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講演資料(PDF : 1118KB)
九州地域で発生しているネオニコチノイド 系薬剤感受性低下を示すワタアブラムシ の発生実態と特性 岡崎真一郎 大分県農林水産研究指導センター 背景 ワタアブラムシ(Aphis gossypii Glover)が多発生 ☆2011年7月:大分県の夏秋ピーマン施設1か所 ☆2012年4月:宮崎県の冬春ピーマン、きゅうり施設 ☆2012年:宮崎県と大分県全域で多発生 ワタアブラムシの薬剤抵抗性に関する知見(国内) ☆寄主植物によってバイオタイプが存在し、薬剤抵抗性も異なる ☆1980年代:有機りん、合ピレ、カーバメート系薬剤で抵抗性 ☆1990年代:アドマイヤーを皮切りにネオニコの上市で沈静化・・・ ネオニコチノイド系薬剤散布してるんだが・・・ 宮崎県の冬春ピーマンで多発 したワタアブラムシ ネオニコチノイド系薬剤の殺虫効果 大分県1 イミダクロプリド 100 100 55.1 60 40 20 補正死虫率 (%) 80 21.7 5.3 4.8 0 91.2 80 アセタミプリド 100 79.8 65.0 60 45.8 40 20 0 100 補正死虫率 (%) 補正死虫率 (%) 100 80 チアクロプリド 82.2 70.0 51.7 60 40 100 32.5 20 0 岡崎(2013) ネオニコチノイド系薬剤の殺虫効果 大分県2 60 40 20 2.2 2.8 0 1.6 クロチアニジン 100 80 60 40 20 0 1.2 0 0 0 ニテンピラム 100 補正死虫率 (%) 補正死虫率 (%) 80 0 補正死虫率 (%) 98.3 100 98.3 80 60 40 20 4.4 0 0 0 0 チアメトキサム 100 補正死虫率 (%) ジノテフラン 100 100 80 60 40 20 0 28.2 7.2 0 1.6 岡崎(2013) ネオニコチノイド系薬剤の殺虫効果 宮崎県 宮崎県個体群の各薬剤に対する殺虫効果(補正死虫率%) きゅうり 薬剤名 希釈 倍率 アドマイヤー水和剤 2 000 ダントツ水溶剤 2 000 アクタラ顆粒水溶剤 3 000 スタークル顆粒水溶剤 2 000 ベストガード水溶剤 2 000 モスピラン水溶剤 2 000 バリアード顆粒水和剤 2 000 M iyazaki 45 27 27 27 14 10 0 10 0 ピーマン K ushim a 27 23 26 7 22 97 90 きゅうり N ichinanA N ichinanB 43 20 42 0 7 10 0 92 M iyako no j 感受性 yo 57 66 10 0 36 34 10 0 7 14 96 0 3 96 32 2 1 10 0 10 0 86 10 0 10 0 10 0 10 0 (松浦・中村,2012) ・検定は幼苗検定法による葉片浸漬。 ・生死の判定は処理72時間後。 ・感受性個体群は2008年に宮崎総農試内のきゅうりで 発生した個体群。 ネオニコチノイド系薬剤のプロビット 大分県① 8 8 7 7 Probit (死亡率) Probit (死亡率) 死虫率中間的グループ 6 5 4 感受性(1.3) 3 2 1 1.0E-01 竹田B(145.6) 豊後大野B(35.1) 玖珠(62.7) アセタミプリド 1.0E+00 1.0E+01 薬液処理量 (ppm) 5 4 2 1.0E+03 玖珠(151.3) 豊後大野B (372.5) 感受性(3.3) 3 ()はLC50値 1.0E+02 6 1.0E+04 1 1.0E-01 チアクロプリド 1.0E+00 1.0E+01 ()はLC50値 1.0E+02 1.0E+03 1.0E+04 薬液処理量 (ppm) 岡崎(2013) ネオニコチノイド系薬剤のプロビット 大分県① 死虫率低いグループ 8 Probit (死亡率) 7 6 8 ()はLC50値 7 Probit (死亡率) イミダクロプリド 豊後大野B(308.2) 感受性(3.1) 5 4 竹田B (1232.4) 3 1.0E+00 1.0E+01 1.0E+02 1.0E+03 7 Probit (死亡率) 7 6 豊後大野B (953.2) 感受性(11.3) 3 2 竹田B(2065.0) ジノテフラン 1 1.0E-01 1.0E+00 ()はLC50値 