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2014年2月19日 (PDFファイル)

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2014年2月19日 (PDFファイル)
日本銀行秋田支店 金融経済調査シリーズ
2014年2月19日
日本銀行秋田支店
秋田港の更なる活用に向けて
当店広報キャラクター:どっこい・しょー太郎
当店広報キャラクター:じぇん子ちゃん
▼本レポートに関する照会先
日本銀行秋田支店 総務課(堀口、豊田)
(TEL)018-824-7802
(E-mail)[email protected]
▼本レポートは日本銀行秋田支店のホームページ(http://www3.boj.or.jp/akita/)からもご覧い
ただけます。
▼本稿の内容について、商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行秋田支店までご
相談ください。転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。
(概要)

人口減少・高齢化を背景として、秋田県内および国内では、消費市場の縮小が懸念され
るほか、生産拠点の海外移管に伴う産業の空洞化も意識されている。一方、海外では、新興
国を中心に趨勢的な高成長が見込まれ、消費市場が拡大することが期待されている。こうし
た中で、秋田県経済の持続的な成長のためには、海外需要を取り込むことの重要性が増し
ている。

秋田県の貿易額は、着実に増加を続けている。こうした中、秋田港は、日本海側拠点港と
して、県内で唯一コンテナを取り扱うなど、県内貿易の重要なインフラとして機能している。秋
田港のコンテナ取扱量は、東日本大震災による代替需要等を背景に 2011 年に大幅に伸長
した後、同港の利便性の認識が進んだことなどから、その後も増加を続け、2013 年は 3 年連
続で過去最高を更新する見込みである。さらに、2014 年度の完成を目指して、コンテナター
ミナルの拡張工事が進められており、年間取扱能力の増加が見込まれている。
もっとも、空の状態のコンテナを除いてみると、秋田港で取り扱われる全コンテナの約 7 割
を輸入が占めるなど、圧倒的な輸入超過の状態となっており、海外向けでは空コンテナ比率
が高い。こうした空コンテナの多さは、埠頭内に空コンテナを一時保管するスペースを余分
に必要とするほか、空コンテナの輸送コスト等が海上運賃に転嫁されている面も否定でき
ず、改善が望まれる課題となっている。

秋田港は、インフラ面や地理的な特徴という点で様々な強みを有している。しかし、①そう
した強みが県内外の企業に十分広く認識されてこなかったこと、②貿易実務に関するノウハ
ウ不足などから直接貿易に踏み出しかねている企業があること、③中韓ロシア以外への直行
航路が現在は無いことなどから、これまで秋田港の強みがフルに発揮されてきたとは言い難
い。秋田港の更なる活用に向けた鍵として、①企業に秋田港の利便性をより深く知っ
てもらい、物流戦略の最適化の過程で秋田港の利用が拡大するように働きかけていく
ことや、②貿易促進に向けた各種のバックアップ体制も活用しつつ、県内企業がさら
に意欲的に貿易に取り組むようになること、などが期待される。それと同時に、ASEAN
諸国との直行航路開設に向けた取り組みの一層の強化や、当地の特色である農業関連分
野における輸出拡大への取り組みを進めることで、相乗的に秋田港の貿易量が増大していく
ことが期待される。

行政面・金融面等でも輸出促進に向けた取り組みが広がりつつあり、秋田県経済と海外と
の関係は強まってきている。こうした環境のもとで、秋田港の強みも活用しつつ、企業が独自
の輸出戦略を展開することで貿易が一層拡大すれば、その結果として定期航路の増便や港
湾施設の拡充が進むといった好循環がもたらされる可能性がある。かつて秋田港は、全国を
代表する「三津七湊」のひとつに数えられたほか、北前船の寄港地として当地の隆盛を支え
てきた。各関係機関や県内企業の意欲的な取り組みによって、秋田港の利用が増加し、秋
田県経済の持続的な成長に資することを期待したい。
1
1. はじめに
秋田県の人口減尐と高齢化は、全国に先駆けて進展していくと予測されてお
