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FUJIFILM X-Pro1 Photographer's Guidebook 1 Professional tool X-Pro1 X-Pro1 のグリップに指を合わせ親指で背面をホールディングしながら、シャッターボタンにそっと人 差し指をのせる。カメラ前面のファインダー切り替えレバーに中指が触れ、背面コマンドダイヤルに親 指の先がちょうど触れる。親指を少し上にずらすと露出補正ダイアルの操作ができる。ビューファイン ダーから目を離さすことなく、ほとんどの操作がカメラをホールディングしたままできることに思わず 笑みがこぼれる。デジタルカメラの進化の過程でファインダーを覗くという、もっとも写真的な行為が ないがしろにされているように感じていたが、X-Pro1 のハイブリッドマルチビューファインダーを覗 いていると、あらためて“ファインダーを覗いて撮る”ことの重要性と“ファインダーを覗いて撮る” ことの楽しさを実感させられた。X-Pro1 は、メーカーの意欲と情熱を強く感じるカメラだ。 曽根陽一 2 Interview in Macao 【 Part 1 】 マカオで X-Pro1 を使った印象 Section Ⅴ インタビュー 写真家 曽根陽一 X-Pro1 マカオ撮影後記 威圧感のない X-Pro1 だから自然な表情が撮れる 曽根 X-Pro1 は、ファインダーがとてもいい。OVF の光学像も気持ち良かったし、 EVF も見やすかったです。人物を入れた撮影では LCD(液晶モニター)でのライブ ビュー撮影をよくしました。人物を撮るときは、ファインダーを通して相手の目を見 ているからだと思います。だから、撮られるほうもカメラを意識して緊張してしまう。 LCD を活用しての撮影だとそれがない。直に相手の目を見るのではなくて、そこに ワンクッションある。だから表情がやわらかい。人物を撮るには LCD は有効だと思 います。それは、昔の二眼レフカメラを上から覗いているような感覚に似ていますね。 X-Pro1 はハイブリッドビューファインダーが特徴的だけど、この LCD は画像もキレ イだし、日中でも見やすいですね。それに X-Pro1 のボディ自体が一眼レフカメラの ような威圧感がないから、とてもいい表情が撮れました。撮影している感覚はコンパ クトカメラと同じでした。でも撮れた画像は一眼レフと同じかそれ以上だと思いまし た。その素晴らしい解像度は驚きでしたね。 ←CONTENTS 73 Interview in Macao 【 Part 3 】 マカオで X-Pro1 を使った印象 Section Ⅴ インタビュー 写真家 曽根陽一 X-Pro1 マカオ撮影後記 X-Pro1 は撮影を味わうカメラだと思う 曽根 マカオでスナップを撮影していたときに、OVF と EVF と LCD をいろいろ使い 分けていました。人物を入れたシーンでは LCD を活用することで、カメラを意識さ せないで自然な表情が撮影できた。OVF は撮影範囲以外の風景も見えるから、その 風景から何を切り取ろうとしているのかがわかる点がいい。厳密にフレーミングせず にサクサクっと撮影したいときは本当に気持ち良く楽しめましたね。そもそも、スナッ プはそういう撮り方のほうがおもしろいし、ざっくりフレーミングしているから、と きどき画面に取り込んだつもりのない物が写っていたりします。それが、意外といい アクセントになっていたりします。撮ったときのイメージと、実際に写った写真との ギャップがおもしろい。そこがスナップの醍醐味だと思います。一方の EVF もよく 使いましたね。撮影していて画面周辺部に絶対外せない被写体がある場合には EVF でフレーミングをして撮影していました。そこはやはり視野率 100%なのでしっか り確認できて良かったです。それに、撮影結果がプレビューできる点は便利ですね。 OVF で昔のレンジファインダーカメラで撮っているような気分に浸りながらの撮影 も楽しいし、EVF や LCD で撮影しても楽しかった。