...

記事(当所仮訳:日文)

by user

on
Category: Documents
6

views

Report

Comments

Transcript

記事(当所仮訳:日文)
古い価値を
価値を切り崩し、優等生ブランド
優等生ブランドにならないことが
ブランドにならないことが逆境
にならないことが逆境に
逆境に勝つ方法
突き進む! 新しい日本
しい日本
日本の 20 年に亘る不景気を克服し、驚異的な高度成長の伝説を作ったパワーとは?そ
れは反抗する勇気にあった!先日本紙記者が逆境の中でも成長を遂げている日本企業を
取材し、見つけた答えだ。見事窮地を脱出させた実力者はみな、大胆に産業秩序を破壊
し、伝統的な日本の性格を覆す、経済学者シュンペーターが提唱する「破壊式イノベー
ション」の実践者だった。
彼らは人とは違うことをし、人とは違う道を行く。この反抗パワーがゼロ成長の日本
市場の呪詛を撃破したばかりか、企業の経営理念を刷新しながら成長拡大を続けており、
さらに日本を変える新興勢力へと成長している。
混乱し、膠着しきっている今の世界経済の低迷状態は、20 年前に日本が冬の時代に入
った時期を彷彿とさせる。日本企業はその現実を拒絶し、景気回復を待ち望み、その後、
絶望に陥っていたが、今、大改革を起こす新たなパワーが出現し始めた。
低成長の環境に瀕している台湾企業は、この日本を手本に、混乱し、先の見えない局面
を早期に脱するための戦略を練り直すべきである。
文/陳彦淳
新興破壊勢力が日本を変える!
日本の不景気はすでに 20 年近く続き、未だに好転の兆しは見えてこない。少子高齢化
が市場規模をさらに萎縮させ、多くの企業や民衆が「市場ゼロ成長」の現実に意気消沈
している中、従来の企業文化を覆す反抗パワーが急速に台頭してきている。新たな企業
経営思想によって、緊密で固執した日本の社会構造と価値感を根底から破壊し、企業の
業績を高成長に導いたことで、小さな野火が広野を焼くように徐々にブームとなり、日
本を変える新勢力になりつつある。
日本の不景気の深刻さは小売業市場を見ればわかる。20 年前の日本の小売業のトップ
10 は、ほとんどが高級品を販売する百貨店業が占めていたが、10 年前からスーパーに移
行し、今はコンビニエンスストアがメインとなっている。商業発展研究院副研究員の張
子方は、百貨店が日本の消費力をもっともよく示しているという。2005 年には 8 兆台湾
元だった市場が、今年は 6 兆台湾元足らずという予想になっており、人口構造の変化だ
けでなく、消費力の衰退も繁栄していると指摘する。
日本の百貨店業界に詳しい太平洋 SOGO 百貨店総経理の李光栄によると、25 年前に彼
が日本の百貨店で購入したスーツは 5 万円で、それよりいいブランドなら 8 万円ほどだ
ったが、今同じ商品の価格は 3 万円まで下がっているという。
「これは百貨店業にとって
大きな挑戦です。以前 5 万円だったスーツは 10 着売って 50 万円になったが、今は 3 万
円のものを 17 着売ってやっと同じ儲けになります。しかし問題は、需要が 70%も増加
してはいないという点にあります。
」
日本の内需市場の低迷不振により、海外派遣社員の給与も年々下降している。日本の
某大手公告代理店に勤める中間管理職社員は、日本の国内市場はますます小さくなり、
国外販売も近年の大幅な円高により競争力に欠け、
「若者は将来が見えず、韓国に負けた
と感じ、内心、屈辱感に満ち、将来進むべき方向も見失っている。市場はよどんだ水溜
りのように低迷している」と言う。しかし、本誌記者は先日、この過酷な環境にありな
がらも成長している日本企業を取材した結果、伝統的な日本とは異なる新興勢力が起こ
りつつあることを発見した。彼らは経済学者のヨーゼフ・シュンペーターが提唱する「破
壊式イノベーション」の実践者であり、日本経済の希望である。
日本の最大のファッション通販サイト ZOZOTOWN の創業者である前澤友作氏は 36
歳で 10 億ドルの富を築き、日本人最年少の富豪となった。取材時にもカジュアルな服装
で、自分のことは自分でやるという、従来の日本企業には見られないタイプのこの男が、
企業を高成長に導き続けている。
日本の新しい成長パワーの田中良和(左)
、孫正義(中央)、柳井正(写真右の右端)
優等生ブランド
優等生ブランドには
ブランドにはならない
にはならない!
ならない!
ネットの
出現が
変化を
ネット
の出現
が変化
を呼び起こした
高校を卒業しただけの前澤だが、小さいときから敷かれたレールを歩むような優等生
ではなかった。よく連絡帳に「落ち着きがない」との評価を書かれたり、家庭科の授業
に出たくないために学校にある全てのミシンを動かなくする方法を考えたこともあると
いう。
成人した前澤は、事業経営において大切なのは、高度な経営テクニックではなく、い
かにして社員が楽しく幸せになるかだと考え、
「理想と自分の好きなことを結びつけるこ
と」の方が「高い給料をもらうこと」よりも追い求める価値のあるものだと強調した。
注目すべきは、前澤と同じように、56 億ドルの収入で日本人富豪にランクインしている
楽天の三木谷浩史社長と日本の不動産サイトホームズの井上高志社長もまた、この「利
他主義」を強力に主張している点にある。
台湾で「インターネットのゴッドファーザー」と呼ばれる詹宏志によると、インター
ネット事業は新興のものであり、世界各地で成功しているネット事業の経営者はみな奔
放な性格と破壊性を有しており、トレンドを主導することのできる勢いがあり、以前の
日本にはあまり見られなかった能力を発揮できるという。例えば、日本のインターネッ
ト初代富豪の孫正義による核廃絶等の大胆な発言も、従来の日本商社の大物にはあり得
なかったことだ。
詹宏志は、かつてライブドアの創業者である堀江隆文を訪問したことを例に挙げた。
当時、堀江は話しながらインターネットで詹宏志の履歴や談話の内容を検索していたと
いう。
「これは日本では非常に失礼な態度ですが、30 分会談した後、彼は私に、一緒に事
業をしてもいい、と言ったのです。
」
詹宏志によると、日本社会はルールを遵守しすぎて融通が利かず、決定は集団で行う
ために容易に大胆な衝動に駆られないという。一般に、知り合ってからビジネスが成立
するまでには数年の交渉が必要で、礼儀を重んじるため、一旦関係を構築すると簡単に
ノーと言うことができない。そのため、よく知らない企業とは軽々しく取引を始めるこ
とはなく、双方が重要なパートナーとなるために、さらに 10 年は時間をかける。
「しか
し、インターネット事業は比較的古い思想がなく、市場の反応も速い。必然的に日本を
変えるパワーとなっている。
」
長期的に日本の小売市場を観察している台湾ファミリーマートの潘進丁董事長も、日
本の産業構造は緊密かつ固定的で、小売業にしても、卸売物流は大手商社に握られてお
り、メーカーとの直接取引の道はほとんどない、
「だからこそ、カルフール、テスコ、ウ
ォルマートは日本での成功が難しかったのです。直接メーカーと取引できなければ、ど
うやって販売価格をさげることができますか?」と指摘する。
李光栄も、日本人は頑固なうえに、政府の価格コントロールも厳しく、目を見張るよ
うな大胆な値下げができないため、たとえ業績が下がっても大胆な販促ができず、突破
口が開けないという。
イノベーション=富の創造
イノベーションモデルの
成功者が
日本の
富豪に
イノベーションモデル
の成功者
が続々と日本
の富豪
にランクイン
順位
氏名
企業/役職名
業種
(億米ドル)
年
齢
資産
1
孫正義
ソフトバンク代表取
締役社長
IT・通信
81
53
2
柳井正
及びその一家
㈱ユニクロ社長
服飾
76
62
5
三木谷浩史
楽天㈱社長
通販ショップ
56
46
10
三木正浩
㈱エービーシー・マー
ト創業者
服飾、靴
27
55
13
田中良和
GREE㈱創業者
SNS
22
34
19
似鳥昭雄
㈱ニトリ創業者
家具
12
67
イノベーションの特
徴
夢という根拠のない
自信からスタート
産業構造を打ち破っ
た低価格ファッショ
ン
仕事を人生最高のゲ
ームにする
ほかでは買えない限
定価格
真似お断り、本当の創
作に挑む
他者と違う方法で成
功
21
島村恒俊
及びその一家
㈱しまむら創業者
25
安田隆夫
㈱ドン・キホーテ(激
安の殿堂)創業者
25
前澤友作
ZOZOTOWN 創業者
ディスカウン
トストア
ディスカウン
トストア
ファッション
通販ショップ
11
85
10
61
10
35
価格破壊、最安値
隙間なく商品を陳列
して客に探させる
大学進学拒否、資本主
義を変える
備考:順位はフォーブス 2011 年 3 月日本富豪ランキングより(年齢は 2011 年時点)
破壊者たれ
破壊者たれ!