り(図表 1)、これに伴い、県内の消費市場の縮小が懸念されている。また、全
国と同様に、製造業における生産拠点の海外移管などグローバル化の進展と相
まって、産業の空洞化も意識されている。一方、海外に目を向けると、中国や
ASEAN、ロシアを中心とした新興国では、趨勢的に高めの成長が見込まれ(図表
2)、今後も市場の拡大が期待されている。このため、わが国では、海外との経
済的な結び付きを深化させ、貿易を拡大すべく、各国・地域と FTA1や EPA2の締
結を進めている(図表 3)。こうした中で、秋田県経済の持続的な成長のために
は、県外需要、特に海外需要を取り込むことの重要性が増している。
【図表 2】各国等の GDP 成長率の推移
【図表 1】秋田県の人口と高齢化率の推移
140
万人
%
125.4
120
推計値
108.6
50.0
%
45.0
40.0
100
15.0
予測
10.0
35.0
30.0
80
25.0
60
20.0
15.0
40
5.0
0.0
10.0
20
5.0
0
-5.0
0.0
秋田県総人口(左軸)
全国高齢化率
中国
ロシア
日本
秋田
-10.0
85 90 95 00 05 10 15 20 25 30 35 40 年
ASEAN5
05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18
年
秋田県高齢化率
(出所)内閣府、IMF
(出所)総務省、秋田県、国立社会保障・人口問題研究所
【図表 3】日本と各国・地域との EPA/FTA の現状(2014 年 1 月 24 日時点)
シンガポール、メキシコ、マレーシア、チリ、タ
発効済 (13) イ、インドネシア、ブルネイ、ASEAN全体、フィリ
ピン、スイス、ベトナム、インド、ペルー
交渉段階(11)
オーストラリア、モンゴル、カナダ、コロンビア、
日中韓、EU、RCEP、TPP、GCC、韓国、トルコ
(注)GCCは交渉延期、韓国は交渉中断中
(出所)外務省
1
自由貿易協定(Free Trade Agreement)
:特定の国や地域の間で、物品の関税やサービス貿易の障害等を
削減・撤廃することを目的とする協定。
2
経済連携協定(Economic Partnership Agreement)
:貿易の自由化に加え、投資、人の移動、知的財産の
保護や競争政策におけるルール作り、様々な分野での協力の要素等を含む、幅広い経済関係の強化を目
的とする協定。
2
この間、国際コンテナ港である秋田港では、東日本大震災で被災した太平洋
側の港の代替需要もあって、貿易量が拡大を続けている。2013 年はコンテナ取
扱本数が 73,268 本3(速報値)となっており、3 年連続で過去最高を更新する見
込みである。もっとも、これまで県内企業では、貿易実務のノウハウ不足等か
ら、海外との直接取引を躊躇うケースが尐なからずみられてきたほか、既に貿
易を手掛けている企業であっても、秋田港ではなく、京浜方面などの県外港を
利用するケースが多く、秋田県が貿易による恩恵を十分に享受しているとは言
い難いのが実状である。
そこで、本稿では、国際コンテナ港である秋田港を利用した貿易の現状や課
題について整理し、今後の秋田港の可能性等について考察する。
2. 秋田県における貿易と秋田港のコンテナ貨物
(1) 秋田県の貿易額等の推移
秋田県の貿易額(図表 4)は、2002 年以降、輸出入ともに着実に増加を続け
てきたが、2008 年のリーマンショックによる世界的な経済不況から大きく落ち
込んだ。その後、2010 年に幾分回復した後、2011 年には東日本大震災で太平洋
側の港が被災したことによる代替需要等から大きく伸張、その後も引き続き増
加を続けており、2013 年には過去最高となる 2,553 億円を記録した。
【図表 4】秋田県の貿易額の推移
3,000
億円
輸出
2,500
2,000
1,500
輸入
総額
1,000
500
0
02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 年
(出所)函館税関、秋田県
秋田県は、重要港湾 3 港4と地方港湾 2 港5を有するが、このうちコンテナを取
り扱っているのは、秋田港のみである。秋田港は、2011 年 11 月に日本海側拠点
港(国際海上コンテナ6)に選定されたほか、秋田港国際コンテナターミナル施
3
