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公共調達における競争性の徹底を目指して

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公共調達における競争性の徹底を目指して
11−03−007
082−00−A
公共調達における競争性の徹底を目指して
−公共調達と競争政策に関する研究会報告−
平成15年11月
公共調達と競争政策に関する研究会
はじめに
昨今の入札談合に対する社会的批判の高まりを背景として,「公共工事の入
札及び契約の適正化の促進に関する法律」が平成13年4月に施行され,国や
地方公共団体等の行う公共工事の入札・契約について,透明性の確保,公正な
競争の促進等の観点からの取組が進んでいる。また,近年,公共調達において
発注官庁の職員が入札談合に関与している事例が発生しており,発注機関の職
員の関与を防止するため,平成15年1月,「入札談合等関与行為の排除及び
防止に関する法律」が施行された。
「公共調達と競争政策に関する研究会」は,平成15年6月以降,計7回の
会合を開催し,公共調達においても民間における調達と同様に,「より安くよ
り良い調達」,すなわち「(一定のコストに対して)最も価値の高い調達」が
行われることが必要であるとの基本的考え方に基づき,公共調達における一層
競争的な環境の実現と,入札談合の効果的な防止を図るため,公共調達の入
札・契約方法等に関するさまざまな課題を抽出し,その改善のための方策につ
いて検討を行ってきた。
今般,当研究会の検討結果を取りまとめ,国,地方において今後取り組むべ
き施策について提言を行うものである。提言の内容は多岐にわたっており,ま
た,提言の実現のためには,現行の入札・契約制度の運用のみならず,制度的
な対応を必要とするものも含んでいるが,本提言を踏まえて,今後,公共調達
における競争性の徹底を目指した取組が具体的に進展していくことを期待す
るものである。
○
公共調達と競争政策に関する研究会 会員名簿
座長
金子 晃
淺沼 健一
有川 博
板脇 能衍
市川 正美
碓井 光明
金本 良嗣
神田 秀樹
佐藤 清彦
鈴木 一
高橋 敬
永岡
畠中
村上
文庸
薫里
政博
(オブザーバー)
宮川 正
日下部 聡
西脇 隆俊
楠 茂樹
○
慶應義塾大学名誉教授
(株)淺沼組取締役社長
国家公務員共済組合連合会常務理事
大阪府建築都市部副理事
大成建設(株)取締役副社長
東京大学大学院法学政治学研究科教授
東京大学大学院経済学研究科教授
東京大学大学院法学政治学研究科教授
横須賀市財政部契約課長
(財)建設経済研究所常務理事
(株)本田技研工業購買二部一般購買ブロッ
クリーダー
(株)日本経済新聞社論説委員
政策研究大学院大学助教授
一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授
(五十音順 敬称略)
内閣府総合規制改革会議事務室長
経済産業省経済産業政策局産業組織課長
国土交通省総合政策局建設業課長
京都産業大学法学部講師
検討の経緯
開催回
第1回
第2回
第3回
第4回
第5回
第6回
第7回
開催日
議
題
平成 15 年 公共調達と競争政策の在り方に関する論点について
6月3日
6 月 24 日 (1) 本研究会の主要論点について
(2) 地方公共団体の入札・契約の在り方に関するアン
ケート調査結果
7 月 24 日 入札・契約における競争性の確保について
7 月 31 日 地域振興・中小企業の受注機会拡大のための発注方法
と競争性の確保について
9 月 2 日 (1) 入札談合に対する発注者の取組について
(2) 米欧における公共調達制度について
10 月 7 日 本研究会の取りまとめに向けて
11 月 7 日 報告書(案)について
目
次
頁
第一部 公共調達制度の現状と課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
1 公共調達制度の現状・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
(1) 公共調達とは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
(2) 公共調達と入札談合・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
(3) 入札談合の背景と公共調達制度・・・・・・・・・・・・・・・2
2 入札談合の排除と公共調達制度改革の進展・・・・・・・・・・・・・3
(1) 国・地方公共団体等による取組の進展・・・・・・・・・・・・3
ア 公共工事入札・契約適正化法等の制定・・・・・・・・・・・・3
イ 国・地方公共団体等における取組の進展・・・・・・・・・・・3
(2) 会計検査院の取組・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
(3) 公正取引委員会の取組・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
ア 公共調達制度に関する公正取引委員会の最近の主な取組・・・・4
イ 独占禁止法等の厳正な運用・・・・・・・・・・・・・・・・・5
3 公共調達制度の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
(1) 現行の公共調達制度の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・5
(2) 公共調達の参加資格・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
ア 欠格要件・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
イ 積極要件・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
(3) 発注方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
ア 一般競争入札・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
イ 指名競争入札・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
ウ 公募型指名競争入札・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
エ 随意契約・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
(4) 地域振興・中小企業の受注機会拡大のための発注方法・・・・・8
ア 総論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
イ 地域要件・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
ウ 共同企業体・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
エ 分割発注・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
オ ランク制・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
カ 地元業者の下請使用(地元産品の利用)・・・・・・・・・・・11
(5) 契約者の選定基準・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
ア 最低価格自動落札方式・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
イ 総合評価落札方式・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
(6)
入札・契約における発注者の設計・管理体制と民間の技術力
の活用・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
ア CM(Construction Management)方式・・・・・・・・・・・13
イ 設計・施工一括発注方式・・・・・・・・・・・・・・・・・14
ウ 入札時 VE(Value Engineering)方式・・・・・・・・・・・14
(7) 入札・契約における競争性確保のための発注者の監視体制・・14
ア 契約者選定手続の適正な監視・・・・・・・・・・・・・・・14
イ 公正・中立な苦情処理・・・・・・・・・・・・・・・・・・15
4 入札談合に対する発注者の取組・・・・・・・・・・・・・・・・・15
(1) 入札談合に対する発注者の探知・・・・・・・・・・・・・・15
(2) 入札談合に対する発注者措置(指名停止・損害賠償)
・・・・・15
ア 指名停止・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15
イ 損害賠償・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16
第二部 欧米における公共調達制度の概要・・・・・・・・・・・・・・17
1 米国・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17
(1)1984年「契約における競争法」の制定による競争性の徹底・17
ア 背景・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17
イ 「完全かつ公開の競争」の原則に基づく入札・契約方式・・・17
ウ 地域振興・中小企業の受注機会拡大のための施策・・・・・・18
エ 監視体制・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
オ 不服申立制度・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
カ 反トラスト法違反行為に対する厳正な対処・・・・・・・・・19
(2) 1994年の公共調達の改革による発注者の裁量性の拡大・・19
2 欧州・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19
(1) EU(EC)指令の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・19
(2) 契約者選定基準・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20
(3) 予定価格・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20
(4) 地域振興・中小企業の受注機会拡大のための方策・・・・・・20
(5) 監視体制・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20
(6) 不服申立制度・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21
第三部 公共調達における競争性の徹底を目指して(提言)
・・・・・・22
1 基本的な視点・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22
(1) 競争性の確保の必要性・・・・・・・・・・・・・・・・・・22
(2) 現状の問題点・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22
ア 入札・契約における競争の実効性確保・・・・・・・・・・・22
イ 入札談合に対する発注者としての厳正な対処・・・・・・・・22
(3)
「競争」の在り方の見直し・・・・・・・・・・・・・・・・23
2 競争に付すべき案件についての入札方式の在り方・・・・・・・・・23
(1) 競争性の高い一般競争入札の適用範囲の拡大と適切な参加
資格の設定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23
(2) 指名競争入札の対象範囲の限定と要件の明確化・・・・・・・24
3 中小企業の受注機会拡大・地域振興のための発注方法等と競争性
の確保・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24
(1) 競争性の確保の必要性・・・・・・・・・・・・・・・・・・24
(2) 中小企業の受注機会拡大・地域振興のための個別の方策と
競争性の確保・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25
ア 地域要件の設定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25
イ 共同企業体・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26
ウ 分割発注,ランク制・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26
エ 地方公共団体による公共調達における地元業者の下請使用や
地元産品の利用の要請・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27
4 複数年度継続案件に対する国及び地方公共団体の債務負担行為の
活用・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27
5 随意契約の取扱い・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28
6 価格以外の要素も含めた多様な評価基準に基づく契約者選定方式の
必要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28
(1) 競争入札における総合評価方式の活用の促進・・・・・・・・28
(2) 会計法令における現在の枠組・・・・・・・・・・・・・・・29
(3) 今後の対応・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29
(4) 競争的交渉方式の導入の検討・・・・・・・・・・・・・・・30
7 民間の技術力の活用・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31
(1) 設計段階からの事業者の関与の明確化・・・・・・・・・・・31
(2) 入札段階・施工段階における事業者からの技術提案
の受け付け・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31
8 不服申立制度の整備・拡充・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31
(1) 不服申立制度の整備・検討の必要・・・・・・・・・・・・・31
(2) 今後の対応・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・32
9 品質の確保・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33
(1) ダンピング防止・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33
(2) 入札ボンド制度の導入・・・・・・・・・・・・・・・・・・33
10 発注担当部局に対するコスト削減のためのインセンティブの付与・33
(1) インセンティブの付与の必要性・・・・・・・・・・・・・・33
(2) 今後の対応・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34
11 入札談合に対する取組・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34
(1) 談合情報に対する発注機関の対応・・・・・・・・・・・・・34
(2) いわゆる官製談合の防止・・・・・・・・・・・・・・・・・35
(3) 公正取引委員会との連携の強化・・・・・・・・・・・・・・35
(4) 入札談合に対する発注者における適切な対処・・・・・・・・35
第一部
公共調達制度の現状と課題
1 公共調達制度の現状
(1) 公共調達とは
民間企業が事業に必要なさまざまな物品・役務を市場から調達するように,
国・地方公共団体等も,職務遂行に必要なさまざまな物品・役務を日々市場
から調達している。また,道路,橋梁等の社会資本を整備して国民に提供す
る必要もある。
国・地方公共団体等による調達(公共調達)においては,支出に当たって,
毎年度,議会の議決を得ることが必要とされているほか,調達手続について
は,会計法令1に規定されており,公共調達は,公正性と経済性を確保するた
め,競争入札によることが原則とされている。
(2)
公共調達と入札談合
公共調達の対象品目は多岐にわたるが,中でも公共工事においては,入札
談合等の不祥事が頻発しており,各発注者において改善策が講じられてきた。
平成13年4月には,国,地方公共団体等の行う公共工事の入札・契約の適
正化を促進することにより,公共工事に対する国民の信頼の確保等を目的と
した入札契約適正化法2が施行され,同法に基づき,国,地方公共団体等が統
一的・整合的に取り組むべきガイドライン(適正化指針)3が定められ,各発
注者において運用が進められている。
しかしながら,同法施行後も必ずしも入札談合等不正行為が減少している
わけではない。また,同法の運用が徹底しないなどの指摘もある。公正取引
委員会による入札談合事件の処理状況(第1図,第2図参照)をみても,同
法施行後必ずしも顕著な減少傾向にあるとはいい難く,法的措置件数に占め
る入札談合事件の比率も依然高率である。
入札談合は,カルテルの典型事例であり,最も悪質な独占禁止法違反行為
の一つであるばかりでなく,競争的契約の実質を失わしめ,予算の適正な執
行及び事務事業の適切な実施を阻害し,会計法令上も問題となる行為であり,
その排除・防止は各発注者においても重要な責務である。
国等の調達手続については会計法(昭和 22 年 3 月 31 日法律第 35 号)等において,地方公共
団体等の調達手続については地方自治法(昭和 22 年 4 月 17 日法律第 67 号)等において,それ
ぞれ規定されている。
2 「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」(平成 12 年 11 月 27 日法律第 127 号)
3 「公共工事の入札及び契約の適正化を図るための措置に関する指針」(平成 13 年 3 月 9 日閣議
決定)
1
1
〔第1図〕
〔第2図〕
課徴金額等の推移(入札談合に係るもの)
法的措置件数等の数の推移
件
入札談合
70
その他
919
908
60
752
577
560
50
40
5
30
10
20
10
17
7
9
18
8
33
30
10
0
10年度
11年度
12年度
名
対象事業者等の数
13年度
億円
1000
100
800
90
600
80
400
70
200
60
0
50
-200
40
-400
30
-600
20
-800
10
-1000
0
14年度
課徴金額
名
対象事業者数
1000
800
676
570
500
400
308
240
200
0
40.2
31.0
600
29.2
29.0
17.2
-200
-400
-600
-800
-1000
10年度 11年度 12年度 13年度 14年度
注)対象事業者数は入札談合に係るもの。事業者
等の「等」は事業者団体を表す。
(3) 入札談合の背景と公共調達制度
我が国において入札談合が根強く残る理由として,以下のような指摘がな
されている。
①いわゆる「天の声」による談合が少なくない。
②談合の抑止力が不十分。
③現行の公共調達の制度・運用は,談合を招きやすいものとなっている。
このうち,①については,入札談合等関与行為防止法4により制度的措置が
講じられた。また,②については,平成15年10月,公正取引委員会が開
催した独占禁止法研究会の報告書が取りまとめられ,独占禁止法の禁止規定
の実効性を確保するために課徴金制度を見直すこと等の提言が行われたと
ころである5。
③については,入札契約適正化法及び適正化指針の制定により,公共工事
の入札・契約の適正化のための取組が進められている。しかし,こうした取
組は現行制度を前提とした上で運用の適正化等を図るものであり,公共工事
の発注をはじめとする公共調達の適正化については,より根本的な課題とし
て,例えば現在の競争入札制度が価格による評価を原則としていることなど,
会計制度やその運用についての見直しを求める意見もある。
4
5
「入札談合等関与行為の排除及び防止に関する法律」(平成 14 年 7 月 31 日法律第 101 号)
「独占禁止法研究会報告書」(平成 15 年 10 月 28 日公表)
2
2 入札談合の排除と公共調達制度改革の進展
(1) 国・地方公共団体等による取組の進展
ア 公共工事入札・契約適正化法等の制定
入札契約適正化法は,国,地方公共団体等の行う公共工事の入札・契
約について,透明性の確保,公正な競争の促進,適正な施行の確保及び
