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M38 星団までの距離

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M38 星団までの距離
「M38 星団までの距離」
明星大学理工学部物理学科
天文学研究室
09s1-027
生田目 旭
1
要旨
この研究は M38 星団の距離を求めるため、HR 図
を作成し M38 星団までの距離の値を求める研究であ
る。
明星大学にある 40cm のリッチクレチアン型反射
望遠鏡と冷却 CCD カメラを用いて M38 星団の画像
を撮影し距離を求めた。
今回は BD+35 1125 を標準星として CM 図上で比
較し距離を求めることにした。
2
目次
第一章「散開星団」・・・・・・・・・・・・・・・4~5
1.散開星団とは
・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
2.M38 星団とは・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
第二章「距離の求め方」・・・・・・・・・・・・6~8
1.CM 図とは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
2.距離を求める公式・・・・・・・・・・・・・・・・7
3.絶対等級・見かけの等級・・・・・・・・・・・・8
第三章
「研究作業」・・・・・・・・・・・・・・9~18
1.研究作業
1-1
観測・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
B フィルター、V フィルターについて・・・10
2.研究作業
画像処理・・・・・・・・・・・・・・・・11~14
3.研究作業
計算処理・・・・・・・・・・・・・・・・15
4.計算結果
距離の計算・・・・・・・・・・・・・・16
5.距離の計算
観測結果・・・・・・・・・・・・・・17
6.考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
参考書籍・文献
謝辞
3
第一章
「散開星団」
1. 散開星団とは
恒星の集団(星団)の一種である。分子雲から同時に生まれた星
同士がいまだに互いに近い位置にある状態の天体を指す。
銀河のディスク部分に存在するため、銀河星団とも呼ばれている。
M38 星団
B フィルターで撮影
代表的な散開星団
・おうし座のプレアデス星団(M45)
・おうし座のヒアデス星団
・かに座のプレセペ星団(M44)
などが知られている。
4
2. M38 星団について
M38(NGC1912)はぎょしゃ座にある散開星団である。
M38(NGC1912)のデータ
赤緯
05h 28.7m(J2000.0)
赤経
+35°50’(j2000.0)
距離
4200 光年
視等級
6.4 等級
視直径
24’
直径
21 光年
M38 星団の画像
5
第二章「距離の求め方」
1.CM 図とは
CM 図(Color-Magnitude 図)とは、縦軸に絶対等級、横軸にス
ペクトル型(表面温度)をとった恒星の分布図の事である。
散開星団の CM 図は星図の星までの距離は地球からすべて同じと
考えて良いので、縦軸には絶対等級ではなく見かけの等級を用いる
事ができる。またスペクトル型は星の色に対応していることから色
指数と言う値を横軸に用いることができる。
このように縦軸に見かけの等級、横軸に色指数をとった CM 図を
色-等級図という。
CM 図の例の画像
6
2.距離を求める公式
等級の差から距離を求める場合、見かけの明るさと絶対等級と距離
の関係から以下の式を使い距離を求める。
m-M=5log(r/10)
m:天体の見かけの等級
M:天体の絶対等級
r:天体までの距離(pc)
上記の式を r=の式に直すと
r=10^((m-M+5)/5)
となる。
7
3. 絶対等級・見かけの等級
絶対等級と見かけの等級は散開星団の距離を求める場合、
重要になってくるものである。そのためここで紹介をして
おく。
・絶対等級
恒星の本当の明るさを比べるために、それぞれの恒星を
みな 10pc という距離を離れて見たとした時の明るさで比
べる。これを絶対等級という。
地球から見ると-27 等の太陽も、10pc 離れて見るとする
と 5 等級の明るさになる。つまり太陽の絶対等級は 5 であ
る。
・見かけの等級
肉眼で見た星の等級数を見かけの等級といい、別名実視
等級とも言う。
8
第一章 「研究作業」
1. 研究作業
観測
観測日時:2012/12/10
室温:3°
時間:19 時~22 時
湿度:21.1%
3 時間観測
focus:27.99
撮影枚数:M38 を各フィルターにつき 100 枚
フラットを各フィルターにつき 5 枚
観測機器:明星大学 40cm リッチクレチアン型反射望遠鏡
冷却 CCD カメラ
(ビットラン社製
型名
BN-52E)
フィルター:ジョンソンフィルターV、B
・実際に撮像した画像
9
1-1
B フィルター、V フィルターについて
CCD カメラで天体の特定の波長域の光を透過させるフ
ィルター。このフィルターを使うことで天体の光度が測定
できる。
B は青色光、V は緑色光(可視光)を透過する。
全部で 5 種類のフィルターがある。
U フィルター
紫色光
B フィルター
青色光
V フィルター
緑色光
R フィルター
赤色光
I フィルター
赤外光
300~410nm
350~550nm
480~650nm
550~850nm
700~1200nm
↑特定の波長域の表
10
2. 研究作業
画像処理
画像処理:M38 を各フィルターとわけて合成
ダーク、フラット補正なし
使ったソフト:マカリ
・合成後の画像
↑合成後 B 画像
11
↑合成後 V 画像
12
・測光作業
各フィルターの星を 100 個選択する
使ったソフト:マカリ
↑測光画像
測光をすることにより星の明るさの度合を数値として見
ることが出来る。それをカウント値といい、その値をもと
にして等級を調べることが出来る。
測光画像で選択したカウント値を次のページに乗せてお
く。
13
測光結果
M38 のカウント数
番号 Bのカウント数 Vのカウント数 番号 Bのカウント数 Vのカウント数
1
4275.95 8441.953125
51 1707.914063
2708.03125
2 3762.042857 6614.242188 52
1279.75 1458.976563
3 2074.265625 4206.890625
53 1892.952703 2934.507813
4 3659.492857 5728.585938
54 8911.892857 12358.03125
5 1246.428571 2146.007813 55
1400.25 2420.945313
6 6632.485714
9302.59375
56 4004.837838
5555.09375
7 2942.578571 5114.570313
57 2114.277027 3516.664063
8 1896.466216
2825.4375
58 5334.837838 7505.421875
9 4141.671429 5969.953125 59 7213.256757
11050.35
