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ロボット・機械システム分野 事業紹介 - 新エネルギー・産業技術総合開発
ロボット・機械システム分野 事業紹介 NEDOのミッション 日本最大級の公的研究開発マネジメント機関として、 経済産業行政の一翼を担い、 エネルギー・環境問題の 解決および産業技術力の強化の二つのミッションに取り組む国立研究開発法人です。 新エネルギーおよび省エネルギー技術の開発と実証試験等を積極 エネルギー・ 地球環境問題の解決 的に展開し、 新エネルギーの利用拡大とさらなる省エネルギーを 推進します。さらに、国内事業で得られた知見を基に、海外におけ る技術の実証等を推進し、エネルギーの安定供給と地球環境問題 の解決に貢献します。 産業技術力の強化を目指し、将来の産業において核となる技術シー ズの発掘、産業競争力の基盤となるような中長期的プロジェクトお 産業技術力の強化 よび実用化開発における各段階の技術開発を、産官学の英知を結 集して高度なマネジメント能力を発揮しつつ実施することにより、 新技術の市場化を図ります。 NEDOの位置付け 政策立案 (予算、人材、 etc.) 課題解決・貢献 (エネルギー、環境、etc.) 産業界 大学 国・経済 産業 省 技術開発 制度設計 (規制、標準、 etc.) 実証事業 研究機関 グローバルマーケット 競争力強化・イノベーション創出 (国際基準、etc.) ロボット分野 ロボット・機械システム分野 事業紹介 INDEX 機械システム分野 ロボット・機械システム分野の事業とマネジメント体制··· 2 プロジェクトの概要:ロボット分野···················································· 4 我が国ロボット技術の社会実装および市場化等に関する検討 我が国ロボットサービスにおけるイノベーション創出に関する調査 NEDOプロジェクトを核とした人材育成、 産学連携等の総合的展開/· RTミドルウェアの実践的展開 トピックス 次世代ロボット中核技術開発 ロボット活用型市場化適用技術開発プロジェクト インフラ維持管理・更新等の社会課題対応システム開発プロジェクト 戦略的イノベーション創造プログラム (SIP)/· インフラ維持管理・更新・マネジメント技術 環境・医療分野の国際研究開発・実証プロジェクト/· ロボット分野の国際研究開発・実証事業· 生活支援システムの国際研究開発・実証事業/ドイツ (フェーズ2)· 災害対応ロボット研究開発 (アメリカ) プロジェクトの概要:機械システム分野·········································· 20 航空機用先進システム実用化プロジェクト 戦略的イノベーション創造プログラム (SIP) /革新的設計生産技術 Topics 2014~2015············································································ 24 〈ロボット・機械システム分野の取り組み〉 ロボット・機械システム分野においては、ロボット分野(要素技術から実 証までの様々なフェーズのロボットに関わる研究開発)と機械システム分野 (レーザー、センサ、新製造技術の研究開発)のプロジェクトを実施、両分野に おける研究開発を通じて、NEDOのミッションである「産業技術力の強化」に 資することを目指しています。 ロボット・機械システム分野 事業紹介 ︱ 1 ロボット・機械システム分野の事業とマネジメント体制 ロボット分野 P.4~ 平成27年度予算:61億円 ロボット分野においては、少子高齢化による労働力人口の減少や、作業負荷増大への対応、製品・サービ スの質や生産性のさらなる向上の必要性等により、次世代のロボット技術による安全・安心の確保、生産性 の向上に対する期待が一層高まっています。 また、成長戦略の一環として「ロボット革命実現会議」で議論され、2015 年 5 月には「ロボット革命 イニシアティブ協議会」が発足するなど、ロボットの活躍が今後期待されています。 NEDO では、生活、介護、福祉、サービス、ものづくり、災害など社会の様々な場面で活用できる高度 なロボットの研究開発を様々なフェーズで進めており、これらの分野で活用が期待されるロボットの開発に より、スマートな社会の構築に貢献します。 このパンフレットでは、調査事業、人材育成、要素技術開発、用途開発型、社会実装型の順に、ロボット の普及に向けた基礎的取り組みから実用化に向けた取り組みまでを紹介しています。 2010 2011 2012 2013 2014 2015 災害対応無人化システム研究開発 社会実装型 環境・医療分野の国際研究開発・実証プロジェクト インフラ維持管理・更新等の 社会課題対応システム開発プロジェクト SIP(戦略的イノベーション創造プログラム) /インフラ維持管理・更新・マネジメント技術 用途開発型 市場化度 戦略的先端ロボット要素 技術開発プロジェクト 生活支援ロボット実用化プロジェクト ロボット活用型市場化 適用技術開発プロジェクト 要素技術開発 基盤ロボット技術活用型 オープンイノベーション 促進プロジェクト 次世代ロボット知能化技術開発プロジェクト 次世代ロボット 中核技術開発 ロボット分野のプロジェクト年表 2 ︱ ロボット・機械システム分野 事業紹介 機械システム分野 P.20~ 平成27年度予算:28.4億円 機械システム分野においては、めまぐるしく変化する国際競争のなかで、今後日本において重要となる技 術の研究開発を行っています。NEDO ではこれまでに航空機、センサー、新製造技術分野のプロジェクト を推進してきました。 航空機分野においては、国内の民間航空機産業の成熟を目指し、今後電動化していく航空機システムの研 究開発を支援することで、国内航空機産業の供給力向上と国際競争力の強化を目指しています。 新製造技術分野においては、 「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)/ 革新的設計生産技術」にお いて、 「デライトものづくり」を実現する技術や仕組みの開発によって産業を活性化し、競争力のある高付 加価値な新市場を創出するモデルの構築と実証を行っています。 2010 2011 2012 2013 2014 2015 航空機 環境適応型小型航空機用エンジン研究開発 航空機用先進システム 実用化プロジェクト センサー 異分野融合型次世代デバイス製造技術 開発プロジェクト 社会課題対応センサーシステム開発プロジェクト インフラ維持管理・更新等の社会課題 対応システム開発プロジェクト※ ※研究開発内容はロボット分野を参照 新製造技術 次世代素材等レーザー加工技術開発プロジェクト SIP (戦略的イノベーション創造 プログラム) /革新的設計生産技術 機械システム分野のプロジェクト年表 NEDO のプロジェクトマネジメント体制 NEDO では、国内外から積極的に各分野の情報を収集し、技術ロードマップの策定やマイルストーンの 設定、5 年先、10 年先を見据えたプロジェクトの企画・立案に活かしています。