算し、日本のCPIを比べてみましょう。ご覧の図のような関係があります。相
関係数は約0.9ですので、相関性はかなり高いとおっしゃるかもしれません。赤は真のインフレと
見るTörnqvis指数で、青がCPIですが、特定の期間、例えばバブル崩壊後には真の価格レベルが
急速に低下しているのが分かると思います。これは別に今回の発表に限ったものではなくて、渡辺
先生もこうしたことを示した住宅価格に関する論文をお持ちです。なお、CPIの方は、もっと長い期
間、私たちが測定した真のインフレよりも高いレベルにとどまっていました。
では、ここからはバイアスについて少しお話したいと思います。公式の指標であるPCPIとTörnqvist
指数を比べた場合、上方バイアスは0.6%です。日本のインフレには上方バイアスがあると多くの
人が認識しているため、この種の数字は標準的なものだと思います。私が強調したいのはバイアス
の標準偏差、つまりこのバイアスの数字というのは一定(定数)ではないという点です。単にCPIの
数字を取り上げ、そこから0.6を引いて、これがインフレの推定値だというのは正しくないということ
です。このバイアスは標準的には±1パーセンテージポイントの幅で変動します。95%の信頼区間
で言うならば、±2パーセンテージポイントが正しい数字になります。
バイアスの価格レベルへの影響度について分かりやすい例を申し上げましょう。1993年の価格レ
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ベルを100としたとき、CPIで見ると物価は約4%下がったことになっています。しかし、この価格の
変動をTörnqvistの指標を使って計算しますと、価格は15%下落したことになります。ですから、日
本の価格レベルは公式の指標が示唆するよりもずっと大きく下がっているのです。
ただし、ここで特に注目して頂きたいのは、このエラーに何が起きているのかという点です。この図
は、食品CPIとTörnqvist指数の差を示しています。その差はプラスになる傾向があることが読み取
れます。実際、CPIのバイアスとはこの差の平均で、この場合は0.6%となります。この図を見てもう
一つ分かることは、この差が大きく変動しているということです。ある月にはマイナス2%まで低下し、
別の月には+5%にまで上昇することもあります。この差の分散は大きく、CPIはTörnqvist指数に
バイアスを足した数字であるとは単純に言い切れないのです。このバイアスがいろいろな数字を取
るため、私たちもいろいろと分析しなければならないのです。
では、どこにこの混乱の原因があるのか、少し検討してみましょう。価格の測定に関して、CPIがど
れぐらい正しく真のインフレを測定できるかについては、いろいろと研究があります。ここでは米国
のボスキン委員会報告書の基礎となった文献や、価格の測定エラーに関する日銀等によるいろい
ろな文献について簡単にご紹介したいと思います。基本的には、それらの文献は、CPIは真のイン
フレ率ΠtにエラーΦtを加えたものだとの前提に立っています。これを検証するために多くの努力
が行われ、Φtはα+∊tであると特定されています。ですから、αというのは、このCPIのバイアスと
して、そして∊tは何らかのエラーであると解釈できます。
これは研究の真っ当な疑問だということかもしれませんが、本当に知りたいのは、真のインフレ率は、
CPIを条件としてどう変わるのかということですから、中央銀行や実質GDPの計測にはそれほど重
要ではありません。真のインフレを条件として、CPIはどうなるかという経済的な質問はほとんどあり
ません。私たちが主に考えているのは、CPIを条件とした場合、真のインフレは何であるかなので
す。実際、この論文の焦点もそこにあるわけです。
では、観察されたCPIを条件として、真のインフレ率はどのような関係にあるのか、という質問を見て
いきたいと思います。もし、その2つがいずれも一変量であり、線形の関係があるとすれは、これは
簡単に(2)の方程式で書き表すことができます。方程式(2)で重要なことは、分散項の共分散とな
ります。これは何かというと、真のインフレ率をCPIで回帰した場合に得られる係数に他なりません。
私たちはこれをβと呼びます。ですので、このβは、CPIをCPIの分散で割って計算されるCPIイン
