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Vol.08(2004年1月発行)

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Vol.08(2004年1月発行)
2004.01 Vol.8
1 … < 報 告 > 2003年表彰一覧
2 … < 海 外 報 告 > 中国・北京に生態環境・景観設計の合弁会社を設立
4 … <Working Report> 水質浄化機能の定量化手法としての泥質干潟生態系モデルの開発
6 … < コ ラ ム > ISO14001の自己適合宣言について
8 … <Working Report> GC/イオントラップ型MS/MSを用いたPCBの迅速定量
10 … < コ ラ ム > 化審法の改正に伴って実施される生態系への影響試験について
12 … <Working Report> 世田谷「子ども環境カレッジ」レポート
14 … < コ ラ ム > 2003年の環境問題の動向
16 … < ミ ニ 知 識 > 環境関係の国際機関の概要
報告
2003年表彰一覧
会社
受賞
受賞業務名
本社
環境常時観測局保守点検及びデータ整理業務委託
管理技術者
受賞日
板橋孝明
7/15
授賞者 : 国土交通省関東地方整備局東京国道事務所
沖縄支店
石垣港環境調査
藤原秀一
7/17
授賞者 : 内閣府沖縄総合事務局
名古屋支店
平成14年度 木曽川中部環境対策検討業務
吉村友利
7/17
授賞者 : 国土交通省中部地方整備局木曽川上流河川事務所
九州支店
八代海域調査検討業務
堀家健司
大分川ダム猛禽類調査業務
7/18
泉伸司
樹林帯・貯砂ダム事業効果検討業務
伊藤光明
授賞者 : 国土交通省九州地方整備局
環境創造研究所
(計量管理の推進)
11/07
授賞者 : 社団法人静岡県計量協会
大阪支店
(計量の適正化)
11/17
授賞者 : 社団法人大阪府計量協会
個人
受賞者
対象業務名
吉村 友利
三河湾覆砂等環境調査
受賞日
7/16
授賞者 : 国土交通省中部地方整備局
板橋 孝明
環境常時観測局保守点検及びデータ整理業務委託
7/15
授賞者 : 国土交通省関東地方整備局東京国道事務所
−1−
海外
報告
中国・北京に
生態環境・景観設計の合弁会社を設立
∼北京江河泛亜生態環境景観設計有限責任公司∼
常務執行役員事業開発本部長 伊藤光明
当社は、平成15年2月に、中国北京事務所を開設し、中
あり「西部開発」が中国の至上命題となっているが、北京
国における環境コンサルタント市場の開拓に努力してきた
∼上海∼香港・広州へと連なる東岸地域は、年率10%以
が、このたび、主に河川・湖沼・沿岸域の生態環境の保全
上の経済成長が達成されており、東岸地域の高度成長が
計画、生態環境に配慮した施設景観の整備計画・設計を
西部地域を牽引する構図となっている。
業務とする会社を、現地企業と合弁で設立した。この会社は、
近年中のWTO加盟、2008年の北京五輪、2010年の上
資本金100万元(日本円で約1400万円)で、国土環境が50
海万博等がきっかけとなって、閉鎖的であった中国市場の
%を出資し、残る50%を現地企業が出資する形で、2003
国際社会への開放が急速に進んでおり、国際社会の一員
年10月14日に「北京市工商行政管理局」の営業許可を受
として、東岸地域では環境への関心・配慮も飛躍的な高ま
けて正式に発足した。
りをみせている。
資本金の50%を出資した中国企業は、マイクロソフト社
当社の北京事務所開設もこの動きに対応して、未成熟な
関連のソフト開発を担当している世界企業「PACIFIC-
中国の環境コンサルタントビジネスへの参入を目指した第
TIME社」の中国法人「太平洋時代(中国)」であり、中国の
一歩であったが、外国企業が中国内でコンサルタントビジ
水利部や電力部等でのソフト開発を行っている会社である。
ネスを展開するには、種々の法規制や資格要件の規制等
会社名や所在地、設立目的等は次頁のとおりである。
による制約があり、具体的な業務展開には、現地法人の
会社のオフィスは、現在は同上住所の「太平洋時代(中国)」
設立もしくは現地企業との合弁会社の設立が必要であった。
のオフィスに間借りしているが、年内に同じビル内に独自
今回の合弁会社は、中国の河川行政の中枢にいた李春
のオフィスを開設する予定である。
敏氏、河川環境研究の第一人者である劉樹坤氏という二
会社のスタッフは、後記の4名の菫事に加え、経理や総
人の良き友人を当社が得ることができ、この二人の尽力で
務を担当する事務職員を若干名採用するが、技術職員は
設立にこぎつけることができ、設立直後に業務を受注でき
十分な経験と能力を有した者を順次採用していくこととし
たことで、順調な滑り出しをすることができた。
ており、当面は、業務受注のつど、プロジェクト方式で、適
中国内での業務に、当社から多くの技術者を派遣して、
当な専門家と契約して業務遂行にあたる。
その実施にあたることは、コスト面で見合わないことは否め
社長にあたる総経理には、菫事の康崢氏が就任し経営
ない。業務の大半の部分は中国内の技術者で遂行してい
全般にあたり、業務を取り仕切る執行菫事として、水利部(日
くことになるが、環境対策先進国の日本の事例や当社の
本の国土交通省河川局に相当)OBである李春敏氏と劉
実績、ノウハウを情報として提供していくことにより、中国の
樹坤氏が業務受注や業務遂行のチーフを務める。
環境コンサルタント市場で、独創性と強い競争力を持った
既に、この会社の業務第1号として、広東省澄海市沿岸
会社に成長していくことができるものと確信している。
部埋立地の基本構想策定業務を約50万元(約700万円)
ちなみに、この会社の設立前に実施した中国内の市場
で受注しており、本件を皮切りに数件の業務の引き合いを
調査によると、現在、中国内で景観設計を実施している会