たれ!
低価格ブーム
ブームが
たなマーケット
マーケットを
低価格
ブーム
が新たな
マーケット
を作る
幸いなことに、この変化のパワーは新興のネットビジネスから発生し、リアル流通に
も大きな破壊を起こし始めている。最も代表的な例は、日本の国民ファッションブラン
ドとなったユニクロの執行長である柳井正だろう。彼は、これまでのファッション産業
における川上、川中、川下の分業サプライチェーンを打ち壊し、デザイン、製造、流通
からブランドまでを統合した強大な市場競争力を創造した。
「価格は全然気にしない、気
に入ったら買う」という低価格ブランドの進出を嫌う国内百貨店の幹部ですら、今や袖
からインナーを引っ張り出して「実はこれユニクロです。とても着やすいですよ!」と
言うくらいだ。
台湾ファミリーマート董事長の潘進丁は、東京の銀座にユニクロ旗艦店がオープンし
た当時の大ブームや、それに続く H&M、Zara オープン時の長蛇の列から、消費市場が
密かに変化していたことが証明されたと指摘する。中古品ブランドショップのブランド
オフ社長の安山勉は、さらに大胆にも、銀座の最も地価の高い角地に店舗を進出した。
当初、銀座で買い物を楽しむ女性客はこれらの低価格商品が銀座のレベルを引き下げ
るとため息をついたものだが、今、彼女たちは銀座の高級カフェで優雅にお茶を飲みつ
つ、傍らにはユニクロの袋を置き、手にはブランドオフで買ったバーキンをさげている。
こうした、当初「異様な視線を浴びながら銀座に開店した」業者はすでに成功し、見事
に銀座の貴婦人達の消費習慣へと変貌したばかりか、直接恩恵まで受けるようになって
いる。
日本企業の新たな理念による突破口、消費者の所持金に限度はあるが、以前と同じ生活レベ
ルを維持
楊仁甫/撮影
ユニクロの他、ヤマダ電機も従来のサプライチェーンを破壊して成功し、日本最大の
家電販売店となった。同社は、もとは北関東の家電販売店にすぎなかったが、多くの店
が「家電メーカーが商品価格を決定し、配送作業を行うことが当然」と考えていた時、
同社の創設者である山田昇るは、いかに価格決定の主導権を握るかを考えた。彼は大胆
にも物流システムを新たに構築した結果、地方での身を削るような安売り混戦状態のレ
ッドオーシャンから頭角を現し、「価格キラー」と呼ばれるまでになった。日本で最大、
世界でもベストバイに次ぐ家電販売店となったヤマダ電機は、今後は規模の優位性を追
い風に、川上の家電メーカーを統合し、引き続き家電市場の秩序を破壊して新たな成長
チャンスを探ろうとしている。
これらの企業を分析するには、彼らが打ち出した業績を語るより、彼らが日本の既存
の社会と産業構造に大胆に挑戦して大きな成功を得たことを語る方がよいだろう。
実際、日本の富豪ランキングにおいて、この種の成功モデルで富豪になった企業家は、
柳井正以外にも、靴のディスカウント店エービーシー・マートの三木正浩、1,500 店舗を
有する低価格百貨チェーン店シマムラの島村恒俊、低価格インテリアチェーン店ニトリ
の似鳥昭雄らがおり、彼らはネット会のニューフェースであるとともに、価格破壊を売
りにした市場の新勢力である。
恐れずに他分野
れずに他分野に
他分野に進出せよ
進出せよ!
せよ!
多角経営が
活路を
多角経営
が新な活路
を生む
こうした恐れずに進出する意気込みのある企業だからこそ、結束の固い伝統的な日本
で頭角を現すことができたのかもしれない。三菱商事からローソンの社長に就任した新
浪剛史は、
「冒険なくして成長はない」と堅く信じている。彼は精力的で、コンビニエン
スストアの経験が全くなかったにもかかわらず、就任後、日本のコンビニエンスストア
に大革命を巻き起こした。
ローソンはコンビニエンスストア市場では第二位の位置にあり、これまでとってきた
戦略はトップのセブンイレブンの「真似」をして、できる限りトップに近づくことであ
ったが、新浪はこの考えを打破し、
「追随者は永遠に新局面を切り開くことはできない。
セブンイレブンがやっていないことをやってこそ、セブンイレブンを抜くことが出来る」
と考えた。
新浪は、店舗ごとにそれぞれの商圏に合わせた商品を陳列し、地域の根付いた経営を
行った。女性向けのナチュラルローソンや高齢化に応じた少量パックの生鮮食品を扱う
ローソン 100 等を次々に立ち上げる。特に、コンビニで生鮮食品を置くというアイデア
は反響を呼び、トップのセブンイレブンも取り入れるようになった。ローソンもまたこ
のように、市場というパイをスーパーマーケットの領域にまで引き延ばし、ゼロ成長の
市場で新しい成長パワーを生み出した。
張子方の分析によると、日本では既存の業界観念の打ち破り、多角経営による成功事
例が増えているという。日本最大の体重計ブランドであるタニタは、消費者が Wii で体
重を測定するようになって業績が下がったが、谷田千里社長が考えたのは、
「いかに消費
者を取り戻すか」ではなく、
「どうやって新しい消費者層を作るか」であった。
昨年、タニタは健康管理データを切り口にした社員食堂を始めた。全てのメニューに
正確なカロリー計算がされた、健康思考にマッチしたもので、非常に好評を博したこと
から、それを新しい成長パワーとして、今年、チェーン展開も視野に入れたレストラン
一号店を東京の丸の内に正式にオープンすることになった。
「一体、誰が体重計の会社が
レストランをやるなんてことを考えたでしょう?」と張は言う。
もう一つの代表例は、居酒屋を経営するワタミグループである。外食産業の急速な萎
縮に対応して、これまで若者や低価格消費者を対象としてきたワタミが、高齢化市場と
いう全く異なる領域に進出したのだ。2004 年に老人介護業に参入した当時、創業者の渡
邉美樹はメディアの取材に対し、
「両方とも人を幸せにする事業です、基本的には何も変
わりありません」と語った。その老人介護事業は、今では業界の代表的ブランドとなり、
業績もグループ利益の 3 割を占め、飲食事業に次ぐ重要なポジションにある。
20 年の冬の景気を経た日本では、企業は信じることを拒絶し、転機を待ちわび、絶望
に陥り、ついに破壊と再生が始まった。企業は逆境で成長しただけでなく、従来の産業
構造と社会価値をも変化させた。台湾は日本から大量の情報を得て、様々な名目の視察
団が争って日本に行っており、楽天、ユニクロ、ニトリといったブランドは次々と台湾
に進出している。日本のこうした風潮は徐々に台湾にも吹き始めている。2、3 年景気の
低迷している台湾企業は、これらの逆転的な思考を理解し、伝統的企業精神を転覆させ
るような力をつけて、最悪の事態に備えておく必要があるのではないか。
36 歳の富豪 資産 800 億円、
億円、ネットショップ ZOZOTOWN 創業の
創業の奇跡
反抗する
反抗する強
する強さ
飛び出した新
した新しい日本企業
しい日本企業
ネットのネの字も知らなかった前澤友作は日本最大のファッション通販サイト
ZOZOTOWN を設立し、年々業績を向上させて 800 億円を超える日本の若手富豪となっ
た。
彼の立身プロセスはフェイスブックの設立者ザッカーバーグの日本版であり、海外の日
本企業に対する認識を根本から覆す新王国を築いた。
文/陳彦淳 写真/楊仁甫
START TODAY
設立:1988 年
創業者:前澤友作
主な業務:日本最大のファッションネットショップ
会員数:390 万人
業績:2011 年の営業収入 571 億円、2012 年の営業収入目標 840 億円
日本の百貨店業が 10 年連続で衰退している時に、ファッション通販サイト ZOTOWN
を経営する START TODAY 社は 10 年連続で急速に成長している。
現在の会員数は 390
万人、2012 年の営業収益見込みは 840 億に達し、アパレル業界において最も成長著しい
販売チャンネルとなっている。しかも、この新興勢力を背後で支えているのは、若干 36
歳、高校を卒業しただけの START TODAY 創業者の前澤友作だ。彼はサイトの高い人
気と成長力をもとに、昨年 800 億円の資産を持ち、フォーブスの日本人富豪の第 25 位に