不正行為の排除の徹底を基本原則として,発注者に対して,入札・契約
にかかる情報の公表,丸投げの全面的禁止等施行体制の適正化,不正事
実(談合等)の公正取引委員会等への通知等を義務付けている。また,
同法において,国は,各発注者が適正化指針に従って講じた措置の状況
をフォローアップして公表することとされている。
また,適正化指針では,発注者が取り組むべき事項として,入札・契
約手続に関する入札監視委員会等の第三者機関の設置,苦情処理の方策
の実施,一般競争入札等の適切な実施等の入札・契約方法の改善,不良・
不適格業者の排除等を掲げている。
イ
国・地方公共団体等における取組の進展
このほか,国・地方公共団体において,次のような公共調達制度改革の
取組が進められている。
国においては,国土交通省は,平成14年3月,入札制度の運用改善策
として,一般競争入札等の試行拡大,地方公共団体における電子入札導入
の促進,随意契約ガイドラインの充実等を内容とした「入札契約適正化徹
底方策検討委員会報告」を公表した。また,平成15年4月には,同報告
の実施状況を検証しつつ,地方公共団体等における情報公表の促進のため
のマニュアルの策定,混合入札の促進等を内容とした「入札契約適正化の
徹底のための当面の方策について(平成15年度)」を公表した。
地方公共団体においても,一般競争入札の対象拡大,地域要件の緩和,
ランク制の見直し,損害賠償予定条項6の契約書への明記等様々な取組が行
われている。
(2) 会計検査院の取組
会計検査院では,平成4年度の検査報告において,「中央省庁発注の印刷
物の調達について」を取りまとめるなど,契約方式の選定,競争契約におけ
る資格審査や指名の適否,契約履行状況の把握とそれに基づく指名・契約方
式の見直しの有無といった視点からの検査が実施されている。その後におい
ても,建設・運輸関係の公共事業における契約制度の運用状況の分析(平成
9年度報告),老人福祉施設整備に係る契約事務の実施状況の分析(平成1
6
「第一部 4(2)イ 損害賠償」(p16)参照
3
0年度報告),農業農村整備事業に係る公共事業における入札契約事務の運
用状況の分析(平成12年度報告)等7,会計検査の立場から,国等の契約事
務の適正化に向けて積極的な取組が進められている。
(3) 公正取引委員会の取組
ア 公共調達制度に関する公正取引委員会の最近の主な取組
公正取引委員会は,これまでも,国・地方公共団体の入札・契約制度等
に関する調査等,競争政策の観点から,公共調達制度及びその運用改善に
向けた取組を行っている。最近の主な取組は以下のとおりである。
(ア) 競争政策の観点からみた地方公共団体による規制・入札等について
(調査報告)(平成11年)
公正取引委員会は,地方公共団体が行っている規制及び入札,契約手
続に関して実態調査等を行い,「競争政策の観点からみた地方公共団体に
よる規制・入札等について」を取りまとめて公表し (平成11年6月28
日),同報告書において,事業者団体への一括発注,地元企業優先発注等
について競争政策上の問題点を指摘している。
(イ) 地域要件及び分割発注に係る建設省(当時)との共同要請(平成11
年)
公正取引委員会は,平成11年12月,建設省(当時)と連名で,都道
府県知事に対し,「行き過ぎた地域要件の設定や過度の分割発注は,入
札に参加するメンバーが固定化されること等を通じて入札談合を誘発・
助長するおそれがあるなど,市場における競争が制限・阻害されること
等につながるため,競争の確保に十分配慮すること」を要請した。
(ウ) 国・地方公共団体における入札・契約制度改革の取組について(調査
報告)(平成14年)
公正取引委員会は,公共事業の入札・契約を対象として地方公共団体
からヒアリング調査等を実施し,国及び地方公共団体の入札・契約制度
改革の状況及び予定価格の事前公表等主な論点に関する考え方について
「入札談合防止に向けた国・地方公共団体における入札・契約制度改革の
取組について」を取りまとめて公表した(平成14年6月27日)。
7
個別の検査報告掲記事例としては,外務省の物品・役務の調達に係る契約事務処理体制にお
いて透明性や競争性が確保されていない事態(平成 12 年度報告),防衛庁の練習機の調達,航空
燃料の調達や,艦船の検査・修理にかかる契約事務において透明性や競争性が十分確保されて
いない事態(平成 9,10,12 年度報告),郵政省の郵便物区分機の調達に係る契約事務処理に
おいて競争性が十分確保されていない事態(平成 9 年度報告)等についてのものがある。また,
地方公共団体等が国の補助事業を実施する際に,最低制限価格制度の趣旨を逸脱するような高
額の最低制限価格を設定し,契約の競争の利益が阻害されている結果になっているケースを多
数指摘し,補助金を交付している各省庁において改善が図られている。
4
イ
独占禁止法等の厳正な運用
公正取引委員会は,事業者による独占禁止法違反行為に対して厳正に対
処するとともに,同法違反行為への発注者側の関与,発注方法等が入札談
合を誘発・助長していたなどの状況が認められた場合には,違反行為の排
除と併せ,発注者に対しても所要の改善を要請してきている。
このような発注者に対する要請は,従来,事実上の要請にとどまるもの
であったが,平成15年1月に施行された入札談合等関与行為防止法によ
り,入札談合等に発注者の関与が認められた場合には,発注者に対して同
法に基づく改善措置要求を行えるようになった8。
3 公共調達制度の概要
(1) 現行の公共調達制度の概要
我が国の公共調達制度は,国等については会計法及び予決令9において,地
方公共団体等については地方自治法及び同法施行令10においてそれぞれ定め
られている。
公共調達制度は,国・地方公共団体のいずれにおいても,制度上は,価格
を評価基準とした一般競争入札が原則とされ,一定の場合に指名競争入札又
は随意契約を行うことができることとされている。このほか,国・地方公共
団体等が一定額以上の産品・サービスを調達する場合には,WTO 政府調達
協定に則った調達が義務付けられている11 12。
また,公共調達において,契約担当官等は,競争入札の実施に当たり,仕
様書・設計書等から予定価格を定めなければならず,予定価格を超える価格
で入札した者を落札者とすることはできない(会計法第29条の6第1項,
地方自治法第234条第3項等)。このような予定価格は,予算の範囲内で
契約を行うための上限価格としての意味を持つとされている13。
8
同法では,一定の行為を「入札談合等関与行為」と定義し,同行為の排除のための行政上の措
置(公正取引委員会から各省各庁の長等に対する必要な改善措置の要求等),同行為を行った職
員に対する賠償請求・懲戒事由の調査等について規定している。(参考資料 4(p34)参照)
9 「予算決算及び会計令」(昭和 22 年 4 月 30 日勅令第 165 号)
10 「地方自治法施行令」(昭和 22 年 5 月 3 日政令第 16 号)
11 WTO 政府調達協定 (平成 8 年 1 月 1 日発効)は,国・地方公共団体等による調達に関して,
内国民待遇の原則及び無差別待遇の原則の適用,苦情申立・協議・紛争解決に関する実効的な
手続を定めている。
12 例えば,建設サービスの調達の場合,6 億 6000 万円以上の国の調達,22 億 2000 万円以上
の地方公共団体の調達は,WTO 政府調達協定の適用対象となる。
13 適正化指針においては,予定価格について,「入札の前に公表すると,予定価格が目安とな
って競争が制限され,落札価格が高止まりになること(略)談合が一層容易に行われる可能性
があること等にかんがみ,国においては,入札の前には公表しないこととしている。」とされ
ている。ただし,「地方公共団体においては,法令上の制約はないことから,各団体において
適切と判断する場合には,事前公表を行うこともできるものとする」とされている。
5
(2) 公共調達の参加資格
現行の会計法令では,一般競争入札が原則とされているが,一般競争入札
を適切に行うには,これに参加する者が,当該契約について責任を負い得る
者であり,かつ,当該契約を完全に履行する能力を有することが必要である。
ア 欠格要件
現行の会計法令は一定の欠格要件を定めており,当該契約の締結能力の
ない者等については入札参加を認めていないほか,物件の品質・数量に関
して不正を行った者等,一定の要件に該当する者を入札に参加させないこ
とができることとされている14。
イ
積極要件
現行の会計法令は,上記アの欠格要件のほか,発注者が積極要件を定め
ることを認めており,必要がある場合には,契約の種類・金額に応じて実
績,従業員数,資本金その他経営状況等に関する事項について一般競争入
札の参加資格を定めることができることとされているほか,特に必要があ
ると認める場合には,更に当該入札への参加資格を定めることができるこ
ととされている15。実態をみると,現在行われている一般競争入札におい
ては,通常,経営事項評価点数16,施工実績等に関する入札参加資格が設
定されている。
(参考) 米国の入札ボンド制度
米国においては,公共工事の入札参加者が落札したにもかかわらず,
契約に至らない場合の発注者のリスク(再入札費用等)に対応するため,
入札参加者に契約見込額の5∼20パーセントの入札保証を受けること
を義務付ける「入札ボンド制度」が採用されている。
入札ボンド制度は,公共工事の受注者の選定過程で企業の経営状況の
良否を判断するため,発注者のリスク回避の手法として大きな効果を有
するといわれている。また,ボンドを引き受ける保証会社等の市場関係
者の判断が受注者選定に反映されるため,より的確な企業の経営状況の
評価が可能であるほか,不良・不適格業者の排除に有効であると指摘さ
れている。
(3) 発注方法
現行の会計法令では,一般競争入札が原則とされているが,一定の場合に
予決令第 70 条及び第 71 条,地方自治法施行令第 167 条の 4。
予決令第 72 条及び第 73 条,地方自治法施行令第 167 条の 5 及び第 167 条の 5 の 2。
なお,地方公共団体が設定する地域要件については,「第一部 3(4)イ 地域要件」(p9)参照。
16 「第一部 3(4)オ
ランク制」(p10)参照。
14
15
6
は指名競争入札又は随意契約も認められている(会計法第29条の3,地方
自治法第234条)。
なお,米欧の公共調達においては,こうした発注方法のほか,複数の事業
者との交渉を通じて契約者を選定する方法も認められている17。
ア 一般競争入札
一般競争入札とは,契約に関する公告を行い,一定の資格がある不特定
多数の希望者すべてを入札において競争させ,最も有利な条件を提示した
者との間に契約を締結する方法である。
現行の会計法令で一般競争入札が原則とされているのは,できるだけ広
い範囲で競争させることにより,公正性と経済性を確保するためとされて
いる。
他方で,一般競争入札については,事務手続の煩雑,不良・不適格業者
の排除が困難等の指摘があり,一般競争入札の拡大に向けた取組も見られ
るものの,実態としては,公共工事については一部の大規模工事等にしか
用いられていない18 19。
イ
指名競争入札
指名競争入札とは,発注者が,技術力・経営状況等について適当と認め
る複数の業者を指名し,指名業者のみを入札において競争させ,最も有利
な条件を提示した者との間に契約を締結する方法であり,現行の会計法令
では,競争に参加できる者が少数で一般競争入札を行う必要がない場合,
一般競争入札によることが不利である場合等一定の場合に限って認められ
ている20。
一方で,指名競争入札は,一般競争入札と比べて事務手続が簡便である,
不良・不適格業者の排除が容易である等の利点があり,現在では多くの入
札で指名競争入札方式が採られているのが実態である。
「第二部 1(1)イ(イ) 競争的プロポーザル」(P17)及び「同 2(1) EU(EC)指令の概要(P19)参照。
公正取引委員会は,平成 15 年に「地方公共団体の入札・契約の在り方に関するアンケート
調査結果」(47 都道府県・13 政令指定都市を対象に実施。以下「地方公共団体アンケート」とい
う。)を取りまとめている。(参考資料 1(p1)参照。)
地方公共団体アンケートによれば,一般競争入札の対象範囲拡大のための課題として,事務
手続の煩雑さを挙げたのが 46 団体にのぼり,不良業者の排除が困難であることを挙げた団体
も 27 団体あった(回答は 2 つまで選択可)。また,一般競争入札については,全体の 3 分の 1
に当たる 19 団体が WTO 対象案件に限定しており,1 億円未満にまで対象を広げている団体
は 3 団体にとどまった。
19 適正化指針においては,「資格審査及び監督・検査に係る体制の充実,事務量の軽減等を図
りながら,一般競争入札が原則とされていることを踏まえ,対象工事の見直し等により適切な
一般競争入札の実施に努める」こととされているほか,平成 15 年 3 月に閣議決定された「規制
改革推進 3 か年計画」(再改定)においても,一般競争入札の拡大が求められている。
20 会計法第 29 条の 3 第 3 項,地方自治法第 234 条第2項・同施行令第 167 条。
17
18
7
しかし,他方で,指名競争入札については,①指名に至る過程が不透明,
②指名に当たって入札参加意欲が考慮されない上,指名の辞退も事実上困
難であり形式的な入札を招きやすい,③入札参加業者が固定化して入札談
合を誘発しやすい等の指摘がある。
ウ
公募型指名競争入札
公募型指名競争入札とは,指名競争入札の一類型であるが,指名業者の
選定に当たって,事業者の入札参加意欲を反映するとともに,当該案件に
係る技術的適性を把握するため,案件ごとに,有資格者のうち一定の範囲
の者から簡便な技術資料の提出を募り,技術資料を提出した事業者の中か
ら入札参加業者を指名するという手続を採る方法であり,近年,国・地方
公共団体等において,導入・対象範囲の拡大が進められている21。
公募型指名競争入札については,資格を満たす業者も発注者に指名され
ない限り入札に参加できないため,発注者の恣意性が完全には排除されな
いとの指摘もあるが,資格を満たす業者はすべて指名するなどの取組も進
められている(大阪府等)。
エ
随意契約
随意契約とは,入札によることなく,発注者が適当と認める者を選んで
契約を締結する方法であり,会計法令上は,契約の性質又は目的が競争を
許さない場合等,一定の場合に限って認められている。
随意契約は,競争によることが困難な場合等に使用される方法であり,
競争入札を原則とする現行の会計法令を補完する面もあるが,他方で,そ
の運用方法によっては,経済性・公正性が確保されなくなり,官民の癒着
を招くおそれもある。
随意契約の運用においては,本来競争に付すべき案件が随意契約とされ
ているとの批判がある一方,対外的な説明(会計検査,情報公開等)を回
避するため等から,随意契約を行い得る案件についても形式的に入札に付
され,それが入札談合を誘発しているとの指摘がある。
(4) 地域振興・中小企業の受注機会拡大のための発注方法
ア 総論
公共工事の競争入札においては,地域振興・中小企業の受注機会拡大の
政策的要請を背景として,入札参加の条件として「当該地方公共団体に本
社・営業所を置いていること」を義務付ける「地域要件」を付したり,共
21地方公共団体アンケートによれば,53
団体で公募型指名競争入札が導入されており,1 億円
未満の工事を対象としている団体が 11 団体,3 億円未満の工事を対象としている団体は 30 団
体にのぼった。
8
同企業体(JV)を結成させて地元企業の参加を義務付けるケース等があ
る。
また,中小企業に関する国等の契約については,昭和41年に制定され
た官公需法22があり,同法は,中小企業者の発展に資することを目的とし
て,国に対して,中小企業の受注機会の拡大のための施策を講じるよう努
力することを求めている。
イ
地域要件
地方公共団体は,一般競争入札及び指名競争入札に参加する者に必要な
資格を定めることができるが23,具体的な要件の内容については地方公共
団体の裁量に委ねられている。また,契約の性質又は目的により,当該入
札を「適正かつ合理的に行うため特に必要があると認めるとき」には,事
業者の所在地を入札参加資格として設定することができるとされている24。
多くの地方公共団体においては,地元企業育成等の観点から,入札参加
資格として「県内に本店又は営業所を有すること」と規定する等,競争入
札への参加を地元業者に限定する制度を採用しており,地域要件と呼ばれ
ている25。
地域要件については,適正化指針において,「地域の中小・中堅建設業
者の育成のほか,将来における維持・管理を適切に行う観点から合理性を
有する場合もあるが,過度に競争性を低下させるような運用とならないよ
うに留意するものとする。」とされている。また,「規制改革推進3か年
計画」(再改定)においても,「競争性の確保の観点から,過度に競争性
を低下させるような運用とならないようにするための具体的な推進方策を
検討する」こととされている。
ウ
共同企業体
共同企業体(特定建設工事共同企業体)は,大規模かつ技術的難度の高
い工事の施工に際して,技術力等を結集することにより工事の安定的施工
を確保する場合等,工事の規模,性格等に照らして必要が認められる場合
等に組織される。
共同企業体を組織するかどうかは,本来,それぞれの事業者が自主的に
判断すべきことであるが,公共工事においては,発注者が,共同企業体に
よる入札参加及び地元中小企業の参加を義務付けるなど,地元企業の振興,
「官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律」(昭和 41 年 6 月 30 日法律第 97
号)
23 地方自治法施行令第 167 条の 5,第 167 条の 11。
24 地方自治法施行令第 167 条の 5 の 2。
25 地方公共団体アンケートによれば,「原則として地元業者を優先する地域要件を設定してい
る」と回答した団体が 44 団体と7割を超えている。
22
9
中小企業の受注機会の確保を目的として用いられる場合がある26。
エ
分割発注
発注者は,中小企業の受注機会の確保,工期,施行計画等を総合的に勘
案して,必要に応じて,1つの大規模物件を複数の中小規模物件に細分化
して発注することがある。
このような分割発注については,官公需法に基づく「平成15年度中小
企業者に関する国等の契約の方針」(閣議決定)において,「国等は,物
品等の発注に当たっては,(略)価格面,数量面,工程面等からみて分離・
分割して発注することが適切であるかどうかを十分検討し,可能な限り分
離・分割して発注を行うよう努めるものとする」とされている。
他方,分割発注については,行き過ぎた運用が行われた場合,
① 細分化された物件が適正ロットに満たず,工事が非効率的(高コスト)
となる
② 特殊な機材,工法を必要とする工事について施工能力を有する業者が
入札から排除されると,結果として落札業者によるいわゆる丸投げを誘
発・助長する
③ 地域要件の設定,ランク制等と併せて過度の分割発注が行われた場合,
入札参加業者が固定化することにより談合を誘発・助長する
といった問題が生じると指摘されている。
オ
ランク制
公共工事を受注しようとする者は,その経営に関する客観的事項につい
て,国土交通大臣又は都道府県知事の審査(経営事項審査)を受けること
が義務付けられている27。
国・地方公共団体等では,品質の確保,競争入札における適正な競争や
受注機会の公平の確保といった観点から,経営事項審査の結果(経営事項
評価点数)及び工事成績等入札参加業者の規模や技術力に応じて,業者を
複数のランクに分類し,ランクに応じて入札に参加できる案件を限定して
おり,このような制度はランク制と呼ばれている。
ランク制の採用及びその内容については発注者の裁量に委ねられている
が,行き過ぎた運用が行われれば,建設業者の棲み分けを促し,競争を制
限する効果を有しているとの指摘がある。
現在,多くの国・地方公共団体等においてランク制が採用されているが,
なお,国土交通省は,「入札契約適正化の徹底のための当面の方策について(平成 15 年度)」
において,入札契約の競争性・透明性の向上等の一つとして,特定建設工事共同企業体と単独
の建設業者の双方に入札参加を認める混合入札の促進を掲げている。
27 建設業法第 27 条の 23 第 1 項。
26
10
一部の地方公共団体においては,競争促進等の観点から,ランク数の削減
(三重県等),ランク制の廃止(横須賀市等)等の取組が行われている。
カ
地元業者の下請使用(地元産品の利用)
地方公共団体は,地元経済の活性化等の観点から,入札参加業者又は落
札業者に対し,地元業者の下請使用や地元産品の利用を求めることがある。
(5) 契約者の選定基準
ア 最低価格自動落札方式
民間企業の調達においては,通常,価格や品質,アフターサービス等さ
まざまな要素を総合的に勘案して契約の相手方を選定しているが,公共調
達においては,原則として,予定価格の制限の範囲内で,一定の仕様に対
する最低価格の入札者を落札者とするという「最低価格自動落札方式」が
採られており(会計法第29条の6,地方自治法第234条第3項),予
定価格制度と一体となって,契約者選定に当たって契約担当職員の恣意性
を排除する仕組みとなっている。
また,最低価格自動落札方式の例外として,低入札価格調査制度及び最
低制限価格制度が設けられている。
低入札価格調査制度とは,各発注者において,あらかじめ,当該者の入
