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労働市場政策における職業能力評価制度のあり方に関する

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労働市場政策における職業能力評価制度のあり方に関する
労働市場政策における職業能力評価制度
のあり方に関する研究会報告書
参考資料集
1
正規雇用と非正規雇用の労働者の推移
○ 非正規雇用は、95年から05年までの間に増加し、以降現在まで微増(役員を除く雇用者全体の36.7%)。
※
なお、直近(2014年1月現在)では、1,956万人(37.6%)。
○ 正規雇用は、95年から05年までの間に減少し、以降その数はほぼ横ばい状態。
※総務省「労働力調査(基本集計)」(2014年1月分)。なお、月単位の公表は2013年1月から開始。季節的変動があるため留意が必要。
6,000
(万人)
【20.9%】
5,000
【33.5%】【34.1%】 【33.7%】 【34.4%】 【35.1%】【35.2%】 【36.7%】
【26.0%】 【32.6%】 【33.0%】
非正規
【20.2%】
4,000
1,001
【16.4%】
1,273
881
1,634
1,678
1,735
1,765
1,727
1,763
(+70)
(+44)
(+57)
(+30)
(-38)
(+36)
655
1,811
(+48)
1,813
1,906
(+2)
(+93)
パート928万人
(+40)
【48.7%】
3,000
正規
2,000
3,343
3,488
3,779
3,630
3,375
3,415
3,449
3,410
3,395
3,374
3,352
3,340
3,294
(-35)
(+40)
(+34)
(-39)
(-15)
(-21)
(-22)
(-12)
(-46)
1,000
アルバイト392万人
(+39)
【20.6%】
派遣社員116万人
(+26)【6.1%】
契約社員・嘱託
388万人
(+34)【20.4%】
0
85年
90年
95年
00年
05年
06年
07年
08年
09年
10年
11年
12年
13年
(資料出所)2000年までは総務省「労働力調査(特別調査)」(2月調査)、2005年から2013年までは総務省「労働力調査(詳細集計)」(年平均)による。
(注)1)2005年以降の実数及び割合は2010年国勢調査の確定人口に基づく推計人口(新基準)に切替え集計した値。
2)2011年の数、割合及び前年差は、被災3県の補完推計値を用いて計算した値。
3)雇用形態の区分は、勤め先での「呼称」によるもの。
その他82万人 (-46)【4.3%】
2
産業別の入職者数・離職者数(平成24年)
○ 産業別に労働移動者をみると、入職者は卸売業、小売業が116万人と最も多く、次いで宿泊業、飲食サービス業
が109万人、医療、福祉が97万人の順となっている。
○ 一方、離職者は卸売業、小売業が127万人と最も多く、次いで宿泊業、飲食サービス業が103万人、製造業が
91万人の順となっている。
(万人)
140
127
入職者数
離職者数
120
116
109
103
100
86
97
91
80
72 74
80
60
42
38 39
40
35 35
39
26 26
20
14 16
13 14
15 15
9 8
2 3
0
(資料出所)厚生労働省「雇用動向調査」
3
産業別の入職者数・離職者数(平成24年)
○ 産業別に労働移動者をみると、入職者は卸売業、小売業が116万人と最も多く、次いで宿泊業、飲食サービス業
が109万人、医療、福祉が97万人の順となっている。
○ 一方、離職者は卸売業、小売業が127万人と最も多く、次いで宿泊業、飲食サービス業が103万人、製造業が
91万人の順となっている。
(万人)
140
127
入職者数
離職者数
120
116
109
103
100
86
97
91
80
72 74
80
60
42
38 39
40
35 35
39
26 26
20
14 16
13 14
15 15
9 8
2 3
0
(資料出所)厚生労働省「雇用動向調査」
4
産業別新規求人数(パートタイムを含む)
合
計
A,B 農,林,漁業(01~04)
C 鉱業,採石業,砂利採取業(05)
D 建設業(06~08)
06 総合工事業
E 製造業(09~32)
09 食料品製造業
10 飲料・たばこ・飼料製造業
11 繊維工業
12 木材・木製品製造業(家具を除く)
13 家具・装備品製造業
14 パルプ・紙・紙加工品製造業
15 印刷・同関連業
16 化学工業
17 石油製品・石炭製品製造業
18 プラスチック製品製造業(別掲を除く)
19 ゴム製品製造業
21 窯業・土石製品製造業
22 鉄鋼業
23 非鉄金属製造業
24 金属製品製造業
25 はん用機械器具製造業
産
26 生産用機械器具製造業
27 業務用機械器具製造業
28 電子部品・デバイス・電子回路製造業
29 電気機械器具製造業
業
30 情報通信機械器具製造業
31 輸送用機械器具製造業
20,32 その他の製造業
F 電気・ガス・熱供給・水道業(33~36)
別 G 情報通信業(37~41)
39 情報サービス業
H 運輸業,郵便業(42~49)
I 卸売業,小売業(50~61)
50~55 卸売業
56~61 小売業
56 各種商品小売業
J 金融業,保険業(62~67)
K 不動産業,物品賃貸業(68~70)
L 学術研究,専門・技術サービス業(71~74)
M 宿泊業,飲食サービス業(75~77)
76 飲食店
N 生活関連サービス業,娯楽業(78~80)
O 教育,学習支援業(81,82)
P 医療,福祉(83~85)
83 医療業
85 社会保険・社会福祉・介護事業
Q 複合サービス事業(86,87)
R サービス業(他に分類されないもの)(88~96)
91 職業紹介・労働者派遣業
92 その他の事業サービス業
S,T 公務(他に分類されるものを除く)・その他(97,98,99)
職業別新規求人数(パートタイムを含む常用)
22年計(構成比)
6,857,716 (100.0)
54,293
(0.8)
1,567
(0.0)
470,196
(6.9)
264,983 722,339 (10.5)
181,611 9,929 42,113 12,047 8,318 16,566 28,116 22,729 926 33,162 7,917 16,314 10,912 7,481 55,944 39,320 29,200 17,604 35,070 45,854 16,051 62,474 22,681 5,716
(0.1)
218,426
(3.2)
174,036 442,510
(6.5)
1,039,117 (15.2)
259,727 779,390 128,948 80,966
(1.2)
120,874
(1.8)
228,348
(3.3)
529,499
(7.7)
406,429 297,709
(4.3)
114,458
(1.7)
1,336,735 (19.5)
612,265 716,001 55,442
(0.8)
954,500 (13.9)
298,746 538,490 185,021
(2.7)
(資料出所)厚生労働省「職業安定業務統計」(一部加工)
23年計(構成比)
7,865,270 (100.0)
61,660
(0.8)
2,023
(0.0)
600,033
(7.6)
341,618
828,397 (10.5)
204,185
11,452
52,330
14,612
10,322
18,171
28,822
24,827
1,105
37,067
8,674
18,986
12,978
8,084
70,455
48,702
37,267
19,688
29,144
49,521
15,515
80,647
25,843
6,519
(0.1)
261,304
(3.3)
210,073
492,581
(6.3)
1,166,324 (14.8)
287,789
878,535
148,734
77,558
(1.0)
144,855
(1.8)
267,015
(3.4)
570,362
(7.3)
432,266
333,643
(4.2)
126,264
(1.6)
1,550,480 (19.7)
665,989
875,967
51,291
(0.7)
1,119,430 (14.2)
379,166
605,018
205,531
(2.6)
(単位:人、%)
24年計(構成比)
8,845,212 (100.0)
64,253
(0.7)
2,910
(0.0)
700,699
(7.9)
401,812
826,125
(9.3)
222,983
12,413
52,915
15,170
11,804
18,282
30,819
24,890
1,119
35,464
7,049
20,150
11,714
6,742
70,886
46,073
33,067
19,708
26,510
44,688
16,239
68,667
28,773
7,392
(0.1)
299,741
(3.4)
243,017
546,441
(6.2)
1,350,719 (15.3)
314,150
1,036,569
181,872
77,442
(0.9)
165,433
(1.9)
293,730
(3.3)
692,235
(7.8)
531,120
386,210
(4.4)
136,690
(1.5)
1,769,561 (20.0)
716,976
1,043,169
52,379
(0.6)
1,283,462 (14.5)
428,257
705,669
189,790
(2.1)
22年計(構成比)
職業計
6,136,158
100.0
専門的・技術的職業
1,640,472 機械・電気技術者
59,141
1.0
鉱工業技術者
3,907
0.1
建築・土木・測量技術者
109,748
1.8
情報処理技術者
108,865
1.8
その他の技術者
14,160
0.2
医師、歯科医師、獣医師、薬剤師
83,457
1.4
保健師、助産師、看護師
391,797
6.4
医療技術者
94,066
1.5
その他の保健医療の職業
160,613
2.6
社会福祉専門の職業
454,031
7.4
美術家、デザイナー、写真家
29,041
0.5
その他の専門的職業
131,646
2.1
管理的職業
16,320
0.3
事務的職業
731,072 一般事務の職業
476,717
7.8
会計事務の職業
86,497
1.4
生産関連事務の職業
31,202
0.5
営業・販売関連事務の職業
105,791
1.7
外勤事務の職業
2,745
0.0
運輸・通信事務の職業
12,772
0.2
事務用機器操作の職業
15,348
0.3
販売の職業
847,171 商品販売の職業
751,552
12.2
販売類似の職業
95,619
1.6
サービスの職業
953,994 家庭生活支援サービスの職業
144,310
2.4
生活衛生サービスの職業
117,038
1.9
飲食物調理の職業
295,646
4.8
接客・給仕の職業
316,881
5.2
居住施設・ビル等の管理の職業
34,039
0.6
その他のサービスの職業
46,080
0.8
保安の職業
175,920
2.9
農林漁業の職業
46,537
0.8
運輸・通信の職業
341,494 鉄道運転の職業
209
0.0
自動車運転の職業
318,755
5.2
船舶・航空機運転の職業
210
0.0
その他の運輸の職業
11,176
0.2
通信の職業
11,144
0.2
生産工程・労務の職業
1,383,178 金属材料製造の職業
12,639
0.2
化学製品製造の職業
12,293
0.2
窯業製品製造の職業
9,901
0.2
土石製品製造の職業
1,080
0.0
金属加工の職業
97,378
1.6
金属溶接・溶断の職業
19,222
0.3
一般機械器具組立・修理の職業
44,117
0.7
電気機械器具組立・修理の職業
75,916
1.2
輸送用機械組立・修理の職業
49,498
0.8
計器・光学機組立修理の職業
6,585
0.1
精殻・製粉・調味製造の職業
4,045
0.1
食料品製造の職業
128,654
2.1
飲料・たばこ製造の職業
3,446
0.1
紡織の職業
5,604
0.1
衣服・繊維製品製造の職業
28,715
0.5
木・竹・草・つる製品製造の職業
12,919
0.2
パルプ・紙・紙製品製造の職業
9,470
0.2
印刷・製本の職業
15,436
0.3
ゴム・プラスチック製品製造の職業
32,265
0.5
革・革製品製造の職業
1,306
0.0
装身具等製造の職業
3,092
0.1
その他の製造制作の職業
57,048
0.9
定置・建設機械運転の職業
20,479
0.3
電気作業者
43,633
0.7
採掘の職業
1,115
0.0
建設躯体工事の職業
42,053
0.7
建設の職業
58,649
1.0
土木の職業
72,576
1.2
運搬労務の職業
172,159
2.8
その他の労務の職業
341,885
5.6
分類不能の職業
0(資料出所)厚生労働省「職業安定業務統計」(一部加工)
23年計(構成比)
6,988,524
100.0
1,931,296 84,185
1.2
5,223
0.1
139,151
2.0
145,578
2.1
18,122
0.3
80,403
1.2
413,373
5.9
109,694
1.6
179,377
2.6
570,956
8.2
32,177
0.5
153,057
2.2
17,360
0.2
813,773 538,949
7.7
94,146
1.3
37,470
0.5
110,826
1.6
2,826
0.0
14,076
0.2
15,480
0.2
941,897 834,574
11.9
107,323
1.5
1,025,507 157,124
2.2
130,178
1.9
325,871
4.7
321,440
4.6
38,885
0.6
52,009
0.7
199,545
2.9
55,744
0.8
374,973 136
0.0
348,972
5.0
227
0.0
14,478
0.2
11,160
0.2
1,628,429 15,694
0.2
14,090
0.2
11,680
0.2
1,596
0.0
125,122
1.8
24,551
0.4
55,570
0.8
66,477
1.0
66,289
0.9
7,240
0.1
4,193
0.1
148,915
2.1
4,409
0.1
6,997
0.1
35,846
0.5
17,347
0.2
9,964
0.1
15,839
0.2
35,379
0.5
1,817
0.0
3,119
0.0
66,231
0.9
25,743
0.4
50,348
0.7
1,416
0.0
53,655
0.8
83,093
1.2
101,820
1.5
195,709
2.8
378,280
5.4
0-
(単位:人、%)
24年計(構成比)
7,842,985
100.0
2,188,253 95,923
1.2
9,039
0.1
182,730
2.3
178,466
2.3
9,558
0.1
88,715
1.1
430,088
5.5
123,729
1.6
181,846
2.3
698,540
8.9
38,209
0.5
151,410
1.9
22,446
0.3
893,469 555,489
7.1
115,647
1.5
48,705
0.6
135,295
1.7
4,831
0.1
16,083
0.2
17,419
0.2
1,032,746 895,276
11.4
137,470
1.8
1,216,914 178,550
2.3
147,230
1.9
404,418
5.2
362,316
4.6
51,949
0.7
72,451
0.9
232,933
3.0
58,465
0.7
416,176 335
0.0
386,719
4.9
343
0.0
16,828
0.2
11,951
0.2
1,781,583 13,395
0.2
13,409
0.2
12,504
0.2
1,496
0.0
120,717
1.5
23,095
0.3
52,058
0.7
56,868
0.7
71,702
0.9
6,138
0.1
4,809
0.1
157,454
2.0
5,399
0.1
6,067
0.1
37,513
0.5
18,295
0.2
10,251
0.1
17,323
0.2
33,874
0.4
1,905
0.0
3,096
0.0
90,495
1.2
31,845
0.4
58,897
0.8
937
0.0
65,447
0.8
96,158
1.2
123,231
1.6
216,311
2.8
430,894
5.5
0-
5
職業別有効求人倍率(パー
トタイムを含む常用)
22年計
職業計
専門的・技術的職業
機械・電気技術者
鉱工業技術者
建築・土木・測量技術者
情報処理技術者
その他の技術者
医師、歯科医師、獣医師、薬剤師
保健師、助産師、看護師
医療技術者
その他の保健医療の職業
社会福祉専門の職業
美術家、デザイナー、写真家
その他の専門的職業
管理的職業
事務的職業
一般事務の職業
会計事務の職業
生産関連事務の職業
営業・販売関連事務の職業
外勤事務の職業
運輸・通信事務の職業
事務用機器操作の職業
販売の職業
商品販売の職業
販売類似の職業
サービスの職業
家庭生活支援サービスの職業
生活衛生サービスの職業
飲食物調理の職業
接客・給仕の職業
居住施設・ビル等の管理の職業
その他のサービスの職業
保安の職業
農林漁業の職業
運輸・通信の職業
鉄道運転の職業
自動車運転の職業
船舶・航空機運転の職業
その他の運輸の職業
通信の職業
生産工程・労務の職業
金属材料製造の職業
化学製品製造の職業
窯業製品製造の職業
土石製品製造の職業
金属加工の職業
金属溶接・溶断の職業
一般機械器具組立・修理の職業
電気機械器具組立・修理の職業
輸送用機械組立・修理の職業
計器・光学機組立修理の職業
精殻・製粉・調味製造の職業
食料品製造の職業
飲料・たばこ製造の職業
紡織の職業
衣服・繊維製品製造の職業
木・竹・草・つる製品製造の職業
パルプ・紙・紙製品製造の職業
印刷・製本の職業
ゴム・プラスチック製品製造の職業
革・革製品製造の職業
装身具等製造の職業
その他の製造制作の職業
定置・建設機械運転の職業
電気作業者
採掘の職業
建設躯体工事の職業
建設の職業
土木の職業
運搬労務の職業
その他の労務の職業
分類不能の職業
(資料出所)厚生労働省「職業安定業務統計」
23年計
0.48
1.01
0.59
0.39
0.84
0.60
0.28
5.47
2.48
1.81
0.81
1.11
0.24
0.58
0.43
0.18
0.13
0.32
0.53
0.57
1.25
1.22
0.42
0.58
0.53
1.83
1.10
1.23
1.65
0.84
1.49
0.34
0.91
2.13
0.59
0.76
0.18
0.82
0.12
0.22
0.68
0.34
0.44
0.56
0.72
0.51
0.56
0.41
0.21
0.31
0.41
0.71
0.64
0.68
0.70
0.61
0.64
0.36
0.68
0.32
0.88
0.35
0.42
0.25
0.50
0.85
0.29
1.62
0.66
0.59
0.43
0.17
0.00
24年計
0.59
1.29
1.06
0.53
1.34
1.01
0.45
5.59
2.72
2.18
0.97
1.41
0.28
0.68
0.57
0.22
0.17
0.40
0.79
0.64
1.58
1.55
0.48
0.74
0.68
2.22
1.21
1.31
1.54
1.01
1.60
0.45
0.99
2.84
0.79
0.98
0.18
1.07
0.12
0.35
0.80
0.48
0.70
0.74
1.19
1.03
0.99
0.76
0.34
0.37
0.67
0.96
0.72
0.82
1.14
1.11
1.05
0.67
0.86
0.40
1.28
0.61
0.56
0.37
0.74
1.20
0.45
3.04
1.27
1.00
0.60
0.22
0.00
0.72
1.42
0.98
0.39
2.12
1.34
0.43
6.50
2.78
2.47
1.15
1.50
0.34
0.64
0.67
0.26
0.18
0.51
0.82
0.64
2.34
1.64
0.48
0.91
0.83
2.28
1.53
1.85
1.90
1.34
2.11
0.53
1.04
3.52
0.82
1.24
0.39
1.36
0.41
0.41
0.94
0.60
0.41
0.25
1.26
1.60
1.01
1.23
0.28
0.37
0.80
1.07
0.57
0.99
1.44
1.08
1.02
0.82
1.02
0.48
1.33
0.96
0.78
0.61
1.07
1.45
0.42
4.63
1.81
1.52
0.71
0.31
0.00
6
「職業能力の見える化」の必要性・基本的方向性
○個々の企業を超えた業界共通の能力評価の「ものさし」を作り、「スキルの見える化」を図ることで、身についた職務スキルの
適切な評価、ステップアップへの結びつけ。また、「スキルの向上」に資する能力開発機会を提供。
→労働者がスキルを身につける意欲を高め、キャリアアップを促進。企業にとっても、的確な人材採用、配置等が可能に。
■背景・課題
○経済のグローバル化、少子高齢化の中での「人
材力強化」の必要性の一層の高まり
○産業構造の変化、ジョブ型労働市場の拡大
に対応した、個人の円滑な転職支援の必要性
○非正規雇用労働者が増加する中での、それ
ぞれのライフスタイルや希望に応じた、多様な働き
方の実現支援の必要性
○いずれの観点からも、ジョブ型労働市場を
重点に、各業界共通の能力評価の「ものさ
し」を整備し、経験・能力に応じた採用、処
遇等がなされる基盤を整備することが急務。
●多様な正社員モデルの普及・促進
活
用
促
進
業界団体
○技能検定
等の既存の
資格制度の
見直しを含
む積極展開
業界検定等ツールの策定
職務におけるスキルの見える化
○職業能力
評価基準等
の能力評価
の基盤整備
企
業
ジョブ
カード
企
業
ジョブ
カード
企
業
●非正規雇用労働者等を対象とした職業能力開発プロ
グラムの拡充(公的職業訓練、学び直し)
の訓
タ練
イの
ア成
ッ果
プ評
価
等
○「日本再興戦略」(抄)(平成25年6月14日閣議決定)
2 雇用制度改革・人材力の強化
③ 多様な働き方の実現
○ 「多元的で安心できる働き方」の導入促進
・業界検定等の能力評価の仕組みを整備し、職業能力の見える化を促進する。
7
「労働市場政策における職業能力評価制度のあり方に関する
研究会」の開催
1 研究の目的
○職業能力の見える化を効果的に推進する前提として、ジョブ
型労働市場における非正規雇用労働者のキャリアアップ支援、産業間
の円滑な労働移動の基盤としての職業能力評価制度全体の役
割・体系や、評価方法の在り方等について、国内外の関連制度
(例:英国QCF、EQF)・事例に係る分析を行いつつ、理論的な
検証を行う必要。
○また、これに併せ、技能検定制度をはじめとする現行評価制
度の意義や課題についても検証を行うなど、労働市場政策の観
点から、職業能力評価制度の在り方について総合的、専門的な
検討を行い、施策の方向性を見定める必要。
2 研究会の構成、日程等
○職業能力評価・教育訓練等の人材育成、労働経済、労働法、非
正規雇用労働等の関連各分野の学識者により構成される「労働
市場政策における職業能力評価制度のあり方に関する研究会」
を発足(職業能力開発局長が参集を求める研究会の位置づけ)。
○平成25年9月に検討開始、25年度中に報告書取りまとめを計
画。
3 主な検討事項
(① 労働市場政策上の職業能力評価制度の意義
○職業能力評価の対象とすべき能力の構造と要素の捉え
方
○職業能力要素とこれに適した評価方法の関連性
○これらを踏まえた上、労働市場政策上の職業能力評価
制度の意義の明確化
② 現行各種検定制度等の意義、課題
○労働市場政策の観点から見た技能検定制度の意義、課
題
○労働市場政策の観点から見た認定社内検定制度等の意
義、課題
③ 今後の職業能力評価制度等の在り方
○業界検定整備等の意義、今後の推進の方向性
○これらの相互関係を含めた職業能力評価体系全体の在
り方(諸外国の職業能力評価制度との比較等の視点を含
めて)
○職業能力評価と職業訓練、キャリア・コンサルティング、ジョブカード
等関連施策との効果的な関連づけ
○その他、今後の職業能力評価制度のあり方、見直しの
ポイント
*企業、教育訓練等関係者のヒアリング等も適宜実施
○この検討成果を踏まえ、26年度以降、より具体の制度設計や、
これに係る関係者間のコンセンサス形成を図るなど、業界検定をはじめ
とする「職業能力の見える化」の効果的推進に反映。
8
「職業能力」の構造(仮説)
○「職業能力」については、◇何らかの方法で測定可能で、◇生産現場で価値を生み、ひいては募集採用、人事評
価等の場面での評価のインデックスとなる、労働者の保有する能力、といった捉え方が可能。
○これに、◇業種・職種特殊性ー共通・普遍性、◇企業特殊性ー共通性、◇潜在性ー顕在性、◇成長に伴う開発可能
性、◇適合する評価方法等の主要な「軸」を当てはめると、概ね以下のような構造整理が可能と考えられるもの。
○主にこの部分《業種・職種固有能力で、業界内
では概ね共通するもの》に着目し、能力の性格・レ
ベルに応じた評価の枠組み・手法を整備することが
考えられるもの
○想定される
典型的な評価
方法
○業種・職種固有能力
○企業内職能評
価の主な基準
(企業特殊能力)
(業界内共通能力)
○ジョブ型市
場での主な採
用選考時の評
価基準
●知識
●技能
●知識・技能を活用する力を含めた
実践力
○メンバーシップ
型市場での
主な採用選
考時の評価
基準
○検定(筆記
試験)により
評価
顕
在
的
・
測
定
可
能
性
大
特
殊
的
○検定(実技
(ロールプレイ等)
試験)により
評価
○業種・職種共通的に求められる基礎能力(知的能力、
対人関係能力、IT等の汎用スキル等)
○価値観、人格、動機等、職業能力の
基底
潜
在
的
普
遍
的
○職場場面で
の評価者評価、
自己申告等に
より評価
等○
に受
よ検
る要
担件
保と
し
て
の
講
習
修
了
、
実
務
経
験
年
数
9
職業能力の構造等に係る分析(試案)
職業能力の要素やその構造については、様々な目的(能力評価、教育訓練プログラムへの反映・質保証、人事評価等)や観点から、
理論的(教育・心理学的、経営学的、これらを含む学際的等の様々な観点から)、実践的な分析・整理が試みられてきたところ。
以下、これまでの国内外の代表的、特徴的な分析の考え方のポイントを分類し掲げるもの(「Ⅰ各論」は、各関係文献・資料に基づき、
本研究会の検討課題に即して事務局にて編集・要約を試みた、必要に応じ注釈を付したもの)。
Ⅰ 各論
1 職業能力全体を分析対象としたもの
○ 職業能力評価基準整備の論理的支柱としているエンプロイアビリティ論
