Comments
Description
Transcript
氏と育ち
2011/6/25 人間はどの程度 “生まれつきか?” 生まれつきか? ミネソタ研究と呼ばれる知能と遺伝の相関 を調べる研究に参加した双子の一組 人間の心にはある程度 遺伝的要素が関連する 人間の心に遺伝の影響があることは,実証 的に確立された知見と考えてよい 性格 性格・知能などの多くの心理的側面で関連 知能などの多くの心理的側面で関連 ただし,遺伝の影響とは,決して決定的なも のではない 学習する能力,柔軟に変化していく能力その ものも遺伝的かもしれない 吉林省長春市で2003年、一卵性双生児の 兄弟が同じく一卵性双生児の姉妹と結婚 氏と育ちの論争 氏と育ちの違いは微妙 心理学の中で最も暑い議論が戦わされてき た問題のひとつ 人間はどの程度まで遺伝に規定される?ど の程度まで環境に規定される? 多くの場合,「育ちだけ」「生まれだけ」という 極論同士の論争になってきた 「氏」と思われていたもののかなりの部分が,育ち で説明できる 胎児は,胎内にいる時点で親の発している言語などを 意外と学習している. 意外と学習している 胎内での栄養状態がその後の発育に,心的な側面でも 大きく影響を与えている可能性 1 2011/6/25 氏は育ちを通して 氏と育ちの違いも微妙(2) 育ちの中にも,実は「氏」の影響であるところ が少なくない From “Nature vs Nurture” to “Nature via Nurture” 子供の性格と親の育て方の関係:普通,親の育 他の環境と比較しなければいけない て方に大きく依存すると考えられる 方に大きく依存すると考えられる しかし,最初にどのような育て方をするかは,実 は最初に子供がどのような気質を見せたのかに よるところが多い 同じ環境でも,様々な”氏” 知能・性格といった人間の行動的側面と,遺伝的影 響との関連,あるいは行動的側面を遺伝的影響と 環境的影響に区分して分析する 環境:共有環境と非共有環境 共有環境:双生児の中で共有される環境,家庭 と比較しなければなら ない 主要な分析手段:双生児法 行動遺伝学(Behavioral Genetics) どのような遺伝を持っているのかは,そもそも ある程度育っていかないと分からない 一卵性双生児と二卵性双生児を比較する 一卵性双生児の遺伝的要因は同じであると考え られるので 一卵性双生児の間の差は環境要因 られるので, 卵性双生児の間の差は環境要因 一卵性と二卵性の差を比較すれば,遺伝的要因 の影響力を分析できる 環境など 非共有環境:双生児の中で共有されない環境, 友達関係など 1972~73年度に東京大学教育学部付属中学 に入学した二卵性双生児の知能の相関 1972~73年度に東京大学教育学部付属中学 に入学した一卵性双生児の知能の相関 2 2011/6/25 様々な身体的・心的特徴に対する 遺伝と環境の影響 遺伝と環境の影響 先のような形で遺伝要因と環境要因の影響 を分離すると,遺伝要因の影響は無視できな 形 存在する事 分 る い形で存在する事が分かる 知能,性格 遺伝の影響が相対的に小さいものもある 味覚・ユーモア感覚 遺伝率 共有環境 非共有環境 身長 0.66 0.24 0.10 体重 0.74 0.06 0.20 知能 0 52 0.52 0 34 0.34 0 14 0.14 学業成績 0.38 0.31 0.31 創造性 0.22 0.39 0.39 外向性 0.49 0.02 0.49 職業興味 0.48 0.01 0.51 神経質 0.41 0.07 0.52 宗教性 0.10 0.62 0.28 安藤(2001)より IQと年齢の関係 年をとるほどに,遺伝の影響が強くなってくる 乳幼児の頃は20~40%であるが,成人期に なると50%前後 そして老年期になると60~ なると50%前後,そして老年期になると60 80%になる 大人:自分の意思で環境を選ぶ事が出来る, 環境がもはや「後天的」なものにならない 11歳のときに受けたのと同じ知能調査を受けるた めに66年後に集ってきた,スコットランド知的能力 検査1932の参加者.場所はアバディーンにある ミュージックホールで,時は1998年6月1日 フリン効果 IQの成績が,世代ごとに大体5くらい上昇して いく現象 知能指数が純粋に遺伝的なものではなく,文 知能指数が純粋に遺伝的なものではなく 文 化的な学習からも影響を受けている 80歳の双子たちの知能と遺伝率の関 係:MZが一卵性,DZが二卵性 (Mclearn et al, 1997 in Science より) 3