Comments
Description
Transcript
SMBC Asia Monthly 第 91 号(2016 年 10 月)
SMBC Asia Monthly 第 91 号(2016 年 10 月) 成長率は 5 四半期連続で加速 日本総合研究所 研究員 塚田 調査部 雄太 E-mail:[email protected] ■16 年 4∼6 月期は+7.0%成長 <実質GDP成長率と需要項目別寄与度> 2016 年 4∼6 月期の実質 GDP は前年同期比 誤差脱漏 輸入 輸出 +7.0%と 1∼3 月期(同+6.8%)から加速し、 (%) 在庫投資 総固定資本形成 政府消費 約 3 年ぶりの高成長となった(右上図) 。他の 20 民間消費 実質GDP成長率 アジア主要国と比較しても、同国経済の堅調さ 15 は際立っている。需要項目別にみると、総固定 10 資本形成や輸出の減速が成長を抑制したものの、 5 堅調な民間消費と政府消費に加え、輸入の増勢 0 鈍化も押し上げに寄与した。 ▲5 民間消費は、低インフレや底堅い伸びを続け ▲ 10 る海外フィリピン人労働者送金に加え、5 月 9 日に実施された正・副大統領選と総選挙に伴う ▲ 15 2014 15 16 (年/期) 消費誘発効果を背景に、前年同期比+7.3%と現 (出所)フィリピン統計局 行の統計基準では最高の伸びを記録した。政府 消費は選挙関連支出の拡大を受け、同+13.5%と 1∼3 月期(同+11.8%)から伸びが拡大した。 総固定資本形成は同+27.2%と 1∼3 月期(同+28.2%)から小幅減速したが、建設業の粗付加 価値が加速していることを勘案すれば、実態は堅調を維持していると考えられる。一方、輸出は、 主要輸出先景気が力強さを欠いていることなどを受け、主力の電子部品輸出が減速したほか、海 産物輸出も減少し、同+6.6%と 2 四半期連続の減速となった。 先行きを展望すると、16 年後半は、低いインフレ率や PPP 事業の本格化が景気を下支えする と見込まれるものの、厳しい外需環境や選挙関連効果の剥落、15 年後半以降の高成長の反動など から成長率は緩やかな低下を余儀なくされよう。 ■ドゥテルテ新政権、17 年度予算案を国会に提出 16 年 8 月 15 日、予算管理省は下院予算委員会 <公的インフラ整備予算と対名目GDP比> に 17 年度予算案を提出した。予算額は総額 3 兆 (1000億ペソ、%) 3,500 億ペソと過去最高額となった。新政権はこ 10 の予算案を 「真の変革のための予算」 と位置づけ、 9 インフラ整備予算 8 ①インフラの整備、②人的資本への投資、③平和 対名目GDP比 7 と秩序(治安)の維持、④農業の近代化と農村社 6 会の変革を優先事項に掲げている。そのなかでも 5 特にインフラ整備に最も多くの予算が割り当てら 4 れており、公的インフラ整備予算は 16 年度見込 3 み対比+13.8%の 8,610 億ペソとなった(右下図) 。 2 予算案の内容は同国の中長期的な安定成長に資 1 するものと評価できる。しかし、ドゥテルテ新政 0 2009 10 11 12 13 14 15 16 権が、同予算の国会審議通過とその後に各予算を 滞りなく執行できるかどうかは不透明である。ダ (注)2016年度は17年度予算における政府見通し、17年度は予算案数値。 (出所)フィリピン予算管理省、フィリピン統計局を基に日本総研作成 バオ市長時代の強いリーダシップを国政において も発揮できるか否か、ドゥテルテ大統領の真の実力が試される。 17 (年度) 当レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。当レポートは単に情報提供を目的に作成されており、その正確 性を当行及び情報提供元が保証するものではなく、また掲載された内容は経済情勢等の変化により変更される事があります。掲載情報は 利用者の責任と判断でご利用頂き、また個別の案件につきましては法律・会計・税務等の各方面の専門家にご相談下さるようお願い致し ます。万一、利用者が当情報の利用に関して損害を被った場合、当行及び情報提供元はその原因の如何を問わず賠償の責を負いません。