プロジェクトの終了後に は第三者による外部評価を実施、厳しい視点でその成果を評価し、プロジェクトが及ぼした経済的・社会的 効果のフォローとその結果をマネジメントの改善に生かします。 また、 平成 26 年からはプロジェクトマネージャー(PM)がプロジェクトを推進する体制をとっています。 ロボット・機械システム分野 事業紹介 ︱ 3 ロボット分野のプロジェクトの紹介 調査事業 我が国ロボット技術の社会実装および市場化等に関する検討 「NEDOロボット白書2014」を改訂へ 調査期間 平成 27 年度 予算額 2000 万円以内 ロボットの技術開発動向、市場動向、導入事例、ビジネスモデル、政策、地域における取り組み等につい て国内外で情報収集し、その分析や考察を行い、「NEDO ロボット白書 2014」の改訂に反映させます。 実施概要 1)ロボット最新動向調査 2)ロボット導入事例調査 3)1)、2)の結果をふまえつつ、「NEDO ロボット白書 2014」を改訂 NEDO ロボット白書 2014 ※ ※ NEDO は 2014 年 7 月 17 日に「NEDO ロボット白書 2014」を公表、同年 7 月 25 日にはロボット・機械システム部長が出演し概要を説明するなど、 大きな注目を集めました。 今後の展開 今後の技術開発及び市場獲得競争においても「ロボット大国」の地位を維持すること、また日本を世界一のロボットイノベーショ ン拠点とし、社会変革に繋がるロボットを次々と創出することができるような体制、環境の整備を行います。 実施体制 ㈱ NTT データ経営研究所 4 ︱ ロボット・機械システム分野 事業紹介 ロボット分野のプロジェクトの紹介 調査事業 我が国ロボットサービスにおけるイノベーション創出に関する調査 日本初「ロボットサービス・ビジネススクール」 に向けた調査を開始 調査期間 平成 26 年度~ 27 年度 予算額 2000 万円以内 本調査の実証試験結果を利用して、ロボットサービスの「サービス設計プログラム」や「教育・人材育成 プログラム」を構築し、国内ロボット産業の活性化を目指します。 実施概要 1) 「イノベーション創出プログラム」の設計による「付加価値の高いロボットサービス」の創出 2)ロボティクス等の多様な専門分野に係るデザイン思考による「教育・人材育成プログラム」の構築 3)グローバル連携、異分野人材との連携・融合に関する調査 大阪市の千林商店街との協力によるロボット利用の実証試験 市民や学生、社会人を対象とした· 「ロボットサービス・ビジネススクール」イメージ 今後の展開 本調査を通じて、日本のロボット産業の競争力強化、NEDO のロボットプロジェクトの出口戦略強化やマネジメント力強化を目 指します。 実施体制 大阪工業大学 ロボット・機械システム分野 事業紹介 ︱ 5 ロボット分野のプロジェクトの紹介 人材育成 NEDOプロジェクトを核とした人材育成、 産学連携等の総合的展開/· RTミドルウェアの実践的展開 日本の将来を支えるロボット技術の発展の 「場」を大学等に構築し、 ロボット分野の技術を 支える人材を育成 実施期間 平成 26 年度~ 27 年度 予算額 2000 万円以内 現在日本では、 「地域における研究開発やマネジメント、産学官連携や知的財産活動の調整を担う人材の養 成及び確保を支援する」ことが求められており、これまで以上に人材育成や産学連携が重要となっています。 本プロジェクトでは、大学等の拠点を中心として多方面の人材の交流を図り、新たな技術シーズの発掘や 技術の応用・発展に資する取り組みを行うことで、さらに当該技術を担う人材が育つという「好循環」の形 成を、① RTM を用いたロボット教育・実習等を通じた人材育成講座の実施、② RTM 普及に資する教育者 技術者、 研究者等のさらなる人的交流の展開、③ロボットの技術経営に資する周辺研究の一体的な実施によっ て目指します。 6 ︱ ロボット・機械システム分野 事業紹介 1 人材育成、人的交流の 実施及び周辺研究 3 モデルベース開発に基づく RTM 開発者の育成 4 5 2 人材育成 研究開発内容 産業応用のための RTM 教材研究開発とその実施 産業用ロボットを例題としたアプリ ケーション開発の教育を、中小企業 を中心に行いました。 「ロボカップ@ホーム」における RT ミドルウェア潜在ユーザの開拓 ロボカップにおいて新たな競技会「インテリジェントホームロボティクスチャレンジ」を提案し、正式なリーグとして実 施されました。 RT ミドルウェアを活用した植物工場のインテリジェント化 ホストコンピュータで、カメラ画像、温度、湿度、炭酸ガスなどのセンサによる環境モニタリングが可能なシステムを RTM を用いて構築します。 Future Scio Tech Lab サイテックファーム (実証工場 2000 株/日産) 今後の展開 本プロジェクトの活動を RT ミドルウェア関係者のみに限定せず、新しい「もの・こと・しかけづくり」への応用やアイデア・用 途の発掘と実現を行うなど、これまでとは異なるアプローチ、メンバーにより実施することで、RT ミドルウェアの更なる市場創造 を目指します。 実施体制 ❶:東京大学 ❷:埼玉大学 ❸:名城大学 ❹❺:玉川大学 ロボット・機械システム分野 事業紹介 ︱ 7 ロボット分野のプロジェクトの紹介 要素技術開発 次世代ロボット中核技術開発 人間の能力を超える次世代人工知能技術・· 革新的ロボット要素技術の研究開発 事業期間 PM PL(次世代人工· 知能技術分野) 平成 27 年度~ 31 年度 予算額 10 億円(平成 27 年度) 関根 久(NEDO ロボット・機械システム部 統括研究員/技術戦略研究センター ユニット長) 辻井 潤一(国立研究開発法人産業技術総合研究所 人工知能研究センター 研究センター長) 現在の人工知能技術は研究開発途上にあり、ディープニューラルネットワークを用いた一部の認識技術等 が人を凌駕する性能を出しているものの、未だ人間の知能の一部を表現するに留まっています。 また、ロボットの普及を図る観点でも課題が多く、例えば、産業用ロボットのさらなる適用範囲の拡大や サービスロボットの市場創出のためには、ロボットが人間と比べて環境の情報を十分に取得・活用できてい ないこと、ロボットのアクチュエータの出力重量比が人間に及ばないこと、ロボットのインテグレーション 技術が非常に複雑であることなどに対処する必要があります。 これらの状況を打開し、人間と機械が協働する社会を実現するためには、国内外に分散している人工知能 分野の研究者と強力に連携しながら、次世代人工知能の研究開発を推進すると共に、次世代のロボットに求 められる革新的なセンサ、アクチュエータ、インテグレーション技術を研究開発することが極めて重要とな ります。 研究開発内 容 【1. 