・エンプロイアビリティを「労働市場価値を含んだ就業能力、即ち、労働市場における能力評価、能力開発目標の基準となる就業能
力」、言い換えれば企業を超えた横断的、積極的な市場価値を含んだ職業能力と定義づけ、その向上を、労働市場政策の目標
に位置づけ。
・また、労働者個人の能力の「構造」を、成果との関わりでの顕在性等の視点で、
①知識・技能(顕在)
②思考・行動様式(顕在的だが、③との関わり強いもの)
③動機、人柄、性格、信念、価値観等(潜在的)
に分類。
・その上で、エンプロイアビリティの評価対象としての職業能力について、(伝統的な意味での職業能力の捉え方である)知識・技能に
限定せず、思考行動様式を含め幅広く捉えることが適当とするもの(逆に、動機、人柄、性格、信念、価値観は、評価の対象とす
ることは適当、現実的とは言えないとの立場)。
○これが、労働市場において評価される行動特性等の能力、コンピテンシーそのものであり、このような考え方に立って、エンプロイアビリ
ティの評価基準を、業種・職種の括りごとに、できること単位で構築、整備することが、労働市場政策上有用と提言。
《「エンプロイアビリティの判断基準等に関する調査研究報告」(平成12年度、厚生労働省)より》
10
○ 労働市場政策の観点からの職業能力の要素・構造に関する様々な学術的分析
◇ 労働市場における人事評価論
・人事評価の対象を「成績」(業績そのもの)「能力」(職務を遂行する上で必要とされる能力の保有の程度)「情意」(仕事に対す
る態度)に三分した上で、能力に関する主な概念(捉え方)として、
①
②
③
④
⑤
⑥
能力
:物事をなし得る力やはたらき(測定方法:心理検査、知能検査)
職務遂行能力:仕事を行うために発揮される幅広い能力(測定方法:人事評価、人材アセスメント、行動観察評価)
コンピテンシー
:職務遂行能力にかかわる新しい能力概念(測定方法:行動観察評価)
知識
:知るという行為から得られた情報の蓄積(測定方法:筆記試験、レポート)
スキル(技能) :学習によって向上するさまざまな活動(測定方法:筆記試験、実技試験)
パーソナリティ
:状況や時間を越えてある程度一貫し安定した、その人らしい独自の行動の仕方を決定する心理的特性
(測定方法:心理検査、人事評価、行動観察評価)
⑦ モチベーション
:個人の内部に派生し、特定の職務行動の方向、強さ、持続性を規定する活動力(測定方法:人事評価、
人材アセスメント、行動観察評価)
⑧ リーダーシッフ ゚ :他者に影響を及ぼす優れたリーダーの資質(測定方法:人材アセスメント、行動観察評価)
等を掲げ(これらを排他的な要素として捉えているものではなく、ある種並列的)、主に合理的な測定方法等との関わりで分類整理。
《「内部・外部労働市場における職業能力評価の役割」(高橋潔)(平成20年)より》
○ 「人材マネジメント論」
・人材フローマネジメント(採用、配置、異動等、外部・内部労働市場での移動全般のマネジメントを指すもの)の観点から、人材要件
(本稿の職業能力と概ね同義)について、ライフキャリアにおける習得可能性の観点から、以下の「三層構造」を規定。
① ベーシックトラスト
:信頼の感情→学校卒業就職時に固定化
② 思考・行動特性 :発想がリスクテイクor保守的、外向or内向、地位志向or序列志向等→一般に学校卒業就職後10年間程度で
固定化
③ 特定分野の具体的な能力知識やノウハウ : ①②の基盤さえあれば、いつでも努力次第で習得が可能
・こうした人材要件ごとの習得の「臨海期」、人材教育の可能性を念頭に、戦略的な人材フローマネジメントの展開が必要と提言
(採用:①重視、初期キャリア形成:②の観点で人材選抜し、チャレンジングな経験付与、時々の具体の能力付与は③の観点で随時、
等々)
《「人材マネジメント論」(高橋俊介)(平成16年)より》
11
○ 「人的資本理論」
・労働者の職業訓練を通じた能力の習得・蓄積と、企業の費用負担・回収行動の関係等に係る分析を通じ、一般に職業能力と捉
えられるものとほぼ同等の概念として、ベッカー等は「人的資本」という概念を設定(企業が投資を行い、短期または長期でそこから
利益を回収する、という側面を強調したもの)。その上で、企業特殊性の高さの観点から、人的資本を以下の2つの要素に分析。
① 特殊熟練:(同一業種・職種について)特定の企業にしか通用しない技能(をはじめとする職業能力)
② 一般的熟練:(同一業種・職種について)どの企業にも通用する技能(をはじめとする職業能力)
・こうした職業能力のモデル、訓練費の負担や、賃金カーブの実態等の企業行動について「合理的なもの」という前提で、特殊熟
練と一般的熟練の比重についても分析(これに言及している小池和男「仕事の経済学」では、我が国の代表的な製造分野
(例えば大手メーカーでの半導体製造)を念頭に、「まったくの特殊熟練はまずあるまい。(中略)特殊性はその仕事を遂行する
熟練のなかでせいぜい10~20%ていどであろう」との見立て)。
《「仕事の経済学」(小池和男)(平成11年)より》
○ EU「EQF」での職業能力構造の分析
・EUでは、加盟各国に共通する、資格制度の共通枠組みをEQF(欧州資格枠組み)とし整備。その中で、知識(knowledge)、ス
キル、コンピテンスの3つの能力要素を対象に、定義づけを行った上で、レベル8(一番低いもの)~レベル1(最上位)の各レベルが満た
すべき能力水準を主に学位との対応関係で規定し、各国の資格が、いずれの水準に該当するかを分析整理。
・具体には、以下のように定義。
① 知識(knowledge)
:学習を通じて獲得された情報。職業や学習分野に関連する一連の事実、法則、理論、慣行を指す
もの。理論かつ/または事実と説明。
② スキル(skills)
:作業を成し遂げ問題を解決するために知識を応用したり技能を用いること。認知(論理的、直感的、
創造的思考の利用に関わる)または実践(手先の器用さと方法、素材、道具、器具等に関わる)と説明。
③ コンピテンス(competence):労働、研究の場や、専門・個人能力開発において知識、スキルや個人・社会・方法論的能力を利用
する ための証明済みの能力。責任と自主性の観点から説明。
12
2 特定の業種、職種固有の職業能力に焦点を当てた分析
・体系化、ひいては評価、養成の対象となる(IT分野の)「スキル」を実務能力(単に個別の要素技術を束ねたものではなく、要素技術
をいかに選択し、適用して課題解決の実現ができるか)として捉えるもの(*上記の「コンピテンス」等を包含した概念と解されるもの)。
・また、「プロフェッショナル」を「ビジネスを成功させ、産業界の発展に貢献する人材」「専門スキルを前提にして、顧客の要求に対して適切な
スキルを組み合わせて具体的な成果を達成する者」と定義(*いわば、レベルを内包した概念)。
・こうしたプロフェッショナルの拠り所となる専門領域(ドメイン)を、職種(キャリア)と定義。
・この職種(キャリア)ごと(マーケティング等11職種/その下位概念でマーケティングマネジメント等36専門分野を設定)、レベルごと(レベル1(エントリー
レベル)~レベル7(巨大プロジェクトリーダー・当該分野オーソリティレベル)、スキル要素とこれに対応した研修マップ等を体系化したものが「ITSS」
3 職種共通の能力(キーコンピテンシー等と称されるもの)に特に焦点を当てた分析
○ 社会人基礎力(経済産業省)【対象:大学卒レベル】
・企業に対する「学生に身につけてほしい能力」、学生に対する「身につけている・不足している」職種共通の能力要素に関する
アンケート調査結果の分析等を踏まえ、社会(企業)で共通的、基礎的に求められる能力として、以下の「3つの能力」「12の要素」
を掲げる。
① 前に踏み出す力(アクション)【主体性、働きかけ力、実行力】
② 考え抜く力(シンキング)
【課題発見力、計画力、想像力】
③ チームで働く力(チームワーク) 【発信力、傾聴力、柔軟性、情況把握力、規律性、ストレスコントロール力】
○ 若年者就職基礎能力(厚生労働省)【対象:エントリーレベル(高校大卒レベル)】
・企業が新卒学生の採用時に重視する職業のアンケート調査、これを踏まえた能力習得による採用可能性の定量分析等を踏まえ、
「事務系・営業系職種の新卒学生(大卒、高卒)の採用に当たり、半数以上の企業が重視し、比較的短期間の訓練によって習
得可能な基礎的能力」として、以下の5つの能力を挙げる。
これら能力習得に資するプログラム・試験を「Yesプログラム認定講座・試験」として認定を行い、修了・合格者に厚生労働大臣名で
「若年者就職基礎能力修得証明証」を交付していたもの(*現在は国の制度的関わりなし)。
① コミュニケーション能力
:思疎通、協調性、自己表現力
② 職業人意識
:責任感、向上心・探究心、勤労観
③ 基礎学力
:読み書き、計算・数学的思考、社会人常識
④ 資格取得
:情報技術関係、経理財務関係、語学関係等
⑤ ビジネスマナー
13
○ 学士力(文部科学省)【対象:大学卒レベル】
・「学士課程において身につけるべき参考指針」として、中央教育審議会大学分科会「学士課程の在り方に関する小委員会」の
審議を通じ取りまとめたもの。以下の「4分野」「13項目」を掲げる。
① 知識・理解 :多文化・異文化に関する知識の理解、人類の文化・社会と自然に関する知識の理解
② 汎用的技能 :コミュニケーション・スキル、数量的スキル、情報リテラシー、理論的思考力、問題解決力
③ 態度・志向性 :自己管理力、チームワーク・リーダーシップ、倫理観、市民としての社会的責任、生涯学習力
○ キー・コンピテンシー(OECD:DeSeCo(Difinition & Selection of Competencies)プロジェクト)【対象:中等教育履修者層~成人各
年齢層全般】
・ コンピテンスを「ある特定の文脈における複雑な要求に対し、認知的・非認知的側面を含む心理―社会的な前提条件の結集を
通じてうまく対応する能力」と定義(注:このように、他の学説・モデル等に比して、非認知的能力(態度、動機付け、価値観等)に
重きを置いていることに特徴)、これを説明する「ホリスティック(全体)モデル」(要求とこれに対応した内部構造の関係づけ)を構築。
・ さらにこれを進化させた概念として「キー・コンピテンシー」を位置づけ。この「キー」を「個人の人生での成功」と「うまく機能する社会」
の実現に資するものと目的的に意味づけし、この構造・要素を対象世界、他者、自分自身の三つの軸から分析し、以下の3カテ
ゴリー、9能力要素を抽出。
① 道具を相互作用的に用いる(能力)【言語・シンボル・テクストを相互作用的に用いる、知識や情報を相互作用的に用いる、
テクノロジーを相互作用的に用いる】
② 異質な人々からなる集団で相互に関わり合う(能力)【他者とよい関係を築く、チームを組んで協同し仕事する、対立を
調整し解決する】
③ 自律的に行動する(能力)【大きな展望の中で行動する、人生計画や個人的プロジェクトを設計し実行する、権利・利害・
限界・ニーズを擁護し主張する】
・ こうしたモデルの下で、15歳を対象としたPISA、成人(16~64歳)を対象としたPIAACにより、具体に「キー・コンピテンシー」の測定を試
みているところ(同時に、「キーコンピテンシーは(検査等で)直接測定し難い側面有り、「ふるまい」などから推察する必要」な旨言及)。
議論当初、「key compitencies(キー・コンピテンシー)」ではなく、「new basic skills」といった概念、用語を用いていたが、単なるsurvival
skillではないこと、知識・(狭義の)スキル、態度等の統合概念であることを明確化、ダイナミックさを強調、等の意図で、「key
compitencies」に定着。
本研究会開催途上の平成25年10月に、PIAAC(国際成人力調査)の調査結果が公表。
・なお、PIAAにおける、職務要件(JRA)(*テスト等による能力の直接測定でも、保有するスキルの自己評価(何ができる)でもなく、仕
事上で発揮しているスキルの自己報告(何をしている)からスキルを抽出する独自のアプローチ)では、測定対象等となるスキルの構造を以下
のようにモデル化。
14
①
②
③
④
認知的スキル
:読み書き、計算、科学的知識、問題解決、ITC・コンピューター利用
人間関係・社会的スキル:影響力、管理スキル、自律性、職場での人間関係、クライアントとの関係
身体的スキル
:体力、手先の器用さ
仕事・職場関連
: 職業知識、継続学習←*これらは典型的な能力(要素)とは、性格を異にするもの
*《「キー・コンピテンシー/国際標準の学力を目指して」(ドミニク・S・ライチェン、ローラ・H・サルガニク編著)(平成18年)、「OECDによる
PIAAC(国際成人力調査)の開発動向」(深町珠由)(平成20年)より》
Ⅱ 考察・まとめ
以上、これまでの職業能力やその構造、評価の在り方に係る代表的な分析の成果等を踏まえるなら、全体として、以下のよ
うな考え方の整理が可能では。
○ 職業能力については、様々な着眼点があり得るが、今回の検討の目的や社会的要請に鑑みるなら、◇何らかの方法で測定
可能であり、かつ◇生産現場で価値をもたらし、ひいては募集採用、人事評価等の場面で労働者自身の「評価」をもたらす(直
接には各〈求人〉企業、観念的には労働市場に「評価」される)労働者の保有する能力、という観点で捉えられるのではな いか。
○ 職業能力の構造、要素の捉え方について、◇業種・職種特殊性―共通性、◇企業特殊性―共通性、◇潜在性―顕在性、
◇成長に伴う開発可能性、◇適合する測定方法(検定・検査、各種アセスメント)、等の主要な軸が想定されるのでは。これらを
一時 に取り扱うのは、議論を過度に複雑にするものであり、目的に応じ、着眼点設定・これに応じた分類・限定等を行い議論
することが適当ではないか(測定手法について議論する際は、これに応じ分類する等)。
○ 今般の「労働市場政策における職業能力評価制度のあり方」の文脈では、ジョブ型労働市場で特に重視されるものとして、主
に「業種・職種特殊性」「企業共通性」「顕在性」「開発可能性」の高い、検定等で測定可能な能力要素に焦点を当て、必要に応
じ、業種・職種共通等のこれ以外の能力要素も評価の対象とする、といったアプローチが相応しいのでは。
○ その上で、これら様々な軸・着眼点設定による類型化で概ね共通する、知識(概念化された言語のストック及び科学の法則に
基づいて整序されたデータの体系のストック)、技能(身についたわざ)、及び(キー)コンピテンシー(知識、技能を活用し、様々な具体の
職務場面で成果を挙げるための態度や思考・行動様式)といった基本構造を、政策立案の検討のベースとすることが適当では。
*知識・技能の( )内は、現行職業能力開発促進法コメンタールの記述を用いているもの。
○ 上記の業種・職種特殊性の如何という観点からすると、この3分類中、知識と技能は、基本的に業種・職種固有の能力、コンピ
テンシーは、業種・職種共通の能力と業種・職種固有の能力の両方の側面を持ったもの、と概ね関係整理できるのでは。
○ さらに、このコンピテンシーについては、知的能力、対人関係能力、態度・志向性等に大まかに分類可能では。
○ 議論の混乱を回避するため、コンピテンシーで業種・職種固有のものを、本研究会の議論上、「実践力」等と称しては。
○ これらの構造・分類に応じ評価を行うための共通的物差し・レベル〈市場価値の高さ〉を、職位、在職年数等の可能な限り客観
的要素と結びつけた形態で設定すべきではないか。
15
現行職業能力開発促進法等上の職業能力評価制度の体系
【法の目的(法第1条)】
○(前略)職業訓練及び職業能力検定の内容の充実及びその実施の円滑化ための施策並びに労働者が自ら職業に関する教育訓
練又は職業能力検定を受ける機会を確保するための施策等を総合的かつ計画的に講ずることにより、職業に必要な労働者の能
力を開発し、及び向上させることを促進し(後略)
→職業訓練、職業能力検定が職業能力開発促進施策の二本柱に位置づけ
【職業訓練(法第15条の6等)】
○国及び都道府県は、労働者が段階的かつ
体系的に職業に必要な技能及びこれに関す
る知識を習得することができるように、
(中略)施設を設置して、(中略)職業訓
練を行うものとする。
→国及び都道府県が行う職業訓練の目的等
が明確化
【受講指示(職業安定法第19条、雇用保険
法第24条等)】
→公共職業安定所長が職業指導の一環とし
て指示する公共職業訓練を受講する雇用保
険受給資格者に対する訓練延長給付等の措
置を規定:職業訓練の雇用対策上の位置づ
けが明確化
【職業訓練制度と職業能力
検定制度の連携(政省令関
係規定)】
○職業訓練修了を技能検定
の受検資格、免除要件に活
用
○技能検定合格を訓練指導
員免除資格として活用等
【職業能力検定(法第3条の2⑤項)】
○職業能力検定は、職業能力の評価に係る客
観的かつ公正な基準の整備及び試験その他の
方法の充実が図られ、(中略)職業に必要な技
能及びこれに関する知識についての評価が適
正になされるように行われなければならな
い。
→職業能力検定の目的、評価の対象等が明確
化
【技能検定(法第5章)】
○技能検定は、厚生労働大臣が、政令に定める職種ごとに、厚生労働省令で
定める等級に区分して行う。/技能検定は、実技試験及び学科試験によっ
て行う。/技能検定に合格した者は、技能士と称することができる。/技
能士でない者は、技能士という名称を用いてはならない。
→職業能力検定の一形態としての技能検定の、職種・等級、試験方法の基本
的枠組み、名称独占型の国家検定としての位置づけが規定
*認定技能審査、認定社内検定制度(それぞれ大臣告示に基づくもの)
も、広義の職業能力検定制度の一環
○このように、職業能力評価制度と職業訓練、職
業訓練と就職支援は密接不可分の制度設計。
○さらに、能力評価制度は、評価基準と、これに準
拠した検定・資格制度としての職業能力検定(具
体には技能検定)という重層構造。
【職業能力評価基準を踏まえた職業能力検定制度の充実(雇用対策法第17条)】
○(前略)事業主団体その他の関係者の協力の下に、職業能力の評価のための適
正な基準を設定し、これに準拠して労働者の有する職業能力の程度を検定する制
度を確立(後略)
→評価基準の職業能力検定の基盤としての位置づけが明確化
16
職業能力評価制度の概要
技能検定
認定技能審査
認定社内検定
職業能力評価基準
根拠
職業能力開発促進法第44条
技能審査認定規程 (48年告示)
社内検定認定規定 (59年告示)
法令規定なし
概要
大臣(又は都道府県知事)が、労
働者の有する技能を一定の基準
によって検定し、これを公証する国
家検定制度。
非営利団体が実施する技能
審査のうち、技能振興上推奨
すべきものを大臣が認定する
制度。
(技能審査:労働者の有する職業
知識・技能を審査し証明する)
事業主等が、雇用する労働者に
対して実施する検定のうち、技能
振興上推奨すべきものを大臣が
認定する制度。
なお、社内検定自体は、大臣
認定を受けなくても事業主等が
実施することはできる。
労働者の職業能力を共通のモノサシで
評価できる様、業種・職種・職務別に
必要な能力水準を示した基準。
あくまでも基準のみであって、具体的な
試験問題、活用方法等が予め組み込ま
れたものではない。
対象
職種
等
企業横断的・業界標準的な普遍
性を有する、技能および知識を
客観的に評価できる、対象労働者
が全国的に相当数存在する等と
いった職種。
企業間で共通性のある技能で
あるが、技能労働者が少ない、
特定地域にのみ存在する、技能
の幅が狭い等といった職種。
技能検定とは競合しないこと。
個別企業において、先端的な
技能、特有な技能など。
技能検定を補完するものであ
ること。
業種別に幅広い業種を対象とし、業種
横断的な経理・人事等の事務系職種に
ついても整備。
被評
価・受
検対
象者
一定以上の実務経験年数を
有する者など。
一定以上の実務経験年数を
有する者など。
事業主(事業主団体等の場合は、
その構成員である事業主)に雇用
される労働者に限定。
(系列企業の労働者や団体傘下の
一人親方等も可)
労働者、求職者(だれでもよく、評価
基準を用いる実施者に委ねられる)
評価
方法
実施
機関
現状
具体的な試験基準、試験採点基準、試験実施要領、評価者の選任基準等を定める必要がある。
試験は、実技試験+学科試験
・実技試験は、実際に作業等を行わせて技能程度を検定する。
・学科試験は、作業の遂行に必要な正しい判断力及び知識の有無を判定する。
○都道府県及び職能開協会
○指定試験機関
・事業主団体、その連合団体
・一般社団法人、一般財団法人
・法人である労働組合
・営利を目的としない法人
*職種の新設は、原則、指定試験
機関によること。
128職種
○非営利団体
*平成12年行革大綱等に基づき、
公益法人が実施する技能審査は
認定廃止(13年に14職種を廃止
→うち3職種は指定試験機関
制度による技能検定へ)。
*非営利団体が実施する技能審
査についても(局長通達により)
新規認定は行わない。
8団体9職種
○事業主
○事業主団体又はその連合団体
なお、平成12年行革大綱等に基
づき、公益法人は対象外。
42事業主等122職種
評価基準は、業界内での標準的な基準。
各企業で適当にカスタマイズして活用
する。
継続的観察による評価でも、試験方式
による評価でも可。
国が関係団体の協力を得て実施。
50業種、事務系9職種
17
現状の主な職業能力評価制度
○
技能検定制度
○ 技能検定制度は、労働者の有する技能の程度を検定し、これを公証する国家検定制度であり、職業能力開
発促進法に基づき昭和34年度から実施。
○ 検定職種は、平成25年4月1日現在、128職種(建設・製造の技能分野が中心)。①等級に区分するもの
(特級、1級、2級、3級、基礎1級及び基礎2級)と、②等級に区分しないもの(単一等級)とがある。技
能検定は、職種ごとに、実技試験及び学科試験により実施。
○ 厚生労働大臣が定める実施計画に基づき、都道府県知事が実施。なお、ファイナンシャル・プランニング
等 14職種は民間の指定試験機関が実施。
○ 合格者に「技能士」の名称を付与。(いわゆる「名称独占資格」※制度創設以降、延べ519万人が合格
【24年度の実績】受検申請者数 約75万人
合格者数 約28万人
受検申請者数が多い上位5職種:
「ファイナンシャル・プランニング」:47.7万人、「機械保全」:3.3万人、「機械加工」:2.2万人、「知的財産管理」:1.8万人、「金融窓口
サービス」:1.8万人
○
職業能力評価基準
○ 職業能力評価基準は、サービス産業の増加など産業構造の変化や労働移動の増加の下で、技能検定制度が
カバーしていない分野を含めた幅広い業種・職種を対象に、職業能力評価を行う基盤として平成14年から
策定に着手し、現在事務系9職種のほか、電気機械器具製造業、ホテル業、自動車製造業など50業種が完
成。(平成25年度現在)
<各企業において、この「職業能力評価基準」をカスタマイズの上、職務記述書、職能要件書、能力開発指
針、募集採用等の評価基準等に活用。>
・業種別、職種・職務別に必要とされる能力を、担当者レベルから組織・部門の責任者に必要とされるレ
ベルまで、4つの能力水準レベルを設定し整理・体系化。
・仕事をこなすために必要な「知識」や「技術・技能」に加えて、どのように行動すべきかといった「職
務遂行能力」を記述。
18
技能検定制度の概要
○技能検定制度は、労働者の有する技能を一定の基準によって検定し、これを公証する国家検定制度。
職業能力開発促進法に基づき昭和34年度から実施。
○技能検定は、職種ごとに、実技試験と学科試験により実施。
検定職種は、平成25年4月1日現在128職種であり、大きく分けて
①等級に区分するもの(特級、1級、2級、3級、基礎1級及び基礎2級)
②等級に区分しないもの(単一等級)
の2種類が存在する。技能検定に合格した者は、技能士と称することができる。
○技能検定の実施状況は、平成24年度には全国で約75万人の受検申請があり、約28万人が合格。
制度開始から累計約519万人(延べ)が資格を取得。
○平成13年度から指定試験機関制度を導入(平成25年4月1日現在14職種)
技能検定の受検申請者数の推移(全体)
(人)
900,000
800,000
技能検定合格者数(総数)
700,000
600,000
500,000
400,000
300,000
200,000
100,000
0
指定試験機関
制度の導入
技能検定受検申請者数(総数)
749,145
533,367
技能検定受検申請者数
(指定試験機関方式)
284,676
技能検定受検申請者数
(都道府県方式)
215,778
19
技能検定職種一覧表(128職種)
平成25年4月1日現在
(注 :下線の14職種については、指定試験機関(民間機関)において実施。)
技能検定職種
建設関係
造園、さく井、建築板金、冷凍空気調和機器施工、石材施工、建築大工、枠組壁建築、かわらぶき、とび、左官、築炉、ブロック建築、
エーエルシーパネル施工、タイル張り、配管、厨房設備施工、型枠施工、鉄筋施工、コンクリート圧送施工、防水施工、
樹脂接着剤注入施工、内装仕上げ施工、熱絶縁施工、カーテンウォール施工、サッシ施工、自動ドア施工、バルコニー施工、
ガラス施工、ウェルポイント施工、塗装、路面標示施工、広告美術仕上げ
窯業・土石関係
金属加工関係
食料品関係
陶磁器製造
金属溶解、鋳造、鍛造、金属熱処理、粉末冶金、機械加工、放電加工、金型製作、金属プレス加工、鉄工、工場板金、めっき、
アルミニウム陽極酸化処理、溶射、金属ばね製造、仕上げ、切削工具研削、ダイカスト、金属材料試験
機械検査、機械保全、産業車両整備、鉄道車両製造・整備、内燃機関組立て、空気圧装置組立て、油圧装置調整、
縫製機械整備、建設機械整備、農業機械整備、テクニカルイラストレーション、機械・プラント製図
電子回路接続、電子機器組立て、電気機器組立て、半導体製品製造、プリント配線板製造、自動販売機調整、光学機器製造、
複写機組立て、電気製図
パン製造、菓子製造、製麵、ハム・ソーセージ・ベーコン製造、水産練り製品製造、みそ製造、酒造
衣服・繊維製品関係
染色、ニット製品製造、婦人子供服製造、紳士服製造、和裁、寝具製作、帆布製品製造、布はく縫製
一般機械器具関係
電気・精密機械器具関係
木材・木製品・紙加工品関係 機械木工、木型製作、家具製作、建具製作、紙器・段ボール箱製造、畳製作、表装
プラスチック成形、強化プラスチック成形
プラスチック製品関係
貴金属・装身具関係
印刷製本関係
その他
150
新職業訓練法の施行に
伴い、職種の名称変更を
行った
120
職
90
種
60数
0
技能検定の職種数の推移
118
137
133
142
128
開始職種数
65
5
多くの類似職種に
ついて統合を行った
職種の整理統合
を行った
統廃合職種数
累
計
S34
S35
S36
S37
S38
S39
S40
S41
S42
S43
S44
S45
S46
S47
S48
S49
S50
S51
S52
S53
S54
S55
S56
S57
S58
S59
S60
S61
S62
S63
H1
H2
H3
H4
H5
H6
H7
H8
H9
H10
H11
H12
H13
H14
H15
H16
H17
H18
H19
H20
H21
H22
H23
H24
H25
30
時計修理、貴金属装身具製作
製版、印刷、製本
ウェブデザイン、キャリア・コンサルティング、ピアノ調律、ファイナンシャル・プランニング、知的財産管理、金融窓口サービス、着付け、
レストランサービス、ビル設備管理、園芸装飾、ロープ加工、情報配線施工、化学分析、印章彫刻、ガラス用フィルム施工、塗料調色、
義肢・装具製作、舞台機構調整、工業包装、写真、調理、ビルクリーニング、ハウスクリーニング、産業洗浄、商品装飾展示、フラワー装飾
