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1.報告書本編 (pdf:6.777MB)
太平洋沿岸に係る津波浸水予測図作成業務
報告書
平成 24 年6月
北海道総務部危機対策局危機対策課
目
次
1. 業務概要 .................................................................... 1
1.1 業務内容 ................................................................... 1
1.2 対象範囲 ................................................................... 3
2. 地形モデル .................................................................. 4
2.1 計算メッシュ配置 ........................................................... 4
3. 波源モデルの設定 ........................................................... 13
4. 津波シミュレーションの実施 ................................................. 16
4.1 シミュレーション手法 ...................................................... 16
4.2 シミュレーションの条件 .................................................... 25
4.3 構造物条件 ................................................................ 26
4.4 想定波源の鉛直地盤変動量分布 .............................................. 27
4.5 数値計算結果 .............................................................. 27
4.5 数値計算結果 .............................................................. 28
5. 津波浸水予測図及びCG(動画)の作成 ....................................... 45
5.1 津波浸水予測図 ............................................................ 45
5.2 津波伝播CG .............................................................. 55
6. GISデータ ............................................................... 57
巻末資料1
津波水位変動グラフ
巻末資料2
テキストデータ(津波シミュレーション用データ)取り扱い説明書
巻末資料3
GISデータビューワのインストール説明書
i
1.業務概要
1.1 業務内容
(1)業務目的
道は、北海道防災会議地震火山対策部会地震専門委員会に想定地震見直しのため設置した
「北海道に津波被害をもたらす想定地震の再検討ワーキンググループ(以下ワーキンググル
ープ)」の検討を基に、太平洋沿岸について過去の津波堆積物痕により将来発生が予想され
る想定地震の津波シミュレーション等を実施したが、地震専門委員会において精度を上げ再
検討する必要があるとされたことから実施するものである。
作成された津波浸水予測図は、関係市町村に提供され市町村の津波ハザードマップや津波