札価格では契約内容に適合した履行がされないおそれがあると認められる
場合等の基準を定め,入札価格が当該基準に該当した場合には必要な調査
を行い,前記のおそれが認められた場合等には,当該者と契約を締結せず,
当該者の次に低い価格で入札した者と契約することができるという制度で
ある28。
最低制限価格制度とは,審査体制等を考慮して地方公共団体のみに認め
られた制度であり,当該契約の内容に適合した履行の確保のために特に必
要があると認めるときには,あらかじめ最低制限価格を設定し,当該価格
以上の価格で入札した者のうち,最低の価格で入札した者と契約すること
ができるという制度である29。
低入札価格調査制度と最低制限価格制度の違いは,入札価格が事前に定
めた基準に該当した場合に,その内容を調査した上で契約の適否を判断す
るか(低入札価格調査制度),それとも,その内容を調査することなく自
動的に契約の対象外とするか(最低制限価格制度)という点であり,適正
化指針においては,低入札価格調査制度の活用を促進するため,「入札参
加者の企業努力によるより低い価格での落札の促進と公共工事の品質の確
会計法第 29 条の 6,予決令第 84 条ないし第 89 条,地方自治法施行令第 167 条の 10 第 1
項。
29 地方自治法施行令第 167 項の 10 第 2 項。
28
11
保の徹底の観点から,(略)実施要領の策定を含めた審査体制の整備等を
図りつつ最低制限価格制度からの移行に努める」こととされている。
なお,一般競争入札の拡大に当たっては,参入の自由化により,いわゆ
るダンピング受注が増大するとの指摘があるが,適正化指針では,「いわ
ゆるダンピング受注は,建設業の健全な発達を阻害するとともに,特に,
工事の手抜き,下請へのしわ寄せ,労働条件の悪化,安全対策の不徹底等
につながりやすいことから,各省各庁の長等においては,現行の低入札価
格調査制度及び最低制限価格制度を適切に活用し,ダンピング受注の排除
を図る」こととされている。
イ
総合評価落札方式
上記のとおり,現行の会計法令では価格により契約者を選定することが
原則となっているが,価格以外の要素を重視する必要がある場合には,価
格に加え,技術・性能等価格以外の条件も含めて入札させ,予定価格の制
限の範囲内にある者のうち,価格以外の条件と価格を総合して評価し,国
等にとって最も有利な者が契約者として選定する方式があり,このような
契約者の選定方式は「総合評価落札方式」と呼ばれている(会計法第29
条の6第2項,地方自治法施行令第167条の10の2第1項)。
総合評価落札方式については,国土交通省において,全発注金額の2割
以上を総合評価落札方式とするなど,導入・試行が進められている30ほか,
地方公共団体においても導入・試行が進められようとしている31。
他方で,同方式は現行の会計法令においてはあくまで補完的な位置付け
であり,国の機関が総合評価落札方式を用いる場合には,原則として,個
別案件ごとに,主務大臣と財務大臣との協議が行われている32。地方公共
団体が総合評価落札方式を用いる場合には,事前に落札者決定基準を定め
ること,学識経験者の意見を聴くこと等が必要である33。
国土交通省は,平成 15 年 4 月に公表した入札契約適正化のための当面の方策(「2(1)イ 国・
地方公共団体等における取組の進展」(p3)参照)において,「総合評価落札方式については,全発
注金額の2割以上を目途に試行の拡大を図るとともに,(中略)また,地方公共団体への普及を
念頭に事例集の作成を行う。」こととしている。
31 地方公共団体アンケートによれば,総合評価落札方式等については,導入・試行済みの団体
が 16 団体で,導入予定 1 団体を含めても 3 分の 1 以下にとどまっているが,他方で「定型的
な案件については事務量が増加するため不適切だが,高度な企画力・技術力を要求される案件
については積極的に導入していきたい」との回答が 38 団体と過半数を占めた。
32 予決令第 91 条第 2 項。ただし,公共工事については,平成 12 年 3 月の大蔵大臣と建設大
臣(いずれも当時)等の協議において,総合評価落札方式の対象とする工事の範囲,落札方式,
総合評価の方法等が定められており,大蔵大臣と事前に協議を整えた各省各庁の長等は,それ
に依る限り,個別案件ごとに財務大臣と協議する必要はない。
33 地方自治法施行令第 167 条の 10 の 2 第 3 項及び第 4 項。なお,地方公共団体の場合,従前
は地方自治法及び同施行令上の規定がなかったため,総合評価落札方式が採用できなかったが,
「規制緩和推進 3 か年計画」(平成 10 年 3 月閣議決定)を踏まえ,平成 11 年 2 月,同施行令が改
30
12
なお,総合評価落札方式については,同方式に慣れていない発注者にお
いては,その適切な運用が今後の課題であるとの指摘がある。
また,総合評価落札方式を採用する場合,落札者の選定に当たり,価格
と価格以外の条件をどの程度の比重とするかなどを定める必要があるが,
現行の評価方式であるいわゆる除算方式(基礎点と加算点の合計を入札価
格で除した値を評価値とする方式)では,ほとんどは分母にくる入札価格
の大きさで決まってしまい,価格入札方式とほとんど変わらないとの指摘
もある。
(参考 欧米の競争的交渉方式)
競争的交渉方式とは,契約者選定に至るまでの段階で,複数の事業者に
対して,技術力や経験,設計に望む体制等を含めた提案書(プロポーザル)
の提出を求め,交渉的プロセスの中で各提案者と交渉を行った上,それを
公正に評価して業務に最も適した事業者を選定する方式である。
我が国の現行の会計法令では,発注方法としては競争入札と随意契約し
か制度化されていない34が,公共調達案件の複雑・高度化を背景として,
WTO 政府調達協定では一定の場合に交渉方式によることが認められてい
る(第14条)ほか,米国では既にこのような方式が競争入札と並んで制
度化されており,EUにおいても導入に向けて検討が進められている(第
二部参照)。
(6) 入札・契約における発注者の設計・管理体制と民間の技術力の活用
現在の公共工事においては,発注者は,自ら設計を行うか,又はコンサル
タント業者に設計を委託し,施工のみを事業者に請け負わせる,いわゆる工
事一括請負方式が原則とされている。
しかしながら,発注者側の技術力が民間事業者と比べて相対的に低下して
きていること等を背景として,設計段階から事業者の関与を受けることによ
って効率的な施工を行うとともに,民間企業の技術力を活用するため,以下
のとおり様々な方式が提案されている。
ア CM(Construction Management)方式
CM 方式は以下の2種類に分けられるが,発注業務の量的・質的補完に
資するなどの利点があり,米欧の公共調達においては既に取り入れられて
いる。また,我が国においても,国土交通省が,CM 方式活用の基本的な
指針として,平成14年2月に「CM 方式活用ガイドライン」を取りまとめ
て公表するなど,導入に向けての取組が進められている。
正され,総合評価落札方式の導入が可能となった。
34 我が国では,例えば建設コンサルタント業者の選定において,このような方式が用いられて
いるが,あくまでも随意契約の一類型としての位置付けにとどまっている。
13
(ア)
ピュア CM 方式
発注者の補助者・代行者たる CMR(Construction Manager)が発注
者の側に立って設計・発注・施工の各段階において工程管理,品質管理,
コスト管理等の各種マネジメント業務を一元的に行う方式
(イ) アットリスク CM 方式
CMR が,各種マネジメント業務を行う上で,特に調達総額について
責任を負うなど工事のリスク,責任も主体的に負担する CM 方式
イ
設計・施工一括発注方式
設計・施工一括発注方式とは,一つの企業ないし事業体に対し,設計と
施工を一括して発注(設計の契約と工事の契約を一体的に締結)する方式
であり,同方式の導入も一部で進められている35。
入札時 VE(Value Engineering)方式
入札時 VE 方式とは,民間の技術力の活用により,公共工事のコスト縮
減等を図るため,事業者からコスト縮減が可能な技術提案(代替案)を受
け付け,審査した上,各業者がそれぞれの技術提案に基づいて入札を行う
方式である。契約者を価格のみで選定する場合と,価格以外の要素も含め
て選定する場合がある36。
ウ
(7) 入札・契約における競争性確保のための発注者の監視体制
公共調達の競争性確保のためには,発注者の契約者選定手続の適正性につ
いて必要な監視を行うとともに,入札・契約にかかる事業者の苦情を適切に
処理するシステムの構築が進められている。
ア 契約者選定手続の適正な監視
適正化指針においては,入札・契約手続の透明性の確保のため,入札監
視委員会等の第三者機関において,入札・契約手続の運用状況の報告を受
ける,一般競争入札参加資格の設定の経緯,指名競争入札における指名の
経緯を審議する等の方策を講ずる必要があるとされている37。
「入札契約適正化法及び適正化指針の措置状況調査結果について」(平成 15 年 10 月 3 日国土
交通省・財務省・総務省公表)によれば,設計・施工一括発注方式を導入しているのは,国で
は約 4 分の 1,都道府県・政令指定都市では 5 分の 1 となっている。また,市町村レベルでは
ほとんど導入されていない(全体の 1.7 パーセント)。
36 VE 方式としては,入札時 VE 方式のほか,契約後に,受注者がコスト縮減の可能な技術提
案を行い,契約内容(仕様)の一部を変更する方式(契約後 VE 方式)もある。
37 地方公共団体アンケートによれば,第三者機関を設置している団体は全体のうち半数(30 団
体)であり,このうち外部組織としているものが 14 団体であった。
35
14
イ
公正・中立な苦情処理
苦情処理については,適正化指針において,一般競争入札の参加資格を
与えられなかった理由,指名競争入札における非指名理由,総合評価落札
方式において落札者とならなかった理由等について,まずは各発注者が説
明を行うとともに,事業者が発注者の説明に不服のある場合には,必要に
応じて入札監視委員会等の第三者機関を活用する等中立・公正な苦情処理
の枠組の整備が適切であるとされている。
なお,WTO 政府調達協定の適用対象とする契約については,同協定の
第20条において苦情処理手続の整備が定められ,「政府調達苦情検討委
員会」が設置されている。同委員会には,契約締結又は契約執行の停止要
請,関係行政機関に対する文書の提出等の要求等を行えるなどの権限が与
えられている。
4 入札談合に対する発注者の取組
(1) 入札談合に対する発注者の探知
従来から,発注官庁は公正取引委員会に対して談合情報の提供を行ってい
るが,入札契約適正化法においては,入札談合があると疑うに足りる事実が
あると発注者が認めた場合には,公正取引委員会に通知することが義務付け
られている。他方で,実際に公正取引委員会に提供される談合情報や通知だ
けでは,公正取引委員会において直ちに調査を開始するのが困難な場合が多
いのが実情である38。
(2) 入札談合に対する発注者の措置(指名停止・損害賠償)
ア 指名停止
入札談合を行った事業者に対しては,発注者において指名停止措置が講
じられている。各発注者は,中央公共工事契約制度運用連絡協議会(中央
公契連)39において作成されている指名停止等の措置要領モデルを参考に
して,独自の指名停止措置基準を作成,運用しているところ,同措置要領
モデルは,平成15年5月の改定により,①悪質な刑法談合の場合には全
国で指名停止を行う(ただし,独占禁止法違反案件については,従来どお
りブロック単位での対応を原則とする。),②談合情報が寄せられ調査が
実施された案件について,誓約書を提出したにもかかわらず,独占禁止法
違反等があった場合には,指名停止期間を加重する,③独占禁止法違反に
38
地方公共団体アンケートによれば,調査過程において事情聴取以外の調査を「実施している」
と回答した団体は 20 団体と 3 分の1であった。また,その内訳は「工事費内訳書の分析」が 19
団体,「過去の入札状況等の分析」が 4 団体あった。
39 国土交通省等国の公共工事発注機関や公団・事業団など 30 機関で構成されている協議会。
このほか,国の地方支分部局・都道府県などで構成される「公共工事契約業務連絡協議会」,各
都道府県及び同下市区町村で構成される「(各都道府県の)公共工事契約業務連絡協議会」がある。
15
対する指名停止期間の上限を9か月から12か月に引き上げるなど,入札
談合に対する指名停止措置の強化等が行われたところである。
他方で,地方公共団体アンケートによれば,各地方公共団体による指名
停止の措置状況には以下のようなばらつきが認められた40。
① 指名停止の期間について,短期については1か月∼12か月,長期
についても3か月から24か月と非常にばらつきがあった。
② 指名停止の実施時点については,中央公契連作成の指名停止モデル
どおり41と回答した団体が41団体と約7割であったが,排除勧告の段
階で一律実施と回答した団体も8団体あった。
③ 指名停止の対象となる違反事業者の地理的範囲については,独占禁
止法違反行為を行った事業者であれば,発注が行われた団体・地域を
問わないと回答した団体が46団体と4分の3を超えていた。
④ 独占禁止法違反業者に対して,指名停止にとどまらず,競争参加資
格の取消しに関する基準を定めていると回答した団体も5団体あった。
イ
損害賠償
近年,入札談合により損害を被った国・地方公共団体等が,事業者に対
して独占禁止法第25条42や民法第709条の規定に基づいて損害賠償を
行う事例が増えている43。従来,入札談合に対する損害賠償請求には,被
害者による損害額の立証が困難との問題があったが,平成8年の新民事訴
訟法第248条の規定に基づき,裁判所の職権により相当な額の損害額を
認定することが可能となり,同法に基づき損害額を確定した判例の蓄積が
進んでいる。
また,国・地方公共団体においては,契約書に事前に入札談合を行った
場合における損害賠償予定条項を盛り込む動きが強まっている44。
参考資料 1(P1)参照。
指名停止の実施時点については,地方公共団体アンケートを実施した時点(平成 15 年 4 月)
では,①勧告応諾時,②課徴金納付命令の確定時,又は,③審判開始決定時とされていた(な
お,同年 5 月の改定により,③については審判確定時とされた。)。
42 独占禁止法違反行為を行った事業者又は事業者団体は,
公正取引委員会による審決が確定し
た場合,被害者に対して無過失損害賠償責任を負うこととなる。
43 地方公共団体アンケートによれば,入札談合事件があり,地方公共団体自らが損害賠償を行
った事例があるという団体は 11 団体と5分の1にのぼった。
44 地方公共団体アンケートによれば,4 分の 3 にあたる 40 団体が契約書に損害賠償予定条項
ないし違約金条項を設定している。また,国土交通省は,同省が平成 15 年 6 月以降に入札手
続を行う工事等について,入札談合があった場合には請負代金の 10 パーセントを違約金(損害
賠償額の予定)と支払わせる旨の条項を契約に設けている。
40
41
16
第二部 欧米における公共調達制度の概要
1 米国
(1)1984年「契約における競争法」の制定による競争性の徹底
ア 背景
米国においては,1984年に「契約における競争法」(Competition in
Contracting Act,以下「1984年法」という。)が制定され,資格要件を満た
すすべての事業者に対して公共調達手続への参加を認める「完全かつ公開の競
争」を原則とする契約者選定方式が義務付けられた。
この1984年法の制定以前においては,競争入札の原則がありながらも,発
注機関にとって,多くの事業者が競争に参加するよりは,特定の少数の事業者と
取引した方がリスクが少なく管理がしやすいことを背景として,実際上は特定の
事業者との随意契約が多く締結され,国家予算が非効率に使用されるなどの問題
があった。
イ 「完全かつ公開の競争」の原則に基づく入札・契約方式
(ア) (価格競争型)競争入札
1984年法においては,①時間的に可能,②落札者を価格のみ
によって選定することが可能,③スペックが明確であるため入札に関して交渉
する必要がない,④複数の事業者の入札を合理的に期待できるという4つの基
準を満たす場合には競争入札によるものとされた。競争入札においては,価格
のみから最も有利な相手が契約者として決定される。
(イ) 競争的プロポーザル
1984年法の制定以前,発注者が複数の事業者に提案書(プロポーザル)
の提出を求め,契約相手方を選定するという競争的プロポーザルは例外であっ
た。しかし,公共調達がより複雑になっていることから,1984年法は調達
実態の変化を踏まえ,発注者が最も価値の高い調達を行うことができるように
するため,競争的プロポーザルをそれまでの例外的位置付けではなく,入札と
並ぶ調達方法の一つとした。
すなわち,競争入札に関する前記の4つの基準を満たさない場合には,競争
的プロポーザル方式の採用が認められるとして,価格及び技術の総合評価を行
い,発注者にとって最も価値ある相手方と契約することとされた。また,競争
的プロポーザル方式の採用に当たっては,調達者側は契約者選定を行う上での
価格及び技術に関する評価要素を明確に示す必要があるとした。
(ウ) 資格要件
受注を希望し,かつ資格要件を満たした者は原則的にすべての入札に参加す
17
ることが可能である。ただし,参加に際しては,保証会社の保証を受ける必要
があるため(入札ボンド制度)
,経営状況の審査等は事実上保証会社において
行われているといえる。
競争的プロポーザル方式においても,受注を希望し,かつ資格要件を満たし
た者はすべて競争に参加できる。
(エ) 予定価格
日本のように上限拘束性を持つ予定価格の制度はなく,上限拘束性のない
「合理的価格」を算定する手続が規定されている。
ウ 地域振興・中小企業の受注機会拡大のための施策
1984年法及び連邦調達規則は一定規模以上の企業(大企業)を除いた上で
の「完全かつ公開の競争」を認めているが,この場合でも,資格要件を満たす中
小企業はすべて競争に参加できる。
地元業者優先のための施策に関しては,連邦レベルの規定はないが,州の公共
調達においては自州内の企業を優先する法令等を設けている例がみられる。例え
ば,ワシントンD.C.においては,地元企業の入札価格について,3%のボー
ナスが認められ,他の地域の競争者の入札価格との比較をする際の優遇措置が設
けられている。
エ 監視体制
公正な競争の監視については,各調達機関において競争弁護官(Competition
Advocate)を置くことが義務付けられており,契約過程の審査を行っているほか,
会計検査院(GAO)が調達機関と契約者との契約に係る記録を検査することが
できる。法令違反等を行った企業については,最大3年間,公共調達への参加を
認めない措置が講じられ,当該措置はすべての行政機関の公共調達への参加に適
用される。
なお,競争弁護官の役割には,競争に関わる個人及び組織の説明責任の確保を
推奨することも含まれており,例えば,契約担当者等に対する表彰も含まれてい
る。
オ 不服申立制度
不服申立制度については,契約過程について不服がある場合,競争参加者は,
発注機関のほか,連邦地方裁判所,連邦抗告裁判所,連邦会計検査院のいずれに
対しても不服申立てを行うことが可能である。例えば,連邦会計検査院に対して
不服申立てが行われた場合,不服申立てが契約締結後10日以内になされていれ
ば,原則として契約の凍結が認められる。
18
カ 反トラスト法違反行為に対する厳正な対処
以上の1984年法による調達改革は,調達側と供給業者との間で不正行為が
横行しているとの状況を前提にしたものであったが,この時期には,調達担当官
の倫理基準や反トラスト法違反行為に対する刑事罰の強化も行われ,カルテル等
に係る罰金額は「利得又は損害の2倍に相当する額」まで科されることとされた
(1984年量刑改革法)
。
(2) 1994年の公共調達の改革による発注者の裁量性の拡大
1984年法の枠組みに対して修正を行ったのが,1994年の「連邦調達簡素
化法」である。同法に基づく公共調達の改革は,民間企業の調達方法を導入するこ
とにより公共調達に当たってのコストの低減を目指し,調達担当官の誠実な業務執
行を信頼して担当官が裁量権を行使する上での制約を緩和した。その一例が,過去
の実績についての評価の権限の付与である。米国の調達システムでは最低価格の入
札者以外に落札させることができ,
その場合には品質が優れていることについて
「客
観的な」証拠を提出する必要があった。調達官庁が有する過去の評価記録等は当該
官庁の主観的なものとみなされていたが,1994年の改革により評価の際に使用
できることとした。
また,1994年の「連邦調達簡素化法」は,契約者に求める価格データの提供
義務を緩和し,
調達担当官による価格の合理性の判断権限を拡大した。
これにより,
入札参加者側の参加コストが小さくなり,入札価格が低下するほか,より多くの企
業が入札に参加することによる競争促進が見込めることになると考えられた。
2 欧州
(1) EU(EC)指令の概要
EUにおける公共調達については,各加盟国を拘束するEU指令(500万ユー
ロを超える案件が対象)があり,実際の施行手段・方式は,直接,加盟国の制度に
基づき行われている。
1971年,ECは,加盟国間の公共工事の契約に関わる手続きを調整する指令
を発した。その主な内容は,各加盟国事業者に対し公共調達が平等取扱いの下で開
