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講師作成PP(必要な方は各自プリントアウトしてご持参下さい)修正版

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講師作成PP(必要な方は各自プリントアウトしてご持参下さい)修正版
デキるグローバルビジネスパーソンになるための財務塾2013
「M&Aは価値を創造するのか」
ファイナンスに過度に期待するのはやめよう!
2013年7月9日
インサイトフィナンシャル株式会社
代表取締役 手島直樹
1
本日のテーマ
企業価値創造経営に関する私の見解
M&Aの根拠
M&Aのトレンド
M&Aの契約に関する理論
PMI(Post Merger Integration)
ケーススタディ:武田薬品
ケーススタディ:日本電産
2
企業価値創造経営の一般的なイメージ
企業価値創造のためのよくある6つの方針
ROE
目標
株主還元
IR活動
成長
戦略
社外
取締役
ストック
オプション
3
私の企業価値創造経営のイメージ
企業価値創造のための6つ柱
優秀な
経営者
優秀な
社員
優れた商品
・サービス
管理会計
パートナー
株主
盤石な
財務状況
人材と彼らが生み出す商品・サービスこそが企業価値創造の源泉であり、ファイナンス
機能は彼らが能力を出せる環境を築くことが役割だと考えます。
4
M&Aに関する私の見解(1/2)
私の見解
会社は買ってはいけない。売り手になれ。
理論
・売上シナジーやコスト削減シナジーにより、1+1>2となる
・市場の最初の反応がM&Aの結果を正確に予測する(株価が下落すると失敗する可能性が高い)
現実
・NPVの計算でプレミアムを高く見積もり過ぎ、「高値づかみ」で企業価値を破壊
・多額の手元資金と円高による「成り金」型M&Aで基準が甘くなる
・PMI(買収後の統合)がうまく行かない
・M&Aの実績で経営者になった人間はほとんどおらず、M&Aに関しては“新入社員”と変わらない
・発表翌日には株価が下落している(市場は失敗を予測しており、この予測は正しい)
・M&Aの発表後の株価下落を真摯に受け入れない経営者がいる
・M&A投資枠の設定、M&A専門家の採用、M&A部隊の創設などM&Aが目的化している
5
M&Aに関する私の見解(2/2)
あるべきアプローチ
・M&Aには特殊な能力が必要だと認めて、今後は実施しない
・不要な事業をオークションで値段を吊り上げて売却する(売り手に回る)
・どうしても実施したい場合は、失敗しても影響の小さい小型案件からスタートする
・PMIの人材を育成する
6
バフェットに聞いてみましょう
・(買収で)CEOは教育を受けるが、株主が学費を払う
・他の企業では買収は、役員がインベストメントバンカーとオークションプロセスで行う。バンカーの
Bookはスーパーマンの漫画のようだ。競合他社をしのぎ、収益も素早く成長する。またかなり先の予
想まで細かく行っている。バンカーは自分の会社の予想はできないと言うはずだが。
・仮にシナジーがあったとしても払い過ぎだったり、シナジーがイリュージョンであることがある
・買収は非買収先企業の株主には大当たりとなり、買収企業の経営者の収入とステータスを上げる。
投資銀行、他のプロフェッショナルもぼろ儲けだ。しかし、買収企業の株主の富は大きく破壊される。
・(余剰現金がある時)CEOは戦略スタッフ、コンサルタント、投資銀行に買収は意味があるかを聞く。
これは5万ドルのカーペットが必要かどうかインテリアデコレーターに尋ねるようなものだ。
7
本日のテーマ
企業価値創造経営に関する私の見解
M&Aの根拠
M&Aのトレンド
M&Aの契約に関する理論
PMI(Post Merger Integration)
ケーススタディ:武田薬品
ケーススタディ:日本電産
8
M&Aの根拠(1/2)
■成長の加速
内部成長の機会が限られる成熟産業において広く見られるM&Aのタイプである。“成長
を買う”M&Aと言える。
■ユニークな能力へのアクセス
研究開発や知的財産等社内に不足する能力にアクセスするためのM&Aである。“能力