本稿でのコンテナ本数とは、20 フィートコンテナ換算の積載能力(TEU)のこと。
4
秋田港(2012 年貨物量 849 万トン)
、能代港(同 402 万トン)
、船川港(同 36 万トン)
。
5
本荘港(2012 年貨物量<水産品>27 トン)
、戸賀港(同 155 トン)
。
6
秋田港のほかには、博多港、北九州港、下関港、新潟港、伏木富山港、伊万里港、境港、舞鶴港、金沢
港(うち、博多港、北九州港、下関港、新潟港、伏木富山港は総合的拠点港に選定)
。
3
設整備事業第 1 期計画(2009-2011 年度)に基づき、2012 年 4 月には新国際コ
ンテナターミナルとして、施設を供用している。また、その際に、コンテナヤ
ードがこれまでの 4ha から 11.3ha に拡張され、年間のコンテナ取扱能力が 7 万
本となった。
秋田港におけるコンテナ取扱量(図表 5)は、前述の秋田県の貿易額同様に、
2008 年のリーマンショックまでは着実な増加傾向を辿ってきたほか、2011 年に
は東日本大震災による代替需要等から大幅に伸長した。その後も引き続き増加
を続け、本州日本海側7では、第 3 位の取扱量になっている(図表 6)ほか、2013
年には年間取扱能力とされる 7 万本を超える 73,268 本となり、過去最高を更新
する見込みである。また、秋田港の利用増加等を見据えて、秋田港国際コンテ
ナターミナル施設整備事業第 2 期計画(2012-2014 年度)では、ターミナルを更
に 5ha 拡張し、年間取扱能力を 10 万本まで拡充させるべく、2014 年度の完成を
目指して建設が進められている。
この間、秋田港以外の日本海側の港では、東日本大震災で被災した太平洋側
の港の代替需要を背景に、コンテナ取扱量が 2011 年に伸長した後、被災港の港
湾機能の回復に伴い、2012 年には減尐に転じている。これに対し、秋田港では、
2012 年以降も引き続き取扱量が増加しているが(図表 7)、この背景には、企業
のリスク分散行動に加え、それまで太平洋側の港を活用してきた岩手・宮城両
県の企業が、秋田港の利便性の高さを評価し、継続的に利用を増加させている
との指摘が聞かれている。
【図表 5】コンテナ取扱量の推移
80,000
【図表 6】本州日本海側主要港のコンテナ
本
取扱量(2012 年速報値)
70,000
新潟
60,000
伏木富山
50,000
内貿(空コン)
40,000
輸入(空コン)
輸出(空コン)
30,000
20,000
秋田
敦賀
輸入(実入り)
金沢
輸出(実入り)
境港
10,000
舞鶴
0
0
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 年
(注)2013 年の値は速報値
(出所)秋田県
10
20
(出所)国土交通省
【図表 7】日本海側 3 港のコンテナ取扱量の前年比
(%)
2011年
秋田
21.6
新潟
16.4
伏木富山
7
4.3
2012年
6.5 (注)コンテナ取扱量は、外貨+内貨であり、
▲ 9.6
空コンテナを含む
▲ 4.2 (出所)日本港運協会
本稿では、本州に所在する日本海側拠点港のうち、瀬戸内海に面する下関港を除くベース。
4
30
万本
(2) 秋田港におけるコンテナ貨物の特徴と課題
秋田港のコンテナ取扱量を仔細にみると、輸入偏重と、それに伴い空の状態
で海外移送されるコンテナ(以下、空コンテナ)の多さが特徴として挙げられ
る。実際に、2012 年の空コンテナを除くコンテナ数(以下、実入りコンテナ)
をみると、輸入が約 7 割を占めるなど圧倒的な輸入超過となっている(図表 8)。
秋田港の輸出入バランスは本州日本海側の主要港と比較しても、輸入偏重の度
合いが強く(図表 9)、総取扱量に占める空コンテナの比率も高い(図表 10)。
この背景として、原材料の輸入が多い8一方で、県内で加工し、付加価値を付け
た形で再輸出される製品が尐ないことに加え、輸出関連企業は親会社や商社を
経由する間接貿易への依存度が大きく、全国から集荷された貨物の一部として
首都圏の港から輸出されるケースが多いという事情もある。
空コンテナが多いと、コンテナヤードに空コンテナを一時保管しておくスペ
ースを余分に確保しておく必要が生じる。また、空コンテナの運搬からは輸送
料金が発生しないため、運搬にかかる施設使用料などの費用は、直接的には海
運会社が負担することになる。それは、最終的に荷主の実入りコンテナの輸送
