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球脊髄性筋萎縮症の病態を忠実に再現するモデ ル動物及びそれを用いた

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球脊髄性筋萎縮症の病態を忠実に再現するモデ ル動物及びそれを用いた
JP 2006-131640 A 2006.5.25
(57)【要約】
【課題】球脊髄性筋萎縮症の病態を忠実に再現するモデ
ル動物及びそれを用いたポリグルタミン病の治療薬のス
クリーニング方法、並びに球脊髄性筋萎縮症の治療剤を
提供する。
【解決手段】症状又は病理所見について次の(1)∼(5)の
特徴、即ち(1)進行性筋萎縮が認められること、(2)筋力
低下が認められる、(3)抗ポリグルタミン抗体を用いた
免疫染色によって核のびまん性染色及び核内封入体が認
められる、(4)抗アンドロゲン受容体抗体を用いた免疫
染色によって核のびまん性染色及び核内封入体が認めら
れる、及び(5)神経原性変化が認められる、を備える非
ヒト動物。当該非ヒト動物に被験物質を投与して症状又
は病理所見の変化を調べることによりポリグルタミン病
の治療薬をスクリーニングする。テストステロンの分泌
を抑制する作用を有する化合物を有効成分として球脊髄
性筋萎縮症治療剤を構成する。
【選択図】図1
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
テストステロンの分泌を抑制する作用を有する化合物を有効成分として含んでなる球脊髄
性筋萎縮症治療剤。
【請求項2】
下垂体からの性腺刺激ホルモンの分泌を抑制する作用を有する化合物を有効成分として含
んでなる球脊髄性筋萎縮症治療剤。
【請求項3】
下垂体に作用して黄体形成ホルモン放出ホルモン受容体を減少させる作用を有する化合物
を有効成分として含んでなる球脊髄性筋萎縮症治療剤。
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【請求項4】
黄体形成ホルモン放出ホルモンのアナログを有効成分として含んでなる球脊髄性筋萎縮症
治療剤。
【請求項5】
リュープロレリン又はその誘導体を有効成分として含んでなる球脊髄性筋萎縮症治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遺伝子の改変が施された非ヒト動物に関する。詳しくは球脊髄性筋萎縮症に特
徴的な症状及び病理所見を呈する非ヒト動物及びその利用、並びに球脊髄性筋萎縮症の治
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療剤及び治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
球 脊 髄 性 筋 萎 縮 症 ( SBMA) は 、 伴 性 劣 性 遺 伝 形 式 を 呈 し 、 成 人 期 に 発 症 す る 緩 徐 進 行 性
の 下 位 運 動 ニ ュ ー ロ ン 疾 患 で あ る ( Sobue et al., 1989; Kennedy et al., 1968) 。 主 症
状は四肢近位部の筋力低下・筋萎縮と球麻痺であるが、深部感覚障害を主体とする感覚神
経障害も認められる。随伴症状として、女性化乳房を高率に認めるほか、肝機能障害、耐
糖能異常、高脂血症、高血圧症などがしばしばみられる。女性様皮膚、睾丸萎縮、不妊、
陰萎を認めることもある。女性保因者は通常無症状だが、手指の振戦や、有痛性筋痙攣、
軽 度 の 血 清 CK値 上 昇 な ど を 認 め る こ と も あ る ( Sobue et al., 1993) 。 根 本 的 治 療 は 存 在
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せず、対症療法としてテストステロンが使用されることがあるが、効果は乏しく長期間の
有効性は認められていない。
【0003】
SBMAの 病 態 は 脊 髄 前 角 細 胞 や 顔 面 神 経 核 、 舌 下 神 経 核 の 変 性 、 脱 落 で あ り 、 そ の 原 因 は
ア ン ド ロ ゲ ン 受 容 体 ( AR) 第 1エ ク ソ ン 内 の CAGリ ピ ー ト の 異 常 延 長 で あ る ( La Spada et
al., 1991) 。 ARの CAGリ ピ ー ト 数 は 、 正 常 で は 12∼ 34程 度 で あ る が 患 者 で は 40∼ 62程 度 に
延 長 し て い る 。 こ の た め SBMAは 、 ハ ン チ ン ト ン 病 や 脊 髄 小 脳 変 性 症 な ど と 並 ん で 、 ポ リ グ
ル タ ミ ン 病 と 呼 ば れ 、 こ れ ら の 疾 患 に お い て は 表 現 促 進 現 象 ( anticipation) や CAGリ ピ
ー ト 数 の ば ら つ き ( 体 細 胞 モ ザ イ ク ) ( Tanaka et al., 1999) 、 主 に 神 経 組 織 が 選 択 的
に 障 害 さ れ る と い う 、 共 通 の 病 態 が 観 察 さ れ る 。 ま た 、 他 の ポ リ グ ル タ ミ ン 病 と 同 様 SBMA
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に お い て も 、 CAGリ ピ ー ト 数 は 筋 力 低 下 の 発 症 年 齢 と 負 の 相 関 を 示 し 、 年 齢 補 正 し た 重 症
度 と は 正 の 相 関 を 示 す ( Doyu et al., 1992) 。
【0004】
病理学的には、抗ポリグルタミン抗体および抗アンドロゲン受容体抗体で染色される核
内 封 入 体 を 、 脊 髄 前 角 細 胞 や 下 位 脳 神 経 運 動 核 、 腎 、 精 巣 、 皮 膚 な ど で 認 め る ( Li et al
., 1998a; Li et al., 1998b) 。 核 内 封 入 体 は ポ リ グ ル タ ミ ン 病 の 病 理 学 的 特 徴 で も あ り
、 病 態 に 関 与 し て い る と 考 え ら れ て い る ( Zoghbi and Orr, 2000, Paulson, 2000) 。 し
かし、ポリグルタミン病の病態生理における核内封入体の重要性についてはいまだ議論が
絶えず、核内封入体はポリグルタミン鎖の毒性から神経細胞を保護する細胞側の防御メカ
ニズムを反映しているとの見方もある。一方、殆どのポリグルタミン病において、ポリグ
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ルタミン鎖を含む変異タンパクの核内移行が病態形成に必要不可欠であることが、多くの
研 究 に よ り 示 唆 さ れ て い る (Klement et al., 1998, Saudou et al., 1998)。 他 の ポ リ グ
ル タ ミ ン 病 と 異 な り SBMAに お い て は 、 特 異 的 リ ガ ン ド の 影 響 で 変 異 タ ン パ ク の 細 胞 内 分 布
が 変 化 す る 点 が ユ ニ ー ク で あ る 。 す な わ ち 、 SBMAの 原 因 タ ン パ ク で あ る ARは 、 通 常 細 胞 質
に複合体として不活化された状態で存在しており、リガンドであるテストステロンと結合
す る こ と で 核 内 に 移 行 す る こ と が 知 ら れ て い る (Zhou et al., 1994)。
【0005】
ポリグルタミン病の病態には、原因蛋白の機能障害も関わっている可能性があるが、ポ
リ グ ル タ ミ ン 鎖 自 体 が 持 つ 毒 性 、 す な わ ち toxic gain of functionが 主 な 病 因 で あ る と 考
え ら れ て い る (Zoghbi and Orr, 2000, Rubinsztein 2002)。 異 常 延 長 し た ポ リ グ ル タ ミ ン
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が ARの 転 写 活 性 を 低 下 さ せ 、 他 の 転 写 因 子 な ど と の 結 合 を 阻 害 す る こ と は 培 養 細 胞 レ ベ ル
で 報 告 さ れ て い る が (Mhatre et al., 1993, Kazemi-Esfarjani et al., 1995, Chamberla
in et al., 1994, Nakajima et al., 1996)、 SBMAに お け る 神 経 障 害 は ARの 機 能 低 下 で は
説 明 困 難 で あ る (Maclean et al., 1995, McPhaul et al., 1993)。 テ ス ト ス テ ロ ン を 投 与
し て も SBMA の 症 状 が 改 善 し な い の は 、 こ う し た 理 由 に よ る も の と 考 え ら れ る (Danek et a
l., 1994, Goldenberg et al., 1996, Neuschmid-Kaspar et al., 1996)。
【0006】
現在、ポリグルタミン病に対しては効果的な治療戦略はない。マウスレベルでは、ハン
チ ン ト ン 病 の 遺 伝 子 導 入 ( Tg) モ デ ル に お い て caspase-1の dominant-negative変 異 が 生 存
を 延 長 し 核 内 封 入 体 の 形 成 を 抑 制 す る こ と が 報 告 さ れ て い る (Ona et al., 1999)。 ま た 、
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導入遺伝子の発現を抑制することで、症状や病理所見が可逆的に改善されることが、他の
ハ ン チ ン ト ン 病 の Tgモ デ ル で は 示 さ れ て い る (Yamamoto et al., 2000)。 し か し 、 こ う し
た遺伝子の修飾は直接臨床応用することが困難である。一方、トランスグルタミナーゼ阻
害 剤 が DRPLAの 細 胞 モ デ ル に お い て 凝 集 体 形 成 や ア ポ ト ー シ ス を 抑 制 し (Igarashi et al.,
1998)、 ハ ン チ ン ト ン 病 の Tgモ デ ル で も 生 存 を 延 長 す る こ と が 報 告 さ れ て い る (Karpuj et
al., 2002)。 ま た ハ ン チ ン ト ン 病 の 細 胞 モ デ ル で は 特 異 抗 体 や 小 分 子 に よ る ハ ン チ ン チ
ン の 凝 集 を 抑 制 す る こ と が (Heiser et al., 2000)、 Tgモ デ ル で は ク レ ア チ ン が 生 存 を 延
長 し 運 動 障 害 の 発 症 を 遅 ら せ る こ と も 報 告 さ れ て い る (Andreassen et al., 2001)。 分 子
シ ャ ペ ロ ン で あ る HSP70の 過 剰 発 現 は Machado-Joseph病 の シ ョ ウ ジ ョ ウ バ エ モ デ ル (Warric
k et al., 1999)や SCA1の 細 胞 お よ び マ ウ ス モ デ ル に お い て 、 障 害 の 予 防 効 果 を 示 し て い
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る (Cummings et al., 1998, Cummings et al., 2001)。 HSP70と HSP40の 組 み 合 わ せ は 、 SB
MAの 細 胞 モ デ ル で も 治 療 効 果 を 発 揮 し て い る (Kobayashi et al., 2000)。 し か し な が ら 、
これらの治療的アプローチは障害の予防・遅延に関してその効果は不十分であると言わざ
るを得ない。最近になり、ヒストン脱アセチル酵素阻害剤の効果がハンチントン病のショ
ウ ジ ョ ウ バ エ モ デ ル で 示 さ れ 、 今 後 ポ リ グ ル タ ミ ン 病 の 治 療 と し て 期 待 さ れ る (Steffan e
t al., 2001)が 、 マ ウ ス で の 治 療 効 果 は 未 だ 報 告 さ れ て い な い 。
【0007】
一 方 SBMAの モ デ ル マ ウ ス の 作 出 及 び そ れ を 用 い た 治 療 法 の 開 発 が 試 み ら れ て お り 、 こ れ
ま で に も い く つ か の 報 告 が な さ れ て い る 。 SBMAと 同 程 度 の 45又 は 66CAGリ ピ ー ト 、 を 有 す
る ヒ ト ア ン ド ロ ゲ ン 受 容 体 遺 伝 子 ( AR遺 伝 子 ) を 導 入 し た マ ウ ス で は 表 現 型 は 認 め ら れ な
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か っ た た め (Bingham et al., 1995, La Spada et al., 1998, Merry et al., 1996)、 症
状 を 有 す る マ ウ ス を 得 る 目 的 で truncationさ れ た AR遺 伝 子 や 強 力 な プ ロ モ ー タ ー を 有 す る
Tgマ ウ ス が 開 発 さ れ た 。 AR遺 伝 子 の プ ロ モ ー タ ー 下 で 239CAGリ ピ ー ト の み を 発 現 す る マ ウ
