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カナダ:オイルサンドプロジェクトの状況 ~Alberta 州大規模火災の影響~

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カナダ:オイルサンドプロジェクトの状況 ~Alberta 州大規模火災の影響~
更新日:2016/9/30
調査部:舩木弥和子
カナダ:オイルサンドプロジェクトの状況 ~Alberta 州大規模火災の影響~
(Platts Oilgram News、International Oil Daily、Business News Americas、Business Monitor International 他)
1.Alberta 州で 2016 年 5 月 1 日に発生した火災が拡大したことにより、3 日以降、オイルサンドプロジェク
トの生産が相次いで停止された。しかし、火災によるオイルサンドプロジェクトへの被害はほとんどな
く、多くのプロジェクトが 6 月末までには生産を再開し、7 月半ばには通常生産に戻った。今回の火災
によるオイルサンド生産量の減少は、5 月初めが 120~130 万 b/d、火災のピーク時には約 150 万 b/d
で、5 月 1 ヶ月間の平均では 100 万 b/d となった。
2.ARC Financial によると、火災の影響もあって、2016 年のカナダ上流部門の収益は 2001 年以来最低の
730 億カナダドル、ロイヤルティとライセンス付与による政府の収入は 1993 年以来最低の 30 億カナダ
ドルとなる見通しだ。2016年のカナダの上流部門への資本支出は300億カナダドル程度に減少すると
見られている。また、オイルサンド企業により 2016 年 5~6 月に予定されていた投資のうち約 10 億カ
ナダドルが今回の火災により先送りされた。オイルサンドを生産する各社は投資額や従業員を減らし
コスト削減に努めている。
3.オイルサンド産業は今回の火災により大きな打撃を被ったが、各種機関は 2020 年頃までのオイルサン
ド生産量は、油価が下落した 2014 年半ば以前に承認を得た新規プロジェクトの建設とランプアップに
より、これまでと変わらないペースで増加するという見通しをたてている。2020 年以降についても、生
産開始までの時間が短く、コストも安くすむ既存プロジェクトの拡張により、生産の伸び幅は以前の見
通しよりも縮小するものの、生産量は増加を続けるとの見方だ。
4. カナダ西部から原油を輸送するパイプラインの送油能力は合計で 402 万 b/d とされるが、オイルサン
ド生産量増加に伴い送油能力不足が見込まれる。パイプラインの拡張や建設計画はあるものの、環境
問題や地元政府、先住民の反対により、遅延や中止に追い込まれている。
1.大規模火災のオイルサンドプロジェクトへの影響
Alberta 州で 2016 年 5 月 1 日に発生した火災は、乾燥、高温、強風により複数カ所で拡大し、Alberta
州のみならず Saskatchewan 州まで広がった。20 日以降、気温が低下し雨が降ったことにより状況が好転
し、退避地域が次第に縮小され、6 月1日には Fort McMurray へ住民の帰宅が開始され、7 月4 日には、
火災は制御下にあるとの宣言が行なわれた。火災を直接の原因とする死傷者はなかったものの、焼失
面積は約 59 万ヘクタールに及んだ。
Alberta 州ではこれまでも毎年、山火事が発生していたが、2015 年に乾燥した気候と高温、落雷により
Alberta 州で 70 件の火災が発生、うち 29 件が制御不能となり、5 月 23~24 日から 10 日間ほどの間、オ
イルサンド生産量の 10%(230,000b/d)が操業を停止したことがあるが、それ以外にはオイルサンドプロジ
ェクトの操業に影響が出ることはほとんどなかった。
-1Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
(出所:Alberta 州ホームページより作成 焼失面積の単位:ヘクタール)
しかし、今回の火災では、従業員の避難やパイプラインの操業停止等により、5 月 3 日以降、次々とオ
イルサンドプロジェクトの生産が停止された。10 日ごろには、火災が収束に向い一部プロジェクトで生産
が再開されたが、16 日に火災が急展開し、Fort McMurray 周辺の避難地域が拡張され、従業員等が再
び避難を余儀なくされた。23 日になり、ようやく Fort McMurray 周辺のオイルサンド関連施設の避難命令
が解除された。
(各種資料より作成)
-2Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
火災によるオイルサンドプロジェクトの操業停止、縮小の状況
企業
Suncor