受けているところである。
社は数十社あるが、河川水辺の景観設計を主業務として
中国は広大な国土と13億人の人口を抱える巨大市場で
いる会社はなく、特に、当社の得意分野である「生態環境
あり、内陸部は貧困問題を抱え「環境より開発」の状況に
の保全・創造」のノウハウを十二分に生かした「生態環境に
−2−
配慮した景観」の計画・設計を「売り物」としてアピールして
環境の保全と創造」の視点を植えつけていくことが、当社の、
いくことでリードを保つことができると予測している。
そして新会社の大きな願いである。
順調な滑り出しをみせた合弁会社であるが、皆様のご理
解とご協力のもと、さらなるご支援をいただき、この会社が
大きく羽ばたき、高度成長を続ける中国の環境に、「生態
定款
名 称:北京江河泛亜生態環境景観設計有限責任公司
英語名:BEIJING ASIAN ECO-ENVIRONMENT & LANDSCAPE PLANNING CORPORATION (AELP)
所在地:中国北京市宣武区白広路2条1号
会社設立の目的:
世界各地および中国国内の都市,河川,湖沼,森林,観光地等において,生態環境と種景観に関する保
護,創造,計画,設計,建設等のサービスを提供する。これをもって,中国における市環境の現代化建設
を推進し,生態環境と人文環境を保護する。また,各地域の異なる資源に応じて,観光等を目的とする景
観創造計画を行い,当該地域の経済発展を促進する。更に,状況が許容する範囲内で,合弁会社が業
務範囲を拡大し,将来的な景観計画作りのルートと方法を開発し,中国中西部の開発建設に貢献する。
定款に定める業務内容:
各種生態環境の創造,景観の計画と設計,環境関連項目の計画策定,計画と設計,建築工事の実施,
建築工事の監視管理,プロジェクトの運営管理,技術的なコンサルティング業務とその他のサービス業務,
関連設備機器の代理店業務と販売。
菫事(日本の会社の取締役にあたる):
菫事長: 伊藤 光明(国土環境)
菫 事 : 康 崢(太平洋時代中国総経理)
菫 事 : 李 春敏(前水利部遼河水利委員会主任)
菫 事 : 劉 樹坤(前水利部水利水電科学研究院院長)
<参考> 国土環境㈱中国北京事務所の概要
2003年2月、当社初の海外拠点を中国の北京に開設しました。現
地の調査や測定、分析に係る企業や研究所と連携し、北京五輪に
むけてますますニーズが高まっている中国の環境質の調査や測定
分析を支援するため、機器や技術の導入を行うほか、日本の政府
開発援助(ODA)対象案件の発掘を主要な業務といたします。急進
な発展を遂げ、「世界の工場」として嘱望される中国を舞台に新た
な市場拡大を図ります。
−3−
Working
Report
水質浄化機能の定量化手法としての
泥 質 干 潟 生 態 系 モ デ ル の 開 発
はじめに
干潟・藻場が水質浄化機能を有し、沿岸水質に対して
重要な役割を担っていることが近年の研究から明らかに
なってきました。しかし、わが国においては、1945∼1990
年の45年間に全国の干潟域の38%以上が埋め立て等に
よって消失しています。また、こうした海域は、陸域からの
流入負荷等の人為的な変化の影響を受けやすく、赤潮
や海水の貧酸素化、その他の水質変化等に伴う環境の
変化が起こりやすいことから、近年、水質、底質、生物の
実態把握や環境保全対策等の立案と実施が求められて
います。
こうした海域においては、環境の実態把握と原因・対策
図1 泥質干潟・浅海域生態系の模式図
の検討のためには、生態系モデルを活用した解析が有
効な手段であると言われていますが、これまでの日本に
おける調査・研究では二枚貝が優占する砂質域を対象と
ランクトンがそれぞれ光合成を活発に行い、干潟域の豊
した生態系モデルの構築が多く、泥質域において生態
かな生物生産を支えています。さらに、この豊かな生物
系や物質循環等を再現するような試みはほとんどみられ
を狙って鳥類も集まってきます。
ていません。
干潟生態系モデル
このような状況を踏まえ、当社では、泥質域の生態系や
物質循環の特徴を反映し、物質収支等の解析を通じて
生態系モデルは、このような泥質干潟の特徴を可能な
泥質の干潟・浅海域の水質浄化機能について検討する
限り再現できるように、現地調査を行った上でモデルに
ことのできる「浮遊系−底生系結合生態系モデル」を開
組込む生物や循環過程を決めました。こうしてできあが
発しました。
ったのが、図2に示す生態系モデルです。このモデルは、
図2に示すように浮遊系(水中)と底生系(底泥)を結合し
泥質干潟の生態系
たもので、生態系を構築する様々な生物、非生物を機能
等でグループ化するとともに、それらの相互作用を数式
図1は、日本の泥質の干潟・浅海域生態系の模式図で
化し、主要な生体元素である炭素、窒素、リンにより生物
す。ここには、地盤の高さによって、塩性植物から、カニ、
の現存量や物質循環量を計算します。モデルでは、浮
ハゼ類、ゴカイなどの多毛類、二枚貝類が見られ、浅海
遊系、底生系ともに、対象領域を正方メッシュに分割した
域ではノリ養殖も行われています。また、目には見えませ
レベルモデルを用いています。
んが、干潟域の泥では付着珪藻が、水の中では植物プ
また、流速が限界底面せん断応力を越えた場合に底
泥の巻き上げが生じるものとして巻き上げ現象をモデル
化しています。このほか、浮遊系・底生系での溶存酸素
濃度をモデルで計算し、生物による生産・消費により嫌
気的な環境が形成される状況を再現するとともに、これ
による底生生物の現存量や脱窒、硝化、分解・無機化へ
の影響についてもモデル化を試みました。このような泥
質の河口海域でみられる現象についての定式化を通じて、
−4−
泥質の干潟・浅海域における物質循環の特性を再現で
動力となっている場合が多いのですが、泥質干潟では多
きるようなモデルを構築しました。