料金に転嫁されていると推測されることから、その分、船会社に支払う輸送料
金も割高になっている可能性がある。このため、空コンテナを減らし、より効
率的な輸出入を行うことが、秋田港の大きな課題となっている。
【図表 8】コンテナ貨物(実入り)の輸出入比率と主要品目(2012 年)
秋田港
100%
(参考) (参考)
五大港を その他諸港
含む12港
63港
輸出(秋田港)
産業機械
2.0%
90%
80%
31.7
%
完成車
2.1%
43.4
%
43.6
%
ゴム
製品
9.7%
70%
60%
自動車
部品
12.2%
50%
40%
30%
紙・
パルプ
26.5%
その他
15.3%
68.2
%
56.6
%
56.4
%
再利用
資材
18.8%
非鉄
13.6%
輸入(秋田港)
20%
10%
0%
家具装備
品
2.3%
輸出
輸入
その他
日用品
2.6%
(注 1)
「五大港を含む 12 港」とは、東京・横浜・清
水・名古屋・四日市・大阪・神戸・北九州・千
葉・川崎・下関・博多
(注 2)
「五大港を含む 12 港」および「その他諸港」
の計数は 2010 年の値
(出所)秋田県、港湾近代化促進協議会
8
製材
43.4%
その他
25.9%
化学薬品
2.6%
電気機械
2.9%
衣服等
3.1%
木製品
17.3%
このほか、コンテナ船を利用せずにバラ積み船を利用して非鉄鉱や石炭などの原料を輸入している。
5
【図表 9】本州日本海側各港の輸出入バランス 【図表 10】本州日本海側各港の空コンテナ比率
60
%
(単位:万本、%)
舞鶴
輸 50
入
(
実 40
入
り
) 30
の
割 20
合
秋田
港湾
位置付け
貨物量
伏木富山
新潟
金沢
新潟
敦賀
10
0
0
10
20
30
総合的拠点港
24.4
21
〃
6.9
24
秋田
日本海側拠点港
6.6
30
敦賀
〃
6.4
11
金沢
〃
4.8
21
境港
〃
2.9
31
舞鶴
〃
0.9
29
伏木富山
境港
40
輸出(実入り)の割合
50
60
%
空コンテナ比率
(外貨)
(注 1)
「空コン比率(外貨)」では、内貨空コンは含まない
(注 2)新潟、伏木富山、秋田、敦賀は 2012 年、その他は 2011 年の値
(資料)日本港運協会
(注 1)バブルの大きさは、貨物量を表す
(注 2)新潟、伏木富山、秋田、敦賀は 2012
年、その他は 2011 年の値
(出所)日本港運協会
3. 秋田港の活用に向けた取り組み
秋田港には、後述するような様々な強みが存在する。もっとも、これまでの
ところは、①そうした強みが県内外の企業に十分広く認識されてこなかったこ
と、②貿易実務に関するノウハウ不足などから直接貿易に踏み出しかねている
企業があること、③中国・韓国・ロシア以外への直行航路が現在は無いことな
どから、これまで輸出を中心に秋田港の強みがフルに発揮されてきたとは言い
難い。
秋田港の更なる活用に向けた鍵として、①企業に秋田港の利便性をより深く
知ってもらい、物流戦略の最適化の過程で秋田港の利用が拡大するように働き
かけていくことや、②貿易促進に向けた各種バックアップ体制も活用しつつ、
県内企業がさらに意欲的に貿易に取り組むようになること、などが期待される。
それと同時に、趨勢的な高成長が期待される ASEAN 諸国との直行航路の開設に
向けた取り組みの一層の強化や、農業県である当地の特色を生かし、コメや日
本酒などの飲食料品といった農業関連分野における輸出拡大への取り組みを進
めることで、相乗的に秋田港の貿易量が増大していくことが期待される。
6
(1) 秋田港の持つ強み
① 充実したインフラと定期航路の就航
秋田港では、船舶からコンテナを積み降ろす際に使用するガントリークレー
ン 2 基9、ヤード内のコンテナを運搬する際に使用するトランスファークレーン
2 基を備えるほか、植物防疫用のくん蒸施設や冷凍コンテナ用プラグも整備する
など、インフラの拡充が進んでいる。また、秋田県は、コンテナターミナルの
拡張とトランスファークレーン 1 基や各種施設の導入を決定しているほか、故
障時のバックアップ体制や作業効率の向上を企図して、2014 年度にガントリー
クレーンを 1 基増設することとしており、2015 年度からの運用開始を予定して
いる。
こうしたハード・インフラ面に加え、週 5 便の国際コンテナ定期航路が就航