かれたものにするため,共同体レベルでの契約公告の実施,他の加盟国の入札参加
者に対し差別的となるような技術使用の禁止,契約締結のための客観的基準の適用
の3点であった。
この1971年のEC指令と1989年の追加的指令を統合したのが,1993
年の公共調達手続に関する指令である。同指令は,契約者選定手続として,①公開
手続,②制限的手続,③交渉手続の3つを定めている1。
公開手続においては,資格要件を満たすすべての者が公告に応じて申込みを行う
1
我が国においては,
EC 指令の①が一般競争入札,②が公募型指名競争入札,③が随意契約に相当する。
19
ことが可能である。
次に,制限的手続においては,入札への参加希望を表明した者の中から発注機関
が選定した者が申込みを行うことができる。
交渉手続は,複数の契約候補者と技術,管理,金銭等に関する諸条件について交
渉して契約者を選定するものであるが,交渉手続を用いることができる場合は,指
令上例外的な調達案件に限定されており,また,発注機関は価格,工期,技術仕様
や保証といった契約条件について契約候補者から示された提案を十分に比較するこ
とを求められている。
この1993年の指令については,現在,改正案が審議されており,同改正案で
は,米国においては既に制度化されているものであるが,新たな入札方式として「競
争的ダイアローグ」方式を導入し,発注者がそのニーズや目的を満足させる技術的
手法等や法律的・技術的な要件を客観的に規定できない場合に,同方式を行うこと
ができるようにすることが検討されている。
(2) 契約者選定基準
競争における契約者選定基準においては,①価格のみを基準とするか,又は,②
価格,ランニング・コスト,技術上のメリットなどの様々な基準を用いて総合的な
評価を行い,最も有利なものを選択するかのいずれかによるものとされている。な
お,後者の場合,公告において評価基準の要素及びその優先順位を示すこととされ
ている。
(3) 予定価格
欧州においては,
上限拘束性を有する予定価格制度はない。
フランスにおいては,
過去に,価格だけで落札者を選定する競争入札において落札価額の上限を定めるこ
ととなっていたが,現在では同規定は廃止されている。
(4) 地域振興・中小企業の受注機会拡大のための方策
EU指令においては,地元業者優先等についての規定はない。加盟国においては,
ドイツでは入札参加者の地域限定が禁止されているほか,フランスにおいては,地
元業者の優先を違法とする判例が多く存在する。
中小企業対策に関しては,EU指令上の規定はない。加盟国においては,ドイツ
で分離発注による中小企業の利益考慮の規定がある。また,フランスにおいては,
一定の場合に手工業者等の中小企業に対する優先措置2が存在する。
(5) 監視体制
競争の監視については各加盟国の制度に委ねられるが,フランスにおいては契約
2
公共調達のうち,一定の範囲において,①価格競争型の入札において落札価格が同じ場合,又は②総
合評価型の入札において内容が同等な場合には,中小企業を優遇することとされている。
20
者選定に際して入札委員会が関与していることが特徴的である。フランスでは,競
争入札による国の公共調達に関して,契約担当官は同委員会の意見を聴取して落札
者を決定し,また,競争入札による地方公共団体の公共調達に関しては入札委員会
が落札者を決定することとされている。イギリスにおいては,政府調達庁が予算を
適正に執行するため契約について助言を行い,ドイツにおいては,公共工事の一元
的な発注機関である連邦交通建設住宅省が第一次的な監視・監督機関となるととも
に,大型工事の契約については,連邦会計検査院が個々のプロジェクトの監視・監
督を行っている。
また,談合行為が競争法違反とされた場合,イギリスやドイツにおいては,公共
工事への入札資格が停止される。他方,フランスにおいては,競争法に違反するだ
けでは公共契約から排除されない。
(6) 不服申立制度
競争参加者による不服申立てについては,イギリスでは,調達官庁,高等裁判所
に申立てを行うことができる。フランスでは,経済財政産業省又は裁判所に不服を
申し立てることができるとともに,損害賠償請求も認められている。ドイツでは,
連邦カルテル庁の委託発注審査部が審査を行うが,その決定に対しては更に裁判所
への異議申立てが認められている。
21
第三部
公共調達における競争性の徹底を目指して(提言)
1 基本的な視点
(1) 競争性の確保の必要性
国・地方公共団体等が費用の安く,質の高いサービスを国民に提供するた
めには,公共調達において,いかにして「(一定のコストに対して)最も価値
の高いものを調達するか」という,Value for Money(VFM)の基本理念に基づ
き,安くて質の高い物品やサービスを調達することが必要である。そして,
このことを実現するためには,可能な限り競争性を確保していくことが重要
である。
また,入札談合は悪質な独占禁止法違反行為であるばかりでなく,競争入
札の実質を失わしめることを通じて予算の適正な執行及び事務事業の適切な
実施を阻害する行為であり,その排除・防止を図っていくことが必要である。
(2) 現状の問題点
入札契約適正化法等をはじめとして,これまでの公共調達に対する発注者
側の対応も,①入札・契約における競争の実効性の確保と,②入札談合に対
する発注者としての厳正な対処の2点を中心に進められている。
しかし,こうした発注者側による対応は,現行の法令や施策を前提として
その運用の適正化を図ろうとするものである。そのため,公共調達において
競争性を徹底していくとの観点からは,現在の取組には,例えば以下のよう
な限界・問題点があると考えられる。
ア 入札・契約における競争の実効性確保
(ア) 現行の競争入札においては,会計法令等との関係から,仕様書に示され
た必要条件を満たせば,それ以上の品質を追求せず,原則として価格を評
価要素として契約者が選定されている。しかし,高度な技術力を要する案
件等については価格のみを評価要素として契約者を選定することは困難で
ある。
(イ) 地域振興・中小企業対策その他の政策目的,小規模な市町村等における
発注者の体制が十分でないこと等の関係から,発注者側において公共調達
における競争性を徹底できない場合がある。
イ
入札談合に対する発注者としての厳正な対処
具体的な対応は,個別発注者の自主的取組に委ねられているため,意欲
のある発注者とそうでない発注者との間で対応に差異がある。また,入札・
契約事務の担当者にどこまで入札談合に対する適切な対応を期待できるか
(ノウハウ等があるか)という問題もある。
22
(3) 「競争」の在り方の見直し
そこで,制度的な対応も視野に入れつつ,公共調達における競争性の確保
を徹底し,いかにして「(一定のコストに対して)最も価値の高いものを調達
するか」との観点から,公共調達の入札・契約における「競争」の在り方を
見直し,発注者側における入札・契約制度改革の在り方について検討を行う
こととする。
2 競争に付すべき案件についての入札方式の在り方
(1) 競争性の高い一般競争入札の適用範囲の拡大と適切な参加資格の設定
ア 競争に付すべき案件の入札方式としては,一般競争入札,指名競争入札
があり,現在,一般競争入札は,例えば公共工事の場合,主として大規模
工事を対象に行われている。
一般競争入札については,競争性が高いものの,問題点として,発注者
にとっての事務量が大きいこと,不良・不適格業者の排除が困難であり公
共調達の質の低下をもたらすおそれがあること等が指摘されている。
イ 事務量の増加の問題については,近年,国だけでなく地方公共団体にお
いても会計処理及び入札事務に電子システムの導入が進んでおり,これを
業務処理システムと組み合わせる等IT化による事務の効率化を図ること
や,案件に応じて手続を簡素化して行政コストを引き下げることにより対
応していくことが可能と考えられる。
次に,不良・不適格業者の排除の問題であるが,一般競争入札といえど
も,これを合理的に行うためには,参加事業者が契約を履行できる能力を
有し,契約に責任を持つものでなければならないのは当然であり,また法
的にも資格要件を設定することは可能である。実際にも,一般競争入札の
ほとんどにおいて資格要件が設定されている。
このように,公共調達の契約の種類なり金額,内容等に応じて,入札へ
の参加に必要な資格を定める必要があることは,その実施のための発注者
の事務量について相違があるものの,指名競争入札の場合と異なるもので
はなく,不良・不適格業者排除の問題は,競争参加資格を適切に設定し,
また,監督,検査体制を充実することにより対処すべき問題と考えらる。
したがって,競争に付すべき案件については,こうした参加資格の適切
な設定等を行い,一般競争入札の採用を推進するべきである1。
ウ また,一般競争入札の推進に当たっては,発注者サイドにおいても,入
札参加業者の経営力や技術力を確保し,適切に監督・検査していくための
1
以下,第三部においては,入札参加資格(積極要件)が設けられている一般競争入札を,単に「一
般競争入札」と呼ぶ。なお,参加資格に関する会計法令上の規定については「第一部 3(2) 公共
調達の参加資格」(P6)を参照。
23
体制整備を図っていくことが必要である。特に,小規模な市町村等につい
ては,事業者の経営力,技術力についての審査能力や行政コストの問題が
あることから,業務執行体制の整備のため,国・地方公共団体や第三者機
関がデータベースを構築し,適切なデータを提供するなどの補完・支援の
ための措置を講じていくことが必要である。
(2)指名競争入札の対象範囲の限定と要件の明確化
ア 上記(1)のとおり,入札方式としては一般競争入札方式の採用を推進
することが適当であり,指名競争入札方式については,その対象範囲をよ
り限定し,指名競争による入札方式を採用する対象となる公共調達の要件
を明確化するとともに,受注意欲を有する十分な数の入札業者の参加を得
て行うことにより競争性を確保することが求められる。
イ また,指名競争入札については,どのような基準で指名しているのかと
いう透明性の問題がある。受注の均等化を目的にした指名が行われている
のではないか,恣意的な指名が行われているのではないか等の指摘もある
ことから,指名手続の恣意性を排除してこうした懸念を払拭するためには,
指名基準を策定してこれを公表し,透明な手続とする必要がある。
ウ 更に指名競争入札の場合,指名を受けた業者が工事の受注意欲を有して
いない場合であっても,事実上,入札の辞退が困難であり,業者にとって
は見積もり作業がコスト負担となるばかりではなく,談合を誘引する結果
となりかねないとの指摘がある。したがって,入札参加意欲を確認し,技
術資料の提出を求めた上で指名を行う方式である公募型指名競争方式を今
後更に活用し,入札意欲のある事業者の間で活発な競争が行われるように
する必要がある。また,こうした方式を採用しない指名競争入札の場合に
は,発注者は,指名に際して,指名は単なる申込の誘引であり,指名を受
けた業者が入札を辞退することは自由であり,辞退しても不利益を受ける
ものではない旨を明らかにすることが適当である。
3 中小企業の受注機会拡大・地域振興のための発注方法等と競争性の確保
(1)競争性の確保の必要性
ア 中小企業に関する国等の契約については,いわゆる官公需法に基づいて,
中小企業の「受注の機会」を確保するための各種の施策が講じられている。
また,毎年,中小企業者向け契約目標が,各省等が算出した契約見込額を
ベースに設定されている。平成15年度については,官公需契約の総発注
量に占める中小企業者の割合は45.3パーセントとなっているが,これ
は中小企業者向け目標額と官公需総予算額から算出されたものであり,ま
た,契約目標は,政府全体としての努力目標となっている。なお,同法は,
地方公共団体についても,
「国の施策に準じて,中小企業者の受注の機会を
24
確保するために必要な施策を講じるよう努めなければならない」としてい
る。
中小企業に関する施策を進めるに当たっても,中小企業の健全な成長・
育成を図っていく上で競争性の確保の視点は重要である。仮に発注者にお
いて,受注の「機会」の確保にとどまらず,
「結果」の確保まで配慮した運
用が行われる場合には,中小企業の競争的な体質を弱め,中小企業の健全
な成長・育成を阻害しかねないものと考えられる。
イ また,地方公共団体において講じられている地域振興のための施策を進
めるに当たっても,考え方は同様であり,地元企業の健全な成長・育成と
地域経済の活性化を図っていく上で,競争性を確保していくことは不可欠
である。
(2)中小企業の受注機会拡大・地域振興のための個別の方策と競争性の確保
以下では,中小企業の受注機会拡大・地域振興のための各種の方策につい
て,競争性の確保の観点から,地域要件の設定,共同企業体,分割発注,ラ
ンク制等を取り上げ,これらについて個別に検討を進めていく。なお,公共
調達における個々の競争入札においては,こうした各種の方策が複数講じら
れていることから,全体としての競争への影響についても考えていくことが
必要である。
また,平成13年から施行されている入札契約適正化法は,入札・契約の
適正化のための原則の一つとして透明性の確保を掲げているが,事業者間の
競争を確保するためには,発注者サイドにおいて講じられる各種の方策につ
いての情報が公開され,透明性が確保されていることが極めて大切である。
ア 地域要件の設定
(ア) 地方公共団体等においては,競争入札を行うに当たり,事業者の競争参
加資格として,地域要件が設定されることが多い。地域要件の設定により
地元の業者に発注することは,例えば公共工事について,将来における当
該施設の維持・管理を適切に行うとの観点から合理性を有する場合もある
と考えられるが,これによって入札参加業者が固定化したり,十分な入札
参加業者が確保されないなど,入札の競争性が失われる場合には,入札制
度の趣旨に反するのみならず,入札談合を誘発・助長するおそれが強い。
また,多数の地方公共団体が地域要件を設けている中で,特定の自治体
だけがそれを廃止した場合,当該入札の自治体には周辺の自治体の事業者
が参加できるのに,当該自治体の事業者は周辺自治体の入札には参加でき
ないという状況が生じることから,地方公共団体側に個別に自主的な取組
を期待することは困難な面がある。
(イ) したがって,競争性を確保していく観点からは,引き続き,地方公共団
25
体に対して,地域要件の設定により,過度に競争性を低下させるような運
用にならないよう求めていくとともに,地域要件の具体的な在り方につい
ての基本的な考え方を国として明確にし,各地方公共団体に周知していく
必要がある。
また,地方公共団体等においては,地方自治法施行令(第167条の5
の2)において,契約の性質又は目的により,当該入札を「適正かつ合理
的に行うため特に必要があると認めるとき」に限って,地域要件の設定が
認められていることに留意するとともに,透明性を確保する観点から,地
域要件を設定する場合には,同施行令を満たしていることを説明する必要
がある。
イ 共同企業体
(ア) 公共工事等においては,例えば特定の建設工事について,共同企業体が
結成されることがある。共同企業体の結成は,地域の実情に詳しい地元企
業が加わることで地域独特の手法を反映させたり,大規模工事におけるリ
スク分散を図ることにより効率的で経済的な工事ができるなど,合理的な
場合もあると考えられるが,受注機会の配分として機能しているとの指摘
があり,また,談合が誘発されかねないといった問題がある。
(イ) 競争性を確保していく観点からは,事業者が,上記のような地元企業の
有利性や大規模工事のリスク分散等の観点から,自主的に他の事業者と共
同企業体を組織すること自体は何ら問題を生じるものではないとしても,
発注者サイドにおいて,共同企業体の結成を発注の条件としてこれを事業
者に義務付け,事業者の自主的な事業活動に関与することは適当ではない
と考えられ,こうした義務付けは廃止していくことが適当と考えられる。
(ウ) なお,現在の公共工事においては,過去の同種・同規模の工事の施工実
績を有することが入札参加資格とされている場合があり,中小企業がこの
要件を満たし,将来の参加資格を得るためには共同企業体に参加して実績
を積む必要があるとの指摘がある。このため,共同企業体の義務付けを廃
止するに当たっては,他の発注機関や民間部門の施工実績を評価する,対
象案件と同種・同規模の工事の施工実績がない場合でも過去の施工実績を
適切に評価するなど,発注者において,適正に入札参加資格を設定し,将
来の入札参加企業が限定されないようにすることが必要である。
ウ 分割発注,ランク制
(ア) 分割発注については,中小企業の受注機会の確保や調達案件の規模の適
正化等を勘案して行われることがあるが,行き過ぎた運用が行われる場合
には,公共調達が非効率となり,競争性が確保されないこととなることか
ら,発注者は,分割発注を行う場合には,その理由を公表することが望ま
26
れる。分割発注の理由について透明性が確保されることによって,過度の
分割発注が抑止されるものと考えられる。
(イ) また,ランク制についても,行き過ぎた運用が行われる場合には,事業
者の棲み分けを促し,競争を制限する効果を持つことから,競争性を確保
していくためには,事業者が固定化しないよう,同一ランクにおける十分
な事業者数の確保に配慮するとともに,ランクを統合していくといった見
直しを不断に行っていく必要がある。
エ 地方公共団体による公共調達における地元業者の下請使用や地元産品の
利用の要請
近時,地方公共団体の中には,地元経済の活性化等を目的として,公共
工事の受注業者との契約において,地元業者を下請業者として使用するこ
とや,地元産品を利用することに努力する旨の規定を設ける事例がみられ
る。こうした活動が,一般的な要請の範囲を超え,事業者に対してこれを
義務付ける場合には,事業者の自由な事業活動を制限するおそれがあるこ
とから,好ましくないものと考えられる。
4 複数年度継続案件に対する国及び地方公共団体の債務負担行為の活用
(1)現在,競争に付されている案件の中には,複数年度にわたる工事等が年
度ごとに分割されて発注される結果,初年度に契約した事業者に次年度の施
工をさせることが合理的な案件についても,再度次年度に競争入札が行われ
る事例がある。
複数年度にわたる継続案件の場合,初年度分については競争入札を行い,
二年目以降について,当初年度の契約事業者と随意契約を行うことは,これ
によって工期の短縮,経費の削減等の観点から有効と認められる場合には合
理的な面があると考えられる。他方,案件によっては,次年度以降に随意契
約となることを期待した事業者が,初年度に低い価額で受注し,翌年度以降
の随意契約に際して高い価額をもって契約を行おうとする場合も考えられ,
競争性の確保の観点からは問題がある。
(2)こうした複数年度継続案件については,競争入札による初年度の落札事
業者と次年度以降に随意契約を行うこととするかどうかよりも,まずは複数
年度にわたる調達全体について,どのように競争的公共調達を行うことが適
当かを検討する必要がある。
この点について,情報システムに係る政府調達については,極端な安値落
札等の問題の再発を防止し,質の高い低廉な情報システムの調達を図るため,
当初の落札事業者と複数年度にわたり役務調達を行う必要性がある場合には,
原則として国庫債務負担行為を活用し,複数年契約により実施することとさ
27
れた(平成14年3月)。
(3) こうした対応は,情報システム分野に限られるものではない。競争性
を確保していく観点からは,複数年度にわたることが見込まれる事業でライ
フサイクルコストを考慮した調達を行うことや,事業の円滑な実施を図る上
で複数年度にわたる契約の締結や事業を実施することが合理的な場合には,
債務負担行為が積極的に活用されることが適当である。このため,国及び各
地方公共団体においては,債務負担行為を活用することが適当な事業につい
てガイドライン等の形で明確化することが望まれる。
5 随意契約の取扱い
ア 随意契約は,競争によることなく,発注者が特定の者を選定し契約する
ものであり,競争入札を原則とする契約者選定方式の例外的な方式である。
また,随意契約は,取引関係を固定化し,官民の癒着を誘発する可能性を
否定できず,不正行為抑止の観点も視野に入れた運用が行われる必要があ
る。
イ 他方,「契約の性質又は目的が競争を許さない場合」(会計法第29条の
3第4項)等については,制度的には随意契約方式が認められている。こ
の点に関して,特定の事業者を契約の相手方とすることが適当な案件であ
るにもかかわらず,制度上の要件に合致するかどうかについて対外的な説
明(会計検査,情報公開等)を回避するなどのために,形式的に競争入札
を実施している例があるとの指摘があるが,こうした形式的な競争入札は
入札談合を誘発するおそれが強く,未然防止の観点からはこのような形式
的な競争入札を排除する必要がある。
ウ 公共工事については,発注官庁において随意契約のガイドライン(「公共
工事における随意契約のガイドライン」中央公共工事契約制度運用協議会
モデル)が策定されているが,競争に付すべき案件とそうではない案件の
区別を徹底し,各発注者においては,ガイドライン等の策定により,随意
契約とすることが認められる案件を明確化すべきである。また,ガイドラ
イン等の策定にあたっては,随意契約を採用する場合をできるだけ具体的
にポジティブリストの形で明らかにすることが適切である。
6 価格以外の要素も含めた多様な評価基準に基づく契約者選定方式の必要