様な生物がバランス良く存在し、高い基礎生産を軸とし
モデルを動かす際には、対象とする海域で現地調査を
て大きくて回転の速い物質の流れを実現しています。そ
行い、再現性の確認をするための検証値やパラメータを
の結果、砂質干潟では、二枚貝の濾過による水中の懸
取得します。また、二枚貝の濾水速度など生物の代謝過
濁態有機物の除去が浄化機能の主要因となるのに対し、
程については、既存の知見がない場合には室内実験も
泥質干潟では、泥表面の付着珪藻による無機窒素やリ
行います。
ンの固定、脱窒など無機栄養塩の除去が浄化機能の主
要因となります。このような干潟の場合、有機物について
結果の評価
は、周辺海域に対して負荷源となる場合がありますが、こ
計算結果は、生物等の年間計算結果を現地調査結果
れは見方を変えれば、泥質干潟は高次の生物に餌を供
と比較を行うほか、脱窒速度や底質からの溶出速度等の
給する「生産の場」であると位置付けることができます。
室内試験結果と比較して再現性の確認を行います。一
定の再現性を確保していることが確認された上で物質収
おわりに
支を算定し、泥質域における物質循環の特性等を解析
します。海域の有する浄化機能は、物質循環の結果とし
このモデルにより、今後、環境改善対策を講じた場合
て評価を行います。
の影響の把握とその評価等が可能となり、効果的な海域
砂質干潟では優占する二枚貝の濾水が物質循環の駆
の管理に活かされるものと考えられます。
図2 泥質干潟域の生態系モデル概念図
(環境技術本部 細田昌広)
−5−
ム
コラ
ISO14001の自己適合宣言について
はじめに
(件)
ISO14001の認証登録数は、日本適合性認定協会のホ
50,000
ームページによると、世界で約5万件以上、国内では約
40,000
11300件(平成15年9月時点)となっています。
30,000
ISO14001:1996本文の1章:適用範囲には、以下のよう
に第三者認証登録(審査登録=certification/registration)
20,000
に加えて、自己適合宣言(自己決定・自己宣言=self-
10,000
determination/declaration)が明記されていますが、これま
0
世界のISO14001認証登録数の伸び
(日本適合性認定協会のHPから)
では、「取引先から認められない」、「自己適合宣言のやり
方がわからない」という理由でほとんど活用されていません
でした。
しかし、昨年からISO14001を認証した組織で、更新せず
【ISO14001:1996の適用範囲から抜粋】
に自己適合宣言に切り替える地方自治体等の公的機関(長
この規格は次の事項を行おうとするどのような組織
野県飯田市、岐阜県金山町、滋賀県中主町、弘前商工会
にも適用できる。…
議所、等)が出てきました。以下に飯田市の自己適合宣言
−外部組織によりEMSの審査登録を求める。
の要点を紹介します。
−この規格との適合を自己決定し、自己宣言する。
ISO14001自己適合宣言への挑戦 ∼長野県飯田市∼
【ISO14001認証から自己適合宣言へ】
・「環境文化都市」を目指して、2001年1月にISO14001を認証取得。
・1年かけて自己適合宣言の体制・仕組み作りをして、2002年5月に市長が決定。
【自己適合宣言への体制・仕組みづくり】
・担当職員の資質向上:ISO担当職員に公費でEMS審査員補の資格を取得
・内部監査のレベルアップ:
民間の視点…「地域ぐるみ環境ISO研究会」(地元28事業所うち認証取得済み21事業所)
他の自治体…「長野県環境ISO自治体ネットワーク」による相互内部監査
・教育訓練の徹底(昇格、異動の環境研修制度化、イントラによる教育資料の提供)
・施策の拡大:
従来の省エネ・省資源と環境プランに配慮した施策から、公共工事の計画・設計における環境配慮にまで運用
システムを拡大。
【独自の環境マネジメントシステムの運用】
・独自の環境マネジメントシステム「いいむす21:I(い)I(い)M(む)S(す)21:Iida Environmental Mnagement System21」
「環境文化都市」を目指して、徹底したISO14001の本庁舎と、取り組みのない出先機関・施設との温度差を解消
自己採点・自己評価、本庁職員による現地での内部監査を経て、「市長認定」
「南信州いいむす21」=地域独自の認証で、小規模事業所の負担を軽減
【「むとす」∼まちづくりの原点∼】
「自分たちのまちは自分たちでつくろう」
環境自治体会議(http://www.colgei.org/)より
−6−
当社も2004年から
自己適合宣言に移行
当社は環境科学分野のコンサルタントであり、平成10
年4月に定めた「環境憲章」の下で営業しているといって
自己適合宣言への移行に伴う
システムの改定重点事項
も過言ではありません。
駒沢本社のISO14001によるEMSは、それなりにパフォ
◇内部監査による適合性と有効性検証の充実
ーマンスを達成し、継続的なシステム改善を果たしてき
◇社員の環境管理教育の徹底
ましたが、本年で3年目の更新時期を迎えるに当たり、
◇外部による適合性確認実施
ISO14001認証登録を取り下げて(発展的解消)、マンネ
◇EMSに係る活動内容の要点の公開
リ化を防止し、説明責任などを要するより厳しい「自己適
◇自己適合宣言書の公開
合宣言」のシステムに移行することにより、社員の環境改
(ISO/IECガイド22「供給者による適合宣言に関す
善取組意識に緊張感を持たせ、より高い環境パフォー
る一般基準」に準拠)
マンス達成や効果的なEMS改善を目指していくことにし
ました。
自己適合宣言は、第三者審査がなくなることを担保す
る新たな仕組みを策定し、より厳しく自組織を律した自
己責任によるシステム運用と説明責任に基づく公開をし
て、社会的信頼を確保していかなければなりません。
このため、既に本社では、以下のような事項を重点に