ス (Adachi et al., 2001)お よ び 112CAGリ ピ ー ト を 有 す る truncated AR遺 伝 子 を 導 入 し た
マ ウ ス (Abel et al., 2001)で は 、 歩 行 障 害 や 体 重 減 少 、 寿 命 短 縮 な ど の 症 状 に 加 え 、 脊
髄運動ニューロンなどに核内封入体が認められた。
先 に 述 べ た 通 り 、 SBMAに お い て は 患 者 の 殆 ど は 男 性 で あ り 、 女 性 で は 遺 伝 子 異 常 を 有 す
る保因者であっても症状が殆どみられないという、性差が著明である。しかし、これまで
報 告 さ れ た 、 切 断 さ れ た AR遺 伝 子 を 導 入 し た ト ラ ン ス ジ ェ ニ ッ ク マ ウ ス に お い て は 、 こ の
よ う な 症 状 の 性 差 は み ら れ て い な い (Adachi et al., 2001, Abel et al., 2001)。 症 状 の
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性差が認められない理由は、これらのマウスにおける導入遺伝子が全長のものではなく、
リ ガ ン ド ( テ ス ト ス テ ロ ン ) の 結 合 部 位 を 有 し て い な い た め と 考 え ら れ る 。 全 長 の ヒ ト AR
を 導 入 し た SBMAの Tgモ デ ル は 過 去 に 1つ だ け 報 告 が あ り 、 運 動 障 害 を 呈 す る と さ れ て い る
が 、 症 状 の 性 差 な ど は 報 告 さ れ て い な い (Morrison et al., 2000)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上の背景の下、本発明はポリグルタミン病(中でも特に球脊髄性筋萎縮症)の治療法
の確立を最終目標とするものであって、その具体的な課題はヒト球脊髄性筋萎縮症の病態
を忠実に再現するモデル動物を提供すること、当該モデル動物を用いたポリグルタミン病
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の治療剤のスクリーニング方法ないし評価方法を提供すること、並びにポリグルタミン病
の治療剤及び治療方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以 上 の 課 題 に 鑑 み て 鋭 意 検 討 を 行 っ た と こ ろ 、 本 発 明 者 ら は ヒ ト 球 脊 髄 性 筋 萎 縮 症 ( SB
MA) の 病 態 を 忠 実 に 再 現 す る 遺 伝 子 導 入 マ ウ ス の 作 製 に 成 功 し た 。 即 ち 、 ま ず そ の 繰 返 し
数 が 24又 は 97の CAGリ ピ ー ト 配 列 を 有 す る ヒ ト ア ン ド ロ ゲ ン 受 容 体 ( AR) 遺 伝 子 を 含 む DNA
コ ン ス ト ラ ク ト を 用 い て 遺 伝 子 導 入 マ ウ ス ( Tgマ ウ ス ) の 作 製 を 試 み た 。 得 ら れ た Tgマ ウ
ス に お い て そ の 症 状 及 び 病 理 所 見 を 検 討 し た と こ ろ 、 繰 返 し 数 が 97の CAGリ ピ ー ト 配 列 を
有 す る ヒ ト ARを 発 現 す る Tgマ ウ ス に お い て SBMAの 病 態 が 忠 実 に 再 現 さ れ て い た 。 特 に 、 従
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来 報 告 さ れ て い る 各 種 の SBMAモ デ ル マ ウ ス と は 異 な り 、 症 状 の 性 差 が 顕 著 で あ る と い う ヒ
ト SBMAの 特 徴 が 再 現 さ れ て い た 。
次 に こ の Tgマ ウ ス を 用 い て 種 々 の 実 験 を 行 っ た と こ ろ 、 雄 に お い て 去 勢 を 行 っ て 生 体 内
の テ ス ト ス テ ロ ン 量 を 減 少 さ せ る こ と に よ り SBMA様 の 症 状 及 び 病 理 所 見 が 著 し く 改 善 す る
こ と が 判 明 し 、 こ れ と は 逆 に 雌 に お い て テ ス ト ス テ ロ ン の 投 与 を 行 え ば SBMA様 の 症 状 等 の
著しい悪化が引き起こされることが判明した。一方、下垂体の黄体形成ホルモン放出ホル
モ ン ( LHRH) 受 容 体 を 減 少 さ せ 、 下 垂 体 か ら の 性 腺 刺 激 ホ ル モ ン ( LHや FSHな ど ) の 分 泌
を 抑 制 し 、 そ れ に よ っ て テ ス ト ス テ ロ ン 分 泌 を 抑 制 す る 作 用 を 有 す る LHRHア ナ ロ グ を 雄 Tg
マウスに投与してその効果を観察したところ、去勢した場合と同様に症状の著明な改善が
認 め ら れ た 。 こ れ ら の 事 実 か ら 、 生 体 内 の テ ス ト ス テ ロ ン 濃 度 を 低 下 さ せ る こ と が SBMAの
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治療に有効な手段となるとの知見が得られた。
本発明は以上の検討の結果に基づいて完成されたものであって、次の各構成を提供する
。
[1 ] 症 状 又 は 病 理 所 見 に つ い て の 以 下 の (1)∼ (5)の 特 徴 を 備 え る 非 ヒ ト 動 物 、
(1)進 行 性 筋 萎 縮 が 認 め ら れ る 、
(2)筋 力 低 下 が 認 め ら れ る 、
(3)抗 ポ リ グ ル タ ミ ン 抗 体 を 用 い た 免 疫 染 色 に よ っ て 核 の び ま ん 性 染 色 及 び 核 内 封 入 体
が認められる、
(4)抗 ア ン ド ロ ゲ ン 受 容 体 抗 体 を 用 い た 免 疫 染 色 に よ っ て 核 の び ま ん 性 染 色 及 び 核 内 封
入体が認められる、及び
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(5)神 経 原 性 変 化 が 認 め ら れ る 。
[2 ] 雌 で あ る 場 合 は 前 記 (1)∼ (5)が 認 め ら れ な い か 、 又 は 雄 で あ る 場 合 に 比 較 し て 軽
症 な い し 軽 度 で あ る 、 [1 ]に 記 載 の 非 ヒ ト 動 物 。
[3 ] 前 記 非 ヒ ト 動 物 が 齧 歯 目 動 物 で あ る 、 こ と を 特 徴 と す る [1 ]又 は [2 ]に 記 載 の 非
ヒト動物。
[4 ] 前 記 非 ヒ ト 動 物 が マ ウ ス で あ る 、 こ と を 特 徴 と す る [1 ]又 は [2 ]に 記 載 の 非 ヒ ト
動物。
[5 ] 以 下 の 工 程 (a)及 び (b)を 含 む 、 ポ リ グ ル タ ミ ン 病 治 療 剤 の ス ク リ ー ニ ン グ 方 法 、
(a)[1 ]∼ [4 ]の い ず れ か に 記 載 の 非 ヒ ト 動 物 に 被 験 物 質 を 投 与 す る 工 程 、
(b)投 与 後 の 前 記 非 ヒ ト 動 物 に お い て 、 次 の (1)∼ (9)の 少 な く と も 一 つ に つ い て 改 善 さ
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(5)
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れるか否かを調べる工程、
(1)進 行 性 筋 萎 縮 、
(2)筋 力 低 下 、
(3)抗 ポ リ グ ル タ ミ ン 抗 体 を 用 い た 免 疫 染 色 に よ っ て 認 め ら れ る 核 の び ま ん 性 染 色 及 び
核内封入体の量、
(4)抗 ア ン ド ロ ゲ ン 受 容 体 抗 体 を 用 い た 免 疫 染 色 に よ っ て 認 め ら れ る 核 の び ま ん 性 染 色
及び核内封入体の量、
(5)神 経 原 性 変 化 、
(6)進 行 性 運 動 障 害 、
(7)体 格 の 縮 小 、
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(8)寿 命 短 縮 、 及 び
(9)活 動 低 下 。
[6 ] 以 下 の 工 程 (A)及 び (B)を 含 む 、 ポ リ グ ル タ ミ ン 病 治 療 剤 の ス ク リ ー ニ ン グ 方 法 、
(A)[1 ]∼ [4 ]の い ず れ か に 記 載 の 非 ヒ ト 動 物 及 び そ の 野 生 型 に そ れ ぞ れ 被 験 物 質 を 投
与する工程、
(B)投 与 後 の 前 記 非 ヒ ト 動 物 と 前 記 野 生 型 と の 間 で 、 次 の (1)∼ (9)の 少 な く と も 一 つ に
ついての程度を比較評価する工程、
(1)進 行 性 筋 萎 縮 、
(2)筋 力 低 下 、
(3)抗 ポ リ グ ル タ ミ ン 抗 体 を 用 い た 免 疫 染 色 に よ っ て 認 め ら れ る 核 の び ま ん 性 染 色 及 び
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核内封入体の量、
(4)抗 ア ン ド ロ ゲ ン 受 容 体 抗 体 を 用 い た 免 疫 染 色 に よ っ て 認 め ら れ る 核 の び ま ん 性 染 色
及び核内封入体の量、
(5)神 経 原 性 変 化 、
(6)進 行 性 運 動 障 害 、
(7)体 格 の 縮 小 、
(8)寿 命 短 縮 、 及 び
(9)活 動 低 下 。
[7 ] 前 記 被 験 物 質 が 、 テ ス ト ス テ ロ ン の 分 泌 を 抑 制 す る 作 用 を 有 す る 化 合 物 の 中 か ら
選 択 さ れ る 、 [5 ]又 は [6 ]に 記 載 の ス ク リ ー ニ ン グ 方 法 。
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[8 ] [5 ]∼ [7 ]の い ず れ か に 記 載 の ス ク リ ー ニ ン グ 方 法 に よ っ て 選 択 さ れ る 化 合 物 を
有効成分として含んでなるポリグルタミン病治療剤。
[9 ] テ ス ト ス テ ロ ン の 分 泌 を 抑 制 す る 作 用 を 有 す る 化 合 物 を 有 効 成 分 と し て 含 ん で な
る球脊髄性筋萎縮症治療剤。
[1 0 ] 下 垂 体 か ら の 性 腺 刺 激 ホ ル モ ン の 分 泌 を 抑 制 す る 作 用 を 有 す る 化 合 物 を 有 効 成
分として含んでなる球脊髄性筋萎縮症治療剤。
[1 1 ] 下 垂 体 に 作 用 し て 黄 体 形 成 ホ ル モ ン 放 出 ホ ル モ ン 受 容 体 を 減 少 さ せ る 作 用 を 有
する化合物を有効成分として含んでなる球脊髄性筋萎縮症治療剤。
[1 2 ] 黄 体 形 成 ホ ル モ ン 放 出 ホ ル モ ン の ア ナ ロ グ を 有 効 成 分 と し て 含 ん で な る 球 脊 髄
性筋萎縮症治療剤。
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[1 3 ] リ ュ ー プ ロ レ リ ン 又 は そ の 誘 導 体 を 有 効 成 分 と し て 含 ん で な る 球 脊 髄 性 筋 萎 縮
症治療剤。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の第1の局面は、以下の症状及び病理所見が認められるという特徴を少なくとも
備えた非ヒト動物を提供する。
症 状 と し て は 、 (1)進 行 性 筋 萎 縮 、 及 び (2)筋 力 低 下 で あ る 。 典 型 的 に は こ れ ら の 症 状 の
結果として或はこれらの症状に関連して進行性の運動障害、体格の縮小、寿命短縮、活動
低下などの症状も認められる。ここで進行性筋萎縮の有無やその程度については、例えば
後脚などの特定の部位を肉眼で観察して経時的な変化を調べることにより確認することが
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できる。一方、筋力低下の有無やその程度については、例えば運動障害の有無やその程度
から或は活動低下の有無やその程度から間接的に確認することができる。尚、運動障害の
有 無 や そ の 程 度 は 例 え ば Rotarod taskテ ス ト ( Crawley JN. What’ s wrong with my mous
e. Wiley-Liss, New York, Pp48-52.) に よ っ て 、 ま た 活 動 低 下 の 有 無 や そ の 程 度 は 例 え
ば Cage activityテ ス ト ( Crawley JN. What’ s wrong with my mouse. Wiley-Liss, New
York, Pp48-52.) に よ っ て そ れ ぞ れ 確 認 す る こ と が で き る 。 そ の 他 の 症 状 に つ い て は 、 体
格の縮小であれば肉眼的観察又は体重の測定などによって、寿命短縮であれば累積生存数
を調べることなどよってそれぞれ確認することができる。
【0011】
本発明の非ヒト動物の更なる特徴の一つは、症状についての性差が顕著であることであ