20
技能検定制度の沿革
昭和34年
技能検定の
実施開始
○ 昭和33年職業訓練法成立による技能検定制度の創設。技能者の技能の評価を行ってこれを公証することにより、
その技能の向上を図ることを目的として実施。
○ 1級を労働大臣が、2級を都道府県知事が実施(労働大臣の職権を委任)。労働大臣又は都道府県知事が学科及
び実技(要素)を行う第1次試験、民間の産業団体等に委託して実技(作業)行う第2次試験に区分。
○ 各種産業を網羅した技能検定を実施するためには、行政機関だけでなく民間の力も必要であるとの考えの下、民
昭和39年
技能競技大会 間の技能競技大会との連携により技能検定の拡大を図ることとされた。
方式の採用 ○ 実施方式を第1次、第2次に区分して実施する方式から、学科試験及び実技試験により行う方式に変更。当面、実
技試験を実施せず、全面的に労働大臣の承認を受けた課題により実施する技能競技大会をもって代替。
○ 国家検定としての制度と権威を保持しつつ、民間の力を活用し、財政的及び組織的な基盤のある実施団体を特別
の法律に基づき、中央及び都道府県に設置することが検討された。その結果、技能検定協会を設置し、技能検定業
務を行わせることとした。
○ 労働大臣及び都道府県知事は技能検定協会に対して試験業務の一部を行わせることが可能となった。
昭和44年
技能検定協会
の設立
昭和54年
職業能力開発 及び技能評価を、その有機的な連携のもと実施しうる体制を確立することとされた。
協会の設立 ○ 中央においては職業訓練中央会と中央技能検定協会を中央職業能力開発協会に統合し、都道府県においては
○ 多様化する労働者及び事業主の職業訓練ニーズの充足を図り、労働者の職業人生を通じて適時適切な職業訓練
職業訓練法人連合会と都道府県技能検定協会を都道府県職業能力開発協会に統合した。
昭和57年
昭和60年
指定事業主団 ○ 行財政改革が進められるなか、従来の方式では実施体制を整備することが困難となり、民間の活力を利用するこ
体委託方式の と、また、第3次産業等では既に資格制度が普及しているため、新規職種を開拓するためには、従来の方式以外の
方法が必要であると考えられていた。
採用
○ 労働大臣が特に必要と認める職種について、指定事業主団体に検定業務の一部を委託して実施。
職業訓練法から ○ 職業生活の全期間にわたる労働者の職業能力の開発、向上を総合的に促進するため、従来の職業訓練法が一
部改正され、職業能力開発促進法に改称されるとともに、現場の技術技能の変化に応じて技能検定職種が整理統
職業能力開発促
合され、受検資格について簡素化等が行われた。
進法への改正
○ 民間機関が指定試験機関として技能検定試験の全部又は一部の業務を行うことができることとなった。
平成13年
指定試験機関 ○ 指定試験機関が行う試験は、厚生労働大臣の認定を受けた試験実施要領により実施。学科試験及び実技試験の
制度の創設
問題は、厚生労働大臣の認定を受けた試験科目及びその範囲等に沿って指定試験機関が作成。
※H17 「行政改革の重要方針」により、職種を新設する場合は、原則、指定試験機関方式によることとされた。
21
技能検定職種の新設要件と試験実施までの流れ
指定試験機関に関する要件
検定に関する要件
①高度な技能や専門的知識を要する等検定に
値する職業能力が要求されること
②技能及び知識を客観的に評価できること
③検定すべき技能及び知識が、企業横断的・
業界標準的な普遍性を有するものであること。
④技能検定の対象となる職種における高度な
職業能力を有する人材に対する需要が大きい
こと又は増大していること。
⑤対象労働者が地域に限定されることなく
全国的に相当数存在すること。
※「技能検定職種等のあり方に関する検討会」
報告書(平成18年9月)に基づく基準
①試験を行おうとする者が事業主の団体、連合体等であること。
②職員、設備、試験業務の実施の方法その他の事項についての
試験業務の実施に関する計画が、試験業務の適正かつ確実な
実施のために適切なものであること。
③上記の試験業務の実施に関する計画の適正かつ確実な実施に
必要な経理的及び技術的な基礎を有するものであること。
<具体的要件>
①試験業務に係る経理が、申請者の行う他の業務に係る経理と区分
して整理されることとされていること。
②全国的な規模で技能検定を実施できること。
③継続して毎年一回以上技能検定を実施できること。
④実技試験を含む試験を客観的な評価基準により適切に行ってきた
実績又は試験を全国的に毎年千人以上の規模で適切に行ってきた
実績を有すること。 他
職種追加のための政省令改正
指定機関申請、指定
22
技能検定のカバレッジについて
1 算出の考え方
今回の算出において「技能検定のカバレッジ」とは、「全就業者中、技能検定の受検が見込まれる
就業者の割合」と定義する。
2 算出方法
(1) 平成22年度の国勢調査(総務省統計局。速報値)を使用
(2) 各技能検定職種について、検定職種に対応する職
業分類を選定
(具体例)
● 技能検定「造園」職種には、職業分類「植木職、造園師」
が対応する。
● 技能検定「機械加工」職種には、職業分類「金属工作機械
作業従事者」が対応する。
● 技能検定「ファイナンシャル・プランニング」職種には、職
業分類「会計事務従事者」が対応する。
※ 1つの職業分類に対し、複数の技能検定職種が対応する
ものもある。
また、技能検定職種については、極力1つの職業分類を
選定するよう試みたが、鉄道車両製造・整備のみ複数の職
業分類を選定している。
(3) (2)の作業により対応する技能検定職種が存在する職業
分類の就業者数を合計
(4) (3)で算出した合計を全就業者数で除した商を算出
C = A ÷ B × 100(%)
A:「対応する」技能検定職種が存在する
職業分類の就業者数の
合計(19,652,300人)
B:全就業者数(※)
C:技能検定のカバレッジ
(※) 全就業者数には、それぞれ以下
の数値を入れる。
① 全就業者数に対するカバレッジ
を算出する場合 ⇒ 58,294,700人
② 全就業者中、明らかに国家検定
試験がなじまない職業(ライセンス
型、公務員型の職業、プロスポーツ
選手、芸術家、宗教家等)に従事す
る就業者数を除く場合
⇒50,747,500人
3 算出結果
① 全体 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・33.7%
② うち明らかに国家検定試験がなじまない職業を除く ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・38.7%
23
技能士の推計について


※中間報告につき未定稿
昭和34年より実施されている技能検定について、厚生労働省では、職種・作業・等級ごとの技能検定合格者(技能士)の延べ数は把握しているが、
登録制や更新制等ではないことから、実合格者数の把握はできない。
このため、今後の技能検定制度を含む職業能力評価制度のあり方の検討に資するため、技能士(都道府県方式)の実数を推計。
○推計の対象:平成25年4月現在で都道府県が実施する114職種の1級、2級、3級及び単一等級。
○推計に用いた基礎資料・調査等:
①技能検定合格者数(昭和34年度~平成24年度)(厚生労働省調べ)
②技能士webアンケート調査(国内在住の18歳以上のインターネットモニター1,325,361人に協力依
頼を行い、うち173,170人が協力。調査は平成25年9月実施)
③webアンケート調査協力者のうち、技能士である者は4,595人(以下、「標本技能士」という。)
○推計方法:標本技能士に係る調査結果に基づき、職種への復元を試みたものであるが、職種ごとの推計では 標本技能士数が小さくなり、推計誤差b
がより大きくなるおそれがあることから、関係性が比較的強い職種をまとめ(10種の「該当産業」にグルーピング)推計した。
延べ技能士数 3,230,790人
①
死亡者数の推計
293千人
標本技能士が技能検定に合格した年度と合格時の年齢から、各年度毎の合格者の男女別年齢分布を基に、生命表(生命表は年度に
応じた当時のものを使用)に基づく平均余命を用い、現時点での死亡者数を推計。(生命表の年齢適用に当たっては、5歳階級の中間年(30~34歳であれば32歳)
を使用。)
ⅰ複数の等級を有する者の推計
215千人
標本技能士のうち、同一産業・職種・作業内で複数の等級に合格している者の割合を基に、複数の等級に合格している者数を推計。
ⅱ複数の職種を有する者の推計①
②
574千人
標本技能士のうち、同一産業内で複数の職種に合格している者の割合を基に、複数の職種に合格している者数を推計。
ⅲ複数の作業を有する者の推計
559千人
標本技能士のうち、同一産業・職種内で複数の作業に合格している者の割合を基に、複数の作業に合格している者数を推計。(本推計に限っ
ては、標本技能士数4,595人中3,519人が協力。)
ⅳ複数の職種を有する者の推計②
187千人
標本技能士のうち、産業間で複数の職種に合格している者の割合を基に、複数の職種に合格している者数を推計。
技能士 実数(推計) 1,403千人
③
就労中の者を推計
就労している79.3%(正規53.1% 非正規・派遣10.9% 自営・フリー等15.3%)
現に就労している技能士 実数(推計) 1,112千人
都道府県方式114職種に対する職
業分類の就業者(13,084,400人)に対し
8.5%
24
企業等における技能検定等職業能力評価の活用状況
○職業能力評価を実施している事業所は全体の66.2%。
(職業能力評価:職業に必要となる技能や能力の評価のうち、会社が独自に作成した評価基準や業界団体で作成した評価基準、或い
は、既存の各種資格に基づいて評価が行われているもの。)
○職業能力評価を行っている事業所で、資格を利用している事業所は、全体の53.2%。利用されている資格(複数
回答可)は国などが認定する公的資格が67.2%で最も多く、技能検定の利用は43.3%。
○技能検定を知っている事業所は全体の51.0%。業種別にみると、製造業(65.5%)、建設業(64.8%)。
○技能検定の利点については「労働者の職業意識や職業能力の向上に役立つ」が86.8%で最も多く、「採用、配置
転換、昇進などに活用できる」は42.3%。
※(資料出所)平成24年度能力開発基本調査(厚生労働省職業能力開発局)
【企業ヒアリング(能力評価課が実施中)時のコメント例】
「職業意識や職業能力の向上
に役立つ」という意見
「採用、配置転換、昇進など
に活用できる」という意見
(建設業)
プレッシャーがないと技能向上に取り組みに
くいものだが、技能検定受検は技能向上に役
立っている。
(製造業)
技能検定受検により、会社全体の技能の底上
げにつながる。
(サービス業)
従業員台帳に取得資格が書かれているので、
人事配置の参考にしている。
(製造業)
採用時や昇進時に、補助的な要件として技能
検定を参考にしている。
「職業能力評価は技能検定のみ
に限らない」という意見
(建設業)
技能検定を持っていることも中途採用における評価
の一要素であるが、それよりも当人の今までの経験
が会社の仕事内容に合うことを重視している。
(製造業)
幅広い作業ができるわけではなく、会社において求
める技能が違っている。
以上より
○相当数の企業が技能検定を職業能力評価のツールとして利用しているが、個々の企業現場では、同じ職種でも異な
る作業があることなどから、技能士資格を有することだけで、その職種の全ての仕事ができることを示すものでは
ないとの認識もある。
○技能検定は、採用、配置転換、昇進などの各側面における活用のみならず、職業意識の観点からも職業能力の向上
や、人材育成に活用されているが、より具体的な活用実態等については、さらに分析が必要。
25
平成24年度能力開発基本調査の概要(1)
職業能力評価を実施している事業場
0
全体
【企業規模】
30~49人
50~99人
100~299人
300~999人
1,000人以上
20
40
60
80
職業能力評価における資格の活用状況
100
(%)
0.2
正社員のみに利用し
ている
(%)
66.2
33.2
正社員以外のみに利
用している
54.4
59.6
正社員、正社員以外
の両方に利用してい
る
65.9
46.6
70.5
利用していない
0.8
19.2
78.5
不明
利用している資格(複数回答)
0
10
20
30
40
50
国、国の関係機関、地方自治体などが認定する公的資格
70
80
(%)
67.2
民間団体が認定する民間資格
46.4
技能検定
43.3
事業主等が認定する社内資格
その他
60
36.0
6.6
資料出所:平成24年度能力開発基本調査
26
平成24年度能力開発基本調査の概要(2)
技能検定制度を知っている事業所
0
10
20
30
40
技能検定の利点(複数回答)
50
60
70
0
(%)
全体
64.8
製造業
65.5
電気・ガス・熱供給・水道業
80
100
(%)
労働者の職業意識や職業能
力の向上に役立つ
86.8
47.7
運輸業,郵便業
41.7
卸売業,小売業
採用、配置転換、昇進などに
活用できる
46.5
金融業,保険業
42.3
55.9
不動産業,物品賃貸業
41.9
学術研究,専門・技術サービス業
49.0
宿泊業,飲食サービス業
技能士がいることで、取引な
どにプラスの効果がある
45.8
生活関連サービス業,娯楽業
31.4
38.2
26.4
34.6
その他
複合サービス事業
サービス業(他に分類されないもの)
60
58.0
情報通信業
医療,福祉
40
51.0
建設業
教育,学習支援業
20
6.5
62.5
49.5
資料出所:平成24年度能力開発基本調査
27
技能検定の労働市場政策上の課題と対応案
○技能検定の企業における活用実態を
見ると、総じて
◇従業員の能力開発の目標になり、
◇企業全体の技能の底上げ・向上や、
職場の共通言語形成に貢献している。
○そのため、受検料補助等の受検勧奨策
に取り組んでいる企業も多いものの、
他方で現場の技能と合っていない、
受検機会が限られるとの意見がある。
○また、採用等での要件としての
活用は限定的である。
○技能検定の利点については「労働者の職業意識や職業能力の向上に役立つ」が86.8%で最も多く、「採用、配置
転換、昇進などに活用できる」は42.3%。【㉔能開基本調査】
○技能士がいる事業所の55.9%が中途採用において合格者を重視。【㉕技能士の活用実態に係る調査】
○技能士の側から見ても、72.2%が「技能検定を受検してよかった」と思っている。【㉕技能士の活用実態に係る
調査】
○技能検定を活用している企業のヒアリングでの概ね共通の回答として、技能検定受検により企業全体の技能の底
上げに貢献しており、技能検定受検を勧奨し、受検料補助、報奨制度等実施しているが、採用に当たっては、技能
検定資格は参考扱いであり、キャリア等を重視している。
○技能検定の問題点については、「技能検定の対象や試験内容が現場で必要な技能と合っていない」が41.7%及び
「技能検定の試験実施回数や試験地が限られている」が41.6%と高い。【㉔能開基本調査】
○技能士の25.4%が「対象職種・技能内容が実際の業務と合っていない」との意見。【㉕技能士の活用実態に係る
調査】
○技能士がいる事業所の92.1%が受検者に支援(受検料負担、出勤扱い、講習実施他)を実施。【㉕技能士の活用
実態に係る調査】
○技能検定の制度上のカバレッジ(全就業者中、技能検定の受検が見込まれる就業者の割合)は34%。
【想定される具体の要因】
★技能
検定の
内容・
手法に
係る課
題
①技術、産業活動の変化により、現場で求められる技能と技
能検定とで、把握する技能の内容に乖離が生じているのでは
②実技試験の手法が実践性に乏しいものとなっているのでは
③全国統一的な試験のため、そもそも各企業の業務活動や人材
ニーズの反映が難しい分野があるのでは
★受検機
会に係る
課題
★募集採
用での活
用に係る
課題
【考え得る対応策(検討課題)】
○「試験科目及びその範囲」の見直し頻度の向上
○ニーズの高まっている作業の追加
○業界関係者の意見も踏まえた、実技試験の手法、試
験課題の見直し
○技能検定がなじまない分野の業界検定への移行を含め
た、位置づけ見直し
④特に都道府県方式の場合、職種が多岐に亘ることから、前期
または後期の年1回の実施となり、受検機会が少ないため、活
用しにくいのでは
○受検者数の多い職種の年2回実施の拡大。学科試験の実
施方法の見直し等による受検機会の拡大
⑤元々、労働者の技能習得意欲の向上を主眼に導入されたもの
であり、制度設計上(受検条件等)も採用に当たっての活用は
主眼とされていなかったのではないか
○高校生、訓練生が受検可能で、採用に活用される3級職種
の拡大
28
認定技能審査について
制度の概要
①技能審査認定規程(昭和48年労働省告示第54号)に基づく制度
②一般社団法人又は一般財団法人以外の者であって営利を目的としない団体が実施する技能審査であって、技能振興
上奨励すべきものを厚生労働大臣が認定する
(平成25年4月1日現在、8団体等9職種を認定。平成14~23年度で延べ約4万人が合格)
※行政改革大綱(平成12年12月1日閣議決定)において、公益法人の実施する事務・事業に対する国の推薦(いわゆる
「お墨付き」)について廃止することとされたことから、公益法人は対象外
③指定試験機関制度による技能検定職種の拡大を図ることとしていることから、新規の認定は行わない
④現在認定されているものは以下のとおり。
○全国的に実施されているもの
・印刷営業
・圧入施工
・葬祭ディレクター
・CADトレース
・コンクリート等切断穿孔
○特定地域でのみ実施されているもの
・神奈川県箱根細工
・神奈川県鎌倉彫
・新潟県村上木彫堆朱彫刻
・富山県井波木彫刻
認定の基準
○営利を目的とするものでないこと
○技能検定と競合するものでないこと
技能検定を行うことが必ずしも適当でない職種及び技能検定の実施の困難な職種について行う。
①技能労働者数の少ない職種
②全国統一的な技能評価が困難な地域的特殊性の強い職種
③特定地域のみに存在する職種
④技能内容が複雑多岐にわたり、当該職種の全分野について技能検定を実施することが困難な職種
⑤技能の幅が狭い等比較的容易に技能を習得できる職種
⑥技能検定職種の中で従業者の少ない作業等職種のたて方からみて技能検定を補充する職種
○審査基準が適切であること
○毎年1回以上実施されること 他
29
認定社内検定について
制度の概要
①社内検定認定規定(昭和59年労働省告示第88号)に基づく制度
②事業主又は事業主の団体若しくはその連合団体(以下「事業主等」という。)が雇用する労働者の
有する職業能力の程度を検定する制度であって、技能振興上奨励すべきものを厚生労働大臣が認定する
(平成25年4月1日現在、42事業主等122職種を認定。平成14~23年度で延べ約15万人が合格)
○事業主の団体(業界)が実施している例
全日本美容業生活衛生同業組合連合会社内検定
日本ロックセキュリティ協同組合社内技能検定
四国タオル工業組合社内検定 等
認定の基準
○直接営利を目的とするものでないこと
○技能検定を補完するものであること(具体的には以下を踏まえ、個別に判断)
○技能検定に該当する職種がないこと
○企業特有の技能を対象としており、技能検定の既存職種を補完するものであること
○技能検定のように1職種1作業の専門技能を求めるものではなく、幅広い技能、
複合的な技能を対象としているものであること
○検定の基準が適切であること
○毎年1回以上実施されること
他
30
ビジネス・キャリア検定について
1 沿 革
○ ビジネス・キャリア制度(平成5年発足)は、在職者・求職者を問わず事務系職業に就く労働者に求められる職業能力が、
ますます高度化していることに対処するため、
・ 段階的かつ計画的な自らの職業能力の習得を支援するとともに、
・ キャリアアップのための職業能力の客観的な証明を行う
ことを目的とした制度である。
○ 当該検定は、制度発足当初より、国の委託事業として、中央職業能力開発協会が試験問題を作成し、都道府県職業能力
開発協会が受験申請及び試験実施を行っていた。
○ しかしながら、平成21年秋の行政刷新会議による事業仕分けにおいて、「国家資格ではなく、自主的にやっていただけ
れば良い」と評価され、平成21年度限りで国の事業としては廃止とされた。
○ その後、中央職業能力開発協会が自主事業として実施することとなった。
2 検定試験内容
○概 要
ビジネス・キャリア検定試験は、「職業能力評価基準(事務系職種)」に準拠し、8分野14部門の事務系職務を広く網羅
し、職務・能力レベルに応じて体系化した区分(別紙1参照)ごとに実施。
それぞれの職務に必要な専門的知識をベースに、実務における様々なシチュエーションに対応し、適切な判断を求める
内容としている。
○試験のレベルイメージ
1級
2級
3級
○ 実 績
部門の責任者等として、計画作成、管理運営、課題解決等を行いな これまで延べ379,838人が
がら企業利益を創出する業務を遂行することができる。 (実務経 受験し、163,861人が合格
(平成24年度末現在)。
験10年以上。例:部門長、ディレクター等を目指す人)
※平成22年度から休止中
グループ等の中心メンバーとして、自主的な判断・改善・提案を行
いながら業務を遂行することができる。(実務経験5年程度。例:
課長相当職を目指す人)
担当者として上司の指示等を踏まえ、定例的業務を確実に遂行する
ことができる。(実務経験3年程度。例:係長相当職を目指す人)
31
職業能力評価基準
1.概要
○ 職業能力評価基準は、サービス産業の増加など産業構造の変化や労働移動の増加の下で、職業能力が適切に評価される
社会基盤づくりとして、平成14年から国と業界団体と連携の下で策定に着手。
○ 技能検定制度がカバーしていない分野を含めた幅広い業種・職種を対象に、各企業において、この基準をカスタマイズの
上、能力開発指針、職能要件書及び採用選考時の基準などに活用することを想定。
2.内容
○ 仕事をこなすために必要な「知識」や「技術・技能」に加えて、どのように行動すべきかといった「職務遂行能力」を、担当者か
ら組織・部門の責任者まで4つのレベルに設定し、整理・体系化。
○ 平成20年度からは、ジョブ・カード制度で使用する「モデル評価シート」に成果を活用するとともに、平成22年度からは、人材
育成のための活用ツールとして「キャリアマップ」及び「職業能力評価シート」を作成。
3.実績
○ 業種横断的な経理・人事等の事務系9職種、電気機械器具製造業、ホテル業など50業種で完成。(平成25年度現在)
(業種ごとの策定状況)
建設業関係
(7業種)
パン
製造業
18年2月
完成
百貨店業
25年5月
完成
旅館業
22年12月
完成
型枠工事業
鉄筋工事業
防水工事業
左官工事業
造園工事業
総合工事業
16年10月
完成
16年10月
完成
17年5月
完成
17年12月
完成
17年12月
完成
18年4月
完成
金属プレス
加工業
石油精製業
ねじ製造業
20年3月
完成
20年12月
完成
軽金属製品
製造業
19年3月
完成
鍛造業
19年10月
完成
金融・保険業関
係
(1業種)
クレジット
カード業
施設介護業
添乗サービス業
22年12月
完成
サービス業関係
(14業種)
20年2月
完成
ホテル業
16年9月
完成
印刷業
24年5月
完成
市場調査業
16年9月
完成
外食産業
17年7月
完成
17年7月
完成
アパレル業
エンジニア
リング業
その他
(8業種)
24年5月
完成
運輸業関係
(2業種)
17年3月
完成
17年12月
完成
電気通信
工事業
20年8月
完成
ロジスティックス
分野
17年5月
完成
広告業
17年9月
完成
自動販売機
製造・管理
運営業
20年2月
完成
製造業関係
(12業種)
マテリアル・
ハンドリング業
プラスチック
製品製造業
電気機械器具
製造業
16年6月
完成
16年9月
完成
フルード
パワー業
17年8月
完成
卸売業
DIY業
コンビニエンス
ストア業
専門店業
20年3月
完成
20年8月
完成
産業廃棄物
処理業
ビルメンテ
ナンス業
20年3月
完成
21年2月
完成
16年12月
完成
19年10月
完成
フィットネス
産業
クリーニング業
在宅介護業
ボウリング場業
18年2月
完成
19年3月
完成
19年3月
完成
19年3月
完成
イベント産業
プラントメンテ
ナンス業
20年12月
完成
23年5月
完成
23年5月
完成
光学機器
製造業
17年3月
完成
スーパーマーケット業
ウェブ・コンテンツ
制作業(モバイル)
自動車
製造業
16年10月
完成
卸売・小売業関
係
(6業種)
21年7月
完成
ファインセラミックス
製品製造業
20年2月
完成
写真館業
19年3月
完成
17年9月
完成
屋外広告業
24年5月
完成
業種横断的な事務系職種(20年6月改訂)
経営戦略
人事・人材開
発・労務管理
企業法務・
総務・広報
経理・財務
管理
経営情報
システム
営業・マーケ
ティング・広告
生産管理
ロジスティクス
国際事業
32
職業能力評価基準のカバレッジについて
1 算出の考え方
今回の算出において「職業能力評価基準のカバレッジ」とは、「全従業者中、職業能力評価基準の活用が
見込まれる業種に従業する者の割合」と定義する。
2 算出方法
(1) 平成21年度の経済センサス-基礎調査(総務省統計局)を使用。
(2) 各職業能力評価基準(以下「評価基準」)の業種について対応する日本標準産業分類(以下「産
業分類」)の中分類又は小分類を選定(注)。
なお、業種横断的な事務系職種(人事、経理など)の評価基準については、計上していない。
(注)評価基準の業種は、必ずしも産業分類上の業種とイコールになっておらず、それに近しい分
類を選定してる場合がある。
(具体例)
● 評価基準「ホテル業」には、産業分類(中分類)「宿泊業」が対応する。
● 評価基準「ビルメンテナンス業」には、産業分類(小分類)「建物サービス業」が対応する。
※ 1つの産業分類に対し、複数の評価基準の業種が対応するものもある。
また、評価基準の業種については、極力1つの産業分類を選定するよう試みたが、アパレル分野などは
複数の産業分類を選定している。
(3) (2)の作業により対応する評価基準の業種が存在する産業分類の従業者数を合計
(4) (3)で算出した合計を全従業者数で除した商を算出
C = A ÷ B × 100(%)
A:「対応する」評価基準の業種が存在する産業分類の従業者数の合計
(31,459,808人)
B:全従業者数
C:職業能力評価基準のカバレッジ
3 算出結果
50.0%
33
34
キャリア段位制度(実践キャリアアップ戦略基礎資料)
35
36
職業資格制度の構造・特徴分析
一般的な類型
資格付与者による分類
資格の効力による分類
その他の
現象的分類方法
生命の
安全確保
国家試験
業務独占
職種型
公的試験
名称独占
○資格の取得方法による分類:試験、講習・教育、経歴・既取得資格
○資格の受験対象者による分類:管理・監督者、実務者、その他個人
○資格の有効期限による分類:無期、更新制、有期
医師
建築士
司法書士
社会保険労務士
(含製品・サービス)
能力習得の
動機付け
an official document that says that someone is allowed to do a
certain job, that something is of good quality.