する(図表 11)など、ソフト面での整備も進んでいる。定期航路では、週 3 便
の釜山便に加え、釜山経由の中国便・ロシア便が各 1 便ずつ就航している。特
に釜山港は、コンテナ取扱量では、東京港の 4 倍・世界 5 位を誇るなど、世界
のハブ港としての地位を確立しており(図表 12)、釜山港で積み替えを行い、世
界中の地域と貿易をすることが可能となっている。実際に、釜山港湾公社によ
ると、2013 年 1-6 月に日本から釜山港経由で第三国に運ばれた貨物量は前年同
期比 11%増の 675,775 本と、ここ数年 10%前後の伸びが続いており、今後も更
なる拡大が見込まれている。
【図表 11】秋田港における国際コンテナ定期航路
航路
韓国
韓国・中国
韓国・ロシア
船社名
輸入
輸出
南星海運
釜山→秋田(水)→新潟
2日
→伏木富山→釜山新港→釜山
4日
高麗海運
釜山→金沢→秋田(火)
→新潟→釜山
2日
4日
興亜海運
釜山→釜山新港→伏木富山
→新潟→秋田(月)→釜山
5日
2日
釜山:4日
蔚山:11日
光陽:9日
青島:7日
大連:6日
同:3日
同:2日
同:5日
同:7日
同:8日
興亜海運 釜山→釜山新港→新潟
高麗海運 →秋田(金)→蔚山→釜山
(協調配船) →光陽→青島→大連→釜山
長綿商船
釜山→釜山新港→秋田(月)
→新潟→直江津→富山新港
釜山:3日
同:4日
→釜山新港→釜山
ウラジオストク:5日 同:7日
→ウラジオストク→釜山
→釜山新港
(出所)秋田県
9
所要日数
スケジュール
うち 1 基は、予備機である。
7
【図表 12】世界の主要港のコンテナ取扱量(2012 年)
順位
1
2
3
4
5
6
(単位:本、%)
取扱量
前年比
3,258万
3.4
3,165万
5.7
2,310万
▲ 5.3
2,294万
1.6
1,702万
5.3
1,683万
14.1
港湾名
上海
シンガポール
香港
深圳
釜山
寧波
・
・
・
東京
28
475万
4.4
(出所)日本港運協会
② コスト面での優位性
秋田県内の企業が輸出入を行う場合の釜山港への所要日数を比較すると、首
都圏よりも秋田港を利用する方が早い。また、秋田港が首都圏よりも所要日数
面で劣位にある香港港や上海港への輸送についても、コスト面をみると、割高
な国内陸上輸送費が削減されることで(図表 13)、秋田港から県外各港へのトー
タル輸送費用を抑制できるとの指摘もある。こうしたことから、京浜港等を利
用している県内企業では、納品のタイミング等に応じた港の使い分けにより、
一段のコスト削減を実現できる可能性がある。また、秋田港の輸出量増加に伴
って輸出入バランスが改善すれば、空コンテナの減尐やコンテナ船の大型化を
通じた海上運賃の低下(図表 14)、さらには定期航路の増便など、秋田港の魅力
向上につながることが期待できる。
【図表 14】海上運賃の比較
【図表 13】陸上運賃の比較
<20ftコンテナ>
距離 陸上輸送表費
(km) (円/個)
秋田市-東京港(A)
622
193,580
うち有料区間
秋田市-秋田港(B)
(A)-(B)
611
9
70
千円/個(20ftコンテナ)
最大積載量
500TEU
1000TEU
60
50
40
41,485
2000TEU
30
20,140
4000TEU
20
173,440
(注)Google マップで得られたそれぞれの区間距離を用いて、
国土交通省「港湾整備事業の費用対効果分析マニュアル」
により試算した
(出所)国土交通省、Google マップ
8
船舶の
大型化
10
0
1
2
3
4
5 日
(注)横軸は一区間当たりの航行日数
(出所)国土交通省
6000TEU
③ 一段の経済成長が期待されるロシアとの距離の近さ
秋田港は、ロシア・ウラジオストク港との距離が約 790km と近く10、前述のと
おり釜山を経由したロシア航路も開設されている(前掲図表 11)。
わが国のロシアとの貿易額(図表 15)をみると、2011 年にはリーマンショッ
ク前の水準まで回復し、その後も増加を続けている。また、JETRO の「在ロシア
進出日系企業11実態調査」をみると、在ロシア日系企業では、
「今後 1~2 年の事
業展開の方向性」を「拡大」とする先が約 8 割を占めており(図表 16)、その理
由として「成長性、潜在力の高さ」を挙げる企業が約 8 割(複数回答可)を占
