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『M・Y式鑑定評価基準』 総論第 1 章 新基準改正後

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『M・Y式鑑定評価基準』 総論第 1 章 新基準改正後
『M・Y式鑑定評価基準』
総論第 1 章
1
新基準改正後
不動産の鑑定評価に関する基本的考察
①不動産の鑑定評価とは「どのようなこと」であるか、②それは「何故(なにゆえ)に必要」であるか、③われわれの社会
C
においてそれはどのような「役割」を果たすものであるか、そして④この役割の具体的な担当者である不動産鑑定士及び不動産
鑑定士補(以下「不動産鑑定士等」という)に対して「要請」されるものは何であるか、不動産鑑定士等は、まず、これらにつ
いて十分に理解し、体得するところがなければならない。
一
土地の特性
不動産とその価格
不動産とは、通常、土地とその定着物をいう。(物を積載する働き、植物を生育する働き)
土地はその持つ有用性の故にすべての国民の生活と活動とに欠くことのできない基盤である。
SS
そして、この土地を我々人間が各般の目的のために
どれ位役立っているかによって価格が高くなる
「どのように利用しているか」という土地と人間との関係は、
不動産のあり方すなわち、
「不動産がどのように構成され、どのように貢献しているか」
ということに具体的に現れる。
この不動産のあり方は、
自然的、②
A
類型(有形的・権利)
種別(用途)
↓人から土地へ
↓土地から人へ
①
社会的、経済的及び行政的な要因の相互作用によって決定されるとともに
経済価値の本質 を決定づけている。
一方、この不動産のあり方は、
③
その不動産の経済価値を具体的に表している 価格 を 選択の主要な指標 として
決定されている。
不動産の価格は、一般に、
(1)その不動産に対してわれわれが認める効用 (不動産がわれわれの欲求を充足し得る能力(有用性))
SS
(2)その不動産の相対的稀少性( 不動産の存在量が人間の欲求との相対的関係において有限であり、
その不動産を手に入れる為には何らかの経済的犠牲を払わなければならないこと)
(3)その不動産に対する有効需要
④
( 購買力の裏付けを持った買い手が存在すること。)
の三者の相関結合によって生ずる 不動産の経済価値 を、貨幣額 をもって表示したものである。
A
そして、この 不動産の経済価値 は、基本的にはこれら三者を動かす
自然的、社会的、経済的及び行政的な ⑤要因の相互作用によって決定される。
不動産の価格と
⑥
これらの要因との関係は、
不動産の価格が、
これらの要因の影響の下にあると同時に
選択指標として
これらの要因に影響を与える
という ニ面性 を持つものである。
③主要な指標
②決定づけている
三者
不動産のあり方
≒利用≒用途
①
⑤
動かす
1(効・稀・有)
自・社・経・行
相互作用
要因
で決定される
④
相関結合
決定される
⑤相互作用
⑥二面性
経済価値
④
=
価格
二
不動産とその価格の特徴
<土地の特性>
どれ位役立っているかによって価格が異なる。
「不動産が国民の生活と活動に組み込まれどのように貢献しているか」は
SS
具体的な価格として現れるものであるが、
土地は他の一般の諸財と異なって次のような特性を持っている。
(1) 自然的特性として、
(土地それ自体に内在する固有の特性)
① 地理的位置の固定性、
② 不動性(非移動性)
、
固定していて動かないから永遠に続くそして増えなくて個性的
③ 永続性(不変性)、
④ 不増性、
SS
⑤ 個別性(非同質性、非代替性)等を有し、
固定的であって硬直的である。
(2) 人文的特性として、
(土地に対して我々が種々の働きかけをする場合において、
我々と土地との関係として生じてくる特性)
① 用途の多様性(用途の競合、転換及び併存の可能性)
、
② 併合及び分割の可能性、
③ 社会的及び経済的
A
位置の可変性等を有し、
可変的であって伸縮的である。
<個別の不動産の特性>
↓前提
...