次世代人工知能技術分野】 1 2 3 大規模目的基礎研究・先端技術研究開発 脳型人工知能とデータ・知識融合型人工知能の研究開発 次世代人工知能フレームワーク・先進中核モジュール研究開発 画像認識、音声認識など要素技術をモジュール化し、 再利用可能なフレームワークを構築し、応用を加速 共通コア人工知能 次世代人工知能共通基盤技術 意思決定支援 予測 次世代人工知能を評価するための データセットと標準問題設定 言語理解 [研究開発拠点] 産業技術総合研究所 人工知能研究センター (AIRC) 人工知能分野の研究者の英知を拠点に結集 産業技術総合研究所の人工知能研究センターを研究開発拠点とし、㈱国際電気通信基礎技術研究所、国立情報学研究所、 · 大学等の研究者についても、クロスアポイントメント契約等により、拠点に参画することを条件に部分採択しました。 8 ︱ ロボット・機械システム分野 事業紹介 要素技術開発 【2. 革新的ロボット要素技術分野】 4 スーパーセンシング 革新的なセンシング技術や能動的センシング技術等 5 スマートアクチュエーション 革新的なアクチュエータや革新的なアクチュエータ制御等 6 ロボットインテグレーション技術 革新的な自律ロボットシステムやシステム統合化技術等 生存者発見ロボット 介護支援 匂いセンサ(東京大)、人工腱(東工大)、マルチセンサプラットフォーム(東北大)など、 18 件の革新的なロボット要素技術を採択し、契約を締結しました。 人共存型ロボット 【3. Request For Information(RFI)】 本プロジェクトに関連して、将来有望または必要とされる可能性がある技術的な課題について情報提供を依頼し、多くの有益な 情報を提供いただきました。それらの情報を参考にして、次世代の人工知能及びロボット要素技術に関して、調査研究から先導研 究までを見据えた8件の研究課題に着手しました。 以上の1~3については、研究開発の過程でステージゲート評価を実施し、実用化・事業化への見通しなどを踏まえて、本格的 な研究開発への移行、加速、縮小、中止等を審査します。 PM のコメント 本プロジェクトでは、国内外の人工知能に関する研究者等の英知を産業技術総合研究所の人工知能研究センター(AIRC)に 結集させ、次世代人工知能技術に関する世界水準の研究開発拠点を目指して、人工知能分野の国際競争力強化を図ります。 また、次世代ロボットに必要な要素技術として、革新的なセンシング技術、アクチュエーション技術、インテグレーション技術の 研究開発に新たに着手しました。研究開発の過程ではステージゲート評価を設けて、実用化に向けて、内容・体制の改廃を含め た積極的なマネジメントを実施し、ロボットが人と協働することを通じて、人が豊かになる社会の実現を目指します。 実施体制 【次世代人工知能技術分野】 ❶❷❸(拠点採択) :産業技術総合研究所 〈拠点参画〉㈱国際電気通信基礎技術研究所/国立情報学研究所/信州大学/奈良先端科学技術大学院大学/九州工業大学 【革新的ロボット要素技術分野】 ❹:東京大学/住友化学㈱/(公財)神奈川科学技術アカデミー/東北大学/熊本大学 ❺:東京工業大学/信州大学/産業技術総合研究所/横浜国立大学/東北大学/豊田合成㈱/· アドバンスト・ソフトマテリアルズ㈱/早稲田大学/東京大学/中央大学/九州大学/名古屋大学 ❻:東京大学/㈱国際電気通信基礎技術研究所/パナソニック㈱/早稲田大学/東北大学/明治大学 ロボット・機械システム分野 事業紹介 ︱ 9 ロボット分野のプロジェクトの紹介 用途開発型 ロボット活用型市場化適用技術開発プロジェクト ものづくり・サービス分野を対象にロボットの· さらなる活用・普及を目指した技術開発 事業期間 PM 平成 27 年度~ 31 年度 予算額 15 億円(平成 27 年度) 安川 優(NEDO ロボット・機械システム部 主査) 日本において、これからのロボット活用のためには、自動車や電気電子産業を中心にロボットの活用が進 んできた大企業だけでなく、サービス産業や中堅・中小企業への導入も大きな課題です。また、大企業も含 めてロボット活用が進んでいない産業分野・作業工程も引き続き存在しているため、これらの分野・工程に おけるロボット活用についても促進する必要があります。 そこで、本プロジェクトでは、ものづくり分野およびサービス分野を対象に、ロボット活用に関するユー ザーニーズ、市場化出口を明確にした上で、特化すべき機能の選択と集中に向けた新規技術開発を実施しま す。 研究開発内 容 1 ものづくり分野のロボット活用技術開発 不定形物(配線・ケーブル)、柔軟物(食品・ゲル)や認識困難物(光沢部品・透明部品)を対象とした作業、その他 高度な対物作業のロボット化に関する技術開発を中心として、ものづくりを自動化したロボットシステムを開発します。 〈ロボットビジョン〉 〈ロボットハンド〉 結束 コルゲート チューブ 柔軟物の変形状態を認識し作業するロボット クランプ 分岐 コネクタ 端子 テープ ソフトテープ 電線 多本数のケーブルを整列させ、分岐・結束させるロボットシステム 10 ︱ ロボット・機械システム分野 事業紹介 用途開発型 2 サービス分野の ロボット活用技術開発 入出荷場・倉庫内等におけるハ ンドリング作業、ピッキング・仕 分け・検品等の対物作業、そ の他サービス分野の対物プロ セスにおける高度作業のロボッ ト化に関する技術開発を中心と して、サービス分野における対 物作業を自動化したロボットシ ステムを開発します。 多種多様なサイズの商品をパレタイジングするロボット ピースピッキングロボット 高機能ロボットハンド 除染対応 自動分注機 小型化細胞培養ロボットシステムの イメージ図 ロボットハンド作業除染対応 分注作業をロボットで代替 PM のコメント 平成 27 年度の第 1 回公募では、ものづくり分野 6 件、サービス分野 4 件の事業が採択されました。また、第 2 回公募(同 年 10 月締切り)で追加採択を予定しています。 本事業は、ロボットメーカーのみならず、ロボットを利用・現場導入するエンドユーザー、システムインテグレータ(SIer)が共 同参画している点が大きな特徴です。新たなシステム、プロセスを提案することで、ロボットを導入する業種・分野、工程の拡大 を目指します。 実施体制 ❶ものづくり分野のロボット活用技術開発 ・双腕多能工ロボット SI マザーシステム開発と実用展開(助成先:カワダロボティクス㈱) ・柔軟物組立工程のロボット作業計画自動生成技術開発(助成先:富士通㈱) ・ワイヤハーネス製造自動化の実用化技術開発 (助成先:㈱オートネットワーク技術研究所、住友電装㈱) ・ダイレクトティーチング機能を搭載した多能工ロボット開発(助成先:スキューズ㈱) ・産業ロボットの「目」と「脳」の高度化と普及化開発 (助成先:㈱三次元メディア、㈱SUWAオプトロニクス) ・低コストなバラ積み自動車部品組付けシステムの開発 (助成先:㈱ヒロテック、シグマ㈱、ダイキョーニシカワ㈱、㈱ワイテック) ❷サービス分野のロボット活用技術開発 ・再生医療バックヤード対応ロボットシステムの開発 (助成先:㈱アニマルステムセル、㈱デンソーウェーブ) ・マテハンシステムへのロボット組込・融合技術開発(助成先:トーヨーカネツソリューションズ㈱) ・軽作業用パワーアシストスーツ(PAS)の試作開発と評価(助成先:アクティブリンク㈱) ・食品工場のコンビニ向け配送仕分ロボットの開発(助成先:プライムデリカ㈱、永進テクノ㈱) ロボット・機械システム分野 事業紹介 ︱ 11 ロボット分野のプロジェクトの紹介 社会実装型 インフラ維持管理・更新等の社会課題対応システム開発プロジェクト 既存インフラの維持管理・更新等における· 効果的で効率的な点検システムを開発 事業期間 平成 26 年度~ 30 年度※ 予算額 PM 安川 裕介(NEDO ロボット・機械システム部 主査) PL 油田 信一(芝浦工業大学 特任教授) SPL 19.15 億円(平成 27 年度) 下山 勲(東京大学 教授) ※一部の事業は平成29年度までとなります。 