ランクインし、日本人最年少富豪となり、これまでのアパレル販売大手の老舗百貨店は
面目を失った。
彼は、日本人がこだわる学歴によるエリート思想を覆し、さらに経歴重視の年功序列
制度を一掃した。社員に対して従来のサラリーマンのように毎日アリのように残業に励
むことを要求したり、業績で給与評価をすることもない。彼は、楽しく働く社員がいれ
ば稼げる企業になれ、様々な従来の価値観ややり方を覆したことで今日の START
TODAY があると確信している。
今年になって中国語版のサイトを立ち上げた ZOZOTOWN だが、台湾のファンの間で
はとっくに名が知られており、あるネットユーザーは「ブランドが一番よく揃っており、
種類も一番多い、紹介されているのはみな、渋谷、原宿、代官山などで人気のある商品
ばかりで、服 1 着だけでも 6~7 方向から撮影されている。もし、本場日本の人気のデザ
インを買いたいのなら、このサイトが一番お勧め」と言うほどだ。猿をモチーフにした
日本ファッション界の伝説的ブランドである A Bathing Ape、木村拓哉も着ている、退
廃的で気どらないスタイルが特色の Hysteric Glamour、カジュアルタウンスタイルで廣
く女子学生に支持される X-girl などは、台湾の若者もよく知っているブランドである。
経営者として
経営者としてすべきは
としてすべきは、
すべきは、社員に
社員に楽しんで働
しんで働いてもらい、
いてもらい、大いに自由
いに自由を
自由を発揮して
発揮して、
して、自分が
自分が
好きなことをさせることです
きなことをさせることです。
ことです。社員が
社員が毎日出勤するのは
毎日出勤するのは、
するのは、同僚と
同僚と一緒に
一緒に好きなこと
きなことをす
ことをす
るため
るためであり、
であり、社員が
社員が気に入った商品
った商品こそが
商品こそが、
こそが、我々が売りたい商品
りたい商品なのです
商品なのです。
なのです。
一般の日本企業のスーツ姿とは対照的に、流行に敏感な ZOZOTOWN 社員、写真の若者 4 人
はみな幹部社員
従業員 3 人から起業
から起業
営業収入は
営業収入
は 1,400 倍に成長
1998 年に成立した ZOZOTOWN は、当初は前澤と彼のガールフレンドとバンド仲間
の 3 人だけでスタートしたが、今では社員数 350 人に増加した。ネット上で取り扱うブ
ランド数は当初の 3 つから 1,500 を超え、一年間の営業収益は当初の 6,000 万円から始
め、840 億円の目標で計算すると、14 年で 1,400 倍の成長と遂げたことになる。この爆
発的な成長力は、同様に服飾品販売を主とする三越や伊勢丹といった百貨店の株価収益
率が 10 倍に満たないのに比べ、ZOZOTOWN は 80 倍以上となっていることでも見てと
れる。
毎年成長している ZOZOTOWN だが、
「失敗経験のないのが最大の欠点」だという。
前澤が以前日本のマスコミの取材を受けた際にも、冗談めかして、趣味のゴルフは「い
つも上手く打てないから、面白いんです。思い通りにならないのは、人生でこれが初め
て。ゴルフに『お前なんかまだまだだぞ』と言われているのです」と言っている。
彼は子供のころからあまり勉強好きではなかったが、ビジネスセンスはあったという。
小学生の時に最も熱中したのは昆虫採集で、特によくカブト虫を捕まえて友達に売って
いた。
「思えば、当時からすでに商売をやってたのんでしょうね」早稲田実業高校時代の
前澤は、エスカレーター式に大学進学が可能だったが、毎日の通学電車でみかけるサラ
リーマンが楽しそうに見えず、自分がこれから彼らと同じようにはなりたくないと思い、
大学進学をやめた。
「高校も卒業したくなかったが、家族から高校だけは卒業するように
と言われた」と本誌インタビューの際に語っていた。
桁外れに広いオフィスで働く前澤友作と従業員(矢印はその席)
元気で若い従業員達は自転車で通勤
従業員が
従業員が気に入れば売
れば売らせる!
らせる!
ネットの
門外漢が
ネット
の門外漢
が MBA に勝った
高校時代にロックに熱中し、CD まで出したことのある前澤は、高校卒業後、ガール
フレンドについて米国に行き、6 ヶ月後に帰国した。帰国後はバンドを続けながら、自分
の好きなレコードを買って帰っては売っていたが、売れば売るほどよく売れたので、通
信販売用カタログを作成して全国販売を始め、創業の道を開拓していく。その後、社員
の着ている流行ファッションからインスピレーションを得た彼は、自分の気に入った服
をネット上で販売することにし、2004 年に ZOZOTOWN を設立した。
「設立当初は店を
探して、服を売らせて欲しいと頼んで回ったが、ほとんど断られた。でも、どれも自分
の好きなブランドだったので、辛いとは思わなかった」と言う。
苦労してサイトに載せるブランドを探した当初と多くのブランドがサイトへの出店待
ちをしている現在では、
市場における ZOZOTOWN の地位は全く異なっている。
しかし、
前澤の出店選考基準はただ 1 つ、
「社員がそのブランドを好きであること」である。
周囲の人間は、高卒でネットも全く知らない門外漢がどうやって完璧なビジネスモデ
ルを確立したのかと尋ねるが、前澤はそうした難しい事は考えたことがないという。た
だ、人とは違うことをやり、自分が客だったら何を買いたいかと創造しただけだ、と。
このようなやり方は変だろうか?「多くの管理技術は本から学べるが、机上の空論で実
際の運営とは異なります。事業経営には MBA の学位も何の意味も持ちません。
」
例を挙げると、
「5,000 円から1万円の価格帯のワンピースで、小花模様のものが見た
いけれど、立体裁断のものもみたい。どんなブランドのものでも比べてみたい」こんな
ことは実際の店舗なら超 VIP でしか受けられない待遇だが、1,500 のブランドが集まる
ZOZOTOWN なら、簡単に消費者 1 人 1 人を満足させることができるのだ。
しかし、多くの消費者にとって、サイト上の多くの商品はまさに百花繚乱で目を奪わ
れる。このため、ZOZOTOWN で売られる商品はみな統一基準でサイズを測りなおし、
カラーを記載して撮影することによって、実際の商品を同じ基準で気軽に比較できるよ
うになっており、最も気に入ったものを探し出せるようになっている。ZOZOTOWN に
すれば、メーカーはそれぞれ異なる基準で自社商品をアピールしており、それがファッ
ション通販サイトでの最大の障害となっているという。現在すでに 19 のブランドがネッ
ト販売を全面的に ZOZOTOWN に任せている。
価格競争はしない
価格競争はしない
成功に
不可欠な
成功
に不可欠
な4大要素
このほかの特徴として、ネット販売では一般的に低価格販売が要求されるのとは異な
り、ここで販売される商品の価格は実際の店舗で販売される価格と同じである。前澤は
「競争させることで健全な市場になる」と考えている。その結果、多くの消費者は最終
的にはやはり ZOZOTOWN を選ぶ。例えば、Ships、nano、universe といったブランド
のここでの営業成績は、東京の地下鉄沿線のリアル店舗よりずっとよいという。
前澤は、EC(電子商取引)の成功には4つの要素があると考えている。1 つは消費者
のニーズにあった商品を探し出すこと。現在、ZOZOTOWN に掲載されている 1,000 も
のブランドは、全て社員が気に入ったブランドを消費者に紹介しているものである。サ
イト内の各ブランドには商品の購入権を有する「模擬店長」がいて、その店長の平均年
齢はサイト会員と同年代の 27 歳から 29 歳であるため、当然、考え方や好みもサイト会
員と似通っている。二つめは商品の特長を完全にアピールすることで、サイト上の各ブ
ランドの商品撮影は社員自らが行っている。彼らは消費者が商品に何を求めているかを
よく理解しており、完全に消費者に伝えることができるという。
