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「食の安全フォーラム in とやま」
食肉の生食による食中毒のリスクについて
内閣府食品安全委員会事務局次長
中島 隆
平成23年8月23日
1
危害要因(ハザード)とリスク
自転車に乗っている場合にたとえてみと・・・
ブレーキの調子が悪い
道がでこぼこ
サンダルを履いて自転車に乗っている
このような事故を起こす原因になると考えられるこ
とが事故の「ハザード」にあたります。
そのような状況で転んでしまう確率と、
どのくらいのケガをするかという程度を
表すのが「リスク」です。
2
食品のハザードとリスク
食べ物の中にある、みんな
の健康に悪い影響を与える
かもしれない物質などが、
「ハザード」です。
たとえば:病原性細菌、農薬、メチル水銀
食べ物の中のハザードが、私たちの体の中
に入った時、体の調子が悪くなる確率(可
能性)とその症状の程度を「リスク」とい
います。
3
食品のリスク
ハザードに出会う確率
影響の程度
1人/ 100人
1人/ 100万人
×
= リスク
1人/ 2億人
※日本語にはなかった概念
「リスク」≠「危険」
(必ず起きるかどうかはわからない)
0-157
※ゼロリスクはない
ハザード君
「いやな事が起こる可能性と、起きた時の被害の深刻さ」 の程度
4
食品の安全性は量で決まる
「どのような状態(濃度、純度など)
であっても、どれほど過剰に摂取して
も安全な食品は存在しない」
ビタミンA:必須栄養素
不足;夜盲症、皮膚乾燥、細菌抵抗力低下
過剰;脱毛、食欲不振、肝障害
水:
不足;脱水症状
8L
過剰;水中毒 (疲労感、頭痛、嘔吐、痙攣)
5
食生活を取り巻く状況の変化
何故できたの?
新たな危害要因の出現
(O157、BSEプリオン等)
(財)食生活情報サービスセンターHPより
食生活の多様化
食品流通の広域化
国際化の進展
BSEなどの問題から、食
品安全のための新しい
考え方が必要になったか
分析技術の向上
遺伝子組換え等の
らです。
新たな技術の開発
6
食品の安全性確保についての国際的合意
世界各国の経験から、次のような考え方や
手段が重視されようになった。
考え方
方法
○国民の健康保護の優先 ○「リスク分析」の導入
○科学的根拠の重視
○農場から食卓までの一
○関係者相互の情報交換
貫した対策
と意思疎通
○政策決定過程等の透明
性確保
2003年、国際食品規格委員会(Codex, FAO/WHO)
7
リスク分析の考え方
どんな食品にもリスクが
あるという前提で、科学
的に評価し、妥当な管理
をすべき
健康への悪影響を未然
に防ぐ、または、許容
できる程度に抑える
リスク分析には三つの要素がある
リスク評価
リスク管理
リスク
コミュニケーション
8
食品の安全と安心を守るしくみ(リスク分析)
食品安全委員会
食べても安全かどうか
調べて、決める
科学的
客観的
中立
公正
厚生労働省、農林水産省、
消費者庁 等
食べても安全なように
ルールを決めて、監視する
費用対効果
政策的
リスク評価
不安など
国民感情 技術的可能性
リスク管理
リスクコミュニケーション
消費者、事業者など関係者全員が理解し、納得できるように話合う
9
食品安全委員会の役割
1.食品健康影響評価(リスク評価)
10
食品安全委員会の構成
食品安全委員会は7人の委員から構成されています。
14専門調査会
企画
緊急時対応
リスクコミュニケーション
食品安全
化学物質系グループ: 農薬、添加物など
委員会委員
生物系グループ: 微生物・ウイルスなど
7名
新食品グループ:遺伝子組換えなど
専門委員:217名(実数)
事務局(職員57名、技術参与37名)
平成23年 5月1日現在
11
平成21年病因物質別食中毒発生状況
(厚生労働省「食中毒情報」より)
ぶどう球菌
その他 17件
ボツリヌス 0件
動物性自然毒
不明
39件
植物性自然毒
53件
ノロウイルス
288件
サルモネラ属菌
41件
100件 67件