1.0E+01 1.0E+02 薬液処理量 (ppm) 1.0E+00 1.0E+01 1.0E+02 1.0E+03 1.0E+04 薬液処理量 (ppm) 8 4 玖珠 (381.7) ニテンピラム ()はLC50値 1 1.0E-01 1.0E+04 8 5 竹田B (232.4) 4 2 薬液処理量 (ppm) Probit (死亡率) 5 3 玖珠(2800.7) 2 1 1.0E-01 感受性(2.6) 6 玖珠 (2790.6) 1.0E+03 1.0E+04 6 5 豊後大野B (993.5) 4 感受性(1.8) 竹田B (1365.5) 3 2 クロチアニジン 1 1.0E-01 1.0E+00 玖珠 (1044.2) ()はLC50値 1.0E+01 1.0E+02 薬液処理量 (ppm) 1.0E+03 1.0E+04 岡崎(2013) ワタアブラムシの薬剤感受性に関する知見 ネオニコチノイド系薬剤に対する感受性低下 国外 ☆ 中国山東省のワタから採集した個体群で、 イミダクロプリドとアセタミプリドで感受性低下を確認。 Wang et al., 2007 国内 ☆栃木県のナシから採集した個体群で、 イミダクロ プリドとクロチアニジンで殺虫効果の低かった。 ジノテフランは総じて殺虫効果が低い。 (2010年 栃木県発生予察技術情報から) ワタアブラムシの薬剤感受性に関する知見 ネオニコチノイド系薬剤での交差抵抗 ☆イミダクロプリドとの交差抵抗 交差抵抗無し×:ジノテフラン、チアメトキサム、 クロチアニジン 交差抵抗有り:アセタミプリド、ニテンピラム、チアクロプリド (Shi et al.,2011:中国) ☆アセタミプリド、クロチアニジン、チアメトキサムに対する 抵抗性個体群を確認。 ☆イミダクロプリドとの交差抵抗によるものと示唆。 (Herron and Wilson, 2011:オーストラリア) ワタアブラムシの寄主植物 自然発生植物 宮崎県:きゅうり、ピーマン、ズッキーニ 大分県:ピーマン 高知県:ピーマン(平成25年度技術情報2号) 和歌山県:かぼちゃ(平成25年度技術情報3号) 現在のところ、ウリ科、ナス科のみで発生。 宮崎県 a a a b b b a a b c c ネオニコ抵抗性ワタアブラムシ接種13日後の増殖率 注)数値は3反復の平均値、バーは標準誤差、 異なる英文字は有意差あり(Tukey‘s test、5%) c ネオニコ抵抗性ワタアブラムシ接種15日後の成幼虫数 大分県 無翅成虫を株あたり10頭接種 ネオニコ抵抗性の数値は実験途中のため1~3反復 1000 ネオニコ抵抗性 寄主植物:ピーマン 800 600 接種 400 200 ウリ科 ナス科 バラ 科 マメ科 ヒルガオ キク アカ 科 科 ザ科 ハクサイ ダイコン コマツナ キャベツ アカザ レタス アサガオ エンサイ インゲン ササゲ エンドウ イチゴ タバコ ダチュラ ホオズキ ナス トマト パプリカ ピーマン トウガン ヘチマ カボチャ 15 ヒョウタン 日後の成幼虫数 キュウリ 0 アブラナ科 1000 800 ネオニコ感受性 寄主植物:イチゴ 600 400 200 ニンジン アブラナ科 カリフラワー キャベツ ハクサイ アカザ科 パクチョイ ホウレンソウ キク科 アカザ サニーレタス ヒル ガオ 科 レタス マメ科 エンツァイ ダイズ バラ 科 インゲン イチゴ ナス科 タバコ ナス トマト ピーマン トウガン ウリ科 ヘチマ カボチャ ヒョウタン キュウリ 0 セリ 科 ワタ 個体群平均 × モモアカ 個体群平均 ○ 合ピレ ネオニコ × 2 ○ 6 全国的に拡大する恐れ! ★ 九州中南部のピーマンを 中心に発生し、四国、近畿 地方でも発生確認! ★今後、流通や有翅虫など で分散する危険性大! 2012年 2012年 宮崎県、大分県、鹿児島県(松浦 私見)、熊本県(岡崎私見) 2013年 2013年 高知県(ピーマン)、和歌山県(か ぼちゃ) まとめ ☆ネオニコチノイド系薬剤全般に対して感受性低下を確認 ☆代替薬剤で対応し、2013年は多発生することはなくなった 今後の課題 全国レベル ☆九州→四国→近畿地方 →関東以北? 分布域拡大の恐れ ☆統一した検定法を確立し、全国でモニタリング実施 ☆ネオニコ薬剤抵抗性ワタアブラムシの基礎的生態、特性の解明 地域レベル ☆防除暦の見直し ・アブラムシの発生種に即した薬剤選定 +生物防除、気門封鎖剤を併用したIPM体系の検討