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国際物流のしくみ

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国際物流のしくみ
第
1
章
国際物流のしくみ
12
国際物流とは
重要性を増す国際物流!
高まる国際物流への注目!
企業経営における物流の役割、位置付けは急速に
れで利益を吐き出してしまうことも考えられます。
て、消費拠点にモノを送り込むという一連の物流プ
場 か ら 製 品 な ど を 輸 送 し、 物 流 セ ン タ ー を 経 由 し
流)の高度化に力を入れているのです。同時に、工
とらえ、その最適化を図るロジスティクス(戦略物
を受けて、国際セキュリティ対策や国際的な環境規
近年は、世界経済の急速なグローバル化の影響など
出も日本企業の至上命題となっています。ところが
小化をにらみ、海外マーケットのさらなる開拓、進
また、少子高齢化などによる国内マーケットの縮
なるわけです。
国際物流のしくみについての十分な知識が不可欠に
ロセスがグローバルに広がる傾向も強まっていま
制に迅速かつ適正に対応していくことが、製造業に
高まってきています。多くの企業が戦略的に物流を
す。 製 造 業 は そ の 生 産 拠 点 を 中 国、 東 南 ア ジ ア な
も求められるようになってきました。
そうした国際社会環境の変化を的確にとらえつ
ど、世界各国に広げています。海外の工場で生産さ
れ る 日 本 企 業 の 製 品 は、 海 上 輸 送、 航 空 輸 送 を 経
つ、国際物流の最適化を目指していく姿勢も必要に
物流とは物的流通の略です。物流に対して商取引
国際物流の枠組み
なってきているといえましょう。
て、日本国内に輸入されたり、第三国に輸出された
ただし、生産コストや現地の輸配送コスト、保管
りすることになります。
コストなどを安く抑えることができても、国際物流
の一連の流れのなかで高コストの部分があれば、そ
ロジスティクスの高度化
国際物流の最適化
Po i nt
01
第1章 国際物流のしくみ
13
貿易と国際物流の関係
貿易(国際商流)
貿易と国際物流
は表裏一体の関
係にある!
国際流通
国際物流
の流れを商的流通(商流)と呼んでいます。そして
物流と商流をあわせて流通という上位概念でくくら
れます。また国際間のモノの流れを国際物流といい
商流)と呼ばれているわけです。
ます。ちなみに国際的な商取引の流れが貿易(国際
国際的なモノの流れとそれに関する商取引は、輸
出と輸入を両軸として行われます。
たとえば、原材料・部品などを海外から購入し、
うケースでは、原材料・部品などの輸入、完成品の
国内の工場で製品を生産し、第三国に販売するとい
輸出という2つの国際物流のプロセスが存在するこ
とになります。その際、輸出・輸入の双方について
どのような輸送手段を選択し、どこにどれくらいの
ればなりません。
期間、保管するのかということを的確に決定しなけ
ただし、国内の物流ならば、トラック輸送や鉄道
輸送が中心となるでしょうが、国際物流では船舶や
航空機を使うケースがほとんどになります。また、
保管方法や貨物の検査などについても、国内の物流
とは異なることが少なくありません。そうした国際
物流の特殊性を把握していく必要があるわけです。
14
国際物流の構成要素
(海外・保税地域など)、包装・梱包(コンテナ・通
置など)、荷役(保税地域での荷役など)、流通加工
国際物流の機能には、輸送(国際輸送)、保管(蔵
(フ ォ ワ ー ダ ー)、 航 空 運 送 代 理 店 業 に 区 分 さ れ ま
業 者 は 航 空 運 送 業(キ ャ リ ア )、 貨 物 利 用 運 送 業
が多くなっています。なお、航空貨物輸送を行う事
い製品やサンプル製品などの輸送に用いられること
六大機能を有機的に結合!