不動産は、この土地のもつ諸特性に照応する特定の 自然的条件及び人文的条件を与件として
利用され、その社会的及び経済的な有用性を
発揮するものである。
そして、これらの諸条件の変化に伴って、その利用形態並びにその社会的及び経済的な有用性は
変化する。
不動産の地域性
≒用途≒不動産のあり方≒有形的利用・権利関係の態様≒有用性
不動産は、また、その自然的条件及び人文的条件の全部又は一部を共通にすることによって、
他の不動産とともにある地域を構成し、
その地域の
構成分子としてその地域との間に、依存、補完
その地域内の他の構成分子である
不動産の
不動産との間に
等の関係に
協働、代替、競争等の関係にたち、
これらの関係を通じてその社会的及び経済的な有用性を発揮するものである。
特徴
及び
→用途・区分・種別
このような地域には、その規模、構成の内容、機能等に従って各種のものが認められるが、
地域の特性
B
そのいずれもが、不動産の集合 という意味において、個別の不動産の場合と同様に、
...
特定の 自然的条件及び人文的条件との関係を前提とする 利用のあり方の同一性
関東平野
自
都道府県
経
を基準として理解されるものであって、
..
他の地域と区別されるべき 特性をそれぞれ有するとともに、
◇◇商店街
他の地域との間に
相互関係にたち、
この相互関係を通じて、その社会的及び経済的
2
位置 を占めるものである
<元本果実関係に着目し
た評価手法>
A
<不動産の価格の特徴>
収益還元法
このような不動産の特徴により、不動産の 価格 についても、
積算法
他の一般の諸財(工業製品等) の 価格 と異なって、
利回り法
およそ次のような特徴を指摘することができる。
交換を前提としない特殊価格
に対応する経済価値もある
...
(1) 不動産の 経済価値 は、一般に、 交換の対価である 価格 として表示されるとともに、
その 用益の対価である 賃料 として表示される。
そして、この価格と賃料との間には、
いわゆる元本と果実との間に認められる正の相関関係(正の相関性)を認めることができる。
<不動産の 価格 の定義>
不動産の価格は不動産が物理的、機能的及び経済的に消滅するまでの全期間 にわたって、
A
不動産を使用し、又は収益することが出来ることを基礎として生ずる経済価値を
貨幣額をもって表示したものである。
<不動産の 賃料 の定義>
不動産の賃料は上記期間のうちの 一部の期間 について、
不動産の賃貸借契約
又は 地上権若しくは地役権の設定契約に基づき、
不動産を使用し、又は収益することが出来ることを基礎として生ずる経済価値を
貨幣額で表示したもの(純賃料)を主体とするものである。
権利の態様
→類型→価格
(2)不動産の価格(又は賃料)は、
用途の多様性、分割の可能性より
その不動産に関する所有権、賃借権等の 権利の対価又は経済的利益の対価であり、また、
B
二つ以上の権利利益が同一の不動産の上に存する場合には、
.....
それぞれの 権利利益について、その価格(又は賃料)が形成され得る。
(影響及ぼし合う!)
(3) 動産の属する 地域 は固定的なものではなくて、
利用形態が
経済価値を
←永続性・用途の多様性より
常に拡大縮小、集中拡散、発展衰退等の 変化の過程 にあるものであるから、
「不動産の利用形態が最適なものであるかどうか」
、
「仮に現在最適なものであっても、時の経過に伴ってこれを持続できるかどうか」、
決める
これらは常に検討されなければならない。
B
したがって、不動産の価格(又は賃料)は、
通常、過去と将来とにわたる長期的な考慮の下に形成される。
←永続性があるから
今日の価格(又は賃料)は、昨日の展開であり、明日を反映するものであって
常に 変化の過程 にあるものである。
→変動の原則、価格時点
3
SS
...
(4)不動産の現実の 取引価格等は、
取引等の必要に応じて 個別的に形成されるのが通常 であり、
.........
しかもそれは
個別的な事情に左右されがちのもの であって、
このような 取引価格等 から不動産の 適正な価格 を見出すことは
→そこで鑑定士が成り代わる必要
一般の人には非常に困難である。
したがって、不動産の 適正な価格 については
専門家としての不動産鑑定士等の鑑定評価活動 が必要となるものである。
土地の特性、
不動産の特徴、
三
価格の特徴
SS
不動産の鑑定評価
このように一般の諸財と異なる不動産についてその 適正な価格 を求めるためには、
.........
鑑定評価の活動に依存せざるを得ないこととなる。
定義1
SS
不動産の鑑定評価は、その対象である不動産の経済価値 を
判定 し、
これを貨幣額をもって 表示 することである。
それは、この社会における一連の価格秩序の中で、
SS
「その不動産の価格及び賃料がどのような所に位するか」
を指摘することであって、
C
(1)鑑定評価の対象となる不動産の的確な認識 の上に
的
認
不動産の
(2)必要とする関連資料を十分に 収集 して、これを 整理 し、
収
整
鑑定評価
(3)不動産の価格を形成する要因及び不動産の価格に関する諸原則
要 諸
の可能性
についての 十分な理解 のもとに、
....