10
る。即ち、上記の各症状は雄である場合に重篤かつ急速に進行する一方で、雌の場合には
症状が認められないか又は認められたとしても雄の場合に比較して軽症である。このよう
な性差と関連した症状の相違は球脊髄性筋萎縮症に特異的な特徴であり、このような特徴
を備える点において本発明の非ヒト動物は球脊髄性筋萎縮症のモデル動物として極めて有
用であるといえる。
本発明の非ヒト動物では、典型的には初期症状として体幹及び後脚の筋萎縮が観察され
る。また、典型的にはこの初期症状に続いて体重減少や運動機能低下が認められる。
【0012】
本 発 明 の 非 ヒ ト 動 物 に 認 め ら れ る 病 理 所 見 は 次 の (3)∼ (5)で あ る 。 (3)抗 ポ リ グ ル タ ミ
ン 抗 体 を 用 い た 免 疫 染 色 に よ っ て 核 の び ま ん 性 染 色 及 び 核 内 封 入 体 が 認 め ら れ る 。 (4)抗
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アンドロゲン受容体抗体を用いた免疫染色によって核のびまん性染色及び核内封入体が認
め ら れ る 。 (5)神 経 原 性 変 化 が 認 め ら れ る 。 こ こ で の 免 疫 染 色 は 例 え ば 脊 髄 、 大 脳 、 小 脳
などの神経細胞や筋肉、心臓、膵臓などの非神経組織細胞に対して行うことができる。本
発明の非ヒト動物では、典型的にはこれらの核のびまん性染色及び核内封入体の存在が約
4周 齢 か ら 認 め ら れ 、 加 齢 と と も に そ れ ら の 量 は 増 大 す る 。 尚 、 電 子 顕 微 鏡 下 の 観 察 に よ
れば上記のびまん性染色及び核内封入体にそれぞれ対応する顆粒状凝集体及び微細凝集体
を認めることができる。
神 経 原 性 変 化 は 筋 組 織 の HE( ヘ マ ト キ シ リ ン − エ オ シ ン ) 染 色 像 を 観 察 す る こ と 等 に よ
って確認することができる。ここでの神経原性変化は、典型的には群集萎縮と小角化繊維
の発生である。
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本発明の非ヒト動物では、上述の症状の場合と同様に病理所見についても性によって顕
著に異なる。即ち上掲の各病理所見は雄の場合に顕著に認められ、典型的には雌では特に
神経原性変化が認められない。
【0013】
本発明における非ヒト動物にはマウス、ラット等の齧歯目動物が含まれるがこれらに限
定されるものではない。本発明の非ヒト動物はその発生段階で特定の遺伝子を染色体に組
込むことにより遺伝子導入動物として作製される。遺伝子導入動物の作製方法としては、
受 精 卵 の 前 核 に 直 接 DNAの 注 入 を 行 う マ イ ク ロ イ ン ジ ェ ク シ ョ ン 法 、 レ ト ロ ウ イ ル ス ベ ク
タ ー を 利 用 す る 方 法 、 ES細 胞 を 利 用 す る 方 法 な ど を 用 い る こ と が で き る 。 以 下 で は 、 本 発
明の非ヒト動物の作製方法として、マウスを用いたマイクロインジェクション法を具体例
40
として説明する。
マイクロインジェクション法では、まず交尾が確認された雌マウスの卵管より受精卵を
採 取 し 、 そ し て 培 養 し た 後 に そ の 前 核 に 所 望 の DNAコ ン ス ト ラ ク ト の 注 入 を 行 う 。 DNAコ ン
ス ト ラ ク ト と し て は 多 数 の CAGリ ピ ー ト を 含 む ヒ ト ア ン ド ロ ゲ ン 受 容 体 ( 以 下 、 「 AR」 と
もいう)遺伝子の全長をコードする配列(以下、「導入遺伝子」という)を含むものが使
用 さ れ る 。 こ こ で CAGリ ピ ー ト の 繰 返 し 数 は 作 製 さ れ る ト ラ ン ス ジ ェ ニ ッ ク マ ウ ス が SBMA
の 特 徴 を 忠 実 に 再 現 で き る の に 十 分 で あ る 必 要 が あ り 、 一 般 に SBMA患 者 に お け る CAGリ ピ
ー ト の 繰 返 し 数 が 40以 上 で あ る こ と を 考 慮 す れ ば 、 少 な く と も 4 0 、 好 ま し く は 7 0 以 上
、更に好ましくは80以上、更に更に好ましくは90以上にすることが好ましい。使用す
る DNAコ ン ス ト ラ ク ト に は 導 入 遺 伝 子 の 効 率 的 な 発 現 を 可 能 と す る プ ロ モ ー タ ー 配 列 が 含
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まれていることが好ましい。このようなプロモーターとしては例えばチキンβ−アクチン
プ ロ モ ー タ 、 プ リ オ ン 蛋 白 プ ロ モ ー タ ー 、 ヒ ト ARプ ロ モ ー タ ー 、 ニ ュ ー ロ フ ィ ラ メ ン ト L
鎖 プ ロ モ ー タ ー 、 L7プ ロ モ ー タ ー 、 サ イ ト メ ガ ロ ウ イ ル ス プ ロ モ ー タ ー な ど を 用 い る こ と
ができる。
注入操作を終了した受精卵を偽妊娠マウスの卵管に移植し、移植後のマウスを所定期間
飼 育 し て 仔 マ ウ ス ( F0) を 得 る 。 仔 マ ウ ス の 染 色 体 に 導 入 遺 伝 子 が 適 切 に 組 込 ま れ て い る
こ と を 確 認 す る た め に 、 仔 マ ウ ス の 尾 な ど か ら DNAを 抽 出 し 、 導 入 遺 伝 子 に 特 異 的 な プ ラ
イ マ ー を 用 い た PCR法 や 導 入 遺 伝 子 に 特 異 的 な プ ロ ー ブ を 用 い た ド ッ ト ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー
ション法等を行う。
【0014】
10
本発明の非ヒト動物は上述の通り球脊髄性筋萎縮症の特徴を忠実に再現しているがその
特徴の多くはポリグルタミン病に共通する。従って本発明の非ヒト動物は球脊髄性筋萎縮
症のモデルとしてのみならず、広くポリグルタミン病のモデルとして有用であると考えら
れる。そこで本発明の第2の局面は、以下に示すように、本発明の非ヒト動物を用いたポ
リグルタミン病治療剤のスクリーニング方法を提供する。
本 発 明 の ス ク リ ー ニ ン グ 方 法 は 、 (a)上 記 本 発 明 の 非 ヒ ト 動 物 に 被 験 物 質 を 投 与 す る 工
程 と 、 (b)投 与 後 の 前 記 非 ヒ ト 動 物 に お い て 、 ポ リ グ ル タ ミ ン 病 に 特 徴 的 な 症 状 又 は 病 理
所 見 が 改 善 さ れ る か 否 か を 調 べ る 工 程 と を 含 む 。 こ の (b)の 工 程 に お い て 検 査 対 象 と な る
症状等の改善が認められれば被験物質はポリグルタミン病の治療剤の有力な候補であると
判定される。
20
尚、本明細書において「ポリグルタミン病治療剤」とは、ポリグルタミン病を発症して
いる患者に対してその症状の改善などを目的として使用される薬剤はもとより、ポリグル
タミン病を発症するおそれのある者に対して予防的に使用される薬剤をも含む用語として
用いられる。また本明細書において「ポリグルタミン病」とは、遺伝子のコード領域にお
い て CAGリ ピ ー ト の 伸 長 が 認 め ら れ る 疾 患 の 総 称 で あ っ て 、 ハ ン チ ン ト ン 病 、 脊 髄 小 脳 変
性症、球脊髄性筋萎縮症などがこれに分類される。ポリグルタミン病の患者には表現促進
現 象 ( anticipation) や CAGリ ピ ー ト 数 の ば ら つ き ( 体 細 胞 モ ザ イ ク ) 、 主 に 神 経 組 織 が
選択的に障害されるという共通の病態が観察される。
【0015】
工 程 (a)に お け る 被 験 物 質 の 投 与 方 法 と し て は 経 口 投 与 や 静 脈 内 、 動 脈 内 、 皮 下 、 筋 肉
30
、又は腹腔内注射等を例示することができる。
被験物質としてはペプチド、非ペプチド性低分子化合物、タンパク質、糖タンパク質、
脂質、糖脂質、糖等を用いることができる。これらは自然界に存在する天然のものであっ
ても或は合成したものであってもよい。その他、ヒト細胞又は非ヒト動物細胞等の抽出液
又は培養上清などを被験物質として用いてもよい。
ポリグルタミン病の中でも球脊髄性筋萎縮症の治療薬をスクリーニングする場合には、
テストステロンの分泌を抑制する作用を有する化合物の中から被験物質を選択することが
好ましい。効率的なスクリーニングが可能となるからである。このような化合物としては
、例えば下垂体からの性腺刺激ホルモンの分泌を抑制する作用を有するもの(例えば下垂
体に作用して黄体形成ホルモン放出ホルモン受容体を減少させる作用を有する化合物)を
40
用いることができる。さらに具体的な被験物質としては、黄体形成ホルモン放出ホルモン
のアナログ又はその誘導体を例示することができる。
【0016】
工 程 (b)に お け る ポ リ グ ル タ ミ ン 病 に 特 徴 的 な 症 状 又 は 病 理 所 見 と は 例 え ば (1)進 行 性 筋
萎 縮 、 (2)筋 力 低 下 、 (3)抗 ポ リ グ ル タ ミ ン 抗 体 を 用 い た 免 疫 染 色 に よ っ て 認 め ら れ る 核 の
び ま ん 性 染 色 及 び 核 内 封 入 体 の 量 、 (4)抗 ア ン ド ロ ゲ ン 受 容 体 抗 体 を 用 い た 免 疫 染 色 に よ
っ て 認 め ら れ る 核 の び ま ん 性 染 色 及 び 核 内 封 入 体 の 量 、 (5)神 経 原 性 変 化 、 (6)進 行 性 運 動
障 害 、 (7)体 格 の 縮 小 、 (8)寿 命 短 縮 、 及 び (9)活 動 低 下 で あ っ て 、 工 程 (b)で は こ れ ら の 中
から少なくとも一つについてその変化が調べられる。複数の症状等について調べる場合に
は そ の 組 合 わ せ は 任 意 で あ っ て 、 例 え ば (1)と (2)の 組 合 わ せ 、 (1)、 (2)及 び (3)の 組 合 わ
50
(8)
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せ 、 (1)、 (2)、 (3)及 び (4)の 組 合 わ せ 、 (1)、 (2)、 及 び (5)の 組 合 わ せ 、 (3)、 (4)、 (9)の
組合わせなどを採用できる。一般的には改善される症状等が多くなればそれだけ被験物質
の 有 効 性 が 高 ま る と 考 え ら れ る こ と か ら 、 工 程 (b)に お い て 上 掲 の 症 状 等 に つ い て よ り 多
くのものを調べることが好ましい。但し、二つの症状等の間で一定以上の相関が認められ
る場合には、いずれかの症状等のみを調べることとしてもよい。
【0017】
本発明の非ヒト動物に被験物質を投与するのに並行して野生型の非ヒト動物にも被験物
質を投与し、投与後の両者との間でポリグルタミン病に特徴的な症状等の程度を比較、評
価することが好ましい。このように野生型を比較対照として用いることにより、各被験物
質の有効性の比較を容易且つ正確に行うことが可能となる。
10
【0018】
本発明のスクリーニング方法によって選択された化合物はポリグルタミン病に対する治
療剤として使用できる可能性を十分に期待できる。選択された化合物がポリグルタミン病
に対して十分な薬効を有する場合にはそのまま薬剤の有効成分として使用することができ
る。一方で十分な薬効を有しない場合には化学的修飾などの改変を施してその薬効を高め
た上で薬剤の有効成分としての使用に供することができる。勿論、十分な薬効を有する場
合であっても、更なる薬効の増大を目的として同様の改変を施してもよい。
【0019】
本発明の第3の局面は球脊髄性筋萎縮症に対する薬剤に関し、テストステロンの分泌を
抑制する作用を有する化合物を含んで構成される。ここでのテストステロンの分泌抑制作
20
用は本発明の薬剤を投与した結果として奏されればよく、本発明の薬剤が直接的に当該作
用を有しなくともよい。従って本発明の薬剤は、例えば下垂体からの性腺刺激ホルモンの
分泌を抑え、その結果として性腺刺激ホルモンによるテストステロンの放出が抑制され、
もってテストステロンの分泌量が減少するように作用する成分を含むものであってもよい
。このような成分としては例えば下垂体に作用して黄体形成ホルモン放出ホルモン(以下
、 「 LHRH」 と も い う ) 受 容 体 の 発 現 量 を 低 下 さ せ る 作 用 を す る も の を 例 示 す る こ と が で き
る 。 例 え ば LHRHア ナ ロ グ は そ れ に よ る 持 続 的 な 刺 激 に よ っ て 下 垂 体 の LHRH受 容 体 量 を 減 少
さ せ る こ と が で き る 。 従 っ て 、 本 発 明 に お け る 有 効 成 分 と し て LHRHア ナ ロ グ を 使 用 す る こ
と が で き る 。 LHRHア ナ ロ グ と し て は 例 え ば リ ュ ー プ ロ レ リ ン 、 ゴ セ レ リ ン 、 ブ セ レ リ ン 、
及びナファレリン等を使用することが可能であるが、これらに限定されるものではない。
30
尚、リュープロレリンについては医薬品名「リュープリン(登録商標)」(有効成分の一
般名:酢酸リュープロレリン)として武田薬品工業株式会社より販売されている。同様に
