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2013~15年度住宅着工戸数の見通し ~14年1-3月期は反動減が

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2013~15年度住宅着工戸数の見通し ~14年1-3月期は反動減が
Economic Trends
マクロ経済分析レポート
2013~15年度住宅着工戸数の見通し
発表日:2014年3月3日(月)
~14年1-3月期は反動減が顕在化。しかし、大崩れは避けられよう~
第一生命経済研究所 経済調査部
担当 エコノミスト 高橋 大輝
TEL:03-5221-4524
(要旨)
○先行きの住宅着工戸数は 2013 年度 98.7 万戸、2014 年度 89.4 万戸、2015 年度 86.7 万戸を予測する。10
-12 月期の住宅着工が予想対比で上振れたことを反映して、13 年度を上方修正した。もっとも、先行き
の見方に大きな変更はない。
○13 年度は消費税率引き上げ前の駆け込み需要に伴い、高い伸びになるものと見込まれる。一方、14 年度
はその反動減により落ち込みが避けられない。もっとも、住宅ローン減税の拡充や住まい給付金といっ
た負担軽減策などを背景に、1997 年増税時のように大きく崩れるとまではみていない。15 年度も8%か
ら 10%への消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動減によって、減少が見込まれる。ただし、国内
景気の回復に伴う雇用・所得の改善や金利・地価の先高観などが住宅取得マインドを後押しすること
で、年度終盤には持ち直しへ向かうと予想している。
○97 年増税時と今回の住宅着工の推移を比較すると、持家は住宅ローン減税制度の延長・拡充やすまい給
付金によって幾分駆け込みが抑制されていることが窺える。同制度が適用されない貸家では前回と同程
度のペースで駆け込みが発生している。分譲は、マンション販売の好調や在庫が過剰水準を下回る推移
となっていることなどから、強めの推移となっている。
○先行きの住宅着工戸数は 2013 年度 98.7 万戸、2014 年度 89.4 万戸、2015 年度 86.7 万戸を予想
先行きの住宅着工戸数を 2013 年度 98.7 万戸、14 年度 89.4 万戸、15 年度 86.7 万戸と予測する(資料1)。
10-12 月期の住宅着工が予想対比で上振れたことを反映して 13 年度を上方修正したが、先行きの見方に大
きな変更はない。なお、本見通しでは 15 年 10 月に8%から 10%への消費税率引き上げが行われることを想
定している。
2014 年1-3月期の着工は、消費税率引き上げ前の駆け込み需要の反動減に伴い減少するとみている。14
年度は、駆け込み需要の反動減が続くことや実質可
110
処分所得の減少などを背景に、落ち込みが避けられ
万戸
資料1.住宅着工戸数の推移
105
ないだろう。もっとも、住宅ローン減税の拡充や住
100
まい給付金といった負担軽減策などを背景に、1997
95
年増税時のように大きく崩れるとまではみていない。
90
また、14 年度後半は、15 年 10 月の消費税率引き上
85
げを睨んだ駆け込み需要が見込まれることなどから、
増加基調に転じるものとみている。
80
75
70
15 年度は8%から 10%への消費税率引き上げに伴
65
60
う駆け込み需要の反動減が予想されることから、減
1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4 1
少を見込んでいる。もっとも、年度終盤は国内景気
10
11
12
13
14
15
16
(出所)国土交通省、2014年1-3月期以降の見通しは第一生命経済研究所作成
(注)季節調整済年率換算値。
の回復に伴う雇用・所得環境の改善や金利・地価の
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
1
先高観などが住宅取得マインドを後押しすることで、持ち直しヘ向かうだろう。なお、消費税率 10%引き上
げ前の駆け込み需要は、8%引き上げ時に前倒しで住宅を購入している世帯も多いとみられることから比較
的小規模なものに留まると予想している。
○2014 年1月住宅着工は駆け込み需要の反動減が顕在化。前回との違いは?
