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事例Ⅲの出題特性

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事例Ⅲの出題特性
事例Ⅲの概要
3
事例Ⅲ
事例Ⅲの出題特性
主な学習事項
こ
の
テ
事例Ⅲの出題分析,事例Ⅲの出題特性
ー
マ
の
要
点
事例Ⅲは「事業機会」に着眼する
経営戦略面では、事例企業の今後の事業戦略は明確になっている場合が多いが、近年の出題の特徴
は、事業機会の的確な把握力が求められていることである。生産面では、一貫して、柔軟な生産体制
の構築が課題になっている。
1
出題分析
(1) 企業戦略・事業戦略
事例企業の今後の事業戦略(ビジネスモデル)は明確になっている(与件文に記述されている)
場合が多い。ただし、近年の出題の特徴は、事業機会の的確な把握力が求められていることであ
る。一見脅威と感じられる環境変化・顧客からの要請を事業機会と捉え、生産体制改革のトリガ
ーとすることができるかが重要である。また、グローバル化やOEM生産に関する出題が目立つ
ことにも留意しておきたい。
(2) 生産・技術戦略/管理
一貫して、柔軟な生産体制の構築が課題になっている。具体的には、QCDを中心とした工程
上の課題解決策が問われることが多い。最も生産事例らしい出題が見られる分野である。特に短
納期化対応が出題の基軸であるといってよい。また、生産計画についての主要な課題は、平準化
生産である。
(3) 情報戦略
必ず 1 題は出題される。製販情報の共有化といった情報システムの提案や、生産方式変更など
に伴う生産統制(進度・現品・余力管理)に関し、事例企業固有の管理項目を抽出することなど
を基軸としている。
2
出題特性
過去の事例Ⅲの出題内容は、新たなビジネスモデルや事業戦略のドメインや経営戦略に対応す
るための必要な生産・技術戦略の立案、適正な生産管理が問われている。
また、他の事例に比較して、事例Ⅲでは与件の「明示性」は高い(与件文にQCDの問題が事
象として記述してある)
。
45
13 年2次必須知識攻略講座
事例Ⅲの出題特性
<図表3-1-1 事例Ⅲの出題分析>
企業戦略・事業戦略
生産・技術戦略/管理
13
SWOT分析、コア・コンピタンス、 生産・技術戦略
(内製化の事業リスク)
、
年
ドメイン(独自分野、OEM供給)
14
SWOT分析、コア・コンピタンス、
年
ドメイン(市場分野の選択)
15
SWOT分析、コア・コンピタンス、 生産・技術戦略(生産能力の拡充、多
年
ドメイン(独自分野、高付加価値化)
16
年
(SWOT分析)
販売機能の整備
情報
短納期実現
生産・技術戦略(生産計画、工程改善) SFA
能工化)
生産・技術戦略(納期管理、資材調達
管理、外注管理)
顧客管理情報
製品情報
17
SWOT分析(市場環境の変化と独自 生産・技術戦略(QCD強化、製販統 製販情報の
年
技術)
、ドメイン(収益構造の見直し) 合、工場体質の改革)
18
年
SWOT分析(強み:顧客の分散化、
単一加工への特化による高生産性)
、ド
メイン(顧客・加工種の多様化)
生産・技術戦略(生産計画:柔軟な生
産体制の構築、技術開発体制)
共有化
生産の平準化
19
SWOT分析、ドメイン(既存顧客と 生産・技術戦略(生産計画:柔軟な生 製販情報の
年
の関係、新規事業開拓の是非)
20
SWOT分析、ドメイン(顧客・製品 生産・技術戦略(柔軟な生産体制の構 外注との情報
年
の多様化)
21
SWOT分析、ドメイン(OEM供給 生産・技術戦略(製品在庫管理、柔軟 生産方式と
年
のメリットと課題)
22
SWOT分析、ドメイン(顧客・製品 生産・技術戦略(柔軟な生産体制の構 顧客との情報
年
の多様化、海外進出戦略)
23
SWOT分析、ドメイン(新規事業展 生産・技術戦略(生産計画:柔軟な生 CAD/CAM
年
開の課題)
24
SWOT分析、ドメイン(新規事業展 生産・技術戦略(製品在庫管理、生産 生産方式と
年
開の課題)
産体制の構築)
築、技能承継)
な生産体制の構築)
築、コストダウン)
産体制の構築)
計画:柔軟な生産体制の構築)
46
共有化
共有化
情報
共有化
化
情報
事例Ⅲの概要
事例Ⅲ
事例別の特徴・経営課題
主な学習事項
こ
の
テ
経営課題把握のための2つのフレームワーク、3つの着眼事項
ー
マ
の
要
点
事例Ⅲの出題テーマは、柔軟な生産体制の構築
事例Ⅲの出題テーマは、現状および今後の事業展開に向けて、必要な生産・技術戦略を立案し、適