腸管出血性大腸菌
26件
ウェルシュ菌
20件
カンピロバクター・ジェジュニ/コリ
345件
上記合計 1048件
12
平成21年病因物質別月別食中毒発生状況
(厚生労働省「食中毒情報」より)
(件)
90
ノロウイルス
80
60
カンピロバクター・
ジェジュニ/コリ
腸炎ビブリオ
50
ぶどう球菌
40
サルモネラ属菌
70
30
腸管出血性大腸菌
20
10
月
月
月
13
12
11
9月
10
8月
7月
5月
6月
月
月
4
3
1
2
月
月
0
国内の食中毒発生状況(年次推移)
年次別病原物質別食中毒発生状況(厚生労働省「食中毒情報」より)
件数
700
カンピロバク
ター・ジェジュニ
/コ リ
サルモネラ属菌
600
500
ブドウ球菌
400
腸炎ビブリオ
300
病原大腸菌
200
ウエルシュ菌
セレウス菌
100
ノロウイルス
0平成12年
13年 14年 15年 16年 17年 18年 19年 20年 21年
食肉の生食に関する行動実態
Q:3ヶ月以内に食肉を生で食べましたか(年代別)
60代
N=173
はい
50代
N=182
40代
N=195
30代
N=253
20代
N=197
0
10
20
30
40
60 (%)
50
15
食肉の生食による食中毒防止のための効果的な普及啓発
東京都食品安全情報評価委員会(平成21年9月)
食中毒原因微生物のリスク評価
フードチェーン・アプローチ
(一次生産から最終消費までの食品安全)
汚染率?
菌数:増?
汚染率?
菌数:増?
農場
流通・保存
汚染率?
菌数:増?減?
調理・
消費
加工
汚染率?
菌数:減?
16
食中毒原因微生物のリスク評価
リスク評価が検討された食品と
食中毒原因微生物の組合せ
鶏肉 ー カンピロバクター
牛肉 ー 腸管出血性大腸菌
(O157など)
鶏卵 ー サルモネラ
食品 ー ノロウイルス
調理済食品等 ー リステリア
魚介類 ー 腸炎ビブリオ
鶏肉
ー サルモネラ
二枚貝 ー A型肝炎ウイルス
豚肉
ー E型肝炎ウイルス
リスク評価済み
(平成21年6月)
リスク評価へ
リスクプロファイルの更新
(リスク評価を行う前に、ハザードの特徴や
リスクの情報をまとめた文書)
17
カンピロバクターによる食中毒について
<特徴>家畜、家禽類の腸管内に生息し、食肉(特に鶏肉、
牛レバー)、や飲料水を汚染する。発育には、30~46℃の
温度と3~15%の酸素濃度が必要。
<症状>潜伏期は1~7日と長い。発熱、倦怠感、吐き気、腹痛、
下痢、血便等。少ない菌量(数百個程度)でも発症。
<過去の原因食品>生または加熱不十分
な鶏肉、牛レバーなどの肉料理。潜伏期間
が長いので、判明しないことも多い。
<対策>調理器具を消毒し、よく乾燥
させる。食肉と他の食品との接触を防
ぐ。食肉・食鳥肉処理場での衛生管理、
二次汚染防止を徹底する。食肉は十分
な加熱(75℃、1分)を行う。
電子顕微鏡写真。細長いらせん状のらせん菌。
<食品安全委員会事務局 資料>
18
カンピロバクター食中毒の問題点
【農場段階】
農場ごとの陽性率 57.9%(中央値)
汚染農場の鶏の陽性率 84.5%(中央値)
【食鳥処理場】
鶏肉の汚染率 75%(中央値)
【調理・消費段階】
少ない菌量(数百個程度)でも感染可能
(新鮮なほど感染確率が高い)
消費者の生食嗜好
微生物・ウイルス評価書:鶏肉中のカンピロバクター・ジェジュニ/コリ
内閣府食品安全委員会
19
鶏肉ができるまで ①
ブロイラー農場
20
鶏肉ができるまで ②
湯漬け
21
鶏肉ができるまで ③
脱羽
22
鶏肉ができるまで ④
内臓摘出
23
鶏肉ができるまで ⑤
内臓摘出
24
鶏肉ができるまで ⑥
冷却
25
鶏肉のカンピロバクターの
リスク評価対象として想定した対策
【農場段階】
 農場での汚染率の低減(衛生管理強化)
【食鳥処理場】
 汚染農場の鶏と非汚染農場の鶏の区分処理
 冷却工程での塩素濃度管理の徹底
【調理・消費段階】
 生食割合の低減
 調理時の加熱不十分割合の低減
 調理時の交差汚染割合の低減
