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ILC - 九州大学 素粒子実験研究室
素粒子物理・原子核物理分野の「大型施設計画・大規模研究 計画に関するマスタープラン」に関するシンポジウム ILC計画 2016年2月12日@日本学術会議講堂 九州大学 理学研究院・先端素粒子物理研究センター 川越 清以 ©Rey.Hori/KEK 1 International Linear Collider 国際リニアコライダー e+e−衝突エネルギーフロンティア 250-500 GeV & 1 TeV Upgrade 器 加速 形 主線 グ リン グ ピン ン ダ 電子源 速器 主 加 線形 ーム 電子ビ 陽電子源 1km 3 長 全 l 構造を持たない素粒子とその反粒子の対消滅 l 線形加速器➡エネルギーの拡張性 l ビームエネルギー・偏極度をコントロール 2 最高エネルギーのコライダー LHC: ハドロンコライダー p p 多くの反応が同時に起こる パートンの衝突エネルギーが不明 Center-of-mass energy: 7-14 TeV ILC: レプトンコライダー e+ e− わかりやすい反応 正味の衝突エネルギーが既知 Center-of-mass energy: 250-1000 GeV どちらも必要。相乗効果で自然を解明 ー • W/Zの発見(SppS)⇒精密測定(LEP) • Top質量の予測(LEP)⇒発見(Tevatron) • ヒッグス予測(LEPなど)⇒発見(LHC) • ヒッグス、Top測定(LHC)⇒超精密測定(ILC) • BSM発見(LHC)??⇒精密測定(ILC) • LHCで発見しづらい新粒子をILCで発見 3 素粒子物理は新たな革命の時代へ 2013年シンポジウムのスライドから ヒッグスの発見で素粒子の標準模型は一応の完成。 しかし、標準模型を超える新物理は必ずある。 è新物理を発見、解明することがILCの使命 4 ILCが圧倒的に優れているところ ビーム エネルギーと偏極度を コントロールできる Pelectron = ±80% Ppositron = ±30% e− 反応の素過程 LEPで十分理解されている 理論の不定性 <1% 検出・測定 低バックグラウンド 超細分化されたセンサー データは全部とる 粒子の生成 Recoil info γ/Z/Z’ … ヒッグス トップクォーク 新粒子、たとえば ダークマター e+ などの可能性 質量、スピン/CP, 結合定数などの決定 新しい物理と新しい基本原理の発見 5 ILCでのヒッグス粒子精密測定(3段ロケット) Chapter 2. Higgs Boson Step1: 質量, 生成断面積σ(ZH), 崩壊分岐比 @ 250 GeV - P(e , e+)=(-0.8, 0.3), M =125 GeV e+ e+ ⌫¯ Z W+ Z⇤ h SM all f f h Zh 300 WW fusion ZZ fusion 200 H W H e Cross section (fb) Step2: WW fusion を用いた全崩壊幅測定 @ 500 GeV 400 100 e Higgs-strahlung peaks around 250 GeV ⌫ WW fusion dominates at high energies 0 200 250 300 350 400 450 500 s (GeV) Step3: ヒッグス自己結合@ 500-1000 GeV e+ e+ ⌫¯ Z Z ⇤ W H e H H W+ H e Figure 2.4.7: Production cross section for the e+ e ! Zh process as center of mass energy for mh = 125 GeV, plotted together with those for fusion processes: e+ e ! ⌫⌫H and e+ e ! e+ e H. H ⌫ experimental uncertainties due to bremsstrahlung. It should be not capability to precisely reconstruct the recoil mass distribution from H defines the momentum resolution requirement for an ILC detector. The reconstructed recoil mass distributions, calculated assumin p duced with four-momentum ( s, 0), are shown in Fig.2.4.8. In the FSR and bremsstrahlung photons are identified and used in the c + 6 ヒッグス粒子精密測定で新物理に迫る ヒッグス粒子: 素粒子か、複合粒子か? Supersymmetry Composite Higgs 15 % (MCHM5) MSSM (tanβ = 5, MA = 700 GeV) t b τ c Z Higgs Coupling Deviation from SM Higgs Coupling Deviation from SM (MSSM) W 10 % ダウン型フェルミオンが上ズレ 5% 0% -5 % -10 % 15 % t b τ c Z W 10 % 5% 0% -5 % 全体が下にズレる -10 % ILC Projection [Ref. arXiv:1310.0763] -1 -15 % MCHM5 (f = 1.5 TeV) ILC Projection [Ref. arXiv:1310.0763] -1 250 GeV, 1150 fb ⊕ 500 GeV, 1600 fb -15 % 250 GeV, 1150 fb-1 ⊕ 500 GeV, 1600 fb-1 ILC 250+500 LumiUp • 標準理論を超える効果が≦1%でわかる • ズレのパターンによって新物理のモデルを識別可能 7 Higgs 自己結合 電弱対称性の破れの解明 ヒッグスポテンシャルの形状 電弱エネルギースケールでの宇宙のバリオン生成に関与 h h λ λ h h four-point coupling ヒッグス粒子が終状態に2個 1. 2. h v 断面積は小さい O(100) events 干渉するダイアグラムのた めに感度が下がる h h 干渉するダイアグラム hhh coupling W,Z W,Z H H (VVH coupling)2 λの測定 O(10)% H 現在詳細研究中 VVHH coupling 8 トップクォークの精密測定 (1) 質量(MS)精密測定 エネルギースキャン 真空の安定性 (2) ビーム偏極と4 運動量保存 left/right-handed couplings. Deviation in ttZ coupling ΔMt(1s)=50MeV ΔMH=30MeV SM/SUSY LHC ILC ILC 3σ SM/SUSY LHC, Ref. arXiv:1311.2028 ILC, Ref. arXiv:1307.8102 複合ヒッグス模型の識別 9 新粒子:暗黒物質探索 @ ILC • ヒッグス粒子が暗黒物質に崩壊 – mDM < 0.5mHの場合に探索可能 – Br(H→inv.)<0.4% (@250GeV, 1150fb-1) ISR photonによる探索(mono-photon events) – モデルに依存しない探索 – mDM < 0.5(ECM−Eγ) の領域まで探索可能 Events / 2 [GeV] • 1600 1400 1200 ILD Simulation s = 250 GeV pol(e ,e+) = (+0.8,-0.3) 250 fb-1 1000 ZZ WW Z eW H qqH qqH,H 4 H invisible BF 10% 800 600 400 200 0 100 110 120 130 140 150 160 Recoil Mass [GeV] Higgs invisible decay Mono-photon events 10 軽い超対称性粒子の探索 LSP Bino-like M1 < M2, µ Wino-like M2 < M1, µ Higgsino-like µ < M1, M2 Bino-like (M1, M2, µ, tanβ) point is randomly chosen 0.05<M1,M2,µ<2 TeV, 1<tanβ<70 Wino-like ISRphoton+soFparGcles Higgsino-like Higgsino like NLSPとLSPの質量差がない場合が重要。 ILCはその場合でも探索可能 11 ILC加速器概要(TDR) 減衰リング 電子源 陽電子・主線形加速器 物理実験・粒子検出器 パラメータ� 陽電子源 重心エネルギー� 電子・主線形加速器 全長� 鍵を握る技術 few GeV pre-accelerator ビーム輝度� source KeV damping ring few GeV ナノビーム技術 超伝導高周波加速技術 few GeV 250-500 GeV bunch compressor main linac final focus IP collimation extraction & dump 数値� 500GeV� 31km� 1.8x1034cm-2s-1� 繰り返し周波数� 5Hz� ビームパルス長� 0.73ms� 平均電流� 衝突点ビームサイズ� 超伝導加速電界 共振特性� 5.8mA(inpulse)� 5.9nm� 31.5MV/m Q0=1x1010� 12 技術設計書完成後(前シンポジウム後)の技術進展 • ナノビーム技術: KEK-ATF2:ビーム最終収束で、44nmを達成(目標は37nm) ‒ ILCのエネルギー(250GeV)では、7nmの達成に相当(設計値は6nm) • 超伝導高周波(SRF)技術 : EuropeanXFEL: ‒ SRF空洞(~100%)製造・試験を完了(2015.12)。加速電界(平均)、30MV/mに迫る。 ‒ クライオモジュール(8台連結ユニット)の>70%を完了。性能安定性、成熟 Fermilab: ‒ クライオモジュール性能、ILC仕様値を達成: 平均電界>31.5MV/m KEK: ‒ 超伝導RF試験施設での加速空洞モジュール試験、ビーム加速試験(2016年度目標) ‒ 8空洞連結クライオモジュールで、平均電界 >31.5MV/mでのビーム加速を目指す。 • ILC加速器設計 LCC: 性能・コスト最適化 (MEXT-ILC有識者会議での議論を迅速に反映) ‒ ‒ 衝突点実験ホールへのアクセス方法à 立て坑 メインライナック・トンネルを、1.5km延長。設計エネルギー到達信頼性の向上 13 KEK-ATFによるナノビーム技術の検証 ATF(Acc.TestFacility):ILCと同じビーム光学設計による技術検証 目標 ビームサイズ: 5.9nmat250GeV(ILC)à37nmat1.3GeV(ATF)に相当 技術進展: ~300nm(in2010)à~150nm(in2012)à≤44nm(in2014)実現 ILC ATF2 BeamEnergy[GeV] 250 1.3 L*(IPtoFF)[m] 4.0 1.0 β*[mm] 0.48 0.1 Emibance(v)[pm] 0.07 12 FFBeamSize[nm] 5.9 37 few GeV pre-accelerator source KeV damping ring few GeV few GeV bunch compressor 250-500 GeV main linac final focus extraction & dump IP collimation ILCでのビーム収束光学をATFで検証 14 Media.xfel.au, Dec. 2015 Recent Progress with EU-XFEL 欧州自由電子レーザ 施設の建設 (17.5 GeV) Acc. : ~ 1/10 scale to ILC-ML’s SRF system: ~ 1/20 to ILC SRF’s 15 1.3 GHz / 23.6 MV/m 808 SRF acc. Cavities 101 Cryo-Modules (CM) 進捗: 2013: 建設開始 2015: SRF空洞(100%) 完成 XFEL CM (70%) 進捗 計画: 2016: E-XFEL 加速器完成 2017: 自由電子レーザ実験開始 DESY 1 km SRF Linac XFEL site 17th International Conference on RF Superconductivity Detlef Reschke, DESY DESY E-XFEL:電界性能 (初回試験) D.Reschke/SRF2015 SRF 空洞製造・試験状況; 空洞台数, 738 台 (2015/9現在) • 製造企業: RI and EZ (1/2 each) • 性能評価試験:DESY RI: “電解研磨”によって、最終表面処理 (ILC-SRF と同様の処理) EZ: 化学研磨で最終表面処理 (コスト抑制) ノート: • • 最高到達・電界 RI <G>MV/m 33 EZ C 29.6 Yieldat 28MV/m 73% 86% “電解研磨”が、~10% 高い性能を示す。 初回、低い性能を示した空洞を”超純水リンス処理 “を行うことで、性能改善(性能が低い空洞に有効)。 利用可能・電界(Q0>1010) (ILC-要求) EZ C 31.4 RI 29.4 26.3 27.7 --- (35) 79% 66% 44% 54% (90) 16 KEK-STF: SRF空洞・クライオモジュール性能 ビーム加速 àJFY2016 (目標) SRF空洞単体・CM組み込み後の電界性能 Module Cav.# 空洞単体 [MV/m] CM1a 1 2 3 CM1b 4 5 6 7 CM2a 8 9 10 11 12 37 36 38 36 37 35 39 36 12 36 32 32 FY14:CM1+CM2a(8+4)組立 FY15:CM内での空洞単体性能評価 RF分配システム整備 FY16:8空洞でのCM性能試験 ビーム加速 (目標>250MeV) CM内 (pulse) 39 37 35 36 26 16 26 32 18 34 33 32 [MV/m] Gradientstable Degraded Gradientstable *12空洞・平均電界:>31MV/m 上位8空洞で: 34.8MV/m 17 TDR以降の設計の進展と設計改訂の統括 目的: 性能目標を保ちつつ、更なる確度・信頼性の向上、コスト効果の高い設計 プロセス: 設計変更プロセスの厳密に管理àChangeManagementBoard(CMB) 学術会議、ILC有識者会議での議論、指摘に迅速に対応 課題 ノート 決定 CR-002 最終ビーム収束パラメータの共通化、L*(4.1m) 信頼性向上 採択 CR-003 ビーム衝突点実験ホールへの竪坑アクセス 加速器・測定器の建設効率化、採択 CR-004 主ライナック・トンネル長、1.5km延伸 500GeV、到達信頼性向上 採択 CR-005 