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第18号 - 東洋紡
A4227K 第18号 2010年1月13日発行日 東洋紡 ニュースレター 試薬の基礎知識(LDL-Cについて) LDL-Cについて 低比重リポ蛋白(LDL)に含まれるコレステロールをLDL-コレステロールと呼びます。LDL-コレステロールは高値(1 40mg/dL以上)の場合、動脈硬化の危険因子と考えられており、悪玉コレステロールといわれています。 LDLは、肝臓で合成されたコレステロールの大半を運搬しLDL受容体を介して抹消細胞に取り込まれ、これらの細胞 にコレステロールを供給します。過剰のコレステロールが供給されると、LDL受容体数が減少し細胞への取り込みが調 節され、過剰のLDLが血中に滞留して血管壁に沈着し動脈硬化の初期病変が形成されます。 LDL-コレステロールは 総コレステロールよりも動脈硬化と強い相関をもつことが確かめられており、動脈硬化性疾 患の直接的なリスクファクターの一つです。 LDL-Cの測定法 LDL-Cの測定法の基準は、米国疾病予防センター(CDC)のレファレンス法であるβQuantification法です。 一方、日常検査では、従来、他の脂質値から計算によって算出する、Friedewaldの推定式が用いられてきましたが、 TG値が400mg/dL以上では負誤差を生じることから、現在、国内では主に自動分析装置に適用可能な直接法が用いら れています。 表1:LDL-Cの測定法 方法 解説 超遠心法 血清をKBrなどの密度調整液にて比重1.006に調整して超遠心するとVLDLが浮上し、 下層にHDLとLDLの分画を得る。さらにこの分画を比重1.063に調整し超遠心すると上 清にLDL分画を得、このLDL分画中のコレステロール濃度を測定する方法もあるが、 HDLとLDLの分画と、この分画をヘパリン-Mn沈殿法で処理した上清の各々のコレステ ロールをアベルケンダール法で測定してLDL-Cを算出する方法はβQuantification法 と呼ばれている。 Friedewald式 総コレステロール(T-Cho)、HDL-C、TG値より以下の計算式を用いて間接的にLDL-C を算出する。VLDL-CはTG*1/5で推定されている。 LDL-C = T-Cho - HDL-C - TG*1/5 直接法 コレステロールエステラーゼ等の酵素を用い、界面活性剤や酵素のリポ蛋白選択性を 利用した方法で、生化学自動分析機に適用される。測定原理の詳細を次ページに示す。 高速液体クロマトグラ フィー法 カラム担体の種類により、粒子サイズかまたはLDLに対する親和性を利用してLDLを分 離し、コレステロールを酵素を用いた発色反応により測定する。 電気泳動法 主にリポ蛋白の荷電により分離するアガロース電気泳動法と、主にリポ蛋白の粒子サイ ズにより分離するポリアクリルアミドゲル電気泳動法がある。 免疫学的方法 抗LDL抗体を用い、抗原抗体反応の結果を直接または標識法により測定する。 目次: 試薬の基礎知識 (LDL-Cについて) p 1,2,3 学会カレンダー p 4 東洋紡 ニュースレター LDL-C直接法 従来のFriedewald式は、1995年にHDL-Cの直接法が開発されるまで、HDL-Cは沈殿法による測定値が用いられてき ました。また、TGの1/5をVLDL-Cと推定して算出していますが、①人種により異なる、②TGが400mg/dLを超えると VLDL-Cに換算できない、③検査前日の飲食の影響を受ける、などの問題が指摘されていました。 これらの問題点を解消する方法として、LDL-Cの直接法が1996年に開発され、自動分析装置への適用が容易である ことから広く普及されるようになりました。その後、各メーカーより原理の異なる測定法が次々と開発されています。原理 としては、界面活性剤や酵素のリポ蛋白選択性を利用したものですが、主に下記のよう第一反応でLDL以外のCM(カ イロミクロン)、HDL、VLDLを選択的に阻害する方法と選択的に消去する方法があります。 選択阻害法 第1反応 HDL CM ブロック または 阻害 HDL CM VLDL VLDL 第2反応 LDL LDL CE CO H 2O 2 色素 4AA POD 発色 第一反応で界面活性剤等により、酵素のCM、HDL、VLDLに対する反応をブロックまたは阻害し、第2反応でLDLを可 溶化してLDL-Cを測定します。 選択消去法 第1反応 HDL HDL CM CM CE CO VLDL VLDL H 2O 2 消去 第2反応 ブロック LDL LDL LDL CE CO H 2O 2 色素 4AA POD 発色 第一反応で界面活性剤等により、CM、HDL、VLDLを可溶化したのち消去し、第2反応でブロックしていたLDLを可溶 化しLDL-Cを測定します。 CE CO POD 4AA 図1:直接法の原理 :コレステロールエステラーゼ :コレステロールオキシダーゼ :ペルオキシダーゼ :4-アミノアンチピリン 第18号 LDL-C直接法間での乖離について LDL-C直接法の試薬を使用する場合、下記の2つの原因により試薬メーカー間で測定値の差が生じることが考えられます ので注意が必要です。 1.中間比重リポ蛋白コレステロール(IDL-C)に対する反応性の違い IDLは、リパーゼによりVLDLやカイロミクロンが水解され中性脂肪を失う過程のリポ蛋白で、レムナントとも呼ばれていま す。IDLは通常速やかに代謝されますが、メタボリックシンドロームの患者ではリパーゼ活性の低下により水解が遅くなり、 また、ApoE変異症などの患者ではLDL受容体、VLDL受容体への結合が進まず、IDLが血中にうっ滞します。 精確性の基準であるCDCリファレンス法におけるLDLはIDLを含んだ広義LDL(比重1.006~1.063)として定義しているこ とから、直接法でもIDL-Cを測定するべきと言われています。しかし、直接法ではIDLに対する反応性が測定原理(試薬メー カー)によって異なるため、Ⅲ型高脂血症患者検体などIDL-C高値検体において試薬メーカー間で測定値に差が生じます。 2.異常リポ蛋白の、lipoprotein-X(Lp-X)、 lipoprotein-Y(Lp-Y)に対する反応性の違い Lp-X、Lp-Yは、原発性胆汁性肝硬変などにより胆汁うっ帯が発生すると胆汁成分が血中へ逆流することにより高頻度に 出現します。 Lp-X、Lp-Yは、正常時に全く存在せず、化学組成もLDLと大きく異なることから、LDL-Cとして測定すべきでないといわれ ています。しかし、直接法ではLp-X、Lp-Yに対する反応性が試薬メーカーによって異なることから、これらの異常リポ蛋白 が出現した検体において試薬メーカー間で測定値に差が生じます。 一方、 Lp-X、Lp-YはLDLと同等の比重であることから、超遠心法ではLDL分画として分離されます。 表2:IDL、Lp-X、Lp-YとLDLの特性比較 VLDL IDL LDL Lp-X Lp-Y 比重 0.96~1.006 1.006~1.019 1.019~1.063 1.006~1.063 1.006~1.063 電気泳動 preβ midband β 原点~β 直径Å 1mm=108 750~300 300~220 220~190 LDLよりも 粒子径大 脂質 % TG CE FC PL 55~60 12 7 18 24~40 33 13 12~20 10 37 8 22~15 3 3 22 66 蛋白質%(アポ蛋白) 8~10 18~10 23~25 6 アポ蛋白 組成 微量 微量 36.9 3.3 6.7 39.9 13.0 ー ー 78 ー ー 98 Apo-AⅠ,C,E (ApoBは含まな い) 微量 微量 微量 微量 微量 微量 微量 ー AⅠ AⅡ B CⅠ CⅡ CⅢ E 高値化する 原因または疾患 家族性Ⅲ型高脂 血症 アポE欠損症 HTGL欠損症 原発性胆汁性肝 硬変などで胆汁 うっ滞発生時 ↑↑ - ↑↑ ↑↑ 肝不全 CE:コレステロ-ルエステル