してEMSの改訂をいたしました。これらの要点は、2004
年1月以降に当社ホームページなどで公開する予定です。
今後の取組み
今後、自己適合宣言に踏みきった組織や移行を目指
す組織を募って研究会の開催を予定しており、内部だ
けでなくこうした他組織の取組活動も勉強しながら、自
己適合宣言に基づく環境マネジメントシステムの継続的
改善に努めて参ります。
ISO14001適合のEMSを運用している本社、環境創造
研究所以外の支店、営業所は、環境憲章の下で活動し
ていますが、関連会社も含めて環境省の環境活動評価
プログラムや地方公共団体で実施している簡易型EMS
によりマネジメントしていき、先行する本社等での自己適
合宣言への移行効果を評価し時機をみて、ISO14001自
己適合宣言を拡大していくことも検討してまいります。
皆様からのご指導をお願い申し上げます。
本件に関するお問い合わせは、下記にお願いします。
担当者:小林(ISO推進室)
TEL:03-4544-7727 FAX:03-4544-7706
E-mail:[email protected]
−7−
Working
Report
GC/イオントラップ型MS/MSを用いたPCBの迅速定量
はじめに
各種環境試料中のPCBの測定分析には、ダイオキシン
類等極微量物質の測定分析に利用されている高分解能
ガスクロマトグラフ/高分解能質量分析計(以降HRGC/HRMS)
が通常用いられています。しかし、この方法は①
HRGC/HRMSは正確な定量が行える一方で、装置自体
が高価でかつ稼動効率が低いこと、②209種類のPCB全
化合物を定量しなければならないという問題点があり、時
間とコストがかかっています。しかしながら、PCB汚染地
域の一斉調査など緊急を要する調査や検体数の多い調
査など、目的によっては迅速簡易定量が有用であると考
えられます。
そこで、HRMSに比べて稼動効率が良いイオントラップ
GC/イオントラップ型MS/MS
(Varian社)
型MS/MSを利用し、いくつかのPCB主要化合物のみを
測定して全PCB濃度へ規格化する、PCB迅速定量法を
開発いたしました。
PCB迅速定量法の特徴
測定時間の短縮
C1
PCBには209種類の化合物が存在しますが、環境試料
C1
(例えば大気、土壌など)やPCB製品中に存在する各化
C1
C1
合物の存在割合は媒体ごとに特徴があります。その点に
着目し、各媒体中において特徴的な化合物を数種類選
3,3’,4,4’-tetrachlorobiphenyl (BZ#77)
択し、その濃度を測定して、全PCB濃度に規格化 します。
209化合物全てを測定するためには、1検体あたり約4
C1
C1
時間必要ですが、測定対象化合物を数種類と少なくす
C1
ることにより、測定時間を約30分に短縮することができ、
C1
また、定量計算の時間も短縮可能となりました。
C1
2,3’,4,4’,5-pentachlorobiphenyl (BZ#118)
GC/イオントラップ型MS/MSによる測定の利点
測定にはGC/イオントラップ型MS/MSを使用します。
C1 C1
MS/MS法とは、目的化合物特有のイオン(親イオン)をイ
C1
オントラップ内に保持し、そのイオンにヘリウムを衝突さ
C1
せることにより、さらに別のイオン(娘イオン)を生成させて
C1
測定する方法です。MS/MS法を用いることにより、妨害
C1
C1
物質を排除できるため、質量分離能に優れた結果が得
2,2’,3,4,4’,5,5’-heptachlorobiphenyl (BZ#180)
られるという利点があります。環境分析で汎用されている
四重極型質量分析計(Q-MS)と比較して、この質量分離
PCB(Poly Chlorinated Biphenyl)の構造式一例
能の点でイオントラップ型MS/MSは優れています。
−8−
GCカラムの開発と溶出順位の確認
ダイオキシン類やPCBの測定分析に適したGC
133 149
146
147 139 165 140 161
カラムをカラムメーカーと共同開発しており、数
155
150
163
144
152145
溶出位置を決定しています。従って、対象とす
154
Hexa CBs
RH-12ms
160
164
136
132
153 131
142 141 137
134
130
151
る媒体ごとにそれぞれ適したGCカラムを選択し、
158
159
138
135
148
種類のGCカラムにおいてPCB全209化合物の
143
168
162 167166
156 157
128
129
169
正確な定量を行うことが可能となりました。
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
Retention Time (min)
図 RH-12ms(INVENTX)によるHexa CBsのフルアサインクロマトグラム一例.
注1 図中の数字はBZ Numberを示す.
注2 下線の付いたBZ Numberはcoplanar PCBs を示す.
HRGC/HRMSによる測定との相関
実際にイオントラップ型MS/MSで、堆積物中の主要化
合物を数種類測定し、係数をかけて規格化した全
1000
てを測定し、積算した全PCB濃度との比較において、
よい相関が得られており、本法が迅速定量に有用
な方法であることが確認されています。
イオントラップ型MS/MSによる
Total PCB濃度(ng/g-dry)
PCB濃度と、HRGC/HRMSで209種類の化合物全
堆積物
800
1:1
600
y = 0.997x
R2 = 0.941
400
200
0
0
200
400
600
800
1000
HRGC/HRMSによるTotal PCB濃度(ng/g-dry)<公定法>
図 HRGC/HRMS及びイオントラップ型MS/MSによる堆積物中のPCB濃度比較.
