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生物多様性とビックデータ
◆生物多様性戦略
環境省は、生物多様性基本法に基づく生物多様性地域戦略策定自治体を公表した。
これによると、地方自治体で生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関する基本的な
計画である生物多様性地域戦略を策定している団体は、平成 25 年 3 月末時点で次のとおり
である。
●都道府県(23)
北海道、福島県、栃木県、埼玉県、千葉県、東京都、石川県、長野県、岐阜県、愛知県、
三重県、滋賀県、兵庫県、奈良県、岡山県、広島県、愛媛県、福岡県、佐賀県、長崎県、
熊本県、大分県、沖縄県
※愛知県は改定計画を策定済み、滋賀県は 2 つの計画を策定
●政令指定都市(11)
札幌市、さいたま市、横浜市、新潟市、静岡市、浜松市、名古屋市、堺市、神戸市、北九
州市、福岡市
●市区町村(17)
黒松内町(北海道)、礼文町(北海道)、柏市(千葉県)、流山市(千葉県)、千代田区(東
京都)、大田区(東京都)、葛飾区(東京都)、厚木市(神奈川県)、佐渡市(新潟県)、高山
市(岐阜県)、岡崎市(愛知県)、高島市(滋賀県)、和泉市(大阪府)、明石市(兵庫県)、
西宮市(兵庫県)、宝塚市(兵庫県)、北広島町(広島県)
環境省関連サイト : http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=16668
ところで・・・
検索エンジンのグローバル企業であるグーグルは、その検索結果を分析する中で、特定
の検索キーワードでの検索数がインフルエンザの流行の指標となることを発見し、世界各地
のインフルエンザやデング熱の流行を予測できるらしい。
⇒ http://www.google.org/flutrends/intl/ja/about/how.html
◆日本でも、漸く『ビックデータ』がブームに
グーグルでは、毎日、10 億件とも 30 億件とも言われる膨大な量のデータが検索されており
(グーグルは 1 日当たりの検索数を公表していないようだ)、この様々な種類の膨大なデータ
を高効率の仕組みで分析した結果によるものであり、このような情報や処理を斯界では『ビッ
クデータ』と呼ぶ。ビックデータには、明確な定義はないそうだが、『人知を超えた膨大なデー
タを、これまた類い稀なる高速処理型のNoSQL系の活用』の総称のようだ。IT業界の方々
は、このような新しい波のつくり方が上手なので、何とも言えないが・・・。
ビックデータは、ITの巨人たちが中心人物らしく、インターネットやデジタルデータの爆発的
な増大とコンピュータ技術の加速度的な進展を背景に、オープンソースの「ハドゥープ」やグー
グルの「ビッグ・テーブル」、アマゾンの「ダイナモ」、フェイスブックの「カサンドラ」などの大量
データを高速処理するものらしい。日本でも、NTTを始め、富士通やホンダ、IBMなどが取組
んでいるようだ。
◆生物多様性戦略の第一歩は、『生物の見える化』
日本では、平成 20 年(2008 年)に「生物多様性基本法」が制定され、平成 24 年(2012 年)
に 「生物多様性国家戦略 2012-2020」が定められたが、自治体では戸惑いも少なくない。何
をどのように、あるいはどこまでやるべきかのか、判断に迷っている。
いずれにしても、現状では、各地の生物多様性に関する実態を明確にすることが課題だ。
もちろん、特定種の情報や、数年前の実態調査結果があるなど、部分的な情報はあるものの、
最新年度最新情報があるわけではないし、地域の生物多様性に関する経年変化が明確にな
っているところもない。慶大の某教授は「戦略は細部に宿る」と言っていたが、政策の立案だ
けでなく、生物マップ(Biodiversity Map)による「見える化」が生物多様性対策のカギとなる。
環境省生物多様性センター
生物多様性評価地図の活用に向けた今後の方向性
では、植生や動植物の分布
等に関し、基礎調査やモニタ
リング等を継続的に実施して
いる。また、(社)企業と生物多
様性イニシアティブ(以下、「J
BIB」という。)は、企業と生物
多様性の関わりを見える化す
るツールとして、『企業と生物
多様性の関係性マップ®』の
研究・開発を進め、企業等の
ものづくりの中での生物多様
性への対応を推進しているし、
先に示した生物多様性関連
計画を策定している自治体で
も生物マップをつくっている。
各地での取組を広域連携させ
た『エコロジカルネットワーク
構想』をより効果的なものとす
るためにも生物マップを充実
させた“生物の見える化”は重
要な役割を担っている。
出典:平成 23 年度生物多様性評価の地図化に関する検討調査業務報告書
◆生物の見える化は、IT 分野を中心とした新たな産業創造
デジタル技術の進展により「生物の見える化」は格段に進化しているが、これまでのところ、
地域的あるいは部分的な取組みでしかなかった。デジタル化したと言っても、写真情報は情
報密度も高く一つひとつのデータが大き過ぎて、四季を通じた地域データとして集積し、活用
するには技術的に難しかったからだ。
しかし、グーグルのストリートビューを見るまでもなく、『ビックデータ』はこれからの情報化
の基礎になってくる。
地域を行き交う誰もが、スマホやデジカメ等で撮った映像を自治体の共有サーバーに放り
込んでいく。対象物の映像だけでなく、撮影場所と日時なども集まってくる。3~5 年かけてデ
ータを集め続ければ、立派なビックデータとなって、生物多様性戦略や計画、特定種の保全
や保護等の取り組みにも効果的なものになるだろう。
同時に、生物多様性に関わるデータ処理が新しいビックデータのひとつとして活用され始
めれば、日本だけでなく世界でも需要が高まることは必至であり、新たな産業振興になるだろ
う。そして、このようなデータの集積は、生物学等にも大きく貢献できるだろう。
(平成 25 年 6 月 鈴木明彦)
株式会社 知識経営研究所
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