高度成長期以降に整備されたインフラのうち、社会インフラは、今後 20 年で建設後 50 年以上経過する 施設の割合が加速度的に高くなるため、適切な維持管理が行われないことによって崩壊や機能不全が発生し、 人命や社会に影響を及ぼす危惧が高まっています。日本の主要なインフラでは、数年毎に定期点検を実施し ていますが、人材の確保が難しくなっていることや人件費の削減により、定期点検間の急激な劣化進行等の 異常の把握に課題を残しており、また、定期点検時においても目視点検が困難な箇所も存在します。本プロ ジェクトでは、的確に社会インフラの状態を把握できるモニタリングシステムおよび維持管理を行うロボッ ト・非破壊検査装置を開発し、これらの問題の解決を目指します。 社会インフラが抱える諸課題(例) コンクリート劣化 橋脚ヒビ 社会インフラの老朽化 大規模な自然災害・事故 トンネル崩落 土砂災害 ベテラン作業員不足 財政問題 適切な維持・管理・更新が困難 維持管理・更新システム 設置が容易で メンテナンスフリーなセンサ 人間がアクセス困難な場所を点検・検査する移動ロボット 12 ︱ ロボット・機械システム分野 事業紹介 構造物の変状を容易に 診断するイメージング技術 インフラ状態モニタリング用 センサシステム開発 1 インフラ構造物およびその構成部材の状態を常時・ 継続的・網羅的に把握するセンサシステムの開発 や、そのセンサシステムを用いたセンサネットワー クシステムの構築を行います。 サーバ 基地局 2 イメージング技術を用いた インフラ状態モニタリングシステム開発 完全自動により取得データからひび割れ等を判別 できるデータ処理手法、撮影時の位置ずれを補正 でき平面のみならず、奥行き(3D)もわかる画 像解析手法を開発します。 センサ モジュール 無線センサネットワーク センサ 自立電源 無線 3 橋梁モニタリングシステム 社会実装型 研究開発内容 維持管理・更新 システム 変位・変形 ひび割れ サンプリングモアレ法 ひび割れ検知技術 経時変化をモニタリング インフラ維持管理用ロボット技術・非破壊検査装置開発 インフラ構造物の中で、人間の立入りが困難な箇所へ移動し、インフラの維持管理に必要な情報を取得できるロ ボットの開発と、これらのロボットに搭載可能な小型の非破壊検査装置の開発を行います。 ※③のうちロボット技術については、研究期間はH29年度までとなります。 P M のコメント 本プロジェクトは、各種モニタリング技術やロボットを用いた社会インフラ構造物の維持管理・更新技術を開発をするものではあ りますが、単なる技術開発ではなく、社会課題に具体的に対応できるシステムを開発することに特徴があります。このため、ロボッ ト分野では国土交通省のロボット現場検証委員会と連携し、実際の橋やダム湖を利用してフィールド検証・評価をしながら改良を 重ねています。実際の現場で役に立つシステムを目指して開発中です。 実施体制 ❶:技術研究組合 NMEMS 技術研究機構/(一財) マイクロマシンセンター/産業技術総合研究所/明星電気㈱/· 沖電気工業㈱/高砂熱学工業㈱/横河電機㈱/㈱日立製作所/日本電気㈱/ (一財) 首都高速道路技術センター ❷:首都高技術㈱/東北大学/産業技術総合研究所/ジェイアール西日本コンサルタンツ㈱/㈱共和電業/· 4Dセンサー㈱/和歌山大学/福井大学 ❸:㈱開発設計コンサルタント/法政大学/岡山大学/㈱熊谷組/㈱応用技術試験所/㈱移動ロボット研究所/· 東京エレクトロンデバイス㈱/名古屋大学/富士フイルム㈱/㈱イクシスリサーチ/ (一財) 首都高速道路技術センター/· 川田テクノロジーズ㈱/産業技術総合研究所/㈱エンルート/大日本コンサルタント㈱/㈱ハイボット/· ㈱建設技術研究所/東京工業大学/㈱キュー・アイ/㈱日立製作所/東北大学/国際航業㈱/㈱日立製作所/· 八千代エンジニヤリング㈱/㈱大林組/三菱重工業㈱/㈱タウ技研/㈱日立パワーソリューションズ/静岡大学 ロボット・機械システム分野 事業紹介 ︱ 13 ロボット分野のプロジェクトの紹介 社会実装型 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)/インフラ維持管理・更新・マネジメント技術 府省庁の枠を超えたインフラマネジメントシステム技術開発 -安全で強靱なインフラ構築を目指す- 事業期間 平成 26 年度~ 30 年度 予算額 PD 藤野 陽三(横浜国立大学 先端科学高等研究院 上席特別教授) PM 石原 義光(NEDO ロボット・機械システム部 主幹) 11.2 億円(NEDO 担当分全体) 国内のインフラ更新・修繕費は今後 50 年間に 190 兆円に達すると言われています。そこで、本プロジェ クトでは、インフラの維持管理に関わるニーズと技術開発のシーズとのマッチングを重視し、点検・モニタ リング・診断技術やロボット技術等を現場で使える形で展開し、予防保全による維持管理水準の向上を低コ ストで実現させることを目標としています。これにより、国内重要インフラを高い維持管理水準に保つだけ でなく、魅力ある継続的な維持管理市場の創造を目指します。 なお、本プロジェクトは内閣府が推進する「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の 10 課題の 一つであり、その中の一部案件の管理法人として NEDO が担当しています。 インフラマネジメントの流れ 評価基準 点 検 ⇒施設の健全度評価・余寿命予測技術 の開発 モニタリング 診 断 施設の健全度評価 余寿命予測 不要 ⇒センサ・ICT・ロボット技術等の開発 ⇒診断・劣化予測技術の開発 データマネジメント, 通信技術の開発 (情報通信技術) 対策要否 要 補修・補強・更新 ⇒構造材料・補修・補強技術等の開発 内閣府ホームページ(http://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/sip/index.html)「研究開発計画」より引用 14 ︱ ロボット・機械システム分野 事業紹介 大学等ᴾ 社会実装型 研究開発内容 企業ᴾ 各省庁による研究ᴾ センサ、画像認識、点検ロボット技術、ᴾ 点検・診断技術等の要素技術開発、ᴾ 基礎的研究、現場実証ᴾ SIPによる府省横断的研究ᴾ ①点検・モニタリング・診断技術ᴾ ②構造材料・劣化機構・補修・補強技術ᴾ ③情報・通信技術ᴾ ④ロボット技術(点検、災害対応用等)ᴾ ⑤アセットマネジメント技術ᴾ 内閣府ホームページ (http://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/sip/index.html) 「研究開発課題10課題」より引用 ※ SIP インフラ(全 60 テーマ)は、管理法人等としてNEDO、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) 、国土交通省の3者 が分担する協力体制となっています。