を買う”M&Aと言える。
■分散
コングロマリットのようにさまざまな事業を保有することにより、収益を安定させ、企業の
リスクを分散するためのM&Aである。
9
M&Aの根拠(2/2)
■企業再生
業績の低迷する企業を安値で買収し、経営改革を実行することにより企業の価値を高
める。
■海外進出
海外進出への足がかりをつかむためのM&Aである。現地企業とのM&Aにより、成長の
加速やユニークな能力へのアクセスが可能になる。
「時間を買う」という良さげな理由であらゆるM&Aが正当化されている気がします。数年
後に今のM&Aはバブルだった、と認識することになるのではないかと思います。
10
本日のテーマ
企業価値創造経営に関する私の見解
M&Aの根拠
M&Aのトレンド
M&Aの契約に関する理論
PMI(Post Merger Integration)
ケーススタディ:武田薬品
ケーススタディ:日本電産
11
M&Aのトレンド(件数ベース)
国内企業が海外企業を買収する(In-Out)ケースが増えており、全体の4分の1を占めています。
(件)
(一橋ビジネスレビュー60巻4号)
12
M&Aのトレンド(金額ベース)
2012年には金額ベースで、日本企業による海外企業の買収が半分を占めています。
(兆円)
(一橋ビジネスレビュー60巻4号)
13
大型クロスボーダーM&A
2012年
・ソフトバンクがスプリントネクステル買収を発表(約1.6兆円)
・ダイキン工業がグッドマングローバルグループ買収を発表(約2900億円)
・豊田通商がCFAO買収を発表(約1900億円)
・旭化成がゾールメディカル買収を発表(約1750億円)、など
2011年
・武田薬品工業がナイコメッド買収を発表(約1.1兆円)
・テルモがカリディアンBCT買収を発表(約4200億円)
・東京海上HDがデルファイフィナンシャルグループ買収を発表(約2100億円)、など
2010年
・アステラス製薬がOSIファーマスーティカル買収を発表(約3600億円)
・日本電信電話がディメンションデータホールディングス買収を発表(約2400億円)
・資生堂がベアエッセンシャル買収を発表(約1400億円)、など
14
クロスボーダーM&Aはなぜ増えているのか
日本の経済成長の鈍化
中国、東南アジア、インドなど高い経済成長が見込まれる地域に進出
円高
円ベースで換算すると、海外企業の価値が安くなるため、日本企業に有利
豊富な手元現金
12年度末の上場企業の手元資金は3月期決算企業で66兆円と過去最高。実質無借金の上場
企業は52%となっている。
有利な資金調達
低金利での資金調達が可能であり、また銀行も融資に積極的になるケースが増えている
カネ余りによる“成り金型M&A” は、規律なきショッピングになり、企業価値を破壊する
可能性が高いです。
15
2013年1月から6月までのM&A状況
今年1~6月に公表された日本企業関連のM&A(合併・買収)の総額が前年同期からほぼ半
減したことが2日、M&A助言会社、レコフの集計でわかった。昨年多かった日本企業による海
外企業への大型M&Aが、円安の進行により円換算で必要となる資金が膨らみ、手控えられた
ことも背景にあるとみられる。事業譲渡や資本参加を含む1~6月の日本企業関連M&Aは、件
数こそ951件と前年同期を3・0%上回ったが、総額は47・7%減の2兆9042億円にとどまった。
16
ケーススタディ:飲料メーカーの買収バトル(1/7)
キリンホールディングス
アジア
・サンミゲルビールの株式取得(2009年:48.3%、1300億円)
・フレイザー・アンド・ニーヴへの出資(2010年:14.7%、850億円)
・華潤創業との飲料合弁会社設立(2011年:332億円)
・インターフード(2011年:80.4%、金額は非開示)
オセアニア
・ナショナルフーズの買収(2007年:100%、2940億円)
・デアリーファーマーズの買収(2008年:100%、840億円)
・ライオンネイサン完全子会社化(2009年:100%、2300億円)
ブラジル
・スキンカリオール(2011年:100%、3000億円)
2012年10月にM&Aバトルからの撤退を宣言。その後株価上昇。