オイルサンドプロジェクト操業停止、縮小の状況
5 月 5 日、Millennium 及び North Steepbank プロジェクト(生産能力は合計で 35 万
b/d)の生産を停止。その後、Firebag(同 19 万 b/d)の生産を停止。MacKay River は
生産量を減らして継続していたが、生産停止
ConocoPhillips
5 月 5 日、Surmont プロジェクトの生産 5.5 万 b/d を停止。従業員 800 人避難
Royal Dutch Shell Jackpine、Muskeg River プロジェクト停止。4 月の生産量合計 25.5 万 b/d。5~9 日、
生産再開、ただし生産量は削減
Husky
希釈剤のパイプラインの稼動停止でSunrise プロジェクトの生産量を1/3の1万b/d
に減らしていたが、8 日に生産停止
Syncrude Canada
Mildred Lake/Aurora プロジェクトの操業を、生産量を減らして継続。7 日、生産を
停止。火災前の生産量 29.6 万 b/d
Connacher
Great Divide プロジェクトの生産量を 14,000 b/d から 4,000 b/d に減らしたが 6 日
から 8,000 b/d に戻す
Nexen
5 月 5 日、Long Lake プロジェクトの生産を停止。火災前の生産量 2 万 b/d
Canadian Natural パイプラインの停止で Horizon プロジェクト(4 月の生産量 14 万 b/d)の生産量をわ
Resources
ずかに減らしたが、通常生産に戻した
Athabasca Oil
5 月 5 日、Hangingstone プロジェクトの生産を停止
Imperial Oil
Kearl プロジェクトの生産量を 1.2 万 b/d 削減。9 日、生産停止
Statoil
Leismer プロジェクトの生産量を 50% 減らし 1 万 b/d としていたが生産停止
(各種資料より状況を取りまとめ)
この火災により、Nexen の Long Lake プロジェクトに軽微な被害があり、16 日にオイルサンドプロジェク
トに従事する労働者の宿泊施設 Blacksands Executive Lodge が焼失した他は、火災により直接被害を受
けたプロジェクトやパイプラインはなかった。そのため、火災が収束すれば短期間で通常通りの操業が
可能となるとの見方が強かった。ほとんどのプロジェクで 6 月末までには生産が回復し、7 月半ばまでに
は通常生産に戻った。
今回の火災によるオイルサンド生産量の減少については、Conference Board of Canada が 5 月 17 日
に 2 週間にわたり平均でオイルサンド約 120 万 b/d が生産されなかったと発表した。また、IEA は Oil
Market Report で、5 月初めにはオイルサンド約 130 万 b/d、火災のピーク時には約 150 万 b/d が生産
されなかったとしている。5 月のオイルサンド生産量は 150 万b/d と 4 月の 250 万b/d に比べ、40%、100
万 b/d 減少した。
2.大規模火災のオイルサンド企業への影響
原油価格下落に加え大規模火災が発生したことで、カナダの上流企業の財務状況が悪化している。
カルガリーの投資銀行 ARC Financial によると、2016 年のカナダ上流部門の収益は 730 億カナダドル
-3Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
(560 億ドル) と、2014 年の 1500 億カナダドルの約半分、2001 年以来最低の水準となる見通しであるとい
う。2016 年の投資額は 305 億カナダドルと見込まれるが、主に Suncor Energy の Fort Hills、Imperial Oil
の Kearl 拡張、Canadian Natural Resources の Horizon 拡張等主に 2014 年以前に建設が始まったオイル
サンドプロジェクトへの投資で、これらのプロジェクトがフル生産を行なうのは 2017~2018 年となる。ロイ
ヤルティとライセンス付与による政府の収入は 2008 年には 250 億カナダドルであったが、2016 年は 30
億カナダドルと1993年以来最低となる見通しだ。通貨安により原油価格下落の 60%を相殺できているが、
各社とも投資額や従業員を減らしコスト削減に努めている。油田で働く労働者の賃金は 2007 年以降初め
て 10~15%削減され、10 万人が解雇された。また、操業コストは 2014 年から 15~25%削減された 1。
CAPP による見通しでも、カナダの上流部門の資本支出は 2014 年の 810 億 カナダドルから 2016 年
は 310 億カナダドルに減少するとされている。うち半分はオイルサンドプロジェクト向けであるという。