● 資格授与機関が発行する公式文書で、所定の基準に照
らした評価及び認定を経た上で個人の達成を記録するも
の。(CEDEFOP「certificate/diploma/title」)
Certification
公認会計士
税理士
an official document giving you permission to
own or do something for a period of time.
各種産業車両運転免許
危険物取扱者
業務の質保証
能力認定
職務型
License
機
能
・
目
的
別
分
類
民間資格
測量士
a skill, personal quality, or type of experience that makes
you suitable for a particular job or position.
● 評価・認定プロセスの公式結果(認定証・修了証書・
称号)であって、ある個人が所定の基準に沿った学習
成果を達成した、及び/又は特定の業務分野において
働くために必要なコンピテンスを持っている、と適格性
のある機関が判断した場合に得られるもの。資格は、
労働市場における、また教育・訓練における学習成果
の価値について公式の承認を与えるものである。資
格が、ある業務を行う上での法的な資格となる場合も
ある。(OECD「qualification」)
中小企業診断士
字義出典
Longman English
Dictionary
建設業経理士
技術士
技能士
Qualification
情報処理技術者
認定技能審査
実用英語技能検定
認定社内検定
簿記検定
37
検定等職業資格がマッチング場面で十分に用いられない要因と対応案等
○「職業能力評価」を「人材の採用」に用いるとする事業者は、職
業能力評価実施事業所の32.2%。【㉔能開基本調査】
○検定を運用、活用する企業、業界団体のヒアリングで、検定等の資格
取得を求人要件、採用選考の基準として明確に位置づけている事例
はほとんどない。
○労働者の側から見て、「入職に有効な資格・職業」として高得点
回答があるのはほとんど免許型資格、検定型資格は対応する職業と
の関係でも総じて低得点【㉒JIL:Web資格免許調査】
○検定等職業資格の企業における活用実態を見ると、
◇従業員の能力開発に向けた目標設定、動機付け、
◇ひいては、企業内教育訓練の成果向上や合理化
◇(製品・サービスの質の代理指標としての)顧客、取引先へのアピール
等の観点では、現状でも相当程度奏功しているものの、募集・採用選考、
非正規雇用者の正社員登用等での活用は限定的な実態。
【想定される具体の要因】
★検定
そのも
のの内
容・価
値に係
る課題
★受検機
会に係る
課題
★募集活
動上の合
理性に係
る課題
①現行の検定等職業資格が企業
の人材ニーズ等を反映していない
のでは
ⅰ把握する能力の範囲
が実際の職務に比して
狭いのでは
ⅱ評価の精度が低
いのでは
②検定等の社会的認知度・信頼度が低いため、企業、労働
者双方に活用のインセンティブが働きにくいのでは
③業界・企業が財政負担をしていることも有り、そもそ
も受検機会が現従業員以外に十分オープンな設計になって
おらず、アウトサーダーが受検しにくいのでは
④求人要件に資格を明示すると、資格は有しないが同等
以上の適性・能力を備えた人材の応募をむしろ妨げ、採
用選考活動として不合理なものになるため、表示しにく
いのでは
⑤ジョブローテーションを前提とした募集採用の場合、特定の職
務を対象とした検定等職業資格の有用性は自ずと限定さ
れるのでは。
【考え得る対応策】
○面接時に活用できる、資格も反映した簡
便なマッチングツール等の開発、活用促進
○財政面、技術面含めた支援を通じた、
検定及びその運営体制の質向上
○財政面を含めた支援を通じた、運営
上のオープン化確保、企業従業員以外の者
の受検負担の軽減
○求人要件上は資格を明示せず、求職
者が有する資格とのマッチング上活用する
業務の仕組み整備
○検定等活
用の対象設
定に係る課
題
○業界検定
の国による
質保証、信
頼性向上
○学校等と
も連携した
普及、取得
促進の取り
組み
○業界検定の制度設計、事業運営に当たり、こうし
た「マッチング活用促進」の観点を十分反映すること
で、「就職、正社員登用等のキャリアラダー」としての有
効活用を期す
38
「職業能力見える化」推進に資する職業能力評価体系整備の全体像のイメージ
○教育訓練機関・プログラム
【業種・職種】
・プログラムと評価の一体開発・運用
,要件位置づけ等、相互リンケージ
・教育訓練
の成果をマッチ
ングに活かす
観点からの
連携強化
○需給調整機関によるキャリア支援、マッチング
・求人、求職情報への能力評価
要素盛込み等マッチング機能強化
①職務内容・職業能力が制度・技術・規格等に規定される度合い大→予め明確、普遍性大、変化の程度小
②人材育成への国の政策上の直接関与の必要性大
④労働市場における流動性、能力開発に係る
外部性大→企業、個人ともに能力開発・評価
のインセンティブが効きにくく、流通しにくい
③顧客・自らの生命・安全確保の観点か
らの厳格な能力評価の必要性大
○医療・福祉専門職
/運輸職/技術職等
○ものづくり技能職/知的専門職(医療・福
祉以外)・技能要素の強いサービス 等
○左記以外のサービス職(対人サービス等)、事務
系専門職 等
【検定等整備の必要要件】
・労働市場における比重の拡大
・非正規雇用労働者等のキャリア形成
上の課題がより顕著
→新たな検定等の整備の必要性の
高まり
○その他多様な分野
《うち新たな検定整備の必要性が認められる領域》
・技能検定
のコンセプトに
適合した対
【現行技能検定】(制度上 象職種開拓
全就業者数の34%程度カバー) ・上位級、
○特~3級等の共通体系
3級ニーズに
即した設定
《都道府
《指定試験
・試験実施
県方式》
機関方式》 方式・試験
○114職種
○14職種
内容の見直
(ものづ
(知的専門 し 等
【技能検定】
【
水
準
】
【既存の
免許等職
業資格】
くり技能
職中心)
エントリーレ
ベル
【業界検定(新規)】
職等中心)
→業界検定の
想定領域に近
い性格有す分
野を含む
*指定試験機関方式と
新たな業界検定の対象
領域、機能等の関係整
理が検討課題に
・質保証の
仕組み等整
備の上、対
象分野・水
準の拡大
【業界検定ス
タートアップ支援
(26年
度):当初4
団体)】
《検定等公的職業資格による信頼性ある職業能力評価の仕組みの必要性が認められる領域》
○職業能力評価基準
→職業能力評価体系の「中身」の基盤
○各検定等の質保証基準
→職業能力評価体系の「共通ルール」の基盤
【既存
の民間
職業資
格】
・企業特殊
性、ニーズの
多様性がよ
り顕著で、
普遍性、客
観性を備え
た検定等に
よる能力評
価がそもそ
も困難・意
味を有しな
い分野
【検定等整備の十分要件】
・職業能力の客観・共通性、階層性
・地域的広がり 等
○受検のインセンティブ・支援措置
→職業能力評価体系の
39
「普及・市場性確保」の基盤
技能検定制度(現行)と業界検定構想の関係整理(案)
Ⅰ技能検定制度(現行)
Ⅱ業界検定構想
①評価対
象となる
能力要素
○職務遂行に必要な技能【身についた技】及びこれに関する知識【理論の体
系】(これらを活用した実践力も包含)(法第2条第3項、第44条第2項等)
○基本的に同左
○知識・技能を具体的な職場環境で機動的に発揮する実践力により重点
②能力評
価の目
的・効果
○職業訓練、実務を通じ習得された能力の適正な評価(法第3条第5項)
○職業能力開発の目標
○人事処遇や採用選考の基準(物差し)
○生産活動上の共通言語 等
○基本的に同左
○(日本再興戦略上の重点対象で、企業・労働者本人いずれの立場からも能力評価のインセンティ
ブが働きにくく、さらに「見える化」し難いといった課題を抱える)非正規雇用労働者の就職、
キャリアアップ実現といった、外部労働市場の観点からの活用により重点
③主要な
対象分野
○求められる能力が制度・技術・規格等との関わりで予め明確で、普遍性が
大、変化の程度が小
○顧客及び自らの生命・安全確保等の観点から能力を厳格に評価する必要性
が大(*一部当てはまりにくい分野も)
○人材育成への国の政策上の直接関与の必要性が大
といった要件に該当するなど、検定整備の要件が整う業種・職種で、業所管
の立場で免許制度が確立されている分野を除くもの【典型的には、製造業・
建設業の技能分野、いわゆる知的専門職分野】
→現行128職種が対象
○求められる能力が制度・技術・規格等との関わりで予め明確ではなく、普遍性が小、変化の
程度が大(顧客等のニーズやその変化の影響が大)、
○また、顧客及び自らの生命・安全確保等の観点から能力を厳格に評価する必要性が相対的
に小など、これまで検定整備の要件への適合性が、左記分野に比し低いと見なされていたが、
○労働市場における流動性、能力開発・評価上の外部性が大(企業・個人ともにインセンティブが
働きにくい)といった観点、また、労働市場における比重拡大、非正規雇用労働者等のキャリア
形成上の課題が顕在化、といった観点から検定整備の必要性が高まっている業種・職種で、
多様性・個性に職業能力の価値の源泉があるもの、企業秘密等の制約を特に強く受けるもの
など、資格化に馴染まない分野を除くもの【典型的には、対人サービス分野、事務系分野】
④上記以
外の主要
な成立条
件
○全国的な広がり・規模を有する業種・職種であること
○求められる職業能力が、業種・職種内で共通性が高い(企業特殊性が小さ
い)こと
○技能のレベルの階層性が成立している(単に「できるできない」ではない)
こと 等
○基本的に同左
○ただし、多様性・変化に対応するため、全体としてより弾力的に運用し(例:業種・職種内
の共通性、技能レベルの階層性が相対的に低いことも想定されるが一定許容)、ニーズの存する
分野で幅広く活用することが求められるもの
⑤以上に
対応した
的確な評
価方法
○客観性、標準化を重視する立場から、
・知識については学科試験
・技能については実技試験(有効性、実効性の観点から、作業試験、要素試
験、ペーパーテスト等最も相応しい手法の組み合わせ)
を共通的に用いる
○更新制度やこれに相当する仕組みなし
○客観性、標準化を重視し、
・知識については学科試験
・技能については実技試験
を用いるほか、対象者・評価する能力の多様性や変化にも柔軟に対応可能といった観点から、
・就業中の者については仕事ぶり評価、作品等
・当該分野で就業経験を有しない者については教育訓練歴
等を含め、必要に応じより多様な評価方法を組合せ
○変化対応の必要性がより高いことから「何らかの継続的質保証の仕組み」について検討要す
⑥制度設
計・運用
に係る国
の関与、
業界団体
等の役割
○基準(等級(特級~3級等))を含めた制度設計について、国が政策上の必
要性に基づき定立
○運用(試験問題の作成、受検申し込み受理、試験実施、合否判定・決定
等)は、都道府県及び中央・都道府県能力開発協会と言った公的機関が分担
実施
○業界団体、職能団体等の民間団体が適正・継続的な実施能力を確実に有す
ると認められる場合は、指定試験機関方式として、当該団体が、国の定める
厳格な共通基準の下で運用の太宗を担う(現行、128職種中14)
○必要最小限の共通基準(等級(能力水準の階層性)を含む)について、品質保証の観点か
ら国が定立
○運用(同左)は、人材ニーズを直接把握し、採用選考、人事処遇の主体ともなる業界(団
体)等が主体(現行指定試験機関方式に比して緩やかな基準、方法で選定する想定)
○(職務経験が必ずしも豊富ではない者が重点対象となることも念頭に、また、職業能力開
発の実効性を確保する観点から)当該業界(団体)が教育訓練プログラムの開発・運用の主体に
もなり、これによる習得目標に整合した評価とする等、教育訓練との関連性をより重視した
設計について検討要す
⑦検定の
効果
○名称独占(○級技能士(□□職種)等)
○他制度上各般の効果(例:1級技能士現場常駐制度)
○受検・活用のインセンティブ、受検者個々人の技能水準の保証への国の関与のあり方等の観点か
ら検討要す
40
○上記表のとおり、業界検定構想について、現行技能検定制度との間で、職業能力評価制度として共通する基盤的な部分も多いが、日本再興戦略上、業界検定構想に期待される労働市場
政策上の役割等を反映した、独自性も多々認められるもの→業界検定の位置づけを前提とした、技能検定制度の「今後の」あり方についても検討を要すもの
職業能力の「見える化」促進に向けた業界検定のスタートアップ支援
平成26年度予定額:154百万円(点線囲み部分)
○ 職業能力評価は、働き方に関わらず、能力本位の人材活用を促進する基盤となるものであり、業界全体
の人材の底上げ、労働者の処遇改善を含めたキャリアアップ、また企業における採用時ミスマッチ軽減、採用
コスト・初期教育コストの低減等の観点からも、その「見える化」や活用促進が重要な課題。
○ 日本再興戦略(平成25年6月14日閣議決定)を踏まえ、「多元的で安心できる働き方」の導入促進の観点か
ら、業界検定等の能力評価の仕組みを整備し、職業能力の「見える化」を促進することとし、26年度に導入
ニーズの高い業界に焦点を当て、業界検定等のツール策定、モデル活用等のスタートアップ支援に着手。
業界検定のスタートアップ支援
業界団体
職務におけるスキルの見
える化
「多様な正社員」モデルの普及の基盤と
しての活用に加え、
・産業間・職種間の労働移動のマッチ
ングツール
・各業界・企業における的確で効率的
な人材マッチング、人材確保、製品・
サービスの質保証、教育訓練の目標
等の観点からも積極的活用を目指す
もの。
成
果
ジョブ
カード
企
業
ジョブ
カード
企
業
企
業
○非正規雇用労働者の活用
が進んでおり、雇用吸収力の
ある業界を選定
策
定
等
○企業横断的に必要な能力
の分析
○能力を客観化できる評価
ツール (検定等)の整備
○評価者の育成
○これらの試行的運用 等
支
援
参
照
厚
労
省
整
備
職業能力評価基準(25年度現在:50業種+事務系9職種)
※業界検定整備等の基盤として引き続き計画的な整備、メンテナンスを推進
41
職業能力評価施策に関わる国の関与の類型及びその考え方
①国が基準を設計・実
施型
A実施基準策定への国の
関与
②国が基準を設計、実施
は国又は指定(認定)団
体型
➂国が基準を設計、要
件は間接認定(認定認
証)型
○国が制度設計、基準・要件を決定 <具体の設計は実施機関
(民間)主体>
B基準への適合確認への
国の関与
○国が間接的に
確認
○国が直接実施又は確認
C試験実施機関
○国
○国又は
民間団体
④国による後援等規制
度合いの低い関与型
<未定稿>
⑤純粋な民間資格型
○民間団体等が各々の立場で基準・要件
を設定の上設計
○国等は手続き要
件の確認のみ
○国等の確認
なし
○業界団体、職能団体、教育訓練機関その他民間団体
D資格の効力
○名称独占
○業務独占
E既存の資格免許制度等
の該当例(根拠法)
○医師免許(医師
法)
○看護師免許(保健
師助産師看護師法)
○弁護士免許(弁護
士法)
○技能検定(職業能力開
発促進法)
○調理師試験(調理師法)
○技術士(技術士法)
○JIS認証制度(工業
標準化法)
○管理医療機器の第三
者認証制度(薬事法)
○特段なし(市場の評価のみ)
○文部科学省後援検定
個別の業所管の立
場で免許制度の必
要性を判断
○能力評価の厳格さの
必要性の観点
○評価する能力の
安定性等の観点
○人材育成への国の
関与の観点
○証券アナリスト
○簿記検定
○TOEIC、TOEFL
市場ニーズに応じ設定
(政策判断の範疇外)
職務内容・職業能力が制度・技術・規格等に規定される度合い大→予め明確、普遍性大、変化の程度小
顧客・自らの生命・安全確保の観点か
らの厳格な能力評価の必要性大
人材育成への国の政策上の直接関与の必要性大
能力開発に係る外部
性の観点
42
現行の職業訓練・受講支援制度と能力評価の関係
Ⅰ類型
①離職者型
Ⅱ具体の制度・訓練内容等
ⅰ公共職業訓練(離職者訓練)
○施設内訓練と委託訓練。
○施設内訓練は、①国((独)高障求機構)、②都道府県が実施。
①は主にものづくり分野の訓練(標準6か月)、②は地域の実情
に応じた訓練(標準6か月~1年)
○委託訓練は、都道府県の委託により専修学校などの民間教育訓
練機関等が実施(標準3か月)。
ⅱ求職者支援訓練
○国が民間教育訓練機関等が実施する訓練コースを認定。
○基礎コース(基礎的能力を習得する訓練)、実践コース(基礎的能力
から実践的能力まで一括して習得する訓練)。
○訓練期間は3か月~6か月。
②在職者型
ⅲ雇用型訓練
○企業が実施主体、雇用関係を前提とした実践的な訓練。
①有期実習型訓練(訓練機関:3か月~6か月)
②実践型人材養成システム(訓練機関:6か月~2年)
③若者チャレンジ訓練(訓練機関:3か月~2年)
ⅳ認定職業訓練
○事業主等の行う職業訓練のうち、教科等について厚生労働省令
で定める基準に適合し、都道府県知事の認定を受けた職業訓練。
○国及び都道府県から中小企業事業主等に対して、訓練経費等の
一部につき補助金を助成。
ⅴキャリア形成促進助成金による企業内訓練支援
○職業訓練(1コース当たり20時間以上の訓練が対象)などを実施
する中小企業事業主に対して、訓練経費や訓練中の賃金を助成。
○若年人材育成コース、成長分野等人材育成コース等の政策課題対応型
訓練とそれ以外の一般型訓練。
③共通型
ⅵ教育訓練給付
○厚生労働大臣が指定する教育訓練(事務、技術、サービス等多
様な分野の資格等を目指す訓練)を受講し、終了した場合に、そ
の教育訓練に要した費用の2割に相当する額を支給。
ⅶ中長期的なキャリア形成支援措置[現在、労働政策審議会
にて検討中]
○中長期的なキャリア形成に資する特に専門的・実践的な教育訓練。
○業務独占資格、名称独占資格を目指すもの、専門学校の実践的
な課程、社会人向け大学院の実践的なプログラム等。
Ⅲ対象者等の要件
Ⅳ能力評価の位置づけ
○離職者(ハローワークの求職者)のうち、 ○訓練修了時に職業能力評価を行い、その結
主に雇用保険受給者で、公共職業安
果をジョブ・カード(様式4)に記入。
定所長の受講指示を受けた者。
○技能照査による技能及び知識の確認。
○技能検定の受検資格、免除資格として活用。
○離職者(ハローワークの求職者)のうち、
雇用保険を受給できない方で、公共
職業安定所長の就職支援指示を受け
た者。
○訓練期間中に、訓練内容の習得度評価、キャリ
ア・コンサルティング(3回以上)を実施。
○訓練修了時に職業能力評価を行い、その結
果をジョブ・カード(様式4)に記入。
○技能検定の受検資格として活用。
①新規又は継続の非正規雇用労働者、 ○訓練修了時に職業能力評価を行い、その結
②新規又は継続の15歳以上45歳未
果をジョブ・カード(様式4)に記入。
満労働者、③新規又は継続の35歳
未満非正規雇用労働者。
○主に事業主に雇用される労働者。
○助成(訓練に係る運営費、施設・
整備費)の対象は職業訓練を行う中
小企業事業主等。
○技能照査による技能及び知識の確認。
○技能検定の受検資格、免除資格として活用。
○雇用保険の被保険者。
○助成(訓練に係る賃金、経費)の
対象は職業訓練を実施する中小企業
事業主。
○認定実習併用職業訓練コースは、訓練修了後に
評価シート(ジョブ・カード様式4)により職業能力
の評価を実施することが基本要件。
○在職者(雇用保険の被保険者)
○事務、技術、サービス等多様な分野の資格
又は離職者(被保険者であった者)。 等を目指す講座。
○在職者(雇用保険の被保険者)
○資格や学位取得を目指す講座を検討中(業
又は離職者(被保険者であった者)。 務独占資格、名称独占資格や専門学校の実践
的な課程、大学院の実践的なプログラム等)。
43
ジョブ・カード制度について(職業能力評価の位置付けを含めて)
制度の目的
ジョブ・カード制度は
① 一定の知識等を有するキャリア・コンサルタントによるジョブ・カードを活用したキャリア・コンサルティングの実施
② 企業における実習と教育訓練機関等における座学とを組み合わせた訓練を含む実践的な職業訓練(職業能力形成プログラム)の受講機会の提供
③ ジョブ・カードを活用したキャリア・コンサルティングにより整理された職務経歴等のほか訓練修了後の職業能力評価の情報を取りまとめた「ジョブ・
カード」の就職活動等における活用
を促進することにより、求職者と求人企業とのマッチングや実践的な職業能力の習得を促進し、安定的な雇用への移行等を促進することを目的とした制度
キャリア・コンサルティングの実施
その前提となる職務経験・職業能力の把握
職務経歴などを記入したジョブ・カードの交付
約95万人(H25.9)
ジョブ・カード
履歴シート、職務
経歴シート、キャ
リアシートを活用
職務経歴・学歴・訓練歴・資格要件・
その他自己アピールを整理
職業意識やキャリア形成上の課題の明確化
「これまでの経験をもとに自分の長所を
説明できるようになった」
「実現可能なやりたい仕事の内容を説明
できるようになった」
学生用ジョブ・
カードを活用
(大学等)
学習歴・インターンシップ・アルバイ
ト歴等を整理
キャリア意識の醸成、職業意識の明確化
訓練せずに就職
職業訓練を通じた職業能力の評価
OJT+Off-JTによる実践的職業訓練
訓練修了者に対する評価を記入した
ジョブ・カードの交付
約61万人(H25.9)
○雇用型訓練
企業が正社員経験に恵まれない者を雇用
して訓練実施
求職者
学生
職業訓練の実施
・
・
・
有期実習型訓練
実践型人材養成システム
若者チャレンジ訓練
○日本版デュアルシステム
都道府県が民間教育訓練機関に委託
して訓練実施
○公共職業訓練(離職者訓練、学卒者訓練)
主に雇用保険受給者が対象
訓練修了者
訓
練
実
施
企
業
で
就
職
ジョブ・カード
評価シート
を活用
(訓練実施企業、訓練実施機関)
訓練修了時に職業能力評価を
行い、その結果をジョブ・
カードに記入
「ジョブ・カード作成で自分の不足
しているスキルが明らかになった」
「訓練を受けている会社に就職しな
くても、訓練実績として他社の求職
活動に活かせるので安心」
他
の
企
業
で
就
職
○求職者支援訓練
雇用保険を受給できない者が対象
44
キャリア・コンサルティングについて
キャリア・コンサルティングの概要
○「キャリア・コンサルティング」とは個人の適性や経験等に即した職
業選択や能力開発を支援する相談のこと。
○「キャリア・コンサルタント」とはキャリア・コンサルティングを担
う人材であり、「キャリア・コンサルティング技能士」、「標準レベ
ルキャリア・コンサルタント」、ジョブ・カード講習修了者等である
「登録キャリア・コンサルタント」からなる。
○平成24年度末のキャリア・コンサルタント養成数は、約 81,000人。
○これらキャリア・コンサルタントは、企業、需給調整機関、教育機関
等の幅広い分野で活躍。
キャリア・コンサルティングの一般的な流れ
①自己理解 ②仕事理解 ③啓発的経験
・ 興味・適性・能力等の明確化、職業経験の棚卸し
・ 労働市場、企業等に関する情報提供
・ 職務に求められる能力、キャリアルート等の理解
④ 今後の職業生活設計、目標の明確化等に係る 意思決定
・キャリアプランの作成
・能力開発・教育訓練等に関する情報提供
⑤ 職業選択・求職活動、能力開発等の方策の実行