ゴセレリンについては医薬品名「ゾラデックス(登録商標)」(有効成分の一般名;酢酸
ゴセレリン)としてアストラゼネカ株式会社より販売されている。同様にブセレリンにつ
いては医薬品名「スプレキュア(登録商標)」(有効成分の一般名称:酢酸ブセレリン)
としてアベンティスファーマ株式会社より販売されている。同様にナファレリンについて
は医薬品名「ナサニール」(有効成分の一般名称:酢酸ナファレリン)として日本モンサ
ント株式会社より販売されている。
尚 、 LHRHア ナ ロ グ に そ の 作 用 を 損 な わ な い 程 度 に ( 作 用 を 高 め る 場 合 を 含 む ) 改 変 を 施
した各種誘導体を本発明の有効成分として用いることもできる。
40
【0020】
本発明の薬剤の製剤化は常法に従って行うことができる。製剤化する場合には、製剤上
許容される他の成分(例えば、担体、賦形剤、崩壊剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、無痛化
剤、安定剤、保存剤、防腐剤、生理食塩水など)を含有させることができる。賦形剤とし
て は 乳 糖 、 デ ン プ ン 、 ソ ル ビ ト ー ル 、 D-マ ン ニ ト ー ル 、 白 糖 等 を 用 い る こ と が で き る 。 崩
壊剤としてはデンプン、カルボキシメチルセルロース、炭酸カルシウム等を用いることが
できる。緩衝剤としてはリン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩等を用いることができる。乳化剤
としてはアラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、トラガント等を用いることができる。懸
濁剤としてはモノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸アルミニウム、メチルセル
ロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ラウリル硫酸ナト
50
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リウム等を用いることができる。無痛化剤としてはベンジルアルコール、クロロブタノー
ル、ソルビトール等を用いることができる。安定剤としてはプロピレングリコール、ジエ
チリン亜硫酸塩、アスコルビン酸等を用いることができる。保存剤としてはフェノール、
塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルパラベン等を用
いることができる。防腐剤としては塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸、クロロ
ブタノール等と用いることができる。
【0021】
製剤化する場合の形態も特に限定されず、例えば錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセ
ル剤、シロップ剤、注射剤、外用剤、及び座剤などとして調製できる。
このように製剤化した本発明の治療様薬剤はその形態に応じて、経口投与又は非経口投
10
与(静脈内、動脈内、皮下、筋肉、腹腔内注射など)によって患者に適用することができ
る。
【0022】
本発明の更なる他の局面では以上の薬剤を利用した球脊髄性筋萎縮症の治療方法が提供
される。本発明の治療方法は、テストステロンの分泌を抑制する作用を有する化合物を有
効成分として含む薬剤を生体に投与するステップを含む。上述のようにここでの「テスト
ステロンの分泌を抑制する作用を有する化合物」とは、例えば下垂体からの性腺刺激ホル
モ ン の 分 泌 を 抑 制 す る 作 用 を 有 す る 化 合 物 ( 例 え ば 下 垂 体 に 作 用 し て LHRH受 容 体 量 を 減 少
さ せ る 化 合 物 ) で あ り 、 具 体 例 と し て は LHRHア ナ ロ グ と し て 知 ら れ る リ ュ ー プ ロ レ リ ン 、
ゴセレリン、ブセレリン、及びナファレリン等、或はこれらの誘導体を挙げることができ
20
る。
【0023】
薬剤の投与量は症状、患者の年齢、性別、及び体重などによって異なるが、当業者であ
れば適宜適当な投与量を設定することが可能である。例えば薬剤としてリュープロレリン
を有効成分として含むものを用いる場合には、成人を対象として一日当たりのリュープロ
レ リ ン 量 が 約 1.5mg∼ 約 4.0mg(例 え ば 3.0mg又 は 3.5mg)と な る よ う に 4 週 毎 に 投 与 す る こ と
ができる。
【実施例】
【0024】
以下の実施例における各実験方法は特に記載しない限り次の通りとした。
30
( 導 入 遺 伝 子 ( transgene) )
チ キ ン β − ア ク チ ン プ ロ モ ー タ ー 調 節 下 に 繰 返 し 数 24の CAGリ ピ ー ト ( 24CAG) 又 は 繰 返
し 数 97の CAGリ ピ ー ト ( 97CAG) を 有 す る ヒ ト AR遺 伝 子 ( 順 に 配 列 番 号 1 、 及 び 配 列 番 号 2
) を 組 み 込 ん だ 導 入 用 DNAコ ン ス ト ラ ク ト ( 図 1 Aを 参 照 ) を 以 下 の よ う に 作 製 し た 。 pCAG
GSベ ク タ ー (Niwa et al., 1991) を 制 限 酵 素 HindIII で 処 理 し 、 fill inの 後 に 接 合 す る
こ と で 、 新 た に NheI 処 理 可 能 部 位 を 作 製 し (pCAGGS-NheI)、 24CAGな い し 97CAGを 有 す る
全 長 の ヒ ト AR遺 伝 子 (Kobayashi et al., 1998) を こ の pCAGGS-NheIに サ ブ ク ロ ー ニ ン グ
し た 。 5.3kb及 び 5.5kb挿 入 配 列 に お い て 、 直 接 DNAシ ー ク エ ン ス 法 に よ っ て 24CAGリ ピ ー ト
及 び 97CAGリ ピ ー ト を 確 認 し た 。
【0025】
40
( Tgマ ウ ス の 作 製 と 維 持 )
プ ラ ス ミ ド を SalI-NheI で 処 理 し 、 AR断 片 を 切 り 出 し た 。 こ の 断 片 を BDF1受 精 卵 ( 日 本
エ ス エ ル シ ー 、 静 岡 、 日 本 ) に 注 入 ( microinjection) し 、 3匹 の AR-24Qお よ び 5匹 の AR-9
7Qマ ウ ス を 得 た 。 こ れ ら F0マ ウ ス を C57BL/6J( 日 本 エ ス エ ル シ ー 、 静 岡 、 日 本 ) に 交 配 す
る こ と で 維 持 を 行 っ た 。 導 入 遺 伝 子 の 存 在 は マ ウ ス 尾 組 織 か ら 抽 出 し た DNAを PCRに か け て
ス ク リ ー ニ ン グ し た 。 こ の 際 用 い た プ ラ イ マ ー は 5'-CTTCTGGCGTGTGACCGGCG-3'( 配 列 番 号
3 ) お よ び 5'-TGAGCTTGGCTGAATCTTCC-3'( 配 列 番 号 4 ) で あ り 、 CAG繰 り 返 し 数 の 確 認 に
は 5'-CCAGAGCGTGCGCGAAGTG-3'( 配 列 番 号 5 ) と 5'-TGTGAAGGTTGCTGTTCCTC-3'( 配 列 番 号
6 ) の プ ラ イ マ ー を 用 い た 。 そ れ ぞ れ の 系 に お け る 導 入 遺 伝 子 の コ ピ ー 数 は 、 制 限 酵 素 Sa
cIIを 用 い た サ ザ ン ブ ロ ッ ト に よ り 輝 度 を 解 析 す る こ と で 算 定 し た 。 CAGリ ピ ー ト 数 の 決 定
50
(10)
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に あ た っ て は 、 テ キ サ ス レ ッ ド 標 識 プ ラ イ マ ー で 増 幅 し た PCR産 物 を 、 6%ポ リ ア ク リ ル ア
ミ ド ゲ ル で 電 気 泳 動 し 、 5500DNAシ ー ク エ ン サ ー (日 立 、 日 本 )で 解 析 し た 。
【0026】
(神経学的行動解析)
マ ウ ス の rotarod taskに は Economex Rotarod (Colombus Instruments、 ア メ リ カ )を 用
い 、 毎 週 12時 間 ご と の 明 暗 サ イ ク ル の 明 時 に 、 以 前 の 報 告 と 同 様 に 行 っ た (Adachi et al
., 2001)。 試 行 は 3回 行 い 、 各 々 の マ ウ ス が 回 転 バ ー に も っ と も 長 く 乗 る こ と の で き た 時
間 を 記 録 し た 。 マ ウ ス が バ ー か ら 落 下 し た 時 な い し 180秒 に 達 し た 時 に タ イ マ ー を 停 止 し
、その時間を記録した。
マ ウ ス の 1日 の 行 動 量 で あ る cage activityは 、 マ ウ ス を 透 明 な ケ ー ジ (16 x 30 x 14 cm
10
) に 入 れ 、 AB system (ニ ュ ー ロ サ イ エ ン ス 、 日 本 )を 用 い 、 赤 外 線 セ ン サ ー を 使 っ て 測 定
し た 。 測 定 は 10分 間 隔 で 24時 間 行 っ た 。
【0027】
(ホルモン介入試験とテストステロン測定)
雄 AR-97Qマ ウ ス と 正 常 雄 マ ウ ス の 去 勢 お よ び sham operationは 、 4週 齢 の マ ウ ス に 対 し
、 ケ タ ミ ン − キ シ ラ ジ ン 麻 酔 下 (50 mg/kgケ タ ミ ン お よ び 10 mg/kgキ シ ラ ジ ン を 腹 腔 内 注
射 )で 、 経 腹 腔 的 ア プ ロ ー チ で 行 っ た 。 雌 AR-97Qマ ウ ス と 雌 正 常 マ ウ ス に は 、 20μ gの エ
ナ ン 酸 テ ス ト ス テ ロ ン を 、 20μ lの sesame oilに 溶 解 し 皮 下 注 射 し た 。 投 与 は 4週 齢 か ら 開
始 し 、 解 析 終 了 ま で 毎 週 施 行 し た 。 対 照 群 に は 、 同 量 の sesame oilの み を 投 与 し た 。
血 清 テ ス ト ス テ ロ ン 測 定 に は 、 Coat-A-Count Total Testosterone radioimmunoassay (
20
Diagnostic Products Corporation、 ア メ リ カ )を 用 い た 。
【0028】
( RNAお よ び 蛋 白 レ ベ ル の 発 現 解 析 )
ケ タ ミ ン -キ シ ラ ジ ン 麻 酔 下 で マ ウ ス よ り 臓 器 を 摘 出 し 、 ド ラ イ ア イ ス ア セ ト ン に て 凍
結 し た 。 凍 結 組 織 か ら Trizol (Life Technologies/Gibco BRL、 ア メ リ カ )を 用 い total RN
Aを 抽 出 し た 。 こ の RNAに SUPERSCRIPT II逆 転 写 酵 素 (Life Technologies/Gibco BRL)処 理
を 行 っ た 。 導 入 遺 伝 子 に 特 異 的 な プ ラ イ マ ー で あ る 5'-TTCCACACCCAGTGAAGC-3'( 配 列 番 号
7 ) お よ び 5'-GGCATTGGCCACACCAAGCC-3'( 配 列 番 号 8 ) を 用 い て RT-PCRを 行 い 、 ア ガ ロ ー
ス ゲ ル 電 気 泳 動 を 行 っ た 。 バ ン ド の 輝 度 を 、 別 の 反 応 系 で 増 幅 し た β ア ク チ ン の mRNAレ ベ
ルと比較した。
30
蛋 白 の 抽 出 に あ た っ て は 、 凍 結 組 織 (湿 重 量 0.1 g)を 1000μ lの 50 mM Tris pH 8.0、 150
mM NaCl、 1% NP-40、 0.5% deoxycholate、 0.1% SDSお よ び 1 mM 2-mercaptoethanolの 溶
液 で 1 mM PMSFと aprotinine 6μ g/mlと と も に homogenateし 、 4℃ で 2500g、 15分 間 遠 心 し
た 。 神 経 組 織 で は 200μ g 、 筋 は 80μ gの サ ン プ ル を 、 5-20% SDS-PAGEゲ ル で 泳 動 し 、 25 m
M Tris、 192 mM glycine、 0.1% SDSお よ び 10% methanol溶 液 で 、 Hybond-P(Amersham Phar
macia Biotechイ ギ リ ス )に transferし た 。 1次 抗 体 で あ る ラ ビ ッ ト 抗 AR抗 体 N-20(1:1000)
(Santa Cruz Biotechnology、 ア メ リ カ )に 反 応 さ せ 、 2次 光 体 に 反 応 さ せ た 後 、 ECL+plus
kit (Amersham Pharmacia Biotech)に て 発 色 、 現 像 し た 。 核 お よ び 細 胞 質 分 画 は NE-PER n
uclear and cytoplasmic extraction reagents (Pierceア リ カ )を 用 い 分 離 、 抽 出 し た 。