前澤はまた、サイト経営には不断の宣伝が必要であり、例えばペプシコーラとの異業
種コラボになど、多くの人を介して、更に多くのブランドを引きつけることでプラスの
循環が生まれるという。
最後はバックサポートとしての物流システムである。ZOZOTOWN は自社で確立した
物流システムで在庫を管理し、宅配業者によって 2、3 日で商品を消費者の手元に届ける
仕組みになっている。この 4 つ目の要素も ZOZOTOWN 最大の競争力であり、
「この4
つの条件がそれぞれバランスよく、運営されることが必要で、どれか一つが欠けてもだ
めなのです。
」
市場の同業者の観察では、日本の流行文化は多元的で、ブランド林立しており、リア
ル店舗に全ての商品を揃えることは難しい。さらに、多くの流行ブランドの経営規模は
大きくなく、リアル店舗は出店コストが高すぎるという要因も、ZOZOTOWN の発展に
有利に働いている。加えて 10 年あまりの先遣隊という優位性を発揮して、今では市場の
代表格となっている ZOZOTOWN は、最大のファッション通販サイトとして確固たる地
位を築いている。
前澤は、現在の日本ではネット販売の比率が依然低いことから、将来の日本のネット
ショッピング市場にはまだ大きな可能性があると考えており、また、海外市場への進出
も開始し、簡体字中国語と韓国語のサイトを立ち上げ、台湾市場進出にも興味を示して
いる。
「台湾はあたたかいし、食べ物もおいしいし、私が好きな国の一つです。それに日
本ブランドは台湾人に受け入れられやすいので、すでに台湾進出計画を手がけています」
とのことだ。
独占インタビュー
文/陳彦淳 写真/楊仁甫
独占インタビュー
前澤友作「
社員に
きなことをさせても儲
けられる」
前澤友作
「社員
に好きなことをさせても
儲けられる
」
幸福感の
幸福感の追求が
追求が GDP に勝つ
一般的に新興企業は本社を東京の六本木などの流行の中心地に構えるところだが、
START TODAY が経営する日本最大のファッション通販サイト ZOZOTOWN の創業
者である前澤友作には「儲けたら高級住宅街に引っ越す」という考えはなく、東京から
車で 1 時間の距離にある千葉県幕張市に本部を置く。
「幕張手当」を出して、社員に会社
の近くに住むよう奨励しており、6 割に及び社員は自転車で通勤できる。社員の離職率は
ほぼゼロだという。
オフィスは至る所に個性的に装った若い男女の社員がいて、モノトーンのスーツ一色
の都内のサラリーマンとは実に対照的だ。オフィスで楽しそうに話したり、歩いている
社員の姿は、原宿の竹下通りをぶらつく若者のようだ。前澤自身も本誌のインタビュー
の際に、やはりカジュアルなファッションで現れた。特に説明がなかったら、初対面の
人間には、目の前にいるこのスリムな青年が日本最年少の富豪だとは想像がつかないだ
ろう。
興味深いことに、前澤は日本の政治経済の現状を自社の発展よりも熱を込めて語った。
彼は、資本主義の発展はすでに極限に達しており、日本人はこれから追求すべきは GDP
の数値ではなく、幸福度を増やすことだという。彼は、START TODAY を立ち上げ、
社員が自分の好きなことをしても金が儲かるということを証明したので、日本は必ず幸
福度で、米国、韓国を抜き、新しい社会構造と価値観を創造できると信じている。この
若い富豪は、自分の反骨精神について大いに語った。以下に独占インタビューの内容を
まとめた。
シンプルなファッションの好男子が日本で 25 位の富豪
社員が
社員が楽しく仕事
しく仕事を
仕事をする
離職率ほぼ
ほぼゼロ
離職率
ほぼ
ゼロ
問:過去 10 年、日本の成長力が失墜する中で、御社はどうやって成長を遂げたのですか?
答:日本全体の経済は確かに落ちていますが、私どもの会社から言うと、求めているのは
必ずしも数値的な業績の成長だけでなく、自分が仕事をして楽しいか、同時に顧客に
も喜んでもらえるかという精神面の成長です。実際、その結果として業績もついてき
たのです。私は、日本はこういう段階に入ってきたのだと思います。
問:日本社会は一般的に保守的な伝統があります。このような環境のもとで START
TODAY ではどのように社員にアイデアと仕事への情熱を発揮させ、楽しいと思わせて
いるのですか?
答:人生の三分の一は仕事をします。従って会社は人生で非常に重要な場所です。一経営
者としての私の仕事は、社員が楽しく仕事をすることです。だからここには服装の規
定はありません。また、少しずつ社員の勤務時間も減らしていっています。つまり、
完全に社員に自由を発揮し、好きなことをやらせています。毎日仕事に行くのは会社
の規定で行かなくてはならないのではなく、同僚と一緒にやりたいことをやり遂げる
ためという気持ちを抱いて欲しいと思っています。
問:しかし、すべての社員は昇給を期待しているのではないですか?楽しさを追求すると
同時に、どのように物質的な要求にも応えるのですか?
答:社員が楽しいかどうかは顔を見ればわかります。私どもも社員の業績評価は行います
が、それは必ずしも給与には影響しません。同じランクの社員のボーナスも年収もみ
な同額です。なぜなら、みんなが協力し、努力したことでこの会社があるからです。
給与によって人を区別するべきではありません。ここはみんなの会社なのです。こう
した状況の下で私どもの今いる 350 名の社員の離職率はほぼゼロです。
社員の精神面と物質面の要求を同時にかなえるのは、経営者として確かに大変難し
いことです。しかし道理をいえば、幸福度と金銭の多寡は比例するものではありませ
ん。
資本主義の長期的影響によって、金持ちの方が楽しく、金持ちの方が偉いというイ
メージができあがっただけです。私は、こういう考え方はすでに頂点に達しており、
極限が見えてきたからこそ、最近米国で起きたウォール街での抗議事件(ウォール街
を占拠せよ)も、資本主義への不満が一気に爆発して発生したものだと思います。そ
ういうことも私が社員の給与を一律にしている理由のひとつです。
問:日本は 20 年間、経済低迷を続けていますが、現在の社会状況をどのように見ていま
すか?
答:個人的には非常に不満です。例を挙げると、最近、日本ではみな TPP(環太平洋戦略
的経済連携協定)について討論していますが、大体、賛否半分です。しかし、ほとん
どの国民は TPP の内容がどういうもので、日本にどういう影響があるのか理解してい
ないのです。まだ自分の立ち位置もはっきりしていないうちに TPP に加入してしまっ
たら、恐らく米国の金融システムに巻き込まれて、日本は非常大きな危険に接するこ
とになるでしょう。
もし、今の日本政府の中枢機能が強靱で、内部の意見を統一し、主導的立場に立っ
てこのことを話すことができるのならば、あるいはうまく行くと思います。しかし、
米国やシンガポールでは TPP に加入する十分な理由も利点も理解しているのに、日本
ではまだよくわかっていません。
日本は
日本は自分の
自分のポジションもわからず
ポジションもわからず、
もわからず、
自信と
りもなくなった
自信
と誇りも
なくなった
問:日本の問題は政治的不安が要因だと思いますか?
答:政治的問題だけではなく、企業自身もよくありません。私は、政府は民間という大会
社の調整工作をする総務部門であって、指導者であってはならないと思っています。
民間から改善すべき点もたくさんあるということは私自身も了解していますので、こ
れは私の責任の一つでもあります。
問:かつて日本企業はイノベーション能力がとても強かったですが、最近、こういう能力
が見られなくなったように思います。原因は何だと思いますか?
答:理由の一つとして考えられるのは、日本が自分の優位性をよく考えなくなり、自信と
誇りもだんだんとなくなってきたことです。多くの企業は楽な道を選ぶようになりま
した。ほかの人の真似をしてうまくいくなら、真似でいいという考えが多くなり、だ
んだんと独創性が失われてきたたことは大変残念なことです。
問:日本経済は好転すると思いますか?どのような有効な手段がありますか?