フレの共分散ということになります。そして、これら分散項と共分散項は方程式(3)として書き表すこ
とができます。
この論文にも書いてあるのですが、事実、真のインフレの共分散は測定エラーがゼロとなっていま
す。私たちは、そのゼロを否定することはできないため、測定されたエラーを基本的に古典的なも
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のと推定し、取り扱うことにします。そうすると、βは、単に、真のインフレ値の分散に測定エラーを
加えたものに対する真のインフレの分散として書き換えることができます。続いて、それを測定エラ
ーの分散に対する真のインフレ率の分散であるシグナル対ノイズ比率で書き換えることができます。
つまり測定されたエラーが大きくなると、逆にβは低下します。では、これは何を意味しているので
しょうか?測定エラーの分散が大きいと、CPIの動きは真のインフレの動きに関してそれほど有益な
情報は提供しないということです。ですから、CPIにそうした動きがあるからといって、真のインフレ
予想を改定すべきではないということになります。
データをプロットしていきたいと思います。こちらは、横軸に公式の統計で測定された食品CPIを取
り、縦軸にTörnqvistのインフレーション率を取った図です。45度線はこの2つが全く同じであれば、
出てくる関係線です。そして、赤い線はLOWESSフィットを示しています。この図の中で非常にはっ
きりと分かるのは、CPIインフレ率が2%強と高いときには、CPIの動きと真のインフレの動きに対し、
1対1に近い急勾配の関係が見られるということです。しかし、インフレが低いときにこの曲線の勾配
は非常に緩やかになります。つまり、CPIの動きはあまり真のインフレ率の動きについて情報を提
供してくれないということです。この関係を覚えておいていただきたいと思います。なぜなら、このペ
ーパーの中に書かれているその他のことはすべて、目の錯覚ではなく、ここにはねじれがあり、イン
フレが低いときよりも高いときのほうが、関係性がはるかに強いと基本的に言っているのですから。
それでは、ここで、統計的に有意な断絶があるということを示すため、統計について考えてみたいと
思います。これは、測定されたインフレ率で真のインフレ率を回帰したものです。例えば、CPIとCP
I2で真のインフレを回帰した2つ目のコラムを見てください。線形の部分では係数が0.5、そしてC
PI2は非常に有意のプラスの数字になっています。あるいは、ノットを入れて回帰することも可能で
す。その場合、その関係にはねじれが生じます。
私が注目している最後のコラムですが、内生性のノットがあり、内生的な断絶があります。この内生
性の断絶は2.4%で起きています。インフレが2.4%よりも低い場合、ポイント推定が示しているの
は、CPIが1パーセンテージポイント動いたとき、真のインフレは0.5パーセンテージポイントしか動
かないということです。その理由は、CPIにはノイズが多すぎて、この動きのかなりの部分は、実際
のインフレの動きをあまり反映していないということです。しかし、そのねじれも、シグナル対ノイズ比
率がかなり上昇し、バイアスが消え始めると、巻き返しに入ります。もう一つ分かるのは、定数項が
マイナスになっていることです。この定数というのは、測定したインフレ率がゼロのときのCPIのバイ
アスと解釈することができます。測定されたインフレがゼロの場合、日本のCPIは上方に0.8%の
バイアスがかかっているということです。
では、この非線形の影響はというと、測定された日本のインフレ率が年率-1%から2%に動いたと
きにどうなるかということを考えてみるとその解が分かります。先ほどのスライドで推定した供給とイン
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フレ率から考えると、年率-1%のインフレ率は真のインフレ率-1.26%に対応しています。です
から、インフレ率がマイナスのときには、バイアスは比較的小さいと言えます。しかし、インフレの上
昇に伴ってバイアスは急速に大きくなり、インフレ率が2%になった段階では、バイアスの大きさは2
パーセンテージポイント近くになります。ですから、言い方を変えますと、現在日銀がインフレター
ゲットとしている約2%というのは、正しくは、価格の安定性を達成するための水準に非常に近いと