一方、オイルサンド企業によると、2016 年 5~6 月に予定されていた投資額のうち 8 億カナダドルが今
回の火災の影響で投資されなかった。Alberta Energy の Matt Foss 氏も、2016 年に Alberta 州が 2016
年春に予算の中でオイルサンド産業へ投資されると見込んでいた 195 億カナダドルのうち 10 億カナダド
ルは今回の火災のために投資されなかったとしている。同氏によると、これらの投資は中止されるわけで
はなく、遅れて実施されるという。投資額の多くは既存プロジェクトの拡張に充てられる予定であった 2。
以下に大規模火災で生産が停止した企業を中心に、主な企業の状況をまとめた。Suncor Energy のよ
うに、今回の火災で生産を停止したものの、積極的な資産買収、企業買収を継続する企業もあるが、
CNOOC(Nexen)のように操業に大きな影響が生じる企業もある。
〈Suncor Energy〉
Suncor Energy は今回の火災のためオイルサンドプロジェクトの生産を停止し、生産量が約 2000 万 bbl
減少したものの、生産施設に被害はなく 7 月中旬には通常生産に戻った。ただし、固定費の負担は変わ
らないものの、生産量が減少したため、2016 年第 2 四半期の操業コストは C$46.80/bbl と前年同期の
C$28.00/bbl から大幅に増加した。
Suncor Energy は原油価格低迷下で、コストを低減させながら、生産増と買収により、国内原油生産最
大手としての地位をさらに強固にすることを目指してきた。2015 年 9 月には、Fort Hills プロジェクトの権
益 10%を Total から 3 億 1,000 万カナダドルで買収し、権益保有比率を 50.8%に引き上げた。さらに、
2016 年 3 月には、Canadian Oil Sands(COS)を 42 億 4,000 万カナダドルで買収した。大規模火災後も、
この積極的な資産買収、企業買収の方針に変わりはないようで、2016 年 6 月には Murphy Oil から
1
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NorthAmOil 2016/8/12
NorthAmOil 2016/9/8
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Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
Syncrude の権益の 5%を 9.46 億ドルで取得し、権益保有比率を 53.74%に、生産量を 1.75 万 b/d 増加
させた。さらに、2016 年 8 月には、OMV より英領北海 Rosebank プロジェクトの権益 30%を 5,000 万ドル
で買収、FID 終了後にさらに 1 億 6,500 万ドルを支払うこととなった。Rosebank プロジェクトは、シェトラン
ド諸島の北西 130km、水深 3,600 フィートに位置しており、原油 100,000b/d、天然ガス 80MMcf/d を生産
可能とされる。Suncor にとっては Buzzard(30%)、Golden Eagle(27%)に続く英領北海の資産買収案件と
なる。本件後の Rosebank の権益比率は Chevron 40%、Suncor 30%、OMV 20%、Dong 10%となる。
(Suncor Energy ホームページより作成)
〈Canadian Natural Resources〉
Horizon オイルサンドプロジェクトの合成原油の生産量は 2016 年第 1 四半期の 127,909b/d から第 2
四半期には 119,511b/d に、その他オイルサンドプロジェクトのビチューメン生産量は 118,044b/d から
93,213 bbl/d に減少したものの、火災により Canadian Natural Resources の生産設備等に大きな影響はな
かった。
Canadian Natural Resources は 6 月末より Horizon オイルサンドプロジェクトのメインテナンスを 6 週間
にわたり実施した。10 月には同プロジェクトの Phase 2B が生産開始、11 月に 4.5 万 b/d のフル生産とな
る予定である。2017 年第 4 四半期には同プロジェクトの Phase 3(生産能力 8 万 b/d)が生産を開始する予
定だ 3。効率改善を進めた結果、2016 年第 2 四半期の Horizon の操業コストは 26.82 カナダドル/bbl
(20.81 ドル/bbl)と前年同期より 8%減少した。
Kirby South プロジェクトの第 2 四半期の生産量は 38,695 b/d となった。同プロジェクトの操業コストは