めている。また、在欧州日系企業ではロシアを将来の有望市場とみる先が最も
多く(図表 17)、ロシアでの一層のビジネス拡大が期待されるだけに、県内企業
が秋田港を活用して貿易を拡大させるメリットは大きいと考えられる。例えば、
ロシア極東地域では、政府が経済開発を重点的に進めていること等を背景に、
日系自動車メーカーの進出が拡大12している。トヨタ自動車東日本の設立等の影
響を受けて、今後東北地方で自動車産業の集積が一段と進めば、秋田港を活用
した部品等の輸出が増加する可能性もある。
【図表 15】日本の対ロシアの貿易額の推移 【図表 16】在ロシア日系企業の「今後 1~2
年の事業展開の方向性」
40
10億ドル
35
全体
77.8
製造業
76.9
非製造業
78.0
30
25
20
15
10
5
0
0%
05
06
07
08
09
10
11
12 年
拡大
(出所)財務省
10
11
12
20%
40%
60%
現状維持
80%
100%
縮小
(出所)JETRO
ウラジオストク港と日本海側各港との距離は以下の通り。伏木富山:約 880km、金沢:約 860km、敦賀:
約 950km(国土交通省「環日本海シーアンドレール構想検討委員会」より)
。
JETRO によると、ロシアには自動車、建設機械など日系企業約 270 社が進出している。
2012 年 9 月には、マツダがウラジオストク市でソラーズ社(本社:モスクワ)と合弁会社を立ち上げ、
「マツダ 6」や「CX-5」を生産しているほか、2013 年 2 月には、トヨタが三井物産とソラーズ社との合
弁会社との合同プロジェクトとして、
「ランドクルーザープラド」を生産している。
9
【図表 17】在欧州日系企業による「将来有望な販売先」
(複数回答可)
400
350
300
250
200
150
100
50
0
社
334
319
西欧
「西欧」
「中・東欧・
中・東欧・トルコ (注 1)
トルコ」は、在欧
州日系企業の進出
先を示す
(注 2)回答社数 1,000 社
(出所)JETRO
(2) 貿易促進に向けたバックアップ体制・施策
① 行政面・金融面での貿易促進に向けた取り組み
秋田県は、地方港湾を抱える各県同様に、企業に利用を促すためのインセン
ティブ制度(図表 18)を整備しているほか、輸出促進のためのポートセールス
も実施している。また、秋田県は、JETRO や地域金融機関とも連携しつつ、海外
での商談会など、販路拡大に向けた各種イベントを開催している。このほか、
地元銀行 2 行では、取引先企業の海外進出支援や現地マーケット情報の提供、
販路拡大支援等を狙いとして、積極的に新興国を中心とした海外金融機関等と
の提携を進めている(図表 19)。こうした支援は、県内企業が海外展開を検討す
る上での後押しとなっている。また、大手商社や親会社等を介さずに、独自に
貿易を展開することにより、中間マージンの削減や税収の増加が見込まれ、ひ
いては、県内経済の更なる活性化につながり得ると考えられる。
【図表 18】秋田港活用促進のためのインセンティブ制度
秋田沿海州航路*
荷主支援事業
荷主定着化促進事業
(荷主支援)奨励金
コンテナ輸送トライアル
奨励金
年度内に秋田沿 新規に秋田港を利用 従来より秋田港を利用し 新規に秋田港を利用し
海州航路を利用 して、コンテナ貨物 て、コンテナ貨物の輸出 て、コンテナ貨物の積み
した荷主
の輸出入を行う荷主 入を行っている荷主が、 込み又は荷揚げを行い、
が、対象期間内に10 対象期間内に50本を越
上海港との間で輸出入
対象・要件
本を超えて輸出入を え、かつ前年度の対象期 を、又はシンガポール港
行う場合
間比10%以上コンテナ貨 を通じてASEAN諸国と輸
物を増加させる場合
出入を行う荷主
交付金額
1万円/本
制度創設年
2012年
2万円/本(限度額年間200万円)
2013年
(注)*「秋田沿海州航路」とは、韓国・ロシア便のこと
(注)**「交付対象経費」とは、国内陸上輸送運賃、通関料、梱包作業費用等
(出所)秋田県環日本海交流促進協議会
10
交付対象経費**の1/2(限
度額20フィートコンテナ
1本あたり10万円)
【図表 19】地元銀行の海外金融機関等との提携
提携先
秋田銀行
13
北都銀行
(フィデ
アホール
ディング
ス)
相手国
時期
北京中秋共創商貿有限公司
中国
2010年11月
香港貿易発展局
香港
