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天体撮影用改造デジタルカメラにフィルター装着しての撮影について 岩田
天体撮影用改造デジタルカメラにフィルター装着しての撮影について 岩田 省司 現在、私は、天体撮影用に改造したデジタル一眼レフカメラで、天体写真撮影を楽しん でいます。 最近、ネットや天文雑誌に掲載されている天体写真に光害カットフィルターなどを使用 した作例が見受けられるようになっているので、どのような写り具合になるか実際にフィ ルターを購入して試してみました。以下に、その結果をお知らせします。 1.そもそも天体撮影用のデジカメの特性はどうなっているのか。 まず、天体撮影用のデジタルカメラの改造点を説明します。 ふつうの赤い星雲が写るようにデジタルカメラを改造する場合、その CCD の前面に取 り付けられているフィルターを交換します。ちなみに改造費用は 4∼6 万円程度です。 韓国で天体撮影用に改造を手がけているサイトに、わかりやすいグラフが以下のように 掲載されていました。(無断で掲載しました。CentralDS さん、ごめんなさい。) グラフで色のついている部分が改造前 のフィルターの特性で、700nm 手前で急 に透過性が落ちているのが、改造後のも のです。この改造により、Hαの透過特 性を 30%程度から、95%程度までに伸 ばそうとするものです。 こうすることで、わずかの露出で赤い 星雲を写し撮ることができるようになり、 私もデジカメでの星雲撮影にのめり込ん でいます。 2.フィルターの装着箇所 望遠鏡による直焦撮影で、フィルターを装着する場合、どこに装着するかが問題です。 ① APS サイズのカメラの場合、カメラのミラーボックスの中にはめ込むタイプのフィル ターがあります。 ② カメラ内部に装着しない場合、カメラの前面と望遠鏡の間に装着しなければなりませ ん。私のタカハシのワイドマウン ト(望遠鏡とカメラをつなぐもの) には内側に M48のねじが切って あり、そこにフィルターをねじ込 むことができます。(←最近まで、 ここにねじが切られていることを 知りませんでした。(^^;) ) 右の写真のようになります。 3.今回使用したフィルター ① IDAS LPS-P2 ②IDAS LPS-V4 ③Kenko R1 の 3 種類です。 9 以下は、上記の 3 種類のフィルターの特性です。 左上が①LPS-P2 で、光害カットフィルタ ーとして、眼視でも使うことができます。 右上が②LPS-V4 で、①よりも透過する帯 域が狭まっています。 右が③R1 となっています。③は、ふつう は、白黒写真のコントラストをあげるため に使われています。フィルターは赤い色 をしています。 4.LPS-P2 での撮影 右の画像はぎょしゃ座の M38,M36 付 近を撮影したもので、撮影後、カラーバラ ンスを整えただけの画像です。ノーフィル ターと比べると、バックグランドが暗くなり、 撮影対象が浮かび上がります。この後の 画像処理が簡単になる反面、星の色の 美しさがわずかに損なわれるようです。 LPS-P2 は、淡い星雲をわずかの手間 で浮かび上がらせるのに威力を発揮しそ うです。 撮影データ:野津原町にて タカハシε-180ED(F2.8) キヤノン EOS 5D MarkⅡ タカハシ EM200Temma2Jr 赤道儀 ISO800 8 分 (上)フラット補正なし、コンポジットなし (下)フラット補正後4コマコンポジット、 その他画像処理 10 フィルターを装着することで、ノーフィ ルターの場合と同じ露出をしようとすると、 必然的に露出時間は長くなります。露出 が長くなるということは、赤い星雲がよく写 るというメリットのほかに、ガイドエラーが 出やすくなるデメリットもあります。 そこで、高感度での短時間撮影で、ど の程度使えるか試してみたのが右の画像 です。 撮影機材は M38,M36 付近のものと同じ LPS-P2 装着で、 ISO は 3200 露出時間は、 2分 です。 (ISO800で8分の露出と同じです。) 撮影時の外気温は、22∼23度でした。 (9月中旬明け方) ISO800 での撮影に比べると、ISO3200 では、やはりノイズが若干多めですが、パ ソコンで見る程度であれば、短時間で、 多くの対象を撮影できるメリットがありま す。 5.LPS-V4+R1 での撮影 ネット上で、LPS-V4+R1 のフィルターで、Hαフィルターの20nm と同等の効果があるという記 事を見たため、試してみました。上記の使い方では、前述の各フィルターの特性図をごらんいただ くと、Hαの656 nm付近だけを 撮影できるのが わかります。 画像処理は、 LRGB 合 成 で 、 RGB 画像を白黒 化したものに、 LPS-V4+R1 で の撮影画像を加 算平均し、それ を L 画像とする 方法をとりました。 後で試してみま し た が 、 LPS-V4 11 +R1 での画像を R チャンネルに比較明合成したものでは、赤い部分が多くなり、星の色も赤みが かったものが多くなったので、LRGB 合成の方法を採用しました。 上の左の画像は、LPS-V4+R1 で撮影した M38 付近の画像です。ノーフィルターの倍の露出を かけ、ISO1600 で 8 分としました。上の右側の画像は、ノーフィルターで ISO800 での8分の画像で す。 フィルターの有無により、ピントの位置が変わって、画像の大きさが変わるため、また、 フィルターの取り付け、取り外し時にカメラの位置が変わることによる画像の回転のため、 画像を重ね合わせる作業が大変でした。画像の重ね合わせのために、コンポジットを自動 でしてくれるソフトをダウンロードして使ってみましたが、満足のいく結果が出なかった ので、結局、手作業で重ね合わせをしました。その画像が下図です。 下の左側が、フィルター付き、ノーフィルター、それぞれの画像を白黒化してコンポジ ットしたものです。 上の右側が、左の画像を L にして、ノーフィルター画像を RGB として、LRGB 合成をしたもので す。星雲がピンク色になってしまいましたが、星の色が赤みがかることもなく、比較的楽に画像処 理できました。 6.最後に 今回、2種類のフィルターの使用方法を試してみましたが、LPS−P2では、星の色に課題が残 るものの、そのデメリット以上に、バックグランドの処理が簡単になり、画像処理が楽になることがわ かりました。サクッと撮影して、サクッとネットに掲載するのも可能ではないかと思います。 また、LPS-V4+R1 では、1 枚あたりの撮影に露出を多くかけるため、ノイズ処理が大変でした (バックグランドスムーズなどの処理をしています。)し、大きさと角度の違う画像をコンポジットする のにも苦労しましたが、今後、デジカメでの Hαの撮影に威力を発揮するものと期待されます。 12