いうことになります。
では、これまでに分かったことは何でしょう?真のインフレ率とCPIとの非線形の関係は、インフレの
上昇に伴って真のインフレの分散が大きくなるということに大きく依存し、CPIのエラーは真のインフ
レと相関性があるということです。これも、ペーパーでは書いてありますが、ここでは時間がないため、
省きます。最後に、こういった結果のミクロ構造を見て、この話を締めくくりたいと思います。こういっ
た結果をもたらすものは何でしょう?これもペーパーでは詳しく説明しています。
いくつかの可能性を私たちは検証しました。第一の可能性としては、日経のデータが何らかの形で
基礎となる政府のCPIデータとは違っているということ。これについてはまた明日もっと議論がなさ
れると思います。しかし、CPIの手法を日経のデータに当てはめみますと、全く同じパターンが出て
きます。ですから、これは日経のデータとCPIで使われているデータの違いの問題ではなく、CPI
で使われている手法の問題だということが分かります。
2つ目は、米国のPCEデフレータの手法はどうか、この方が良いのかという可能性です。この手法
がうまく行くという証拠があります。ノットはやはり2.3%にあり、インフレ2.3%以上になったときに
PCEはよりフィットします。バイアスはある程度小さくはなりますが、PCEのような連鎖した指数でも
やはり残っています。
最後に、データをより詳しく分析し、より大きな問題が、サンプリングなのか、それともフォーミュラ・エ
ラーなのかという点を、単純に私たちのデータにCPIの手法を当てはめ、Törnqvistの集計手法を
用いて、調べました。分かったことは、米国については、正しいフォーミュラを使い、ただ、サンプリ
ングだけを当てはめた場合でも、バイアスと非線形の関係はなくなるということでした。これは、間違
ったフォーミュラからは間違った答えが出てくるということを、はっきりと示しています。インフレ計測
上の問題は、間違ったフォーミュラを使っている点です-ですから、間違った答えが出てくるので
す。
では、締めくくりとして、バイアスがどんなふうになるかを示した1つのグラフをお見せしたいと思いま
す。横軸はやはり計測したインフレ率、そして縦軸は真のインフレ値との差、つまりバイアスを示し
ています。グリーンで示した日本のCPIの場合、バイアスはインフレ率の上昇とともに上昇を続けま
す。しかし、これは大体2%までのことで、その後は下落に転じます。PCEの手法ではもう少しバイ
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アスは小さくなりますが、やはりバイアスは同じパターンを描きます。もし、PCEの手法に正しいフォ
ーミュラを当てはめれば、バイアスはずっと小さくなるでしょう。
時間がなくなりました。最後に説明してきたことをまとめると、CPIの情報の正しさというのは、インフ
レの上昇とともに上がるものの、インフレ率が2.4%以下のときは、CPIは真のインフレ値を示すに
はノイズが多過ぎるということと、バイアスは一定ではないということです。CPIのバイアスは一定で
はなくて、インフレ率とともに変わるということです。そして最後に言いたいことは、米国のPCEデフ
レータ手法は、日本のCPIより優れていると思いますが、この手法ですら低インフレレジームでは問
題があるということです。
以上です。
○杉田議長
ありがとうございました。
それでは、東京大学経済部准教授の青木浩介先生にコメントを頂戴したいと思います。青木先生、
お願いいたします。
○討論者: 青木浩介/ 東京大学 准教授
私は、不確実性のもとでのノイジーな情報を用いた最適な金融政策について研究してまいりました
ので、この会議に参加して、論文についてのディスカッションに参加できることは喜びであります。
私が論文を出す時はいつでも、誰もがどうしてCPIのノイズの問題を気にするのかと聞いてきます。
そこで私は、CPIは本当の価格レベルを示しているものではないと皆を説得しようとしますが、非常
に骨が折れました。しかし、ここにきてCPIにはたくさんのノイズがあることを示す素晴らしい論文が
発表されたため、私自身、説得力を以て話をすることができるようになりました。
それでは、経済的な質問についてお話します。CPIは生計費のインフレを測定するにはノイズが多