【0029】
40
(免疫組織化学)
ケ タ ミ ン − キ シ ラ ジ ン 麻 酔 下 の マ ウ ス 左 心 室 か ら 、 20 mlの 4% paraformaldehyde-リ ン
酸 バ ッ フ ァ ー (pH 7.4)を 環 流 し 、 摘 出 し た 臓 器 を 10%ホ ル マ リ ン -リ ン 酸 バ ッ フ ァ ー で 固 定
し 、 そ の 後 パ ラ フ ィ ン 包 埋 し た 。 4-μ m厚 の 切 片 を 切 り 出 し 、 脱 パ ラ フ ィ ン 処 理 し 、 ア ル
コ ー ル に て 脱 水 後 、 ギ 酸 に て 室 温 5分 間 処 理 し た 。 1次 抗 体 は 1C2 (1:10000) (Chemicon、
ア メ リ カ )を 用 い 、 以 前 の 報 告 (Adachi et al., 2001) と 同 様 に 染 色 し た 。 即 ち ギ 酸 に て
処 理 後 、 5% ウ マ 血 清 を 室 温 に て 30分 間 反 応 さ せ 、 1次 抗 体 1C2( 1: 10000) ( Chemicon、
ア メ リ カ ) を 4℃ 、 オ ー バ ー ナ イ ト で 反 応 さ せ た の ち 、 ABC法 に て 免 疫 染 色 を 行 っ た 。 ABC
法 に よ る 染 色 は ビ オ チ ン 化 2次 抗 体 ( Vector Laboratories、 ア メ リ カ ) を 4℃ 、 オ ー バ ー
ナ イ ト で 反 応 さ せ 、 0.02M PBSで 洗 浄 後 、 HRP標 識 ス ト レ プ ト ア ビ ジ ン で 反 応 さ せ 、 DABを
50
(11)
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用いて発色した。
電 子 顕 微 鏡 標 本 も パ ラ フ ィ ン 固 定 の も の を 使 用 し 、 1C2 (1:10000) (Chemicon)で 同 様 に
(Adachi et al., 2001)染 色 し た 。
【0030】
(筋病理および脊髄前角細胞と前根の形態解析)
マ ウ ス 腓 腹 筋 の 6μ m厚 凍 結 切 片 を 作 製 し 、 ヘ マ ト キ シ リ ン ・ エ オ ジ ン (H&E)染 色 を 行 っ
た 。 脊 髄 運 動 ニ ュ ー ロ ン の 数 お よ び 形 態 の 解 析 に は 、 各 々 の 群 の マ ウ ス 3匹 ず つ か ら 、 5μ
m厚 の 連 続 20切 片 を 第 5 腰 髄 (#7-8、 13週 齢 )か ら 切 り 出 し た 。 1つ お き の 切 片 を Nissl染 色
し 、 前 角 に あ る 核 小 体 の 明 瞭 な ニ ュ ー ロ ン を 、 Luzex FS image analyzer (Nireco、 日 本 )
を 用 い 、 以 前 の 報 告 (Terao et al., 1996) の 通 り 解 析 し た 。 即 ち 、 計 1 0 切 片 に お け る
10
全ニューロンの断面積を測定した。前根有髄線維の直径はトルイジンブルー染色標本を用
い 、 以 前 の 報 告 (Terao et al., 1996) の 通 り 解 析 し た 。 即 ち 、 各 線 維 の 断 面 積 を 測 定 し
、それと同じ面積の円の直径を計算した。
【0031】
(統計解析)
統 計 処 理 に は unpaired t-testを 用 い 、 p値 0.05未 満 を 有 意 と し た 。
【0032】
< 実 施 例 1 > 97CAGリ ピ ー ト を 有 す る AR遺 伝 子 を 発 現 す る 遺 伝 子 導 入 マ ウ ス ( Tgマ ウ ス
) の 作 製 、 及 び 得 ら れ た Tgマ ウ ス の 症 状 等 の 検 討
サ イ ト メ ガ ロ ウ イ ル ス エ ン ハ ン サ ー お よ び チ キ ン β -ア ク チ ン プ ロ モ ー タ ー の 調 節 下 に
20
、 繰 返 し 数 が 24又 は 97の CAGリ ピ ー ト ( 24CAGリ ピ ー ト 、 97CAGリ ピ ー ト ) を 有 す る ヒ ト ア
ン ド ロ ゲ ン 受 容 体 ( AR) を 発 現 す る Tgマ ウ ス の 作 製 を 試 み ( 図 1A) 、 24CAGリ ピ ー ト を 使
用 し た マ ウ ス ( AR-24Q) 3系 統 と 、 97CAGリ ピ ー ト を 使 用 し た マ ウ ス ( AR-97Q) 5系 統 と を
得 た 。 導 入 遺 伝 子 の コ ピ ー 数 は AR-24Qで は 1∼ 5、 AR-97Qで は 1∼ 3で あ っ た ( 図 8) 。 導 入
し た ヒ ト AR遺 伝 子 に お け る CAGの 繰 り 返 し 数 は 、 PCRお よ び ポ リ ア ク リ ル ア ミ ド ゲ ル 電 気 泳
動 に よ り 確 認 し た 。 世 代 間 の CAG繰 り 返 し 数 の 変 動 は 明 ら か で な か っ た 。 AR-24Qの マ ウ ス
は い ず れ も 無 症 状 で あ っ た が 、 AR-97Qの 5系 統 の 内 3系 統 で は ( # 2-6、 # 4-6、 # 7-8) 、
進 行 性 の 運 動 障 害 が 認 め ら れ た 。 運 動 障 害 が み ら れ た 3系 統 の マ ウ ス は い ず れ も 体 格 の 縮
小、寿命短縮、進行性筋萎縮、筋力低下および活動低下を示した。これらすべての症状は
雄 の AR-97Qマ ウ ス に お い て 重 篤 か つ 急 速 に 進 行 し た が 、 雌 で は 症 状 が 認 め ら れ な い か 、 あ
30
っ て も 雄 よ り 遥 か に 軽 症 で あ っ た ( 図 1B、 C、 D、 E) 。 初 発 症 状 は 体 幹 お よ び 後 脚 の 筋 萎
縮 で あ り 、 そ れ に 続 い て 体 重 減 少 や rotarodに よ る 運 動 機 能 低 下 が 明 ら か と な っ た 。 rotar
odに お け る 運 動 障 害 が 発 症 す る の は 雄 で は 8か ら 9 週 齢 で あ っ た が 、 雌 で は 15週 齢 な い し
そ れ 以 降 で あ っ た ( 図 8) 。 運 動 障 害 の あ る マ ウ ス は 活 動 性 が 低 下 し 、 後 脚 を 引 き ず っ て
歩行した。前脚の障害は後脚の萎縮が高度となった後に認められた。雄では雌にくらべ運
動 機 能 は 急 速 か つ よ り 早 期 に 障 害 さ れ 、 寿 命 も よ り 短 縮 し て い た 。 AR-97Qの 全 3系 統 の マ
ウ ス に お い て 、 寿 命 の 中 央 値 は 雄 で は 66か ら 135日 齢 で あ っ た が 、 雌 で は 210日 齢 に お い て
も 10か ら 30% 程 度 の マ ウ ス が 死 亡 し た に す ぎ な か っ た 。 死 因 は 低 栄 養 お よ び 脱 水 に よ る 悪
液質と考えられた。
【0033】
40
次 に 、 ウ エ ス タ ン ブ ロ ッ ト に よ る タ ン パ ク 質 の 検 出 、 及 び RT-PCR法 を 用 い た mRNAの 検 出
に よ っ て 導 入 遺 伝 子 の 発 現 を 調 べ た 。 そ の 結 果 、 ウ エ ス タ ン ブ ロ ッ ト で は 、 変 異 ARの 高 発
現 が 認 め ら れ 、 変 異 ARの モ ノ マ ー の バ ン ド に 加 え 、 ス タ ッ キ ン グ ゲ ル に 留 ま る も の と 切 断
さ れ た 変 異 ARの 断 片 も 認 め ら れ た 。 こ れ ら の 変 異 蛋 白 は 脊 髄 、 脳 、 心 、 筋 お よ び 膵 な ど に
認められた。スタッキングゲルに留まる変異蛋白の発現は雄で大量に認められたが、雌で
は こ れ は 少 な く 、 む し ろ ARの モ ノ マ ー が 多 く 認 め ら れ た ( 図 1F) 。 AR-24Qマ ウ ス で は 変 異
ARの モ ノ マ ー の バ ン ド は 認 め ら れ た が ス タ ッ キ ン グ ゲ ル に 留 ま る 変 異 蛋 白 は 認 め ら れ な か
っ た ( 図 1F) 。 ス タ ッ キ ン グ ゲ ル に 留 ま る 変 異 ARの 殆 ど は 核 分 画 に 存 在 し て い た ( 図 1G)
。 雄 雌 に お け る 導 入 遺 伝 子 mRNAレ ベ ル で の 発 現 の 差 は 明 ら か で な か っ た 。 こ れ ら の 結 果 よ
り 明 ら か と な っ た こ と は 、 導 入 遺 伝 子 の 発 現 は 主 に ス タ ッ キ ン グ ゲ ル に 留 ま る 変 異 AR蛋 白
50
(12)
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という形で認められ、この変異蛋白の核内局在は雄において雌より著明であることである
。 導 入 遺 伝 子 の 発 現 は mRNAレ ベ ル で は 性 差 が 認 め ら れ な か っ た 。
【0034】
一方、免疫組織化学、並びに筋病理及び脊髄前角細胞と前根の形態解析による組織学検
討 を 各 Tgマ ウ ス に 対 し て 行 っ た 。 そ の 結 果 、 AR-24Qマ ウ ス で は 病 理 所 見 は 認 め ら れ な か っ
た 。 一 方 、 AR-97Qマ ウ ス に お い て は 、 異 常 延 長 し た ポ リ グ ル タ ミ ン に 対 す る 特 異 的 抗 体 (
1C2) ( Trottier,et al., 1995) に よ る 免 疫 染 色 で 、 核 の び ま ん 性 染 色 や 核 内 封 入 体 が 脊
髄、大脳、小脳、脳幹や後根神経節の神経細胞および心や筋、膵などの非神経組織に認め
ら れ た ( 図 9) 。 神 経 組 織 で は 運 動 ニ ュ ー ロ ン の 核 に 最 も 著 明 な 核 の び ま ん 性 染 色 や 核 内
封 入 体 が 認 め ら れ た 。 後 根 神 経 節 以 外 で は グ リ ア 細 胞 に も 顕 著 な 染 色 が 認 め ら れ た 。 1C2
10
に よ り 核 の び ま ん 性 染 色 や 核 内 封 入 体 を 示 し た 細 胞 の 核 は 、 ARに 対 す る 抗 体 ( N-20) で も
染 色 さ れ た 。 細 胞 質 は 1C2と N-20の い ず れ に よ っ て も 染 色 さ れ る こ と は な か っ た 。 核 の び
ま ん 性 染 色 や 核 内 封 入 体 は 4週 齢 か ら 認 め ら れ 、 加 齢 と と も に 増 加 し た が 、 雄 で は 雌 よ り
高 頻 度 に 認 め ら れ 、 症 状 や ウ エ ス タ ン ブ ロ ッ ト の 性 差 に 一 致 す る 結 果 が 得 ら れ た ( 図 9、
図 2A) 。 電 子 顕 微 鏡 に よ る 1C2の 免 疫 染 色 で は 核 内 封 入 体 に 対 応 す る 顆 粒 状 凝 集 体 と 、 び
ま ん 性 染 色 に 対 応 す る 微 細 凝 集 体 と が 観 察 さ れ た ( 図 2B、 C、 D、 E) 。
【0035】
筋 病 理 で は 、 雄 AR-97Qマ ウ ス に お い て 著 明 な 群 集 萎 縮 と 小 角 化 繊 維 と い っ た 神 経 原 性 変
化 が 認 め ら れ 、 筋 繊 維 の 大 小 不 同 軽 度 な ど の 軽 度 の 筋 原 性 変 化 も 認 め ら れ た ( 図 2F) 。 第
5 腰 髄 レ ベ ル の 脊 髄 運 動 ニ ュ ー ロ ン の 数 は 正 常 マ ウ ス で は 10切 片 あ た り 543± 28、 AR-97Q
20
マ ウ ス で は 452± 10で あ り 、 正 常 マ ウ ス に 比 べ AR-97Qマ ウ ス に お い て 減 少 し て い る 傾 向 が
み ら れ た が 、 有 意 差 は 認 め ら れ な か っ た ( p=0.10) 。 し か し 、 個 々 の 脊 髄 運 動 ニ ュ ー ロ ン
の 断 面 積 は 雄 の AR-97Qマ ウ ス に お い て 著 明 に 減 少 し て い た ( 正 常 マ ウ ス で は 195.6± 12.1
μm
2
2
、 AR-97Qマ ウ ス で は 130.6± 4.0μ m 、 p=0.006) 。 さ ら に 、 第 5 腰 髄 脊 髄 前 根 の 大 径
繊 維 ( > 6.0μ m) の 軸 索 径 は 雄 AR-97Qマ ウ ス に お い て 有 意 に 縮 小 し て い た 。 す な わ ち 、 大
径 繊 維 径 は 、 正 常 マ ウ ス で は 10.29± 1.08μ m 、 AR-97Qマ ウ ス で は 8.49± 0.27μ m (p=0.05
)、 小 径 線 維 径 は 正 常 マ ウ ス で は 2.86± 0.11μ m、 AR-97Qマ ウ ス で は 3.11± 0.23μ m( p=0.1
6) で あ っ た 。 雌 マ ウ ス で 神 経 原 性 変 化 は 認 め ら れ な か っ た 。 著 明 な 核 内 封 入 体 に も 関 わ
らず、大脳、小脳および後根神経節における神経細胞脱落は明らかでなかった。
【0036】
30
< 実 施 例 2 > 雄 AR-97Qマ ウ ス の 去 勢 に よ る 治 療
症状や病理所見の性差が、男性ホルモンであるテストステロン分泌の性差によるものと