前年同期より 37%、前期より 18%減の 8.56 カナダドル/bbl (6.64 ドル/bbl) となった。Pelican Lake プロジ
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
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投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
ェクトの生産量は 47,797 b/d となり、操業コストは前期より 2%減の 6.81 カナダドル/bbl (5.29 ドル/bbl) と
なった。
〈Athabasca Oil〉
Athabasca Oil は 5 月 24 日、火災のため 5 月 5 日以降停止していた Hangingstone プロジェクトの操業
を再開すると発表した。火災は同プロジェクトの 5km 以内まで迫ったが被害はなかったという。また、数
週間で通常操業に戻り、長期にわたり影響が及ぶことは懸念していないと発表した。同プロジェクトの火
災による生産停止前の生産量は 9000b/d であった。
〈CNOOC〉
CNOOC(Nexen)の Long Lake オイルサンドプロジェクトは火災により 1 ヶ月以上生産を停止した。
同社は、この大規模火災や原油価格低迷に加えて、2015 年 7 月にはパイプライン破裂、原油流出事
故、2016 年 1 月にはアップグレーダー水素化分解装置の事故を引き起こした。パイプラインから原油
31,500bbl が流出した事故では、パイプラインが適切につながれておらず、油流出防止システムも作動し
なかった。アップグレーダーの水素化分解装置の爆破事故では 2 人が死亡したが、このアップグレーダ
ーは事故以前も生産能力には達しておらず、コストも当初想定を超えたものとなっていた。水素化分解
装置の修復には 1 億ドルかかり、短期間に修復は不可能であるという。
このような状況から、同社は、アップグレーダーの修復を遅らせること、フル操業開始時期は未定であ
ること、同プロジェクト関連の人員 350 人を削減することを 7 月 12 日に発表した。同社のリストラは 2015
年 3 月に従業員 3,000 人の 13%にあたる 400 人を解雇、2016 年 3 月に 120 人のリストラを実施したのに
続き 3 回目、解雇人員は累計 870 人となる。
〈Cenovus Energy〉
Cenovus Energy は ConocoPhillips と 50 対 50 の JV で Foster Creek 及び Christina Lake でオイルサン
ドを生産している。同社のプロジェクトは火災による影響を受けなかった。2016 年第 2 四半期の Foster
Creek の Cenovus の net の生産量は 64,544 b/d で前年同期より 11%増加した。一方、操業コストは 24%
下落し C$10.15/bbl となった。また、2016 年第 2 四半期の Christina Lake の Cenovus の net の生産量も
78,000 b/d と、効率改善により前年同期比 8%増加した。Foster Creek phase G、Christina Lake phase F
の生産開始で、今後 12~18 ヶ月の間に 4 万 b/d 程度(Cenovus 分)生産量が増加する見通しで、これら
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Platts Oilgram News 2016/8/8
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
のプロジェクトがフル生産となれば、同社のオイルサンド生産量は 195,000 b/d になる 4。
同社は WTI の価格が 55~60 ドル/bbl となれば、Alberta 州のオイルサンドプロジェクト 3 件 Christina
Lake Phase G(生産能力 5 万 b/d)、Foster Creek Phase H(同 5 万 b/d)、Narrows Lake (同 13 万 b/d)を進
める計画だ。Cenovus は、操業コストを 2014 年の C$13.50/b から 2016 年は C$10.10/b に引き下げる計
画である 5。
3.オイルサンド生産見通し
オイルサンド産業は Fort McMurray の火災により大きな打撃を被ったが、各種機関は 2020 年頃まで
のオイルサンド生産量はこれまでと変わらないペースで増加するという見通しをたてている。それ以降も
生産の伸び幅は以前の見通しよりも縮小するものの、生産量は増加を続けるとの見方だ。原油価格が下
落した 2014 年半ば以前に承認を得た新規プロジェクトの建設が 2018 年ごろまでに終了し、これらのプロ