いといわれます。これについては、まず、それはどれくらいノイジーなものであるのか、次に一体そ
のノイズはどこから来るのかという疑問が湧きます。それに対しての答えは、私が予想していたもの
よりもショッキングなものでした。CPIはバイアスがかかっているだけではなく、非常にノイズが多く、
特にインフレが低いときには非常にノイズが多いことが示されています。そして標準偏差は約1%と、
非常に大きな数字となっています。もしCPIのインフレターゲットが2%に設定された場合、それは安
定した物価を意味しているに他ならないのです。また、このノイズがどこから来るかという疑問です
が、数字を合成していく上でのフォーミュラにエラーがあるのではないかという結論に至りました。
CPIの測定値に関する数々の論文については先ほどDavid Weinstein教授よりご紹介がありました
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が、私たちがインフレ測定に興味を持つ理由は2つあります。1点目は、当然ながら生計コストの変
動を見たいからであり、2点目は(これも非常に重大なテーマだと私は考えていますが)、価格レベ
ル、つまりインフレ率は、名目上の変数を実質的な変数に置き換えることができるという理由からで
す。経済活動を測る多くの指標は、原データである名目上の数字でのみ語られており、実質ベー
スで語られることはありません。したがって、もしインフレ率が間違っているのであれば、現実の数字
も違っているということになります。CPIについては、測定上3つの要素があります。まず質的な調整
ですが、これは歴史的に長くいわれていることです。次は、サンプリングが限定的であること。これ
は人々が主にどの理論に焦点を絞っているかによります。3点目は、このペーパーの主要な争点で
もありますが、全ての価格を足し合わせてCPIという総合的な指数を計算していく式に問題があるの
ではないかということです。
理論的な観点から申し上げますと、真の情報とCPIの関係は、純粋なかたちで2つの解釈方法が成
り立つと思います。Φを測定されたインフレ率と本当のインフレ率との差であるとすると、一つの可
能性はΦが純粋なニュースということになります。つまり、もし統計局が利用可能なデータを全て用
いて真のインフレに関して最適な予測を立てた場合には、CPIインフレ率は非常に有効な見通しに
なり得るという意味です。しかし、もしそうであるならば、測定されたインフレ率とΦの相関性はゼロ
になるはずです。なぜかというと、誤差は予測上エラーと解釈されるからです。しかし、David
Weinstein教授は、そうではないことを説得力のあるかたちで見つけました。したがって、CPIという
のは現実の情報の正確な見通しではないといえます。もう一つ別の極端な見方は、このΦを純粋
なノイズであると考えます。その場合、このΦと真のインフレ率の相関性、つまり、CPIとその時点の
真のインフレ率の差もゼロとなるべきです。そうであれば、古典的な測定差の等式が成り立ちます。
問題は、どちらがより良い近似値であるか、ということです。もちろん2つとも極端な例ですが、私は
そのうちのどちらが真実に近いのかということに興味を持ちました。ですので、CPIとΦの共分散を
計算しましたが、その場合、マグニチュード規模も真のインフレ率とΦの共分散と似たようなものに
なっています。そして、相関関数を計算した場合、いずれも大きくはないですが、これらをゼロとし
て統計的に排除することもできません。したがって、実際のところは、この「純粋な予想上のエラー」
と「純粋なノイズ」の間にあると思われます。ですから、Φtは、真のインフレの測定に関して何らか
の情報を提供してくれるということです。
インフレが高いときにはCPIの値の誤差が大きくなり、その逆も真なりとワインシュタイン教授も説明
されました。ですから、ここでは私は補完的な説明、あるいはもう一つ別の解釈をご紹介したいと思
います。ここでのポイントは、内生性の指標の情報内容、特にインフレやアウトプットギャップといっ
た目標変数の情報の内容は政策により内生的に決まる点です。
ここに非常に単純な例があります。構造的なモデルだといいたいのではありません。インフレ+測
10
定誤差の方程式で示されるノイズの多いインフレ指標があるとします。真のインフレは、例えば生産