避難計画作成のほか、今後の津波防災対策の基礎資料とするものである。
(2)業務概要
道では、平成 23 年度において、北海道防災会議地震火山対策部会地震専門委員会に設置
されたワーキンググループの指導のもと津波波源モデルを設定し、整備した地形データ等で
津波シミュレーション等を実施したところであるが、ワーキンググループで精度を上げた津
波波源モデルの想定により、改めて津波シミュレーションを実施し、津波浸水予測図を作成
する。表 1.1-1 に「北海道に津波被害をもたらす想定地震の再検討ワーキンググループ」の
メンバーを示す。
表 1.1-1 北海道に津波被害をもたらす想定地震の再検討ワーキンググループメンバー
所属
職名
氏名
北海道大学
名誉教授
笠原
稔
北海道大学大学院理学研究院
地震火山研究観測センター長(教授)
谷岡
勇市郎
北海道大学
名誉教授
平川
一臣
北海道大学大学院理学研究院
准教授
高橋
浩晃
札幌管区気象台
技術部地震火山課
地震情報官
斉藤
祥司
1
(3)実施内容
本業務の実施内容は表 1.1-2 に示すとおりである。
表 1.1-2 実施内容
項
目
数量
1.業務の実施方針等
1式
2.地形モデル
1式
3.波源モデルの設定
1式
4.津波シミュレーションの実施
1式
5.津波浸水予測図の作成
6 振興局
6 図面
38 市町村
120 図面
43 地区
67 図面
振興局別図
市町村別図
詳細地区別
6.成果品作成
1式
7.その他
1式
2
1.2 対象範囲
図 1.2-1 に業務対象範囲を示す。
業務対象範囲は、津波予報区の北海道太平洋沿岸「東部」
・
「中部」
・
「西部」地区が対象であ
る。対象振興局(市町村)は以下の通りである。
○根 室 振 興 局(羅臼町・標津町・別海町・根室市)
○釧 路 総 合 振 興 局(浜中町・厚岸町・釧路市・釧路町・白糠町)
○十勝総合振興局(浦幌町・豊頃町・大樹町・広尾町)
○日 高 振 興 局(えりも町・様似町・浦河町・新ひだか町・新冠町・日高町)
○胆振総合振興局(むかわ町・厚真町・苫小牧市・白老町・登別市・室蘭市・伊達市・
洞爺湖町・豊浦町)
○渡島総合振興局(長万部町・八雲町・森町・鹿部町・函館市・北斗市・木古内町・
知内町・福島町・松前町)
根室振興局
釧路総合振興局
北海道太平洋沿岸
十勝総合振興局
胆振総合振興局
日高振興局
渡島
総合振興局
北海道太平洋沿岸
北海道太平洋沿岸
西部
図 1.2-1 業務対象範囲
3
中部
東部
2.地形モデル
津波シミュレーション用データは、地形データ、構造物データ、粗度データの 3 つのデータ
で構成される。これら 3 つの情報をメッシュ上に近似したものが津波シミュレーション用の地
形モデルとなる。本検討に用いた地形モデルは、平成 23 年度に実施した調査業務で作成した
ものを活用した。
2.1 計算メッシュ配置
シミュレーションに用いるメッシュ配置を図 2.1-1~図 2.1-6 に示す。メッシュサイズ(格
子間隔)は、沿岸域や陸域で精度よく計算できるように、沖合から対象沿岸域へと順次メッシ
ュサイズが小さくなるように設定した。メッシュサイズの分類は、2700m、900m、300m、100
m、50m、10mの 6 種類である。なお、座標系は、以下に示す平面直角座標系で作成した。
■世界測地系 平面直角座標系第 13 系
根室振興局管内
釧路総合振興局管内
十勝総合振興局管内
■世界測地系 平面直角座標系第 12 系
日高振興局管内
胆振総合振興局管内(室蘭市以東)
■世界測地系 平面直角座標系第 11 系
胆振総合振興局管内(伊達市、洞爺湖町、豊浦町)
渡島総合振興局管内
活用したデータ例を図 2.1-7 に地形データ例、図 2.1-8 に構造物データ例、図 2.1-9 に土地
利用区分に基づく粗度データ例を示す。
4
2700mメッシュ領域
900mメッシュ領域
300mメッシュ領域
100mメッシュ領域
50mメッシュ領域
10mメッシュ領域
図 2.1-1 メッシュ配置(根室振興局)
5
2700mメッシュ領域
900mメッシュ領域
