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世界の港
釜山新港の夜景。 (上) 工事が進む釜山新港北コンテナふ頭。 (右) ソウル 大韓民国 黄海 釜山港 朝鮮半島の東南端に位置する釜山港は九州・博多港から高速船で3時間、日本とは 至近距離にある港だ。今年1月には新しいコンテナターミナルを備えた釜山新港の 供用が始まり、2011年の全面開港を目指して整備が進められている。 コンテナ急増で施設不足が深刻化 釜山新港 を向上させた。さらに5,000トンから ることで、重量負担によるふ頭破損の 1万トン級の中小型船の専用ふ頭とし 危険性も懸念される中、新たな港湾の 釜山港は韓国有数の漁業拠点であり、 て、牛岩(ウアム)ターミナルが設け 建設が最重要課題とされていたのであ その一方国内のコンテナ貨物の80%を られている。 る。しかし、市街地に隣接するという 取り扱う物流の要衝だ。1876年の開港 78年に開設された国際旅客ターミナ 立地で、新たな開発は限界まできてい 以来、朝鮮戦争時には補給基地として、 ルには、下関や博多など日韓間で6航 た。このため95年に新港計画に着手し、 その後は国際貿易港として成長を続け、 路の国際旅客船が就航している。近年 港の西方25kmにあるカドク(加徳) 2005年のコンテナ貨物取扱量は1,184 の韓流ブームも手伝ってか、利用客が 島に大規模なコンテナターミナルの建 万TEU、世界第5位となっている。 増えており、03年には81万人が利用し 設が決定した。 コンテナ物流の中心を担うのは釜山 た。旅客の増加や施設の老朽化に対応 港の北港で、5万トン級の大型船にま するべく、全面的に改修する計画が進 で対応するコンテナターミナルが稼働 められている。一方、20世紀初頭から している。1978年に韓国初のコンテナ の古い歴史をもつ一般ふ頭(第1∼6 専用ターミナルとして誕生した韓国ハ ふ頭)は、雑貨などの一般貨物を取り チソン、85年から91年にかけて整備さ 扱うほか、104基の穀物サイロを備え れた神仙台(ジンソンデ) 、94年から た穀物ふ頭、国防部が運営する軍用ふ 97年に整備された甘湾(ガンマン)は、 頭として利用されている。 それぞれ年間120万TEUの処理能力 釜山港でコンテナ貨物が急増してき を有している。新甘湾(シンガンマン) たのは、90年代半ば以降。相次いでコ は02年に完成したターミナルで、2個 ンテナターミナルが整備されたものの のコンテナを同時に処理できるガント 対応が追いつかず、一般ふ頭でもコン リークレーン、無線LANを搭載した テナ貨物を受け入れるようになった。 ヤードトレーラーを導入し、作業効率 本来は目的外であるコンテナを処理す 18 釜山の中央部に位置する中央公園内には民主公園や民主抗争 記念館、護国英霊を祀った忠魂塔があり、毎年慰霊祭が行わ れる。 購入し、国際物流企業を格安の賃貸料 で誘致する計画に本腰を入れている。 この物流団地に立地する企業に対して は、所得税、法人税、登録税、関税な どにおいて、一定期間の免除や減免を するといったインセンティブを与え、 外国企業の投資を呼び込もうとしてい る。 また、貨物の荷役や保管だけでなく、 配送・加工・組み立てにも対応できる 付加価値の高い港湾物流を実現してい く予定だ。日本の企業にとっては、輸 入貨物を韓国の港でいったん引き上げ、 製品化または半製品化してから国内各 港へと輸送すれば、物流コストの低減 につながるメリットがある。韓国は日 本企業にも積極的に誘致を働きかけて おり、進出を検討する企業も出始めて いるという。 釜山港の北港は、コンテナヤードや 荷積み場に使える用地が狭い。このた め都心にある保管用の倉庫へと向かう 運搬車両が、市内の交通渋滞を引き起 こす原因となっている。新港内に広大 高さ70mの世界最大級のガントリークレーン。 な物流団地が確保されれば、渋滞によ る騒音、排気ガスを含めた都市問題の 解消につながる効果も期待されている。 1兆円の大規模港湾プロジェクト ふ頭の長さは10kmに及ぶ。現在は3 つのバース(水深16m)の供用を開始 釜山港の一般ふ頭も再開発へ 新港の建設は、総工費9兆1,542億 しており、北地区、南地区、西地区の ウォン(約1兆円)をかけた政府主導 順に開発を進め、2011年までに30バー 釜山新港の整備にあたっては、浚渫 の一大プロジェクトとなった。97年に スのターミナルが整備される計画だ。 土投棄場を設けて海洋投棄を防止する、 着工し、2006年1月に「釜山新港」と 高さ70mの世界最大級のガントリーク 工事区域内の敷地には元の樹木を50% して開港され、式典にはノ・ムヒョン レーン9基を設置するなど施設の充実 以上を移植するなど、環境に配慮した 大統領も出席した。 にも力を入れ、全面開港時のコンテナ 政策を打ち出した。埋立地の害虫発生 釜山新港の敷地面積は約1,071haで、 貨物取扱量は年間804万TEUを見込ん を抑えるため、天敵のアヒルを利用し でいる。 た新しい防除法を取り入れ、地域住民 釜山港の貨物取扱量は、03年までは の被害を最小限にする工夫も考えられ 世界第3位だったが、04年以降は中国 ている。 の上海と深 に上位を譲って第5位に 全面開港となれば、これまで一般ふ 後退した経緯もあり、全面開港後は 頭で扱われていたコンテナ貨物の大部 「東北アジアのハブ港」として、上位 巻き返しを目指すことになる。 分が新港に移行することが予測される。 釜山港湾公社では、その後の一般ふ頭 にクルーズ・旅客ふ頭、市民の憩いの 物流団地に外国企業を積極誘致 場などを設け、快適で安全な港湾施設 に再開発する構想を立てている。専門 海雲臺海水浴場は、韓国で一番美しい海岸で、夏は一日100万 人の市民が集まる。 新港の特色として挙げられるのが、 家や市民の意見を取り入れながら、環 総面積約307haの物流団地の整備だ。 境にも配慮した開発を進めていく計画 現在、中央政府機関である海洋水産部 だ。 と釜山港湾公社が共同で一部の敷地を (文/小野寺明子 写真提供/釜山港湾公社・釜山市観光局) 19