性、そして需要ショックなどの基本的なショックに依存し、中央銀行はこういったショックに対応する
とします。中央銀行がその基礎となっているショックについて何らかのかたちで非常に質のいい情
報を持っているとすれば、これはゼロに近づきます。そうなると、計測されたインフレ指標というのは、
ノイズだけになります。つまり、政策が非常に成功しているということになると、この指標が非常に有
益な情報を提供するということになります。インフレが政策によって内生的に決定される目標変数の
一つであるため、これはインフレが低くて安定している場合に起こり得ます。金融政策で大きなミス
をたくさん犯すとインフレが不安定なものになります。そこから学ぶことは多いと思います。
次に厚生への影響を考えてみましょう。金融政策とノイズの多い情報に関しての文献はあり、その
文献にはノイズのある情報があることでどんな代償を支払うかということが書かれています。文献に
関していうと、インフレの変動の代償というのは、インフレ率が低いときにはそれほど多くはないとい
うことです。ですから、この文献を信じるとすれば、低インフレ下での大きなノイズというのはそれほ
ど重要ではないということです。実際、私も自分でこれを研究して、その所見に失望したことがあり
ます。しかし、話はこれで終わりではありません。価格の指標は、賃金や年金給付といった支払い
の変更をもたらすわけですから、価格インデックスが間違っていれば、富の分配を間違った人に行
うことになります。その所見をベースとすると、非常に大きな影響がでます。その理由は、例えば、
CPIをデフレータとして、また、真のインフレの測定値として見ると、真の価格レベルは、CPIが示唆
するよりも15%低いことになるからです。もし賃金や年金の給付を、CPIをベースに決めるとなると、
非常に大きな資源の再分配になります。これはもちろん集約の手法によるものであって、サンプリン
グの誤差ではありません。というのは、サンプリングの誤差が積み重なって、これだけ大きなギャッ
プが生まれるということは信じがたいからです。もう一つの影響は、現在の生活水準は、これまで考
えていたよりも15%高くなるということです。ですから、もっとこれについては、嬉しく感じるべきだとい
うことです。
さて、先ほどの点に関係してですが、私の申し上げたい点は、名目の変数が間違っていれば、実
質の変数も間違うということです。それは、経済理論、そして経済政策に重要な影響をもたらすこと
になります。理想的には、真のインフレと真の経済活動の間でフィリップス曲線を見たかったのです
が、それはできなかったため、利用できるデータを使って少し実験をしてみました。
これは高度の経済・計量的な理論を用いたものではなく、あくまで暫定的なものであるため、私はこ
の所見から決定的な結論を導くということはしたくありません。この数字が示しているのは第三次産
業活動指数および小売売上高指数です。これは月次データであるため変数として選択しました。
そして、名目変数はCPIでデフレートされて実質の値になっています。横軸は小売売上高指数で、
縦軸はCPIです。
11
そのデータを使い、もともとの名目系列を真のインフレでデフレートし、真の小売活動と真のインフ
レをプロットして、どのような図になるかを見てみました。何バージョンかこの比較をしてみましたが、
これらのバージョンは今皆さまにお見せしているものと似ています。まだ確定的な結論を導き出す
ことはできませんが、この2つのチャートは違ったように見えます。どちらかといえば、真のインフレを
使ったものの方が急勾配に見えます-より平坦ではないのです。多くの人がフィリップス曲線の関
係が平坦になってきていると考えているため、私はもともとこの実験に非常に興味がありました。こ
れは、GDPの需給ギャップはインフレを説明するのに有益な変数ではないことを意味しており、多く
のマクロ経済学者がこの問題について懸念しています。一つの仮説として、もしインフレ率が低け
れば、CPIは有益ではないといえると思います。ですから、この研究の方向性というのは、有益だと
思います。
○杉田議長
ありがとうございました。 それでは、質疑応答に移りたいと思います。やや予定より遅れています
ので、コメントは簡潔にしていただければと思います。
○コメント1: アニル・カシャップ/ シカゴ大学 教授
1点だけ申し上げます。