2014 年1月の住宅着工戸数は季節調整済年率換算
資料2.住宅着工戸数の推移(季節調整済年率換算値、万戸)
値で 98.7 万戸となった(資料2)。消費税率引き上
着工戸数計(左軸)
貸家(右軸)
110
げ前の駆け込み需要の反動減が顕在化している。
持家(右軸)
分譲(右軸)
50
105
前回(1997 年)増税時と比較すると、持家の駆け
45
100
40
込み需要は、住宅ローン減税の拡充やすまい給付金
95
によって抑制されているものとみられる(資料3)。
90
35
85
貸家は、住宅ローン減税やすまい給付金による負
30
80
担軽減策が適用されないため1、駆け込みのペースは
25
75
20
前回増税時と似た推移となっている。分譲は、前回
70
増税時よりも強めの推移となっている。①前回増税
65
時と今回の在庫過剰感の違い、②マンション需要の
60
15
10
10
11
12
(出所)国土交通省「新設住宅着工統計」
高まりなどが背景にあるものとみられる。マンショ
13
14
ン販売をみると、前回、今回ともに駆け込みが発生している様子が窺える。しかし、前回増税時は販売の好
調に対して、在庫の取り崩しで対応していたとみられる(資料4)。今回は在庫が過剰水準を下回る推移と
なっていることから、分譲着工は前回よりも明確に駆け込みが発生したと推察される。また、消費税率引き
上げの影響がほとんどない2中古マンションの成約実績も堅調な推移を続けており、首都圏のマンション需要
が高まっている可能性がある(資料5、6)。
総じてみれば、持家の駆け込み需要が抑制されている一方、分譲が堅調に推移することで住宅着工は前回
増税時に近い動きとなっている。
資料3.前回増税時と今回の着工の推移
【全体】
【持家】
120
130
120
110
110
100
100
90
90
前回(1995=100)
80
前回(1995=100)
今回(2012=100)
今回(2012=100)
80
70
70
-13 -12 -11 -10 -9 -8 -7 -6 -5 -4 -3 -2 -1 0
1
2
3
4
5
-13 -12 -11 -10 -9 -8 -7 -6 -5 -4 -3 -2 -1 0
6
(四半期、増税までの期間)
1
2
3
4
5
6
(四半期、増税までの期間)
1
住宅ローン減税やすまい給付金の要件として、自ら居住している必要がある。
2
不動産会社が直接売主となる場合は消費税がかかるが、不動産会社が仲介する場合など、個人が売主の場合は消費税がかからない。ただし、
仲介手数料には消費税がかかる。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
2
【貸家】
【分譲】
130
130
120
120
110
110
100
100
90
90
前回(1995=100)
前回(1995=100)
今回(2012=100)
80
80
70
今回(2012=100)
70
-13 -12 -11 -10 -9 -8 -7 -6 -5 -4 -3 -2 -1 0
1
2
3
4
5
6
-13 -12 -11 -10 -9 -8 -7 -6 -5 -4 -3 -2 -1 0
(四半期、増税までの期間)
1
2
3
4
5
6
(四半期、増税までの期間)
(出所)国土交通省「住宅着工統計」
資料4.首都圏マンション全残戸数と販売戸数
20
(千戸)
(前年比、%)
18
【今回】
(千戸)
80
20
60
18
千
千
【97 年増税時】
全残戸数
15
販売戸数(右軸)
80
(前年比、%)
60
15
40
13
40
13
20
20
10
10
0
0
8
8
全残戸数
-20
5
3
0
95
96
97
-40
3
-60
0
98
-20
販売戸数(右軸)
5
-40
-60
12
13
14
15
(出所)不動産経済研究所「首都圏マンション市場動向」
資料5.首都圏中古マンション、中古戸建成約件数
資料6. 首都圏中古マンション価格
40
(万円)
2,700
30
135
2,650
中古マンション
130
2,600
中古戸建
20
(2005年1月=100)
2,550
125
10
2,500
2,450
0
120
2,400
-10
首都圏中古マンション価格
2,350
-20
115
首都圏中古マンション価格指数(右軸)
2,300
-30
2,250
11
12
(出所)東日本不動産流通機構
13
14
110
09
10
11
12
13
14
(出所)東日本不動産流通機構、リクルート住まい研究所
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
3
○14 年1-3月期以降は減少傾向での推移に
10-12 月期まで駆け込み需要が発生したことで、当面は反動による減少が避けられないだろう。住宅着工
に先行する住宅メーカーの受注をみると、経過措置3の締め切りであった 2013 年9月末に駆け込み契約が集
中し、10 月以降の受注は反動減が発生している様子が窺える(資料7)。受注から着工までのタイムラグを
勘案すると、今後の住宅着工は減少する可能性が高い。好調であったマンション販売においても、首都圏の
前年比伸び幅は大きく縮小し、近畿圏では前年比マイナスに転じている(資料8)。こうした動きに鑑みる