17
ケーススタディ:飲料メーカーの買収バトル(2/7)
アサヒグループHD
オセアニア
・キャドバリー・シュウェップスのシュウェップス事業の買収(2009年:100%、760億円)
・フレイバード・ビバレッジズ・グループ・ホールディングス(2011年:100%、976億円)
・チャーリーズ・グループ(2011年:100%、80億円)
・P&Nビバレッジズの水・果汁飲料事業の買収(2011年:100%、160億円)
アジア
・青島ビール(2009年:19.9%、590億円)
・ペルマニス社(2011年:100%、200億円)
18
ケーススタディ:飲料メーカーの買収バトル(3/7)
サントリーHD
オセアニア
・フルコア・ビバレッジズ・グループ・ホールディングス(2008年:100%、750億円)
欧州
・オレンジーナ・シュウェップス・グループ(2009年:100%、3000億円)
・サニー・ディライト・ビバレッジ(オハイオ州)の欧州と北アフリカでのチルド(冷蔵)果汁など
の販売権を買収(2011年:100%、数十億億円)
アジア
・ペプシコ・ベトナム飲料事業子会社への出資(2012年:51%、金額非開示)
先週サントリー食品インターナショナルが上場しましたが、上場及び負債による資金調達
(5千から6千億円)により買収を加速する予定。買収候補は15~30社とのこと。
19
ケーススタディ:飲料メーカーの買収バトル(4/7)
過去10年間の株価パフォーマンスは、アサヒがキリンを大幅にアウトパフォームしています。キリン
のM&Aが業績改善につながっていないからだと思われます。
【過去10年の株価パフォーマンス】
アサヒ
キリン
20
ケーススタディ:飲料メーカーの買収バトル(5/7)
【キリンの主要財務指標の推移】
21
ケーススタディ:飲料メーカーの買収バトル(6/7)
【キリンとアサヒのROA比較】
22
ケーススタディ:飲料メーカーの買収バトル(7/7)
キリンは2012年10月にM&Aバトル撤退宣言をしてから、株価がアサヒをアウトパフォームしていま
す。企業価値破壊が終わる、という株式市場の期待によるものと思われます。
【過去1年の株価パフォーマンス】
キリン
アサヒ
23
本日のテーマ
企業価値創造経営に関する私の見解
M&Aの根拠
M&Aのトレンド
M&Aの契約に関する理論
PMI(Post Merger Integration)
ケーススタディ:武田薬品
ケーススタディ:日本電産
24
実証研究:重要な二つの事実
①M&Aは価値を創造するのか?
・売り手と買い手を合算する(マクロで見る)と企業価値を創造している
・売り手の株主はリターンを得ることが多い
・買い手の株主は「高値づかみ」で損失を被ることが多い
②マーケットの反応は何を意味するのか?
・株価が上昇すれば、M&Aが成功する可能性が高く、下落すれば失敗する可能性が高
い
(Deals from hell by Robert Bruner)
25
補足:高値づかみのメカニズム
プレミアムと期待シナジーの関係
2億円
5億円
15億円
プレミアム
10億円
10億円
3億円
買収先の価値
期待シナジー 買い手にとっての価値
買収価格
買い手へのリターン
(時価総額の上昇)
「期待シナジー<プレミアム」であれば、買収の発表後に株価が下落するのは当然です
26
ケーススタディ:旭化成(1/2)
米ゾールメディカル社(NASDAQ上場企業)の買収(2012年3月)
・買収総額:22.1億ドル(約1,812億円)
・プレミアム:29.6%(536億円)
・市場の反応:518円から490円に5.4%下落(TOPIXは0.005%上昇)。時価総額は393億円減少。
・社長のコメント:「株価の反応は今回の買収で増配や自社株買いなどの短期的な株主配分が遠の
いたことに対する株主の意見ではないかと考えている。同時に買収が長期的な企業価値の向上に
寄与するとみているはずだ。」
27
ケーススタディ:旭化成(2/2)
【買収発表後の株価パフォーマンス】
28
ケーススタディ:川崎重工と三井造船の統合(1/2)
【経営統合ニュース後の株価パフォーマンス】
三井