答:今はもはや GDP の成長だけを追求する時期ではありません。昨年末にブータン国王
夫妻が日本を訪問されて強調したのは国民総幸福度でした。日本もこのことを考える
べきです。GDP ばかりを指標にして数字的な成長ばかりを追求するのではなく、いか
に国民をもっと幸福にするかという方向で政策を立てるべきだと思います。すべての
国民が経済成長ばかりを追求することに疲れており、多くの人がお金ではなく、自分
が幸福に暮らすことを求めているのです。
日本は世界的に見て、非常にまれな国です。日本人は人と人との協調性がとても強
い民族で、競争を好まず、謙虚な性格を持っているうえ、技術力は特に優れています。
この 4 つの優位性のもと、日本は世界に示せるような新しい社会構造と価値感を創造
できると期待しています。これは、日本国民が自分を見直し、どうすることが幸せな
のかを考える絶好のチャンスであり、多くの国民がその力を持っていると信じていま
す。
問:しかし、20 年を超える低迷で日本は米国、韓国に後れを取り、若者も自信を失って
しまったようですが。
答:私は全く悲観していません。日本は借金が多く、GDP も成長していませんが、これ
は数値にすぎません。日本人のパワーはこれだけではありません。もし GDP の角度か
ら見れば、日本は確かに米国、中国より下ですが、国家の幸福度から見れば、日本は
全世界の 40 から 50 位にランク付けされています。GDP ではなく、幸福度を向上させ
ていくべきだと思います。
重々しい雰囲気のない若者の集会のような会議
資本主義による
資本主義による洗脳
による洗脳を
洗脳を拒否
せな企業
企業の
モデルとな
となりたい
幸せな
企業
のモデル
とな
りたい
しかし、私は、今の日本の若者には反骨精神が欠けていると思っています。彼らはお
手本に頼りすぎ、現状に簡単に満足しています。私はもとから反骨的で、音楽をやって
いた時にもロックが好きで、いつも周りから変わった奴だと思われていました。しかし、
もし、私のような人間が多くなれば、この社会も少しずつ変わっていけるのではないで
しょうか。
問:そうした改造運動はどこから手をつけたらいいと思いますか?
答:私自身は、いろいろな機会にこういう考え方を伝え、発信しています。同時に、自分
の会社の経営においてもこの理念を伝えており、みんなが楽しく仕事をした結果、さ
らに会社の規模も拡大することができることを証明し、他の経営者がこの状況を見て
学び、共に「社員を幸福にする成長企業」となって欲しいと思っています。
ゆっくりですが、これから学生が仕事を探す時も、給料が高い大手会社だけを見る
のではなく、就職の評価基準が、給料の多寡ではなく、自分の夢と結びつくかどうか、
または自分と同じビジョンを持つ会社であるかどうかという基準に変わっていけば、
みんなが同じ一つの方向に向かい、流れとなって一緒に幸福感を追求できると思いま
す。
勿論、現在こうした考え方を持つ企業はまだ少数ですが、今後はきっと増えてくる
でしょう。みんなが資本主義に洗脳されていて、お金がなければ話にならないと思っ
ていますが、お金がなくても生きていけるということに気づけば、そのスピードも速
くなるでしょう。
一味違う
一味違う店舗スタイル
店舗スタイルを
スタイルを分けた ローソンの
ローソンの女性向
女性向け、高齢者向
高齢者向けコンビニ
追随をやめてこそ
追随をやめてこそトップ
をやめてこそトップに
トップに勝てる
日本のナンバー2コンビニエンスストアのローソンは業界の異端児と称され
る。
新浪剛史は市場トップのセブンイレブンを恐れることなく、従来のコンビニ
の概念を打ち破り、ナチュラルローソン、ローソンプラス、ローソンストア
100、託児施設付ハッピーローソン等、多角的新型店舗を次々と展開し、自社
独自の道を切り開いた。
文/陳彦淳 撮影/楊仁甫
ローソン
設立:1975 年
創業者:新浪剛史
主な業務:コンビニエンスストア
店舗数:11000 店以上
業績:2011 年営業収入は約 1.8 兆円
柔軟性でもって日本のコンビニ市場に躍り出た新勢力
ローソン
小は個店経営から
個店経営から大
ブランドの構築まで
構築まで
から大は新ブランドの
新浪剛史は
新浪剛史は業界創業者の
業界創業者の更に先を行く
消費者層によって
消費者層によって異
によって異なるブランド
なるブランドを
ブランドを立ち上げ、脱セブンイレブンモデル
セブンイレブンモデルの
モデルの第
一歩となる
一歩となる
日本トップのコンビニエンスストアのセブンイレブンですら彼の存在は無視できず、
密かにそのアイデアを導入している。誰あろう、日本第二位のコンビニエンスストア、
ローソンの新浪剛史社長その人である。2001 年の社長就任後、ローソンを 8 年連続成長
に導いたこの伝説的人物は、セブンイレブンに大胆に挑み、強い野心を顕わにした。彼
の戦略は「追随」ではなく、
「パイを大きくし、セブンイレブンの市場全体への影響力を
低下させる」というものある。
ローソンは、日本で初めて OL や高齢者といった新しい消費者層向けの店舗を立ち上
げ、従来のコンビニが追求してきた標準化、規模化という経営モデルを打ち破った、新
浪は「追随でも生き残れるが、成功はしない」と言う。
親子対象のハッピーローソン
女性がターゲットのナチュラルローソン
一般のローソン
2000 年、三菱商事は、かつて日本最大の小売業グループでありながら、バブル経済崩
壊後、財務危機に陥ったダイエーグループからローソンを買収した。当時三菱商社で外
食産業を担当していた新浪剛史は、その2年後に突然ローソン社長への出向を命じられ
た。彼がコンビニエンスストアの経験が皆無だったことは同業者を驚かせた。新浪は当
初、自分に何の知識もないことに引け目を感じたが、どん底まで落ち込むと考えを一変
し、何も知らないということは、人には見えないものが見えるということだと思うよう
になった。もともと三菱商事では彼の派遣は短期間の予定だったが、新浪は毅然と本社
に辞表を出し、自らの退路を断ってコンビニ事業に打ち込み、はからずもコンビニエン
スストアの改革を巻き起こす結果になった。
新浪と共に三菱商事からローソンの財務担当に取締役専務執行役員として派遣された
矢作祥之は、日本ではセブンイレブンがコンビニの代名詞となっており、
「正直なところ、
これまでローソンもセブンイレブンをまねしていました。彼らの経営手法が最も優れて
おり、他社はみな、その手法に追随していたのです」と語る。しかし、新浪はこの従来
のコンビニの発想を根本から覆す決心をした。例えば、これまでコンビニが強調してき
たのは標準化と規格化であったが、新浪は地域ごとのニーズが同じはずはない、と適度
な地域性を主張した。
矢作は北海道にあるローソンを例に挙げた。その店の付近には食堂がないため、店員
が試しに店内でうどんをゆでて販売してみたところ、1 日の売り上げがそれまでの 40 万
円から一気に 60 万円に跳ね上がったという。まさに「個店主義」のたまものだ。ローソ
ンでは、各店舗が地元の商圏の掘り起こしができるよう、権限を各店舗に与え、どの陳
列棚にどういう商品を置くかを各店に任せた。学校周辺の店舗なら量の多い弁当を多く
扱い、オフィスエリアなら文房具等を多く置くようになった。
「コスト的には高くなりま
すが、それよりも高い営業収益を得ています」という。
新浪は、小さいところでは個店経営から、大きいところでは新ブランドの構築まで、
さらなる業界初の試みを行った。消費者層ごとに異なるブランドを打ち出し、
「脱セブン
イレブンモデルの第一歩」と言われ、日本の高齢化、少子化の趨勢をにらみ、少人数家
庭と低価格ブームの下、生鮮食品のニーズに的を絞ったローソンストア 100 を設立した。
高齢化と
高齢化と少子化の
少子化のニーズを
ニーズをつかむ
ったが、
顧客は
量は減ったが
、顧客
は増えた