と、駆け込み需要の反動減は避けられず、14 年1-3月期以降の住宅着工は減少傾向での推移となろう。も
っとも、住宅ローン減税の拡充やすまい給付金などの負担緩和策が下支えとなることなどを背景に、住宅着
工が前回増税時のように大崩れすることは避けられるとみている。
資料7.住宅メーカーの受注速報(前年比、%)
資料8.首都圏・近畿圏マンション販売(前年比、%)
100
80
A社
B社
C社
D社
E社
F社
60
40
首都圏
近畿圏
80
60
40
20
20
0
0
-20
-20
-40
-40
4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1
12
13
-60
14
10
11
12
13
14
(注1)住宅分類や数値に含んでいる項目(戸建、分譲など)については
メーカー間で差異がある (注2)金額ベース
(出所)住宅メーカーホームページより第一生命経済研究所作成
(出所)不動産経済研究所「首都圏・近畿圏マンション市場動向」
○15 年 10 月の消費税率引き上げ前の駆け込み需要、国内景気の改善などが追い風に
14 年度後半は①消費税率 10%引き上げに伴う駆け込み需要、②国内景気の回復を背景とした雇用・所得環
境の改善、③金利・地価の先高感、④東北3県の着工増加などを背景に増加基調に転じていくことが見込ま
れる。①については、10%への消費税率引き上げ時も経過措置4の実施が予定されており、2015 年3月までに
駆け込み契約が集中すると考えられる。契約から着工までのタイムラグを考慮すれば、住宅着工は 15 年度初
めまで駆け込み需要が発生するだろう。なお、消費税率 10%引き上げ時の駆け込み需要およびその反動は、
8%引き上げ時に前倒しで住宅を購入している世帯も多いとみられることなどから、比較的小規模なものに
留まる見込みだ。また、④については、規模は大きくはないものの長期に亘って住宅着工を押し上げよう
(資料 10)。
15 年度は、①の反動によって落ち込みが避けられない。しかし、雇用の改善や所得の持ち直し、金利や地
価の先高感が引き続き住宅取得マインドの後押しとなろう。こうした要因を背景に、15 年度終盤には住宅着
工は持ち直しへ向かうとみている。
3
2013 年 9 月末までに契約した住宅は、引き渡しが 2014 年4月以降となる場合でも引き上げ前税率が適用された。
4
2015 年3月末までに契約した住宅は、引き渡しが 2015 年 10 月以降となる場合でも引き上げ前税率が適用される。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
4
資料9.完全失業率と住宅着工
40
資料 10.東北3県の住宅着工戸数(季節調整済年率換算値)
0.00 7
(万戸)
(逆目盛、%)
35
1.00
30
2.00
25
3.00
20
4.00
15
5.00
10
6.00
(万戸)
6
東北3県合計
岩手
宮城
福島
5
4
3
2
住宅着工戸数(季調値)
完全失業率(右軸)
5
0
1
7.00
0
8.00
00
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
09
13
(出所)総務省、国土交通省
10
11
12
13
14
(注)季節調整は当社。
(出所)国土交通省
○住宅取得コストの上昇、労働力のボトルネックに注意
見通しにおける下振れリスクとしては、①長期金利の動向、②建築費の動向、③労働力のボトルネックな
どが挙げられる。長期金利や建築費の急上昇は、住宅取得コストの上昇に繋がり、消費者マインドへ悪影響
を与える。足元で金利は低位安定しているものの、建築費は円安や需要拡大に伴う建設資材価格の上昇など
を背景に上昇が続いている(資料 11)。建築費の上昇は、住宅着工の減少に伴い徐々に落ち着いてくるとみ
ているが動向に注意が必要だ。
また、建設技能労働者の不足感も強含んでいる(資料 12)。不足感は住宅着工の減少に伴い弱まっていく
ものとみられるが、14 年2月に成立し補正予算などによって公共事業は今後も高水準での推移が見込まれて
おり、労働力のボトルネックが住宅着工を抑制する可能性がある。
資料 11.建築費指数(東京、2005=100)
資料 12.建設技能労働者過不足率
4
115
3
住宅(木造)
2
集合住宅(鉄骨鉄筋コンクリート造)
110
↑不足
1
集合住宅(鉄筋コンクリート造)
0
集合住宅(鉄骨造)
-1
105
-2
-3
↓過剰
8職種計
6職種計
-4
100
95
10
11
12
(出所)建設物価調査会「建築費指数」
13
14
08
09
10
11
12
13
14
(注1)過不足率は{(確保したかったができなかった労働者数-確保したが過剰と
なった労働者数)/(確保している労働者数+確保したかったができなかった労働者
数)}×100
(注2)6職種は型枠工(土木、建築)、左官、とび工、鉄筋工(土木、建築)。8職種は
電工、配管工を加えたもの。
(出所)国土交通省「建設労働需給調査」
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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