方策の実行(活動)状況を把握しつつ、必要に応じてサポート
⑥ 新たな仕事への適応
異動、昇進、就職、転職等
職務経験や教育訓練の受講等を積み重ねていくことによる段階的な職業
能力の形成=キャリア形成
主なキャリア・コンサルティング施策
ハローワーク等におけるキャリア形成支援
○ハローワークや訓練実施機関における求職者や訓練受講者
等に対するキャリア・コンサルティングの実施(ジョブ・
カードを活用したものを含む)
企業内におけるキャリア形成支援
○企業の人事担当者等に対する導入レベルのキャリア・コン
サルティング講習の実施
○企業内の職業能力開発のプランづくりに対する助言、事例
収集を通じた相談支援、情報提供等の実施
○従業員がキャリア・コンサルティングを受けることを支援
する事業主に対するキャリア形成促進助成金の支給
○キャリア形成支援企業の好事例表彰
教育機関におけるキャリア形成支援
○キャリア教育に携わる者を対象にキャリア教育プログラム
の企画・運営等を担える専門人材養成のための講習の実施
○キャリア教育推進連携シンポジウムの開催(厚労省・文科
省・経産省共催)
キャリア・コンサルタントの養成等
○キャリア・コンサルティング技能検定、一定の基準を満た
す民間のキャリア・コンサルタント能力評価試験の指定に
よるキャリア・コンサルタント養成
○ジョブ・カード交付を担うキャリア・コンサルタント養成
○キャリア・コンサルティングの普及促進、キャリア・コン
サルタントのレベル向上のための調査研究、キャリア・コ
ンサルタントに対する専門的助言・指導の実施
45
キャリア・コンサルティングの流れとその中での職業能力評価の位置付け
○ キャリア・コンサルティングとは
キャリア・コンサルティングとは「個人が、その適性や職業経験等に応じて自ら職業生活設計を行い、これに即した職業選択
や職業訓練等の職業能力開発を効果的に行うことができるよう個別の希望に応じて実施される相談その他の支援」をいう。
なお、キャリア・コンサルティングは、下記のような個別相談を中心としながらも、こうした取組みに関する組織への働きかけ、
社会への教育普及活動といった側面も非常に重要であるとされている。
このように、キャリア・コンサルティングは、職業経験、訓練受講歴、資格・免許等で表現される職業能力の労働市場価値や
可能性を評価し、これらを踏まえ職業選択、能力開発の方向性や手法について専門的な助言を行うといった、職業能力評価と
密接に関連した支援行為であるが、「職業に必要な技能及びこれに関する知識の程度の適正な評価(測定)」そのものは含ま
れておらず、キャリア・コンサルタントは職業能力評価そのものの専門人材ではない、ということについて留意が必要である。
キャリア・コンサルティングの流れ
① 自己理解
・
・
・
・
② 仕事理解
③
啓発的経験
興味・適性・能力等の明確化
職業経験の棚卸し
労働市場、企業等に関する情報提供
職務に求められる能力、キャリアルート等の理解
今後の職業生活設計、目標の明確化等に係る ④意思決定
•キャリアプランの作成
•中長期的目標及び短期的目標の設定
•能力開発・教育訓練等に関する情報提供
職業選択・求職活動、能力開発等の
⑤ 方策の実行
方策の実行(活動)状況を把握しつつ、必要に応じてサポート
新たな仕事への
⑥ 適応
異動、昇進、就職、転職、・・・
職務経験や教育訓練の受講等を積み重ねて
いくことによる、段階的な職業能力の形成
=
キャリア形成
※ キャリアとは一般に、「経歴」、「経験」、「発展」さらには、「関連した職務の連鎖」等と表現され、時間的持続性ないし継続性を持っ
た概念。「職業能力」は「キャリア」を積んだ結果として蓄積。
46
職業能力評価と教育訓練を組み合わせたキャリアアップ支援の具体的イメージ
○業界検定等の職業能力評価の仕組みの整備に併せ、共通の人材像に基づく、また、対象者の属性・課題に応じた、多様な教育訓練機会
の整備を図ることで、能力開発とその成果の的確な評価を踏まえた、就職・キャリアアッフ実現という一貫した流れを形成することが期待。
→こうした評価と教育訓練機会の拡充を並行的、統合的に図るとともに、求職者や非正規雇用労働者の属性等に応じた典型的なキャリアの道
筋を分かりやくす示し、キャリア・コンサルティング、ジョブ・カードの効果的活用等を図ることで、訓練・評価機会への積極的な誘導と的確なマッチング、
キャリアアップに結びつけることが考えられるもの。
○業界自ら明確化した人材像を共通ベース
に、これに合致した検定、訓練プログラムを
可能な限り統合的に整備・運用
キャリコ
ン
公的職
業訓練
キャリコ
ン
いわば個人主
導型訓練
キャリコ
ン
検定
等評
価
認定訓
練・コンソー
シアム訓練
等
キャリコ
ン
検定
等評
価
中長期的な
キャリア形成支
援措置
○これら一連のプロセスに当たってのキャリアデザイン
の明確化、情報ポータブル化その他の支援ツールと
してジョブ・カードを有効活用
合
格
・
検定
等評
価
キャ
リアアップ
非
正
規
雇
用
労
働
者
等
雇用型
訓練
合
格
・
キャ
リアアップ
いわば
企業主
導型訓
練
就
職
就合
職格
・
キャ
リアアップ
求
職
者
検定
等評
価
【成長性の高いジョブ型業種・職種
→→訓練・評価機会の整備を通じ、ジョブ型労働市場と
してより有効に機能することが期待】
合
格
・
○これ仕
組みの重
層的活用、
業界・就
職・登用
後の企業
主体の
OJT等を
通じ、さ
らに上位
の検定合
格、これ
に応じた
正社員登
用を含む
一層のキャリ
アアップが期
待
○職業能力の「見える化」(能
力開発の目標・到達点明確化)
→訓練による開発・向上と検定
等による評価の一体的実施
検定のグレード→これをラダーとして活用し就職・キャリアアップ
【具体の施策展開イメージ】
○業界検定のスタートアップ支援、
技能検定の見直し等を含めた
職業能力評価体系の整備
○求職者・
非正規雇用
労働者等の
キャリアアップ、
働きがいの
実現と、
○成長産業
等が求める
人材の質・
量両面の充
足
の両立に寄
与
○個人が主体となった学び直
しの機会、業界が主体となっ
た実践的な教育訓練を支援す
る仕組みの整備
○こうした一連のキャリアアップ
支援の取組みの基盤となる、
キャリアコンサルティング、ジョブ・カード
活用等の推進・見直し、民間
教育訓練機関の質保証等の取
組み
*業界検定の業種と職業訓練機会
整備の対象業種・職種は短期的に
は必ずしも合致せず、中長期的な
観点から「統合運用」確立を目指
すもの
47
「多元的で安心できる働き方」の導入促進について
正規・非正規の二極化を解消し、雇用形態にかかわらず、労働者の希望に応じて、安心して生活できる多
様な働き方を実現するため、「日本再興戦略」に、「多元的で安心できる働き方」の導入を促進することが盛
り込まれた。
このため、平成25年9月10日から「『多様な正社員』の普及・拡大のための有識者懇談会」を開催。
多元的で安心できる働き方の促進に向けた取組
○ 「多様な正社員」のモデルとなる成功事例の収集
○ 「『多様な正社員』の普及・拡大のための有識者懇談会」における検討
<検討項目(例)>
(1)制度導入のプロセス
(2)労働契約の締結・変更時の労働条件明示の在り方
(3)労働条件の在り方、いわゆる正社員との均衡の在り方
(4)相互転換制度を含むキャリアパス
(5)その他雇用管理に関する事項
○26年度中のできるだけ早期 : 懇談会として「多様な正社員」の雇用管理上の留意点とりまとめ
○26年度中
: モデルとなる成功事例と上記の留意点を周知
<日本再興戦略(平成25年6月14日閣議決定)抄>
○「多元的で安心できる働き方」の導入促進
・ 職務等に着目した「多様な正社員」モデルの普及・促進を図るため、成功事例の収集、周知・啓発を行うとともに、
有識者懇談会を今年度中に立ち上げ、労働条件の明示等、雇用管理上の留意点について来年度中のできるだけ早
期に取りまとめ、速やかに周知を図る。これらの取組により企業での試行的な導入を促進する。
48
48
別添1
業界団体・企業ヒアリング概要
49
職業能力評価研究会関係業界団体・企業ヒアリング概要
【(有)原田左官工業所】(技能検定(都道府県方式)・独自社内検定関係)《平成25年8月1日聞き取り》
Ⅰ
団体・企業の概要(採用形態等含む)
【(有)原田左官工業所】
○所在地等:東京都文京区。昭和24年創業。
○事業概要:左官・タイル張り・れんが・ブロック積・防水・建築工事業
○従業員数:43名
○正社員の採用に当たっては、未経験の人を採用することが多く、資格を持っている人を優先して採用することはない。
Ⅱ
検定等能力評価に係る具体の取組み
○技能検定(左官、タイル張り)を1級、2級合わせて毎年2~3人受検。入社後、受検資格が生じたら受検を勧奨。受検時に受検料を半額支給、
合格すれば全額支給。さらに、1級に合格すると報償制度として5万円支給。
○仕事内容が技能検定でカバーしていない業務(組積工事(ブロック積)、防水工事(シート防水))について、社内検定を実施。狭い範囲の知識で
あるため学科試験は無し(左官職種の技能検定の学科試験の知識で足りる)。社内検定により自信を付けさせ、作業現場での単独作業を行わせる。
○自社独自の職業能力評価基準(表形式)を作成。職種分野毎に1~5のレベル分け。現場部門だけでなく、管理、事務、経理の各部門も対象。目標
を持たせて意識を高めることが目的。技能検定とはリンクしていない。
○社員の評価に当たっては、技能レベルとマネジメント能力のレベルの両方を評価。
Ⅲ
検定等に係る取組みの効果・課題に係る認識
○技能検定は能力向上の動機付けに役立っている。
○技能検定及び職業能力評価基準の活用後は評価が明確になり、社員に対し能力のレベルアップを促しやすくなった。
○職人には技能を磨くことに専念するタイプと皆をまとめてマネジメントするタイプがおり、スペシャリストの技術者を目指すか、現場マネージャー
を目指すか、当人に自覚させて、その能力を伸ばす方針。
○職業能力評価基準に基づく評価を、マネジメント能力の高い社員の管理部門への配置転換に活用。
○昇級に当たって、技能検定資格の有無は大きくは影響しない。
○中途採用する場合には、技能検定資格を有していることも評価の一要素であるが、それよりも当人の今までの経験が会社の仕事内容に合っている
【ホテルレストランサービス協会】
ことを重視。左官の仕事は、仕上げ、下地、土壁等の多岐にわたり、セメントと漆喰、テナント工事と建築工事の別等もあるため。技能検定1級を
○所在地等:東京都文京区、平成
持っていても全体の仕事ができるわけではない。
年設置。
○現在行っている社内検定では水を張って漏れなければ合格としているが、施工方法といった作業過程についての評価基準の充実が必要。
○技能検定「ホテルレストラン職種」の指
○学科試験及び実技試験で評価できない能力は、各職人の能力を考慮し、采配してまとめる能力(現場マネジメント能力)、適切な人員配置、予算
定試験機関。
50
管理の能力。マネジメント能力等は上司が評価。
職業能力評価研究会関係業界団体・企業ヒアリング概要
【(株)ミツトヨ】(技能検定(都道府県方式)等関係)《平成25年8月6日聞き取り》
Ⅰ 団体・企業の概要(採用形態等含む)
【(株)ミツトヨ】
○所在地等:神奈川県川崎市。昭和9年創業。
○事業概要:精密測定機器の製造・販売
○従業員数:国内約2,700人(生産1,000名、技術650名、営業・サービス600名等)
○大卒・高卒の正社員採用を毎年50名程度のほか、正社員の中途採用を、各事業部門で毎月若干名、主に欠員を補充するために行って
いる。
Ⅱ 検定等能力評価に係る具体の取組み
○技能検定職種「機械加工」「機械検査」など(合計1,729名、「機械検査」683名、「機械加工」452名、「仕上げ」217名等)を中心に
関連する様々な職種を受検を勧奨するとともに、会場・設備の提供等実施にも協力。
○技能検定に合格した際には受検料に加え報奨金を支給するとともに、技能士氏名を社内報に掲載、工場内に掲示。
○経理などのサポート部門の労働者にビジネスキャリア検定の受検を勧奨し、技能検定と同様に支援(合格者312名)。
○各種作業別に能力の度合いを記載した「スキルマップ」を作成し、各個人の職業能力を定量的に評価しやすくしている。
Ⅲ 検定等に係る取組みの効果・課題に係る認識
○技能検定は、チャンピオン育成というよりも、企業全体としての技能の底上げはもちろんのこと、測定器に慣れることにも役立っている。
○技能検定の合格以上に、事前の訓練のプロセスを通して、技能の特定の人への偏りを排し、広く伝承していくことができている。
○配属の変更もあるため、職務拡大のために技能検定を受検させることもある。
○技能検定合格については、採用や人材配置において参考とはしているものの、それだけで決定することはない。
○中途採用においても、技能検定合格は参考にはするものの、それ以上にこれまでのキャリアを重視している。
○優れた技能や技術を持っている技術者を「師匠」としその技能や技術を伝えていく「師匠制度」があるが、現在「師匠」に相当する技術者
が退職のため不在であり(「師匠補」1名のみ)、制度の見直しを図っている。
○「スキルマップ」により、個人の職業能力の程度、特に多能工のレベルを定量的に評価することが可能となった。
○現在の人事評価では業務目標を策定し、達成のための行動の評価、保有能力の発揮度合いの評価等の総合的な人事評価を行っており、個別
の資格は直接評価に含めていない。
51
○学科試験及び実技試験だけでは評価できない能力としては、部下育成能力が挙げられる。
職業能力評価研究会関係業界団体・企業ヒアリング概要
【三益工業(株)】(技能検定(都道府県方式)・業界検定関係)《平成25年8月7日聞き取り》
Ⅰ
団体・企業の概要(採用形態等含む)
【三益工業(株)】
○所在地等:東京都大田区。昭和41年創業。
○事業概要:航空宇宙部品・高速鉄道車両部品・発電設備部品などの製造
○従業員数:約50名
○中途採用者は、他社で2~3年経験したくらいの若い人が多い。定期的な新卒者の採用計画が立てられない等の理由から、結果として新卒採用は
行っていない。
Ⅱ
検定等能力評価に係る具体の取組み
○技能検定受検者は、年間3名程度。受検促進活動を始めたピークの頃は年間10名程度。受検日は会社出勤扱、受検料を支給、合格者には報奨金支
給。
○技能検定資格所有者は、機械加工作業従事者約35名のうち、機械加工(普通旋盤、数値制御旋盤、フライス盤、マシニングセンタ)、仕上げ、機
械検査の職種の1級、2級が延24人、機械加工の特級が1名。
○業界検定として、日本非破壊検査協会の磁粉探傷試験の資格保持者が1名。他に、検査要員は、顧客企業の作業認定資格を取得。
○2002年にISO9001(品質マネジメントシステム)を取得。ISO9001の要求事項に人的資源の運用管理があり、その中で必要な力量(能力)や教育
訓練、技術経験を明確にすることが要求された。そのため、機械加工の分野について、業務に必要な能力の基準をレベル分けし、自社独自の職業
能力レベル基準表を作成。
○ISO9001に力量評価の項目があったことを契機に、2002年頃から技能検定受検促進を始めた。
○受検準備練習として、自社工場での練習に加え、職業能力開発センター、試験会場企業の協力を得ている。
Ⅲ 検定等に係る取組みの効果・課題に係る認識
○技能検定受検により、企業全体の技能の底上げにつながった。自己の能力評価や自己啓発にも役立つ。
○技能検定資格を昇進、給与にかかる処遇には直接反映していない。参考程度。資格取得後に能力の伸びない人もいる。総合的に能力をみて、
処遇している。
○社員の中途採用は、面接→トライアル期間(3ヶ月)→採用の判断、となる。技能検定資格は採用の判断材料の一つにすぎない。各社によって
【ホテルレストランサービス協会】
求める技能が違い、有資格者が幅広い作業ができるとは限らない。技能検定は能力開発の土台であり、その後は各自が能力向上を図るもの。自社は
○所在地等:東京都文京区、平成
大量生産ではないので、個人の能力の分野の違いが大きいため、技能検定資格で一律に能力評価できない。
年設置。
○社員の技能は旋盤系とフライス盤系に分かれ、配置転換はあまりない。
○技能検定「ホテルレストラン職種」の指
○職業能力レベル基準表により、各業務に必要な技能・知識を明確にすることができ、教育訓練計画の策定が容易になった。また、各個人の能力向上
定試験機関。
の課題を顕在化できた。
52
○学科試験及び実技試験では評価できない能力としては、理論・知識を複合的に使いこなし、課題に適用させるための分析力・応用力が挙げられる。
職業能力評価研究会関係業界団体・企業ヒアリング概要
【藤田観光(株)】(技能検定(指定試験機関方式)関係)《平成25年8月6日聞き取り》
Ⅰ
団体・企業の概要(採用形態等含む)
【藤田観光(株)】
○所在地等:東京都文京区。昭和30年設立。
○事業概要:ホテル・レストラン・婚礼・宴会など(ホテル椿山荘東京など全国に約60施設を運営)
○社員数:約1,200名
○社員の中途採用は、特定の専門職(不動産部門など)以外では行っておらず、原則学卒採用、かつ、職種別採用ではない(事業所間
の異動に加え、調理、レストラン、婚礼等各部門間の配置転換が随時あり得る)
○各事業所の契約社員・パートタイムはその限りでない。社員登用も毎年行っている。
Ⅱ
検定等能力評価に係る具体の取組み
○技能検定「ホテルレストランサービス」「調理」を社の人材育成戦略の中核に位置づけし、業務(出張)扱いで受検を勧奨、合格した際には受験料を
支給。「ホテルレストランサービス」技能士数は、計約100名(1級、2級が概ね半数ずつ)。
○また、検定受検合格を含め、能力習得・自己啓発を促すため、社として「通信教育講座の案内」を編纂し、登載講座(検定関係のみなら
ず、事務系を含めた幅広い分野設定)の受講を推奨(修了奨励金の支給等)。
○こうした取組みとは別に、藤田観光グループとして、「施設部門」(施設保守、ベッドメーク等)、「料理部門」、「サービス部門」(レストラン、フロン
ト、婚礼等)の各部門を対象に、毎年「技能コンクール」を実施。基礎力向上を目的に職務場面を可能な限り模した実技試験等によって、顧客
サービスの観点を中心とした実践力を評価。成績優秀者を表彰
Ⅲ
検定等に係る取組みの効果・課題に係る認識
○技能検定等は、基本的に(社員一人一人の厳格な能力評価と言うよりも)社員の自己研鑽の督励と、社全体のサービス(マインド)向上、これを
企業経営に反映、ひいては業界全体のステイタスを向上させることを目的に推進。
○このため、人事配置、昇級・昇格等の人事管理上も、検定等の資格取得実績は参照するが、基準直結ではない。
○そもそも経験者の社員中途採用は原則行っていないが、パートタイム等の募集採用に当たっても、検定等の資格は求人条件として明示はしてい
【ホテルレストランサービス協会】
○所在地等:東京都文京区、平成
ない。明示することで、応募者の母集団が狭まること(資格は有していないが適性能力の高い者を逃すこと)のリスクをより重視。
年設置。
○非正規の社員登用に当たっては、現場での実務能力評価に加え、技能検定等の資格も重要な判断要素。
○技能検定「ホテルレストラン職種」の指
○国としても、技能検定等の検定の認知度向上に一層努めていただくことを期待(これにより、個人の技能向上・資格取得、企業の側の正当
定試験機関。
53
な評価と言った好循環の発生に期待。)
職業能力評価研究会関係業界団体・企業ヒアリング概要
【(株)エンジニア】(技能検定(指定試験機関方式)関係)《平成25年9月19日聞き取り》
Ⅰ
団体・企業の概要(採用形態等含む)
【(株)エンジニア】
○所在地等:大阪府大阪市。昭和23年創業。
○事業概要:作業工具等の開発・販売(自社工場はない。製造は外注。)
○従業員数:約30名
○開発・営業などの基幹業務担当として正社員(新卒)を採用しており、補助・周辺業務には派遣労働者を受け入れている。専門職
(デザイナー)には中途採用実績がある。また、派遣労働者から直接雇用に切り替えた実績がある。
Ⅱ
検定等能力評価に係る具体の取組み
○技能検定や民間資格などの資格制度を活用し、従業員が業務の全体像を俯瞰し、業務をスムーズに行う上で必要な知識を取得させている。
○特に技能検定「知的財産管理職種」について、開発職や営業職の全従業員に受検勧奨を行っている。正社員、派遣労働者であるか否かに
関わらず受検料を会社負担(3回まで+合格したとき)とし、合格した際には報奨金を支給。「知的財産管理」技能士数は、計9名(2
級:4名、3級:5名)と、全従業員の3分の1を占める(来年度中に2分の1となることを目指している。代表者も2級を取得済。)。
○学生インターンや採用内定者などの入社前の段階にある者に対して、業務に有用な資格制度として3級の受検を奨めている。
○民間資格である「DIYアドバイザー」(2名受験中),「ビジネス実務法務検定」(営業職4,5名有資格)等も活用している。
○社内の全部門についてスキルマップを作成。4~5区分のレベル分け。
Ⅲ
検定等に係る取組みの効果・課題に係る認識
○弁理士(事務所)との会話が難しいが、「知的財産管理」技能検定資格によりコミュニケーションが容易になる。3級を取ると特許等の制度
全体が俯瞰できる。
○社内スキルマップと技能検定をリンクさせているが、昇級・昇格の要件とまではしていない(目安に止まる)。スキル(技能)プラス実績
及びリーダーシップ等により総合評価を行っている。
○技能検定の資格は求人条件として明示はしていない。実際の応募者に技能士が少ないことから、技能士を求人条件とすることにより選択
の幅が狭まるおそれがあるため。しかし、技能士の取得の有無は選考の基準として有用であるため、技能士の絶対数が増えれば、明示
したい。
○3級受検のためのセミナー、講習会を実施して欲しい(初心者を対象としたものが必要。3級資格者が2級を受検するのは比較的容易)。
54
○実技試験が作業試験でないため、技能を計ることについて限界がある。
職業能力評価研究会関係業界団体・企業ヒアリング概要
【大阪大学 本部事務機構】(技能検定(指定試験機関方式)関係)
《平成25年10月4日聞き取り》
Ⅰ
団体・企業の概要(採用形態等含む)
【大阪大学 本部事務機構(研究推進部 産学連携課 知的財産事務グループ)】
○所在地等:大阪府吹田市 吹田キャンパス内。平成17年4月設置(産学連携課)、平成23年6月設置(知的財産事務グループ)。
○業務内容:大学の教職員等が創作した知的財産の届出、出願、知的財産権の承継、維持に関する業務
○従業員数:16名(知的財産事務グループ)
○一般事務に関する業務に従事する事務職員(以下「一般職員」という。)以外に、特許出願,契約,発明補償金の支払等の知的財産に関する事務を
担当する特任事務職員、事務補佐員(1年更新、労働契約期間の限度あり。各セクションにおいて選考)を採用。
○特任事務職員等を対象として、概ね年に1度、一般職員(係員級)への採用試験を行っている(採用は若干名)。
Ⅱ
検定等能力評価に係る具体の取組み
○知的財産に関する専門的な知識が必要となる、知的財産事務グループの特任事務職員等の採用において、技能検定「知的財産管理職種」を
積極活用。
○知的財産事務グループの特任事務職員等の求人(応募)条件に「○級知的財産管理技能士以上又は同等の知識がある」ことを付している(※