300mメッシュ領域
100mメッシュ領域
50mメッシュ領域
10mメッシュ領域
図 2.1-2 メッシュ配置(釧路総合振興局)
6
2700mメッシュ領域
900mメッシュ領域
300mメッシュ領域
100mメッシュ領域
50mメッシュ領域
10mメッシュ領域
図 2.1-3 メッシュ配置(十勝総合振興局)
7
2700mメッシュ領域
900mメッシュ領域
300mメッシュ領域
100mメッシュ領域
50mメッシュ領域
10mメッシュ領域
図 2.1-4 メッシュ配置(日高振興局)
8
2700mメッシュ領域
900mメッシュ領域
300mメッシュ領域
100mメッシュ領域
50mメッシュ領域
10mメッシュ領域
図 2.1-5 メッシュ配置(胆振総合振興局)
9
2700mメッシュ領域
900mメッシュ領域
300mメッシュ領域
100mメッシュ領域
50mメッシュ領域
10mメッシュ領域
図 2.1-6 メッシュ配置(胆振・渡島総合振興局)
10
50mメッシュ: 白老町~室蘭市沿岸
10mメッシュ: 白老町
10mメッシュ: 登別市
10mメッシュ: 室蘭市
図 2.1-7 地形データ例
11
図 2.1-8 構造物データ例
図 2.1-9 土地利用区分に基づく粗度データ例
12
3.波源モデルの設定
過去の津波の堆積物による痕跡資料とこの痕跡から予測される浸水範囲(ワーキンググルー
プ提供)を網羅する浸水範囲となるように、ワーキンググループで検証された波源モデル(以
下、想定波源)を初期条件として用いた。
津波浸水シミュレーションを実施する上での初期条件(初期水位)は、地震の断層モデルに
よって計算される海底基盤の鉛直変位分布(隆起・沈降)を海面に与える方法を用いる。断層
モデルは以下の8つのパラメータでモデル化される。波源断層モデルの模式図を図 3.1-1 に示
す。
Ⅰ:基準点位置:N, E
Ⅱ:断層面上縁深さ:d
Ⅲ:断層長さ:L
Ⅳ:断層幅:W
Ⅴ:すべり量:u
Ⅵ:走向:θ
Ⅶ:傾斜角:δ
Ⅷ:すべり角:λ
図 3.1-1 断層モデルの模式図
図 3.1-2 にワーキンググループで検証された想定波源モデル結果を、表 3.1-1 に検証・設定
された断層パラメータを、図 3.1-3 に検討段階での沿岸の津波高を示す。検証された波源モデ
ルについては、平川委員提供の「津波堆積物が確認された箇所」および「津波堆積物から想定
される浸水範囲」を考慮して、「北海道に津波被害をもたらす想定地震の再検討ワーキンググ
ループ」により設定したものである。
13
図 3.1-2 検討の波源モデル
14
表 3.1-1 想定地震のパラメータ
ID
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
緯度
(°)
42.4135
42.0703
41.7226
41.3704
41.0140
40.5693
42.9421
42.5962
42.2457
41.8907
41.4608
41.0132
経度
(°)
147.5584
146.8476
146.1445
145.4488
144.7606
144.1726
147.0946
146.3802
145.6735
144.9746
144.1716
143.5836
走向角 傾斜角 すべり角 断層長さ 断層幅 すべり量
(°)
(°)
(°)
(m)
(m)
(m)
235
10
90
70000
70000
35
235
10
90
70000
70000
35
235
10
90
70000
70000
35
235
10
90
70000
70000
35
225
10
90
70000
70000
35
225
10
90
70000
70000
35
235
20
90
70000
70000
30
235
20
90
70000
70000
30
235
20
90
70000
70000
30
235
20
90
70000
70000
30
225
20
90
70000
70000
30
225
20
90
70000
70000