注:本法で算出したPCB濃度は、公定法による値として、法的に使用することはできませんのでご注意下さい。
(環境リスク研究センター 関好恵)
−9−
ム
コラ
化審法の改正に伴って実施される
生態系への影響試験について
改正化審法の概要
化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法
主な改正点
律)は、新たに製造・輸入される化学品を規制する制度で、
1973年(昭和48年)10月に制定されました。その後、1986
年(昭和61年)に一度改正され、2004年(平成16年)4月に
改正・施行されることになりました。
改正点のの中で最も注目すべき点は、これまでは、「人
の健康を損ねるおそれのある化学物質」の製造等を規制
● 環境中の動植物への影響に着目した審査・規制制度
の導入
● 毒性の有無が明らかでない段階での難分解・高蓄
積性の既存物質への規制の導入
● 環境中への放出可能性に着目した審査制度の導入
することが目的でありましたが、この改正によって自然環境
中の動植物生態系への影響に着目したということで、化学
● 事業者が入手した有害性情報の報告の義務付け
物質が河川等に流出することも勘案されることになりました。
生態系への影響試験
化審法改正に伴って導入される生態系への影響判定試
験では、水中生態系の機能として重要な食物連鎖に着目
して、藻類、甲殻類、魚類を対象とした化学品の急性毒性
試験を通常行うことになります。この試験は、OECDの化学
品テストガイドラインに準じて行われ、「藻類生長阻害試験」、
「ミジンコ急性遊泳阻害試験」及び「魚類急性毒性試験」
が標準となります。
それぞれの試験は、供試生物を被験物質に暴露させ、
その暴露期間における影響を死亡率等によって判定する
ものです。
藻類生長阻害試験
この試験は、指数増殖期の藻類を被験物質に暴露し、
対照区に対する生長阻害率を測定することにより、藻
類の生長に対する被験物質の毒性を明らかにするこ
とを目的とし、暴露期間中の藻類細胞の濃度の増加
をパラメータとします。供試生物としては、単細胞の緑
藻類Pseudokirchneriella subcapitata (シュードキルク
ネリエラ サブキャピタータ)が推奨されています。
Pseudokirchneriella subcapitata
− 10 −
ミジンコ急性遊泳阻害試験
この試験は、ミジンコを被験物質に48時間暴露し、被
験物質を入れない対照区に対する遊泳行動の阻害率
を測定することによって、被験物質の毒性を明らかに
することを目的とします。供試生物としては、オオミジ
ンコ(Daphnia magna ダフニア マグナ)が推奨されて
オオミジンコ
います。
魚類急性毒性試験
この試験は、魚類を被験物質に96時間暴露し、その
間の死亡率を測定することによって被験物質の毒性
を明らかにすることを目的とします。供試生物としては、
ヒメダカが推奨されています。
ヒメダカ
GLP(Good Laboratory Practice)
当社の試験体制と設備
人員、設備、試料・資料の保管・管理、標準作
業手順の配備、試験精度の管理等について、
環境省の「生態影響試験実施に関する基準」に従った化
基準に従って適正運用されている施設で実施
学物質の生態影響試験(GLP)を実施いたします。また、
される試験のことです。
農林水産省が定めた「動物用医薬品の動物試験の実施
に基づく基準」に従った水産動物用医薬品でのGLP適用
試験を実施しています。
<当社のGLPの適合認定>
農林水産省 水産動物用医薬品 2000年(平成12年)3月
環境省 生態影響試験 2003年(平成15年)9月
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Working
Report
世 田 谷 「 子 ど も環境カレ ッ ジ」レ ポート
はじめに
東京都世田谷区は、昨年度に子ども条例を施行しました。
全3回からなる「子ども環境カレッジ」を展開し、すでに2回
これは、地域社会が一体となって、子どもがすこやかに育
が盛況のもと終了しました。以下、第2回までの子どもカレ
つことのできるまちづくりを進めていくもので、そのリーディ
ッジについてご報告いたします。
ングプロジェクトとして「きらきら輝く子どもの瞳プロジェクト」
と呼ばれる事業が世田谷の各地域で展開されています。
第1回「植物標本で
しおりをつくろう!」
このプロジェクトは、休日の土曜日を活かして、世田谷区
が子ども達に親子で楽しめる体験型学習の機会を提供す
るもので、伝統文化や環境、スポーツなどの各分野で行わ
れています。
その中で、当社グループの地球環境カレッジ㈱(通称:
GEカレッジ)は、昨年度より世田谷区のせたがや文化財団
から、プロジェクトの環境編について事業を受託しています。
今年度は、第1回「植物標本でしおりをつくろう!」、第2回「ミ
ニアクアリウムをつくろう!」、第3回「トロピカルガーデンを
つくろう! ∼ペットボトルでつくる熱帯雨林の世界∼」の
第2回「ミニアクアリウムを
つくろう!」
第3回「トロピカル
ガーデンをつくろう!」
報告レポート①
植物標本でしおりをつくろう!
実施日:平成15年9月20日(土)
場 所:GEカレッジホール(国土環境(株)内)
な野草をじっくり観察することがなく、新発見がたくさん
木の葉から薬品を使って葉脈を取り出す葉脈標本と、
あったとのことでした。
電子レンジを使って花を乾燥させてつくる乾燥標本の
また、主催者側に意外だったのが、多少危険も伴うよ
2種類の標本を作りました。 うな理科的実験を今後も取り入れてほしいという意見が
数名の保護者からあったことです。参加者は小学校の
20分
低学年がほとんどだったため、安全面を考慮して水酸
植物採取
化ナトリウムで木の葉の葉肉を溶かす実験は主催者側
60分
で行い、子ども達には水泳用ゴーグルとマスクを着用し
葉脈・乾燥標本づくり
て、実験室を見学してもらいました。それでも、水酸化
ナトリウムは目に入ると危険なため、保護者に敬遠され
30分
るのではないかと心配していたのですが、「子どもに、
しおりづくり
自然のものと同時に、危険なことも一つ一つ身をもって
しおり作りというテーマだったせいか、父親よりも母親
自ら体験させていきた
の参加が多く、子ども達よりも夢中になってしおり作り
い」という保護者の意
に励むお母さんの姿もありました。子ども達は、煮溶か
見は、私たちに今後の
した葉肉を歯ぶらしで擦り取って、葉脈だけを浮きとら
環境教育の在り方につ
せる作業が面白かったようです。イベント終了後にとっ
いての新たな方向性を
た保護者からのアンケート結果では、約20分かけて行
示してくれるものでした。
った公園での植物採取が子どもへのよい経験になっ
たという意見が目立ちました。普段、身のまわりの小さ
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パソコンを使った環境クイズは
子ども達に大人気
報告レポート②
ミニアクアリウムをつくろう!