TOPIX
川﨑
29
ケーススタディ:川崎重工と三井造船の統合(2/2)
【経営統合白紙後の株価パフォーマンス】
川﨑
TOPIX
三井
30
ケーススタディ:ソフトバンク
【スプリント買収(約1.8兆円)発表後の株価パフォーマンス】
31
成功するM&A:戦略(1/2)
①事業の関連性が高いこと
多角化型のM&Aには特殊スキルが必要とされるため、プライベートエクイティファンドや
バークシャーハザウェイのような組織にしかできない
②戦略的リストラクチャリングは価値を創造する
パフォーマンスの悪い事業の売却は、フォーカスの改善により価値を創造する(味の素に
よるカルピスのアサヒビールに対する売却)
③信用性が高い戦略的なシナジーがあること
コスト削減によるシナジーはマーケットの信用性が高いが、売上拡大、財務シナジーは信
用性が低い。実際に売上拡大はうまく行かないケースが多い。
(Deals from hell by Robert Bruner)
32
補足:シナジーのタイプ
研究開発
・ダブるプロジェクトの中止
・人材のオーバーラップの解消
・ターゲットの技術を生かした新製品開発
購買
・共同購買
・製品の標準化
製造
・過剰キャパシティの解消
・ベストプラクティスの共有
販売・マーケティング ・クロスセル
・共通チャネルの利用
・ベストプラクティスの共有
流通
・倉庫やトラックの統合
アドミニストレーション ・ファイナンスやアカウンティング機能の規模の経済
・戦略機能の統合
・シナジー算出には、業務に詳しい専門家の参画が望ましい
・売上シナジーの目標は楽観過ぎのために実現不可能なことが多い
33
成功するM&A :戦略(2/2)
④マーケットシェアの拡大による効率性の改善が望めること
コスト削減シナジーが期待できるため、マーケットシェアの拡大は価値を創造する
⑤バリュー企業によるM&Aであること
グロース企業は高い株価を利用した株式交換によるM&Aが多く、価値を破壊することが
多い(ITバブル時のネット企業による株式交換によるM&A)
⑥余剰現金だけでなく、負債も利用していること
多額の余剰現金を持つ企業によるM&Aは価値を破壊することが多い(飲料業界のケー
ス)
(Deals from hell by Robert Bruner)
34
成功するM&A :投資機会
①ターゲットのリストラクチャリングが可能
買収後にターゲットの業績を改善できるチャンスが大きければ価値が創造される(ルノー
による日産の買収)
②非上場企業のM&Aであること
上場企業の買収よりもかなりディスカウントされるため価値の創造がしやすい。一方、上
場企業のオークションによる買収はプレミアムが上昇し、企業価値を創造しにくい。
③クロスボーダーのM&Aはターゲットの株主にはプラス
買い手は海外企業には高い金額を払う傾向があり、価値を破壊することが多い。
④コールドマーケットであること
ホットマーケットでは買収金額が上昇し、価値を破壊することが多い。また、前述の通り、
割高な株式を利用する買収も価値を破壊することが多い。
(Deals from hell by Robert Bruner)
35
成功するM&A :ディールデザイン
①株式交換ではなく、キャッシュによるM&Aであること
買い手は自社株が割高と判断する時に株式を利用するため、M&Aのアナウンスの際に
株価が下落することが多い。ターゲットに対するリターンもキャッシュの方が高い。
②アーンアウトがあること
ターゲットの業績に合わせて支払額が決まるアーンアウトでは、買い手の価値が上がる
ことが多い。ターゲットの経営者のインセンティブとなるため。通常、M&Aは前金制なの
で、買い手が損をすることが多い。
③カラーがあること
カラーとは、株式交換のディールにおいて、買い手の株価が変動した場合に条件を変更
するオプションのこと。買い手に自信がなければ通常カラーは利用されない。
④Merger of equalであること
プレミアムが少なく、ターゲットの社員のモチベーションも高いため、価値を生むことが多
い。
(Deals from hell by Robert Bruner)
36
補足:キャッシュか株式か?