(1) 競争入札における総合評価方式の活用の促進
ア 現行の会計法令においては,競争入札に参加する事業者は,発注者の契
約担当官が作成した仕様書,設計書等に基づいて価格を見積り,入札の方
法により当該見積価格を提出し,発注者は,自らがあらかじめ決定した予
定価格を上限として,最低の価格で入札した者を落札者にするという,
「入
28
札」・「予定価格」・「最低価格自動落札」を原則とした契約者選定方式を採
用し,競争入札は,特定の場合を除いて,
「価格」について争うものとされ
ている。
イ こうした価格だけを落札基準として競争性を確保しようとする契約者選
定方式は,発注者サイドにおいて,仕様書・設計書の内容が適切に設定で
き,また,品質の確保に関する問題が生じるおそれの少ない案件について
は,現在においても引き続き適切な公共調達の方式と考えられる。
ウ しかしながら,一般の取引において「より安くより良いもの」を求めて,
価格と品質による競争が行なわれているように,大型の公共工事,情報シ
ステムといった複雑な請負案件になればなるほど,技術力,品質といった
要素が契約者選定に当たっての重要な要素となる。
したがって,発注者の企画立案力を考慮すると,高度な技術力を要する
ような案件や,環境の問題についての対策を考慮する必要のある案件等に
ついては,価格以外の技術や性能等の要素を含めた多様な評価基準により
契約者を選定する方式,いわゆる総合評価方式を採用することが適切であ
る。
(2) 会計法令における現在の枠組
現行の会計法令においても,価格以外の条件についても競争の要素とする
ことができることとされている(会計法第29条の6第2項)。国に係る調達
については,各省庁が財務省と協議して定めることにより,価格その他の条
件が国にとって最も有利なものをもって申込みをした者を落札者とすること
ができる。財務省との協議2が整ったものとしては,例えば,平成12年の公
共工事に関する調達についてのものがある(「工事に関する入札に係る総合入
札方式について」)。また,前記の情報システムに係る政府調達制度において
は,一定の入札予定価格を超える調達案件について,性能・品質等を勘案し
た総合評価方式を採用することとされた。
なお,従来の総合評価方式については,技術評価点を入札価格で除算する,
いわゆる除算方式によって行なわれていたために技術評価が全体の評価に十
分に反映されず質の高い調達が行えないとの指摘があった。このため,上記
の情報システムに係る政府調達制度においては,技術評価点と価格点とを
1:1で加算した総合評価点が最も高い者を落札者とする,いわゆる加算方
式による評価を行うこととされている。
(3) 今後の対応
ア 高度な技術力の必要,環境の維持・リサイクル対策の必要等を背景に,
2
財務省との協議については,「第一部 3(5)イ
総合評価落札方式」の項の脚注 31(P12)参照。
29
公共調達におけるニーズの多様化に伴って,今後ますますこうした総合評
価方式により契約者を選定することが適切な公共調達案件は増えていくも
のと考えられる。各発注者は個別の調達案件についてだけではなく,調達
案件の類型に応じ契約者選定方式について事前に財務省と一括して協議し
ているが,このような協議方法を活用して対象となる案件を具体化してい
くことにより,今後一層総合評価方式の採用を進めていくことが適当であ
る。
イ その際,落札者の選定において価格と品質をどの程度の比重とするか等
については,①価格と品質の比重の数値化,②品質の考慮要素及びそのウ
ェイト付けの適切な評価方法を確立し,標準的な調達対象についてガイド
ライン等の形で明確に定め透明性を確保していくことが必要である。
なお,小規模な市町村のように,大規模で高い技術力を要する案件の発
注件数が少なく,ノウハウの蓄積が容易でない状況があるものについては,
市町村を支援する専門的な機関を設け,当該機関から示された評価基準を
活用していくなどの補完・支援体制の整備が必要である。
ウ 上記のとおり,現行の会計法令の下でも総合評価方式は行われているが,
価格以外の条件も競争の要素とすることは,原則的な落札方式を補完する
との位置付けである。将来的には,価格以外の要素も含めた多様な評価基
準による契約者選定方式を価格による選定方式と同等に位置付け,発注者
が案件の内容等に応じて契約者選定方式を採用できるよう検討がなされる
ことが必要と考えられる。
また,その際には,予算の限度内において契約するために定められてい
る予定価格の上限拘束性の在り方や,事業者の見積努力を損なわせるとと
もに談合を容易にするおそれがあるとの指摘がある予定価格の事前公表の
適否の問題についても,併せて検討する必要があるものと考えられる。
(4) 競争的交渉方式の導入の検討
ア 上記の総合評価方式は,競争入札の枠組みの中で価格以外の要素も含め
た多様な評価基準により契約者を選定しようとするものである。発注機関
の技術的ノウハウの不足により,あらかじめ詳細な仕様を明らかにして入
札に付すことが困難な案件や,事業者の発意による技術提案を極力活用す
ることが適当な案件については,入札の方式により契約者を選定するので
はなく,複数の事業者を選んで提案を行わせ,発注者がそれぞれの事業者
と個別に交渉を行うことを通じて最も望ましい者を契約者として選定する
方が,「(一定のコストに対して)最も価値の高い調達」を行い得る場合が
あると考えられる。
イ このような制度は,米国においては既に導入されているほか,欧州にお
いても導入が進められている。我が国においては,現在では,随意契約の
30
一類型として,例えば公共工事における設計業者の選定において用いられ
ているものの,制度的な裏付けがないなどの指摘があり,将来的には,入
札方式と並ぶ競争的な契約者選定方式として会計法令において明確に位置
付けることを検討する必要があるものと考えられる。
なお,競争的交渉方式の導入に当たっては,発注者と契約者との交渉が
公正に行われることを確保するための方策について十分考慮する必要があ
る。例えば,欧米においては,発注者が複数の事業者に提案書の提出を求
め,競争的交渉を行った上で入札を実施するという,交渉と入札の両方の
利点を活用する方式も存在する。こうした方式は,発注者の恣意的な運用
を防止し,また,業者選定の透明性が確保される等の利点がある。
7 民間の技術力の活用
(1) 設計段階からの事業者の関与の明確化
公共調達の案件によっては,内容の複雑性・難易度等から,発注者がその
設計・仕様等を定めるための企画・立案力が十分ではない場合がある。この
ような案件については,発注者として,事業者に対して技術支援を求める必
要が生じることがある。技術支援を行い発注者に協力した事業者が事実上暗
黙の落札者となるような事態を防止し,また,当該技術支援を適切に評価し
ていくためにも,設計段階から事業者の関与を明確にし,設計・施工一括方
式の発注を行ったり,CM方式3を活用していくことが適当である。
(2) 入札段階・施工段階における事業者からの技術提案の受付
通常の契約者選定方式(最低価格落札方式)においても,民間の事業者の
技術力の活用により,品質を確保し,コスト縮減を図ることが可能な場合に
ついては,現状においても,VE方式4の採用により入札段階又は施工段階で
技術提案を受け付けているが,今後ともその活発な活用が望まれる。
8 不服申立制度の整備・拡充
(1) 不服申立制度の整備・検討の必要
公共調達の入札・契約制度の改革を進め,公共調達の競争性を確保してい
くため,上記のとおり,今後,例えば入札方式については従来の指名競争入
札方式から一般競争入札方式への拡大が,また,契約者の選定方法について
は価格だけでなく技術等も勘案して落札者を競争を通じて選定する総合評価
方式の活発化が見込まれる。
このように入札方式や契約者の選定方法が調達案件の性格等に応じて多様
化していった場合,事業者サイドからは,個別の調達案件について,①一般
3
4
「第一部 3(6)ア CM 方式」(P13)及び「同イ 設計・施工一括方式」(P14)参照
「第一部 3(6)ウ 入札時 VE 方式」(P14)参照
31
競争入札において競争参加資格が認められなかった理由,②総合評価方式の
案件について自らが落札者とならなかった理由,③一般競争入札又は総合評
価方式が採用された理由等,入札・契約の過程及び発注方式や監督・検査結
果の評価に関する発注者サイドの判断についての説明を求める機会が増加す
るものと考えられるが,こうした事業者からの不服申立てに関する制度を整
備し,公共調達の手続の透明性を高めていくことは,競争性の確保の観点か
らも重要である。
(2) 今後の対応
ア 公共工事に関して,国や都道府県においては,学識経験者等をメンバー
とする入札監視委員会等の第三者機関の設置が進んでおり,当該機関は,
競争参加資格の設定,指名の経緯等について内容の審査,意見の具申等を
行っている。しかしながら,市町村ではこうした第三者機関が未設置のも
のも多く,当面の取組としては,こうした市町村についても不服申立制度
を整備していくことが必要である。ただし,小規模の市町村等については,
発注者ごとに第三者機関を設置することは必ずしも適切ではないと考えら
れることから,共同での設置や都道府県との協力等,その枠組についての
検討も併せて必要である。また,第三者機関を活用する場合,既存の体制
のままでは限界があることから,専任職員を配置するなど,十分な体制を
整備する必要があり,将来的には,発注者の調達プロセス等を監視する民
間企業の育成も検討する必要がある。
イ 現在,WTO政府調達協定の適用対象となっている契約については,対
象となる政府調達の調達手続きに関する苦情の処理のため,政府調達苦情
検討委員会が各省庁から独立した形で設置され,幅広い事項について中
立・公正に苦情処理を行うための体制が整備されている。
将来的には,独立性の高い新たな第三者機関において,国や地方公共団
体の調達手続きに関する各種の情報を受け付け,また,事業者が不服申立
てを行うことができるシステムを調達契約の差止手続も含めて構築してい
くことは,談合を防止していく上でも有効であり,国及び地方公共団体に
おいて,こうした体制の構築に向けての検討を進めていくことが期待され
る。
また,会計検査院は,国等の公共調達について検査を行う立場にあるこ
とから,会計検査院がこうした苦情処理に当たることは適切であると考え
られる。
9 品質の確保
(1) ダンピング防止
ア 一般競争入札の推進等による競争の促進に伴い,いわゆるダンピング受
32
注が増大し,公共工事の品質の低下をもたらすおそれについての指摘があ
る。品質を確保し,限られた財源を効率的に活用し,適正な価格で公共調
達を行うことは発注者の責務であり,資格審査を適切に行い,また,適正
化指針に定められているとおり,発注者において対象となる工事に係る入
札金額と併せてその内訳を提出させるよう努めるとともに,現行の低入札
価格調査制度や最低制限価格制度を適切に活用することが重要であり,市
町村等における制度の導入を推進し,低入札価格調査の実績を踏まえた調
査基準価格の見直し等を行っていくことが適当と考えられる。
なお,入札価格の高低と品質の優劣は必ずしもイコールの関係にはない
ことから,最低制限価格に満たない価格での入札を自動的に契約の対象外
とする最低制限価格制度については,事業者の企業努力による低い価格で
の落札の促進と公共工事の品質の確保の徹底の観点から,最低制限価格を
適切に設定していくとともに,発注者の審査体制の整備を図りつつ,低入
札価格調査制度への移行を進めることが適当と考えられる。
イ また,採算を度外視した極端な安値受注が繰り返され,他の事業者が受
注の機会を得られないなどにより,競争事業者の事業活動を困難にさせる
おそれがある場合には独占禁止法上の不当廉売として問題となる。公正取
引委員会は,このような事案に接した場合には,厳正に対処していく必要
がある。
(2) 入札ボンド制度の導入
ア 米国において導入されている入札ボンド制度は,ボンドを引き受ける保
証会社等の市場関係者の判断が受注者選定に反映されるため,より的確な
企業の経営状況の評価が可能であるほか,不良・不適格業者の排除に有効
と考えられる。
イ 一般競争入札の推進に当たっては,企業の経営状況を適切に評価し,競
争参加資格を満たす業者を適切に選定することが必要であることから,今
後,我が国においても入札ボンド制度の導入について検討していくことが
必要であると考えられる。
10 発注担当部局に対するコスト削減のためのインセンティブの付与
(1) インセンティブの付与の必要性
公共調達と民間企業による調達との相違点として指摘されるものに,公共
調達の場合には発注者サイドに費用を最小化することが評価される仕組みが
ないということがある。さらに,仮に発注者が競争によるコスト削減を行っ
た場合,次年度以降の予算削減につながりかねないことから,発注者には費
用を最小化するインセンティブが生じないだけでなく,むしろコスト削減を
避けることが評価される可能性があるとの指摘もある。
33
(2) 今後の対応
ア 今後は,コスト削減に努力した発注者が,それを自らの政策評価の形で
開示し,コストを削減したことが明確に評価されるような仕組みとするこ
とにより,発注担当部局に対してコスト削減のインセンティブを付与して
いくための具体的な方策を検討していく必要がある。
イ この点に関して,本年6月の「経済財政運営と構造改革に関する基本方
針2003」(平成15年6月27日閣議決定)においては,事前の目標設定
と事後の厳格な評価の実施により国民に説明責任を果たす予算編成プロセ
スを構築することが目指されており,平成16年度予算において「モデル
事業」を試行的に導入することとされている。「モデル事業」においては,
定量的な政策目標を示し,目標達成の状況を厳格に評価するとともに,目
標の効率的達成のために,事業の性格に応じて①国庫債務負担行為の活用,
②繰越明許費の活用,③個別事業ごとの予算項目の目間流用の活用等の予
算執行の弾力化を行うことについて検討が進められている。
ウ 英国では,同程度の規模の複数の施設の経営状況等を比較し,その結果
を公開することによって効率的な経営を促す「ヤードスティック・コンペ
ティション」という仕組みがあるが,我が国の公共調達においても,複数
の地方公共団体の公共調達の状況を比較してその情報を公開し,非効率な
ものがないかチェックできるようにして効率的な公共調達を促すことも有
効である。
エ また,米国では,コスト削減等に努めた発注担当者に対する競争弁護官
による表彰制度というものがあり,発注担当者にインセンティブを与えて
いる。我が国でもコスト削減の努力が評価されるような制度の整備も検討
していく必要があると考えられる。
11 入札談合に対する取組
(1) 談合情報に対する発注機関の対応
入札談合は,発注者側に提出される工事費内訳書等の入札関係資料や,落
札者・入札価格の推移を把握することにより相当程度推測されるものである。
したがって,発注者側において,入札情報に基づいて入札談合を常時監視す
る体制を構築することは,入札談合を防止していく上で極めて有効であると
考えられる。
具体的な監視体制としては,現状では,入札談合に係る情報を得た場合,
発注者は,例えば公正入札調査委員会を招集して対応しているが,有効な調
査を実施していくためには,発注担当部局から独立した,専門家による監視
機関を設置し,①発注する案件の種類・規模ごとに,入札参加者の落札回数
が均等になっているといった規則性がみられないか,②複数回の入札ごとに
34
1番札が同じといった,不自然な入札状況がみられないか等,入札情報の分
析を行うことが適当である。
さらに,厳正な会計検査・監査及びそのための体制整備が重要であるほか,
民間業者等に発注者の調達プロセスを監視させる制度を整備していくことも
有効と考えられる。
(2) いわゆる官製談合の防止
近年,発注官庁等の職員が入札談合等に関与している事例,いわゆる官製
談合が発生しており,発注機関の職員の関与を防止するため,平成15年1
月,入札談合等関与行為防止法が施行されたところであるが,各発注者にお
いては,事業者の入札談合を招くことのないよう,発注体制の整備等,適切
な発注のための取組を行っていくことが求められる。
また,同法に基づき,公正取引委員会は,入札談合等の調査を通じて発注
機関の職員の関与行為に接した場合には,必要な改善措置要求を行い,発注
機関は,調査結果に基づき,関与行為を行った職員に係る損害賠償の請求・
懲戒事由の調査等,厳正に対処する必要がある。
(3) 公正取引委員会との連携の強化
談合情報に接した場合に発注者から公正取引委員会に寄せられる談合情報
は増加傾向にあるが,具体性に乏しい情報も多く,必ずしも入札談合事件の
摘発につながらないケースが多いとの指摘がある。
このため,公正取引委員会と発注者が一層の連携・協力を進めることによ
り,①発注者における入札談合の監視についての具体的な手法について共同
して研究を進める,②電子入札への本格移行の状況を踏まえつつ,電子的に
保存されている各発注者の入札関係データを発注者及び公正取引委員会が情
報分析に活用できるようなシステムの構築を検討するといった取組を進めて
いくことが有効である。
(4) 入札談合に対する発注者における適切な対処
入札談合に対して,発注者が指名停止・損害賠償といった措置を適切に運
用することが入札談合の防止を図っていく上で有効なことは指摘するまでも
ない。
例えば,指名停止について,多くの発注者は指名停止基準を作成・公表し
ているが,独占禁止法違反行為に関する発注者の指名停止のタイミングの運
用をみると,公正取引委員会の立入検査や排除勧告が行われた段階で指名停
止措置が講じられることがある。しかしながら,独占禁止法違反行為に対し
ては,審決が公正取引委員会としての当該事案に対する最終的な判断である
ことから,中央公共工事契約制度運用協議会が作成しているモデルを参考と
35
して,事業者に過度な負担が課されないように適切な運用が必要である。
なお,現状においては,各地方公共団体による指名停止の措置状況をみる
と,指名停止期間等について相当程度のばらつきが認められるが,その整合
的な運用を図っていくことが必要と考えられる。
また,損害賠償請求については,現在必ずしも積極的に行われているとは
いえないが,各発注者において,適切に活用していくことが望まれる。
36
参考資料
目次
1
頁
地方公共団体の入札・契約の在り方に関するアンケート調査結果・・・1
2
米欧における公共調達制度の概要・・・・・・・・・・・・・・・・20
3
「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」及び「公共
工事の入札及び契約の適正化を図るための措置に関する指針」の概要・29
4
入札談合等関与行為の排除及び防止に関する法律について・・・・・34
5
情報システムに係る政府調達制度の見直しについて(平成14年
3月29日情報システムに係る政府調達府省連絡会議了承(平成
14年4月22日改定))・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36
公共調達と競争政策に関する研究会
第2回会合(平成15年6月24日)
配布資料
地方公共団体の入札・契約の在り方に関する
アンケート調査結果
1
資料1
1
調査目的
昨今の入札談合に対する社会的批判の高まりに応じて各地方公共団体における入札・契約方法の見直しが進展する中で,入札・
契約案件の多様性を踏まえた入札・契約方法の柔軟性確保など,様々な課題が指摘されている。公正取引委員会では,従来より
競争政策,とりわけ入札談合防止の観点から地方公共団体の入札・契約制度等について調査を行ってきているところ,今般,入
札・契約制度改革の進展を踏まえ,特に以下の事項について,地方公共団体における入札・契約実務の実態,あるいは制度的課
題等に対する意見を把握することを目的として,アンケート調査を実施した。
① 入札・契約において競争の実効性が確保されているか。
② 発注案件の実態に即した入札・契約方法が採用されているか。
③ 発注者における入札談合の調査が実効的に機能しているか。
④ 発注者が入札談合行為者に対して課す措置が適切に設定・運用されているか。
2
2
調査対象
60地方公共団体(47都道府県,13政令指定都市)の公共工事担当部局(回収率100%)。
3
調査方法
アンケート調査票(選択式・記述式)を対象地方公共団体に送付,回答を集計。
4
調査期日
平成15年3月28日に調査票発送,平成15年4月1日を基準日として回答。
調 査 結 果 ( 要 約 )
Ⅰ
入札・契約において競争の実効性が確保されているか
1
指名競争入札の運用改善状況について(p5)
一般競争入札の対象範囲については,約3分の1の19団体がWTO対象案件のみを対象としており,1億円未満にまで対象を広げている団体
は3団体にとどまった。一般競争入札の対象範囲拡大のための課題としては,事務手続の煩雑さを4分の3を超える46団体が指摘しており,そ
のほか不良業者の排除の問題,入札・契約担当部署の体制の問題を指摘する団体が多かった。
2 電子入札の導入について(p6∼7)
3
電子入札の導入を図る上での課題として,
「入札制度改革・業務改革」
,「必要な予算の確保」
,「システムの安全性・信頼性確保」,「受注者の負
担」について指摘する団体が多かった。また,電子入札は一般競争入札の対象拡大に「有効である」と回答する団体が8割を超えていた(49団
体)が,