技能士資格を必須としないのは、応募者が限られて選考に支障を来すため)。条件とする技能検定の等級は、求める人材に応じて変更。
○大学教職員(産学連携課に限定しない)を対象とした知的財産に関する基礎研修(目的別研修の一つ)を行っており、技能検定「知的財産管
理職種3級」レベルを想定して講義を行っている。研修後の効果測定のため、実際に技能検定「知的財産管理職種3級」を受検させている。
○知的財産管理技能士は、一般職員だけで全体で30数名(平成25年4月現在)。今後も増える見込み。
Ⅲ
検定等に係る取組みの効果・課題に係る認識
○ 「○級知的財産管理技能士以上又は同等の知識がある」ことを明示して採用することにより、業務に必要な基礎知識に関する教育コストを
かけずに済み、即戦力として活躍してもらえる人材を確実に確保できる(むろん、知的財産の知識以外に必須の能力はあるが、これにつ
いては面接等で確認)。
○他の大学、企業等で知的財産業務を経験した知的財産管理技能士が応募・採用に至るケースもあり、知的財産分野で一定の労働市場が形
成されている模様(ただし、キャリアアップの道筋は不分明)。
○技能検定「知的財産管理職種3級」を基礎研修に取り入れることにより、ジョブローテーション等で異動になる職員に、短期間で効率的、効果的
に業務に必要な基礎知識を習得させることができる。
○特任事務職員の報酬は職務給による年俸制を適用する旨、給与規程で定められており、技能士資格取得などによる昇給はない。 55
職業能力評価研究会関係業界団体・企業ヒアリング概要
【葬祭ディレクター技能審査協会】(認定技能審査関係)《平成25年9月11日聞き取り》
Ⅰ
団体の概要
【葬祭ディレクター技能審査協会】
○所在地等:東京都港区。(事務局は、全日本葬祭業協同組合連合会と一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会が交互で実施。)
平成7年に全日本葬祭業協同組合連合会と一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会の2団体が、この技能審査の実施のために設立したもの。
○事業概要:葬祭ディレクター技能審査の運営
○試験概要:平成8年度より実施。年1回、全国8箇所で開催。
平成24年度の受検者数2,769人、合格者数1,899人。累計の合格者数25,503人(1・2級合計延べ数)。
(参考:平成22年度国勢調査(速報) 火葬・墓地管理業、冠婚葬祭業の葬儀師・火葬作業員数41,900人)
Ⅱ
検定等能力評価に係る具体の取組み
○ 試験は、葬儀の受付、設営、運営などの業務に従事する者を対象とした技能。
1級は社葬を含む全ての葬儀における葬儀サービス(仕切れるレベル)、2級は個人葬における葬儀サービス(顧客の前に出られるレベル)を、
各々評価。
○ 試験は、学科試験+実技試験(幕張(焼香机用の白布天張り)、接遇、喪主等との打ち合わせロールプレイ、司会の実演及び実技筆記試験)。
○ 葬祭業に対する消費者からのクレームは変化している(花など物理的面のクレームから、従業員の気配りなどサービスに関するクレームが主に
なっている)。
各社とも従業員の人材教育に力を入れている。
○ 受検者は試験合格のための努力、企業は受検者が合格できるよう指導を、各々行うことで、全社的な質向上につながっている。
○ 最近の受検者の傾向として、女性が増加していること、葬祭関連従業者(花き取扱事業者等)やホテル従業者なども受検していること、全日本
葬祭業協同組合連合会、全日本冠婚葬祭互助協会の会員以外の葬祭事業者からの受検が増えていること。
Ⅲ 検定等に係る取組みの効果・課題に係る認識
○資格制度が普及するにつれ、消費者からの信頼の指標として認知。各社は有資格者数や有資格者名の一覧を表示し、PRに活用。
葬祭業には許認可が無いことから、社内に有資格者がいることは消費者等へのアピールになる。
○ 自社で人材育成するほかに、採用に当たって有資格者(特に1級)を優遇している企業や資格手当を支給している企業もある。
○ 有資格者にとっても、企業を選べるメリットがあり、労働移動に資格が活用されている。
【ホテルレストランサービス協会】
○ 業界全体への評価、信頼性が高まるにつれ、業界で従事する労働者の社会的地位も向上。結果として、葬祭業への入職希望も増えている。
○所在地等:東京都文京区、平成
○ 今後の課題として、
年設置。
・葬祭業者の役割が変化している(昔は幕張や設営などが主。今は遺族ケアなどが主)ことから、コミュニケーションや気配りなどを試験で評価
○技能検定「ホテルレストラン職種」の指
したいが、(講習を通じた目線合わせに務めているものの、)600人の試験官が同一目線で公平な審査を行うための基準が難しい。
定試験機関。
・有資格者の現状の把握(業界内で従事しているか等)がされていないこと、現場で要求される知識等は資格取得時から変化していくことから、
56
更新制度等の導入を検討中。
職業能力評価研究会関係業界団体・企業ヒアリング概要
【日本百貨店協会】(独自の業界検定関係)《平成25年7月24日聞き取り》
Ⅰ
団体の概要
【日本百貨店協会】
○所在地等:東京都中央区日本橋。昭和23年3月16日設立。
○目的:百貨店業の健全な発展を図り、もって国民生活の向上と国民経済の発展に寄与することを目的とする。
○会長:茶村俊一(J.フロントリテイリング(株)取締役会長)
○会員百貨店数:85社242店舗(2013年3月1日現在)
○会員百貨店従業員数:約9万人
Ⅱ
検定等能力評価に係る具体の取組み
【百貨店プロセールス資格制度について】
○日本百貨店協会が主催で、2003年(平成15年)9月から開始され、フィッティングアドバイザー(メンズ・レディス)及びギフトアド
バイザーの3資格について、それぞれ1級から3級を認定しており、平成25年9月末現在で合計約2万4千人を認定している。
フィッティングアドバイザー(レディス・メンズ)
ギフトアドバイザー
1級
筆記、ロールプレイイング試験、エントリーシート
2級
指定通学講座の受講+筆記、ロールプレイング試験
3級
指定通信講座の受講+審査レポートの提出
※1級の受験資格は、2級資格を保有し、百貨店に勤務している者(有期雇
用社員等含む)
※ロールプレイング試験では、典型的な接客場面における接客能力をはじめ、贈
答・しきたりの知識、採寸スキル等を評価
【職業能力評価基準について】
○平成23年度から策定作業を開始し、平成25年5月に発表。
○百貨店プロセールス資格の1級についての人物像を、職業能力評価基準を策定することにより、具体的に整理したところ。
Ⅲ
検定等に係る取組みの効果・課題に係る認識
【効果等】
○1級合格者の写真を店内に貼り出す等により、従業員の受験に向けた意識を高めるとともに、顧客にもアピール。
○資格について、好事例を提示することにより活用を推奨しているところ。
【ホテルレストランサービス協会】
○資格を取得している有期雇用労働者については、給与に反映されている場合や正社員に転換している例もある。
○所在地等:東京都文京区、平成
【課題】
年設置。
○どのように受験者数を増やしていくのかが課題。(国のお墨付きがあれば増えていくのではいないかとの認識。)
○技能検定「ホテルレストラン職種」の指
定試験機関。
○百貨店を担う人物が少なくなってきている。例えば接客関係の業界と組んでいくとか、取引先の販売員に拡大するなどが考えられる。
57
○百貨店については、47都道府県にすべてあるが、地域により偏りがある。地方における人材育成が重要との認識。
職業能力評価研究会関係業界団体・企業ヒアリング概要
【NPO法人シニアマイスターネットワーク】(独自の業界検定関係)《平成25年9月5日聞き取り》
Ⅰ 団体の概要
【NPO法人シニアマイスターネットワーク】
○所在地等:東京都文京区西片
○理事長:作古貞義(流通科学大学名誉教授)
○目的:観光関連産業の発展に寄与して きたシニアの生きがいを支援することによって、 日本の観光文化の保全と社会貢献を目指す。
Ⅱ
検定等能力評価に係る具体の取組み
【ホテル業職業能力評価検定試験について】
○NPO法人シニアマイスターネットワークが以下のとおり制度を構築し、試験を実施している。
・平成19年度に厚生労働省委託のモデル事業として、資格制度検討委員会を立ち上げ、職業能力評価基準を活用した資格認定制度を構築
し、テキストを作成。その後、平成21年度に、厚労省の委託事業にとして、フロント部門の試行試験を実施し、併せてテキストを改訂。
・試験は、Lv.1~4に区分され、受験者にテキスト等を事前に送付の上、講義を受講、筆記試験(ホテル経営論、フロント業務)、面接
質疑、ロールプレイング試験(ホテルのチェックインの場面設定)等を行う。Lv.3以上(マネジャークラス)については、PC分析、論文
発表、プレゼンテーション等も行う。
・大学の観光科等の授業計画にも位置づけ。
・平成24年度末までに合計約250人が受験。不合格者に対しては追試を行うなどして約9割が合格している。
【職業能力評価基準について】
○平成16年に策定、平成21年にメンテナンス。
○平成22年・23年度に職業能力評価基準を活用するためのキャリアマップ・職業能力評価シートを作成し、その導入支援を行った。
Ⅲ
検定等に係る取組みの効果・課題に係る認識
【効果等】
○業界への就職に際し、厚労省の職業能力評価基準に準拠した資格としてアピールすることができ有意義である(学生)。
【ホテルレストランサービス協会】
○成績評価の公平性、透明性により、不公平感が払拭され有意義である(企業スタッフ)。
○所在地等:東京都文京区、平成
○ジョブ・カード制度の仕組みも生かすことで就職活動に有効である(転職・求職者)。
年設置。
【課題】
○技能検定「ホテルレストラン職種」の指
○業界統一基準との認識が低く、周知活動が必要である。
定試験機関。
○今後は、Lv.5(総支配人)をどう構築していくのかが課題である(Lv.5のテキストは作成済み)。
58
職業能力評価研究会関係業界団体・企業ヒアリング概要
【一般社団法人新日本スーパーマーケット協会】(独自の業界検定関係)《平成25年9月27日聞き取り》
Ⅰ 団体の概要
【一般社団法人新日本スーパーマーケット協会】
○所在地等:東京都千代田区内神田
昭和33年「日本セルフ・サービス協会」発足。平成21年「社団法人全国スーパーマーケット協会」と「社団法人日本セルフ・サービス
協会」が合併し、新たに「社団法人日本セルフ・サービス協会」として発足。翌平成22年に現在の名称となる。
○目的:セルフ・サービス方式の健全な発展と普及を図ることにより、商業の近代化を通じて流通機構の合理化を促進するとともに、
国民の消費生活の向上に寄与し、もってわが国経済の発展に貢献することを目的とする。
○会長:横山 清(株式会社アークス)
○正会員企業数:389社(2013年3月1日現在)
Ⅱ
検定等能力評価に係る具体の取組み
【スーパーマーケット検定(S検)について】
○スーパーマーケット業界全体のレベルアップを図るための職業能力評価基準に準拠した資格認定制度で、スーパーマーケット等の小売業(流通業)に従
事している方(社員・従業員/パート・アルバイト含む)の知識と技術の向上を目指した能力検定試験。
○S検の種類:☆ベーシック(1・2級)☆マネジャー級(2・3級) ・バイヤー級(以上がスーパーマーケットスタッフの総合的乃至幹部候補生
に係る能力評価)☆チェッカー技能検定(1~3級)・食品表示管理士検定(上~初級、基礎級)・チーズ販売士検定
(中~初級)(以上が特定職種に係る能力評価)☆については、採点基準を職業能力評価基準に準拠して作成。
○試験内容:筆記試験、実技試験(チェッカー技能検定のみ)※実技試験は、挨拶からチェッカー処理の正確さ・迅速さ等までを審査する。
1級は応対話法(イレギュラーな顧客の要望への対応に係るロールプレイ)も加わる。
○昭和62年からの累計受験者数48,227人(うちチェッカー技能検定16,387人)、合格者数26,313人(同8,458人)(平成24年度末現在)
※チーズ販売士検定除く。
○企業単位の受験が原則。一定数の受験者数が存する場合、同一試験環境を整備した上で、「企業内受験制度」も活用。
【職業能力評価基準について】
○平成16年に策定。
○平成22年・23年度に職業能力評価基準を活用するためのキャリアマップ・職業能力評価シートを作成し、その導入支援を行った。
Ⅲ
検定等に係る取組みの効果・課題に係る認識
【効果等】
○スーパーマーケットにおいて、お客様が一番負担に感じるのはレジで会計をするときと言われており、苦情もレジに集中すると言われている。
【ホテルレストランサービス協会】
そのため、レジに関する教育がとりわけ重要との認識。
○所在地等:東京都文京区、平成
○検定に合格することにより給与に反映したり、昇進の要件として活用している企業もある。会員企業従業員の受験が原則なので採用選
年設置。
考基準として活用する意識はない。結果として転職の際に役に立ったという声もある。
○技能検定「ホテルレストラン職種」の指
○海外(特に東南アジア)からS検についての見学や提携の依頼がある。
定試験機関。
59
【課題】
○厚労省の職業能力評価基準に準拠しているだけでなく、これ以上のなんらかの国のお墨付きがあればもっと発展していくと思われる。
職業能力評価研究会関係業界団体・企業ヒアリング概要
【 一般社団法人 情報サービス産業協会 】(ITSS等関係)《平成25年10月22日聞き取り》
Ⅰ 団体・企業の概要(採用形態等含む)
【 一般社団法人 情報サービス産業協会 】
○所在地等:東京都中央区八重洲。昭和59年設立。
○事業概要:経営・技術等に関する調査研究、品質・セキュリティ等に関する技術開発及び標準化、IT人材の育成及び地域の振興 等
○会員数:法人会員 523社(ベンダー企業(メーカー系,独立系,ユーザー系に大別))、団体会員 33社、賛助会員 47社
Ⅱ
IT人材ニーズに関する調査分析の取組み
○IT人材の雇用判断(DI値)は、24年度後半から不足に転ず。当面、消費税引上、共通番号制度化といったシステム開発・改修の需要につながるイベントもある一方、クラウドの
進展は、共通パッケージ化の拡大、ひいては個別システム開発の需要減につながるとの見方もあり、今後の需給動向は不透明。
○情報サービス産業市場における主要な要素技術をピックアップし、整理・体系化した「ITディレクトリ」(14カテゴリ,120要素技術からなる)を構築。
これを用い、各要素技術の企業における現在の需要・今後の需要見込み(例:今後の需要見込み 1位スマートフォン , 2位タブレット)を分析・指数化し、「見える化」した「要素
技術のライフサイクルマップ」を年1回作成。
○ライフサイクルマップでの各要素技術の分布位置により、研究期、普及期、安定期、衰退期のいずれにあるのかが「見える化」、企業は使いたい技術の状況・動向を知ること
が可能。
○さらに、各要素技術の相関分析により、相関が高い要素技術からなる技術群を「見える化」した技術関連図で表現(例えば、ネットワーク関連の技術群に属する各要素技術
はネットワーク関連業務に従事する労働者にとって必須技術)。企業は自社の雇用する技術者が技術群に属する要素技術をどれだけ習得できているかなど、当該分野におけ
る技術者の成熟度を見る指標として使用可能。また、協会では、これらを踏まえ、スキルアップのための講座を開講。
Ⅲ
IT人材に関する指標の活用実態とその課題
○IT人材の育成や人材投資の効率化を実現するために、各種ITサービスの提供に必要な能力(仕事の達成度、スキル熟達度)を明確化・体系化した指標として、「ITスキル標準
(ITSS)」が開発されており、協会及び参加企業としてこれを活用。
○ITSSでは、11職種(マーケティング、セールス、ITスペシャリスト、ソフトウェア・デベロプメント等) と7段階のレベルを定義している。職種については、IT人材の仕事により35の専門分野に分
類し、さらに仕事をこなすために必要なスキルをスキルディクショナリとしてまとめられている。
○企業では従業員のスキルを公平に把握するための客観的評価基準としてITSSを活用(会員企業の約50%がITSSを活用又は活用を検討中)。また、各企業において自社のシ
ステムに合わせてITSSをカスタマイズして活用(個別スキルを追加するだけでなく、レベルも伸縮)している。企業の採用活動では、主に中途採用の場面においてITSSが活用され
ている。
○IT人材にはITスキルだけでなく、クライアントとの仕様交渉等の場面においてコンピテンシー(時と場合に応じたコミュニケーション力など)、応用力も必要、かつ、一層重要性を増しているが、
指標とすることができない(標準化された評価手法は未確立)こともあり、ITSSではカバーしきれていない。
○ITSSは、企業規模等により同じスキルでも求められるボリュームや重点が異なることから、各企業でカスタマイズが必要、あくまでもスタンダードの位置付け。企業横断的な共通の
指標として利用できない部分もある。
○情報システムの利用者としてITに関わる組織・人材を対象とした「情報システムユーザースキル標準(UISS)」もある。UISSは、情報システムを統括する組織に求められる機能・業務、
当該組織で活躍する人材に必要な能力・スキルといった2種類の参照モデルをユーザー企業に提供。参照モデルを踏まえ、組織に関する具体的モデル(タスクフレームワーク,タスク概要)、組織
と人材をつなぐモデル(機能・役割定義)、人材に関する具体的モデル(人材像とタスクの関連,人材像定義,キャリアフレームワーク,研修ロードマップ)を提供し。これによりベンター企業とユーザー
企業のコミュニケーションが取りやすくなる。これに「組込みスキル標準(ETSS)」も加えた「共通キャリア・スキルフレームワーク」への統合準備作業中(26年度公表見込み)。
60
職業能力評価研究会関係業界団体・企業ヒアリング概要
【一般社団法人日本添乗サービス協会】(独自の業界検定関係)
《平成25年11月21日聞き取り》
Ⅰ 団体の概要
【一般社団法人日本添乗サービス協会(TCSA)】
○所在地等:東京都港区芝 ○設立:昭和61年
○目的:添乗を専門とする人達を養成し、多様化する旅行者のニーズに的確に対応できるプロフェッショナルツアーコンダクターを安定
的に供給し、観光産業の発展に寄与する。
○会長:山田 隆英(元海上保安長官、OTOA(日本海外ツアーオペレーター協会)理事)
○正会員企業数(添乗員派遣会社):49社(H25年8月末現在)○正会員所属添乗員数(派遣添乗員):9,825人(H25年8月末現在)
Ⅱ 検定等能力評価に係る具体の取組み
【添乗員能力資格認定試験について】
○目的:①添乗員として身につけてきた知識・経験を添乗員の能力として評価するとどの段階にあるかを客観的に確認する尺度とする。
②添乗員の社会的地位の向上に資すること。すなわち、認定された添乗員が社会的にもそれに相応しい評価を受け、派遣会社及
び旅行会社からもそれ相応の待遇を受けられるようにする。
○概要:・学科試験(一次試験)、小論文(二次試験)に加え、添乗業務の経験年数及び添乗日数により総合的に判断し、その経験を基
礎に他の規範となるに相応しく、能力の水準に達していると認められる者に対して認定する。
・すべての認定者に対して「認定証」を授与し、1級及び2級認定者に対しては、名刺用の「認定シール」を併せて授与する。
なお、今後1級認定者にはバッチを授与することを予定しており、現在デザインを募集しているところである。
試験内容
科目
1級
総合(※1)
2級
1級
国内
2級
3級
業務知識
○
○
○
○
○(※2)
一次試験
実務(※3)
○
○
○
○
英語
○
○
二次試験
小論文
○
○
受験資格(※4)
添乗年数
添乗日数
1級
2年以上
200日以上
2級
1年以上
100日以上
3級
なし
なし
(※1)国内及び海外添乗
(※2)国内の業務知識
(※3)具体的なケースについて記述で回答するもの。
(※4)添乗年数又は添乗日数どちらか満たす必要
○平成8年からのからの累計受験者数2,480人、認定者数1,397人(平成24年度末現在)
【職業能力評価基準について】
○平成25年に策定。
Ⅲ 検定等に係る取組みの効果・課題に係る認識
○資格認定者について、派遣料や日当に反映させている旅行会社もあるが、反映されにくいのが現状。
○資格認定試験について、コスト面の負担が大きい。何かしらのサポートがあれば受験者数も伸びるのではないかとの認識。
○資格認定が採用の際活用されるというよりは、各自の能力開発の目標という面が強い。(添乗員はツアーごとに評価されるため、
採用の際にはストレス耐性が非常に求められる傾向。)
61
○資格認定を受けた者が、実際のツアーでのお客様アンケートで高評価を得られないギャップが存在する点が課題との認識。
職業能力評価研究会関係業界団体・企業ヒアリング概要
【学校法人小山学園専門学校東京テクニカルカレッジ】(教育訓練(専修・専門学校)関係)
《平成25年11月26日聞き取り》
Ⅰ 学校の概要(採用形態等含む)
【学校法人小山学園専門学校東京テクニカルカレッジ】
○所在地等:東京都中野区東中野 ○設立:昭和44年 ○理事長:山本 匡
○学科:建築・インテリア、ゲーム・情報・Web、環境・バイオなど3分野9学科等(その他、自動車系専門学校を都内で3校有する)
○平成24年度卒業者数:158名
Ⅱ
教育訓練、能力評価及び資格取得支援、在校生の就職支援に係る具体の取組み
【教育訓練、能力評価】
○入学者の学力等の水準の均一化を図ることが困難な実態が在る中で、パートナーたる企業に一定の質の人材を安定的に提供するため、カリキュラム編成に
当たり、卒業生が持つべき知識やスキルを持つ「人材目標」を設定し、効率よく修得させるために、企業や学識経験者に協力を受け「教育課程編成委員会」
を開催し、講座の受講順も含めて作成。
○具体的には、授業運営に関して、Plan(1年間を5期に分けて学ぶ内容をより細分化し1コマ毎(90分)に学ぶ内容を開示したものである「コマシラバス」
の作成) →Do(授業中に「コマシラバス」に基づき1コマの学ぶべきポイントが10項目に分けて記載された「授業シート」を使用)→Check(毎回授業の
最後に学習内容が理解できたかを確認する「授業カルテ」を使用)→Act(「授業カルテ」の結果に基づき、身に付いていない要素を補充する「コマ補習」)の
PDCAサイクルを繰り返すことで、授業ひいては学生の能力の質保証に取り組んでいる(ISO9000の品質保証の思惑)。
○さらに、多様な生徒が集まる専門学校であるため、修学のモチベーション維持等を目的に社会との接点を持たせるため、後援会企業(後述)の全面的な協
力を得た、学内インターンシップとして「仕事場カリキュラム」を全学科で実施(例:ゲーム開発、地域商店街PRのHP制作)。
○同一校舎内に設置されている社会人の教育を対象とするテラハウスICAにおいて、東京都の委託訓練活用型デュアルシステム及び離職者等再就職訓練を受
託し、5科(オフィスジョブマスター科、Java・Webプログラミング科等)で公共職業訓練を実施し、デュアルシステムやジョブカード等の専門学校教育
への汎用性を模索。
【資格取得支援、在校生の就職支援】
○教育訓練の成果の一つの目安として、事後に該当の代表的資格取得を奨励・支援(例:応用・基本情報技術者等)
○自動車、建築・インテリア・設備・空調、バイオテクノロジー、コンピューターなど各産業の優良企業からなる「小山学園後援会」が教材や設備の提供、