NEDO案件はロボット・機械システム部と電子・材料・ナノテクノロジー部が専門分野毎 に分担しており、ロボット・機械システム部は「①点検・モニタリング・診断技術」と「④ロボット技術(点検、災害対応用等)」 のうち、計 17 テーマを担っています。 P M のコメント SIPは、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議が推進する国家プロジェクトです。藤野プログラムディレクター(PD)を 中心に府省庁の垣根を越えた産学官連携を図り、基礎研究から実用化・事業化、出口まで見据えた一気通貫型の研究開発により、 インフラの事故防止、維持管理やメンテナンスの負担減を実現します。 実施体制 ❶:パシフィックコンサルタンツ㈱/首都高技術㈱/産業技術総合研究所/富士電機㈱/住友電気工業㈱/東北大学/· 東日本高速道路㈱/㈱テクニー/五洋建設㈱/川崎地質㈱/宇宙航空研究開発機構/情報通信研究機構/· ㈱アルファ・プロダクト/エヌ・ティ・ティ・アドバンス テクノロジ㈱/東京大学/㈱ソーシャル・キャピタル・デザイン ❹:新日本非破壊検査㈱/㈱ハイボット/㈱建設技術研究所/東京工業大学/次世代無人化施工技術研究組合/日本電気㈱/· ㈱自律制御システム研究所/産業技術総合研究所/(一財) 首都高速道路技術センター/東北大学/㈱リコー/· ㈱千代田コンサルタント/(一財)航空宇宙技術振興財団/富士通㈱/名古屋工業大学/東京大学/北海道大学/· 東急建設㈱/湘南工科大学 ロボット・機械システム分野 事業紹介 ︱ 15 ロボット分野のプロジェクトの紹介 社会実装型 環境・医療分野の国際研究開発・実証プロジェクト/ロボット分野の国際研究開発・実証事業/ 生活支援システムの国際研究開発・実証事業/ドイツ (フェーズ2) ドイツにおける一般保険収載に向けた、· 医療用ロボットの研究開発 事業期間 PM 平成 25 年度~ 27 年度 予算額 約 5.3 億円(平成 27 年度、「ロボット分 野の国際研究開発・実証事業」全体) 原 大周(NEDO ロボット・機械システム部 主査) 本プロジェクトでは、世界的な高齢化や生活水準の向上に伴う健康志向の高まりを受け、日本が強みを有 するロボット技術を活用し、高齢者、要介護者、介護従事者等の生活 ・ 作業支援について、現場のニーズを 反映しながら、日本の当該分野における技術水準の向上と、海外展開や市場化の促進を目指します。 本事業の対象となるロボットスーツ HALⓇ は、装着者が動こうとする意図を微弱な生体電位信号から読み 取るとともに、装着者の運動状態を内蔵されたセンサの情報から認識することで、高齢者や障がい者の歩行 や立ち座り時の下肢の動きを適切にアシストするものです。 事業の対象となる地域は、ドイツ国内でも工業化が進み、ロボットシステムを受け入れやすい土壌があり ます。また、古くから炭坑業が盛んで、炭坑事故による労働災害に対する医療・介護制度、保険制度も早く から整備されてきました。本事業を通じて、ロボットスーツ HALⓇ の一般保険収載を目指していきます。 〈日本での実施体制図〉 NEDO 〈ドイツでの実施体制図〉 MOU 新エネルギー・産業技術総合開発機構 委託 調整・協議 CYBERDYNE株式会社 共同研究 ID 筑波大学 サイバニクス研究センター 〈実施内容〉 •実証試験計画 (プロトコル)の評価 •実証試験結果の レビュー the Department of General and Trauma Surgery, Bergmannsheil University Hospital ベルクマンスハイル大学病院 〈実施内容〉 •業務委託実施統括 •試験環境整備 •実証用HALの提供 •実証用HALの保守・改良 協力 16 ︱ ロボット・機械システム分野 事業紹介 ドイツNRW州経済省 共同研究 〈実施内容〉 •実証試験の管理・監督 •実証試験計画の立案 •テスト結果の分析 •臨床レポートの作成 Cyberdyne Care Robotics GmbH スウェーデン サイバーダイン・ケア・ロボティクス社 〈実施内容〉 •実証試験の実施 •テスト結果の収集 社会実装型 研究開発内容 実証対象 脊髄損傷、脳卒中、その他の脳・神経・筋系疾患 実証内容 「公的保険収載」 を目指す a) 運用情報統合管理システム b) 現地スタッフトレーニング c) プロトコル作成 d) 試験実施 機能性 / 機動性、平衡感覚、神経細胞の可塑性確認等 歩行訓練内容:HALⓇ を使用し、速度、歩数、歩行率を計測 e) データ解析 P M のコメント 脊椎損傷や脳卒中など、病気や事故によって下半身が不自由になってしまった方に装着して訓練していただくことで、脳の感覚 を刺激し、以前と同じ、またはそれに近い状態まで回復するよう支援する HALⓇ は、大変画期的なロボットです。 現在、ドイツの労災保険に収載されていますが、利用出来る方々の対象を広げるために、一般保険への収載を目指しています。 実施体制 CYBERDYNE ㈱(委託先)/筑波大学(委託先)/ベルクマンスハイル大学病院(実証サイト) /· CYBERDYNE Care Robotics GmbH(共同研究先) ロボット・機械システム分野 事業紹介 ︱ 17 ロボット分野のプロジェクトの紹介 社会実装型 環境・医療分野の国際研究開発・実証プロジェクト/ロボット分野の国際研究開発・実証事業/ 災害対応ロボット研究開発(アメリカ) 日本が得意とするロボット技術を核とした災害対 応システムをアメリカと連携し共同研究 事業期間 PM 平成 26 年度~ 27 年度 予算額 約 5.3 億円(平成 27 年度、「ロボット分 野の国際研究開発・実証事業」全体) 河内山 聡(NEDO ロボット・機械システム部 主査) 平成 25 年 7 月、経済産業省と米国防総省(DOD)との間で、 「人道的支援と災害復旧に関するロボット の日米共同研究実施」に関して合意書(TOR)が締結されました。これに基づき本プロジェクトでは、アメ リカとも連携しながら、日本のロボット技術を核とするロボットシステムの開発、実証を行い、日本のロボッ トシステムの普及や国際的な地歩の確立等を目指します。 本プロジェクトでは、①災害対応ロボットの開発・実証、②シミュレータの開発、③性能評価手法の開発(タ スク開発)の 3 つのカテゴリーで研究開発を行っています。 