皆さまの分析はこのTörnqvist指数が優れた近似値だということを大前提にしているようですが、こ
れは代表的な消費者がいて初めて本当に優れた近似値といえるものです。しかし、代表的な消費
者がいれば、価格差別というものも存在しないわけです。私は大部分のデータの分散は価格差別
なのではないかと思っています。例えば、一時的なディスカントが多くあるなどです。そこで、価格
差別を行おうとするモチベーションが働くために2つのタイプの消費者がいるとなると、Törnqvistが
何を近似しようとしているのかがはっきりしなくなります。その場合、何か言えますか? 私は、総支
払額を販売数量で割ったものと定義される単位価値指数は、何らかの前提があり、いくつかのタイ
プの消費者がいる時はより強力な指標になるかもしれないと思っています。ですので、さらに作業
を掘り進めていき、どのような変化が起きるかを見れば面白いと思います。
○発言者2: 塩路悦朗/ 一橋大学 教授
2つ質問があります。
私たちはこの論文を通じて、食品雑貨につきましては多くを学んだわけです。ただ、それがいかに
してその他の財・サービスの価格に関する考察に一般化されていくのかということについてお伺い
したいと思います。例えば家賃について、先生は家賃につきましては測定がより難しいとおっしゃ
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いました。また、その一方では、もう少し一貫性があるのではないかとも思います。ですから、バイア
スレベルというのは大きいと思います。ただ、実際にバイアスの分散は小さいんじゃないでしょうか。
ですので、この結論がCPIの全体にいかに一般化して広めることができるか、それをお伺いしたい
と思います。
また、これは冒頭部分におっしゃったことですが、行政機構には限定的なマンパワーしかないので、
全てのアイテムのサンプルを取ることはできないというお話が出ました。その一方で、論文の結論で
は、バイアスのほとんどはフォーミュラバイアスの問題ではないかということになったわけです。もし
そうであるならば、例えば、足し合わせる前に対数を取るといったような簡単な作業を加えることに
よって劇的な改善が図れるということになるのでしょうか。何らかのコスト効率のいい方法でCPI指標
を改善する方法があれば、ぜひコメントをしていただきたいと思います。
○杉田議長
ほかにコメントありますか。 それでは、ワインシュタイン先生、お答えをお願いいたします。
○発表者:デビット・ワインシュタイン/ コロンビア大学 教授
住宅価格につきまして、実際研究をされた渡辺先生の方から話していただければと思います。そ
れでは、ごく簡潔に申し上げます。少し順番は逆になるかと思いますが、まずアニルさんの代表的
な消費者はいるのかというコメントについて。2点目は、代表的な消費者をあきらめた途端、インフレ
という概念をあきらめる、つまり、もはやインフレ率はないという内容だったと思いますが。
例えば、この指標がいい、この指標は好きじゃないとか、そういう好みはあると思いますが、もし代表
的な消費者がなければ、代表的なインフレ率もないわけです。1人の人が、ビールが好きでそれば
かりを買い、別の人はワインが好きでそればかりを買ったとすると、そこには合理性を持った代表的
なインフレ率は存在しえないと思います。ですから、これはTörnqvistとはあまり関係のない問題であ
り、インフレという概念を信じるかどうかということになります。
2点目は、代表的消費者という概念を信じないとすれば、いわゆる、インフレ測定の統計的手法を
考慮することができます。すると「優れた属性のある指数がほしい」ということになります。しかし、再
びTörnqvist指数あるいはフィシャー理想指数に戻ってくる。なぜなら、これらの指数は統計的に最
も優れた性質を持った指数だからです。それ以外の指標のほとんどは、例えば、統計的に良いプ
ロパティがないとか、あるいはユーティリティの合理的概念に対応していないなど、複数の側面にお
いて、この2つには及ばないと私は思います。
渡辺先生から家賃について少しお言葉を頂戴できればと思います。
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青木先生は非常にすばらしいコメントをされましたが、私はその全てに対応することはできません。