ジェクトの完成とランプアップにより 2020 年ごろまではこれまでの見通しと大きく変わらないペースで生
産量が増加し、その後は生産開始までの時間が短く、コストも安くすむ既存プロジェクトの拡張により、生
産量が増加するとの見方と考えられる。
〈IEA〉
IEA は Oil Market Report で、カナダの石油生産量は、2016 年は 6 万 b/d 減少、2017 年は 25 万 b/d
増加するとの見通しを示している。オイルサンド生産量については、火災の影響により大きく落ち込んだ
2016 年第2 四半期から、第3 四半期には回復をみせ、2017 年は、増減はあるものの増加傾向をたどると
の見方をしている。
(出所:IEA Oil Market Report 11 August 2016)
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Platts Oilgram News 2016/8/1
Platts Oilgram News 2016/5/26
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れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
〈CAPP〉
カナダ石油生産者協会(Canadian Association of Petroleum Producers:CAPP)は、2016 年 6 月に
Crude Oil Forecast, Markets and Transportation を発表した。CAPP はこの中で、在来型及び東部の生産
量は減少するものの、オイルサンド生産量の伸びがこれらの減少分を上回るため、カナダの原油生産量
は過去数年間に見られていたよりも遅いペースではあるが増加を続け、2015 年の 385 万 b/d から 2030
年には 493 万 b/d になるとしている。
CAPP は、カナダの石油・ガス産業は、原油価格低迷により収益が減少したことでコスト削減、探鉱・生
産部門の資本支出削減を進めているが、原油価格低迷に対応するだけでなく FortMcMurray の火災に
よる減収からの回復も図らなくてはならない状況にあるとしている。
そして、オイルサンド生産量は今回の火災による影響を大きく受け、2016 年は減少するとしている。し
かし、その後 2021 年までは、現在建設中のオイルサンドプロジェクトが計画通り建設を続け生産増に寄
与するため、年に 12.8 万 b/d の割合で増産が見込まれ、前回、2015 年 6 月の見通しとほぼ同じ生産見
通しとなるとしている。2022~2030 年は、オイルサンド生産量は年に 5.9 万b/d の割合で増加するが、増
産幅が縮小するため、2030 年のオイルサンド生産量は前回の見通しよりも 28.5 万b/d 少ない 367 万b/d
となると見ている。
CAPP は、原油価格が現在の低水準から回復すれば在来型、オイルサンドプロジェクトともに生産見
通しが上方修正される可能性はあるとしている。また、低油価の環境に対応し地層内回収法の操業にお
いてコスト削減が進めば生産見通しは上方修正される可能性があるとみている。また、2030 年以降は生
産量が増加する可能性があるとしている。
-8Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
CAPP は、オイルサンド生産の内訳を、2015 年は露天掘りが 102 万b/d、地層内回収法が 134 万b/d、
2030 年は露天掘りが 153 万 b/d、地層内回収法が 214 万 b/d としており、オイルサンドの生産増は露天
掘りよりも地層内回収法によるところが大きいとしている。
なお、CAPPは、Athabasca、Cold Lake、Peace Riverのオイルサンド埋蔵量は1,650億bblで、うち19%
が露天掘り、81%が地層内回収法で生産可能であるとしている。
4.新規パイプライン建設の見通し
カナダ西部から原油を輸送するパイプラインには Enbridge の Mainline パイプライン、Kinder Morgan
の Trans Mountain パイプライン、Spectra Express パイプライン、TransCanada の Keystone パイプライン
などがある。これらの輸送能力は合計で 402 万 b/d となっている。オイルサンド生産量は今後も増加する
との見通しであり、パイプラインの送油能力不足が懸念されており、以下 4 件のパイプライン敷設が検討
されてきたが、いずれのプロジェクトも難航している。
オイルサンド関連.パイプライン建設、拡張計画
太平洋岸
東部
米国メキシコ湾
パイプライン
Trans Mountain 拡張
Northern Gateway