人道的支援と災害復旧に関するロボットの日米共同研究実施 平成25年7月合意書締結 経産省 米国防総省(DOD) NEDO 1 2 3 ロボット開発 平成26年 7月 採択 ● ①東京大学 ②産総研 ③東大/千工大/阪大/神大 シミュレータ開発 産総研/阪大/九大 タスク開発 国防高等研究計画局 (DARPA) 協 力 国際レスキューシステム 研究機構 ● 平成27年12月 国際ロボット展での実演会 平成27年6月 DRC※1 Finals参加 ● 参加 ● 平成27年10月 JVRC※2 開催 ● タスク提供 ● 災害対応ロボット の実用化 日本のロボット シミュレータの 世界的普及 災害対応ロボットの 国際標準化性能 評価方法基準の確立 ※1 DARPA Robotics Challengeの略 DARPAが主催する災害対応ロボットの競技会 ※2 Japan Virtual Robotics Challengeの略 コンピュータシミュレーションによる災害対応ロボットの競技会 18 ︱ ロボット・機械システム分野 事業紹介 社会実装型 研究開発内容 【ロボット開発】 1 JAXON 水冷型大出力ドライバの 搭載により、行動性能に おいて人と同等の力と速 度を実現 2 HRP-2 改 災害対応が可能となるよ うに、従来の HRP-2 を ベースに計算処理能力や 身体能力を強化 3 HYDRA 首 以 外 の 全 軸に搭 載さ れた電気静油圧アクチュ エータ(EHA)により、 人間のようなしなやかな 動きを実現 【シミュレータ開発】 Choreonoid ※ 3 をベースに、① Gazebo ※ 4 との互換性強化による、Gazebo 資産の活用、②シミュレーショ ン精度の向上、③ JVRC 開催による実証を行います。 ※ 3 産業技術総合研究所で開発されたロボットシミュレータ ※ 4 アメリカを中心に普及しているロボットシミュレータ 【タスク開発】 ① DRC Finals タスク開発での意見交換、②災害対応ロボットの性能評価とその国際標準化に関する検討、 ③ JVRC タスクの開発(トンネル内検査、不整地走破、消火支援等)、④ JVRC タスクモデルの開発 P M のコメント ①災害対応ロボットのプラットフォームの完成による災害対応ロボットの実用化研究への進展、②精度の高い Choreonoid の普 及による災害対応ロボット従事者の増大、③災害対応ロボットに求められる国際的基準の制定の 3 つを目指していきます。 実施体制 <ロボット開発> ❶:東京大学 ❷:産業技術総合研究所 ❸:東京大学、千葉工業大学、大阪大学、神戸大学 <シミュレータ開発> 産業技術総合研究所、大阪大学、九州大学 <タスク開発> 特定非営利活動法人国際レスキューシステム研究機構 ロボット・機械システム分野 事業紹介 ︱ 19 機械システム分野のプロジェクトの紹介 航空機用先進システム実用化プロジェクト 次世代航空機向けの装備品開発で· 航空機産業の飛躍的成長の実現へ 事業期間 PM 平成 27 年度~ 31 年度 予算額 3.4 億円(平成 27 年度) 井澤 俊和(NEDO ロボット・機械システム部 主幹) 航空機 航空機産業は、今後 20 年間で旅客需要が約 2 倍になるなど、大きな成長が期待できます。また、航空 機の機体構造(胴体や翼など)やエンジンを除いた機器類は総称して装備品(航空機システム)と呼ばれて いますが、装備品は航空機の機能や性能に直接関わる部分も多い非常に重要な分野です。 本プロジェクトでは、日本の装備品メーカーが持つ技術力を生かし、本格的な装備品市場への参入・市場 拡大を図るために、2020 年代半ば以降に市場投入される次世代航空機向けの、軽量・低コストかつ安全 性の高い装備品の開発を行います。これにより、現在は約 700 億円の日本の装備品産業の売上げを飛躍的 に伸ばすことを目指します。 研究開発項目 ①次世代エンジン 熱制御システム ④次世代空調システム ②次世代降着システム ③次世代コックピット ディスプレイ 20 ︱ ロボット・機械システム分野 事業紹介 ⑤次世代飛行制御/ 操縦システム 研究開発内容 1 次世代エンジン用熱制御システム研究開発 オイル タンク 高効率で軽量コンパクトな熱制御システム、およびその構成要素 (ASACOC ※ 1、HFCOC ※ 2、OFCV ※ 3)の開発 HFCOC 熱制御システムのイメージ 航空機 次世代降着システム研究開発 電気油圧式アクチュエータを用いた脚揚降システム、エンジン 推力を使用せずに機体を地上走行させるタキシングシステム、 外部磁界による磁化を用いたブレーキシステムの開発 脚揚降システムのイメージ 3 ASACOC OFCV エンジン システム ( ※ 1) ASACOC:エンジンから取り込む空気を利用して、エンジン潤滑油を冷却する熱交換器 ( ※ 2) HFCOC:航空機に搭載している燃料を利用して、エンジン潤滑油を冷却する熱交換器 ( ※ 3) OFCV:エンジン潤滑油の流量を調節するバルブ 2 オイルポンプ タキシングシステムのイメージ 次世代コックピットディスプレイ研究開発 コックピットディスプレイに求められる安全性や耐環境性を兼ね備えた大画面・ シームレスディスプレイモジュールの開発、およびタッチパネル機能の開発 コックピットディスプレイのイメージ 4 次世代空調システム研究開発 冷媒の蒸発/凝縮による潜熱を利用した、電子機器冷却用の二相流体熱輸送システム、および回転数を可変制御で きる軸流ファンの開発 永久磁石 モータ 制御部 電源 ●直流 ●交流 ファン 二相流体熱輸送システムのイメージ 5 回転数 指令 軸流ファンのイメージ 次世代飛行制御/操縦システム研究開発 対気速度の計測に使用されるピトー管、エア・データ・コンピュー タ(ADC)、 アクチュエータ・コントロール・コンピュータ(ACC) 、 光通信(EO)、電動アクチュエータ用のモータコントローラか ら構成される、操縦バックアップシステムの開発 制御部 ●集積回路 ●ソフトウェア 配管 モータコントローラ ADC/ ACC EO 光ファイバー ピトー管 操縦バックアップシステムのイメージ PM のコメント 航空機の開発と言うと MRJ(Mitsubishi Regional Jet)などの全機開発をイメージする方が多いと思いますが、装備品は 航空機の機能・性能に直接関わる部分も多く、非常に重要な分野です。世界の装備品市場における日本のシェアは、機体構造や エンジンに比べるとまだまだ低いですが、裏を返せば最も「伸びシロ」がある分野だと言えますので、本プロジェクトを足がかり として装備品市場への新規参入・市場拡大を実現し、航空機産業のさらなる発展に貢献します。 実施体制 ❶:住友精密工業㈱ ❷:住友精密工業㈱ ❸:横河電機㈱ ❹:㈱島津製作所 ❺:東京航空計器㈱ ロボット・機械システム分野 事業紹介 ︱ 21 機械システム分野のプロジェクトの紹介 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP) /革新的設計生産技術 デライトなものづくり· ~超上流デライト設計手法と革新的生産・製造技術~ 事業期間 平成 26 年度~ 30 年度 予算額 25.5 億円(平成 27 年度) PD 佐々木 直哉(株式会社日立製作所 研究開発グループ 技師長) PM 照沼 勝彦(NEDO ロボット・機械システム部 主幹) 新製造技術 日本のものづくり産業は、国際競争の激化により競争力が失われつつあり、グローバルに勝つための新し いものづくりスタイルの確立が求められています。 