正な生産管理を行うことである。柔軟な生産体制の構築が主眼である。事例Ⅲでは、経営課題を把握
するに当たって考慮しなければならない2つのフレームワークと3つの着眼事項がある。
1
事例特有のテーマとフレームワーク
事例Ⅲの出題テーマは、現状および今後の事業展開に向けて、必要な生産・技術戦略を立案し、
適正な生産管理を行うことである。生産・技術戦略レベルでは、柔軟な生産体制の構築が出題テ
ーマである。具体的には、取扱製品(品種と量)の販売方法にマッチした生産方法(生産形態)
となっているか、マッチしていなければ生産プロセス(生産の基本機能:設計、調達、作業)の
どの機能が原因となり、QCD(需要の三要素:品質・原価・納期)のどの要素が問題として発
生しているか、需要予測に対して生産計画が実行できる3M(生産の構成要素:労働力、生産設
備、原材料)を確保しているか、などが過去の本試験で問われている。
<図表3-2-1 事例Ⅰ特有の戦略フローチャート>
経営理念・ビジョン
経営戦略
外
部
環
境
内
部
環
境
生産・技術戦略
生
産
形
態
生
産
基
本
機
能
生
産
構
成
要
素
組織編成・実行計画・生産管理
情報戦略(IT化)
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13 年2次必須知識攻略講座
事例別の特徴・経営課題(事例Ⅲ)
事例Ⅲでは、経営課題を把握するに当たって考慮しなければならない以下の2つのフレームワ
ーク(大枠の考え方)がある。
[1]
経営戦略(企業・事業戦略)と生産・技術戦略の関係
中小製造業の陥りやすいパターンとしては、時代の流れに伴う材料や設備、製品の変化がある
にも関わらず、従来型の生産形態であるがため、品質・価格・納期などに不都合が発生してくる
というケースが多い。
生産形態の選択と生産機能の流れの決定は、上位の経営戦略を受けた上での機能別戦略(=生
産戦略)における重要な意思決定である。生産の構成要素の3Mについては、組織・人事戦略や
資材購買方針、設備投資などの経営の重要な意思決定を含むものである。その企業の将来を支え
る製品の生産形態を決める時に、既存の生産設備に固守した生産形態を選択することは問題であ
る。新しい生産形態に合った生産工場を実現していくことがポイントとなる。
たとえ、生産工場の管理レベルの問題であっても、上位の意思決定を判断基準として固め、そ
こから管理レベルの詳細な生産管理手法に展開することが求められる。
<図表3-2-2 工場での経営課題のとらえ方>
企業の上位戦略
工場の生産形態の把握
生産機能の流れを掴む
生産の構成要素(3M)からの評価
生産の管理面(Q・C・D)からの評価
[2]
需要の3要素(品質・原価・納期)と生産の基本的機能の関係
製造業の問題解決の切り口は、需要の3要素(品質・原価・納期:生産管理の基本機能とも
いう)と生産の基本的機能(受注、設計、調達、生産、出荷)で構成されるマトリックスで示
される。事例問題を解くにあたっては、マトリックス上のどの部分の改善が必要かを見極める
ことがポイントである。
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<図表3-2-3 経営課題発見のマトリックス>
需要の3要素
Q:品質
C:原価
D:納期
2
受注
●
●
●
営業
販売
生産の基本機能
設計
調達
生産
●
●
●
●
●
●
●
●
●
研究開発
購買
加工
試作
外注
組立
出荷
●
●
●
保管
検査
経営課題(企業・事業の方向性)発見の切り口
事例Ⅲでは、経営課題を把握するに当たって考慮しなければならない以下の3つの着眼事項
がある。
[1] 現状や戦略的方向と生産形態の適・不適に着眼する
経営戦略を実現するためには、生産形態の選択は重要な意思決定であり、課題解決での方策
決定やその判断基準の根拠として常に意識しておく必要がある。複数の生産形態は、同じ生産
設備では両立しがたい面があり、どの生産形態を取っているかによって、管理方法や実際の生
産設備は、まるで異なってしまう。
(1) 受注面から見た生産形態
受 注 生 産
特 徴
課 題
見 込 生 産
■特殊仕様品で都度設計する
■規格品で設計や加工方法が決定済み
■個別の顧客対応に強み
■コスト、納期に強み
受注状況が不安定で、操業度(生産量) 生産量(在庫)と需要とのギャップによる
の変動が激しい
損失(営業機会、廃棄など)
着眼点
負荷の調整(生産統制)
需要予測の精度アップ
対 策