仮 説 を た て 、 ま ず 雄 の AR-97Qマ ウ ス に 去 勢 を 施 行 し た 。 去 勢 さ れ た 雄 AR-97Qマ ウ ス で は 症
状 、 病 理 所 見 お よ び 変 異 蛋 白 の 核 内 局 在 に つ い て 、 対 照 群 ( sham operation群 ) に 比 べ 劇
的 な 改 善 が 認 め ら れ た 。 す な わ ち 、 対 照 群 で は 著 し い 体 重 減 少 を 認 め た が 、 去 勢 さ れ た AR
-97Qマ ウ ス の 体 重 は 去 勢 さ れ た 正 常 マ ウ ス と 同 等 で 、 体 重 減 少 は ほ と ん ど 認 め ら れ な か っ
た ( 図 3A) 。 rotarodや cage activityに よ る 運 動 機 能 評 価 で は 、 去 勢 マ ウ ス に お け る 運 動
機能低下は対照群に比べはるかに軽度であり、運動機能障害は去勢マウスではほとんどみ
ら れ な か っ た ( 図 3B、 C) 。 去 勢 マ ウ ス に お け る 運 動 機 能 は 雌 の Tgマ ウ ス と ほ ぼ 同 様 で あ
っ た 。 去 勢 マ ウ ス で は 寿 命 も 著 し く 延 長 し ( 図 3D) 、 筋 萎 縮 や そ れ に 伴 う 体 格 の 縮 小 も 著
40
明 に 改 善 し た ( 図 3E) 。 マ ウ ス の 足 跡 を 観 察 し 歩 行 機 能 を 評 価 し た と こ ろ 、 対 照 群 は 後 脚
を ひ き ず っ て 歩 く の に 対 し 、 去 勢 マ ウ ス で は 正 常 な 歩 行 が み ら れ た ( 図 3F) 。 N-20に よ る
ウ エ ス タ ン ブ ロ ッ ト で は 、 ス タ ッ キ ン グ ゲ ル に 留 ま る 変 異 AR蛋 白 は 、 対 照 群 に 比 べ 去 勢 マ
ウ ス に お い て 著 明 に 減 少 し ( 図 4A) 、 核 分 画 に お け る 変 異 ARも ま た 、 去 勢 マ ウ ス に お い て
著 明 に 減 少 し た ( 図 4B) 。 1C2免 疫 染 色 に お け る 核 の び ま ん 性 染 色 や 核 内 封 入 体 は 、 去 勢
に よ り 劇 的 に 改 善 し た ( 図 4C) 。 こ れ ら の 結 果 は 、 去 勢 に よ り 変 異 ARの 核 内 移 行 を 抑 制 し
たことを意味する。血清テストステロン値は去勢マウスでは測定感度以下であったが、対
照 群 で は 27.7± 1.2 ng/dl(#7-8, n=4)で あ り 、 去 勢 に よ り テ ス ト ス テ ロ ン が 著 明 に 低 下 す
ることが示された。
【0037】
50
(13)
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去 勢 は 雄 AR-97Qマ ウ ス の 表 現 型 、 す な わ ち 症 状 や 病 理 所 見 を 著 し く 改 善 し た 。 ウ エ ス タ
ン ブ ロ ッ ト や 1C2免 疫 染 色 で は 、 核 内 に 局 在 す る 変 異 ARが 去 勢 に よ っ て 劇 的 に 減 少 し た 。
血 清 テ ス ト ス テ ロ ン 濃 度 は 去 勢 に よ り 減 少 す る こ と が 確 認 さ れ た 。 ARの 核 内 移 行 が 主 に テ
ス ト ス テ ロ ン の み に 依 存 し て い る (Stenoien et al., 1999, Simeoni et al., 20 00) こ
と を 考 え る と 、 雄 に お い て 去 勢 が 治 療 効 果 を 示 す の は 、 変 異 ARの 核 内 移 行 を 抑 え る た め と
考えられる。異常延長したポリグルタミンを有する変異蛋白の核内移行は、大多数のポリ
グルタミン病において神経機能障害や変性に関わる重要な因子とされている。一例として
、核外移行シグナルを変異ハンチンチンに付加すると、凝集体形成や細胞死が抑制される
こ と が 、 ハ ン チ ン ト ン 病 の モ デ ル に お い て 確 か め ら れ て い る (Saudou et al., 1998, Pete
rs et al., 1999)。 ま た 、 核 内 移 行 シ グ ナ ル を 用 い る と 全 く 逆 の 効 果 が 得 ら れ る こ と も 報
10
告 さ れ て い る (Peters et al., 1999)。 脊 髄 小 脳 変 性 症 1型 ( SCA1) の Tgマ ウ ス に お い て 、
導 入 遺 伝 子 の 核 内 移 行 シ グ ナ ル に 変 異 を 加 え る と 、 原 因 蛋 白 で あ る ataxin-1は 細 胞 質 に 分
布 し 、 マ ウ ス は 神 経 障 害 を 示 さ な く な る (Klement et al., 1998)。 こ う し た 報 告 を 考 慮 す
る と 、 テ ス ト ス テ ロ ン を 減 少 さ せ る こ と で 変 異 ARの 核 内 移 行 は 抑 制 す る こ と が 、 SBMAの 症
状改善に繋がると考えられる。こうした内分泌学的介入はヒトの治療に十分応用可能と考
えられる。
【0038】
去 勢 さ れ た 雄 AR-97Qマ ウ ス は 雌 AR-97Qマ ウ ス と 同 等 の 表 現 型 を 示 し た 。 こ れ は 、 SBMA患
者においても、テストステロンを低下させることで女性保因者と同等のレベルまで改善さ
せ う る こ と を 意 味 す る 。 SBMA女 性 保 因 者 の う ち 半 数 は 軽 度 の 筋 電 図 異 常 を 呈 す る も の の 、
20
臨 床 症 状 が 明 ら か と な る 例 は ほ と ん ど な い (Sobue et al., 1993, Mariotti et al., 2000
)。 X染 色 体 の 不 活 化 に よ る 変 異 AR発 現 の 低 下 が 、 女 性 保 因 者 の 症 状 回 避 に 関 与 し て い る こ
と は 想 像 に 難 く な い が 、 以 上 の 実 験 結 果 か ら は 、 低 テ ス ト ス テ ロ ン 濃 度 に よ る 変 異 ARの 核
内移行抑制が、女性保因者において症状が出現しにくいことと密接に関係していることが
示唆される。
【0039】
< 実 施 例 3 > 雄 AR-97Qマ ウ ス に 対 す る リ ュ ー プ ロ レ リ ン ( Leuprorelin) 投 与
次 に 、 テ ス ト ス テ ロ ン 分 泌 抑 制 に よ る 本 マ ウ ス の 治 療 を 薬 剤 で 再 現 す る 目 的 で 、 LHRHア
ナ ロ グ で あ る Leuprorelinを 雄 AR-97Qマ ウ ス に 投 与 す る 実 験 を 行 っ た 。 Leuprorelinの 投 与
は 次 の よ う に 行 っ た 。 Leuprorelin acetate 100μ gを D-マ ン ニ ト ー ル を 含 む 溶 液 に 懸 濁 し
30
、 2週 間 ご と に 皮 下 注 射 し た 。 投 与 は 5週 齢 か ら 開 始 し 、 解 析 終 了 ま で 行 っ た 。 対 照 群 に は
懸 濁 液 の み を 投 与 し た 。 Leuprorelinを 投 与 し た 雄 AR-97Qマ ウ ス で は 、 去 勢 マ ウ ス と 同 様
に 、 症 状 の 著 明 な 改 善 が 認 め ら れ た 。 す な わ ち 、 rotarodや cage activityに よ る 運 動 機 能
評 価 で は 、 Leuprorelin投 与 群 に お け る 運 動 機 能 低 下 は 対 照 群 に 比 べ は る か に 軽 度 で あ り
、 運 動 機 能 障 害 は Leuprorelin投 与 群 で は ほ と ん ど み ら れ な か っ た ( 図 5A、 B、 C、 D) 。 Le
uprorelin投 与 群 で は 体 格 の 縮 小 も 著 し く 改 善 し ( 図 5E) 、 歩 行 障 害 も 改 善 し た ( 図 5F)
。 Leuprorelin投 与 群 の 血 清 テ ス ト ス テ ロ ン 値 は 測 定 感 度 以 下 で あ っ た ( #4-6, n=4) 。
【0040】
Leuprorelinは 、 LHRHア ナ ロ グ で あ り 、 持 続 的 に 下 垂 体 を 刺 激 す る こ と で 、 下 垂 体 の LHR
H受 容 体 を 減 少 ( downregulation) さ せ 、 下 垂 体 か ら の LHや FSHの 分 泌 を 抑 制 し 、 そ れ に よ
40
りテストステロン分泌を抑制する薬剤である。そのテストステロン分泌抑制効果は去勢と
同 等 と さ れ て お り ( The Leuproride Study Group 1984) 、 侵 襲 の 高 い 去 勢 術 に 代 わ っ て
前立腺癌のホルモン治療の代表的薬剤となっている。さらに、長期効果が確認されている
の み な ら ず 、 中 止 に よ る テ ス ト ス テ ロ ン 分 泌 の 回 復 も 確 認 さ れ て お り ( Hall et al., 199
9) 、 倫 理 的 見 地 か ら も 臨 床 応 用 に 適 し た 薬 剤 と い え る 。 SBMA患 者 の 治 療 に あ た っ て も 、
侵 襲 が 高 く 不 可 逆 性 の 去 勢 よ り は 、 LHRHア ナ ロ グ の 投 与 が よ り 実 際 的 と 考 え ら れ る 。 AR-9
7Qマ ウ ス に お い て も 、 Leuprorelinの テ ス ト ス テ ロ ン 分 泌 抑 制 効 果 は 明 ら か で あ り 、 か つ
、 ポ リ グ ル タ ミ ン に よ る 神 経 障 害 に た い し て も 治 療 効 果 が 認 め ら れ た 。 す な わ ち 、 LHRHア
ナ ロ グ は SBMAの 治 療 と し て 最 も 期 待 さ れ る 薬 剤 と 考 え ら れ る 。
【0041】
50
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< 実 施 例 4 > 雌 AR-97Qマ ウ ス に 対 す る テ ス ト ス テ ロ ン 投 与
次 に 雄 AR-97Qマ ウ ス に お け る 去 勢 の 治 療 的 効 果 が 、 テ ス ト ス テ ロ ン の 分 泌 抑 制 で あ る こ
と を 明 ら か に す る た め 、 元 来 症 状 の 乏 し い 雌 AR-97Q マ ウ ス に テ ス ト ス テ ロ ン を 投 与 す る
実 験 を 行 っ た 。 テ ス ト ス テ ロ ン を 投 与 し た 雌 AR-97Qマ ウ ス で は 症 状 、 病 理 所 見 お よ び 変 異
蛋 白 の 核 内 局 在 が 、 対 照 群 ( sesame oil投 与 群 ) に 比 べ 劇 的 に 悪 化 し た 。 す な わ ち 、 対 照
群では体重減少はほとんど認めなかったが、テストステロン投与群の体重は著明に減少し
た ( 図 6A) 。 rotarodや cage activityに よ る 運 動 機 能 評 価 で は 、 テ ス ト ス テ ロ ン 投 与 群 に
お け る 運 動 機 能 低 下 は 対 照 群 に 比 べ 著 し く 高 度 で あ っ た ( 図 6B、 C) 。 テ ス ト ス テ ロ ン 投
与 群 に お け る 運 動 機 能 は 雄 の AR-97Qマ ウ ス と ほ ぼ 同 様 で あ っ た 。 テ ス ト ス テ ロ ン 投 与 群 で
は 寿 命 も 著 し く 短 縮 し ( 図 6D) 、 筋 萎 縮 や そ れ に 伴 う 体 格 の 縮 小 も 著 明 に 増 悪 し た ( 図 6E
10
)。足跡の観察では、対照群はほぼ正常であるのに対し、テストステロン投与群では後脚
を ひ き ず る 歩 行 障 害 が 明 ら か で あ っ た ( 図 6F) 。 N-20に よ る ウ エ ス タ ン ブ ロ ッ ト で は 、 ス
タ ッ キ ン グ ゲ ル に 留 ま る 変 異 AR蛋 白 は 、 対 照 群 に 比 べ テ ス ト ス テ ロ ン 投 与 群 に お い て 著 明
に 増 加 し ( 図 7A) 、 核 分 画 に お け る 変 異 ARも ま た 同 様 で あ っ た ( 図 7B) 。 対 照 群 で は ほ と
んど認められなかった核のびまん性染色や核内封入体は、テストステロン投与により著明
に 増 加 し た ( 図 7C) 。 こ れ ら の 結 果 は 、 テ ス ト ス テ ロ ン 投 与 に よ り 変 異 ARの 核 内 移 行 が 促
進したことを意味する。血清テストステロン値は対照群では測定感度以下であったが、テ
ス ト ス テ ロ ン 投 与 群 で は 158.0± 70.7 ng/dl (#2-6, n=3) な い し 305.3± 182.3 ng/dl (#7
-8, n=4) で あ っ た 。
【0042】
20
以 上 の 結 果 に よ っ て 明 ら か な よ う に 、 軽 微 で あ っ た 雌 AR-97Qの 症 状 は テ ス ト ス テ ロ ン 投
与 に よ り 著 明 に 増 悪 し た 。 ウ エ ス タ ン ブ ロ ッ ト や 1C2免 疫 染 色 で は 、 核 内 に 局 在 す る 変 異 A