本プロジェクトでは、 「デライトものづくり」を実現する技術や仕組みを開発することで、産業を活性化し、 競争力のある高付加価値な新市場を創出するモデルの構築と実証を行います。 「デライトものづくり」とは、従来の品質や機能に「喜び」、「驚き」等のデライト性を融合した新たな価 値を探索することで、従来ニーズを超え、新たなニーズや市場を産み出す製品・システム・サービス等を実 現する、革新的な設計・生産手法です。 このテーマのもと、 「超上流デライト設計手法」の確立及び「革新的生産・製造技術」の研究開発、並び にそれらの実践、普及のため、現在、24 件の研究開発の取り組みが始まっています。 内閣府PD(佐々木直哉) 管理法人 NEDO 研究 クラスター 最適化 設計・生産 超上流デライト 設計・生産 革新的材料 3D造形 シーズ 革新的技術・独創的発想 <推進委員会> ・議長:佐々木PD ・サブPD:帯川利之(東京大学) 木村文彦(法政大学) 安井公治(三菱電機株式会社) 善本哲夫(立命館大学) ・構成員: 経済産業省、文部科学省、 NEDO、JST、内閣府(事務局) 革新的 複雑造形 加工技術の 複合化・知能化 現場立脚型 高付加価値商品化・ サービス化・産業化 販路開拓 大学、公的 研究機関等 企業* ユーザー の声 デモ・実証 ワークショップ・ データ解析 価値探索 ・設計 デザイン企業 ベンチャー企業* 24研究テーマ 研究クラスター内 WG 研究クラスター内 WG 研究クラスター内 WG 研究クラスター内 WG 研究クラスター内 WG 研究クラスター内 WG 全研究クラスター 情報共有とデライト試作評価のWS、シンポジウムによるテーマ間相互連携、公開シンポジウム 22 ︱ ロボット・機械システム分野 事業紹介 物理・構造設計 システム設計 試作・製造 研究クラスター間連携WG・WS ●実施体制 企業*・ 個人等 公的試験研究機関 企業* *地域企業の積極的な参画、企業間の連携など。 ●「イノベーションスタイル」のイメージ 研究開発内容 1 2 超上流デライト設計手法の研究開発 ニーズ・価値・性能・デライト(喜び品質、満足等)をベースとした多様な機能設計および生産・製造条件や、各種デー タを考慮し高品質な全体システム設計を可能とする超上流デライト設計手法の研究開発。 革新的生産・製造技術の研究開発 従来にない新しい構造や複雑形状、機能の発現、高品質・低コストを可能とする革新的生産・製造技術の研究開発。 新製造技術 PM のコメント 平成 26 年 10 月の公募で 24 件の研究テーマを採択、11 月より技術目標、出口戦略の実現に向け研究をスタートしました。 イノベーションスタイルの形成を促すため、研究全体ワークショップの開催や技術俯瞰、地域性を考慮した 6 つの研究クラスタを設 け、 テーマ間の技術交流を平成 27 年も実施し、 引き続き研究内容の技術目標、 出口戦略の達成に注視しつつ、 年度末に設けるステー ジゲートに向けて、各テーマの研究内容の強化、技術目標の達成状況、出口戦略等の評価を内閣府と共に着実に行っていきます。 実施体制 研究開発 項目 ① 研究開発テーマ名 委託先 研究開発 項目 委託先 デザイナブルゲルの革新的 3D プリンティングシステムによる 山形大学 新分野の進展支援と新市場創出 迅速で創造的な製品設計を可能とするトポロジー最適化に基づ 京都大学(他) く超上流設計法の開発 フルイディック材料創製と 3D プリンティングによる構造化機 東北大学(他) 能材料・デバイスの迅速開発 革新的デライトデザインプラットフォーム技術の研究開発 東京大学(他) ② 計測融合計算化学を活用したスノースポーツ用品の最適化 市場流通材のスーパーメタル化開発 長岡技術科学大学 ガラス部材の先端的加工技術開発 京都大学(他) CAM-CNC 統合による革新的な工作機械の知能化と機械加 神戸大学(他) 工技術の高度化 マルチタレット型複合加工機(ターニング・ミーリング)による 慶應義塾大学(他) 複雑形状の簡易・確実・高精度な知的加工システムの研究開発 次世代型高性能電解加工機の研究開発 東北大学 高付加価値設計・製造を実現するレーザーコーティング技術の 大阪大学(他) 研究開発 チーム双方向連成を加速する超上流設計マネージメント/環 産業技術総合研究所 境構築の研究開発 (他) ナノ物質の集積複合化技術の確立と戦略的産業利用 ② 研究開発テーマ名 全体俯瞰設計と製品設計の着想を支援するワークスペースの 理化学研究所(他) 研究開発 豊橋技術科学大学 バイオイノベーティブデザインの研究開発 東京大学(他) データマイニング、遺伝的アルゴリズム、迅速試作技術の融 京都試作センター 合による進化的ものづくりシステムの構築に向けた研究開発 ㈱(他) 超 3D 造形技術プラットフォームの開発と高付加価値製品の創出 横浜国立大学 イノベーションソサエティを活用した中部発革新的機器製造技 名古屋大学(他) 術の研究開発 ①・② 金沢大学 三次元異方性カスタマイズ化設計・付加製造拠点の構築と地 大阪大学(他) 域実証 AdditiveManufacturing を核とした新しいものづくり創出の 東京大学 研究開発 分子接合技術による革新的ものづくり製造技術の研究開発 岩手大学 リアクティブ 3D プリンタによるテーラーメイドラバー製品の設 神戸大学(他) 計生産と社会経済的な価値共創に関する研究開発 高付加価値セラミックス造形技術の開発 TOTO ㈱(他) 東工大-大田区協創による喜びを創出する革新的ものつくり環 東京工業大学 境の構築と快適支援機器の設計製造技術の開発 ロボット・機械システム分野 事業紹介 ︱ 23 Topics 2014 ~ 2015 Topic 01 生活支援ロボットの安全検証技術の開発と標準化 への取り組みが内閣総理大臣賞を受賞 NEDO は 2009 年から生活支援ロボットの安全性検証手法の 開発を目指す「生活支援ロボット実用化プロジェクト」を開始し、 2010 年に設置した生活支援ロボット安全検証センターに生活支 援ロボットの安全性評価のための試験装置等の設備を整備、評価 手法の整備と認証スキームの開発を行ってきました。 その結果、 2014 年 2 月 1 日付けで、世界初となる生活支援ロボットの国際 標準規格 ISO13482 が発行されました ( これまでの認証実績は 全 7 件となっています )。この研究開発の成果が認められ、2015 年 8 月、「第13回産学官連携功労者表彰~つなげるイノベーショ ン大賞~」において内閣総理大臣賞を受賞、同月開催された「イ 生活支援ロボット安全検証センター ノベーションジャパン 2015」において授賞式が行われました。 トピックス Topic 02 「ロボットイノベーションワーキンググループ」始動 NEDO は、5 月に立ち上がった「ロボット革命イニシアティブ協議会」内に設置された 3 つのワーキンググループ(WG) のうち、 「ロボットイノベーションワーキンググループ(WG3) 」の事務局を担当。