微生物・ウイルス評価書:鶏肉中のカンピロバクター・ジェジュニ/コリ
内閣府食品安全委員会
26
リスク評価結果:対策の効果
生食する人について
生食割合の低減が常に最も効果が大きい
生食しない人について
食鳥処理場での区分処理を行わない場合には、
加熱不十分割合の低減が最も効果が大きい
調理時の交差汚染率の低減の効果も大きくなる
微生物・ウイルス評価書:鶏肉中のカンピロバクター・ジェジュニ/コリ
内閣府食品安全委員会
27
リスク推定結果
生食する人
☆一食当たりの感
染確率の平均値:
家庭で1.97%
飲食店で5.36%
☆年間平均感染
回数:
3.42回/人
生食しない人
☆一食当たりの感
染確率の平均値:
家庭で0.20%
飲食店で0.07%
☆年間平均感染
回数:
0.364回/人
微生物・ウイルス評価書:鶏肉中のカンピロバクター・ジェジュニ/コリ
内閣府食品安全委員会
28
食品健康影響評価のためのリスクプロファイル
~牛肉を主とする
食肉中の腸管出血性大腸菌~
(食品安全委員会 平成22年4月更新)
【内容項目】
公衆衛生上に影響を及ぼす重要な特性
食品の生産、製造、流通、消費における要因
問題点の抽出
規制状況
求められるリスク評価と今後の課題
29
腸管出血性大腸菌
動物(特に牛)の腸管内に生息し、糞便を介して
食品、飲料水を汚染する。少量の菌でも発病する
ことがある。加熱や消毒処理に弱い。
<潜伏期間と排菌期間>潜伏期間は平均4~8日、排菌は症状
が消失した後も続き、5歳以下の年少者で発症後17日間排菌が
認められたこともある。
<症状>ヒトの主な症状は腹痛と血便を伴う下痢。ただし、まっ
たく症状が出ない、あるいは軽い下痢で終わる場合もある。重症
では溶血性尿毒性症候群を脳症を併発することもある。
<溶血性尿毒症症候群(HUS)>溶血性貧血、急性腎不全など
を症状とし、腸管出血性大腸菌感染に引き続いて発症する。腸
管出血性大腸菌に感染したヒトの約10~15%が発症し、HUS
30
発症者の約1~5%が死亡する。
食品健康影響評価のためのリスクプロファイル
~牛肉を主とする腸管出血性大腸菌~
公衆衛生上に影響を及ぼす重要な特性
年齢群別の溶血性尿毒症症候群(HUS)
報告数と発生率(2008年)
年齢群
HUS 有症状者 HUS発生率(%)
0~4歳
5~9歳
10~14歳
15~64歳
65歳以上
47
21
8
12
6
683
463
252
1,205
215
6.9
4.5
3.2
1.0
2.8
総計
94
2,818
3.3
HUS発生率(%)=HUS報告数/有症状者数
31
食品健康影響評価のためのリスクプロファイル
~牛肉を主とする腸管出血性大腸菌~
生産、製造における要因
農場段階での牛の保菌状況
牛の保菌率は、農場等により異なるが、直腸内容物
でのO157分離率で10%を超える事例の報告あり。
食肉処理場での状況
解体処理時に糞便や直腸内容物等により、枝肉や内
臓肉への汚染が生じるおそれ
牛枝肉からのO157分離率(事例的調査)
2003~2004年 5.2%
2004~2005年 3.8%
2005~2006年 1.2%
32
牛肉ができるまで ①
生体搬入
33
(財)日本食肉生産技術開発センター資料
牛肉ができるまで ②
前処理
34
(財)日本食肉生産技術開発センター資料
牛肉ができるまで ③
内臓摘出
35
(財)日本食肉生産技術開発センター資料
牛肉ができるまで ④
背割り
36
(財)日本食肉生産技術開発センター資料
牛肉ができるまで ⑤
冷却保管
37
(財)日本食肉生産技術開発センター資料
食品健康影響評価のためのリスクプロファイル
~牛肉を主とする腸管出血性大腸菌~
食品の流通における要因
流通食肉からのO157分離率
生食用牛レバー
牛結着肉
ミンチ肉
カットステーキ肉
豚ミンチ肉
(1999~2008年度調査)
1.9%(生食用と表示され販売されたもの)
0.2%
0.2%
0.09%
0.07%
市販牛内臓肉からのO157分離率
(2000~2004年調査)
大腸