30
深さ (m)
5000
5000
5000
5000
5000
5000
17000
17000
17000
17000
17000
17000
Mw
Mw
(合計)
8.4
8.4
8.4
8.4
8.4
8.4
8.4
8.4
8.4
8.4
8.4
8.4
9.1
40
:500 年間隔地震
35
沿岸津波水位(m)
30
25
:本検討結果
:WG 提供津波堆積物
:500 年間隔地震
検討使用堆積物
20
15
10
5
落石湾
花咲湾
琵琶瀬湾
15
霧多布
図 3.1-3 沿岸の津波高(検討段階)
厚岸湖
釧路港
厚内
音別川
十勝川
生花苗沼
豊似川
十勝港
音調律
目黒
えりも岬
浦河港
厚別川
静内
沙流川
鵡川
苫小牧港
白老港
室蘭港
有珠湾
遊楽部川
0
4.津波シミュレーションの実施
4.1 シミュレーション手法
4.1.1 基礎方程式
水の運動を支配する理論は、連続の式、および運動方程式により記述される。
津波の挙動は、初期条件として、海面の変位分布を与え、2つの方程式を時間の
経過にしたがい解くことにより数値的に表現することができる。
本検討における津波シミュレーションでは、非線形長波方程式を用いており、
以 下 に 説明する。
水深を h 、波長を L 、波高を H とした時、h / L および H
/ L がともに小さいときに用いら
れる近似が長波理論である。この近似では、圧力は静水圧分布となり、水平方向の流速は鉛直
線に沿って一様と仮定される(図 4.1-1 参照)。このような近似の下では、長波の運動は次の
ように表される。
連続の式:
 M N


0
t x y
運動方程式:
M  M 2
 MN
 gn 2
 (
) (
)  gD
 7/3 M M 2  N 2  0
t x D
y D
x D
N  MN
 N2
 gn 2
 (
) (
)  gD
 7/3 N M 2  N 2  0
 t x D
y D
y D
ここで、
x , y :静水面に取った空間座標
t :時間座標
 :水位変動
h:静水深
D  h   で表される全水深
g :重力加速度
M , N :それぞれ( x , y )方向の線流量
n :マニングの粗度係数
16
連 続 の 式 は 、運 動 方 程 式 か ら 得 ら れ る 流 量 か ら 、津 波 の 水 位 を 求 め る 式 で あ り 、
運動方程式は連続の式から得られる水位から、流量を求める式である。交互に計
算を繰り返していくことで津波の伝播する状況を、時間を追って把握することが
で き る 。 基 礎 方 程 式 中 の 記 号 の 説 明 を図 4.1-1 に示す。
流速
u
水位
全水深

D
線流量(流量フラックス)
M  u(h  )  uD
h
静水深
図 4.1-1 基礎式の記号について
4.1.2 差分スキーム
空間差分にはスタッガード格子を用い、時間差分にはリープ・フロッグ法を用いる。リー
プ・フロッグ法の計算格子では、図 4.1-2 に示すように水位ηと水平流量M,Nの計算点が
時間的にずれている。空間的には、水位はメッシュの中心で、流量はメッシュ辺の中心で計
算する。以下、( x ,
y , t )に対応する離散化量を添字( i , j , k )で表す。
k1
j+1
j
N i , j 212
k1
●
M i  122, j
 ik, j
y
Δx
k1
M i  122, j
k+1
k1
●
 ik, j 1
M i  122, j
t
k1
M i  122, j
Δt
k1
N i , j 21 2
j-1
Δx
i-1
i
k
i+1
●
●
 ik1, j
 ik, j
i-1
x
i
●
 ik1, j
i+1
x
図 4.1-2 スタッガード格子(左)とリープ・フロッグ法の計算点配置(右)(後藤・柴木,1993)
17
4.1.3 境界条件
(1)沖側境界
境界に仮想的な完全壁面を設定して、そこで発生する重複波の半分が透過波成分と等しい
という原理(日野ほか,1988)を利用し、沖側境界を自由透過させる。
(2)遡上境界