2012年1月
インドネシア投資調整庁
インドネシア
2013年5月
交通銀行
中国
2013年6月
メトロポリタン銀行
フィリピン
2013年7月
CIMBニアガ銀行
インドネシア
2013年9月
ベトナム投資開発銀行
ベトナム
2013年9月
中國信託ホールディング
台湾
2013年10月
カシコン銀行
タイ
2010年8月
バンクネガラインドネシア
インドネシア
2011年8月
インドステイト銀行
インド
2013年2月
ベトコム銀行
ベトナム
2013年4月
中國銀行
中国
2013年6月
BDOユニバンク
フィリピン
2013年7月
タイ国投資委員会
タイ
2013年10月
マレーシア工業開発銀行
マレーシア
2013年11月
アメリカン・セイビングズ・バンク
アメリカ
2013年12月
バオベトホールディングス
ベトナム
2014年1月
(注)赤字は東南アジア諸国
(出所)秋田銀行、北都銀行プレスリリース(2014 年 1 月現在)
② 物流業者による中小企業(小口)向け物流サービスの提供
秋田港では、他港同様に 1 社でコンテナ 1 本分の貨物に満たない中小企業向
けに、小口混載貨物(LCL)サービスを提供しており、秋田-釜山間ないし釜山
港での積み替えにより世界各港向けに輸出を行うことが可能となっている。
また、2013 年 11 月には、県内中小企業が海外取引を行う際の国内外の調達・
販売の総合的な流通支援を行っていくことを企図し、大手流通業者傘下の梱
包・輸送会社が秋田港に進出している。同社は、割安な国際ハブ港である釜山
港等を活用し、1 社ではコンテナ 1 本分に満たない複数の小口荷主の貨物をまと
めてコンテナに混載するほか、総合物流業務として、製品の保管・仕分け・検
査なども手掛けるとしている。こうしたサービスを利用すれば、既に貿易を行
っている企業のコストを削減する余地が生まれるかもしれない。また、貿易実
務に関するノウハウが必ずしも十分ではなく、これまで海外取引に二の足を踏
んでいた中小企業が、海外との直接取引に踏み出すきっかけとなる可能性もあ
る。
13
このほか、東北の金融機関では初めて、タイに事務所を開設(今春)する方針を打ち出している。
11
(3) 更なる航路拡大への取り組み
わが国の貿易について国・地域別のシェアをみると(図表 20)、米国・EU の
ウェイトが低下傾向にある一方で、中国や ASEAN のウェイトが高まっている。
特に ASEAN のウェイトは着実に上昇しており、今後も「チャイナ・プラス・ワ
ン14」の動き等から、引き続きそのウェイトが高まることが予想される。
現在、秋田港と ASEAN 諸国との間に直行航路はないものの、前述のように、
地元銀行が東南アジア諸国の金融機関等との提携を積極化しているほか、各機
関が連携しながら現地で商談会を開催するなど、秋田県と東南アジア諸国との
関係は強まりつつある。また行政でも、ASEAN 向け貨物に奨励金を支給する制度
を創設(前掲図表 18)している。貿易に関心を持つ県内企業では、ASEAN をは
じめとする東南アジア各国への関心の高さが窺えることから(図表 21)、県内企
業が各種サポート体制等を積極的に活用しつつ、東南アジア諸国との貿易を拡
大することで、将来的には直行航路開設が実現する可能性がある。そうするこ
とで、現在、積み替えによるタイムロスや製品の破損リスクを懸念して県外港
を利用していた県内企業が、秋田港の利用に切り替える可能性がある。
もっとも、現在就航中の 5 航路全てが新潟港などの日本海側の港を経由して
いることを踏まえると、秋田港単独で航路を開設することは、当面現実的では
ないため、日本海側の各港を管理する機関とも連携しながら働きかけを行って
いくことが考えられる。
【図表 20】日本の国・地域別貿易額の推移と全体に占めるウェイト
400
10億ドル
25.0
%
19.7
20.0
300
15.3
15.0
200
10.0
100
EU
ASEAN
中国
米国
5.0
EU
ASEAN
中国
米国
0.0
0
05
06
07
08
09
10
11
12
年
05
06
07
08
09
10
11
12
年
(出所)財務省
14
主として、中国に生産拠点を持つ日系企業が、賃金上昇やカントリーリスクを背景に、中国一国集中の
投資から、ASEAN をはじめとする他のアジア諸国への投資を検討する動きのことを指す。最近では、中国