肝臓
胃
10.5%
8.3%
8.0%
38
牛レバーのカンピロバクター検出率
 牛レバー
11.4%(27/236)
 胆のう内胆汁 25.4%(60/236)
厚生労働科学研究食品安全確保研究事業
「食品製造の高度衛生管理に関する研究」
39
サルモネラ属菌による食中毒について
<特徴>動物の腸管、自然界(川、下水、湖など)に広く分布。
生肉、特に鶏肉と卵を汚染することが多い。乾燥に強い。
<症状>潜伏期は6~72時間。激しい腹痛、下痢、発熱、嘔吐。
長期にわたり保菌者となることもある。
<過去の原因食品>卵、またはその加工品、食肉(牛レバー刺
し、鶏肉)、うなぎ、すっぽん、乾
燥イカ菓子など。二次汚染によ
る各種食品。
<対策>肉・卵は十分に加熱(75℃
以上、1分以上)する。卵の生食
は新鮮なものに限る。低温保存
は有効。しかし過信は禁物。二
次汚染にも注意。
電子顕微鏡写真。ほとんどが周毛性鞭毛を形成する
桿菌。<食品安全委員会事務局 資料>
40
サルモネラ属菌食中毒の発生推移
発生件数
患者数
死者数
備 考
16年
225
3,788
2
-
17年
144
3,700
1
-
18年
124
2,053
1
-
19年
126
3,603
- ○不明(仕出し弁当):患者数1,148名、死者数0名
20年
99
2,551
-
-
21年
67
1,518
-
-
22年
73
2,476
-
○不明(仕出し弁当):患者数654名、死者数0名
※患者数500名以上の事例について備考に記載
厚生労働省食中毒統計
41
食品健康影響評価のためのリスクプロファイル
~牛肉を主とする腸管出血性大腸菌~
消費における要因
【消費者の生食嗜好】
 食品安全委員会のアンケート調査結果(2006年度)
によると、約4割の方が生又は加熱不十分な牛肉を、
1割が生又は加熱不十分な牛内臓肉を食べると回答
【実験的にO157で汚染した牛内臓肉の焼肉調理の菌数変化】
 焼いてない牛内臓肉を調理器具(トングと箸)でつか
んだ場合、付着菌数の100分の1から1000分の1が
調理器具を汚染
 さらに汚染調理器具で焼いた食肉をつかんだ場合、
調理器具の付着菌数の10分の1~100分の1が食
肉を汚染
42
家庭でできる食中毒予防の6つのポイント
ポイント1 食品の購入
新鮮な物、消費期限を確認して購入する
ポイント2 家庭での保存
持ち帰ったらすぐに冷蔵庫や冷凍庫で保存
ポイント3 下準備
手を洗う、清潔な調理器具を使う
ポイント4 調理
手を洗う、十分に加熱する
ポイント5 食事
手を洗う、室温に長く放置しない
ポイント6 残った食品
清潔な器具容器で保存する、再加熱する
43
手を洗う
生の鶏肉
を触った
手
水洗
石けんで洗う
逆性石けん
44
マナ板の洗浄
鶏もも肉500g
スポンジで
水洗
中性洗剤で
洗う
熱湯1.5Lを
掛ける
乾燥
45
鶏肉を切ったマナ板
大腸菌群
デソキシコレート寒天培地
(含むニュートラルレッド)
一般生菌
準寒天培地
46
マナ板スポンジ水洗洗浄
大腸菌群
一般生菌
47
スポンジ
48
マナ板熱湯をかけた
大腸菌群
一般生菌
49
家庭でできる食中毒予防の6つのポイント
ポイント1 食品の購入
新鮮な物、消費期限を確認して購入する
ポイント2 家庭での保存
持ち帰ったらすぐに冷蔵庫や冷凍庫で保存
ポイント3 下準備
手を洗う、清潔な調理器具を使う
ポイント4 調理
手を洗う、十分に加熱する
ポイント5 食事
手を洗う、室温に長く放置しない
ポイント6 残った食品
清潔な器具容器で保存する、再加熱する
50
十分な加熱
細菌性食中毒
腸管出血性大腸菌O-157やサルモネラ属菌、
腸炎ビブリオなどには75℃、1分以上の加熱
ウイルス性食中毒
ノロウイルスには85℃ 、1分以上の加熱
51
ハンバーグステーキ
焦げ色がちょうど良
いと思っても、中心
部50℃
52
写真提供:畑江敬子 食品安全委員会委員
ハンバーグステーキ
充分焦げているか
ら火がとおっている
だろうと思っても、
中心部63℃
53
