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中堅・中小企業のCRE戦略を考える(2)
コンサルティング 基礎講座 Consulting Basic Lecture 中堅・中小企業のCRE戦略を考える(2) [きたざわ・ひでき]三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)(株)にて 北澤秀樹 北澤不動産コンサルティング 代表 不動産業務(売買仲介、不動産の証券化、不動産保有会社のM&A等) に従事。2001年綜通(株)入社、不動産業務(CRE戦略の企画立案等) に従事し、常務取締役、常勤監査役を務め15年退任。現在北澤不動産コ ンサルティング・北澤不動産鑑定調査代表。宅地建物取引士、不動産鑑 定士、ビル経営管理士。 先月号(2016年 4 月号)では、CRE戦略とは「企 物等の有形固定資産や売上債権・棚卸資産等の 業不動産について、 『企業価値向上』の観点から、経 運転資産が含まれます。他方、事業活動には供 営戦略的視点に立って見直しを行い、不動産投資の効 されていない遊休不動産や有価証券への投資、 率性を最大限向上させていこうという考え方」である ゴルフ会員権などの資産は「非事業資産」とし ことを確認しました。 て事業資産とは区分されます。 また、今日の上場企業は、ROA(総資産利益率) ・ ROE(自己資本利益率)を高めることを経営目標と ②「企業価値」は、事業価値に非事業資産を加えた、 企業全体の価値をいいます。 する経営戦略が求められ、改めてCRE戦略への関心 企業価値 = 事業価値 + 非事業資産 が高まっていること、さらにCRE戦略は、大企業の ③「株主価値」は、企業価値から他人資本に帰属す みならず中堅・中小企業にも導入が必要であること等 る「ネット有利子負債」を控除した株主にとって を確認しました。 の価値をいいます。 今月号は、まず、不動産コンサルタントがCRE戦 株主価値 = 企業価値 - ネット有利子負債 略に係るにあたって理解しておくべき「企業価値の向 ネット有利子負債は、貸借対照表の「有利子負 上とは何か」について、そのアウトラインを押さえ、 債」から「現預金」を控除したものです。 CRE戦略が果たす役割を認識し、次いでCRE戦略 を進める場合のマネジメントサイクルについて考えて いきます。 Ⅰ.企業価値の向上とは何か 2.企業価値の算定方法 (1)企業価値、事業価 値および株主価値は、将来生 み出されるキャッシュフローの現在価値で算定され ます。財務諸表の貸借対照表(バランスシート)は 企業価値という言葉からは、企業のブランド力・信 過去の投資の結果であり簿価ベースで表示されてい 用力・社会貢献力といった企業の固有の「力」をイメ ます。企業価値を算定するにあたっては、簿価ベー ージすることもありますが、ここでいう企業価値はフ スのバランスシートを時価ベースのバランスシート ァイナンス面から見た企業の価値をいいます。 に組換えることが必要です。具体的には、簿価ベー スのバランスシートの資産は、 本業に供している「事 1.企業価値とは 企業の価値を表す概念として、事業価値、企業価 分類します。負債は、買掛金や支払手形等の本業に 値、株主価値という 3 つの価値概念があります。 係る「事業負債」と借入金や社債等の「有利子負債」 ①「事業価値」は、企業が本来の事業活動に供して に分類します。さらに、時価ベースのバランスシー いる「事業資産」から生み出される価値をいいま トでは、事業資産と事業負債を活用して生み出され す。 (注1) 」に基 る「フリーキャッシュフロー(FCF) 事業資産には、事業活動に供している土地・建 10 業資産」と本業には供していない「非事業資産」に 2016. 5 ◆ 不動産フォーラム21 づき評価(フローベースで評価)したものが事業資