い 箱 な ど )、 情 報 管 理( 国 際 貨 物 の 情 報 管 理 な ど )
合輸送に分けて考えることができます。島国である
国際輸送は大きく、海上輸送、航空輸送、国際複
の輸送契約で2国間の貨物の輸送を行うことになり
義によると、国際間を複数の輸送手段を用いて一つ
国際複合輸送は、「国連国際物品複合条約」の定
す。
日本の地域特性を考えると、国際輸送は海運か空運
ます。複数の輸送手段が使われていても、輸送は一
があります。
のどちらかということになりますが、その双方を併
貫した責任をもって行われ、トータル運賃が設定さ
れることになります。また「複合運送証券」も発行
用するという選択肢も存在するわけです。
海上輸送は荷主が自らの船で貨物を輸送すること
い状態のことです。通関前の輸出、輸入の許可を受
保税とは、輸入された貨物が通関を済ませていな
されます。
に依頼します。さらに、外航海運業者には船舶運航
も不可能ではありませんが、一般には外航海運業者
業、船舶貸渡業、海運仲立業、海運代理店業があり
けていない貨物は保税地域のなかに蔵置されること
になります。また保税地域にある倉庫のことを保税
ます。
航空輸送は緊急性、季節変動性、トレンド性の高
海運と空運による国際輸送
保税倉庫の活用
Po i nt
02
第1章 国際物流のしくみ
15
国際物流の六大機能
輸送(国際輸送)
保管(蔵置など)
情報管理(国際貨
物の情報管理など)
国際物流の機能
荷役(保税地域で
の荷役など)
包装・梱包(コン
テナ・通い箱など)
流通加工(海外・
保税地域など)
国連国際物品複合条約:国際複合運送などについて定めている。
複合運送証券:国際輸送の全行程の責任を持つ「複合運送人」が発行する運送状のこと。
倉庫といいます。保税倉庫を使うことで、通関前の
検品、仕分けなどが可能になります。不良品などが
見つかった場合にも通関することなく、積戻しをす
に さば
どについて消費税がかからないなど、税金面でのメ
ることが可能になります。また、輸送料、保管料な
リットもあります。
国際物流の荷役には海運における船内の荷捌き
(船内荷役)、沿岸における荷捌き(沿岸荷役)
、あ
どの業務があります。
るいは保税倉庫などにおける仕分け、ピッキングな
国際物流における流通加工としては、保税地域な
どにおける輸出入する製品の検品、検針、ラベル貼
り、梱包などがあげられます。
国際物流における包装・梱包としては、輸出入さ
れる製品などの特性を十分理解しつつ、コンテナ、
パレット、通い箱、段ボール箱などを上手に活用し
ていきます。
国際物流における情報管理には、グローバルな視
点から在庫管理システムを導入していくことが不可
欠になります。コンテナ貨物の位置情報などを可視
化するためにコンテナ管理システム、通関処理シス
テムなどの効果的な活用も必要になります。
用 語 解説
16
グローバルサプライチェーンの構築と国際物流
れば、上海近郊の工場から出荷された製品を保税区
ますます遠くなる生産地!
長くなるサプライチェーンの距離
なります。保税倉庫での検品や流通加工が入る可能
性もありますが、モノの流れは比較的、単純です。
の倉庫を経由して日本に輸入するというスキームに
点も生活レベルが向上すると、それにあわせて労働
ところが工場が内陸にシフトし、サプライチェー
さまざまな製造業は生産コストの低減を目的に海
コストも上昇することになります。その結果、製造
ンの距離が伸びると、スキームはやや複雑になりま
外に進出していきました。しかし、それらの海外拠
業はより賃金の安い地域に生産拠点をシフトさせて
す。内陸の拠点からトラック輸送でもっとも近い港
タイムが長くなるリスクが出てくるので航空輸送を
湾に製品などを運ぶのか、それともそれではリード
め、生産拠点は中国内陸や「チャイナプラスワン」
行うのか、といった具合に存在するいくつかの選択
て進出していた上海地域の労働コストが上昇したた
と呼ばれるさらに低コストで工場運営が可能なベト
肢を吟味する必要性が出てくるわけです。
いくことになります。具体的にいえば、以前は競っ
ナムやインドに移ることになったのです。いいかえ
一例をあげれば、中国内陸から日本の地方都市へ
に持ってきて、そこから日本国内をトラック輸送す
の航空輸送のケースでもダイレクトに成田国際空港
れば、日本を起点としたグローバルサプライチェー
そしてサプライチェーンの距離が長くなれば、そ
ぶというルートを用いるか、時期に応じて変わる航
るか、韓国の仁川国際空港から日本の地方空港に運
ンの距離はどんどん長くなる傾向にあるわけです。
れにあわせて国際輸送のリードタイムも長く、複雑
になります。たとえば、中国の生産拠点が上海にあ
国際輸送のリードタイム
グローバル在庫管理
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03
第1章 国際物流のしくみ
17
長くなるグローバルサプライチェーンの距離
グローバル在庫管
理の必要性などが
高まる!
生産拠点、物流拠点など
は中国オンリーから
「チャイナ・プラス・ワ
ン」
、
「チャイナ・プラス・
ツー」の時代へ
国際物流の重要性が
高まる!
ますます
複雑化する方向
長くなる傾向
グローバル
サプライチェーン
在庫が重複するリスクが存在するぞ
空運賃などの物流コストを注視、検討しながら柔軟
に決定しなければならないケースもあるのです。
また、在庫管理については、国別、あるいは地域
グローバル在庫管理の必要性
ワイドでの生産量がかさみ、在庫が重複するリスク
を回避すべく、グローバル在庫管理システムを導入
する企業もあります。
サプライチェーンの距離が長くなれば、当然なが
らリードタイムも長くなります。
しかし、リードタイムが長くなり、生産拠点から
消 費 地 へ の モ ノ の 流 れ に 時 間 が か か れ ば、 タ イ ム
リーに商品を売りさばく機会を逸することにもなり
かねません。したがって、「販売機会を逃がさない
ようにするためには在庫重複もやむなし」という社
内の声が大きくなることも少なからずあるわけで
す。
ただし、当然のことながら、たとえグローバル規
模でも製品在庫が過度に重複すれば、企業にとって
は体力の低下を招きかねません。グローバルサプラ
イチェーン全体を見渡し、可能な限り、国際在庫の
重複も避ける努力が必要になってくるわけです。
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