消費者はこれまで、スーパーマーケットで生鮮食料品を購入していた。産地をアピー
ルしたキュウリは1パックに4,5本入っており、量が多い分、1 本あたりの単価は安く
なる。しかし、4人家族が主流だった日本も、今は一家庭あたりの人数が減り、1 パック
のキュウリは結局 1、2 本食べきれずに捨てられてしまうようになっていた。
一方、ローソンストア 100 のコンセプトは少量包装である。店内には一般的なコンビ
ニの 1.5 倍の量にあたる 4,000 種類の商品を揃えている。キュウリは1パックに2本し
か入っておらず、産地もアピールしていないが、ここの商品は全て 100 円(別途消費税
5%加算)だ。店舗はいずれも住宅地で展開されており、単身者、高齢者や主婦に喜ばれ
ている。その理由は新鮮で量が少ないこと、家から近く、遠くのスーパーまで行く必要
がない点にある。矢作によると、ローソンストア 100 はすでに 1,100 店舗出店しており、
最も成長力があるという。一部の生鮮食品の販売は、普通のローソンの店舗でも始まっ
たが、同業のコンビニも真似し始めている。
「これまでコンビニにはあまり来なかった主
婦や高齢者も来るようになりました」という。新浪の改革が最も成功した例である。
その後、ローソンの追撃は勢いを増し、老人ホームに近いところには高齢者向けのロ
ーソンプラスを開店する。店内の商品表示は文字を大きくし、通路と棚も体の不自由な
高齢者を考慮して設計され、商品は少量包装の健康的な食品をメインとし、さらに老眼
鏡、白髪染め、和菓子など、高齢者からのニーズの高い商品を増やし、弁当宅配サービ
スも行っている。
伝統的かつ保守的だった日本企業が既存の概念を変えるのは、口で言うほど容易なこ
とではない。新浪のどこにこんな強い力があったのか。日本市場を長く観察してきた台
湾のある小売業者は、
「わからないからこそ、いろいろな意見を聞き入れることができた」
と指摘する。
矢作も、ローソンでは社員がアイデアを出すことを奨励しており、ナチュラルローソ
ンとハッピーローソンもその好例であるとキーポイントを語っている。
当時の社員の提案では、コンビニの利用客は 60%が男性だが、仕事を持つ女性の増加
に伴い、女性専門のスペースがあってもいいのではないか、というものがあった。そこ
で新浪は、シンプルで上品な内装のナチュラルローソンを展開した。生鮮食品は少量多
彩を強調し、全てにカロリーと野菜含有量を標示し、文房具はおしゃれで可愛いもの、
おやつコーナーには天然素材と無添加を売りにした高級輸入品を並べ、一般のコンビニ
には必ず置いてあるおでん売り場も、女性には評判がよくないとして廃止した。現在の
ナチュラルローソンは、収益の 60%が女性客のものであり、客の一人当たり購入単価は
一般の店舗より5%高い。店舗は多くが都市部に集中している。
少分量の生鮮食品(上)とカロリー特別表示(右)がこだわり
多角的業態
多角的業態で
的業態で市場トップ
市場トップを
トップを包囲
たな顧客
顧客の
発掘で
しい成長
成長をもたらす
新たな
顧客
の発掘
で新しい
成長
をもたらす
もうひとつのハッピーローソンも同様だ。社員は主婦が安心して買い物ができるよう
にと、これまでになかった二階建ての店舗を設計した。1階が買い物スペースで、子供
用の健康食品や関連生活用品を販売し、2階には子供を預けることができる親子エリア
があり、主婦もたっぷりと買い物に時間を使うことができる。しかし、コストの面で、
現在ハッピーローソンは1店舗しかない。
矢作によると、多業態店舗は開始当初からすぐに成功するとは限らないが、時代の趨
勢に合いさえすれば、新浪はまずやらせてみて、市場の反応を見てから調整するように
勧めるそうだ。ナチュラルローソンを例に挙げると、まだ現在は 100 店舗という規模を
維持しているものの、潜在的能力を有した店舗と見ているという。
新浪は、表面的には多角的業態でセブンイレブンを全方向から攻めているが、実はそ
の背景にはもっと深い戦略がある。矢作が言うには、日本の小売業と外食市場の合計市
場規模は 160 兆円あるが、そのうちのたった5%(約8兆円)がコンビニで、ローソン
はその5%の市場の 25%のシェアを占めているに過ぎず、
古い思考ロジックで考えれば、
どんなに競争しても、8兆円の中で相撲を取っているに過ぎない。しかし、160 兆円の
領域まで拡大すれば、ローソンの発展は大きく開ける。
「私どもの目標はコンビニの5%
のシェアを 10%、16 兆円にすることです。
」
矢作によると、これまでのコンビニの5%の市場は 20 から 40 歳代の男性客が支えて
きた。この世代の人は非常に忙しいため、コンビニで時間を買っていたという。しかし
今後ローソンは、多種類のブランドの開発をとおして、OL、主婦、高齢者等の顧客者群
を増やし、年間約 12.7 兆円消費されているスーパーマーケット市場と同 24 兆円の外食
産業にも切り込んで成長パワーとするとのことだ。
新浪は、多角化経営のハードルは高いが、30 年以上のコンビニ経営の経験を大胆に打
ち破り、新成長戦略と新多角化経営モデルの推進により、今後 10 年で迎えるローソンの
ピーク再建に備えていると強調した。
独占インタビュー
文/陳彦淳
矢作祥之「薬も、託児サービスも、売れないものはない」
消費データ
消費データを
把握して成長
武器に
データを把握して
して成長の
成長の武器に
消費は客層別に 情報把握こそが利益アップにつながると語る矢作祥之
日本で第二位のコンビニエンスストアであるローソンは、台湾にはない。それにもか
かわらず、台湾人がよく知っているセブンイレブンとファミリーマートよりも早く中
国・上海に進出しているため、日本によく行く台湾人ではなく、中国で商売をする台湾
人ビジネスマンの方がこのブランドを知っている。ローソンはまだ日本市場トップでは
ないが、革新的かつ多角的な展開は市場で評価されており、多くの後発ブランドの手本
となっている。本誌では、特別にローソンの矢作祥之取締役専務執行役員にインタビュ
ーし、ローソンがどのように消費傾向を掴んできたのか尋ねた。
矢作によると、消費の二極化が明確になったことから、ローソンでは消費動向を把握
するために、三菱商事が始めたポイントカード・PONTA カードを導入したという。この
カードは今では日本で最大の発行枚数を誇る記名式会員カードで、消費者の様々な習慣
を把握でき、効果的に店舗の業績を高めることができるため、今後の最も重要な武器と
のこと。店舗経営としては、主にドラッグストアとコラボした店舗を打ち出し、ワンス
トップサービスにより、町が幸せになることを目標としているという。以下は独占イン
タビューの内容。
消費動向
消費動向の
動向の二極化
顧客の
ニーズを
理解する
顧客
のニーズ
を理解
する
問:日本は 10 年あまりの不景気を経て、消費動向にどのような変化がありましたか?
答:日本はこれまでのインフレの影響を受けて、よい環境にはありませんでしたが、現在
顧客は価格の安さだけを気にしているのではなく、いろいろ計算しています。安けれ
ばよいと考えている人はほんの一部で、ほとんどの人が品質の良さも求めています。
特に高齢化社会に入り、高齢者の間では、少し高くてもよいものを買いたいという消
費の二極化が起きています。
このため、店内の商品構造も二極化を始めています。私どもは標準店舗では自社ブ
ランドのローソンセレクションを販売し、ローソンストア 100 ではバリューラインシ
リーズを販売しています。これらの商品は広告宣伝費を節約できるので、実施は大手
ブランド商品と同じメーカーのものですが、大手より値段を押さえることができ、消
費者の受容度もだんだん高くなってきています。現在、自社ブランドはローソンの全
体の売上げの 30%を占めており、商品の数も徐々に増やしています。
問:多角的な店舗経営による分衆市場以外に、ローソンではどのような方法で消費者のニ
ーズを理解していますか?