キャッシュによるM&Aの方がマーケットの反応が良い理由
・買い手の株主がM&Aの失敗や高値づかみの全リスクを負う
株式交換の場合は、ターゲットの株主も買い手の株式を持つことになるため、リスクを分
け合うことになる。よって成功する可能性が高いと考えれば、アップサイドを取るために
キャッシュを使うことになる。
・株式交換よりも高値づかみの可能性が減る
ホットマーケットの時は自社株も高いため、規律が緩み高値づかみの可能性が高まる
が、キャッシュを使う場合は一定の規律があるため、その可能性は低くなる。
・負債を利用できれば、さらに経営者の自信がマーケットに伝わる
負債を利用するとM&A失敗による影響が大きいため、自信がないと負債は利用しない。
37
成功するM&A :ガバナンス
①経営陣や社員が株式を保有すること
LBOによる業績改善に明らかなように、経営陣や社員が株式を保有することはインセン
ティブを高め、価値を創造することが多い。
(Deals from hell by Robert Bruner)
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本日のテーマ
企業価値創造経営に関する私の見解
M&Aの根拠
M&Aのトレンド
M&Aの契約に関する理論
PMI(Post Merger Integration)
ケーススタディ:武田薬品
ケーススタディ:日本電産
39
ケーススタディ:JTの事業
国内たばこ事業
日本において59.6%のシェア
海外たばこ事業
JTインターナショナルは、「ウィンストン」「キャメル」「メビウス(マイルドセブン)」「ベンソン&ヘッジ
ス」「シルクカット」「LD」「ソブラニー」「グラマー」からなるグローバル・フラッグシップ・ブランド
(GFB)を持つ
医薬事業
1987年より医薬事業に進出。鳥居薬品(株)をグループ会社に持つ。
飲料事業
「Roots(ルーツ)」「桃の天然水」など
加工食品事業
テーブルマーク、富士食品、サンジェルマン、ケイエス冷凍食品をグループ会社に持つ
40
ケーススタディ: JTのM&A実績
2012年
■ベルギーGryson NV
金額:475 百万ユーロ(約510 億円)
目的:RYO/MYO マーケットにおける事業基盤を更に強化する
■エジプトNakhla
金額:2011 年EBITDA に対する倍率は1 桁台後半
目的:中東及びアフリカ市場における地理的な事業基盤を強固にし
2008年
■富士食品
目的:調味料事業の中核企業の一つと位置づけ、綜合食品メーカーとしての競争優位性の確立
2007年
■加ト吉
金額: 102,143 百万円
目的:冷凍食品業界のリーダーとしての基盤を確固たるものにする
41
ケーススタディ: JTのM&A実績
2006年
■英Gallaher Group PLC
金額:75億ポンド:プレミアムは約27%
目的:グローバルたばこ会社としての立場をより強固にする
1999年
■オランダRJ Reynolds International
金額:約9,400億円
目的:グローバルたばこ会社としての立場をより強固にする
(これら以外にも実績あり)
42
ケーススタディ:JTの統合の10原則
1.シングルカンパニー・シングルマネジメント
2.出自にかかわらず全社員に対して公正で公平な扱い
3.迅速な意思決定-80/20ルール
4.できるだけ簡素に
5.事業計画の達成を最優先
6.現状ビジネスの混乱を最低限に
7.シナジー効果を体系的に捉える
8.独立した統合管理体制-結果責任はExcomメンバーに
9.社内のみで統合をやり遂げる
10.統合計画決定は100日間以内に
43
ケーススタディ:総資産
M&Aに伴い総資産は拡大しています。
(兆円)
44
ケーススタディ:株価パフォーマンス
過去10年の株価パフォーマンスはTOPIXを大幅にオーバーパフォームしています。一連のM&A
が価値を創造したことを証明しています。
45
ケーススタディ:JTのM&A成功要因
①数多くのM&A実績から身に付けた専門スキル
シナジーの算出など専門スキルを要求される業務も投資銀行に任せず、社内で行える
能力の高さ
②投資銀行を業者として利用できている
コアな役割は自社で実施し、買収の手続きや資金調達の面に投資銀行の活用を限定
③優れたPMI
非買収企業の経営陣の活用、権限委譲、また企業文化の融合などをうまく行い、シナ
ジーの実現につなげている
(一橋ビジネスレビュー60巻1号及び4号)
46
本日のテーマ
企業価値創造経営に関する私の見解
M&Aの根拠
M&Aのトレンド
M&Aの契約に関する理論
PMI(Post Merger Integration)
ケーススタディ:武田薬品