この WG は、 世界一のロボットイノベーショ ン拠点の実現に向け、次世代ロボット開発やロボット利活用の裾野を広げるためのロボット開発・製造・導入改革に向けた取 り組みを進めることを目的としており、その達成のために、 以下の 3 つのサブワーキンググループ(SWG)を立ち上げました。 〔1〕プラットフォーム SWG 〔2〕ロボット活用に係る安全基準 ・ ルール SWG 〔3〕ロボットオリンピック(仮称)SWG 会合には、 ソフト開発や製造関連企業等、43 企業、各種団体や工業会、 大学等から 21 団体の、総勢 92 名の方々にお集まりいただき、今後 のワーキンググループでの議論・方向性を確認しました。今後、毎月一 回のペースで SWG を開催し、議論の結果を取りまとめ、来年開催され る「ロボット革命イニシアティブ協議会」の総会にて報告する予定です。 写真は首相官邸ホームページより 第一回ロボットイノベーション WG 会合の様子 24 ︱ ロボット・機械システム分野 事業紹介 Topics 2014 ~ 2015 Topic 03 「NEDO特別講座シンポジウム(ロボット革命の目指す ものとRTミドルウェアによる地方からの実現)」の開催 NEDO が実施する「NEDO プロジェクトを核とした人材育成、 産学連携等の総合的展開/ RT ミドルウェアの実践的展開」 において、RT ミドルウェアのさらなる普及、実用化に向け「NEDO 特別講座シンポジウム(ロボット革命の目指すものと RT ミドルウェアによる地方からの実現)」を国立大学法人東京大学と開催しました。シンポジウムには 184 名、その後の ビジネスマッチング交流会には 70 名の方々にご参加いただき、意見交換を行いました。今後も RT ミドルウェアの普及を 通じて日本のロボット産業の競争力強化と発展に努めていきます。 トピックス Topic 04 前乗り電動車いすをデンマークで実証 世界的な高齢化や生活水準の向上に伴う健康志向の高ま りを受け、今後高い成長が期待される医療、介護、健康、 福祉等の生活支援関連産業分野において、日本の企業が強 みを有するロボット技術の活用が求められています。 NEDO は、㈱テムザック、㈱ NTTドコモとともに、デン マークのコペンハーゲン市とファーボ・ミッドフュン市の介護・ 福祉施設、高齢者住宅およびリハビリセンターで実証試験に 使用する前乗り電動車いす「New Robot Rodem」を開発、 2014 年度に同国内で実証試験を行いました。 「NRR」は、従来の車いすの概念を覆すことで、介護や 福祉等の従事者の労働力負担の軽減、また、車いすの利用 者の自立を促すものとして、欧州をはじめとする多くの国で の普及が期待されます。 実証実験を行った New Robot Rodem ロボット・機械システム分野 事業紹介 ︱ 25 Topics 2014 ~ 2015 Topic 05 原発対応版災害対応ロボットが· 原子力緊急事態支援センターへ導入 災害対応無人化システム研究開発プロジェクト(平成 23 年度~ 24 年度)の成果をもとに、千葉工業大学及び㈱日南は、新型の 災害対応ロボット「櫻壱號(さくらいちごう)」をベースとした、災 害対応ロボット「原発対応版 櫻壱號」を開発。2014 年 4 月、 国産ロボットとして初めて日本原子力発電㈱原子力緊急事態支援セ ンターに導入されました。 導入されたロボットは、通常時には関連企業スタッフの操作研修 等に利用され、災害発生時には災害地に派遣されるなど、重要な 役割が期待されます。 ㈱日南は、千葉工業大学から櫻壱號および関連技術の提供を受 け、災害対応ロボットの事業化(開発・製造および販売)を実施し ており、同ロボットのさらなる普及も期待されます。 トピックス 同センターに導入された櫻壱號· (千葉工業大学未来ロボット技術研究センター提供) Topic 06 「SIP革新的設計生産技術 · 公開シンポジウム2015」を開催 NEDO は、2015 年 9 月 17 日に日本科学未来館にて、 「SIP 革新的設計生産技術 公開シンポジウム 2015」を 内閣府と共同で開催しました。 本プログラムは、内閣府が推進する SIP(戦略的イノベー ション創造プログラム)の 10 課題の一つで、 「超上流デラ イト設計手法」の確立及び「革新的生産・製造技術」の研 究開発によって、新しいものづくりスタイルの実現を目指す ものです。 当日は、講演・ポスター発表・デモ機やサンプルの展示を 通じ、全 24 件の取り組みにおける最新の成果を紹介しまし た。400 名を超える来場者が訪れた会場は熱気に包まれ、 積極的な交流と議論が行われました。 26 ︱ ロボット・機械システム分野 事業紹介 Topics 2014 ~ 2015 Topic 07 ロボット分野特設 Web ページ· 「ロボットイノベーション」を開設 2015 年 4 月、ロボット分野特設サイト「ロ ボットイノベーション」が開設されました。 NEDO が研究開発を行ってきたロボットを産 業分野、医療介護分野、生活支援分野、フィー ルド分野、基盤技術ごとに紹介する、ロボット の過去、現在、未来を垣間見ることの出来る サイトとなっています。 http://www.nedo.go.jp/robot/ トピックス Topic 08 立ち入り困難な崩落現場で活躍する· ロボットの実証実験を実施 NEDO が 2014 年度から実施している「インフラ維持 管理・更新等の社会課題対応システム開発プロジェクト」に おいて㈱タウ技研が開発したロボットの実証実験が、2015 年 9 月、さがみロボット産業特区※ 1 にて行われました。 本ロボットは、クローラ型のロボットとワーム型の多関節 ロボットを組み合わせた構成が特徴的であり、通常はクロー ラ型のロボットによって、急斜面、段差、がれきの隙間等で はワーム型のロボットによって移動します。この機構によって 災害現場を動き回り、先端に搭載されたセンサーで、周辺 の様子や被災者の呼吸等の情報を収集することが可能です。 押し出し機構の付いたワーム型の災害調査ロボットは実用レ ベルでは世界初となります。 今後もこのような実証実験を通じて、ロボットの実用性の 検証、災害調査対応ロボット開発を継続的に実施し、早期の 実用化を目指します。 さがみロボット産業特区 神奈川県内の相模原市を中心としたさがみ縦貫道路沿線地域等を対象地域とし、急速に進む高 ※ 1 齢化やいつ起こるか分からない自然災害から県民のいのちを守るために設定された、生活支援ロボットの実用化と普及 を目指す地域活性化総合特区。 ロボット・機械システム分野 事業紹介 ︱ 27 —MEMO— 国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構 ロボット・機械システム部 〒212-8554 神奈川県川崎市幸区大宮町1310 ミューザ川崎セントラルタワー Tel 044-520-5241 Fax 044-520-5243 http://www.nedo.go.jp/ December 2015(第1版)