答:2年前から、三菱商事はグループ傘下のガソリンスタンド、ビデオレンタルショップ
といった企業のデータを統合したポイントカードの PONTA カードを始めました。こ
のカードには各業態1社しか加入できません。カードの加入時には年齢、性別といっ
た基本情報を記入することになっています。こうしたデータをどのように分析するか
が非常に重要で、顧客のニーズを把握して効率的に買い物をして頂くデータとして活
用すると同時に、商品開発の参考にもなります。
これまでコンビニエンスストアでは POS システムを利用してきました。レジ係が自
分で顧客の情報を判断して入力していたのですが、入力する年齢層は 20 歳から 50 歳
までと 50 歳以上という区分しかありませんでした。その結果、80 歳の顧客データと
50 歳のデータが同じカテゴリーに入ってしまい、必ずしも正確なデータがとれません
でした。また、どういう人が再度来店しているかも分からなかったのです。しかし、
今後の市場は高齢化し、50 代、60 代と 70 代、80 代のニーズも異なってくるので、も
っとデータを細分化する必要が出てきたのです。
親子向けのハッピーローソン(左)と一般店内に置かれた無人レジスタ(上)はコンビニの新たな概念
消費チェーン
消費チェーンとの
チェーンとの緊密
との緊密な
緊密な連結
店頭経営
経営を
随時調整
店頭
経営
を随時
調整
このカードができてから、私どもは顧客の購買履歴でその顧客が 1 日何回来店し、毎
回何を買っているかを分析できるようになりました。このようなデータがあれば、店舗
の経営効率を高めることができます。その人がいつ来店し、何を買いたがっているかを
分かっていれば、計画的に商品を入荷し、損益を減らすことができますし、その人が欲
しい商品が買えないということもなくなるので、機会損失もなくなります。
問:ローソンの今年の新たな市場戦略について教えて下さい。
答:ローソンでは今、大々的に電子マネー取引を推進しています。これは一般のネットシ
ョッピングの開店モデルとは異なり、扱う商品は全てローソンが責任を持ちます。さ
らにリアル店舗という信頼感があることが私どもにとっての売り込みポイントです。
すでに業者と提携して価格がやや高めの有機野菜を販売しておりますが、生鮮食品は
市場で細分化されていますので、手強い挑戦ではあります。
販路別でいうと、コンビニエンスストアは小面積を利用した回転率の高い商品を販
売し、スーパーマーケットは大面積で多様性のある、回転率の高い商品を販売していま
すが、電子マネービジネスでは 1 年に 1 回しか売れないような回転率の低い商品でも扱
うことができます。ローソンでは電子ビジネスと結合して、商品の不足を補ったり、将
来はネット上で売れ行きのよい商品をリアル店舗でも販売したりしようと考えています。
今の電子マネービジネスが販売にしめる比率は3%しかありませんが、今後開拓すべき
重点課題です。
新たな店舗展開としては、託児サービスのあるハッピーローソンはまだテスト中で 1
店舗しかありません。このほかに検討中なのは、店内で調理するサービスで、これは社
内でテスト中です。
今年の店舗展開のポイントは、ドラッグストアとのコラボによる新たな小売形態です。
私どもは OTC をマツモトキヨシと、調剤薬を全国展開しているクオール薬局とスペース
レンタルまたは加盟形式により共同で開店し、高齢者が自宅の近くで 24 時間いつでも必
要な薬が買えるようにしたいと考えています。まだ始めたばかりで、政府の法令上の制
限もありますが、将来的にコンビニが薬品、健康食品、生鮮食品に参入するというのが
私どもの経営理念であり、皆様の町を幸せにして、全ての商品にご満足いただけるワン
ストップサービスを提供したいと思っています。
価格キラー・ヤマダ電機がつかんだ低価格エコの大動向
安売り
安売り販売、
販売、挑戦受けて
挑戦受けて立
けて立つ
小規模店から全国最大店に
文/陳彦淳 撮影/楊仁甫
北関東のローカルな家電販売店であったヤマダ電機が、地元の安売り戦争
を勝ち抜いて都心の市場に進軍し、日本最大の家電量販店に成長した。20 年
も続く景気低迷をものともしないヤマダ電機の驚くべき成長曲線
大震災後は省エネ製品が主力に
ヤマダ電機
ヤマダ電機
設立:1973 年
創業者:山田昇
主な業務:家電販売
店舗数:日本に 3,306 店、中国に 2 店
業績:2010 年営業収入は 2 兆円を突破
東京の新宿西口にある電気街では各大型有名家電量販店がそれぞれ陣取り、競争の激
しさは秋葉原に引けを取らない。日本最大の家電量販店のヤマダ電機は、2011 年 7 月に
ようやく都市型店の LABI の旗印をこの超激戦地にオープンした。開店当日は価格の安
さに引きつけられた客が長蛇の列を作ったが、ヤマダ電機が後発部隊でありながら、こ
の激戦区に足を踏み入れた最大のセールスポイントは「省エネ」だ。
この LABI 店に入ると、売り場にある電球はもとより、店内照明灯も広告ボード全て
LED 照明となっており、電球売り場には LED しか売られていない。売り場には商品陳列
の優先順位があり、最安値または最新式でなければ、最もエコであることが優先順位と
なっている。冬場の暖房需要を例にとると、ここのお勧め商品は石油ストーブや節電型
のこたつである。
省エネ製品
エネ製品が
製品が大人気
太陽光発電システム
システムに
わせ多数
太陽光発電
システム
に問い合わせ
多数
多くの売り場面積を使って陳列されている太陽光発電設備は、セットで発電、蓄電と
省エネができることを謳ったパナソニックの家庭用太陽光発電システムで 158 万円もす
るが、引き合いは非常に多いという。LABI 新宿西口店の古賀正嗣店長によると、日本で
は東日本大震災の後、節電の影響で省エネ商品のはいずれも売れ行きが良く、家電量販
店の新成長株となっているという。
現会長の山田昇が創立し、創立 38 年を迎えたヤマダ電機は、日本最大の省エネ家電売
り場を備えるだけでなく、日本全国に浸透した最強の家電量販店である。店舗総数 3,306
を有し、日本トップであるばかりでなく、世界を舞台にしてみても米国のベストバイに
次ぐ世界第2位の大型家電量販店だ。
10 数年前にはまだ群馬県のローカル家電販売店に過ぎず、コジマ電機やケーズ電機と
ともに北関東地区の家電販売店三両馬車あるいは YKK 組合などと並び称されていたが、
当時の三社の価格競争は熾烈を極め、その結果、日本の家電市場に超低価格の北関東価
格というものができ、一度は政府も配慮する事態となった。
当時、山田は戦力向上のため、1997 年、業界に先駆けて自社物流配送システムを構築
した。当時の同業者にけなされた投資であったが、これが後にはコスト削減の武器とな
り、ヤマダ電機が北関東を脱し、日本制覇に乗り出すきっかけとなった。
すでに世界第2位の家電量販店となった今でも、ヤマダ電機の本社は東京都心から車
で1時間半のところにある人口 40 万人足らずの群馬県高崎市にある。本誌記者がその本
社を訪問した時はすでに夕暮れ時だったが、落ち着いた質素な造りの本社ビルにはまだ
電灯もまばらな状態で、
隣の LABI 店舗の明るい売り場照明と強烈な対比を見せており、
ここ 10 年ほどで日本家電業を大きく変動させた「価格破壊者」の「省けることは省く」
というつましさがうかがえる。
本誌の独占インタビューに対応したヤマダ電機取締役兼執行委員専務の岡本潤は、ヤ
マダ電機が破壊したのは価格ではなく、消費者の考え方であり、
「もうメーカーが価格を
決定する時代ではなくなり、消費者が受け入れられる価格こそが合理的な価格になった
といえます」と強調した。
業者が価格を決定する時代は終った
消費者が受け入れられる価格こそ合理的な価格
家電デパートを目標に発展する新店舗 LABI
山田昇は産業ルールを打ち壊した
現実的な
現実的な経営スタイル
経営スタイル
照明を
して節約
節約に
める本社
照明
を消して
節約
に努める
本社
当時のヤマダ電機は、強大な物流システムによってできたコスト面の優位性を武器に、
急速に全国展開をした。2005 年から山田はさらに大きな野心を見せ、都心への進出を図
る。1万坪を超す売り場スペースを有する超大型店をオープンし、1店舗で年間数百億
元の営業収入を得たことで、ヤマダ電機は一気に同業者を大きく引き離し、北関東のロ
ーカル家電販売店から全国的ブランドへと飛躍したのだった。
規模の優位性によって強大な購買能力と価格決定能力を得たヤマダ電機の 2005 年の
営業収入は 1 兆円を突破し、そのわずか 5 年後にはさらに倍の 2 兆円に達し、日本国内
代2位で年間営業収入 8,200 億円のエディオンを遠く突き放した。外資系のデータによ
れば、ヤマダ電機のシェアはここ 10 年で急速に成長し、昨年は一気に 24%を超え、現
在は 30%の大台に向かって邁進しているという。
日本のバブル経済崩壊後、多くの企業が 10 数年に亘って成長が停滞する受難の時期に
入り、2008 年末の金融危機の襲来でさらに泣きっ面に蜂という状況になったが、ヤマダ
電機にとってこの2つの出来事は、かえって成長の重要なターニングポイントであった。
1989 年、日本のバブル経済崩壊当時、金融や不動産を所有していた企業が受けた影響
は最も深刻だったが、ヤマダ電機が 2005 年以前に所有していた店舗はすべて郊外型の賃
貸運用であり、所有していた不動産は非常に少なかったため、ROA(総資産利益率)も