ただ、先ほど青木先生が言ったことを1つだけ繰り返させてください。厚生というのは非常に大きな
問題だと思います。恐らく米国人にとってはもっと大きなショックなのではないでしょうか。なぜかと
いうと、米国人はPCEデフレータというのは連鎖化されているため、本当に正確なインフレの測定
手法だと信じる傾向が強いからです。それでも、PCEデフレータも、まだ間違ったフォーミュラを使
っています。過去15年間、日本のインフレ率は上方バイアスがかかっており、その間の日本の経済
というのは実際に私たちが思っているよりもパフォーマンスが良かったということが、私たちの結果
によりある程度、示唆されます。この2つは整合性があると思います。単純に、米国はCPIの改革を
行った-その結果、連鎖化された測定値を持つようになり、インフレは抑制され、実体経済の成長
は加速した、と言い切ることはできません。機械的に言えば、実際、経済的な数値は上向きになっ
ています。日本はそれをやっていないから、日本の経済状態がより悪く見えるだけだと言えるかもし
れません。
塩路先生のコメントにお答えします。私たちの分析から出てきた1つの結果は、低位レベルで幾何
学的な平均値を取る方がDutotよりも優れているということです。私はそう思っているのですが、渡
辺先生の同意をいただけるかどうか、ご意見をお聞きしたいと思います。私の結論は今申し上げた
通りです。
渡辺先生、補足があればお願いいたします。
○発言者3: 渡辺努/ 東京大学 教授
Törnqvist指数について・・・。
○発表者:デビット・ワインシュタイン/ コロンビア大学 教授
そうですね、Törnqvist指数は最も優れたものです。その点について付け加えさせてください。これ
らの手法はすでに100年以上も経っています。今はスーパーコンピュータがあります。そして、デー
タも良くなっています。ですから、それを使うべきだと思います。
○発言者3: 渡辺努/ 東京大学 教授
大変興味深いコメントをいただきありがとうございます。青木先生のコメントに感謝します。
特に厚生の影響についてお話をしたいと思います。青木先生のおっしゃったとおり、インフレの代
償というのは、インフレ率がほとんどゼロに近いときには低いと、しかしながら、インフレのデフレとし
ての役割というのは重要だということです。ですから、焦点はインフレの代償から富の分配にインフ
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レがゼロに近いときには移すべきだと思います。厚生の影響として非常に重要です。また、フィリッ
プスカーブに関して、これも非常によかったと思います。なぜ、フィリップス曲線が今日本では平坦
化しているのかということが疑問になっています。彼の試みはそれほど成功してはいませんけれど
も、しかし、ほかの方々も将来同じようなことを研究としてできると思います。
塩路先生の提言についてコメントさせていただきたいと思います。
まず第一に、確かにおっしゃるとおり、日本政府は非常に大きな財政制約を抱えています。だから
こそ統計局が多くのデータを収集することができていません。それは確かですが、しかし、我々はこ
の発表の中で使ったデータというのは、政府が資金を出しているものです。そして、それほど大きな
資金を政府からは得ませんでした。少額だったわけです。それだけでも十分これだけの結果を出
せたわけです。ですから、統計局がそれほど多額の資金をかけなくても、Törnqvistの結果を出せ
るということです。ですから、財政制約ということが本当の問題ではなく、本当の問題は、新しい価
格の情報の収集の仕方に改定することをためらっていることです。これまでやってきたこととかなり
違うやり方に適用しないということだと思います。できれば、同様のことをほかの商品でもやりたい。
例えば住宅あるいは家賃などについてやりたいと思いますが、データの問題は非常に深刻ですが、
私も少し分析をしました。住宅の家賃に関して。これはリクルートという会社から得られたデータをも
とにして行っています。ですから私か、あるいは私の協力者が同様なことを将来的にできると思いま
す。将来の分析においてできるかと思います。ありがとうございました。
○杉田議長
ワインシュタイン先生、青木先生、ありがとうございました。
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