実施日:平成15年12月6日(土)
場 所:GEカレッジホール(国土環境(株)内)
に待ちにまったアクアリウ
梅酒ビン程度の大きさのビンに黒メダカと水草、砂
ムづくりです。それぞれ
利などをいれてミニアクアリウムをつくりました。このア
のビンに砂利、水草、水
クアリウムでは、エサも与えず、水替えも行いません。「エ
をいれていき、事前にわ
サがなかったら、メダカは死んじゃうよ」と子ども達は不
けておいたオスとメスのメ
思議がるでしょう。実は、そこが狙いなのです。川や湖
ダカの水槽から一匹ずつ
沼では微生物や植物の働きによる水質の浄化機能が
とってもらいました。子ども達には、オスとメスを一匹ず
働いています。また、植物プランクトンや動物プランク
つ渡していることは内緒にして、オス・メスの判別表を配
トン、虫などの餌があります。この自然のサイクルをミニ
り、自分たちのメダカについて雌雄判別をしてもらいま
アクアリウムの中で再現し、自然の不思議さを子ども達
した。これは、なかなか難しかったようです。参加したお
に感じてもらうことを今回の目的としました。
父さんやお母さんも、メダカと判別表をにらめっこしなが
ら苦戦していました。
アクアリウムに入れる水には、静岡にある環境創造
判別が終わった子ども達には、会場内の展示物に自
研究所内の池から採水した、植物プランクトンが豊富
由に触れてメダカについ
な水を使いました。底土には、表面が多孔質構造の
て親しんでもらいました。
焼赤玉土という、浄化能力に優れた園芸用の土を用
この展示には、毎回常設
いました。
のパソコンを使った環境
ところが、微生物や植物による自然浄化機能のメカ
クイズの他、メダカの習性
ニズムは私たちの目にみえて行われるものではない
を利用したなわばり争い
ので、子ども達には理解しにくいものです。そこで、自
や体色変化などの実験コーナーを設けました。また、顕
然の浄化機能を楽しみながら理解してもらうために、“メ
微鏡を設置し、ミニアクアリウムの水をのぞいて、植物プ
ダカが暮らせる池づくりゲーム”というゲームを最初に
ランクトンや動物プランクトンも観察してもらいました。子
行いました。これは福笑いに似たゲームで、まず、メダ
ども達は初めてのぞく顕微鏡の世界に興味津々で、特
カと池のイラストを壁に貼っておきます。次に、水草や
にドクドクと心臓が動くミジンコには歓声をあげていました。
太陽、糸ミミズ、酸素などのアイテムカードを子ども達
子どもがお母さんを実験コーナーに引っ張っていき、メ
に配り、池の働きに関する質問を投げかけます。子ど
ダカの体色変化について説明してあげる姿も見られ、
も達が答えとなるカードを池に貼っていき、全て貼り終
親子で楽しむことができたようです。
わるとメダカが暮らせる池が完成します。
「私たちは呼吸をし
最後に、GEカレッジを宛名にした葉書を子ども達に配
ています。メダカも呼
りました。これは、子ども達に、1ヶ月後のメダカの様子
吸をしなければ苦し
について報告してもらうものです。子ども達の中には、「春
くて死んでしまいます。
になってメダカが卵を産んだら、大きな水槽をつくってメ
メダカが呼吸するの
ダカの家族をつくりたい」「他の生き物も入れて一緒に
に必要なカードを池
飼ってみたい」と、早くも新しい水槽について構想を練
にたしてあげましょう」
っている子もいました。今回のミニアクアリウムづくりは
と子ども達に質問すると、グループ内でしばらく相談し
自然の不思議を探る出発点です。これをきっかけに、
たあと、グループの代表の子どもが元気よく酸素のカ
子ども達の自然や生き物への興味が広がっていけばい
ードを池に貼りにいきました。こうして順に質問をして
いと思います。さて、1ヶ月後には、どんな報告が子ども
いき、メダカの池を完成させました。
達から届くのでしょうか? 今から楽しみですね。
メダカが暮らせる池づくりが完成したところで、つい
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(企画部 山崎七重)
ム
コラ
2003年の環境問題の動向
地域社会から始まる
持続可能な社会への変革
平成15年版の環境白書は、そのテーマを「地域社会から
14年3月に、基本法に基づく「循環型社会基本計画」が
始まる持続可能な社会への変革」とし、地球環境問題の解
国会に報告されました。注目される目標数値は次のような
決にも足元からの努力が必要であることを再確認しました。
ものがあります。
2003年は、大規模な国際的イベントという点では地味な
・一般廃棄物:排出量20%減
年でありましたが、国内の動きは着実に持続可能な社会
・産業廃棄物:最終処分量75%減
形成に動きつつあります。本稿では、2003年の制度の動き
・循環社会ビジネス市場規模:雇用;2倍
を中心に注目される点をとりまとめました。
廃棄物の不法投棄対策
産業廃棄物の不法投棄は、ここ数年千件を超える数で
広がる足元からの動き
推移し、都道府県知事は回復命令を出すことが可能です。
環境と経済の好循環
しかし、代執行をしても原因者に負担能力がない場合など
6月に環境省より「環境と経済の好循環を目指して」という
が目立ち、何らかの資金面での公的関与が必要となって
報告が出され、環境と経済がうまくかみ合って双方とも伸
きました。平成10年6月以降の不法投棄事案については、
びてゆく好循環を目指すとの考えが提起されました。これ
適正処理推進センターの基金(産業界の拠出と国の補助)
を支えるのが地域の足下からの教育、民間活動、パートナ
で、都道府県の原状回復事業への資金協力が可能となっ
ーシップを総合した「地域環境力」であるとの発想です。今
ていますが、それ以前の不法投棄については、なかなか
後、環境ビジネスもこうした方向で位置づけられそうです。
事業が進んでいないのが現状でした。
これは、先にOECDがまとめた日本の環境政策への提言と