「電子入札の導入に伴い一般競争入札の対象工事の拡大を予定している」と回答する団体は4団体,これに「検討中」
・
「検討予定」を含
めても17団体にとどまった。
3 地域要件の設定・運用状況について(p8)
地域要件の設定については,
「原則として地元業者を優先する地域要件を設定している」と回答する団体が44団体と7割を超えている。他方,
平成11年12月に公正取引委員会が都道府県に要請した地域要件における競争の確保の配慮について,「対策を講じている」と回答した団体は
30団体あったが,具体的施策内容について「個別工事ごとに競争に必要な業者数を確保できない場合に地域要件を緩和するとの対応を採ってい
る」等と回答した団体は11団体にとどまった。
4 分割発注・共同企業体の運用状況について(p9)
分割発注について,
「限定して運用する」と回答した団体が8団体にとどまる一方,
「中小企業の受注機会の増大等を図るため積極的に実施」,
「効率的な事業執行等を前提として可能な限り努める」と回答した団体は合わせて26団体に上っている。また,共同企業体の運用における競争
性確保について,
「競争性確保の観点から混合入札を実施する」等の回答があった団体は21団体と半数以下であった。
Ⅱ
発注案件の実態に即した入札・契約方法が採用されているか
1
複数年度継続発注工事の運用状況について(p10)
複数年度継続発注工事(大型工事)の契約者選定を「毎年度競争入札で実施するケースがある」と回答した団体は26団体と約半数に達する。
また,毎年度の競争入札を実施する理由については,「国の予算において国庫債務負担行為が認められにくい」(14団体),「業界団体等から分
離・分割発注についての要望が強い」
(8団体)との指摘が多かった。
2 随意契約の運用状況について(p11)
随意契約について,柔軟な運用の必要性を指摘しているのは10団体あった。柔軟な運用のために必要な措置としては,
「随意契約事由につい
ての一層の具体化」が最も多く(10団体)
,
「会計法令上の随意契約事由の追加」も5団体から指摘があった。
3
民間の能力を生かす発注方法の採用等について(p12∼13)
総合評価落札方式等の導入状況をみると,導入・試行済みの団体が16団体で,導入予定1団体を含めても3分の1以下にとどまっているが,
基本認識としては「定型的な案件については事務量が増加するため不適切だが,高度な企画力・技術力を要求される案件については積極的に導入
していきたい」との回答が38団体と過半数を占めた。
また,発注関係事務への民間能力の導入については,
「基本的に現在の体制で対応可能だが,高度な企画力・技術力を要する案件については民
間コンサルタントの活用を積極的に行うべき」との回答が33団体と過半数を占めた。
4 発注方法の柔軟化を図る上での課題について(p14)
発注方法の柔軟化を図る上で最も重要な課題としては,
「特に制度的課題はなく,運用改善により対応可能である」とする団体が21団体ある
一方で,
「予算単年度主義の緩和」
(20団体)
,
「プロポーザル方式や交渉方式による契約者決定手続の制度化」(18団体)も同程度の回答があ
った。
Ⅲ
発注者における入札談合の調査が実効的に機能しているか
1 第三者機関の組織・体制について(p15)
4
入札談合の調査のため,
「第三者機関を設置している」との回答があったのは30団体(うち外部組織が14団体)ある一方で,
「設置していな
い」との回答が27団体と約半数あった。
2 談合情報に対する調査方法について(p16)
調査過程における事情聴取以外の調査を「実施している」と回答した団体は20団体と3分の1に達した。なお,具体的な調査内容は,
「工事
費内訳書の分析」が19団体,
「過去の入札状況等の分析」が4団体あった。
Ⅳ 発注者が入札談合に対して課す措置が適正に設定・運用されているか
1 指名停止措置について(p17∼18)
指名停止の期間について自団体発注の案件でみると,短期については1か月∼12か月,長期についても3か月∼24か月と非常にばらつきが
あった。また,指名停止措置の実施時点については,
「中央公契連作成の指名停止モデルに基づき実施している」との回答が41団体と約7割あ
ったが,
「排除勧告の段階で一律実施している」と回答する団体も8団体あった。指名停止の対象となる違反事業者の地理的範囲については,「独
占禁止法違反行為を行った事業者であれば,発注が行われた団体・地域を問わない」との回答が46団体と4分の3を超えていた。また,違反事
業者について地方自治法に基づく競争参加資格の取消しを定めている団体も5団体あった。
2
損害賠償請求について(p19)
自団体発注の案件について「入札談合事件があり,地方公共団体自らが損害賠償請求を行った事例がある」との回答が11団体と5分の1近く
に達している(その他,刑法談合罪等に基づく損害賠償請求を行っている事例もある。
)
。また,契約書に損害賠償予定条項ないし違約金条項を設
定している団体も45団体と4分の3に達している。
Ⅰ
入札・契約において競争の実効性が確保されているか
1 指名競争入札の運用改善状況について
(1)一般競争入札・公募型指名競争入札が適用される範囲
30
25
20
15
10
5
0
公募型指名競争入札等の対象範囲(土木又は建築工事)
一般競争入札の対象範囲(土木又は建築工事)
団体
19
16
9
∼1億円
8
5
3
1∼3億円
3∼5億円
団体
5∼10億円
10億∼WTO対象案件 WTO対象案件のみ
※一部発注のものも含む。土木・建築工事で対象範囲が異なる場合は,低い額を採用した。
5
(2)
30
30
25
20
15
10
5
0
11
6
1
∼1億円
1∼3億円
3∼5億円
5∼10億円
10億∼WTO対象案件
※導入なし・廃止等除く。また,一部発注のものも含む。土木・建築で対象範囲が異なる場合
は,低い額を採用した。
一般競争入札・公募型指名競争入札等の対象範囲拡大のための課題(2つまで選択)
①一般競争入札を実施する場合の事務手続の煩雑さ 46団体( 43.0%)
⑤地元の関係業界の反対が強い
6団体( 5.6%)
②不良業者の排除が困難
27団体( 25.2%)
⑥検査体制
1団体( 0.9%)
③入札・契約担当部署の体制
14団体( 13.1%)
⑦中小企業向け契約目標比率があり,指名をしなければ達成できない
0団体( 0.0%)
⑧その他
6団体( 5.6%)
④特に障害はない(現在も可能)
7団体(
6.5%)
計
(3)
5
107団体(100.0%)
指名競争入札等における恣意性排除・競争性確保のため特に工夫している事項
○ 指名候補者から無作為な選定を行う「ランダム・カット」式指名選考の実施(北海道)
○ 一般競争入札の広範囲に適用(宮城県)
○ 仮指名により25社を選定,技術提案に優れる上位15社を本指名する技術評価型意向確認方式指名競争入札を1億円以上15億円未満の
工事に採用(福島県)
○ 一部を除き,全工事で受注希望型競争入札を試行(長野県)
○ 公募型指名競争入札について,応募条件を満たす業者については原則指名(富山県,大阪府,京都府,広島市)
○ 指名基準よりも多い業者を指名(沖縄県,さいたま市)
○ 一定の指名条件に基づいて,被指名者の選考素案を機械的に作成する「選考素案作成システム」を稼動(札幌市)
Ⅰ
入札・契約において競争の実効性が確保されているか
2 電子入札の導入について ①
(1) 公共工事に係る電子入札の導入スケジュール
平成 15 年度
平成 16 年度
平成 17 年度
平成 18 年度
平成 19 年度
平成 20 年度
13団体
12団体
20団体
3団体
1団体
0団体
11団体
60団体
0団体
1団体
4団体
4団体
24団体
4団体
23団体
60団体
試行・一部運用開始
本
運
用 開
始
未
定
合
計
※ 平成 15 年度の試行・一部運用については既に実施済みのものを含む。
(参考) 国土交通省「CALS/EC 地方展開アクションプログラム(全国版)
」
(平成 13 年 6 月公表)による地方公共団体等の CALS/EC 導入目標年次
①都道府県・政令指定都市
平成 15 年度 一部本運用
平成 19 年度 完了
②主要地方都市(中核市)
平成 16 年度 一部本運用
平成 20 年度 完了
③市町村
平成 16 年度 一部本運用
平成 22 年度 完了
6
(2) 電子入札の導入を図る上での課題(1つ選択)
① 入札契約制度・業務改革
②
必要な予算の確保(システム開発・運用)
③ システムの安全性・信頼性確保
④ 受注者の負担(IT環境整備等)
⑤
中小事業者が容易に扱い得るシステムの開発
⑥ その他
⑦ 無回答
15団体( 22.4%)
団体
14団体( 20.9%)
15
11団体( 16.4%)
11団体( 16.4%)
10
5団体( 7.5%)
5
9団体( 13.4%)
2団体( 3.0%)
計
67団体(100.0%)
電子入札の導入を図る上での課題
15
14
11
11
5
0
①
②
③
④
⑤
※ その他・無回答除く
(※複数回答があるため,総数は一致しない。
)
(⑥その他の内訳(9団体)
)
○市町村・業者への普及啓発
○市町村との調整
2団体
2団体
○①∼⑤すべてが大きな課題
○実証実験を踏まえ課題の整理・検討を行う
1団体
1団体
○既存システムとの連携
1団体
○紙ベースの提出資料や入札保証額等の扱いの整備 1団体
○特になし
1団体
Ⅰ
入札・契約において競争の実効性が確保されているか
2 電子入札の導入について ②
(3) 電子入札は,一般競争入札の対象となる公共工事の範囲の拡大に有効と考えるか
①
有効である
②
有効ではない
(4)
①
49団体( 81.7%)
8団体( 13.3%)
③ どちらでもない
1団体(
1.7%)
④ 無回答
2団体(
3.3%)
計 60団体(100.0%)
電子入札の導入に伴う入札・契約制度の見直しの実施予定の有無
一般競争入札の対象となる公共工事の範囲の拡大
団
体
②
予定価格・指名業者等入札関係情報の公表の取扱い
数
団
体
数
7
実施予定
4団体( 6.7%)
実施予定
9団体( 15.0%)
検討中
6団体( 10.0%)
検討中
4団体(
検討予定
7団体( 11.7%)
検討予定
6団体( 10.0%)
検討課題
2団体( 3.3%)
6.7%)
検討課題
1団体(
未定
15団体( 25.0%)
未定
7団体( 11.7%)
予定なし
26団体( 43.3%)
予定なし
計
60団体(100.0%)
※「予定なし」には既に実施済みのものも含む。
また,無回答は「予定なし」とした。
(実施予定の具体的内容(4団体)
)
○ 受注希望型競争入札について,全ての建設工事・委託業務に拡大
○ 対象工事金額の拡大
○
公募型(希望型)指名競争入札の対象範囲を拡大
○
具体的内容については未定
1.7%)
33団体( 55.0%)
計
60団体(100.0%)
※「予定なし」には既に実施済みのものも含む。
また,無回答は「予定なし」とした。
(実施予定の具体的内容(9団体))
○入札関係情報をホームページ等で公表(6団体)
○予定価格等を事前公表(3団体)
Ⅰ
入札・契約において競争の実効性が確保されているか
3 地域要件の設定・運用状況について
(1) 地域要件の設定内容
①
地元業者(県内等に本店又は営業所を有する業者)を優先して設定
② 工事内容等総合的に判断して設定
③ 特になし
④ その他(無回答含む。
)
計
44団体( 73.3%)
地域要件の設定内容
団体
50
11団体( 16.7%)
1団体( 1.7%)
40
30
4団体( 8.3%)
20
60団体(100.0%)
10
0
44
11
①
1
③
②
※ その他除く
(2)
平成11年12月の公正取引委員会の要請(地域要件における競争の確保の配慮)に対する対応
8
①
講じている
② 講じていない
③ 無回答
計
30団体( 50.0%)
28団体( 46.7%)
2団体( 3.3%)
地域要件設定の際の競争性確保のための
の措置状況
無回答
3.3%
60団体(100.0%)
(①の講じている場合の内容)
○一般的な指名競争の競争性向上(19団体)
○ケース・バイ・ケース
(11団体)
(措置の具体例)
○ 一定の必要な業者数が確保できない場合に地域要件を緩和(業者数については,30社∼8社)
○ 公募型指名競争入札において,平成14年度から指名業者数の定めを廃止
○ 受注希望型競争入札(事後審査,郵送方式)を導入
○ 一定規模の工事において指名業者数を10社から原則15社に拡大
講じていな
い
46.7%
講じている
50.0%
Ⅰ
入札・契約において競争の実効性が確保されているか
4 分割発注・共同企業体の運用状況について
(1)分割発注の運用状況について
分割発注の運用状況
①
効率的な事業執行や適正な発注ロットを前提として可能な限り努める
②
③
中小企業の受注機会の増大等を図るため積極的に(原則)実施
限定して運用(合理的な理由がない限り原則として行わない等)
計
18団体( 52.9%)
限定して
運用
23.5%
8団体( 23.5%)
8団体( 23.5%)
34団体(100.0%)
積極的に
実施
23.5%
※その他(無回答・不明含む。
)を除く。
(2)共同企業体の運用状況について
9
ア
経常JVの地元業者技術習得の効果の有無
共同企業体(経常JV)が地元業者の技術習得に効果を挙げているか
①
②
効果を挙げている
効果を挙げていない
19団体( 31.7%)
8団体( 13.3%)
③
経常JV採用・登録・実績なし
17団体( 28.3%)
④
⑤
県内・県外業者組合せなし
不明・その他
3団体(
5団体(
⑥
無回答
8団体( 13.3%)
計
イ
無回答
13.3%
不明・その他
8.3%
5.0%)
8.3%)
60団体(100.0%)
共同企業体において競争性を確保する観点から講じている措置(24団体(40.0%)回答)
①
②
単独企業との混合入札を実施
やむを得ない場合に混合入札可
③
その他
計
合理的な
範囲内で
努める
52.9%
19団体( 79.2%)
2団体( 8.3%)
3団体( 12.5%)
24団体(100.0%)
効果を挙げて
いる
31.7%
県内・県外組
合せなし
5.0%
経常JV採用等
なし
28.3%
団体
効果を挙げて
いない
13.3%
経常JVにおける競争性確保のための措置
20
15
19
10
5
0
2
①
※ その他除く
②
Ⅱ
発注案件の実態に即した入札・契約方法が採用されているか
1 複数年度継続発注工事の運用状況について
(1)複数年度にわたり継続するプロジェクトの契約者の決定方法(複数回答可)
(括弧内は,平成14年度発注の5億円以上の土木工事における件数の合計(回答ベース))
① 初年度に,次年度以降を含む施工者
について競争入札により決定する ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・46団体(290件)
② 毎年度競争入札を実施する・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26団体(
③ 初年度発注分につき競争入札を実施し,
86件)
複数年度継続発注工事の契約者選定の手法・件数
団体
団体数
290
50
― 件) 30
26
46
10
<適用対象工事の主な回答例>
20
26
(①の場合)
10
○ 明らかに大ロット発注したほうが効率的な橋梁補修工事,トンネル工事及びダム工事等の場合
0
○ 工事の性質上,分割発注が不可能な(債務負担行為で実施)場合
①
②
○ トンネル工事等かし担保責任を負うケース及び経済性をかんがみた場合
(②の場合)
○ 分割発注が可能で継続施工ができる工事
○ 港湾工事
○ 焼却工場建設のように焼却炉設備と建物の完成年度を勘案しながら,発注するような場合
(③の場合)
○ 国庫補助事業で国が債務負担行為の設定を認めない場合
○ 構造上,一体不可分のものを予算の都合上,分割して発注するものや下水道のシールド工事で 1 次覆工工事と 2 次覆工工事等の場合
○ 本体工事と密接に関連する付帯的な工事
(2)①又は③の採用の障害となっている制度・運用(複数回答可)
(無回答除く。
)
団体
①
国の予算において国庫債務負担行為が認められにくい
14団体( 46.7%)
②
業界団体等から分離・分割発注についての要望が強い
8団体( 26.7%)
15
③
会計検査に対する対応が面倒である
1団体(
3.3%)
10
④
その他事務的に煩雑である
0団体(
0.0%)
⑤
その他
5団体( 16.7%)
⑥
実績なし等
2団体(
計
6.7%)
30団体(100.0%)
10
1
③
④
前記アの①又は③を採用する場合の障害
14
8
5
0
1
①
②
※ その他・実績なし等除く
③
件
300
200
100
0
-100
-200
-300
-400
86
次年度以降は初年度施工者に随意契約により発注する・・・・・・・10団体( 26件) 40
④ 該当なし ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1団体(
件数
0
④
Ⅱ
発注案件の実態に即した入札・契約方法が採用されているか
2 随意契約の運用状況について
(1)契約案件の実態に応じた契約者選定を行う観点から,特命随意契約の柔軟な運用を図る必要があるか
① 柔軟な運用は必要ない
48団体( 80.0%)
② 柔軟な運用が必要である
③ 無回答
10団体( 16.7%)
2団体( 3.3%)
計
60団体(100.0%)
(2)上記(1)の柔軟な運用が必要な場合,特命随意契約の対象に,新たに含めるべき案件(4団体回答)
○ 契約の性質又は目的を満たす業者が 1 社しか存在しない場合,環境問題等で工事を中断した場合
11
○
コンピューターのソフト開発を含む案件
○ 災害等の緊急工事
○ 砂防ダム等,複数年度にわたって一つの構造物を完成させる工事の場合,現在は予算の関係から各年度に分割発注しているが,工事内容に
よっては,次年度以降の工事を随意契約とすることができる制度などの検討も必要
(3)随意契約の柔軟な運用について必要な措置
① 随意契約事由について具体例の一層の明確化を図る
② 会計法令上の随意契約事由を追加する
③ 現行制度や通達等の発注担当者への周知・啓発を行う
④ 随意契約に対する会計検査の簡素化を図る
計
随意契約の柔軟な運用についての必要な措置
10団体( 55.6%)
5団体( 27.8%)
2団体( 11.1%)
1団体( 5.6%)
18団体(100.0%)
団体
10
8
10
6
4
5
2
0
①
②
2
③
1
④
Ⅱ
発注案件の実態に即した入札・契約方法が採用されているか
3 民間の能力を生かす発注方式の採用等について ①
(1)総合評価落札方式やVE(Value Engineering)方式等提案型発注方式に対する基本認識
①
提案型発注方式は,定型的な案件についてはむしろ事務が増加するため不適切だが,
高度な企画力・技術力を要求される案件については積極的に導入していきたい(38団体)( 60.3%) 団体
40
② 予定価格の上限拘束性が維持されているなど,制度的に提案型発注方式が明確
35
に位置付けられていない試行段階では,導入は困難である
(6団体)(
9.5%)
③ 提案を公正・中立に評価する体制を構築することが難しく,導入は困難である(5団体)( 7.9%)
④ 現在の発注事務の実態をみれば,事実上企画・設計は民間の能力に依存しており,
できるだけ広範に導入することが望ましい
(2団体)( 3.2%)
⑤ 地元業界からの反対があり,導入は困難である
⑥ その他
(0団体)( 0.0%)
(12団体)( 19.0%)
12
計
30
25
20
15
10
5
0
(63団体)(100.0%)
(2)総合評価落札方式等の導入についての検討状況
①導入・試行済み(一部工事・方式の実施も含む。
) 16団体( 26.7%)
②導入予定
1団体( 1.7%)
③導入に向け検討中
④検討中
7団体( 11.7%)
7団体( 11.7%)
⑤検討予定
8団体( 13.3%)
④未定等
計
多様な入札方式の導入に対する認識
38
6
①
②
○
学識経験者等(外部委員)からの意見聴取を行っている(秋田県,東京都,兵庫県)
○
○
部内に審査会を設けて,審査している(石川県)
外部委員を公表しない(東京都)
,その他検討中・検討予定(4団体)
2
0
③
④
⑤
※ その他除く
総合評価落札方式等の導入状況
未定等
35.0%
21団体( 35.0%)
60団体(100.0%)
(3)提案の公正な審査や不正行為の防止に関して,貴団体で特に工夫をしている事項(9団体(15.0%)回答)
○ 参加業者名を明らかにせず,審査を行っている(東京都,名古屋市(一部局において 14 年度試行))
5
導入・試行済
み
26.7%
導入予定
1.7%
導入に向け
検討中
11.7%
検討予定
13.3%
検討中
11.7%
Ⅱ
発注案件の実態に即した入札・契約方法が採用されているか
3 民間の能力を生かす発注方式の採用等について ②
(4)発注関係事務への民間能力の導入(企画設計・施工管理)に関する基本認識
①
地方公共団体の発注では定型的な案件が多いため,基本的に現在の体制で対応可能だが,高度な企画力・技術力を要する案件については民
間コンサルタントの活用を積極的に行うべき。
(33団体)( 55.0%)
② 現在の高度化された工事案件に適切に対処するためには,例えばCM(Construction Management)方式(注)を採用するなど,企画・設計
や業者選定の段階から実務的な面は民間コンサルタントに委託し,発注者は調整業務に特化すべき。