を代替する製造拠点としてだけではなく、将来の有望市場としてアジア諸国を捉えることも包含してい
る。
12
【図表 21】貿易に関心を持つ県内企業の関心のある国・地域(複数回答可)
40
社
(注 1)JETRO「秋田トレードダイレ
クトリー 2013-2014」掲載の
秋田県に本社もしくは主要
工場・事業所を有する 140 社
の関心ビジネス相手国・地域
を集計した
(注 2)
「全地域」および 2 社以下の
国・地域は除いている
(注 3)赤字は東南アジア諸国
(出所)JETRO 秋田貿易情報センター
30
20
10
カンボジア
スウェーデン
シンガポール
マレーシア
英国
ロシア
香港
インド
タイ
EU
ベトナム
台湾
インドネシア
韓国
ASEAN
米国
中国
0
(4) 農作物等の輸出拡大への取り組み
当地一次産業の主力であるコメについて、県内では 3JA および 6 組織が直接
に輸出を行っており、その輸出量は年々増加している15(図表 22)。また、その
ほかの飲食料品でも、近年の海外における日本食ブーム等を背景に全国的に輸
出量が増加している。特に清酒は、世界最高の権威を持つワインコンペと言わ
れる「インターナショナル・ワイン・チャレンジ」
(IWC)に、2007 年に SAKE 部
門が設立されるなど、注目が高まっており、その輸出量は増加している(図表
23)。また、2013 年 12 月には「和食;日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無
形文化遺産に登録されたことや、新興諸国でも比較的裕福な階層が増えている
ことなどを考慮すると、コメをはじめとする農産物や清酒といった飲食料品で
も輸出を一層拡大させる余地はあると考えられる。
当地の特色である農業とそれに関連する飲食料品分野において、輸出への取
り組みを意欲的に進めることで、農業関連分野における輸出先進県としての地
位を築いていくことも期待できるのではないだろうか。
【図表 23】全国の清酒輸出量
【図表 22】秋田県のコメの輸出量
900
800
700
600
500
400
300
200
100
0
トン
15
13
11
07
08
(出所)国税庁
08
09
10
11
12 年度
(注)2012 年度の値は 2012 年 12 月までの合計
(出所)秋田県
15
千キロリットル
09
10
11
12
年度
県産農産物の輸出実績については、国内流通の中から、卸売業者等により輸出されているものもあるた
め、全ての輸出を網羅しているわけではない。
13
4. おわりに
秋田県の貿易額が着実に増加を続ける中で、秋田港のコンテナ貨物は、この
ところ順調に拡大を続けている。人口減尐や高齢化等を背景に、県内市場・国
内市場の大幅な拡大が期待しにくい中、趨勢的な高成長が期待される新興国を
中心とした海外需要の取り込みを行っていくことが、地域経済の持続的な成長
のために重要である。
この点、行政面・金融面等での輸出促進に向けた取り組みが広がり、海外と
の関係は一段と強くなりつつある。こうした環境のもとで、秋田港の強みも活
用しつつ、企業が独自の輸出戦略を展開することで貿易が一層拡大すれば、そ
の結果として定期航路の増便や港湾施設の拡充が進むといった好循環がもたら
される可能性がある。また、京浜港などの県外港を利用している企業であって
も、製品納期やコスト、輸出先等に応じて、秋田港と県外港とを使い分けるこ
とで、一層のコスト削減を実現できる可能性もある。
秋田港は、室町時代の海事法規「廻船式目16」において、全国を代表する「三
津七湊17」のひとつに数えられたほか、1672 年の「西回り航路」開設後は、コメ・
秋田杉・金銀などを扱う北前船の寄港地として当地の隆盛を支えてきた歴史が
ある。各関係機関や県内企業の意欲的な取り組みによって、秋田港の利用が増
加し、秋田県経済の持続的な成長に資することを期待したい。
以
上
16
日本最古の海洋法規集である。
17
三津とは、安濃津(三重県)
・博多津(福岡県)
・境津(大阪府)
、七湊とは、土崎湊<秋田湊>(秋田県)・
三国湊(福井県)
・本吉湊(石川県)
・輪島湊(石川県)
・岩瀬湊(富山県)
・今町湊<直江津>(新潟県)・
十三湊(青森県)である。
14
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