「特定産業廃棄物に起因する支障の除去等に関する特
も一致しています。
別措置法」が15年6月に成立しました。この特別措置法に
より、10年間の時限立法で、基本計画(環境大臣)、実施
環境保全教育法
計画(都道府県知事等)に基づき事業費用の国庫補助と、
7月に成立しました法律で、内容は正式名称の「環境の
地方債起債の特例が認められる制度が整いました。社会
保全のための意欲の増進および環境教育の推進に関す
不安を起こしている青森・岩手などの事案(82万立方メート
る法律」に簡潔に表現されています。環境保全活動や環
ル、委託した排出事業者は全国1万社といわれ、地域の問
境活動の基本的なよりどころが出来たと考えられます。
題のみならず全国的問題と認識された)に対して措置が可
能となります。
循環型社会と廃棄物関係
有害物質の環境リスク
循環型社会の基本計画
平成12年に成立した循環型社会形成推進基本法は、大
有害物質の生態影響試験の導入(化学物質審査
量生産、大量消費、大量廃棄というワンウェイ社会を見直し、
規制法の改正等)
「循環資源」の再使用、再生利用、熱回収を最大限に行い
化学物質審査規制法については、前号に解説を載せま
「循環型社会=天然資源の消費を抑制し、環境への負荷
した。生態影響(動植物への影響)や高次補食動物への
が出来る限り低減される社会」を目指しています。そのため、
影響を考慮して、規制の範囲が広がるのがポイントです。
政府は循環型社会基本計画を定め、法律の理念と個別の
生態系保護のリスク管理は、このほかに農薬の生態影響
施策の橋渡として、施策の総合性と計画性の中心的の役
評価の見直し、水質の環境基準の設定がなされようとして
割を期待しています。
います。水質の環境基準については、有機物質(ホルムア
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ルデヒド、アニリン等6項目)、金属(カドミウム、亜鉛の2項目)
%減少しました。しかし京都議定書の基準年(90年)に比
が対象になっています。
べると5.2%上回っています(京都議定書の日本の約束は
6%減ですから、現状からは、10%以上の削減ということに
環境測定の精度管理
なります)。二酸化炭素(温暖化ガスの9割を占める)の排
改正計量法が完全施行され、2003年4月よりダイオキシ
出量は、産業部門が減少しているのに対し、基準年対比で、
ン等の極微量物質測定には特定計量証明事業者名の認
オフィス等の業務部門が31%、家庭部門が19%、運輸部
定(MLAP)が必要となりました。また、今後は、標準物質ト
門が23%上昇し、今後の対策の難しさを伺わせています。
レーサビリティについての検討も進展すると考えられてい
環境省と中央環境審議会は、8月に税という形の経済的
ます。
措置を提案していますが、議論は続いています。また、京
都議定書の発効は、ロシアの参加の遅れで外見的には足
EUの有害物質規制指令(RoHS)
踏みをしているようにみえますが、12月にはイタリアで、
最近採択されたEUの指令(域内で加盟国に法的拘束力
COP9が開催され、議論が更に進むと考えられます。
をもつ)で、2006年より家電製品等への有害物質(重金属、
なお、最近、海洋環境を巡る話題が目立ちます。ロンド
臭素系難燃剤など)を含まないことを確認する制度です。
ンダンピング条約で船舶から投棄される廃棄物の基準を
なお、蛍光管中の水銀、CRT中の鉛などの一定量以下使
巡る国際的な動きや、大陸棚沿岸国の利用問題などが国
用は例外と規定されています。日本からEU諸外国への輸
内でも大きな話題になっています。
出品も規制の対象となります。
京都議定書の発効要件の現状
VOC(揮発性炭化水素)対策
大気中のVOCは、光化学反応によりNOxと反応して、オ
以下の両方の条件を満たした後、90日後に発効。
キシダント(光化学スモッグの原因物質)やSPMを生成しま
①55カ国以上の国が締結。
②締結した附属書Ⅰ国の合計二酸化炭素の1990年排出量が、
全附属書Ⅰ国の合計の排出量55%以上。
す。自動車に比べて対策が遅れていた固定発生源につ
いても、対策の検討が進んでいます。
2003年11月26日現在で、119カ国と欧州共同体が京都議定書を締結済み。
また、締結した先進国の排出量の合計は44.2%。
②の案件を満たすためには、さらに約10.8%の先進国の締結が必要。
遺伝子組み替え生物の使用規制
(カルタへナ議定書)
2000年1月に「生物の多様性に関する条約のバイオセー
法として新たな法律(遺伝子組み替え生物等の使用等の
規制による生物多様性の確保に関する法律」が、15年6月
に公布されました。
法律では、遺伝子組み替え生物の利用を規制しており、
特にいわゆる開放形利用(環境拡散を防止しない)は、主
務大臣の事前承認が必要となります。
締結国 未締結国
フティに関するカルタヘナ議定書」が採択され、国内対応
0%
EU(24.2%)
日本 (8.5%)
ポーランド (3.0%)
カナダ (3.3%)
NZ (0.2%)
発効要件(55%)ライン
温暖化対策等
2001年のわが国の温暖化ガスの排出量は前年対比2.5
100%
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ルーマニア・チェコ・アイスランド・
ノルウェー・スロバキア・ラトビア・
ブルガリア・ハンガリー・エスト
ニア・スイス
ロシア(17.4%)
その他未締結国(0.1%)
豪州(2.1%)
米国(36.1%)
}
(5.1%)
mini知識
環境関係の国際機関の概要
■:国連の直結機関 ■:国連専門機関
■:その他の機関 ■:経済的機構等
■CSD
持続可能な開発委員会(Commission on Sustainable Development)
設立
1993
1992年の国連環境開発会議(UNCED)で採択された「アジェンダ21」に挙げられている項目のなかから、年