ILC加速器パラメータのアップデート 加速器設計値の確度向上 採択 CR-006 最終収束磁石近辺にビーム位置モニター 採択 CR-007 日本の山岳地域を前提とした設計 TDRオプションの選択・統一 CR-008 ビームオプティクス2015の確定 採択 採択 CR-TBD 主ライナックトンネル中央壁の最適化 、安全指針 ビーム加速中のアクセス無し 安全性徹底 審議中 CR-TBD 冷却システムのレイアウト最適化、安全指針 安全性徹底 審議中 変更プロセス・管理(CMB) 提案à 評価à 決定à 具体化 18 ILC測定器(ILDとSiD) 先進的なテクノロジーの高精細センサーを搭載 • 崩壊点検出器:高精細&低物質量pixel検出器 • 飛跡検出器(TPC):高分解能&低物質量、 MPGD読み出し • カロリメータ:超高精細センサー、5mm角 (ECAL)、3cm角(HCAL) 検出器 センサーサイズ ILC ATLAS 精細度比 崩壊点検出器 5×5 mm2 400×50 mm2 800倍 飛跡検出器 1×6 mm2 13 mm2 2.2倍 電磁カロリーメータ シリコン 5×5 mm2 39×39 mm2 61倍 Return Yoke HCAL Coil ECAL TPC Forward components ETD Beam line SET VTX SIT FTD ~15 m 高精細検出器を束ねるParticle Flow Algorithm カロリメータ中で各粒子のヒットを分離し、最も良い分解 能を持つ検出器で粒子のエネルギー測定をする事により Jet Energy Resolution 最小化する (荷電粒子àTracker、光子àECAL、中性ハドロンàHCAL) 技術選択à 工学設計à建設à実験開始 19 ILCTimeLine:ILC実現への時間軸 真のグローバルプロジェクトとして国際的に推進 (Pre-PreparaGon)and PreparaGonPhase Assuming(2+)4year Wearehere,2016 20 ILCの国際的な位置付け(設計から実現へ) ILC に対するサポートはヨーロッパ、アジア、米国での戦略においてお墨付きを得ている 加速器技術が成熟しているのはILCのみ、Circular Collider に関しては LHCよりも高いエネルギーの陽子・陽子衝突の国際的な研究を奨励。 FCCの予算は概算も公開されていないが、ILCの何倍かであろう。 余程の技術革 新がない限り、CERNがいくら頑張ってもFCCの国際的予算獲得は容易でない。 21 研究者による国際推進体制 Japan Productivity Center Consulting Dept. 2013年2月21日 リニアコライダー・コラボレーション(LCC)発足 国際将来加速器委員会(ICFA) 世界の大研究所の所長/研究コミュニティの代表者 Linear Collider Board (LCB) 議長 駒宮幸男(東京大学) LCC Linear Collider Directorate (LCD) ディレクター リン・エバンス (CERN/LHCの元加速器責任者) 副ディレクター 村山 斉 (東京大学Kavli-IPMU機構長) CLIC ILCの次世代 の加速器(R&Dの推進) スタイナー・スタプネス ILC 本設計 マイク・ハリソン Physics & Detectors 物理・測定器 山本均 ※日本の中核研究機関:高エネルギー加速器研究機構(機構長:鈴木⇨山内) 22 23 文部科学省によるILCの検討 日本学術会議 答申 (2013) 文部科学省 ILCタスクフォース (2013年設立) 委託調査 (野村総研) (2014,2015) 国際リニアコライダー(ILC)に関する 有識者会議 (2014〜) 波及効果+ 世界の情勢、 技術的実現可能性 素粒子原子核 物理作業部会 (2014〜) 技術設計報告書 (TDR)検証作業部会 (2014〜) 人材の確保・育成 方策検討作業部会 (2015〜) 24 有識者会議の中間とりまとめ 2015年8月に日本語版・英語版を公表。以下は、3つの提言 25 (2016.01.07LC計画推進委員会、山内KEK機構長) 26 まとめ • ILC は真にグローバルなプロジェクトであり、国際的に推進されている。 • ILC は (HL-)LHC に対し相補的・相乗的なプロジェクト – エネルギー拡張可能, ビーム偏極, エネルギースキャンが強力な手段 • ILCでは、バックグラウンドの低いクリーンな実験環境において、 ヒッグスボゾンとトップクォークの詳細研究、 新粒子の探索を通じて、 標準理論を超える物理の発見が期待されている。 • ILCの加速器技術は成熟しており、建設できる。 – i.e. 超伝導・高加速勾配RF, 最終収束系 • 日本では調査検討予算が措置され、ホストとなるための公式な検討を 文科省が行っている。 これを成功させるためには、国外においても政府 ・関係省庁においてILCがpositiveに認知されることが必要。 • 日本では、ILC国際研究所建設のための超党派国会議員連盟、先端 加速器科学技術推進協議会(産業界)、地方自治体がサポート 27