陸上への津波の遡上に関しては、非線形長波理論式を用いる場合のみ適用する。図
4.1-3 に示すように、波先端部において陸側メッシュの地盤高hより海側メッシュの水位
ηが高い場合の、その差を実水深Dとして流量計算を実施する。
Δx
波先端
ηi
η i+1
η i+2
=-hi
i-1
i
i+1
i+2
D i-1=0
D i=0
D i+1>0
D i+2>0
M i≠0
M i+1≠0
M i-1=0
図 4.1-3 遡上境界条件(後藤・柴木,1993)
(3)越流境界
計算領域内の防波堤、堤防等において、水位がその天端高を越えた場合には、次の本
間公式を用いて単位幅当たりの越流量Qを計算する。
Q  0.35H1 2 gH1
H2 
Q  0.91H 2 2 g ( H1  H 2 )
H2 
2
H1
3
(完全越流)
2
H 1 (潜り越流)
3
ここでH 1とH 2は天端高を基準とした堤の前後の水の厚さで、その概要を図 4.1-4 に示
す。
18
H1
Hc
H2
完全越流
H1
H2
Hc
潜り越流
図 4.1-4 越流の模式図(後藤・柴木,1993)
3)
その他の条件
a)
計算安定条件
全計算領域を一様の時間間隔Δtで計算した。ただし、以下に示す差分スキームの安
定条件(C.F.L条件)を満たすようにΔtを設定する。
t  x / 2 ghmax
ここで、
Δx:各計算領域のメッシュサイズ
hmax:各計算領域の最大水深
b) マニングの粗度係数
海底摩擦損失は、一般的にマニングの粗度係数nで与えられる。
19
4.1.4 津波の伝播特性
(1)津波の伝播速度
津波は水深に比べて波長が長いことから、長波と近似できる。この時、津波の伝播速度は水
深の平方根に比例し、下記のように表される。
C=Cg= gh
C :津波の波速(m/s)
Cg:津波のエネルギー伝播速度(m/s)
g
:重力加速度(=9.8m/s2)
h :水深(m)
(2)津波のエネルギーの指向性
波の指向性とは、波源域から伝播する津波エネルギーが、波源の形状や海底地形の影響で特
定の方向に集中し、波高が大きくなることをいう。津波初期波形の長短両軸の長さが等しい時
には、全方向にわたり等分されるように伝播していく。長軸の長さが長くなるほど、短軸方向
に出て行く伝播成分が増大し、長軸方向の伝播成分が減少する(図 4.1-5)。大きな津波をとも
なう地震は、プレート境界の海溝沿いに発生し、これに沿った楕円形に近い波源域をもってい
ることが多い。日本の沿岸近くで発生する津波は、沿岸に平行である場合が多く、これが津波
の波源に面した沿岸域で災害を大きくしている理由の一つである。上記のような理由から、遠
く離れたところでも、波源域付近の海岸線に直交する方向で波高が高くなりやすい。1960
年のチリ津波で日本やハワイで津波が大きかったのは、指向性の効果が大きかったとみられて
いる。
図 4.1-5 津波エネルギーの指向性
20
(3)津波の屈折
津波は波源から全方向に向かって伝播していくが、海底地形の変化にしたがって、その方向
も変化していく。津波は図 4.1-6 に示すように、等深線と直交する方向に伝わろうとする。こ
れは風波が海底地形の影響を受けて屈折する現象と同じである。
図 4.1-6 津波の屈折性
(4)津波の増幅
津波は、(1)で述べたように波速とエネルギー伝播速度が等しく、水深で速度が決まる。簡
単に説明すると水深を 10 倍しその平方根をとれば波速となる。水深 4000mの地点での波速は、
200m/s となる。津波は海岸に近づくにつれ、次第にその波高が増すようになる。津波の増幅の
要因は、大きくは水深の変化と湾の形による影響の 2 つで、その仕組みの大半は津波の伝播速
度に関わり、下記のように説明できる。
A.浅水効果(水深の岸沖方向の変化に伴う増幅)
一般に津波の波長は数十km(周期 5 分)以上と長い。先行する津波の水深が後続の津波の
水深より浅いとき、津波の先行部よりも後続部の方が伝播速度が大きい。そのため、後続部が