FC:遊離コレステロール PL:リン脂質 HTGL:肝性トリグリセリドリパーゼ 参考文献、資料: ①日本臨牀 57巻 1999増刊号 広範囲 血液・尿化学検査,免疫学的検査(2),20~23 ②臨床病理 Vol.53 No.2 P138-143 2005 ③検査と技術 Vol.33 No.10 P895-901 2005 ④医学検査 Vol.59 No.1 P38-43 2010 主な学会開催予定(2010年2月~2010年3月) 学会名 開催日 開催場所 問い合わせ先 第25回日本環境感染学会総会 2/5~6 グランドプリンスホテル新高輪・国際館 パミール(東京) 03-3433-1111(内線3721、 3722) 第46回関東甲信地区医学検査学会 2/5~7 幕張メッセ(千葉) 03-5275-1191 第17回日本CT検診学会学術集会 2/12~13 長崎ブリックホール(長崎) 095-819-7779 第84回日本臨床検査医学会九州支部総会 2/13 九州大学病院地区コラボセンター(福 岡) 0952-34-2261 第55回日本臨床検査医学会中国・四国支部例会・ 総会 第150回日本臨床化学会中国支部例会・総会 第20回日本臨床化学会四国支部例会・総会 2/13~14 岡山大学医学部第二講義室(岡山) 088-880-2466 第40回日本心臓血管外科学会学術総会 2/15~17 神戸国際会議場(神戸) 06-6229-2555 第28回日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会 2/18~20 AOSSA(福井) 0776-61-8407 第43回日本痛風・核酸代謝学会総会 2/25~26 大阪国際交流センター(大阪) 0798-45-6474 第29回日本画像医学会 2/26~27 東京ステーションコンファレンス (東京) 03-3405-0529 第23回日本自己血輸血学会学術総会 2/26~27 倉敷市芸文館(岡山) 086-462-1111(内線25517) 第82回日本胃癌学会総会 3/3~5 朱鷺メッセ(新潟) 025-266-6536 第37回日本集中治療医学会学術集会 3/4~6 リーガロイヤルホテル広島、広島県立 総合体育館(広島) 082-221-2291 第74回日本循環器学会総会・学術集会 3/5~7 国立京都国際会館、他(京都) 075-752-3448 第20回生物試料分析科学会年次学術集会 3/13~14 北里大学白金キャンパス薬学部コン ベンションホール(東京) 042-777-1755 第49回日本臨床検査医学会東海・北陸支部総会 第320回日本臨床化学会東海・北陸支部例会 3/14 名古屋大学大学院医学系研究科基礎 研究棟講義室(名古屋) 052-744-2588 第83回日本薬理学会年会 3/16~18 大阪国際会議場(大阪) 06-6645-3731 日本化学会第90春季年会 3/26~29 近畿大学本部キャンパス(大阪) 03-3292-6163 第83回日本細菌学会総会 3/27~29 パシフィコ横浜(横浜) 06-6350-7162 日本薬学会第130年会 3/28~30 岡山コンベンションセンター他(岡山) 086-251-7918 2010年2月 2010年3月 *開催日等は変更する場合があります。参加される際は必ずご確認ください。 *「The Medical & Test Journal」、「別冊・医学のあゆみ 学会案内」より抜粋 お問い合わせ先 診断システム事業部(大阪) 〒530-8230 大阪市北区堂島浜二丁目2番8号 Tel Fax 06(6348) 3335 06(6348) 3833 ウェッブページもご覧ください。 http://www.toyobo.co.jp/seihin/dsg/index.html 診断システム事業部(東京) 〒141-8633 東京都品川区東五反田2丁目10番2号 東五反田スクエア Tel 03(6422) 4849 Fax 03(6422) 4951