(4団体)( 6.7%)
③ 発注事務の公正性を確保するためには,例えば複数の団体で協力するなど発注者での体制強化で対応すべきであり,民間活力の導入は限定
的に対応すべき。
(3団体)( 5.0%)
(注) 工事の企画段階からCMR(Construction Manager)とマネジメント契約を結び,当該CMRは,発注者の代理人として,設計の検討,工程・品質管理,
費用管理などを運営していく方式。
④ 小規模案件については現在の体制で可能であり,大規模案件については設計・施工一体型発注を活用して対処すればよく,発注関係事務自
13
体への民間の活用拡大は不要。
⑤ その他
(2団体)( 3.3%)
(18団体)
( 30.0%)
計
(60団体)
(100.0%)
(⑤その他の主な回答)
○
現体制で対応可能。客観的な評価制度の整備が必要。
○
各自治体の実情に合わせて選択されるべき。
○
定型的・小規模案件については,現体制で可能。大規模工事について
は導入の効果・問題点の検証計画を予定。
○
現体制で可能であるが,今後検討の必要性がある。
団体
民間活力の導入についての認識
40
30
33
20
10
0
①
※ その他除く
4
3
2
②
③
④
Ⅱ
発注案件の実態に即した入札・契約方法が採用されているか
4 発注方法の柔軟化を図る上での課題について
(1)発注方法の柔軟化を図る上での最も重要な課題(1つ選択)
団体
①
特に制度的課題はなく,現行の指名競争入札等の運用改善により対応可能である(21団体)
②
③
予算単年度主義を緩和し,複数年度に渡る契約を容易にすべき
入札方式の原則(基本的に入札価格の高低に基づき契約者を決定)を緩和し,
プロポーザル方式や交渉方式による契約者決定手続を制度化すべき
(20団体)
(18団体)
④ 予定価格の上限拘束性を緩和すべき
(1団体)
⑤ 発注者が説明責任を適切に果たすことを前提として,随意契約の要件を緩和すべき(1団体)
⑥ その他(検討中)
⑦ 無回答
計
(1団体)
発注方法の柔軟化を図る上での課題
25
20
21
15
20
18
10
5
0
①
②
③
1
④
1
⑤
(2団体)
※ 無回答除く
(64団体)
(複数回答があるため,総計は一致しない。
)
1
⑥
14
(2)
(1)で示した課題の選択理由
(②の理由)
○ 砂防工事等1つの構造物を複数年度予算で完成させる工事については,複数年度に係る契約を容易に行える制度を確立することが,事務手続上からも発注者に
とって有利な改善策である。
○ 年度末に工期が集中する工事の改善が図られ,年間を通じて平均的な工事発注が可能となる。
○ 複数年度にわたる大型工事について,本来,一体の工事であるのにもかかわらず,国庫補助事業であることから,国が債務負担行為を認めない場合,初年度に
おいて競争入札により発注することにより,入札における競争性は確保されるが,次年度以降は当初の契約の相手方との随意契約により契約締結を行うため,契
約手続きが不透明になるばかりでなく,契約金額についても競争性が発揮されず割高となってしまっている可能性がある。入札・契約手続きの透明性,競争性,
公平性の観点からすべての国庫補助事業について,国が債務負担行為を認めるべきであると考える。
(③の理由)
○ 入札金額及び主観的要素等から総合的に落札者を決定することにより,住民の方々からも分かりやすく,納得のいく入札・契約手続を行うことが必要である。
○ ダンピング受注が増大している中で適正な成果品を確保するために価格以外の競争を考慮する必要がある。
○ 民間において固有の技術を有する工事については,個別・具体の民間の技術力を広く活用することにより,品質の確保,コスト縮減等を図るとともに技術力に
よる競争を促進することが期待できるため。
○ 現行の制度では,予定価格の範囲内でも最も低価格を提示した者と契約する制度が基本であるが,これに施工期間や施工にあたっての車両通行止め期間の短縮
といった条件を加えて総合的に評価していく制度の活用を図る必要がある。
(④の理由)
○ 民間の技術力を最大限に活用するに当たり,標準的な積算基準に基づく予定価格は,運用上の妨げとなる場合がある。
(⑤の理由)
○ いわゆるダンピング入札が懸念される状況で,入札価格だけでなく,いかに品質を確保又は向上を図り,技術力のある施工者を選定するかが課題。その一つの
施策として随意契約の活用が考えられるため。
Ⅲ
発注者における入札談合の調査が実効的に機能しているか
1 第三者機関の組織・体制について
(1)第三者機関の設置状況について
① 設置している
30団体( 50.0%)
(うち外部組織 14団体)
② 設置していない
27団体( 45.0%)
③ 設置予定(15 年度)
2団体( 3.3%)
④ 回答なし
1団体( 1.7%)
計
60団体(100.0%)
※ 内部組織として設置と回答のあったものは,
「設置している」に含めた。
団体
談合調査のための第三者機関の設置状況
30
30
20
16
10
0
27
14
設置済み
外部
2
未設置
設置予定
15
※ 回答なし除く
(2)調査の実効性を確保するための配慮(外部人材の活用等について回答のあったもの)
○ 学識経験者等数名で構成,人選については,委員構成のバランスに配慮し,技術的・専門的見地からの判断ができる,談合情報に詳しい,
入札・契約制度に精通している,業界・団体からの圧力を受けにくいことに留意(宮城県)
○ 公取委OBを委員として選定。他に弁護士,法律及び会計学の大学教授,行政経験者を選定(埼玉県)
○ 外部委員6名で構成(岐阜県)
○ 弁護士や大学教授等,外部の専門家で中立的立場の人物を人選(愛知県)
○ 委員10名のうち弁護士,公取委経験者等民間から3名を選任(三重県)
○ 民間人6委員を委嘱(弁護士2名,会計士1名,大学助教授1名,民間企業人2名)(和歌山県)
○ 平成15年度から体制を強化し,新たに公取委・警察OB及び公募委員を追加(長崎県)
○ 弁護士,公認会計士等からなる委員で5人以内で組織(大分県)
○ 弁護士,公認会計士,大学教授2名,消費者団体役員の5名で構成(仙台市)
○ 「公正入札監視委員会」
(学識経験者等5名)
(福岡市)
Ⅲ
発注者における入札談合の調査が実効的に機能しているか
2 談合情報に対する調査方法について
(1)調査過程における事情聴取以外の調査について
事情聴取以外の調査の実施状況
① 実施していない
② 実施している
③ 回答なし
計
回答なし
1.7%
39団体( 65.0%)
20団体( 33.3%)
1団体( 1.7%)
60団体(100.0%)
実施してい
る
33.3%
実施してい
ない
65.0%
16
(2)事情聴取以外の調査の具体的内容
○工事費(積算)内訳書の提出・分析
○過去の入札状況等の分析
計
19団体( 82.6%)
4団体( 17.4%)
23団体(100.0%)
団体
20
事情聴取以外の調査の具体的内容
19
15
※複数回答があるため,総計は一致しない。
10
4
5
0
工事内訳書の分析
入札状況等の分析
Ⅳ
発注者が入札談合に対して課す措置が適正に設定・運用されているか
1 指名停止措置について ①
(1)独占禁止法違反行為に対する指名停止措置の期間(自団体発注案件に係るもの)
17
短
期
1か月
3か月
4か月
5か月
6か月
9か月
12か月
2年間の資格取消
計
団 体 数
1団体( 1.7%)
25団体( 41.7%)
3団体( 5.0%)
1団体( 1.7%)
19団体( 31.7%)
7団体( 11.7%)
3団体( 5.0%)
1団体( 1.7%)
60団体(100.0%)
長
期
3か月
4か月
6か月
9か月
12か月
14か月
15か月
18か月
24か月
2年間の資格取消
計
団 体 数
3団体( 5.0%)
1団体( 1.7%)
4団体( 6.7%)
22団体( 36.7%)
14団体( 23.3%)
1団体( 1.7%)
1団体( 1.7%)
8団体( 13.3%)
5団体( 8.3%)
1団体( 1.7%)
60団体(100.0%)
※ この他,公取委の刑事告発等の悪質事案によりさらに期間を加重すると回答した団体が9団体ある。
(2)独占禁止法違反行為に関わる指名停止措置の実施時点について
① 中央公契連の作成の指名停止措置モデルに基づき実施
41団体( 68.3%)
② 排除勧告の段階で一律実施
8団体( 13.3%)
③ 審決の段階で一律実施
1団体( 1.7%)
④ 立入検査の報道があれば実施
0団体( 0.0%)
⑤ その他
10団体( 16.7%)
計
60団体(100.0%)
短期
長期
1か月
指名停止期間(自団体発注案件) 団体
0
10
5か月
1
1
25
3
3
19
6か月
4
7
9か月
22
3
12か月
14か月
1
15か月
1
14
18か月
8
24か月
2年間資格取消
30
1
3か月
4か月
20
5
1
1
Ⅳ
発注者が入札談合に対して課す措置が適正に設定・運用されているか
1 指名停止措置について ②
18
(3)指名停止の対象となる独占禁止法違反事業者の地理的範囲
① 独占禁止法違反行為を行った事業者であれば,発注が行われた
団体・地域を問わない
46団体( 76.7%)
指名停止措置の地理的範囲
② 中央公契連の作成の指名停止措置モデルに基づき決定(当該
部局が所管している区域内)
6団体( 10.0%)
その他
中央公契連
③ 自都道府県・政令指定都市の発注する公共工事について独禁
13.3%
モデル
法違反行為を行っていた事業者
0団体( 0.0%)
10.0%
④ 自都道府県・政令指定都市及び県下の他の地方公共団体等が
団体・地域
発注する行為について独禁法違反行為を行っていた事業者
0団体( 0.0%)
問わず
⑤ その他
8団体( 13.3%)
76.7%
計
60団体(100.0%)
(①発注が行われた団体・地域を問わない主な理由)
○独占禁止法違反行為は競争性を阻害する極めて悪質な行為であるため
○他地域で違反行為を犯した建設業者が本件の公共工事入札に参加した場合の県民感情に配慮
○独占禁止法違反行為については企業体質そのものが問われる不正行為であるから
○発注者として毅然とした立場で臨むため
(4)独占禁止法違反行為に対して指名停止にとどまらず競争参加資格の取消しを定めている団体
基準を定めていない
39団体
基準を定めている
5団体
無回答
16団体
【適用基準の例】
計
60団体
○ 贈収賄,談合等独占禁止法違反行為で指名停止措置を講じたときは,あわせて,指名停止期間,入札参加資格を取り消している(宮城県)
○ 『建設工事の指名競争入札に参加するものに必要な資格並びにその資格審査の申請の時期及び方法等』
(第 11 条)において規定(京都府)
○ 契約規則において,
『公正な価格の成立を害し,若しくは不正の利益を得るために連合したものについては,その事実があった後2年間一般競争入札に参加させな
いものとする』と規定(広島市)
○ 談合の場合には,地方自治法施行令に基づき資格取消のケースもある(北九州市)
Ⅳ
発注者が入札談合に対して課す措置が適正に設定・運用されているか
損害賠償請求について
(1)入札談合事件について地方公共団体自らが事業者に損害賠償請求を行った事例の有無
事例なし
49団体
事例あり
11団体
計 60団体
【損害賠償請求事例】
団
体
損 害 賠 償 請 求 事 例
19
宮 城 県
福 島 県
東 京 都
大 阪 府
仙 台 市
大 阪 市
京 都 市
福 岡 市
山形県,三重県,
大阪府,京都市,
大阪市,広島市
航空写真測量業務に係る入札談合(係属中)
航空写真測量業務に係る入札談合(係属中)
造園工事に係る入札談合(事業者に対して直接請求)
(進行中)
低食塩次亜塩素酸ソーダに係る入札談合(平成 13 年 12 月和解)
航空写真測量業務に係る入札談合(係属中)
低食塩次亜塩素酸ソーダに係る入札談合(平成 14 年 6 月和解)
低食塩次亜塩素酸ソーダに係る入札談合(係属中)
造園工事に係る入札談合(事業者に対して直接請求)
(全社納付)
備
考
平成 13 年 6 月 19 日勧告審決
平成 13 年 6 月 19 日勧告審決
平成 14 年 1 月 17 日勧告審決
平成 11 年 1 月 25 日勧告審決
平成 13 年 6 月 19 日勧告審決
平成 11 年 1 月 25 日勧告審決
平成 11 年 1 月 25 日勧告審決
平成 13 年 9 月 12 日審判審決
競売入札妨害罪等の刑事事件に係る入札談合
(2)契約書における損害賠償予定条項ないし違約金条項の設定について
設定している 45団体
導入に向けて検討中 3団体
検討中 1団体
設定していない 11団体
計 60団体
【設定しているその賠償金率又は違約金率】
対請負金額
団
体
北海道,青森県,岩手県,山形県,福島県,埼玉県,東京都,神奈川県,新潟県,山梨県,富山県,岐阜県,愛知県,
三重県,大阪府,和歌山県,兵庫県,滋賀県,奈良県,広島県,山口県,島根県,香川県,愛媛県,福岡県,熊本県,
10%
長崎県,大分県,宮崎県,鹿児島県,沖縄県,札幌市,仙台市,千葉市,川崎市,名古屋市,京都市,大阪市,神戸市,
広島市 (計40団体)
20%
宮城県,長野県,鳥取県,北九州市,福岡市 (計5団体)
米欧における公共調達制度の概要
20
○
本資料は,本研究会のオブザーバーである京都産業大学法学部・楠講師
の報告資料であり,本資料の内容は,同講師が本年3月及び6月に行った
現地調査,および,その前後における資料調査に基づいている。
本資料の作成に当たり,本研究会会員の鈴木一(財)建設経済研究所常
務理事や米国ニューヨーク州弁護士の佐藤潤氏に貴重な協力をいただい
た。
資料2
○
米国
1 公共調達制度改革
の背景と改善点
EU
○ 「価格」のみを基準に契約者選定を行う競争入 域内市場の統合の必要性
札を原則としつつ,例外としての随意契約が横行 ○
構成国間での経済取引の自由なアクセス実現
し,国家予算が非効率に使用されたという問題の ○
構成国内企業と構成国外企業との間の不平等な取扱
存在
い禁止
○ 「競争」が徹底されることで,効率性が向上す
ることのコンセンサス
○
公共調達に求められる「競争性」の理解のあい
まいさ,過去の改革の不徹底
21
○
発注者側の多様なニーズに対応するスキーム
を整備する必要
※
最近の改革動向としては,多様な発注機関のニーズに
対応するスキーム作りの必要性(現在,EU指令改正作
業中)
米
2
契約者選定プロ
国
方式
競争性
契約者評価基準
セスと「競争性」
競争入札
価格のみ
競争的
完全かつ公開の競争
総合評価
プロポーザル
受注を希望する者は,資格要件
競争手段の組合せ
を満たしている限り,すべて競 総合評価
争に参加できる。
(二段階方式の場合,二段階目は
価格のみ)
その他の競争手段
22
大企業を除いた上での「完全か
つ公開の競争」
一定のソースを除い
た上での
(中小企業保護のため)
供給元が固定している調達にお
「完全かつ公開の競争」 いて,代替的な調達先を確保す
るため,当該供給元を除いて実
施する「完全かつ公開の競争」
(代替的ソース確保のため)
非競争的手段
非競争的手段
(典型的には随意契約)
ケースによる
一定規模以上の企業を除き,受
注を希望する者は,資格要件を ケースによる
満たしている限り,すべて競争 (「完全かつ公開の競争」型参照)
に参加できる。
当該供給元を除き,受注を希望
する者は,資格要件を満たして
いる限り,すべて競争に参加で
同上
きる。
上記以外の手法
総合評価
(技術の唯一性などを考慮)
EU
2
契約者選定プロ
(方式)
(競争性)
(契約者の評価基準)
セスと「競争性」
公開入札方式
制限的入札方式
23
交渉方式
受注を希望する者は,資格要件を満たしている限り,すべて 価格のみ
競争に参加できる。
又は総合評価
入札参加を希望し,資格要件を満たす者のうち,発注者が選 価格のみ
定した複数の業者が競争に参加できる。
競争(入札以外)への参加を希望し,資格要件を満たす者の
うち,発注者が選定した複数の業者が競争に参加できる。
又は総合評価
総合評価
米国
3
予定価格・上限価格
EU
なし(ただし,上限拘束性のない「合理的価格」を算
(価格を基準に契約者を選定する場合) 定する価格分析技術についての規定あり
(FAR15.404-1(b)(2))(注)
「合衆国政府は多様な価格分析技術を用いて公正で
合理的な価格を確実なものとすることができる。
(ⅰ)
勧誘に応じて提出され提示された価格の比較。
通常,適切な価格競争は価格の合理性をもたらす。
(ⅱ)
同様の対象物についての,過去に提示された価
格及び過去の政府契約・民間契約の価格と現在提
示されている価格の比較。その際,比較の有効性 なし
24
と過去の価格の合理性が確認されうることが条件 ※フランスでは,かつて Adjudication(価格競争型入
である。
(ⅲ)
価格設定の追加的な吟味を確実ならしめる重
要な不一致に焦点を当てる,ラフな指標上の推測
のためのものさしの手法利用と適用。
(ⅴ)
提示された価格と,それと独立した合衆国政府
のコスト推測の比較。
(ⅵ)
提示された価格と同様の対象物に関する市場
調査により得られた価格との比較。
(ⅶ)
申込者により提供された価格設定情報の分
析。」
(注)Federal Acquisition Regulation(連邦調達規則)。
札)類型において,上限価格制を用いていた。
米国
4
EU及び主な加盟国
中小企業保護・
地域振興
「一定のソースを除いた完全かつ公開の競争」による契約者選
定手法に関し,FAR は,小企業のみが競争し得る,又は失
業率が高い地域を優先する類型を設定(FAR§6.203-6.205)
①
FAR6.203:小企業配慮の法的要請を実現するた
めに,契約担当官は小企業のみが競争し得るよう勧誘を取
り分けて置くことが許される(例えば,小企業技術開発法
が各行政機関に対し研究開発予算の一部を小企業に与え
ることを義務付けている)
FAR6.204:小企業法 第 8 条 a 項は,小企業庁
②
25
が他の行政機関と契約を締結し,同契約を特定企業に請け
負わせる権限を小企業庁に与えている。小企業庁は特定企
業の能力を当該行政機関に伝え,また特定企業のビジネス
計画に見合う調達を紹介するよう当該行政機関に要請す
ることができる
FAR6.205:HUBZone 小企業措置(過剰労働地域にお
③
ける小企業優先枠)
※
なお,州の公共調達において,自州内の企業を優先する
法令・規則を設けている州は多い。
EU:なし
英国:「平等取扱い」以上の対策はない。
フランス:労働者生産協同組合,農業生産団体,工芸家協同組
合等に対する優先発注規定がある(公共契約法典 54
条)。
ドイツ:分離発注による中小企業の利益考慮の規定があり(競
争制限禁止法 97 条),実務上も中小企業優先発注がなさ
れる場合がある。
米国
5
監視体制
EUの主な加盟国
英国:
○ 政府契約室(OGC:非軍事的調達を担当)内部において,アカウン
① 発注機関の契約過程(契約者選定,契約締
タビリティーの観点から,会計担当官(accounting officer)は契約の付与
結等)を審査し,Agency Senior Procurement
において金銭的価値(value for money)が得られたかを確認し,予算
Executive(ASPE) に提出する報告書の確認
の適正な拠出を監視している。
○
英国会計検査院(National Audit Office:NAO):NAO は OGC の
調達機関等内 ② ASPE に対する年次報告書の作成と提出
拠出した予算を全体としてチェックするが個々の契約に関するフォー
③ 年度ベースでの競争促進目標・計画の
マルなチェックは行わない。
ASPE への勧告 。
競争弁護官(Competition Advocate):
④
ASPE に対する,競争にかかわる個人的組
フランス:
○ 契約者選定に関して入札委員会が関与していることが特徴的である。
入札委員会は,例えば地方自治体の公共調達の場合,地方自治体の知事,
地方議会の議員等によって構成される 。経済財政産業省・競争消費不
正抑止総局県支分局長の代理者は委員ではないが,委員会に参加するこ
会計検査院長(Comptroller General)は,発注
とができる 。同省は違法行為についての監視・監督を行っている。
機関とコントラクターとの契約における記録
○ 1991 年 1 月 3 日付け法によって公共調達及び公共事業の民間委託に
を調査することができる(資材・労働・製造な
関する調査のための省庁間会議が設立された 。この省庁間委員会は公
どの直接費用に関する記録に限定される)。そ
共調達あるいは公共サービスの民間委託契約あるいは地方団体,公設法
の他公共調達にかかわる会計面での検査。
人,第三セクターによって締結された全ての契約の合法性を審査する
(例えば,公務員の特定事業者の不当な優遇を禁止する刑法典 432−14
条違反行為の検査を行う権限など)。
織的な説明責任のシステムの推奨。
26
会計検査院
ドイツ:
① 関連行政機関のプログラム又は業務に関 ○ 公共工事については連邦交通建設住宅省が一括して契約を担当する
(物品調達に関しては内務省調達局 )ので,公共工事に関しては同省
係する検査又は調査(関係行政機関の政策又
が第一次的な監視・監督機関となる。
は行為だけでなく,コントラクターなど連邦
○ 連邦会計検査院は発注機関による予算の拠出が適正になされたかの
予算を受ける者も検査・調査の対象)
全体的なチェックを行うだけでなく,1000 万ユーロ以上の大型工事の
