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南アフリカの商業的トウモロコシ栽培における組み換え遺伝子

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南アフリカの商業的トウモロコシ栽培における組み換え遺伝子
南アフリカの商業的トウモロコシ栽培における組み換え遺伝子の流れ
Prof. Chris Viljoen(Prof. クリス・ビルジェン)
Free State University, South Africa(南アフリカ・自由国立大学)
背景と目的
南アフリカは、アフリカで遺伝子組み換え(GM)作物の栽培を導入している国の一つである。GM
トウモロコシの第1世代は、1997年以降、南アフリカにおいて商業的に栽培されている(農学部、2005)。
2008年に南アフリカは、ワタ、大豆、黄白トウモロコシを含めたGM生産に関して、世界第8位になっ
た(James、2009)。GM作物から非GM作物への遺伝子流動は、次のような結果をもたらしているもの
と思われる。Bt作物の標的昆虫における耐性の発生。在来種への悪影響(汚染)。穀物生産物の加工お
よびばら荷市場の喪失。実験的、工業的、製薬的GM作物による食物連鎖への悪影響(汚染)。このため、
他のGM作物生産国と同様に、GMの圃場試験や共生のために、隔離距離を設けるなどの方法によって、
混合(紛れ込み)を最小にしたり阻止したりする考えをとらざるを得なくなっている(Huffman、2004、
Moschini、2006)。その先の考えとしては、製薬、栄養改善、バイオ燃料などの分野を含むGM作物の
専門家が、近い将来現実のものとなることを期待するというものである。抑制的使用に始まり環境への
放出に至るまでずっと、さまざまな方法で、遺伝子流動を最小にすることが、重要である。これまでに、
さまざまな環境条件下での圃場試験計画において、トウモロコシの受粉による交雑が距離と共にどのよ
うに変わるかの研究が報告されている(Aylor
Stamp、2007;Burris、2001;Byrne
et
al、1998;Henry
al、2004;Paterniani
et
and
et
Fromhertz、2003;Della
al、2003;Jemison
and
al、2003;Bannert
and
Stort、1974;Stevens
and
Porta
Vayda、2001;Luna
et
et
et
al、2008;Garcia
al、2001;Ma
et
al、2004)。しかし、これらの試験は、商
業規模の農地ではなく、小面積の圃場で行なわれるのが普通であった。その上、花粉によるトウモロコ
シの交雑を最小にするために求められる充分な隔離距離というものは、目的によって厳格さが異なるが、
それらを考慮したうえで、特別な措置を講じて行なわれた研究は、非常に少なかった。たとえば、遺伝
子の混合(紛れ込み)に対する抵抗力のちがいの研究のためには、バイオ燃料のために遺伝子操作された
トウモロコシの実際の生産に比較して、ずっと狭い圃場試験が適用されている。また、南アフリカには、
トウモロコシの花粉の広がりと交雑の関係に関する公表されたデータがないので、監督官たちは、必ず
しも南アフリカに適用できるわけではないデータを手に入れて、裁定の基礎としなければならない。
2005年から2007年にかけて実施されたこの研究の目的は、南アフリカの商業的栽培条件下での、花粉
によるトウモロコシの交雑の広がり具合を決定するということであったが、これにより、GM作物の圃
場試験のやり方に規制を加えるという影響を与えることができている。
材料と方法
圃場試験では、中央のGM黄トウモロコシ(0.0576ha)のまわりに非GMの白トウモロコシ(13.76ha)
を植えた。2つの圃場は地理学的に異なる地域にあり、2シーズンにわたり、周囲の商業的トウモロコシ
栽培とは時期的に独立に行なわれた。GMトウモロコシと非GMトウモロコシの花粉による交雑は、圃
場を16方位に区分して、中心から100メートルまでは2メートルごとに、その後は300メートルまで10メ
ートルごとに区切って、表現型で判断された。花粉は、花期のあいだに4風向で捕集され、PCRを用い
て遺伝子型で調べられた。花期の花粉数は、交雑花粉の百分率同様、天候のデータで比較された。その
データは対数変換され、平均の花粉交雑率と高い交雑率とが比較された。
結果と考察
風のデータ、花粉の量、花粉による交雑の間には、総合的な一致があった。しかし、風のデータと花