Energy East
Keystone XL
企業
Kinder Morgan
Enbridge
TransCanada
TransCanada
拡張される送油能力
59 万 b/d
52.5 万 b/d
110 万 b/d
83 万 b/d
総延長
950km
1,172km
4,400km
1,897km
(各種資料より作成)
-9Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
KeystoneXL パイプラインについては、米国との国境をまたぐパイプラインなので米国の承認が必要と
されてきたが、2015 年11 月6 日、Obama 大統領が同パイプラインを建設しても、長期的な経済貢献は期
待できず、石油価格引き下げ効果もなく、エネルギー安全保障にもつながらない等を理由とし、同パイ
プライン建設計画を却下する方針を表明した。その後、2016 年 5 月 26 日に、共和党大統領候補の
Trump 氏が同パイプラインについて、TransCanada に再申請を求め、同社の利益の一部を米国が取得
できるならばこれを承認するつもりであると述べており 6、米国大統領選挙の行方しだいでは再度検討さ
れる可能性もある。一方、6 月 24 日、TransCanada は、米国政府が却下した同パイプライン事業に関して、
NAFTA第11章(ISDS条項)に基づき、150 億ドルの損害賠償を求めて、仲裁を求めている。
Northern Gateway パイプラインに関しては、2015 年 11 月 13 日に、Trudeau 首相が運輸大臣に BC 州
北部太平洋沖合での原油のタンカー輸送を正式に禁止するよう示唆した。禁止されることになれば、
Northern Gateway パイプラインにとって大きな打撃となるとみられていたが、2016 年 6 月 30 日には、連
邦裁判所が、政府が先住民団体との十分な協議を怠ったとの理由で、前保守党政権が 2014 年に与えた
同パイプラインの敷設許可を取り消した。また、現政権に対し、同パイプライン敷設によって影響を受け
る先住民と追加協議を実施した上で、新たに閣議決定するよう義務づけた。
Kinder Morgan の Trans Mountain パイプライン拡張に関しては、2016 年 5 月 19 日に、国家エネルギ
ー委員会(NEB)が、リスクよりも輸出、雇用創出、増収等の利益が上回るとして、安全や環境保護等 157
の条件付でこれを承認するよう連邦政府内閣に勧告した。2017 年の建設開始、2019 年末に操業開始を
計画しているという。しかし、12 月に予定される内閣による最終決定までには、先住民との協議や天然資
源大臣の諮問パネルの設置、パブリックコメントの実施等が求められている。
Energy East パイプラインについても、Quebec 州政府が反対を示しており、Quebec 州の環境基準に合
わせるよう命じている。
終わりに
オイルサンドプロジェクトは、2014 年半ば以降の原油価格下落の影響を受け、生産中、建設中のもの
は生産、建設が続けられているが、新規のものは延期、保留されるという状況にあった。今回の大規模
火災により、幸いにも生産設備やパイプラインのダメージはほとんどなかったものの、生産量が減少し、
さらに厳しい状況に追い込まれた。Alberta 州では、2015 年 7 月 1 日より法人税率が 10%から 12%に引
き上げられ、2017 年 1 月 1 日からはガソリン、ディーゼル、天然ガス、プロパン等の温室効果ガスを排出
させる燃料を対象に課税を行う炭素税法が施行される予定である。CAPP 等によるオイルサンド生産見
通しは 2020 年まではこれまでと変わらず増加、それ以降も生産の伸び幅が縮小するものの増加を続け
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International Oil Daily 2016/5/27
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Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
るとなっているが、原油価格や政策、パイプライン敷設の動向とあわせ、オイルサンドプロジェクトの状況
を注視していく必要があると考えられる。
以
上
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
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任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
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