Rが テ ス ト ス テ ロ ン 投 与 に よ っ て 著 明 に 増 加 し た 。 血 清 テ ス ト ス テ ロ ン 濃 度 は テ ス ト ス テ
ロ ン 投 与 に よ り 増 加 す る こ と が 確 認 さ れ た 。 ARの 核 内 移 行 が 主 に テ ス ト ス テ ロ ン の み に 依
存 し て い る (Stenoien et al., 1999, Simeoni et al., 2000) こ と を 考 え る と 、 テ ス ト ス
テ ロ ン が 雌 AR-97Qマ ウ ス に お い て 毒 性 を 示 す の は 、 変 異 ARの 核 内 移 行 を 促 進 す る た め と 考
えられる。
【0043】
以 上 の 各 実 施 例 に よ っ て 示 さ れ た よ う に 、 97CAGリ ピ ー ト を 有 す る ヒ ト AR遺 伝 子 が 導 入
さ れ た Tgマ ウ ス は 、 進 行 性 の 運 動 障 害 と 神 経 病 理 所 見 を 呈 し 、 こ れ ら の 所 見 は ヒ ト SBMAの
30
そ れ と 同 等 で あ っ た 。 ウ エ ス タ ン ブ ロ ッ ト で は 、 切 断 さ れ た 変 異 ARの 断 片 も 認 め ら れ た が
、 他 の 研 究 で 変 異 蛋 白 の 切 断 ( truncation) が SBMAを は じ め と す る ポ リ グ ル タ ミ ン 病 の 病
態 生 理 に お い て 重 要 な 役 割 を 果 た し て い る こ と が 報 告 さ れ て お り (Li et al., 1998b, Kob
ayashi et al., 1998, Wellington et al., 1998, Mende-Mueller et al. 2001)、 本 マ ウ
ス に お い て も こ う し た 変 異 ARの truncationが 病 態 に 関 わ っ て い る こ と が 予 想 さ れ る 。 1C2
免疫染色の電子顕微鏡による観察では、顆粒状凝集体と微細凝集体とがみられ、脊髄運動
ニューロンにおいて種々の段階の病理変化が観察された。電子顕微鏡下の顆粒状凝集はヒ
ト SBMAに お い て も 認 め ら れ る 重 要 な 所 見 で あ る (Li et al., 1998b)。 本 実 施 例 に お け る AR
-97Qマ ウ ス で は 、 神 経 原 性 変 化 は 筋 病 理 に お い て 明 ら か で あ り 、 神 経 細 胞 脱 落 は 明 ら か で
ないものの脊髄運動ニューロンやその軸索は著明な萎縮を呈した。こうした所見が示唆す
40
る も の は 、 脊 髄 運 動 ニ ュ ー ロ ン の 変 性 と い う よ り は む し ろ 神 経 機 能 障 害 こ そ が AR-97Qマ ウ
スにおける主たる病理所見であるということである。こうした病態は他のポリグルタミン
病 の マ ウ ス モ デ ル に お い て も 数 多 く 報 告 さ れ て い る (Zoghbi and Orr, 2000, Rubinsztein
, 2002)。 AR-97Qマ ウ ス に お け る 症 状 は 少 な く と も 21週 齢 ま で に は 出 現 し て い る が 、 AR-24
Qマ ウ ス で は 変 異 ARの 高 発 現 が み ら れ る に も 関 わ ら ず 、 こ の 時 点 で も 全 く 症 状 が 出 現 し な
か っ た 。 ま た 、 核 の び ま ん 性 染 色 や 核 内 封 入 体 は AR-97Qマ ウ ス で は 性 差 は 著 し い も の の 4
週 齢 か ら 認 め ら れ る の に 対 し 、 AR-24Qマ ウ ス で は 12週 齢 に な っ て も 認 め な か っ た 。 こ う し
た 所 見 は 、 AR-97Qマ ウ ス に お け る 症 状 や 病 理 所 見 が 、 ヒ ト ARの 過 剰 発 現 に よ る も の で は な
く、ポリグルタミン鎖の発現によるものであることを示している。さらに、これまで発表
さ れ た 全 長 ヒ ト ARを 導 入 し た SBMAの Tgで は 、 発 現 レ ベ ル は 十 分 で あ る に も 関 わ ら ず 症 状 が
50
(15)
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み ら れ な か っ た 。 こ れ は 、 CAG繰 り 返 し 数 が 、 症 状 を 出 現 さ せ る に は 十 分 で な か っ た た め
と 考 え ら れ て い る (Bingham et al, 1995, La Spada et al., 1998)。 つ ま り 、 AR-97Qマ ウ
ス は SBMAの 病 態 を 忠 実 に 再 現 し て お り 、 SBMAの み な ら ず ポ リ グ ル タ ミ ン 病 の 動 物 モ デ ル と
して極めて優れたものと考えらる。
【0044】
一 方 、 AR-97Qマ ウ ス の 症 状 、 病 理 所 見 お よ び 変 異 ARの 核 内 局 在 に は 著 し い 性 差 が あ り 、
去 勢 や Leuprorelin投 与 、 テ ス ト ス テ ロ ン 投 与 と い っ た 内 分 泌 学 的 介 入 に よ り 著 明 に 修 飾
さ れ た 。 ARの 転 写 は ア ン ド ロ ゲ ン に よ り 促 進 ( upregulate) さ れ る こ と が 知 ら れ て い る が
(Syms et al 1985, Kemppainen et al 1992, Zhou et al 1995)、 AR-97Qマ ウ ス で は RT-PC
Rに よ る 解 析 で は 導 入 遺 伝 子 の mRNAレ ベ ル の 発 現 に 性 差 は 認 め ら れ な か っ た 。 こ れ は 、 導
10
入 し た 変 異 ARが 、 内 在 性 の プ ロ モ ー タ ー で な く チ キ ン β ア ク チ ン プ ロ モ ー タ ー の 調 節 を 受
けていることが原因と考えられる。すなわち、テストステロン濃度が症状や病理所見の性
差 に 深 く 関 与 し て い る の は 、 ARの 転 写 を 変 化 さ せ て い る の で は な く 、 転 写 後 の 段 階 、 す な
わ ち 蛋 白 レ ベ ル で ARを 修 飾 す る こ と が 機 序 と し て 考 え ら れ る 。
SBMAと 異 な り 他 の ポ リ グ ル タ ミ ン 病 で は 原 因 蛋 白 の 特 異 的 リ ガ ン ド は 発 見 さ れ て い な い
が 、 上 記 の 実 施 例 に お け る Tgマ ウ ス の 去 勢 に よ る 劇 的 な 治 療 効 果 は 、 変 異 蛋 白 の 核 内 移 行
を抑制することでポリグルタミン病が治療され得ることを示唆している。
【0045】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。
特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこ
20
の発明に含まれる。
【0046】
本明細書における引用文献を以下に列挙する。
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30
048.
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JP 2006-131640 A 2006.5.25
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【0047】
以下、次の事項を開示する。
1 1 . 症 状 又 は 病 理 所 見 に つ い て の 以 下 の (1)∼ (9)の 特 徴 を 備 え る 非 ヒ ト 動 物 、
(1)進 行 性 筋 萎 縮 が 認 め ら れ る 、
(2)筋 力 低 下 が 認 め ら れ る 、
(3)抗 ポ リ グ ル タ ミ ン 抗 体 を 用 い た 免 疫 染 色 に よ っ て 核 の び ま ん 性 染 色 及 び 核 内 封 入 体
が認められる、
(4)抗 ア ン ド ロ ゲ ン 受 容 体 抗 体 を 用 い た 免 疫 染 色 に よ っ て 核 の び ま ん 性 染 色 及 び 核 内 封
入体が認められる、
(5)神 経 原 性 変 化 が 認 め ら れ る 、
20
(6)進 行 性 運 動 障 害 が 認 め ら れ る 、
(7)体 格 の 縮 小 が 認 め ら れ る 、
(8)寿 命 短 縮 が 認 め ら れ る 、 及 び
(9)活 動 低 下 が 認 め ら れ る 。
1 2 . 約 8∼ 9周 齢 で 運 動 障 害 が 発 症 す る 、 1 1 . に 記 載 の 非 ヒ ト 動 物 。
1 3 . 雌 で あ る 場 合 は 前 記 (1)∼ (9)が 認 め ら れ な い か 、 又 は 雄 で あ る 場 合 に 比 較 し て 軽
症ないし軽度である、11.又は12.記載の非ヒト動物。
14.前記非ヒト動物が齧歯目動物である、ことを特徴とする11.∼13.ずれか記
載の非ヒト動物。
15.前記非ヒト動物がマウスである、ことを特徴とする11.∼13.いずれか記載
30
の非ヒト動物。
【0048】
2 1 . 以 下 の ス テ ッ プ (i)を 含 む 、 球 脊 髄 性 筋 萎 縮 症 の 治 療 方 法 、
(i)テ ス ト ス テ ロ ン の 分 泌 を 抑 制 す る 作 用 を 有 す る 化 合 物 を 有 効 成 分 と し て 含 む 薬 剤 を
生体に投与するステップ。
22.前記化合物が、下垂体からの性腺刺激ホルモンの分泌を抑制する作用を有する、
21.に記載の治療方法。
23.前記化合物が、下垂体に作用して黄体形成ホルモン放出ホルモン受容体を減少さ
せる作用を有する、21.に記載の治療方法。
24.前記化合物が黄体形成ホルモン放出ホルモンのアナログである、21.に記載の
40
治療方法。
25.前記化合物がリュープロレリン又はその誘導体である、21.に記載の治療方法
。
【0049】
31.球脊髄性筋萎縮症治療剤を製造するための、テストステロンの分泌を抑制する作
用を有する化合物の使用。
32.球脊髄性筋萎縮症治療剤を製造するための、下垂体からの性腺刺激ホルモンの分
泌を抑制する作用を有する化合物の使用。
33.球脊髄性筋萎縮症治療剤を製造するための、下垂体に作用して黄体形成ホルモン
放出ホルモン受容体を減少させる作用を有する化合物の使用。
50
(21)
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34.球脊髄性筋萎縮症治療剤を製造するための、黄体形成ホルモン放出ホルモンのア
ナログの使用。
35.球脊髄性筋萎縮症治療剤を製造するための、リュープロレリン又はその誘導体の
使用。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本 発 明 の 非 ヒ ト 動 物 は 球 脊 髄 性 筋 萎 縮 症 ( SBMA) の 病 態 を 忠 実 に 再 現 し て お り 、 SBMAの
モ デ ル と し て 治 療 薬 の 開 発 、 SBMAの 発 症 メ カ ニ ズ ム の 解 明 な ど に 利 用 す る こ と が で き る 。
ま た 、 本 発 明 の 非 ヒ ト 動 物 は ポ リ グ ル タ ミ ン 病 に 共 通 す る 病 態 を 呈 す る こ と か ら 、 SBMAの
みならず広くポリグルタミンの治療薬の開発などにも利用され得る。
10
一方、本発明の治療薬は球脊髄性筋萎縮症の発症メカニズムに基づいて構成されたもの
であり、かつ球脊髄性筋萎縮症の病態を忠実に再現するモデル動物においてその効果が実
証されたものであるから、球脊髄性筋萎縮症の治療薬として極めて有効であると考えられ
る。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【 図 1 】 図 1 は 実 施 例 に お い て 使 用 し た DNAコ ン ス ト ラ ク ト の 模 式 的 構 造 、 Tgマ ウ ス の 症
状についての実験結果をまとめたグラフ、及び導入遺伝子の発現についての実験結果をま
と め た グ ラ フ を 示 し た 図 で あ る 。 Aは 導 入 用 DNAコ ン ス ト ラ ク ト の 構 造 を 模 式 的 に 示 す 。 DN
Aコ ン ス ト ラ ク ト は サ イ ト メ ガ ロ ウ イ ル ス エ ン ハ ン サ ー ( E) 、 チ キ ン β ア ク チ ン プ ロ モ ー
20
タ ー ( Pro) 、 繰 返 し 数 が 24又 は 97の CAGリ ピ ー ト を 有 す る ヒ ト AR遺 伝 子 、 お よ び ラ ビ ッ ト
β グ ロ ビ ン の ポ リ ア デ ニ ル 化 シ グ ナ ル 配 列 ( polyA) か ら な る 。 B、 C、 D、 及 び Eで は Tgマ
ウ ス の 症 状 に つ い て の 性 差 が 示 さ れ る 。 体 重 ( B、 #2-6) 、 rotarod task( C、 #7-8) 、 ca
ge activity( D、 #2-6) 、 累 積 生 存 曲 線 ( E、 #7-8) の い ず れ に お い て も 、 雄 ( ● 、 n=8)
は 優 位 に 雌 ( ○ 、 n=8) よ り も 重 篤 で あ っ た ( そ れ ぞ れ p=0.001, p=0.003, p=0.005, p=0.