(4)鑑定評価の 手法を駆使 して、その間に、
手 駆
(5)既に収集し、整理されている関連諸資料を 具体的に分析 して、
関
要
対象不動産に及ぼす自然的、社会的、経済的及び行政的な要因の影響を判断 し, 到
貨
①
(6)対象不動産の経済価値に関する最終判断に到達し、
これを貨幣額をもって表示するものである。
4
SS
この判断の当否は、これら各段階のそれぞれについての
不動産鑑定士等の能力の如何
不動産の
及びその能力の行使の誠実さの如何
に係るものであり、
鑑定評価
また、必要な関連諸資料の収集整理の適否 及びこれら諸資料の分析解釈の練達の程度
の可能性
に依存するものである。
②
したがって、鑑定評価は、 高度な知識 と 豊富な経験 及び 的確な判断力 を持ち、さらに、
総合的 に発揮できる 練達堪能な専門家 によってなされるとき、
これらが 有機的 かつ
初めて
合理的 であって、 客観的 に
論証できるものとなるのである。
定義2
不動産の鑑定評価とは、
...
現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で
...
形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格(正常価格)を、
SS
不動産鑑定士等が的確に把握する作業に代表されるように
練達堪能な専門家によって初めて可能な仕事である
から、このような意味において、
定義 3
↓資料に基づく
不動産の鑑定評価とは、不動産の価格に関する専門家の判断 であり、
意見 であるといってよいだろう。
それはまた、この社会における一連の価格秩序のなかで、
SS
対象不動産の価格の占める
適正なあり所を指摘することであるから、
その社会的公共的意義は極めて大きいといわなければならない。
関連表現
(要説)
四
個人の幸福も社会の成長、発展及び公共の福祉も、
不動産のあり方に依存しているものであることを考えるとき、
...
鑑定評価の社会的公共的意義は極めて大きいといわなければならない。
不動産鑑定士等の責務
土地は、
A
土地基本法に定める土地についての基本理念(適正な土地の確保、適正な地価の形成等)
に即して利用及び取引が行われるべきであり、
特に 投機的取引の対象とされてはならない ものである。
5
不動産鑑定士等は、このような土地についての基本的な認識に立って
不動産の鑑定評価を行わなければならない。
1
不動産鑑定士等は、不動産の鑑定評価を担当する者として、
十分に能力のある 専門家としての地位 を不動産の鑑定評価に関する法律によって認められ、
付与されるものである。
A
したがって、不動産鑑定士等は、不動産の鑑定評価の社会的公共的意義を理解し、
その責務を自覚し、
的確かつ誠実な鑑定評価活動の実践をもって、
社会一般の信頼と期待に報いなければならない。
そのためには、まず、不動産鑑定士等は、同法に規定されているとおり、良心に従い、
誠実に不動産の鑑定評価を行い、
B
........
専門職業家としての社会的信用を傷つけるような行為をしてはならないとともに、
正当な理由がなくて、その職務上取り扱ったことについて知り得た秘密を
.......
他に漏らしてはならないことはいうまでもなく、
さらに次に述べる事項を遵守して 資質の向上 に努めなければならない。
(1) 高度の知識と豊富な経験と的確な判断力とが有機的に統一されて、
...
初めて的確な鑑定評価が可能となるのであるから、
不断の勉強と研鑽 とによってこれを 体得し、
鑑定評価の 進歩改善 に 努力 すること。
(2)依頼者に対して鑑定評価の 結果 を 分かり易く誠実に説明を
行い得るようにするとともに、
社会一般に対して、実践活動をもって、
不動産の鑑定評価及びその制度に関する 理解を深める ことにより、
B
不動産の鑑定評価
に対する 信頼を高める よう努めること。
(3)不動産の鑑定評価に当たっては、
自己又は関係人の利害の有無その他いかなる理由にかかわらず、
公平妥当な態度 を 保持 すること。
(4) 不動産の鑑定評価に当たっては、
専門職業家としての注意 を払わなければならないこと。
(5) 自己の能力の限度 を超えていると思われる不動産の鑑定評価を引き受け、
又は縁故若しくは特別の利害関係を有する場合等、
公平な鑑定評価 を 害する恐れのあるときは、
..........
原則として不動産の鑑定評価を 引き受けてはならない こと。
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