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農耕の源流エジプトを往く

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農耕の源流エジプトを往く
農耕の源流エジプトを往く
異色の水田経営者
誕生秘話
第5回
写真・文/本誌副編集長・浅川芳裕
前回紹介した精米プラント事業者は水田経
営者でもある。彼はなぜ、精米業をはじめ、
そして農業に参入したのか。
コメの集荷業者兼生産者マハムード・
シャヒーン氏。さまざまな事業を手掛け
たのち、たどり着いたのが農業だった。
系の名誉〟を何よりも重んじるエジ
わってすぐさま完済してくれた。〝家
も、親類縁者に相談すれば本人に代
どわけなかった。仮に返済が滞って
田舎の地縁を生かせば、信用調査な
広 げ、 取 扱 台 数 を 増 や し て い っ た。
入、営業、経営を分担した。商圏を
芸術肌だった長男︵画家としてイ
タリア在住︶を除く、兄弟3人が仕
とることで成り立つ商売である。
銀行から資金を借り入れ、車を買
い、返済金より高い利子を顧客から
中で飛ぶように売れた。
た時代だ。分割払いがヒットし、村
が金持ちしか買えない高嶺の花だっ
彼はある商売を思いつく。
そこで、
月賦販売のカーディーラーだ。新車
食っていけない。
父は小さな青果店を営んでいた
が、その店舗を継いでも4人兄弟が
良く事業をやろう﹂
﹁大人になったら、兄弟みんなで仲
ことに端を発する。
供時代、兄たちとこんな約束をした
氏 が 農 業 に 至 っ た 経 緯 が 面 白 い。
4人兄弟の末っ子のマハムードは子
る。
上の人物はマハムード・シャヒー
ン、エジプトの新興農業経営者であ
車ディーラーの
成功が一転
知人の紹介でまたまた参入したコメ集荷業、水田経営のか
たわら、1フェッダーン(約40a)ある家庭菜園で野菜作り
に精を出す。
「非農家出身だが、作物を育てる喜びに完全に
はまってしまった」
(マハムード氏)
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農業経営者 2012 年 12 月号
マハムードが委 託してい
る、馬で集荷・運 搬をす
る輸 送 業者。トラック輸
送 業 者より割 安 で 請 け
負ってくれるという。
村のモスク(礼拝場)に向かう農民たち。
取材日は金曜日。イスラム教徒にとって
重要な週に一度の集団礼拝日だ。
マハムードが農業をはじめて
できた近隣の”百姓仲間”
み倒しの汚名を受けるのは一族の恥
プト社会では、自分の親戚が借金踏
﹁国のコメ価格より高く買ってくれ
訪ね、コメの集荷を開始した。
ドはすぐさま地元周辺の稲作農家を
手 掛 け る が、 ど れ も 長 続 き は し な
3兄弟はその後、高級中古自動車
の輸入業やアパレルの卸売業などを
料をとって、
この事業から撤退した。
でいない顧客を銀行に紹介し、手数
実主義者のマハムードは返済が済ん
ンカをしても勝てるはずがない。現
車ローンを開始したのだ。金主とケ
借入をしていた銀行がより低利子の
に儲からない仕事に彼らが参入する
た。こんなに手間がかかってそんな
かまったく気にならなくなりまし
﹁天職にめぐり合ったということで
何よりも楽しい、
と実感したという。
ながら、コメの出来を確認するのが
な事業より、農家を訪ね、畔を歩き
じ始めた。これまでやってきたどん
稲作地帯を回るにつれ、マハムー
ドは﹁農業が性に合っている﹂と感
ると農家にはずいぶんと喜ばれた﹂
だからだ。
かった。最初はうまくいくが、その
はずないですから︵笑︶
﹂
しかし、このビジネスモデルはあ
る日、突如として破たんした。彼が
様子をみた大手が参入した途端、お
しょう。その頃から大手のことなん
手 上 げ 状 態 に な っ た。 車 の デ ィ ー
仕事は充実しながらも、一つの疑
問が彼から離れなかった。
ラー時代と同じ轍を踏んだのだ。
﹁農家は誰も経営判断していない﹂
という事実だ。
なければ、営業努力もない。そんな
れば不満をいうだけ。コスト意識も
﹁相場が高いときは喜ぶが、安くな
か﹂
、そして、
﹁継続的な利益が出し
﹁どんな事業なら大手に負けないの
エジプト農村社会に未来はあるの
農業は大手に
負けない天職
続けられるのか﹂
による経済解放政策の一貫で、外貨
の輸出業だった。ムバラク前大統領
らお前がやってみろ﹄と一笑に付さ
﹁農家にそんなこと言ったって、
﹃な
そんな疑問に自ら答えを出そうと
マハムードは農業経営者になった。
か﹂
獲得、ひいては農民の所得向上のた
れるだけ。自分が稲作をしたらどう
マハムードは考え続けた。そんな
とき知人から紹介されたのが、コメ
め、コメ輸出が解禁されたばかりの
なるのか、単純に興味が湧いたんで
す﹂
︵続く︶
年代半ばのことである。
輸出実務は知人に任せ、マハムー
ときだ。
農業経営者 2012 年 12 月号
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マハムードと同じ村に住む賃耕専門のムハンマ
ド。農機を持てない農民に代わって、賃耕から賃
刈まで手掛ける。
「最近は不在地主が増えて忙し
い」という。一部農地を宅地に転売して一儲けし
た農家が、都市に移り住んでいる事情がある。
左から4男マハムード、次男エルマド、3男モホセン。マ
ハムードが経営管理を担当し、現場好きのモホセンが
農場長を務める。エルマドは兄弟経営から離れ、米国
で不動産業を営んでいる。大統領選挙の折、母国の将
来を憂慮して、誰が新リーダーになるか確かめるために
里帰り中だった。長男はイタリアで画家をしている。
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