10%以上を維持することができたのだった。
大型 LABI 店舗の女性専用コーナー、ヘアアイロンだけでも数十種類
バブル崩壊後、市場は萎縮し、消費者の財布のひもは堅くなったが、ヤマダ電機がそ
れまで力を入れてきたコスト削減、合理的商品価格という方法が受け入れられ始めた。
また、折良く規制緩和により、それまで 500 坪までに限られていた店舗面積を一気に
1,000 坪まで拡張できることになり、販売できる商品数が大幅に増加したうえ、2000 年
の株式上場で集まった巨額の現金で大量出店に拍車をかけ、さらにパソコンブームがヤ
マダ電機の逆境における成長を後押しする結果となった。
ヤマダ電機の店舗展開戦略は典型的な「都市包囲」型だ。商圏の人口によって4つの
タイプの店舗を設けている。最も初期の郊外型店舗のターゲットは、30 万から 50 万人
の商圏と加盟制経営による数百人規模の地方型店舗だった。2005 年になって山田は、都
心市場を見逃してはならないと考え、全く新しい LABI 型店舗で百万人以上の都心市場
に進出する。百貨店の概念により、家電製品だけでなく、それに関連する CD、書籍、ゴ
ルフ用品等 150 万種類もの商品を揃え、珍しい女性用品専門コーナーも設けた。最近で
は、2万人から5万人規模を対象とする消費市場にさらに近づく小型商圏店舗も推進し
ている。
三大改革に
三大改革に尽力
現金と
効率アップ
アップ、
費用は
現金
と効率
アップ
、費用
はダウン
この 20 年来、ヤマダ電機は日本のバブル成長を歩んできたが、2008 年末の金融危機
によって、その経営業績はさらに上がり、世界最大の量販店であるウォルマートと肩を
並べるほどになった。財務諸表のデータを見ると、金融危機後のヤマダ電機の営業収入
は依然として右肩上がりを維持しているが、利益率は減少した。岡本潤によると、これ
は当時ヤマダ電機ではこの金融危機を百年に 1 度の危機と判断し、キャッシュフロー、
店舗効率と販管費の三大改革に力を入れたためだと指摘する。
省エネ概念のもと、暖房の主力製品は電気こたつ
第一に
第一に在庫数量を
在庫数量を減らし、
らし、キャッシュフローを
キャッシュフローを増やすとともに、
やすとともに、出店戦略
を調節し
調節して各地の
各地の都心型 LABI 店に資金を
資金を投じた
岡本によれば、これまでヤマダ電機の店舗が主に賃貸だったのは、道路の新設により
商圏に変化が生じることを危惧してのことだったが、すでに発展している都市部ではそ
うした商圏変化は発生するはずがなく、長期的な都市市場の経営に役に立ったという。
例えば、ヤマダ電機トップの LABI 池袋店の年間営業収入は 800 億円だが、2009 年に
600 億円で店舗ビルを購入したので、充分に元が取れたことになる。この2年の間にも
次々と新宿西口、渋谷、大阪等各地の一等地に LABI 店を購入している。
第二に
第二に顧客の
顧客の流動効率を
流動効率を高めた
これは、売り場内部の管理面での工夫になるが、例えばこれまで三交替制だった売り
場は、社員の交替時間がちょうど客のピークと重なるため、客がレジに長い列を作るか
売り場の人手が不足していた。これを調整し、最終的にはどこにレジを置くのが最も効
率的であるか、一度に4人以上は待たせないといった細かいフロー改善計画を設け、重
要な経営ノウハウとしている。
第三に
第三に販管費を
販管費を削減
対外請負買入方式等によってコストを削減した。岡本は詳細こそ明かさなかったが、
「お気づきでしょうが、本社の入口は暗くなっています、必要のないものは何でも節約
しています」とだけ語った。販管費率はこうして 14.4%という低さに抑え、ウォルマー
トの 19.2%を 0.5 ポイントも下回っている。業績の指標とされる交差比率(粗利率×在
庫回転率)は、三大改革の後には一気に 222%から 317.1%となり、ウォルマートの
308.7%、ベストバイの 222%も超えた。
「これはもう充分に優良企業の証しです」
他の人間にとっては大きな危機も、ヤマダ電機にとっては絶好のチャンスだった。た
とえハイレベルの競争と景気の低迷という二重の圧力の前でも、ヤマダ電機はまず「合
理的な価格」で消費者の心を動かし、今はまた「エコ」で省エネブームに対応し、市場
の購買意欲を高めている。消費者を満足させることができれば、永遠に成長のチャンス
があるということを証明しているのだ。
独占インタビュー
岡本潤:海外事業のローカライズ
消費者の
消費者の声に耳を傾けるのが成功
けるのが成功の
成功の鍵
文/陳彦淳
ヤマダ電機の成長グラフは同業者のそれを大きく上回る。しかし、限りある市場人口
は、ヤマダ電機としても積極的に新たな成長動力を模索して行かざるを得ない。ヤマダ
電機取締役兼執行役員専務の岡本潤は、本誌の独占インタビューの際、日本社会は少子
高齢化で付加価値の高い商品は比較的よく売れるが、市場全体はもう大きな変化はない。
ヤマダ電機としては、エコ家電からエコ建築に移行し、トータルの省エネプランを提供
するとともに、中国等の海外市場に目を向けて今後の発展の重点とするといった。以下
はインタビュー内容。
問:ヤマダ電機が日本最大の家電量販店となったキーポイントは?
答:私どもは消費者の考えに耳を傾けてきました。多くの日本人は、家電を買うなら家か
近いほど便利で、多くの商品の中から選ぶことができ、価格も安ければ最高だが、さ
らにポイントがつけばもっと良いと考えています。これらがすべて揃っていれば、商
品保証とサービスの良さは消費者の基本的な要求でしょう。そこでヤマダ電機では、
この要求を徹底的に実現しました。直営店は開店するたびに消費者に近づき、顧客サ
ービスに勤めています。
問:有限な日本の市場におけるヤマダ電機の今後の成長の鍵はなんでしょうか?
答:日本では、3月 11 日の震災後、省エネと環境保護に対する認識が高まり、電気の大
切さを実感しました。私どもの店では省エネ商品の売れ行きは特に良好です。このビ
ジネスチャンスから、ヤマダ電機では住宅メーカーを買収しました。これまでは既存
の建築物への省エネプランを提供していましたが、建築後に省エネ仕様に改装するよ
りも、一から省エネ住宅として建築する方が効果も利益も格段に違います
ヤマダ電機はエコ家電販売の経験をステップに、今後は建築メーカーとして、直接
エコ住宅やエコシティを造ることができるようになります。これは私どもにとって全
くの異業種ということではなく、これまでの延長線上のものです。この分野には大き
なビジネスチャンスがあり、今後の成長のソリューションであるといえましょう。
問:エコ商品の売れ行きがよいとのことですが、販売価格は高めです。消費が冷え込んで
いる日本で、一般の人は設備の買い換えをしますか?
答:日本人には 1,500 兆円の金融資産がありますが、ただ使わないんです。お金がないの
は日本政府なんです。私どもの提案するコンセプトが受け入れられさえすれば、消費
者は意外に簡単にお金を出すのです。例をあげると、私どもの店では太陽光の自家発
電を提案していますが、原発がなくても家庭用の電気は自給自足できるという提案に
対して、心配している人はすぐにお金を出します。
中国人材の
国人材の配置
百人の
百人の現地スタッフ
現地スタッフを
スタッフを育成
問:ヤマダ電機の海外進出計画は?
答:海外事業は確かにヤマダ電機の今後の成長のためのソリューションのひとつです。私
どもは昨年初めて中国に進出し、LABI 店舗を瀋陽と天津にオープンさせ、日本の経営
モデルを完全に輸出しました。メーカーから商品を買い取り、完全に私どもの店員が
お客様の要望を聞いて商品を提案し、販売するというサービス方法で、売り場を貸し
出して委託販売をする国美、蘇寧といった中国の家電量販店とは全く違うものです。
近年、多くの中国人が日本で家電を購入し、日本の家電量販店のサービスになじん
でこられ、私どものブランドが信頼できることを理解されています。これはヤマダ電
機の中国進出への手助けになり、中国の家電量販店を変化・発展させるよいチャンス
でもあります。店舗進出計画についていえば、3年以内に LABI 店舗を 5 店開店する
予定です。
中国市場は巨大で、時間をかけて経営する必要があります。投資の初期段階では収
益は期待していません。少なくとも3年から5年かけてバックサポートシステムを構
築し、3年目から黒字になればよいと考えています。中国は土地が広いので、電子ビ
ジネス取引に着目しており、将来的には両者を平行して行い、徐々に中国市場を拡大
していきたいと思っています。
問:多くの日本企業が中国市場に進出する際には、一定の適応期間がありますが、ヤマダ
電機ではどのように克服するおつもりですか?
答:日本式の経営理念をそのまま伝えながら、同時に中国の消費者のニーズに沿うため、
私どもは日本で 100 名の中国人日本生を将来の中国店の幹部候補生として訓練しました。
すべての店舗には新卒の社員しか採用しません。ヘッドハンティングはせず、一から訓
練し、ヤマダ電機の経営モデルと理念を完全に伝えます。このようなやり方は時間がか
かり、コストもかかりますが、非常に投資価値のあるものです。特に中国人留学生のハ
ングリー精神は日本人学生よりも強く、1 号店の副店長はすでに中国人になりました。3
号店からはすべて中国人に経営を任せ、現地化を図ろうと考えています。
エコと海外市場が二大成長パワーと語る岡本潤
Fly UP