写真提供:畑江敬子 食品安全委員会委員
ハンバーグステーキ
焼けているように
見えても赤い肉汁
が出る
中心部70℃
54
写真提供:畑江敬子 食品安全委員会委員
ハンバーグステーキ
上面に茶色い
肉汁がでる
中心部76℃、
余熱で78℃
これでよい
55
写真提供:畑江敬子 食品安全委員会委員
牛挽肉ハンバーグの中心部温度と
断面の状態
加熱不十分
加熱不十分
加熱充分
牛肉挽肉と挽肉に対してタマネギ30%、パン粉15%、牛乳15%、卵15%の標
準的なレシピ
56
写真提供:畑江敬子 食品安全委員会委員
合い挽き肉ハンバーグの
中心部温度と断面の状態
加熱不足
加熱不足
加熱充分
牛肉、豚肉50%ずつの挽肉と挽肉に対してタマネギ30%、パン粉15%、牛乳
15%、卵15%の標準的なレシピ
57
写真提供:畑江敬子 食品安全委員会委員
重要なリスコミツール“ホームページ”
ここに
注目
58
御参考(食品安全委員会のHPから利用可能)
●ビジュアル版「食品の安全性に関する用語集」
・FLASH版は、食品の安全性に関する用語集(第4版)をもとにイラストやアニメー
ションを加えて、より分かりやすくしました。インターネットに接続されたパソコン上で
お使いいただけます。
・PDF版はダウンロードしてお使いいただけます。(約10MB)
●食品安全に関するサイエンスカフェの動画発信
・「誰でもなる!?食中毒を防ぐ調理を考える}(畑江委員)
・「科学の目でみる食中毒。どうしてなるの。なったらどうなるの?」(小泉委員長)
●食品安全eマガジン(メルマガ)
・毎週1回金曜配信、臨時号も
59
「生食用食肉(牛肉)における腸管出血性大腸菌及びサルモネラ属菌の食品健康影響評価(案)」の概要
○ 生食用牛肉の規格基準(案)によるリスク低減の程度を推定するため、①生食用牛肉が食される段階の目標菌数で
ある「摂食時安全目標値(FSO)」と、②食される前の過程での菌の増殖などを踏まえた加工時の目標菌数である「達成
目標値(PO)」の評価に加え、③規格基準(案)の「成分規格」と「加工基準」でそれらが達成できるかどうかに焦点を絞って、
以下のように評価した。
~消費までの流れ~
~厚生労働省による諮問(案)~
~考え方~
消費
○ 腸管出血性大腸菌とサルモネラ属菌についての
「摂食時安全目標(FSO)」を0.014cfu/gと設定
(←腸管出血性大腸菌による年間死者数(現状10人未満)を1人
未満とすることを目標。死者数が汚染濃度と比例すると仮定し、
データから得られた牛肉の汚染濃度平均(14cfu/g)の1/1000
(=1/10×安全係数1/100)に設定。)
飲食店等
○ 「達成目標値(PO)」を、「摂食時安全目標(FSO)」の
1/10と設定(0.0014cfu/g)。
○ 検査の指標菌として、腸内細菌科菌群を用いる
部分肉
加工場等
と畜場
農場
≪規格基準(案) - 成分規格≫
検体25gにつき、腸内細菌科菌群(※)が陰性であること
(※「腸内細菌科菌群」は、腸管出血性大腸菌・サルモネラ属
検体数の記載なし
菌の汚染指標として有用。)
≪規格基準(案) - 加工基準≫
○ 加工に使用する肉塊は、凍結させていないもので
あって、衛生的に枝肉から切り出すこと。
○ 上記処理を行った肉塊は、速やかに、気密性の
ある清潔で衛生的な容器包装に入れ、密封した後、
肉塊の表面から1㎝以上の深さを60℃で2分間以上
加熱する方法(又は同等以上の効力を有する方法)
の加熱殺菌の後、速やかに10℃以下に冷却すること
~食品安全委員会による評価(案)~
◆ 「摂食時安全目標値(FSO)」は0.04cfu/g未満で、
感受性の個人差等に留意して定める必要。
(←過去の食中毒事例における最少の発症菌量等を考慮)
◆ 厚生労働省(案)の「摂食時安全目標(FSO)」は、
0.014cfu/g ⇒ 安全側に立った目標値と評価
◆ 加工時の「達成目標値(PO)」について「摂食時安全
目標(FSO)」の1/10とすることは、流通・調理時の適正
な衛生管理下では相当の安全性を見込んだものと評価