教員の派遣、就職説明会の開催など多方面にわたりバックアップ。 卒業生を定期的に採用。(後援会企業数:101社(平成25年4月現在))
Ⅲ
教育訓練の観点からの資格の意義及び就職支援に関する認識・課題
○個々の教員の専門性や既存の教科書に依拠する「講座主義」から、人材目標から必要な教授内容を考える「カリキュラム主義」へ転換。
○また、短期的なニーズに基づいた教育ではなく、10年、20年後など中長期を見据えた人材育成を行う必要があると認識。
○本校の卒業者に対して、その学生を採用した各企業からクレームが入ることはほぼなく、一定水準の職業教育、実践的人材育成が行われていると自
負。
採用選考に当たり面接のスキップ等の形で評価。
○国家資格(免許)等に依存する企業は業種・職種固有の知識・技能に加えて、ストレス耐性が高い等の「人間力」を求める場合がある。社会人基礎力や
人間力等を育成している専修学校においては対応しているが、中には必ずしもカバーできない面もある(職業実践専門課程の企業等との連携を図る実習
62
や演習はまさにその力を育成する場面となる)。
別添2
職業能力評価等の国際的動向に関わる
有識者からのヒアリング 提出資料
63
イギリスにおける
職業能力評価制度の概要
労働政策研究・研修機構
2013.12.13
64
1.制度導入の経緯
・NVQ導入の目的
-各業種で独自に形成された能力評価制度の標準化
→能力開発政策推進により国際競争力の回復を志向
-知識・技術より、職場での作業実行能力を重視
-学業資格等と対応付けたNQF(全国資格枠組み)の導入
・QCF(資格・単位枠組み)への移行
-NVQ取得にはまとまった期間を要し、途中で脱落した場合はそれま
での訓練は無駄になるという問題
→各資格をより小さい単位(ユニット)に分割・再構成、段階的で柔
軟な資格取得を可能に
→各ユニットの学習に要する時間をクレジットで表現、所要期間の
把握が容易に
→ユニットを規格化、資格間で共通するユニットは一度履修すれば
他の資格取得時でも有効に
65
2.職業・教育資格の対応づけ
レベル
導入 訓練受講準備
能力要件(QCF)
教育資格
1
指示を受けながら作業を完了できる
GCSE グレードD-G
2
GCSE グレードC-A
7
作業の手順を憶えて作業ができる。作業中に少し変わったこと
があっても対応できる。
憶えた作業手順から適切なものを自分で選んで、一つのまと
まった作業ができる。
単純作業以外で問題があった場合に、問題点が明らかであれば
対応できる。
問題がどこにあるかの判断がさほど困難でない場合は、習得し
た知識に基づいて対応できる
問題解決の方法が限られている場合、習得した知識を応用して
対応することができる
習得した理論や方法論に基づいて問題解決ができる
8
問題解決に関する独自の方法を開発できる。
博士課程修了
3
4
5
6
AS/A International
Baccalaureate
准学士 Certificates of
Higher Education
准学士 Diplomas of
Higher Education
学士課程修了
修士課程修了
出典:QCA/Ofqual (2008) ”Regulatory arrangements for the Qualifications and Credit Framework”を元に、内容を簡略化。
66
3.QCFの構成
・レベルにより難易度を、クレジット数により取得に要する時間を表現(1
クレジット=およそ10時間の学習)
出典:QCA/Ofqual (2008) ”Regulatory arrangements for the Qualifications and Credit Framework”
67
4.QCFの能力要件
レベル
導入
1
2
3
4
5
6
7
8
能力要件
訓練受講準備
適当な方法、技能、手順を使って単純作業を完了することができる。指示のもとで行う仕事や手続きを完了することができる。
教えられたことを思いだし、習得した技能を使って単純作業を完了することができ、作業上の簡単な問題に自分で対応できる。作業
全体に関する指示を理解し、自分で判断して作業や手続きを完了することができる。
教えられた知識や技術、手順の中から、適切なものを選んで作業を完了することができる。単純作業の中でも多少複雑な問題に対
応することができる。作業の開始から完了まで自分で行うことができ、限られた範囲内では自分の判断で作業を進めることができる
また、一つのことを修得したり作業を行ったりするためにはいろいろな考え方や方法があることを理解する。
問題点は明らかであるが複数の要素を含み規定の手順では対応できない場合に、習得した知識、方法、技術の中から適切なもの
を選んで事態に対処することができる。かなり広範囲の業務において自分で判断し作業を実行し、一つの問題全体に対して責任を
持つことができる。また、このレベルは取得者が一つのことを修得したり作業を行ったりするための様々な方法や見解を理解してい
ることを示す。
問題点がある程度明らかで、複雑な要素を含む場合、習得した知識、方法、技術の中から適切なものを選んで事態に対処すること
ができる。広範囲の業務において自分で判断し作業を実行し、業務活動の計画と開発に責任を持つことができる。また、このレベ
ルは取得者が様々な見解、方法、思考体系とその説明を理解していることを示す。
複雑ではあるが問題点の解決方法が限られている場合、習得した知識、方法、技術を先鋭化して応用することができる。広範囲に
わたって自主性と判断力を持ち、かなり大きな変化や開発の基礎となる業務活動の計画と開発に責任を持つ。また、このレベルは
取得者が様々な見解、方法、思考体系とその理論を理解していることを示す。
多数の要素が入り組む複雑な問題に対して、方法論や解決法の中から適切なものを状況に合わせて構成し直して状況に対処す
る。広範囲にわたって自主性と判断力を持ち、かなり大きな変化や開発の基礎となる業務活動の計画と開発に責任を持つ。また、
このレベルは取得者が関連する理論と方法論に基づく見解を理解し、それが自分の学習や業務にどのような影響があるか理解し
ていることを示す。
独自の理論を開発し専門分野における知識をさらに広げる。複雑に入り組んだ要素を含む問題や状況を解決するために調査研究
や対応戦略を独自に開発し実行する能力がある。関連分野の知識や活動の開発や専門業務または組織的な改革実行のために、
広範囲の自主性を持ち判断力や指導力を発揮していく。また、このレベルは取得者が関連する理論と方法論に関する批判的理解
力を持ち、それが関連する知識分野や業務にどのような影響があるか理解していることを示す。
出典:QCA/Ofqual (2008) ”Regulatory arrangements for the Qualifications and Credit Framework”
68
5.QCF推進体制
中
央
省
庁
ビジネス・イノベーション・技能省
Department for Business Innovation and Skills(BIS)
資格・試験規制局
Office of Qualifications and Examinations
Regulatior:Ofqual
職業教育訓練のあり方提言、目標達成の
評価、SSCsの再認可の大臣助言
QCF資格の
認可を申請
職務基準を
作成、認可申請
職務基準を
審査、認可
業種別技能委員会
Sector Skills Councils
業種別の職務基準作成
職業訓練予算を分配
QCFの総合的運用・管理
英国雇用・技能委員会
UK Commission for Employment and Skills
業種別に認可
補助金を支給
教育省
Department for Education(DfE)
JILPT(2011)(職業大能研セ
ンター作成)を元に作成
QCF資格
を認可
資格授与機関
として認定
資格授与機関 Awarding Organisation
仕様書の作成
・運用依頼
訓練コースの認定、
訓練機関の指導・監督
成人の職業教育訓練に対する
国からの予算配分
技能助成機関
Skills Funding Agency
(BISの外郭機関)
教育助成機関
Education Funding Agency
(DfEの外郭機関)
16~19歳の学習者の財政支援(ア
プレンティスシップ含む)
QCF資格審査/授与
訓練コース
の申請
資格授与
助成:
・NVQ2まで全額補助
・NVQ3~ 一部補助
教育水準局
OFSTED
(監察)
訓練実施
教育訓練プロバイダー
(教育訓練プログラムの実績に対して公的資金が助成される)
情報提供
訓練の要望
監査員:2500人程
度
訓 練プ ロバ イダー
の監査
事業主、従業員
(教育訓練プログラムの利用のほか、設計・方向付けを行う)
69
6.分野・レベル別QCF資格取得件数(2011年度)
700,000
600,000
500,000
400,000
300,000
レベル4-8
レベル3
200,000
100,000
レベル2
レベル1
エントリー
0
出典:The Data Serviceウェブサイト( http://www.thedataservice.org.uk/ )
70
7.外部市場での利用状況
・職業資格の保有を要件とする求人は少ない
-業界・労働者に対して資格保有に関する何らかの規制が設けられ
ている場合(例:介護)
→保有資格は要件というよりも考慮の対象の場合が多く、むしろ職
務経験を要件として強調
→入職後の昇進の際もほぼ同様か(未検証)
-中級以上の能力評価制度の利用は限定的
・アプレンティスシップの評価が高い
-実際の職場での実務訓練、理論に関する座学により職務遂行能
力・技術的知識に関するQCF資格を取得、併せて英語・数学・ITな
ど就業に必要な基礎的スキルを習得
-対象者は外部からの受け入れまたは既存の従業員
71
谷口参集者提出資料
ドイツにおける職業能力評価の動向
~DQRの導入をめぐる葛藤を中心に~
1.EQF(欧州資格枠組み)とDQR(ドイツ資格枠組み)
EU 加盟各国は 2010 年までに各国の資格枠組み(NQF: National Qualifications Framework)を策定し、EQF にリンクさせる
(最終期限 2012 年まで延長)
生涯学習のためのドイツ資格枠組み(DQR: Deutscher Qualifikationsrahmen fuer lebenslanges Lernen)
※ドイツの NQF が DQR
2.DQR策定・導入のための組織立て
連邦政府・各州コーディネートグループ(Bund-Laender-Koordinierungsgruppe Deutscher Qualifikationsrahmen)
:DQR の策定・導入を主導する組織として(2007 年 1 月~)
BMBF(連邦教育研究省)
、BMWi(連邦経済技術省)
、KMK(各州教育大臣常設会議)
、WMK(各州経済大臣会議)
(招集)
DQR作業部会(Arbeitskreis Deutscher Qualifikationsrahmen)
:
関連するステークホルダー(Akteure)を DQR の策定・導入過程に関与させるため、コーディネートグループによって招集(2007 年 6 月~)
BMBF(連邦教育研究省)
、BMWi(連邦経済技術省)
、連邦雇用庁、連邦法定外福利作業グループ、BIBB(連邦職業教育訓練研究所)
、
ドイツ行政部同盟-連邦商業学校教師協会、DGB(ドイツ労働組合総同盟-ドイツ教育組合、金属産業労働組合-)
、DIHK(ドイツ商工会議所会議)
、
ドイツ学生委員会全国連合、ドイツ教区牧師会議、継続教育協調行動-ドイツ私立学校連邦協会、KMK(各州教育大臣常設会議)
、
ドイツ使用者団体連合会、ドイツ学習プログラム認証財団、ドイツ科学・人文学協議会、ZDH(ドイツ手工業中央連盟)
3.DQRの目的
 ドイツの資格制度における透明性を高める
 資格の等価・差異の可視性を高める
 信頼度、透過性および質保証を促進する
 ドイツと他の欧州諸国の間およびドイツ国内の学習者および労働者の移動性を支援する
 欧州労働市場におけるドイツ市民の機会を高める
 資格の能力志向を強め、学習成果へのシフトを促進する
 ノンフォーマル・インフォーマルな学習の有効性ための機会を改善する
 生涯学習を強化する

4.DQRの中核-「能力(コンピテンス)
」概念
DQR において「能力(コンピテンス)
」という用語は、職業的・個人的発達のため、仕事または学習の状況における知識、技能、私的・社会的・方法論的
能力を使用するための技量と意欲に関係する。この意味で、能力は行動技能と関連する。
EQFとDQRの能力要件構造
EQF
要件の構造
知識
技能
能力(コンピテンス)
理論または事実に結び付けて 認知的なもの(論理的、直観的、 責任と自律の観点から表現され
表現される
創造的な思考の使用を伴う)また る
は実践的なもの(手先の器用さと
手法、材料・道具・装置の使い方
を伴う)として表現される
DQR
要件の構造
専門的な能力(コンピテンス)
知識
個人的な能力(コンピテンス)
技能
社会的な能力
自己の力量
深さ
手段的・体系的技能
チーム/リーダーシッ 自律性
広さ
判断力
プに関する技能
責任感
参加能力
反省能力
コミュニケーション
学習能力
5.DQRの範囲
 規定する道具ではない。
 国家資格制度および(または)資格の置き換えや定義をしない。
 資格の同質性ではなく等価性を記述する。
 資格制度への既存の許可基準を置き換えない。
 資格の分類のために設計されるが、個人の能力は記述されない。
 ノンフォーマルおよびインフォーマル学習の学習成果を含むことを設計されるが、学習成果の立証のための道具ではない。
 既存の欧州の協定に影響しない。
-専門資格の認証に関するEU通達(2005/36/EC)
-域内市場でのサービスに関するEU通達(2006/123/EC)
-欧州高等教育領域(NQFs との互換性)における資格枠組み
6.DQRの策定経過
2006 年 10 月
※吉留久晴(2013)を参考に作成
連邦教育研究省(BMBF: Bundesministerium fuer Bildung und Forschung)と各州教育大臣常設会議(KMK: Staendige
Konferenz der Kultusminister der Laender in der Bundesrepublik Deuschland)が DQR の共同開発に合意、2007 年 1
月からの策定作業開始を取り決め
↓
作業開始に先立ち、
「連邦政府・各州コーディネートグループ」を設置
2007 年 6 月
DQR 作業部会の設置(コーディネートグループにより招集)
2009 年 2 月
DQR の草案を作成
↓
4 つの職業分野(医療・保健、商業、IT、金属・電気)を事例として各分野 16~20 名の専門家作業グループによる検証作業
2009 年 12 月
KMK 学校委員会による大学入学資格の分類案(アビトゥア・専門アビトゥア=レベル5、専門大学入学資格=レベル4)
2011 年 3 月
DQR 作業部会による草案の議決 *資料①(DQR マトリックス)
↓
DQR 作業部会:普通教育、高等教育、職業教育の資格の等級分け検討開始
2011 年 6 月
連邦職業教育研究所(BIBB: Bundesinstitut fuer Berufsbildung)中央委員会が「職業資格との関係および欧州比較から
みたアビトゥアの分類に関する勧告」を採択
異議「絶対に受け入れられない。決定を再考し、修正すること」
(大学入学資格
はすべて同じレベル4にすべき)
2011 年 10 月 20
日、21 日
KMK の第 335 回総会で、大半の職業資格よりもアビトゥアを高いレベルに位置づけることを満場一致で決議
 アビトゥアおよび専門アビトゥアをレベル5、専門大学入学資格をレベル4
 職業資格を3分類に細分化する提案(①2年間の職業教育訓練修了後に取得可能な職業資格をレベル3、
②3年および3年半の職業資格の大部分をレベル4、③「ふさわしい職業資格」をレベル5)
↑(反証)
DGB(ドイツ労働組合総同盟)と ZDH(ドイツ手工業中央連盟)が、欧州委員会での後期中等学校の修了資格の比較結果
をもとに「アビトゥアは決して‘特別なもの’ではない」と反証
DQR の 策定 ・導 入に 関与 し てい た機 関 ・ 団 体のト ッ プ代 表者 によ る 資格 の 等級 分け に関 する「 意 見調 整会 談
(Abstimmungsgespraech)
」を 2012 年 1 月 31 日に開催することを計画
KMK 以外の機関・団体が職業資格の分類を3つのレベルに細分化せずに、2 年タイプの職業資格をレベル 3 に、
3 年および 3 年半タイプの職業資格をレベル 4 に分類することを主張
2012 年 1 月 31 日 BMBF(連邦教育研究省)大臣のシャヴァーンが事態の収拾に乗り出す。KMK 議長および会談参加予定者 12 名に対し妥協
の 1 週間前
案を提案。
(アビトゥア、その他の普通教育学校の修了資格を DQR の資格参照レベルに分類することをさしあたり断念する
ことを提案。永遠に分類を断念するのではなく EU での展開を見通すことができるようになった際に第 2 ステップで付け加
える)
2012 年 1 月 31 日
DQR の策定・導入に関与する機関・団体のトップ代表者の「意見調整会談」
連邦教育研究省、連邦経済技術省、KMK、WMK、ZDH、ドイツ経営者連盟、DIHK、DGB、BIBB の各代表者
下記 3 点について合意し、協定を締結
(1) 2 年タイプの職業資格をレベル 3 に、3 年および 3 年半タイプの職業資格をレベル 4 にさしあたり分類する。
(2) 普通教育学校の修了資格については、資格参照レベルに当面分類しない。
(3) 能力志向の初期職業教育訓練の規則と能力志向の普通教育学校の修了資格のための教育スタンダードをそれぞれ
作成し、5 年後にそれらに基づきながら職業教育と普通教育の同等性に準じて、すべての資格の等級分けを改めて行
う。
レベル
高等教育の資格
職業教育の資格
レベル8
博 士
レベル7
修 士
向上教育訓練(戦略的な専門家など)の成果
レベル6
学 士
マイスター、専門士、専門学校修了資格(テヒニカー)
レベル5
向上教育訓練(スペシャリストなど)の成果
レベル4
3 年および 3 年半タイプの職業資格
レベル3
2 年タイプの職業資格
BMBF; Wichtiger Schritt hin zum Bildungsraum Europa, Pressemitteilung vom 31.01.2012
(http://www.bmbf.de/press/3230.php)
吉留久晴「ドイツにおける職業資格とアビトゥアの同等性確立の葛藤過程-ドイツ資格枠組みの資格参照レベルへの分類をめぐって-」
『鹿児島国際大学福祉社会学部論集』
、2013
年 3 月、p.61
7.DQRの議論の特徴
 KMK 対 KMK 以外の対立(普通教育と職業教育の制度的分離。両者別系統の教育としてそれぞれ独自の発展を遂げた)
 KMK は学習の成果として習得される能力が資格のレベル分け基準であるという点を等閑にし、資格の機能面などを拠りどころとしてレベル分けを行っ
た。
 従来分断されてきた、一般教育と職業教育の同等性をはっきりと示した。しかし、アビトゥアと職業修了資格の同等性については、完全には同意されて
いない。
 国際的比較において、ドイツでは職業教育による中級資格グループが充実していることを考慮する必要。他国では大学で訓練される多くの職業領域が、
ドイツではデュアルシステムで達成されている。それゆえ、就業人口中の大卒者の比率が低い。
 それゆえ、テクニシャンやマイスターのレベルを高く位置づけた。こうした措置により、ドイツの職業資格が、欧州諸国と比べ低く位置づけられること
を防ぐ。
 input(教育・訓練の過程を重視)から output(結果を重視)への転換を迫る欧州資格水準の考え方に対する抵抗は大きい。特に、non-formal 及び informal
な教育訓練の評価については、議論がなかなか進まない。
 レベル表で同等と位置づけられた資格でも、それは「ドイツにおいて現存の資格システム(Berechtigungssystem)を代置するものではない。
」
(2013.5
「州教育大臣常設会議、連邦教育研究省、州経済大臣会議、連邦経済技術省の DQR についての共同決定」第 1 条(2))と明記されているように、DQR
が実効性を持って社会的に作用するか否かは微妙である。
 従来のドイツの職業資格と大きく背反しないレベル指定では問題がないが、従来位置付けられていなかったノンフォーマルおよびインフォーマルな教育
訓練や、職業資格と一般教育資格の同置には抵抗が大きい。
※本報告を作成するにあたり、佐々木英一氏(追手門学院大学教授)
、吉留久晴氏(鹿児島国際大学、准教授)から情報提供をいただいた。記して謝意を申し
あげる。
資料① ドイツの学校系統図資料
資料② DQR/EQFのレベルとドイツの従来の資格の対照表
(2013.5)
DQR/EQF
のレベル
1
2
3
4
5
6
7
8
出典:文部科学省生涯学習政策局調査企画課(編)
『諸外国の教育動向 2011 年版』p.374
資 格
職業訓練準備
・労働エージェンシーの諸施策
・職業準備年(Berufsvorbereitungsjahr)
職業訓練準備
・労働エージェンシーの諸施策
・職業準備年
・導入訓練(Einstiegsqualifizierung)
職業専門学校(職業基礎教育)
デュアルシステム職業訓練(2 年訓練)
職業専門学校(中級学校修了資格)
デュアルシステム職業訓練(3-3.5 年訓練)
職業専門学校(助手職種)
職業専門学校(デュアルシステム同等の職業訓練)
IT スペシャリスト(認定)、サービステクニシャン(検定)
バチェラー
専門ビジネスマン(検定)、専門自営業者(検定)、
マイスター
専門オペレーター(IT)
専門学校(州検定)
マスター
ストラテジー専門士(IT)
博士
出典:Bundesministerium fuer Bildung und Forschung.:
Deutscher EQR- Referenzierungsbericht, 2013.5.8, S.7
資料③ EQFとDQRの対照表 (2013.5)
レ ベル
E QF
1
予め構造化された文脈の中での
直接的指導の下での労働ないし
学習
2
ある程度自立して、指導のもとで
の学習ないし労働
レ ベル 指 標
社 会 的 コ ン ピ テン ツ
自立性
概観可能で安定した構造の学習ないし労働領域で、簡単な要求を満たすことのできるコンピテン
ツを持つ。
指導のもとで、課題をうまくこなせる。
他者と共に学び、あるいは働き、口頭ないし文書で情報を発信し交換できる。
指導のもとで、学習ないし働ける。
自己および他者の行為を評価し、学習上の助言を聞く。
概観可能で安定した構造の学習ないし労働領域で、専門に即して、基本的な要求を満たすことの
できるコンピテンツを持っている。
グループで協力する。
一般的な提案や批判を受け入れたり表明する。
口頭ないし文書によるコミュニケーションで、状況に応じて行動、反応する。
DQR