ケーススタディ:日本電産
47
武田薬品の戦略の変化
長谷川閑史社長(2003年6月~)
・自前主義→グローバルでは“時間を買う”ためにM&Aを積極的に活用
・無借金経営→大規模M&Aに負債を活用
48
武田薬品の「M&Aの5+1条件」
・タケダイズムに象徴される企業文化や経営スタイルと共通するマネジメントスタイル・
フィロソフィーを持つ
・パイプラインの強化・拡充につながる
・欧州などの当社のプレゼンスが相対的に弱い地域での基盤強化につながる
・人材面でのシナジー効果がある
・買収後の大幅なリストラを必要としない
・(+株主に納得いただける価格)
49
武田薬品のM&A実績(2012年~2013年)
2013年
■米Inviragen, Inc
金額:契約一時金として35百万米ドル+最大215百万米ドル(業績連動)
目的:ワクチンの開発パイプラインを拡充する
2012年
■米Envoy Therapeutics Inc
金額:最大で140百万米ドル
目的:疾患に関与する細胞に発現する新規創薬標的の同定を可能にするbacTRAP技術、研究材
料やデータベース、解析技術などを獲得
■米LigoCyte Pharmaceuticals, Inc.
金額:契約一時金として60百万米ドル+業績連動
目的:ワクチン事業の強化
■米URL Pharma, Inc
金額:800百万米ドル
目的:米国事業基盤と痛風領域フランチャイズの強化
50
武田薬品のM&A実績(2008年~2011年)
2011年
■米Intellikine, Inc
金額:一時金として190百万米ドル+最大120百万米ドル(業績連動)
目的:癌領域のさらなる強化
■スイスNycomed A/S
金額:96億ユーロ
目的:新興国市場に本格参入する
2009年
■米IDM Pharma
金額:75百万ドル
目的:非転移性骨肉腫の新規治療剤MEPACT
2008年
■米Millennium Pharma
金額:88億ドル(52.9%のプレミアムを加算した1株25ドル)
目的:がん分野の研究開発力を強化するため
(これら以外にも実績あり)
51
財務分析:総資産
M&Aの影響により、2004年度の2.5兆円から2012年度には4兆円にまで総資産が拡大。特に、
2011年度にナイコメッド社を負債で買収した影響が大きくなっています。
(百万円)
ナイコメッド買収
52
財務分析:売上
2004年度の1.1兆円から2013年度には1.6兆円に売上は拡大する見込み。
(百万円)
53
財務分析:総資産回転率
総資産回転率(売上÷総資産)は下降傾向にあり(特に2011年度のナイコメッド買収以降)、増加し
た資産が売上増加につながっていないことが示されています。
ナイコメッド買収
54
財務分析:キャッシュフロー総資産比率
総資産に対するCFO(営業活動によるキャッシュフロー)の比率は2009年度をピークに下落傾向に
あります。
(M&Aによるのれん償却などの影響を除くためにCFOを利用)
55
財務分析:ネットキャッシュ
有価証券と現預金の合計額から負債額を差し引いたネットキャッシュは、2005年度の1.9兆円から
2011年度にはマイナス870億円にまで減少しました。
(百万円)
ミレニアム買収
ナイコメッド買収
56
財務分析:自己資本比率
自己資本比率は、かつては8割程度であったが、現在では5割程度となっている。ナイコメッドの買
収資金を負債で調達したことが原因です。
ミレニアム買収
ナイコメッド買収
57
財務分析:配当
配当は180円を維持する見込みだが、当期純利益が現状傾向にあるため、配当性向が極めて高
い状況となっています。
(円)
58
財務分析:株式総数
株式発行による資金調達はせず、現金による買収を行っていることが分かります。また、2008年度
に自己株式の消却を行っており、株式総数が減少しています。
(千株)
59
過去10年間の株価パフォーマンス
長谷川社長就任後10年間の株価パフォーマンスは、TOPIXを大幅にアンダーパフォームしていま
す。
60
過去2年間の株価パフォーマンス
ナイコメッド買収後の株価パフォーマンスは、TOPIXをアンダーパフォームしていますが、前期の決
算発表翌日の株価の大幅な下落が原因となっています。
61
大型買収に対する株式市場の反応
買収発表後3日間の株価のリターンの合計から、TOPIXのリターンの合計を差し引く(つまり、市場
修正ベース)と、以下の通り。
8800億円
1兆1400億円
640億円
62
武田薬品のM&Aはどう評価すべきか(1/2)
■結論
武田薬品はTOPIXを大幅に下回っているため、過去10年間企業価値を創造したとは言えない
■疑問
・M&Aが企業価値を破壊したのか?