先行部に追いつく形になり、津波の波長が短くなってその分波高が増す(図 4.1-7)。
水深 1000mの外洋から水深 10mのところに津波が来ると波高は約 3 倍になり、また、ほぼ
水深の 1/4 乗に反比例して波高が大きくなることが知られている。
図 4.1-7 浅水効果
21
B.屈折効果・集中効果(波峰方向の水深の変化に伴う増幅)
水深が浅くなると伝播速度が遅くなる津波は、浅い方へと回り込む性質がある。図 4.1-8 に
示すように、津波の左端が浅い水深にさしかかり、右端は深い水深にいると、右端の方が速く
進む。したがって、進行方向が曲がってゆくことになる。浅い方へと津波が集まり、そこでは
波高が高くなる。このため、岬などは津波を集めやすいため注意を要する。
C.集中効果(湾における増幅)
集中効果は、V字湾などで生じる浅水・屈折・反射効果である。
図 4.1-9 に示すように、湾口が広く、湾奥が狭い地形では湾内に入った津波は湾奥に進行す
るに従って波のエネルギーが集中し波高が増幅する。ほぼ幅の 1/2 乗、水深の 1/4 乗に反比例
して波高が大きくなる。
図 4.1-8 屈折による波の進行
図 4.1-9 集中効果
海岸地形によって津波の増幅の仕方が異なる。海岸線の形は一般に袋型、直線、U字型、V
字型に分類でき、津波の増幅率の違いがある。
(図 4.1-10)
大
増幅率
図 4.1-10 地形の違いによる津波波高の増幅率の違い
22
小
D.共振効果
湾には固有振動があり津波の波長と湾の固有振動が同調(共鳴効果)して、湾奥で津波が高
くなることが知られている。
水は高いところから低いところへ流れる。この原理を利用して共鳴効果を説明すると、下記
のようになる。
1.湾口に津波が押し寄せるとそれまで静かだった水面に動きが生ずる。
2.湾内の海面が水平を保つために、波は低いところへ流れる。
3.しかし、水の流れには勢いがついているため止まらない。
4.そのうち湾奥で波高が高くなり流れが変わる。湾口では次の波が進入してくる。
このようにして、波が振動を始めることを固有振動という。
具体的には、湾内へ 1/4 波長入った津波の振動が固有振動である。固有振動は衝撃を与えな
ければ収まるが、衝撃が加えられると揺れが大きくなる。これが共鳴である。津波の場合、外
から波が3波も入れば共鳴が完成する。また、短い湾での固有周期は短く、長い湾では反対の
ことが一般的にいえる。
地震発生直後の津波は、短い周期と長い周期、いろいろの周期成分の波からなり、長周期成
分の波は短周期成分より持続する。したがって、近海で起こった津波は短い湾で、遠方で起こ
った津波は長い湾で被害を与えやすい。
図 4.1-11 共振効果の原理
23
E.波形曲率(ソリトン分裂)
津波は浅いところに来ると、様々な形をとる。波先端の水深は静水深と同じであるが、波峰
での水深は、「静水深+波による水位上昇量」となる。そのため波の峰部分は早く進んで先端
に追いつき、前面は切り立つ。こうして先端を境に、水位に段ができた波を断波と呼ぶ。段波
には砕波段波と波状段波がある。
波状段波では、背後の波面の追いつきがやや遅くなり、水粒子の運動も水平方向だけでなく、
鉛直方向の成分を持つようになる。この段波の肩では、水粒子は曲線運動をし、遠心力によっ
て波面は上へ持ち上げられる。波形の曲率が大きい程、この効果は大きくなり、波高は高くな
る。このような現象のことを波形曲率効果と呼ぶ(図 4.1-12)。そして、波形曲率効果により
波状段波が発達し、波先端部に波速の違いができ個々の波に分裂していくことを、ソリトン(孤
立波)分裂という。波状段波の周期が 10 秒程度で成長しきった状態で、津波水位本体の 2 倍程
度の波高になる。以上のような現象を記述する方程式(非線形分散波理論)はあるが、砕波の
取り扱いなど研究が進められているのが現状である。
実際に、1983 年日本海中部地震や 2003 年十勝沖地震での十勝川,2011 年東北地方沿岸太平
洋沖地震での名取川河口沿岸でソリトン分裂波が観測されている。
図 4.1-12 波状段波による曲率効果
24