② 関連情報へのアクセス権限
調達について契約人が義務的に提出する建設計画を連邦会計検査院が
検査し連邦議会に直接報告する,という形で個々のプロジェクトを監
③ 各政府機関,議会,司法長官への報告
視・監督している 。
検査官(Inspector General):
その他の
第三者機関
米国
禁止・ 禁止措置:法令違反等を行った企業に対する,公共調達への参
加を認めない措置
停止措置
手続:禁止措置の手続は次のように進められる。
各行政機関は禁止措置の発動を検討する場合,コントラク
ターに対し不服を述べ,情報を提供させる機会を与える。禁
止措置の手続はコントラクターに対し禁止措置が検討され
ていることを通知することで開始される。有罪判決,民事判
決に基づく場合,あるいは事実に争いがない場合には,禁止
措置担当官は,停止措置がとられていなければ,コントラク
ターから情報を受けてから一定期間(30 営業日)以内に行
政記録又はコントラクターからの情報を元に禁止措置の決
定を下す。事実に争いがあれば,コントラクターは事実認定
にかかわるヒアリングを要請することができ,事実認定担当
官が事実認定を行い,これと行政記録又はコントラクターか
らの情報を併せ,禁止措置担当官が禁止措置の決定を下す。
この際,コントラクターに対しては,弁護士同伴,証人尋問
等の適正手続の保障が FAR 上明記されている。
6
27
一般調達庁(General
Service Agency) は 禁
止・停止措置を受けた
企業のリストを取りま
とめ維持している。
○ 禁止・停止措置が
対象コントラクター
の特定部署に限定さ
れていない限り,当
該措置はコントラク
ターのすべての部署
に適用される。
○ 各行政機関の長ま
たは代理人が書面に
より当該コントラク
ターと事業関係を継
続する必要性がある
ことを正当化しない
禁止措置の期間は原因の重大性により決まるが,通常三年を
限り,禁止・停止措
超えるべきでないという意見がある。なお,禁止措置の以前に
置は全行政機関に対
停止措置がなされている場合には,禁止措置の期間を判断する
し適用される。
にあたり停止措置の期間が考慮される。なお,同時に科されて
いる刑罰の重さと禁止措置の期間は無関係であるとされる。刑
罰は過去の違反行為に対する制裁であるのに対し,禁止措置は
現在または将来にわたる政府契約の完全さを確保するための措
置であり,両者は趣旨を異にするからである。
停止措置:捜査又は法的手続が完了する間に(暫定的に)公共
調達への参加を認めない措置 手続:提訴状を根拠になされる。
この事実以外は,停止措置は禁止措置と同様の手続がとられる。
停止措置は暫定的措置であるため,捜査又は法的手続が終了す
ると停止措置も終了する。停止措置の通知後 12 ヶ月経った段階
で司法長官補が延長を要請しない限り,停止措置は終了する。
EUの主な加盟国
(英国)
○ 公共工事入札参加資格審査(ロングリスト)
あり。
○ 政府調達庁(
OGC)
・ 競争法により談合罪が確定した企業が,入札
段階で応札した場合には,受注者を絞り込む段
階(ショートリスト)から排除している。その
期間は不定。
・ 各公共発注機関は,契約に伴う汚職があった
場合,契約完了後(工事進捗中)であっても,
契約を取り消すことができる。これは,当該工
事に限らず,該当企業が別の公共発注機関の発
注工事で汚職を行った場合でも適用できる。
・ 工事進捗中の契約解除により発生する損害
は,企業が負担する。これは,入札契約書に明
記されている。
(フランス)
○ 公共工事入札参加資格審査(リスト)なし。
○ 反競争的行為による競争法違反のみでは,公
共契約から排除されることはない。
(1986 年の同法改正までは,公共工事の応札
資格を5年停止。)
○ ただし,談合行為による競争法上の違反と同
時に贈賄罪などで刑法典により処罰されるよ
うな場合,公共契約法に基づき,公共契約から
排除される(通例では,5年から10年)。
(ドイツ)
○ 公共工事入札参加資格審査(リスト)なし。
○ 建設工事請負契約規程(VOB−A)の基づ
き公共工事からの排除を行うが,入札参加資格
の停止,その期間は各発注機関で決定する。
○ 停止期間は6カ月
米国
EUの主な加盟国
不服申立可能な調達対象:限定されない
英国:
スタンディング:利害関係人(注)
○ 問題があれば調達担当官に苦情を申し立て
発注機関 救済内容:申立後 35 日以内の発注機関による「最良の努力」及び結
ることができる。
果通知
○ 不 服 で あ る 供 給 者 は 高 等 裁 判 所 (High
Court)に苦情を申し立てることができる。事
更なる不服申立:下記の4機関いずれに対しても可
件 は 欧 州 裁 判 所 (European Court of
不服申立可能な調達対象:限定されない
Justice)に控訴することができる。
スタンディング:発注機関の行為によって不利益を被った又は害を受
けた者
連邦地方
フランス:
救済内容:契約付与後のエクイティー上の救済を認めないことでは判
○ 事業者は,契約付与の前後を問わず,経済
裁判所
例は一致している 。しかし契約付与前のそれについては判例上見
財政産業省又は裁判所に不服を申し立てる
解が一致していない。
ことができる。不服申立人は損害賠償請求を
裁判
更なる不服申立:連邦巡回区裁判所
することができる。
不服申立可能な調達対象:限定されていない
所
ドイツ:
スタンディング:限定されていない
連邦抗告 救済内容:CFC は発注機関が契約付与する前に 申し立てがなされれ ○ 委託発注審査部の決定に対して,同審査部
裁判所
の手続参加人は裁判所(連邦カルテル庁委託
ば,差し止め決定または宣言的判決をすることでエクイティー上の
発注審査部の場合はデュッセルドルフ高等
救済をすることができる 。ただ,巡回区裁判所判決は,CFC の契
(CFC)
約付与後のエクイティー上の救済は認めないとしている。
裁判所)に対して異議申立てを行うことがで
きる。
更なる不服申立:連邦巡回区裁判所
○
500 万ユーロ以上の調達の場合,苦情申立
不服申立可能な調達対象:限定されていない
人(発注手続にかかわる利害関係者)は調達
スタンディング:利害関係人
連邦会計 救済内容:不服申立が契約付与後 10 日以内になされていれば,自動
手続きが VOB に従っていないことを理由に
事後に異議申立て(Sofortige Beschwerde)
検査院
的な結果の凍結が認められる。なお,発注機関は,緊急でやむを得
を行うことができる。連邦の調達の場合,連
ない状況がその結果を維持することを必要としていると判断する
(GAO)
その
邦カルテル庁(Bundeskartellamt)委託発注
場合には,一方的に,当該契約を進めることが許されている。
審査部(Vergabekammer)が担当機関である。
更なる不服申立:CFC 又は連邦地裁
他
各州の調達の場合,各州の苦情申立て機関
不服申立可能な調達対象:自動情報処理装置及び通信機器に限定
(州法による)に苦情を申し立てることがで
スタンディング:利害関係人
きる。これら機関は異議申立てから 5 週間以
(GSBCA) 救済内容:不服申立が契約付与後 10 日以内になされていれば,自動
内に決定を下さなければならない。
的な結果の凍結が認められる(命令的)。
(注2)
更なる不服申立:連邦巡回区裁判所
注1:本表における「利害関係人」とは,契約の付与又は非付与により直接の影響を受ける者である。
7
不服
調達
申立制度
機関
28
2:GSBCA の正式名称は General Services Board of Contract Appeals。
公
公共
共工
工事
事の
の入
入札
札及
及び
び契
契約
約の
の適
適正
正化
化を
を図
図る
るた
ため
めの
の措
措置
置に
に関
関す
する
る指
指針
針
(
(平
平成
成1
13
3年
年3
3月
月9
9日
日閣
閣議
議決
決定
定)
)の
の概
概要
要
公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(以下「法」とい
う。
)第15条第1項の規定に基づき,公共工事の発注者である国,特殊
法人等,地方公共団体が統一的,整合的に公共工事の入札及び契約の適正
化を図るため取り組むべきガイドラインとして定める。
国土交通大臣,総務大臣及び財務大臣は,各発注者の取組み状況につい
て,毎年度,調査し,結果を公表し,指針に照らして特に必要のある場合
は改善を要請する。
なお,特殊法人等以外の法人についても,建設工事の入札及び契約の適
正化を図る観点から,所管省庁又は地方公共団体は,法及び指針の周知徹
底等適切に監督を行う。
1
保
確保
の確
性の
明性
透明
1 透
(1)情報の公表
入札及び契約に係る情報は,すべて公表を基本とすること。法により公
表を義務付けている事項(有資格業者名簿,指名基準,入札者名,指名業
者名,指名理由等)のほか,各発注者の工事の発注量や執行体制等の個別
の状況を考慮しつつ,次に掲げる事項についても公表。
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
競争参加者の客観点数,主観点数及びそれらの合計点数並びに順位
等級区分を定めたときの基準
予定価格及び積算内訳
低入札価格調査の基準価格及び最低制限価格
低入札価格調査の結果の概要
第三者機関の設置・運営の概要及び議事の概要
苦情処理の方策の概要
指名停止に係る者の名称,期間及び理由
等
なお,予定価格については,国は,事後の契約において予定価格を類推
させるおそれがないと認められる場合において,契約締結後に,公表。地
方公共団体は,入札前においても予定価格の公表可(低入札価格調査の基
準価格及び最低制限価格の取り扱いもそれに準じる)。
(2)第三者の意見を適切に反映する方策
入札及び契約手続きに関し,学識経験者等の第三者からなる入札監視委
員会等の第三者機関の設置等の方策を講ずること。
30
当該機関においては次に掲げる事務を行う。
①
入札契約手続の運用状況について発注者から報告を徴収
②
一般競争参加資格の設定,指名の経緯等に関する審議
③
発注者に対する意見の具申
なお,第三者機関は,共同設置や既存組織(監査委員制度等)の活用も
可能であること。
2
2 公
公正
正な
な競
競争
争の
の促
促進
進
(1)入札及び契約の方法の改善
公正な競争を促進するために次に掲げる事項について取り組むこと。
① 一般競争入札については,資格審査の体制整備等を図りつつ適切に
実施,指名競争入札については,受注者の意向を確認して行う公募型
指名競争入札等を適切に実施すること
② VE(Value Engineering)方式等の民間の技術提案を受け付ける
方式及び安全性,環境,交通の確保等価格以外の要素を重視すべき工
事について総合評価方式を活用すること
③ いわゆる地域要件については,過度に競争を制限することとならな
い運用とすること
④ 中小・中堅建設業者に対する受注機会の確保を図るとともに,共同
企業体運用基準の策定等によりJV制度を適切に活用すること
⑤ 設備工事等に係る分離発注を適切に実施すること
⑥ 談合等の不正行為やダンピング防止等の観点から,入札金額の内訳
の提出を求めるように努めるべきこと
⑦ 積算を適正に行うとともにいわゆる歩切りは厳に慎むべきこと
(2)苦情処理システムの整備
入札契約に関し,公正な競争の促進,透明性の確保の観点から,発注者
が,まず,入札契約の過程について適切に説明するとともに,さらに不服
のある者については,第三者機関による審議等中立・公正に不服を処理す
る方策を講ずること。
3
3 談
談合
合そ
その
の他
他の
の不
不正
正行
行為
為の
の排
排除
除の
の徹
徹底
底
(1)談合情報への適切な対応
入札談合があると疑うに足りる事実があるときは公正取引委員会へ的
確に通知すること。談合情報への対応要領の策定,公表を行う。
31
(2)一括下請負等建設業法違反への適切な対応
一括下請負等があると疑うに足りる事実があるときは建設業許可行政
庁等へ的確に通知すること。施工体制の把握に係る要領の策定,公表を行
うこと。
(3)捜査機関等との連携
入札契約に関する不正行為があるときは,その内容に応じ警察本部その
他の機関へ通知すること。特に,暴力団関係企業の排除のため,警察本部
との情報交換等の緊密な連携を図ること。
(4)ペナルティの厳正な運用
指名停止が恣意的に行われないよう,あらかじめ指名停止基準を策定,
公表すること。また,指名停止の相手方の名称,期間,理由等を公表する
こと。
談合による損害額の認定が可能な場合においては,損害賠償の請求を行
うよう努めること。
(5)談合への発注者の関与の防止
発注者が談合に関与することはあってはならないことであり,法及び適
正化指針に基づく入札及び契約の手続の透明性の向上により,不正行為の
起こりにくい環境を整備すること。
4
保
確保
の確
工の
施工
な施
正な
適正
の適
事の
工事
共工
公共
4 公
(1)公共工事の施工状況の評価
受注者を適正に選定するため,工事成績評定を行うように努めること。
工事成績評定に当たっては,あらかじめ要領を策定,公表すること。工事
成績評定の結果を,受注者に対し,通知するとともに,公表すること。
工事成績評定に対する苦情については,発注者が適切に説明するととも
に,さらに不服のある者については,第三者機関による審議等,中立・公
正に処理する方策を講ずること。
(2)ダンピングの防止
ダンピングは,建設業の健全な発達を阻害するとともに,手抜き工事,
下請けへのしわよせ等につながりやすいことから,低入札価格調査制度及
び最低制限価格制度の活用によりダンピング受注を排除すること。
低入札価格調査については,調査内容の明確化等により適切に実施し,
当該制度の活用を図ること。また,当該調査の結果の概要を公表すること。
32
(3)施工体制の把握の徹底等
公共工事の品質の確保の観点から,監督及び検査についての基準を策定,
公表するとともに,現場の施工体制を的確に把握するための要領の策定等
により監督を実施すること。
また,疎漏工事の誘発の防止等の観点から,施工体制台帳の活用等によ
り,元請下請を含めた適正な施工体制が確保されるよう指導すること。
5
5 そ
その
の他
他入
入札
札契
契約
約の
の適
適正
正化
化の
の促
促進
進
(1)不良・不適格業者の排除
建設業の健全な発達を図り,公共工事における不正行為を排除する観点
から,いわゆるペーパーカンパニー等の不良・不適格業者を排除するため,
次に掲げる措置を講ずること。
① 入札,工事の施工等の各段階における発注者支援データベースの活
用等による監理技術者の現場専任の確認
② 工事施工前の監理技術者資格者証の確認
③ 立入り点検による監理技術者の専任の状況の確認等
(2)ISOの活用に関すること
公共工事の品質確保に効果的なISO9000 シリーズの認証取得の促
進を図ること。
(3)IT化の推進等
IT化の推進による業務運営の効率化,競争性の向上等を図ること。ま
た,入札及び契約に関する情報の公表に関しインターネット等を活用する
こと。
さらに,入札に参加しようとする者の負担軽減等のため,入札契約に係
る図書の簡素化や資格審査等の手続の統一化に努めること。
(4)発注者相互の連絡,協調体制の強化
公共工事の発注者相互の連絡,協調体制の一層の強化を図ること。
(5)留意事項
① 特殊法人等及び地方公共団体の自主性の配慮
② 公団等の受託制度等の活用による業務執行体制の整備(小規模市町
村等)
(国土交通省公表資料)
33
入札談合等関与行為の排除及び防止に関する法律について
資料4
1趣 旨
近年、国・地方公共団体等の職員が入札談合等に関与している事例(いわ
ゆる「官製談合」)が発生している。しかるに、官製談合に対する方策をみると、
公正取引委員会には、これに有効に対処する法律上の権限がない。一方で、
各省大臣や都道府県知事等においては、入札談合の探知・調査が必ずしも
十分に行われていない状況にある。
このような状況にかんがみ、官製談合を防止し、官公需分野の競争促進及
び予算執行の適正化を目的として、平成15年1月から、以下の内容を盛り込
んだ新法が施行された。
2 法律の概要
(
1) 入札談合等関与行為を排除するための行政上の措置
入札談合等関与行為(注1)があった場合の公正取引委員会から各省
各庁の長等 (注2)に対する必要な措置の要求、当該要求を受けた各省
各庁の長等による調査の実施・必要な措置の検討、調査結果等の公表
等について規定。
(注1)入札談合等関与行為は以下の3類型(2条5項)
①談合の明示的な指示(事業者又は事業者団体に入札談合等を行わせること)
②受注者に関する意向の表明(契約の相手方となるべき者をあらかじめ指名する
ことその他特定の者を契約の相手方となるべき者として希望する旨の意向をあらか
じめ教示し,又は示唆すること)
③発注に係る秘密情報の漏洩(入札又は契約に関する情報のうち特定の事業者
又は事業者団体が知ることによりこれらの者が入札談合等を行うことが容易となる
情報であって秘密として管理されているものを,特定の者に対して教示し,又は示唆
すること)
(注2)各省各庁の長、地方公共団体の長又は国若しくは地方公共団体が資本
金の 1/2 以上を出資している法人の代表者(2条3項)
(
2) 当該行為を行った職員に対する損害賠償請求・
懲戒事由の調査
各省各庁の長等による当該行為を行った職員に対する損害賠償請
求・
懲戒事由の調査について規定。
(
3) その他
入札談合等関与行為の防止に向けた関係行政機関相互の連携・
協力、
本法運用上の地方公共団体等の自主的な努力への配慮等について規
定。
34
本法に基づく措置等の流れ
公正取引委員会
各省各庁の長等
調査の実施(※)・
措置の検討
※調査を行う職員の指定等
※公正取引委員会は調査結果・措置
内容に意見を述べることができる。
損害賠償請求
損害の有無の調査
※調査を行う職員の指定等
(
損害あれば)
損害賠償請求
懲戒事由の調査
任命権者への通知
※発注機関の長が任命権者の場合不要
関与行為は以下の3類型
①談合の明示的な指示
②受注者に関する意向の表明
③発注に係る秘密情報の漏洩
任命権者による懲戒事由の調査
※調査を行う職員の指定等
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発注機関側の自主的措置
入札談合等関与行為の排除のため必要な改善措置を要求
入札談合等の調査を通じて発注機関職員の関与行為を探知
調査結果・措置内容の公表、
公正取引委員会への通知
措置内容は発注機関の判断で決定
行政上の措置
加算方式による総合評価落札方式の導入について(抄)
(情報システムに係る政府調達制度の見直し)
平成14年7月15日
経 済 産 業 省
1.概要
政府においては、情報システムに係る政府調達を行う際の総合評価落札方
式として、加算方式を導入することを決定し、平成14年7月12日をもっ
て、同8月1日以降に入札公告又は入札公示を行う調達案件等について加算
方式を適用することができるようになりました。
2.加算方式による総合評価落札方式の導入について
(1)(略)
(2)加算方式による総合評価落札方式の導入
現在、一定価格を超える長調達案件について落札者を決定する場合、除
算方式(総合評価点=技術点/入札価格)による総合評価を行っておりま
すが、上記の「情報システムに係る政府調達制度の見直し」において、よ
り質の高い情報システムを一層適正に調達する観点から、加算方式(総合
評価点=技術点+価格点)による評価を行うこととされたところです。
(3)財務大臣協議及び調達関係省庁の申合せ
実際の調達案件に対して加算方式を導入するためには、予算決算及び会
計例に基づく財務大臣協議を行う必要があります。当該協議については、
平成14年7月12日付で整い平成14年8月1日以降に入札公告又は入
札公示を行う調達案件について加算方式を適用することができるようにな
りました。
また、今回、当該協議が整った日付と同日付で、調達担当官の運用上の
手引きである「情報システムの調達に係る総合評価落札方式の標準ガイド」
が、調達関係省庁の申合せ事項として了承されております。
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3.加算方式による総合評価落札方式のポイント
今回導入されることとなる加算方式による総合評価落札方式のポイント
については、以下のとおりです。(略)
◇加算方式の対象となる情報システム
その整備水準によっては、国民に対して著しい不利益を与え又は国に対
して著しい損害を与えるおそれのある情報システム(※)であって、既存
のソフトウェアプロダクトの活用のみによっては整備できないものとして
各省各庁の長が認めるもの。
(※)具体事例については、別添の標準ガイド中に記載。
◇技術点と価格点の配分
技術点の配分:価格点の配分 = 1:1 とする。
◇価格点の評価方法
価格点 = 価格点の配分×(1−入札価格/予定価格) とする。
◇総合評価の方法
総合評価点 = 技術点+価格点 とする。
◇適用日
平成14年8月1日移行に入札公告又は入札公示を行うものについて適
用する。このほか、平成14年7月12日から平成14年7月31日まで
の間に入札公告又は入札公示を行うものについても、当該入札公告又は入
札公示の前日以前に財務大臣に届け出ることにより適用することができる
こととする。
4.(略)
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