10
1572.5 2931.706897
60
12988.25 17315.66429
11 1914.429688 3159.171875
61 1799.926136 2904.071429
12
7721.05 11042.50781
62 3661.833333 6449.642857
13 29583.00714
38722.4375
63 9219.965909 14576.83571
14
789.21875 4095.655172
64 3367.945946 6190.046875
15 2873.567568 3999.585938
65 1385.640625
3094.8125
16 2183.523438 4193.335938
66 1492.757143 2634.953125
17 3954.735714
5277.25
67
5657.75 8894.078125
18 8005.857143 11008.39063
68 4251.801136 6964.953125
19 3011.114865 5353.882813
69 1845.021429 2749.014286
20 2974.140625
4673.84375
70
743.671875 1283.609375
21
2695.1
3859.15625
71 1511.484375 2200.657143
22 3075.971429 9933.039063
72 6293.418919 9447.265625
23 3008.721429 4917.398438
73 1410.685714
2188.6875
24 44182.39286 54122.39844
74 12371.13514 15817.94531
25 13890.96429 46500.54688
75 5948.952703
7560.1875
26 2876.978571 5021.898438
76 4409.263514 5889.234375
27 1171.663793 3827.226563
77 3106.371622 3928.367188
28 2612.492857 3062.140625
78
6452.5 8855.414063
29 10228.88514 14918.17969
79 2437.426136 5558.742188
30 8090.085714 11899.29688
80
547.5625
2106.59375
31 3620.614286 5178.765625
81 3342.057143 12843.73438
32 5191.709459
7832.03125
82 1626.977273 3115.054688
33 2441.142857
4257
83 1136.817568
1667.3125
34 2298.263514 3862.210938
84 3820.068182 5739.728571
35 1847.090909 3457.185714
85 2796.192857
4623.8125
36 11982.30405 15508.91406
86
2136.0625 3210.546875
37 3189.439189 5224.071429
87 1466.015625 3088.601563
38 2181.978571 3214.585938
88 769.4785714 2213.023438
39 1392.428571 1812.478571
89 1592.796875 5002.198276
40 1379.828125 2741.257813
90
2096.1
5257.4
41
1204.75 2075.285714
91
1217
3480.15
42 5062.121429 17385.45313
92
743.35
1475.05
43 3211.344595 6094.890625
93
1372.95
2793.55
44
3187.8
4995.75
94
918.95
1880.4
45 1670.828571
4573.3
95
1120.95
2416.25
46 2320.464286 3014.178571
96
1302.9
5108.45
47
1804.2 2390.342857 97
1230.45
2350.7
48 7370.965909 10370.56429
98
2114
3882.35
49 3993.666667 5549.364286
99
2852.85
5350.55
50 8327.869318 11557.06429 100
2107.2
3940.55
14
研究作業
計算処理
M38 の等級を求めるため、下の式に代入をする。
m=n-2.5log(Im/In)
m:M38 の等級
n:標準星の等級
Im:M38 の中の恒星のカウント数
In:標準星のカウント数
・標準星(比較星)
標準星の名前:BD+35
座標:05h 28m 44s
B 等級:11.04
V 等級:9.85
1125
+35°49’ 52”
←SIMBAD Astronomical Database より
←同上
B のカウント数:15945
←撮像した画像から測光
V のカウント数:56952
←同上
上記の標準星の値を式に代入し等級を計算し CM 図を作成
した。
15
計算結果
CM 図
距離の計算
CM 図上にあらわれる主系列星は同じ色指数によっては
等級に差がないので、等級に差が出た場合それは距離の差
によって明るさが異なって見えている。
m-M=5log(r/10)
16
距離の計算
観測結果
m-M を 9 等級と置いたとき
M38 までの距離
630pc
2053 光年
m-M を 12 等級と置いたとき
M38 までの距離
6309pc
20567 光年
となる。
二つを比較すると約 10 倍値が違う。
17
考察
・実際の M38 までの距離の値
実際の M38 までの距離は 4200
光年であり、パーセクに直すと
1288pc になる。
計算すると m-M は
10.5 にならなければならない。
(M38 星団までの距離 4200 光年
は Wikipedia で調べた値である
ため、今回の観測値が正確な値
とも考えられる。)
・なぜ観測値が異なったのか
M38 星団の画像を撮影した時に、M38 星団よりも手前の星
も撮影してしまい、その星ごと測光でカウント値を出して
計算をしたため、実際の値とは異なる結果が出てしまった
と考えられる。
18
参考書籍・文献
散開星団の距離を求める
04s1-066
堀川
明星大学卒業論文
順平
実習「散開星団までの距離を求めよう」
PAOFITS 教材
Teachers’ Guide
星図
など
19
謝辞
今回の研究にあたって、祖父江義明先生、小野寺幸子先生
には最後まで多くのご指導をいただきありがとうございま
した。
また、天体望遠鏡や冷却 CCD カメラなどの機材関係のご指
導をいただいた日比野由美先生、最初の研究課題から最後
までいろいろと研究作業の手助けをしてくれた津田裕也さ
ん、研究作業の助言などをしてくれた同研究室の皆さんに
も大変お世話になりました。
心から感謝し、お礼を申しあげます。
1 年間本当に有難うございました。
20
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