このカメラは、“ 撮影を味わうカ メラ “ だと僕は思うなあ。 ←CONTENTS 75 XF18mmF2 R プログラム AE(絞り F8 1/350 秒) - 2/3EV 補正 WB /晴れ ISO / 200 FS / ASTIA:ソフト ←CONTENTS 11 XF18mmF2 R プログラム AE(絞り F2 1/50 秒) - 1EV 補正 WB / AUTO ISO / 200 FS / Velvia:ビビッド ←CONTENTS 14 Interview in Macao 【 Part 2 】 マカオで X-Pro1 を使った印象 Section Ⅴ インタビュー 写真家 曽根陽一 X-Pro1 マカオ撮影後記 シンクロターミナルはプロ機の “ 証 ” だと思う 曽根 マカオでまったくストレスなく撮影できたのは、このカメラの操作性がよく考 えられているからだと思います。例えば、シャッターボタンや露出補正ダイヤルがほ んの少し傾斜していますが、この傾斜が絶妙なフィーリングでとても使い易かった。 特に露出補正ダイヤルは頻繁に使うだけに、ファインダーから目を離さずに操作でき る点は本当にありがたかったですね。それと露出モードダイヤルなどでいちいち設定 しなくても、露出モードの切り替えが瞬時にできるのもいいですね。プログラムモー ドで撮影している際に、「このシーンはこの絞り値で撮影したい」と思えば、絞りリ ングを撮りたい絞り値まで回すだけで、絞り優先モードで撮影できるので便利でした。 後、この X-Pro1 で感心したのは、ボディ側面にあるシンクロターミナルです。これは、 プロがスタジオで撮影することを想定してカメラを設計している証拠だと思う。最近、 一眼レフカメラでもシンクロターミナルが付いていないカメラがありますが、そうい う意味では X-Pro1 はプロが使うプロ用のカメラなのだと改めて思いました。スタジ オで X-Pro1 のシンクロターミナルに大型ストロボのコードがつながれているのを想 像しただけで、かっこいいなと思いますし、 実際にスタジオで使ってみたいですね。 ←CONTENTS 74 X-Pro1 を楽しむ ──フィルムシミュレーション編 Interview in Macao 【 Part 4 】 マカオで X-Pro1 を使った印象 Section Ⅴ インタビュー 写真家 曽根陽一 X-Pro1 マカオ撮影後記 フィルムシミュレーションはプロが仕事で使えるエフェクトだと思う 曽根 僕はずっと銀塩フィルムで撮影してきました。「PROVIA」をメインに「Velvia」 も「ASTIA」も一通り使いました。フィルムシミュレーションで「ASTIA」の色調の 良さに気づいた今となっては、本当に残念ですが「ASTIA」は「PROVIA」ほどは使 わなかった。今回のロケで X-Pro1 のフィルムシミュレーションで「ASTIA」を選択 して撮影しましたが、色調が素晴らしく、すごく気に入りました。発色が鮮やかなの に、あのしっとりした色調がとてもいいですね。それにしても、フィルムシミュレー ションは本当によくできていると思いますね。「PROVIA」も「Velvia」も昔フィルム で撮っていたイメージと同じだし、このエフェクトは他のメーカーではできない。フィ ルムメーカーの富士フイルムだからできた機能ですね。コンパクトカメラなんかだと、 発色がビビッドに設定されているので、何を撮ってもキレイに見えてしまう。それは、 それでいいのですが、やはりこのシーンは、落ち着いた発色で撮りたいから「ASTIA」 で撮ろうとか、「PRO.Neg」のどちらかで撮ろうとか、いろいろシーンによって設定 を変えて撮れるのがいい。だって、昔僕達カメラマンは、実際にそうやってフィルム を選んで撮影していましたからね。そういう意味で、フィルムシミュレーションは、 プロが仕事で使えるエフェクトだと思います。カラーもいいのですが、モノクロとセ ピアが素晴らしい。本当にモノクロ印画紙にプリントしたような本物感はすごい。