粉の量だけからでは、花粉による交雑の方角的広がりが説明できないことは明らかである。渦巻状の風
とそのほかの生物的要員が、この不一致に関係していると思われる。最高の花粉交雑は54%∼82%であ
るが、これは花粉供与体から2メートルのところで起こり、20∼25メートルの間で急激に減少した。こ
れは他の研究結果と一致している(Henry
al、2001;Ma
et
et
al、2003;Jemison
and
Vayda、2001;Luna
et
al、2004)。興味深いのは、パーセンテージは低いものの、花粉による交雑が、最
も遠いサンプル地点までずっと続いて観測されたことである。花粉交雑の平均パーセンテージの対数と
距離とには、高い相関関係があった(R2乗=0.97)。距離に沿った花粉交雑の対数変換によれば、最小
化は、1.0%以下∼0.1%は50メートル、0.1%以下∼0.01%は159メートル、0.01%以下∼0.001%は501
メートルで充分である。しかし、平均花粉交雑値を用いるときは、花粉交雑を起こす潜在能力が過小評
価されるだろうと考えることが重要である。この仮定を試すために、我々は、距離に沿った高い率の花
粉交雑について、対数変換を行なった。距離と花粉交雑の高い値とには、高い相関関係(R2乗=0.95)
があったということに注目することは興味深い。これらの数値に基づけば、花粉交雑の最小レベルを確
実にする理論的な隔離距離は、1.0%以下∼0.1%は135メートル、0.1%以下∼0.01%は503メートル、
0.01%∼0.001%は1.8Km であった。しかしそのような厳格な隔離距離というものは、実際に適用され
ることがない。特に、紛れ込みの最小値について、異なる数値が求められる場合にそうである。そこで
われわれは、要求される最も厳格な隔離距離の半径内のGMトウモロコシ花粉源を考慮して、時期と隔
離距離の関係に注目すべきであると提案する。われわれはまた、距離に沿った、つまり、試験栽培が行
なわれているさまざまな地点に沿った花粉交雑パーセンテージにおける図形的シフトも検討した。それ
によれば、距離に沿った花粉交雑パーセンテージにおけるシフトは、花粉交雑の高数値の平均値比較に
似ている。花粉量、環境、花粉交雑の間の不一致を考慮して、花粉交雑の高い数値と比較した平均値比
較について考えるのと同様に、花粉量、環境、そして生殖的生理的性質が、花粉交雑を決定する因子で
あるとわれわれは考えている。
これらのデータに基づけば、各種の閾値レベルにおいて花粉交雑を最小にするためには、次のような
条件で行なうのがよいと思われる。
圃 場 試 験 の 場 合 :非交雑(0%)から検出不可能レベル(0.01%∼0.001%)までに最小化するために
は、隔離距離は少なくとも1.87Km必要である。これを実験期間内に実施するのは困難であるが、
以下のことを考慮して、空間的隔離と時間的隔離の組み合わせで実験を行なうのがよいだろう。
・
最も近いトウモロコシ畑まで、最短で503メートルの距離をとって、4週間栽培する。
・ 最も近いトウモロコシ畑まで、最短で1.87キロメートルの距離をとって2週間栽培する。
GM種子生産:種子生成の期間に、不法行為が積み重ねられる事態が拡大するのを阻止するために、圃
場試験に対して適切な勧告をすることが必要である。
輸出目的の非GM種子生産:非GM種子の輸出が可能になるためには、圃場試験のデータが、GMが検
出されなかった、と請合うことが必要になる。
非GMの生産:非GM生産のために求められる基準によって、以下の措置をとることができる。
・基準値1%:最低限の隔離距離として、135メートルが適用されなければならない。現実の期間内に
これを実行するのは困難と思われるが、代わりに次のことを考慮して、距離と時期との組み合わせ
による隔離方法が可能である。
・最も近いトウモロコシ畑まで最短で36メートルの距離をとって、4週間の時間的隔離を施す。
・最も近いトウモロコシ畑まで最短で135メートルの距離をとって、2週間の時間的隔離を施す。
・基準値0.1%:最低限の隔離距離として、503メートルが適用されなければならない。現実の期間内
にこれを実行するのは困難と思われるが、代わりに次のことを考慮して、距離と時期との組み合わ
せによる距離方法が可能である。
・最も近いトウモロコシ畑まで最短で135メートルの距離をとって、4週間の時間的隔離を施す。
・最も近いトウモロコシ畑まで最短で503メートルの距離をとって、2週間の時間的隔離を施す。
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