・武田自体の業績の悪化(主力製品の特許切れ)をM&Aが補えなかったのか?
■言えること
プラス
・M&Aを実施していなければ、損益計算書はもっと悪かったはず
・大型買収の中には企業価値創造が期待されているものもある
マイナス
・BSの拡大にキャッシュフローが追いついてきていない(効率性の悪化)
・レバレッジが高まっている(ある程度ならば、必ずしもマイナスとも限らないが)
63
武田薬品のM&Aはどう評価すべきか(2/2)
■私の疑問
・会社を買ってまで収益を良くする必要があるのか?成長は、上場企業の義務なのか、経営者の執
着に過ぎないのか?
・M&Aを実施しなかったケースでは、株価はもっと低くなっていたのだろうか?
・M&Aを手元現金の範囲に抑えていたら、株価はどうなっていたのだろうか?
64
本日のテーマ
企業価値創造経営に関する私の見解
M&Aの根拠
M&Aのトレンド
M&Aの契約に関する理論
PMI(Post Merger Integration)
ケーススタディ:武田薬品
ケーススタディ:日本電産
65
永守社長の戦略
30社を超える企業買収で進化した究極の“勝利の方程式”
・回るもの、動くものに特化
・相手の技術力を見極める「目利き」である(技術力があれば再建可能)
・買収した企業に対する基本方針は(1)当社と合併しない(2)経営は生え抜きの人間に任せる(3)社員
は減らさない
・「海外企業を買収する際には、経営者の力を見極めて対象を絞る。海外企業を日本人がかじ取り
するのは困難で、旧来の経営者に任せざるを得ないからだ。直接に会って経営方針を聞き、信頼で
きるかどうかを判断する。」
・「野球で例えればイチロー選手だ。小さな買収を重ね、ヒット、ヒットでつなぐ。私だってできればホー
ムラン(大型買収)を打ちたいが、身の丈というものがある」
・「為替が円高に動くたびにM&Aブームは起きる。だが、買収後にうまくいったケースが少ないのは
よく知られている通りだ。登山に例えれば、 M&Aは契約の時点で2合目しか登っていない。残りの8
合分は企業文化の違いを擦り合わせる『PMI』という手間のかかる作業で、これがまた難しい」
・PMIに関しては日本電産イズムを理解した少数精鋭を送り込み、短期間に完了する
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さすが創業経営者
コミットメント
・買収先の個人筆頭株主になる(銀行から個人で100億程度の借入)
・再建までの期間を二年と想定し、この間は子会社からは給与は一切受け取らない
ハードワーク
元旦の午前中を除いて、三百六十五日働いている。夏休みはない。朝六時五十分には一番乗りで
会社に出勤し、夜は九時や十時まで働くのは当たり前。
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ケーススタディ:日本電産(2/3)
【主要財務諸表の推移】
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過去10年間の株価パフォーマンス
【過去10年の株価パフォーマンス】
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ご清聴ありがとうございました
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