毎に決められた事項についてレビューする。
■UNEP
国連環境計画(United Nations Environment Programme)
設立
1972
本部
ナイロビ
国連諸機関の環境関連活動の総合的調整管理及び環境問題に関する資金的、技術的支援を実施。
■ESCAP
国連アジア・太平洋経済社会委員会(United Nations Economic and Social Commission for Asia and the Pacific)
設立
1947
本部
バンコク
アジア・太平洋地域最大の協力機構として、広範な経済・社会開発活動を推進している。設立のきっかけ
は第二次世界大戦後の復興であった。環境問題にも専用のセクションをもつ。
■UNDP
国連開発計画(United Nations Development Programme)
設立
1966
本部
ニューヨーク
「持続可能な人間開発」を基本理念に掲げる、国連システムにおける技術協力活動の中核的資金供与機
関。環境との関連では、世界銀行、UNEPとともに地球環境ファシリティを運営している。
■UNU
国連大学(United Nations University)
設立
1975
本部
東京
地球規模の諸問題等、人類の平和と発展という国連の目的に学術面で寄与し、これら諸問題解決のための
研究及び人材育成事業を行う国連機関。通常の学生はいない。
■UNHCR
国連難民高等弁務官事務所(The Office of the United Nations High Commissioner for Refugees)
設立
1951
本部
ジュネーヴ
難民に対し、国連の権威の下に国際的保護及び支援を提供し、難民の自主機関等によって難民問題の恒久
的解決を図る。難民キャンプの環境問題という難しい問題を処理。
■IBRD
国際復興開発銀行(International Bank for Reconstruction and Development:IBRD,World Bank)
設立
1945
本部
ワシントン
世界銀行グループのうち最も歴史が古く、途上国に対する経済開発、貧困削減を目的とした貸付、技術協
力を行う。最近は開発と環境の両立を図る。
■WHO
世界保健機関(World Health Organization)
設立
1948
本部
ジュネーヴ
国際保健事業の分野において指導的かつ調整的な活動を行う。環境保健の分野も取り扱っていて、ダイオ
キシンのTDI(耐容摂取量)や水道水の安全基準もここで決められている。
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■WMO
世界気象機関(World Meteorological Organization)
設立
1950
本部
ジュネーヴ
世界の気象関連業務の調整、統一及び改善並びに各国間の気象関連情報の交換を促進することを目的として
いて、地球規模な気候変動の把握等を行っている、環境問題の中心機関のひとつである。
■IMO
国際海事機関(International Maritime Organization)
設立
1958
本部
ロンドン
海上の安全及び海洋汚染の防止等海事問題に関する政府間の協力の促進を目的とし、大きな流れとしては、
国連海洋法条約(包括規定)、ロンドン条約(陸上起因の廃棄物の海洋投棄規制)、マルポール条約(船舶
からの廃棄物投棄の規制)、OPRC条約(主としてタンカー事故を想定したもの)などがある。
■GEF
地球環境ファシリティ(Global Environment Facility)
設立
1991
開発途上国及び市場経済移行国が地球規模の環境問題に対応するために新たに負担する費用に対して、原則
として無償資金を提供するための資金メカニズム。UNEP、UNDP、世界銀行の3者が共同運営。
■ADB
アジア開発銀行(Asian Development Bank)
設立
1966
本部
マニラ
アジア・太平洋地域の経済・社会発展促進を目的として、途上国のための貸付、出資、保証、技術援助等を行う。
■IPCC
気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)
設立
1988
世界各国政府が地球温暖化問題に関する議論を行う公式の場として、UNEPとWMOが共同で設置。5年おきに評
価報告書を取りまとめていて、これまでに3次にわたる報告書がある。 専門家の集まりだが、「国家」の色
合いも濃い。
■COP
気候変動枠組み条約締結国会議(Conference of the Parties)
設立
1995
1992年締結された気候変動枠組条約の締結国会議をCOPといい、1995年にベルリンで開催されたCOP1で手順
等を「ベルリンマンデー」として決めた。1997年に京都でCOP3が開催され、先進国の具体的な温暖化ガスの
排出量の割り当てを定めた「京都議定書」を採択した。京都議定書の発効は難航しているが、昨年12月に
COP9がイタリアで開催された。
■OECD
経済協力開発機構(Organization for Economic Cooperation and Development)
設立
1961
本部
パリ
先進国を中心とする経済に関する政策協調機関。各国の環境規制がまちまちであると「非関税障壁」を生む
との考えから環境の活動が始まり、1970年代に水銀とPCBを取り上げ、現在では環境全般に及ぶ。
■EU
ヨーロッパ連合(European Union)
設立
1993
欧州の15カ国の加盟国をもつ国際機関で、経済面のみならず政治面でも統合を進めている共同体。各国の国
内法を従わせる「EU指令」は、環境問題についても多く出されている。
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