(←O157 は10℃・pH6.5の条件下で10倍の増殖に3日間を要すると
のデータ等)
◆ 生食部分は、直接は加熱処理されない部分
⇒ 「加工基準」はリスク低減効果はあるものの、加工時
の「達成目標値(PO)」の担保はできず、微生物検査を
組み合わせる(※)ことが必要。
※ 25検体(1検体当たり25g)以上が陰性であれば、高い
確率(97.7%の製品につき95%の確率)で、 「達成目標値
(PO)」(0.0014cfu/g)の達成が確認できると評価。
◆ なお、加熱方法の決定等の加工工程システムの設定
の際は、こうした検査等により、あらかじめ食品衛生管理
の妥当性の確認(バリデーション)が不可欠。
(このほか、調理・保存等に係る基準あり。)
※「cfu」(colony forming unit)/菌数の測定単位で、培地上で培養された菌がつくるコロニー(集まり)の数を数えたもの。
60
○ 今後、感受性の高い集団や菌の特性に関する新たな知見が得られたときには、それに応じ早急に適切な対応が必要。
加工基準及び成分規格の意義
《加工基準の性格》
 加工基準で示された表面加熱(肉塊の表面から1cm以上の
深さを60℃で2分間以上加熱)の意図は、適切に処理された
牛枝肉の微生物汚染が主に表面汚染であることから、食肉
表面を加熱殺菌処理して喫食部の微生物レベルの低減を担
保しようとするもの
 加熱加工する食肉製品の微生物学的規格基準とは根本的に
異なり、評価対象食品は、加熱殺菌されていない「生」の部分
加工基準で示された表面加熱の流れ
包装
温浴加熱
牛肉
冷却
トリミング
61
厚生労働省提出資料を改変
食品安全委員会からのメッセージ
「規格基準(案)」を策定した厚生労働省の審議会(※)において
も、生食用牛肉の規格基準を設けることは、100%の安全性を
担保するものではなく、牛肉の生食は基本的に避けるべきと啓
発することが必要とされています。
※)平成23年7月6日 厚生労働省食品衛生分科会食中毒・乳肉水産食品合同部会
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001hpnr-att/2r9852000001hpsj.pdf
食品安全委員会としては、特に、お子さんや高齢者をはじめと
した抵抗力の弱い方は、引き続き、生や加熱不十分な食肉や
内臓肉を食べないよう、周りの方も含めて注意することが必要
と考えており、今後とも啓発に努めてまいります。
http://www.fsc.go.jp/sonota/tyoukan-shokuchu.html
62
リスクとつきあう
• 食品を含めどんなものにもリスクがある
• リスクのとらえ方は人によって差がある
→安心
• リスクを知り、妥当な判断をするためには努
力が必要
→科学的な考え方を身につける努力
?
→情報を鵜呑みにしない努力
ゼロリスク?
例:・メディアの情報を正確に見分ける。
事実と意見、編集の有無、キャスタ
ーのイメージ等
・フードファディズム(Food Faddism)
63
食品リスクの感じ方
食品に残留している量が安全性を左右する
ある・なしの方が分かりやすい
知らないものや見えにくいものは危険と感じる
実際に患者が発生していても経験している身の回
りのことはリスクと思わない(例:食中毒)
危険をあおる情報を知りたがる傾向
情報を出している機関が「信頼」されれば、安心感が得
られるが、「信頼」されなければ、ゼロリスクを求めたがる
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大切なことは
食中毒にならないよう注意する
栄養、食事形態などのバランス
を考慮した食生活
心配になったら、異なる情報源
から情報を入手
農林水産省
食事バランスガイドより
食べ物や栄養素の健康維持
や病気になる情報を過大に
信じない
食品の生産・加工・流通の
実態を知る努力をする
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