001) 。 Fは AR-97Q、 AR-24Qお よ び 正 常 マ ウ ス ( 12週 齢 ) の 雄 ( M) と 雌 ( F) か ら 得 ら れ た
筋 の total homogenateを 用 い 、 ARに 対 す る 抗 体 ( N-20) で 行 っ た ウ エ ス タ ン ブ ロ ッ ト を 示
す 。 マ ウ ス 内 在 性 の ARは ほ と ん ど 検 出 さ れ な か っ た 。 正 常 マ ウ ス と 比 較 す る と 、 低 分 子 量
の バ ン ド の ほ と ん ど が 切 断 さ れ た 変 異 ARで あ る こ と が わ か る 。 24CAGリ ピ ー ト 及 び 97CAGリ
ピ ー ト を 有 す る ARを 導 入 し た Neuro2a細 胞 か ら 抽 出 し た 蛋 白 ( AR24及 び AR97) を 比 較 の た
30
め に 示 し て あ る 。 Gは AR-97Qマ ウ ス の 雄 ( M) と 雌 ( F) か ら 得 た 筋 を 核 分 画 ( N) と 細 胞 質
分 画 ( Cy) と に 分 け て ウ エ ス タ ン ブ ロ ッ ト を 行 っ た 結 果 を 示 す (#7-8、 14週 齢 )。 抗 体 は N20を 用 い た 。
【 図 2 】 図 2 は Tgマ ウ ス の 病 理 所 見 に つ い て ま と め た 図 で あ る 。 Aは AR-97Qマ ウ ス の 雄 雌
を 延 長 ポ リ グ ル タ ミ ン 鎖 に 対 す る 特 異 的 抗 体 ( 1C2) で 免 疫 染 色 し た 結 果 を 示 す (#7-8、 14
週 齢 )。 B、 C、 D、 及 び Eは 脊 髄 運 動 ニ ュ ー ロ ン の 1C2免 疫 染 色 の 電 子 顕 微 鏡 所 見 を 示 す (#46、 24週 齢 )。 光 学 顕 微 鏡 下 で 核 内 封 入 体 を 示 し た ニ ュ ー ロ ン で は 高 密 度 の 顆 粒 状 凝 集 体 を
認 め た ( B: 低 倍 率 、 C: 高 倍 率 ) 。 別 の ニ ュ ー ロ ン ( D、 矢 印 ) で は 、 光 学 顕 微 鏡 下 で は
核 の び ま ん 性 染 色 が み ら れ 、 電 顕 で は 微 細 凝 集 体 が 認 め ら れ た ( E) 。 雄 の AR-97Qマ ウ ス
の 筋 H.E.染 色 ( F) で は 、 群 集 萎 縮 と 小 角 化 線 維 が 明 ら か で あ っ た 。 Gは 雄 の AR-97Qマ ウ ス
40
および正常マウスの第5腰髄前根のトルイジンブルー染色および前根有髄線維径のヒスト
グ ラ ム を 示 す 。 雄 AR-97Qマ ウ ス (■ , n=3)で は 、 正 常 マ ウ ス (□ , n=3)に 比 べ 、 大 径 線 維 の
軸 索 萎 縮 が 認 め ら れ た (#7-8、 13週 齢 )。
【 図 3 】 図 3 は 雄 AR-97Qマ ウ ス の 症 状 に 対 す る 去 勢 の 効 果 を 示 す 図 で あ る 。 A、 B、 C、 及
び Dは 去 勢 マ ウ ス と 対 照 群 ( sham operation群 ) の 体 重 (A、 #7-8)、 rotarod task(B、 #7-8
)、 cage activity(C、 #7-8)お よ び 累 積 生 存 曲 線 (D、 #2-6)を 示 す 。 す べ て の 観 察 項 目 に お
い て 、 去 勢 AR-97Qマ ウ ス (● 、 n=6)お よ び 去 勢 し た 正 常 マ ウ ス (■ 、 n=2)と 、 対 照 群 (○ 、 n
=6)と の 差 は 有 意 で あ っ た (そ れ ぞ れ p=0.0001、 p< 0.0001、 p=0.006、 p=0.0006)。 去 勢 し
た AR-97Qマ ウ ス ( E、 上 ) の 体 格 は 正 常 で あ っ た が 、 対 照 群 ( E、 下 ) で は 著 し い 筋 萎 縮 が
認 め ら れ た (#2-6、 12週 齢 )。 Fは 12週 齢 の 去 勢 AR-97Qマ ウ ス ( C) お よ び 対 照 群 ( S) の 足
50
(22)
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跡 を 示 す (#2-6)。 前 脚 は 赤 、 後 脚 は 青 で 着 色 し て あ る 。
【 図 4 】 図 4 は 雄 AR-97Qマ ウ ス の 導 入 遺 伝 子 発 現 お よ び 病 理 所 見 に 対 す る 去 勢 の 効 果 を 示
す 図 で あ る 。 Aは 去 勢 AR-97Qマ ウ ス ( C) お よ び 対 照 群 ( S) の 脊 髄 お よ び 筋 の total homog
enateを 用 い た ウ エ ス タ ン ブ ロ ッ ト の 結 果 で あ る (#7-8、 13週 齢 )。 抗 体 は N-20を 使 用 し た
。 Bは 去 勢 AR-97Qマ ウ ス ( C) お よ び 対 照 群 ( S) の 筋 の 核 分 画 ( N) お よ び 細 胞 質 分 画 ( Cy
) の ウ エ ス タ ン ブ ロ ッ ト の 結 果 で あ る (#7-8、 13週 齢 )。 抗 体 は N-20を 使 用 し た 。 1C2を 用
い た 脊 髄 と 筋 の 免 疫 染 色 で み ら れ た 核 の び ま ん 性 染 色 や 核 内 封 入 体 は 、 去 勢 AR-97Qマ ウ ス
と 対 照 群 と の 間 で 著 し い 差 が 認 め ら れ た ( C) 。
【 図 5 】 図 5 は 雄 AR-97Qマ ウ ス の 症 状 に 対 す る Leuprorelinの 効 果 を 示 す 図 で あ る 。 A、 B
、 C、 及 び Dは Leuprorelin投 与 群 と 対 照 群 ( vehicle投 与 群 ) の 体 重 (A、 #7-8)、 rotarod t
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ask(B、 #7-8)、 cage activity(C、 #7-8)お よ び 累 積 生 存 曲 線 (D、 #7-8)を 示 す 。 す べ て の
観 察 項 目 に お い て 、 Leuprorelin投 与 群 (● 、 n=6)と 対 照 群 (○ 、 n=6)と の 差 は 有 意 で あ っ
た 。 Leuprorelin投 与 群 ( E、 上 ) の 体 格 は 正 常 で あ っ た が 、 対 照 群 ( E、 下 ) で は 著 し い
筋 萎 縮 が 認 め ら れ た (#4-6、 12週 齢 )。 Fは 12週 齢 の Leuprorelin投 与 群 ( L) お よ び 対 照 群
( V) の 足 跡 を 示 す (#4-6)。 前 脚 は 赤 、 後 脚 は 青 で 着 色 し て あ る 。
【 図 6 】 図 6 は 雌 AR-97Qマ ウ ス の 症 状 に 対 す る テ ス ト ス テ ロ ン の 効 果 を 示 す 図 で あ る 。 A
、 B、 C、 及 び Dは テ ス ト ス テ ロ ン 投 与 群 と 対 照 群 ( オ イ ル 投 与 群 ) の 体 重 (A、 #7-8)、 rota
rod task(B、 #7-8)、 cage activity(C、 #2-6)お よ び 累 積 生 存 曲 線 (D、 #7-8)を 示 す 。 す べ
て の 観 察 項 目 に お い て 、 テ ス ト ス テ ロ ン 投 与 群 (● 、 n=6)お よ び テ ス ト ス テ ロ ン を 投 与 し
た 正 常 マ ウ ス (■ 、 n=4)と 、 対 照 群 (○ 、 n=6)と の 差 は 有 意 で あ っ た (p< 0.0001)。 テ ス ト
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ス テ ロ ン 投 与 群 ( E、 上 ) で は 著 し い 筋 萎 縮 が 認 め ら れ た が 、 対 照 群 ( E、 下 ) の 体 格 は 正
常 で あ っ た (#2-6、 14週 齢 )。 Fは 14週 齢 の テ ス ト ス テ ロ ン 投 与 群 ( T) お よ び 対 照 群 ( O)
の 足 跡 を 示 す (#2-6)。 前 脚 は 赤 、 後 脚 は 青 で 着 色 し て あ る 。
【 図 7 】 図 7 は 雄 AR-97Qマ ウ ス の 導 入 遺 伝 子 発 現 お よ び 病 理 所 見 に 対 す る テ ス ト ス テ ロ ン
の 効 果 を 示 す 図 で あ る 。 Aは テ ス ト ス テ ロ ン 投 与 群 ( T) お よ び 対 照 群 ( O) の 脊 髄 お よ び
筋 の total homogenateを 用 い た ウ エ ス タ ン ブ ロ ッ ト の 結 果 で あ る (#2-6、 12週 齢 )。 抗 体 は
N-20を 使 用 し た 。 Bは テ ス ト ス テ ロ ン 投 与 群 ( T) お よ び 対 照 群 ( O) の 筋 の 核 分 画 ( N) お
よ び 細 胞 質 分 画 ( Cy) の ウ エ ス タ ン ブ ロ ッ ト の 結 果 で あ る (#2-6、 12週 齢 )。 抗 体 は N-20を
使 用 し た 。 1C2を 用 い た 脊 髄 と 筋 の 免 疫 染 色 で み ら れ た 核 の び ま ん 性 染 色 や 核 内 封 入 体 は
、 テ ス ト ス テ ロ ン 投 与 群 と 対 照 群 と の 間 で 著 し い 差 が 認 め ら れ た ( C) 。
【 図 8 】 図 8 は 実 施 例 で 作 製 し た Tgマ ウ ス の 表 現 型 を ま と め た 表 で あ る 。 各 デ ー タ は 雄 /
雌で表示した。表中の−は検出されず、+は軽度のびまん性核染色及び核内封入体を検出
、 + + は 高 度 の び ま ん 性 核 染 色 及 び 核 内 封 入 体 を 検 出 、 及 び NDは デ ー タ な し 、 を そ れ ぞ れ
表す。
【 図 9 】 図 9 は 1C2抗 体 を 用 い た 実 験 結 果 を ま と め た 表 で あ る 。 表 中 の − は 検 出 さ れ ず 、
+は軽度の検出、++は中等度の検出、+++は高度の検出、をそれぞれ表す。所見が系
統 に よ っ て 異 な る 場 合 は 「 ∼ 」 に よ り 程 度 の 範 囲 を 示 し た 。 マ ウ ス 3系 統 、 #2-6、 #4-6、
及 び #7-8は そ れ ぞ れ 12、 18、 及 び 15周 齢 で 病 理 解 析 を 行 っ た 。
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(23)
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
JP 2006-131640 A 2006.5.25
(24)
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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(25)
【図9】
【配列表】
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(72)発明者 足立 弘明
愛知県名古屋市守山区小幡北山2761−1276
Fターム(参考) 4B024 AA01 AA11 AA20 BA63 CA02 CA20 DA02 EA04 FA02 FA06
GA12 HA09 HA11 HA20
4C084 AA02 AA03 AA17 BA44 DB09 NA14 ZA012 ZA422 ZA752 ZA812
ZA892 ZA942 ZC022 ZC332 ZC352
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