既知の安定した文脈において、さらに指導のもとで責任を自覚して学習ないし働く。自己および他
者の行為を評価する。前もって与えられた学習ツールを利用し、学習の助言を求める。
いまだ概観可能であるが、部分的に構造化されていない学習領域ないし職業活動での、専門的
な要求を自立して遂行するコンピテンツを持つ。
グループで協力し、個々の点で援助できる。
学習ないし労働環境をともに形成し、手順を作り、結果を相手方に即して述べる。
問題の解決に際して、自己の行
よく知らない文脈においても、独立し責任を自覚して学習ないし働く。
為を時々の環境に適応させる
自己および他者の行為を評価する。
学習の助言を求め、様々な学習ツールを選択する。
通常既知であるが、変更可能な
包括的で、変化する学習領域ないし職業活動で、自立して計画を立て、専門的な課題設定を行う
労働ないし学習文脈の行為のパ コンピテンツ。
ラメーター内部での自立した行動 グループでの労働と、その学習―労働環境をともに作り、継続的に支持をする。
経過と結果を根拠づける。
他者のルーティーンワークの監
状況について包括的にコミュニケーションができる。
督、その際、一定の評価に対する 自ら学習―労働目標を立て、反省し、実現し責任を持つ。
責任と労働ないし学習活動の改
善を引き受ける
複雑で、専門的で、変化する学習領域ないし職業活動において、自立して計画を立て、包括的で
専門的な課題を設定するコンピテンツ。
予想できない変化が生じる労働
異質なグループ内でも、労働課程を協力的に遂行する計画を立てて組み立て、他者を指導し根
ないし学習文脈における指導と監
拠ある学習相談で支える。
督
専門を超えた複合的な状況をも構造化し、目標を明確にして、相手方に関連付けて表現する。
相手方の興味と要求を前もって読み取り、考慮する。
自他の業績の点検と発展
自己および他者によって設定された学習―労働目標を反省、評価し自己統制して追求し、責任を
持ち、チームで労働課程の結果を引き出す。
包括的専門的な課題―問題設定の立案、加工、評価ならびに科学的専門ないし職業活動領域
複雑な専門的ないし職業的な活 でのプロセスの、責任を持ったコントロールのコンピテンツ。要求の構造は、複合性とたびたびの
動ないしプロジェクトの指導、なら 変更によって特徴づけられる。
びに予想不可能な労働ないし学
エキスパートのチームで責任を持って働く。
習文脈における決定責任を引き
あるいは
受ける
グループないし組織を責任を持って指導する。
他者の専門上の発達を指導し、前もって予想してチームでの問題を回避する。
個人ならびにグループの職業上
専門家に対して、複雑で専門に関する問題と解決策を議論し、発展させる。
の責任を引き受ける
学習及び労働プロセスの目標を定め、反省し評価し、学習及び労働プロセスを自立して持続的に
形成する。
新たな複合的な課題―問題設定を行うコンピテンツ並びにひとつの学術的専門あるいは戦略志
新たな戦略的視座を必要とする
向的な職業活動領域におけるプロセスの自己責任を持った統制のコンピテンツ。要求の構造は、
複雑で予測不可能な労働ないし
しばしばそして予測不可能な変化によって、特徴づけられる。
学習の文脈の指導と形成
グループないし組織を複雑な課題設定に中で、責任を持って指導し、その活動成果を代表する。
他者の専門上の発達を目的的に促進する。
専門知識と職業実践への貢献、
特殊領域および領域を超えたディスカッションを行う。
および/またはチームの戦略的指
新たな応用的ないし研究志向的な課題のために、可能な社会的、経済的、文化的な影響を考慮
導に対する責任を引き受ける
して目標を定め、適切な手段を用い、そのための知識を開発する
ある学術的な専門における研究上の知識を獲得するコンピテンツ、あるいは職業活動領域にお
ける革新的な解決と手法を発展させるコンピテンツ。要求構造は、新たな種類の不明瞭な問題状
専門的な権威、革新能力、自立
況によって特徴づけられる。
性、学問的及び職業的統合性、
組織ないしグループを、複雑ないし学際的な課題設定を、責任を持って指導するその際、その潜
新たな考えの発展あるいは研究 在能力を活性化する。
を含む指導的な労働ないし学習
他者の専門上の発展を、持続的に目的的に促進する。
の文脈での手法の発展に際して 専門を超えて議論を行い、特殊専門での議論においては革新的な寄与を行い、これは国際的な
の持続的な関与
文脈でも行われる。
新たな複合的な応用的ないし研究志向的な課題のために、可能な社会的、経済的、文化的な影
響を考慮して目標を定め、適切な手段を選び、新たな考えとプロセスを発展させる。
労働ないし学習課題の処理につ
いての責任を引き受ける
3
4
5
6
7
8
出典:Bundesministerium fuer Bildung und Forschung.:Deutscher EQR-Referenzierungsbericht,2013.5.8, S.85-90. ※仮訳:佐々木英一氏7
アメリカにおける全国職業能力評価制度
~NSS(全国スキルスタンダード)の顛末~
1.NSS(National Skill Standards)制度の概要
(1) 導入の発端
「2000 年の目標:アメリカの教育法」
(The Goals 2000: Educate America Act (P.L. 103-227)、1994 年 3 月 31 日成立)
、タイトル V
 全米レベルのスキルスタンダードを推進する組織として「全国スキルスタンダード委員会(NSSB: National Skill Standards Board)
」の設置を規定し、
同時に、NSSB の創設を目的とする「全国スキルスタンダード法(NSSA: National Skill Standards Act)
」も成立させた。
 NSSA は、1999 年 9 月 30 日に廃止される(Sec. 509)時限立法(延長の但し書き有り)
、NSSB も同日に終了する(Sec. 503 (j))時限組織であることが
当初から規定されていた。
※NSSB は 3 年 9 ヶ月延長されて 2003 年 6 月に連邦政府機関としての役割を終了し、同時に NSSA も廃止された。
(2) 背景
①「ニュー・エコノミー」の要求
NSSB は、
「ニュー・エコノミー」
(技術的変化、国際化、規制緩和といった潮流の相互作用によってもたらされた新たな経済環境)では組織外部で築かれる
キャリアルートがあらゆる業界、外部労働市場にわたって確立される必要があると説く。
「オールド・エコノミー」
(ニュー・エコノミー以前)において内部
労働市場の範囲内で行われてきた従業員教育の仕組みや組織が衰退しているとみた。
②スキルギャップ
米国の若者の半数以上が学校を卒業しても、仕事を見つけそれを維持するのに必要な基礎的技能を持っていないという(America’s Choice,1985)
。企業の
60%が労働者の基礎数学能力の不足を、50%以上が労働者の基礎理解力および文章力の不足を、63%が時間を守る、一日しっかり仕事をするといったような
職業準備能力の欠如を訴えていた。在職労働者についても、従業員の 20%はその仕事ぶりが充分でない(Workforce 2000,1987)
。
③不安定な職業準備
80 年代から 90 年代にかけて、いろいろな業界でさまざまな認証・評価に関するプログラムや仕組みが作られ、それぞれがバラバラな形で存在するという
状況がみられた。また、様々な教育訓練供給システムによって行われる職業準備プログラムは、地理的エリアまたは管轄区が同じであるにもかかわらず、同
じ職業を教えるための学習項目、知識、スキル内容、求める習得レベルが著しく異なっていた。結果として、生徒・訓練生は、同じ職業の中でも大幅に異な
る資格を保有した求職者となり、求職者と仕事とのマッチングは不確かで費用のかかる不規則な作業となった。
(3) 目的
①米国における労働者のスキルを増強するために、国家戦略の基礎として役立つこと
②生産性、経済成長および米国の経済競争力の向上をもたらすこと
③国家が、世界で最も熟練した第一線の現場労働者をも対象とした高度なスキル、高品質、高度な実践力をもった職業能力の開発を保証するため
④就業に必要なスキルに関する情報を産業界から訓練プロバイダーおよび求職者に提供する媒体として
⑤雇用主が、求職者のスキル・レベルを評価するのを支援するため、また現在の従業員に対する訓練を支援するため
⑥労働団体が、携帯可能(地理的、産業的な固定的制約から解放されるという意味)な証明書およびスキルを保有する労働者の雇用保障を増強するため
⑦労働者が、失業を防ぐためのスキル認証の獲得、キャリア向上の追求、労働力として再雇用可能な能力の増強のために用いる
⑧生徒(学生)および未就業者が、効果的に高給な仕事に就くために必要とされるスキル・レベルおよび能力を判断するため
⑨訓練プロバイダーおよび教育者が、自ら提供すべき適切な訓練サービスを決定するため
⑩教育・訓練の提供者が自ら提供する教育・訓練プログラムに対して公的支出の正当性を申請した際に、行政が公的資金による教育・訓練が受講者のスキ
ル・レベルを満たすのに貢献しているかを評価するため
⑪「ハイ・パフォーマンスな組織」*への移行を促進するため
⑫非伝統的就労への女性参入に対する障害の撤廃を含む、マイノリティと女性のための雇用機会を増やすため
⑬学校から仕事への移行プログラム、中等教育・中等後教育の職業・技術教育、職業訓練プログラムを含む、労働者に必要なスキルを増強する国家戦略の
他の構成要素との連携を促進するため
*品質と顧客サービスを高く評価する企業で、従来よりも新しい技術を扱い、より大きな責任を負う高度に熟練した現場第一線の労働力が起業の目的達成のために重要であると
信じる企業
(4) 主要用語の定義
「スキルスタンダード(skill standards)
」
NSSA 、Sec.508( 定義)
:
「職業群において、成功裏に業務に関連する職務を遂行するのに必要な知識と能力(competence)の水準を明記する基準を意
味する」
NSSB:
「個人が、職場で職務を遂行するのに必要な知識・スキル・能力を明確にする、職業能力の明細であり、個人が同じ職業群(occupational cluster)
内または同じ産業分野(industry sector)内の特定の仕事(job)において十分な成果を上げるために知っておくべきこと、出来なければならないことを大
まかに示すものである」
(National Skill Standards Boards(2001), An Introduction to the Use of Skill Standards and Certifications in WIA Programs,
p.7)
「職業認証(occupational certifications)
」
「職業認証(occupational certifications)は、適切な評価手順を通して立証し、関連する資格認定書の審査を通して確認し、所定の知識・スキルの習熟度を見極
める、独立した最終的な結果を出すプロセスである。認証は、ある1つの職業群、または、1つの産業分野の範囲内で、ある仕事をするのに必要とされる
個人の知識・スキル資格の達成・所持を証明し、また公認するものである。認証によって、個人の専門性を、求められる習熟レベルに達しているかどうかの
産業界主導の具体的な証拠を、公平に、第 3 者によって実証するものである」
(National Skill Standards Boards(2001),p.8)
2.NSSを推進する仕組み
(1) NSSB(National Skill Standards Board)
 全米レベルのスキルスタンダードを推進する組織として設置(「2000 年の目標:アメリカの教育法」
、タイトル V)
 「労働力のスキルを高めるための全国的な戦略の礎石」
、
「スキルスタンダードの自主的な全国制度の開発と適用を鼓舞する触媒」
(NSSA で規定する役
割)
(2) 自主的パートナーシップ(Voluntary Partnership)
 NSSB は、産業分野を 15 に区分し、各産業分野でスキルスタンダードのための組織として「自主的パートナーシップ」の結成を促進した。
 実際の自主的パートナーシップは、雇用主団体の代表、組織労働者、政府、従業員団体、市民権およびコミュニティを基盤とする団体、教育訓練機関な
どから構成される。
 NSSB は自主的パートナーシップに対して財政援助と開発活動の監督を担う。
NSSのための 15 の産業区分
○農林水産業
○公的管理・法律・保安サービス
○ビジネス・管理サービス
○レストラン・宿泊・接客・観光・娯楽・レクリエーション
○建設
○小売・卸売・不動産・個人向けサービス
○教育・訓練
○科学技術サービス
○金融・保険
○通信・コンピュータ・芸術・興業・情報
○健康・人材サービス
○運送
○製造・据付・修理
○公益事業・環境・廃棄物管理
○鉱業
○自主的パートナーシップの事例
 E&TVP (Education & training Voluntary Partnership)
1999 年 10 月に認定。教育訓練分野のフロントラインワーカー、すなわち保育者、指導・教育助手、企業内訓練トレーナーに関するスキルスタンダード
の開発を重要課題とする。
 HTF(Hospitality & Tourism Futures)
飲食業、宿泊業、旅行・観光業、レクレーション・娯楽業などの産業分野の 200 以上の組織・団体によって 2001 年に結成。
 MSSC (Manufacturing Skill Standards Council)
製造業分野の自主的パートナーシップ。NSSB の認定は 1998 年 3 月。
 S&SVP (Sales & Service Voluntary Partnership)
販売・サービス業分野。自主的パートナーシップの母体となる活動は、NSSB の設立より早く 1992 年から開始し、1998 年 6 月に認定。
 ITC(Information Communications Technology (ICT) Voluntary Partnership)
情報・通信産業分野。2002 年 3 月に認定。パートナーシップ結成は「CompTIA」を母体とし、この分野のリーディング・カンパニーである Cisco, Compaq,
IBM, Intel, Lucent Technologies などからの支援も得ていた。
○自主的パートナーシップの共通点
 会員団体・組織の代表から構成される理事会あるいは評議会といった議決機関を設置し、その下に6つほどの小委員会を設置するという組織構成、また各
小委員会の機能分担もほぼ同様である。
 パートナーシップ結成に際して、コアとなる既存団体(S&SVP における NRF 財団や ITC における CompTIA)
。
 自主的パートナーシップの認定は NSSB からの資金援助を伴うが、各自主的パートナーシップでは財政的自立のための資金基盤の確立を図ろうとしてい
た(NSSB から受けることができる資金的支援は、スタンダードの開発とシステムの立ち上げに必要な期間に限定)
。
 事務局オフィスがワシントン DC に置かれていた(上部団体や NSSB との連携における利便性のため?)
。
(3) NSSのための基準構造概念
NSSB は、スキルスタンダードを「core」
、
「concentration」
、
「specialty certification」の 3 つのレベルに分けてその開発を推進した。
名 称
概
要
ある1つの産業分野においてすべての現場第一線の仕事に共通か
中核的スキルスタンダード
つ必須である知識、技能、能力。このスキルスタンダードを習得す
(Core Skill Standards)
ることで、個人はその分野全体にわたって働くための幅広い基礎的
導入部分を得ることができる
凝集的スキルスタンダード
(Concentration Skill
Standards)
現場第一線での責務の主な領域や、関連する仕事や職業を典型的に
網羅したその集まりに必要となる知識、技能、能力。このスキルス
タンダードを習得することで、個人はその分野全体にわたって遂行
されている現場第一線の仕事の特定領域の専門的知識・技術を得る
ことができる
ある特定の仕事や職業、個々の産業、または特定の企業に固有の知
識、技能、能力。単一の仕事、職業、産業または企業に固有のスキ
ルを特定することで、専門的スキルスタンダードが中核的スキルス
専門的スキルスタンダード
(Specialty Skill Standards)
タンダードと凝集的スキルスタンダードで埋められなかった部分
を満たすことができる。中核的・凝集的スキルスタンダードは、異
なる産業や仕事にわたって共通となるスキルに焦点をあて、単一の
仕事、職業、産業または企業のみに関わるスキルは網羅しない。そ
の網羅しない部分が、専門的基準の役割である。
3.NSSに関する考察とわが国へのインプリケーション
NSS における課題として以下が考えられる。
①州や業界による膨大な数の職業認証、資格が存在し、その結果極度に複雑なシステムになっていることを改善するための NSS による「統合化」という
課題。
②人が州を超えて移動する場合、認証を取り直さなければならないといったように、認証、資格のポータビリティという問題を抱えていた。そこで、NSS
システムによる「全米レベルでのポータビリティ」という課題。
③ドイツのような詳細で複雑なシステムでは変化への対応が迅速にできないことから、
「柔軟性の確保」の課題。
④NSS システムでは 15 の産業区分によるスキルスタンダードのクラスターを設定したことにより、スキルスタンダードの「カバー率(カバレッジ)
」とい
う数量的な課題が生じた。
これらの課題に対する目標の達成度について検討してみる。
 「統合化」については、NSSB は、統合化について大きく 2 つの対象、すなわち産業界と州・地域の 2 つの対象にはたらきかけを行ってきた。産業界に対
するはたらきかけの強力な“切り札”とした自主的パートナーシップは、15 分野のうち 10 分野でまったくの手つかず状態であり、意図した「統合化」にはほ
ど遠い状況といえる。プロジェクトの終盤になって、NSSB は産業界ベースでつくられたスキルスタンダードおよび認証を州や地域で利用できるよう支援
し、結果としてそれらを NSSB の全国的なシステムの一部として位置づけることになるという「統合化」をカバーするような現実的路線「22 段階プロセス
(22-Step Process)
」を案出した。一方、州・地域を対象として、
「州との取組戦略」
(NSSB State Engagement Strategy)
、地域に対しては WIA(労働
力投資法)プログラムとの一体化という戦略を立てた。これも 22 段階プロセスと同様、当初からではなく、後出し、後追いといえる。
 「ポータビリティ」という目標課題については、いずれの産業分野でもスキルスタンダードと認証は、実行段階にまで進展していないために、
「ポータビリ
ティ」という性能に関する評価(目標達成度)を下すことはできない。製造業と小売りサービスの分野でようやくスキルスタンダードがつくられたばかり
で、しかも Concentration のスキルスタンダードのみであった。スキルスタンダードに基づく評価および認証が実施されないことにはポータビリティに関
する確証を得ることはできない。
 「柔軟性」については、15 の分野に区分された産業分野が広範すぎて、区分された産業内でのスキルの特定において明瞭性に欠けるとの批評があった。た
とえば、
「真ん中のレベル(凝集的スキルスタンダード)は雇用主にとってあまり使えるものではないという感じがする。なぜなら、あまりに一般化し過ぎ
て汎用しすぎる感じがするからだ。真ん中のところで柔軟にしようとしていたのが、それが汎用し過ぎて有用性がなくなる」
(ベイリー(Thomas Bailey)
教授、コロンビア大学教育経済研究所)
 数量的課題については、NSSB の戦略・理念の要といえる自主的パートナーシップの結成が 5 分野に留まった。目標達成という印象度では、労働市場にお
ける 5 分野の占める割合ではなく、やはり「15 分の 5」という数量が示す意味の方が大きい。National Skill Standards Act が成立し、NSSB が設置され
て約 8 年経過した時点で、対費用の面での成果、費やした時間の面での成果でも満足できるものではないという評価が大勢を占めていた。
わが国へのインプリケーション
 NSS システムの対象は、結果的にはフロントラインワーカー、あるいはエントリーレベルであり、いわばハイスクール卒業レベルが中心ということになる。
スキルスタンダードづくりに積極的な分野が製造業分野や小売サービス分野であるのは、高卒エントリーレベルの教育・採用という領域・課題が大きいか
らであろう。
 自主的パートナーシップの一つ HTF によれば、スタンダードづくりの難しさは技術的な問題よりも政治的な調整であるという。既存の企業内部のスタンダ
ードや認証制度(特に既得利益を持つ存在)との調整に時間と労力を費やさなければならないことである。また、州の保守層には NSS のような全国的なシ
ステムに対する反発があり、常にそうした摩擦と緊張感があるという。
 「既存のローカルな認証・資格システムは各州・地域が必要とするスキルを反映しニーズに対応しているものであり、複雑でかなり詳細ではあるが分散化
された状況こそが逆に柔軟性のあるシステムである」
(ベイリー教授)
 「既存の認証やスタンダードは常に変わりやすいものであると理解した上で、これらに関わる組織(雇用主、教育機関、認証機関等)と緊密に連携して全
米レベルで徐々に改善していくことができるのが NSSB ではないだろうか。こうした役割を担うことの方がすべて新しくシステムを作り出すことよりもも
っと有効な時間と人材のエネルギーの有効な使い方ではないだろうか。ましてや、CompTIA が行っている IT 分野の認証のような既にできあがっていてダ
イナミックでしかもしっかりしたものは、むしろ NSS システムの枠組みに縛り付けることは正しくない」
(ベイリー教授)
 幅広い産業分野を全米レベルでカバーするという当初の構想は頓挫したが、2013 年現在、初期の自主的パートナーシップである MSSC などは活動を継続
している。また、NSS システムにおける自主的パートナーシップのフォーマットは、たとえば、ワシントン州のスキルスタンダードに活かされている(関
連 Web サイト:http://www.learningconnections.org/ss/energy.html)
 NSSB を時限組織、NSSA を時限立法とした連邦政府には、当初から職業の全国的なスキルスタンダードに関する政府の役割を最小限にし、実施の主体を
産業界もしくは地域に置こうとする意図があったと考えられる。連邦政府の役割は、産業界における自主的な職業能力評価を動かすエンジンである NSS シ
ステムの開発とこれを始動させるスターターである。自主的な職業能力評価が動き始めた後は政府が関与しないというシステムは、新自由主義あるいは市
場原理主義の思潮における方法論といえる。
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