セ ピアもわざとらしさがなくていいですよね。特にモノクロには、通常のモノクロモー ドの他に、ちゃんと 3 種類のフィルター設定まである。僕はよく Ye フィルターを使っ て、ほんの少しコントラストを上げて撮影していました。今回の撮影も雲を撮るとき は R フィルター付けて撮影したりして、当時を思い出しながら撮影できてとても楽 しかったですね。 ←CONTENTS 76 Film Simulation PROVIA プロビア Section Ⅲ X-Pro1 を楽しむ フィルムシミュレーション XF18mmF2 R プログラム AE(絞り F5 1/450 秒) - 1/3EV 補正 WB /晴れ ISO / 200 FS / PROVIA:スタンダード ←CONTENTS 40 Film Simulation ASTIA アスティア Section Ⅲ X-Pro1 を楽しむ フィルムシミュレーション XF18mmF2 R プログラム AE(絞り F2 1/170 秒) - 1/3EV 補正 WB /晴れ ISO / 200 FS / ASTIA:ソフト ←CONTENTS 46 Film Simulation PRO Neg.Hi プロネガハイ / PRO Neg.Std プロネガスタンダード Section Ⅲ X-Pro1 を楽しむ フィルムシミュレーション PRO Neg.Hi Shooting Data PRO Neg.Std Review 拡大 Shooting Data Review 拡大 XF18mmF2 R プログラム AE(絞り F8 1/350 秒) - 1.3EV 補正 WB / 晴れ ISO / 200 FS / PRO Neg.Std XF35mmF1.4 R プログラム AE(絞り F5.6 1/150 秒) - 2/3EV 補正 WB /晴れ ISO / 200 FS / PRO Neg.Hi ←CONTENTS 48 X-Pro1 を楽しむ フジノン XF レンズ編 Interview in Macao 【 Part 5 】 マカオで X-Pro1 を使った印象 Section Ⅴ インタビュー 写真家 曽根陽一 X-Pro1 マカオ撮影後記 シャープさとボケ味の美しさ。あの 3 本の XF レンズは本当に楽しめますね 曽根 本当にどれも素晴らしいレンズでしたね。どのレンズもコンパクトですが、特 に 60mm はよくあそこまで小さく仕上がったなと思いますね。ピント面がカリッと シャープだから、その前後にボケていく滑らかな階調が物凄く際立つ。35mm は、 60mm 同様ボケがキレイでしたね。開放 F1.4 で撮影したときに感じたのは、ピント 面の前後が一気にボケるボケ方ではなくて、スッとなだらかにボケていくんですね。 それが本当に美しい。スナップだと F5.6 前後の立体感のあるボケも良かった。最後 は 18mm ですが、35mm 判換算で 27mm 相当の広角レンズ。この画角はちょうど 片目をつぶったときに見える範囲くらいで、昔からこの画角が好きでよくスナップを 撮っていました。この 18mm レンズは、いろんな楽しみ方ができるレンズだと思い ます。絞り開放にすると、キレイにボケるのでボケと遠近感の両方を取り入れた写真 表現も可能だし、F8 くらいまで絞ってパンフォーカス的に撮影するオーソドックス な撮り方も楽しめる。絞り値の設定が楽しくなるレンズですね。4日間、朝から晩ま で、ひたすら撮り歩きましたが、この 3 本の交換レンズで充分に楽しめました。 ※ 18mm:XF18mmF2 R 35mm:XF35mmF1.4 R 60mm:XF60mmF2.4 R Macro ←CONTENTS NEXT → 77 XF18mm F2 R Section Ⅳ XF Lens XF18mmF2 R プログラム AE(絞り F2 1/30 秒) - 1EV 補正 WB / AUTO ISO / 1000 FS / Velvia:ビビッド ←CONTENTS 65 XF35mmF1.4 R Section Ⅳ XF Lens XF35mmF1.4 R プログラム AE(絞り F4.5 1/140 秒) - 2/3EV 補正 WB /晴れ ISO / 200 FS / PROVIA:スタンダード ←CONTENTS 68 Fujinon Lens Its history began in 1940 / 受け継がれてきた Fujinon Lens Section Ⅳ XF Lens フジノンレンズを買ったあの日 アシスタント生活も後半になった頃、写真雑誌からの仕事が増え始めてい た。先生からも代わりに撮影を頼まれたりすることも増えてきたある日、 そろそろ独立し自力でやっていこうとスタジオを辞めた。スタジオの経験 を活かしコマーシャルの世界に進むはずが、スナップを中心とした写真雑 誌の仕事に追われ、ジナー+フジノンレンズの夢は遠のき 10 年の歳月が 流れた。当時のメイン機材は一眼レフだったが携帯性のいいコンパクトカ メラが欲しくなり、フジの名に惹かれ「フジ カルディア トラベルミニ デュアル P」を購入。一眼レフ全盛期、トラベルミニで撮影した作品は、 一眼レフで撮影した作品といっしょにカメラ雑誌に発表していった。プロ はコンパクトカメラを使わないと思われていた時代だったが、トラベルミ ニは十分素晴らしい写りを提供してくれた。そしてアシスタント時代の 夢だった、EBC フジノンレンズを搭載したコンパクトカメラ「ティアラ」 の発売を知り即購入。単焦点 28mm レンズ搭載の「ティアラ」はコンパ クトで機動性が良く、シャッターレスポンスの良さがお気に入りで、ずい ぶん入れ込んで使い込み、たくさんの作品を送り出した。さらに中判を身 近なものにしてくれた GA645/GA645W が発売になったときも狂喜し、2 台一度に購入。使用頻度は GA645W の方が多かったが、EBC フジノンレ ンズはいろんなシーンで僕の眼となり活躍してくれた。フジノンレンズ を通して見てきた世界はすでに 35 年を経過したが、「FUJIFILM X-Pro1」 を手にさらに磨きのかかったスーパー EBC フジノンレンズを使える喜び を今かみしめている。 曽根陽一 ←CONTENTS 61 Fujinon Lens Section Ⅳ XF Lens Its history began in 1940 / 受け継がれてきた Fujinon Lens フジノンレンズに出会ったあの日 プロの声│曽根陽一 「ワークショップ寫眞学校、今期をもって閉校」の広告をカメラ毎日の広 告で見て、迷わず森山大道教室の三期生となったのが 1976 年。森山教室 三期修了後、撮影技術習得のため、商品撮影中心のスタジオにアシスタン トとして入った。スタジオには備品としてシュナイダーやローデンシュ トックといった 4 × 5 用のレンズが多く揃っていたが、僕がついた二人の 先生は EBC フジノン 210mm f5.6 を選択することが多く、コマーシャル の現場で使われる「EBC フジノンレンズ=良いレンズ」のイメージが定 着していった。スタジオでは商品が置かれた櫓を組んだカメラの下が僕の 定位置で、先生からの指示を受け商品を動かしたり、ピントグラスで構図 をチェックし終わったあと 4 × 5 レンズを閉めシャッターチャージをする。 その時に何度もフジノンレンズに触れ、前玉に映った商品を眺めることが 僕の仕事だった。スタジオが空いてる時は自由に撮影をして良いという スタジオだったので、同一被写体で 3 本(90mm・150mm・210 mm)の EBC フジノンレンズを使って試写をしたことがあった。当時の 4 × 5 用 シートフィルムは乳剤が安定しておらず、ゼラチンフィルターで補正をし ながらの使用だったが、フジノンレンズは絞りこまなくてもピント面に芯 がありとてもシャープ。そして発色に濁りがなく、色味が際立っていると いう印象。プロになったらジナーを購入し 3 本の EBC フジノンレンズを 揃えよう、そう思いながら将来に夢をふくらませつつアシスタント生活を 続けていた日々があった。 曽根陽一 ←CONTENTS 60