■生産能力に弾力性を与えるために、外 ■営業部のマーケティングを強化する
■生産リードタイムを短縮して、顧客ニー
注や臨時工を活用する
■部品の共通化(GT)により、部品を
見込生産化する
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ズの変化に対応しやすくする
13 年2次必須知識攻略講座
事例別の特徴・経営課題(事例Ⅲ)
(2) 生産量から見た生産形態
多種少量生産
少種多量生産
特 徴
受注生産に多い形態
見込み生産に多い形態
課 題
■段取替えが多く、稼働率が低い
■急な割込み受注に対応困難
■負荷の変化が激しく、操業度が低下し
やすい
■新しく不慣れな仕事が多く、不良が発
生しやすい
着眼点
負荷の調整(生産統制)
需要予測の精度アップ
対 策
■機械設備や治工具の工夫で、段取工数 ■見込み生産と同じ
を削減する
■その他、受注生産と同じ対策
(3) 仕事の流れから見た生産形態
個別生産
特 徴
多種少量生産に多い形態
連続生産
■少種多量生産に多い形態
ロット生産
個別生産と連続生産の
■作業の分業化、標準化、専用 中間的な生産
化に基づいた機械化、自動
化、ライン化で生産性が高い
課 題
■受注生産、多種少量生産と ■需要の多様化により製品の ■多種少量生産と同じ
同じ
種類が増加すると、設備費が
増加する。
■割込みの受注に対応すると、
工程が大きく混乱する
着眼点
負荷の調整(生産統制)
対 策
■多能工化による1個流し ■割込み品専用設備の設置
生産
生産形態の見直し
■割込み品対応の多能工設置
汎用性への対応
■受注生産、多種少量
生産と同じ
■受注生産、多種少量生産と
同じ
[2]
生産機能の流れに着眼する
生産システム(生産機能)は次のようなフローに表される。
この調達→生産→出荷の流れのなかでの生産の3MとQ・C・Dの位置付けの認識は重要であ
り、これは製造業の診断の着眼点(切り口)として非常に重要である。
50
<図表3-2-4 生産機能の流れ>
設計
生産の構成要素:3M
調達
労働力(Man)
生産設備(Machine)
原材料(Material)
フィード バック
生産管理 (一次管理)
生産
生産工程
Q:品質 (品質管理)
C:原価 (原価管理)
D:納期 (工程管理)
検出
出荷
製品
<生産形態と生産機能の流れ>
生産機能の流れは、次ページのように、生産形態によって異なる。個別受注生産などでは、生
産機能をさらに広くとらえて、
「受注→設計→調達→生産→出荷」とすれば、理解しやすくなる。
例えば個別受注生産の事例で、納期を最も短くする方策を検討する場合には、受注から設計段階
を含んだ出荷までの生産機能の流れの各段階について考察できるスキルが必要となる。生産工程
だけでなく、受注、設計の段階に踏み込んで検討しなくては解決できない事例もある。
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13 年2次必須知識攻略講座
事例別の特徴・経営課題(事例Ⅲ)
<個別受注生産の生産機能の流れ>
設計
受注
調達
生産
出荷
<経営課題>
設計の標準化、部品の共通化、段取の短縮、設備配置の見直し ⇒ 短納期化
<見込生産-連続生産の生産機能の流れ>
調達
設計
生産
受注
出荷
<経営課題>
需要予測の精度向上 ⇒ 販売機会ロスや在庫の削減
[3]
需要の三要素と「柔軟な生産体制の構築」に着眼する
事例Ⅲでは、QCDを中心とした工程上の課題解決策が問われることが多い。最も生産事例ら
しい出題が見られる分野である。特に短納期化対応が出題の基軸であるといってよい。
生産管理の基本機能はPQCDSME(生産性・品質・コスト・納期・安全性・モラール・環
境)である。特にQCD(品質・コスト・納期)が重要であるが、近年、生産性や環境の論点も
出題されるので、要注意である。
QCDについては、需要の三要素ともいわれるように、顧客ターゲットを設定する上でのキー
ワードになる。
Q(品質)
:クレームの発生
C(コスト)
:厳しいコストダウン要請
D(納期)
:短納期要請
上記のような、ターゲットが求めるQCDに対応し、生産体制の不備を是正することが基本で
あるが、D(納期)に対応しようとするとQ(品質)やC(コスト)に問題が発生するといった
ように、これらはお互いに密接な関係を持っている。中小製造業の機動性や柔軟性を武器に課題
解決策を考えなければならない。これが「柔軟な生産体制の構築」である。
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