4.2 シミュレーションの条件
シミュレーションの条件を表 4.2-1 に示す。
表 4.2-1 予測計算の条件
項
目
内
容
基礎式と解法
波源から沿岸の伝播計算,陸上への遡上計算:
最も沖合の領域においては線形長波方程式を、それ以外の領域においては非
線形長波方程式を基礎式とし、Leap-Frog 差分法により計算
構造物での越流計算:
本間公式により計算
計算格子間隔
波源から沿岸:2,700m、900m、300m、100m、50m
遡上域:50m、10m
大格子と小格子
の接続方法
計算時間
計算時間間隔
地盤変位量計算
潮位条件
Manning の
粗度係数 n
空間:波源から遡上域までの計算領域を接続し、同時に津波遡上シミュレ
ーションを実施
時間:計算時間間隔はすべての計算領域で一定
地震発生から 3 時間以上で最大 6 時間
0.1 秒(差分スキームの安定条件を満足するよう設定)
Okada の方法による
朔望平均満潮位
計算領域によって、0.7m(羅臼町)または 0.6m(標津町~日高町北斗
市以東)、木古内町以西 0.5mの値を用いた
小谷ほか(1998)を参考に、土地利用により下記のとおり設定した
海域・河川域:0.025(s/m1/3)
田畑域(荒地含む):0.020(s/m1/3)
森林域(果樹園・防潮林含む):0.030(s/m1/3)
低密度居住域(建物密度 20%未満の人工地)
:0.040(s/m1/3)
中密度居住域(建物密度 20~50%の人工地)
:0.060(s/m1/3)
高密度居住域(建物密度 50%以上の人工地)
:0.080(s/m1/3)
対象地形
現在の地形に、想定波源(断層モデル)により計算される地盤変位量を考
慮した地形
河川流量
鵡川、十勝川(詳細地区内の一級河川)について平水流量を考慮
構造物の
効果の条件
効果がある場合と効果がない場合の2ケースを実施
25
4.3 構造物条件
海岸、河川の構造物の効果については、表 4.3-1 に示すように「効果がある場合」と「効
果がない場合」の2ケースを想定した。
表 4.3-1 構造物の想定ケース
想定ケース
内
容
防波堤、海岸堤防、防潮堤、水門、河川堤防などの構造物が、すべて有効
に機能するケース
構造物の効果が
ある場合
○地震や津波による構造物の被害がなく、かつ、水門・陸閘などが津波
到達前にすべて閉鎖できるという非常に理想的なケースと考えられ
る。
注)上記の構造物は、津波による外力(波力)を想定して築造されたもの
ではないため、実際には下記の「構造物の効果がない場合」の内容説
明のように、地震動による破壊・機能低下、液状化による沈下、津波
による破壊等が発生する可能性がある。
防波堤、海岸堤防、防潮堤、水門、河川堤防などの構造物の機能が失われ
たケース
構造物の効果が
ない場合
○地震や津波により構造物が破壊されたり、水門・陸閘などが閉鎖でき
なかった場合など、最悪のケースと考えられる。どの構造物が破壊さ
れたり、閉鎖できないかは想定が困難なので、すべての構造物の効果
を考慮しない。
26
4.4 想定波源の鉛直地盤変動量分布
3 章で設定した断層パラメータを用い Okada の方法により計算された想定地震による垂直
地盤変動量(海域では津波の初期水位分布、陸部では地盤の隆起・沈降量(ここでは沈降量
のみ)に相当する)を図 4.4-1 に示す。図では緑系・黄赤系色が隆起、青色が沈降を示して
いる。この変位量は、海域では地震直後の海水面の凹凸と考え、津波の初期水位の分布とな
る。津波は地盤変動に伴って押し上げられたり、引き下げられたりした海水が平準化する過
程で伝播するものであり、重要な情報となる。
B
A
地盤変動量(
m)
海岸線
A
水深(
m)
4.5
B
海底地形
距離(m)
図 4.4-1 垂直地盤変動量分布
27
数値計算結果
想定波源による海岸線付近の津波最大水位(最小 10m メッシュ)とワーキンググループ提
供の津波堆積物痕跡との比較検討結果を整理した。図 4.5-1 に太平洋沿岸東部・中部、図
4.5-2 に太平洋沿岸西部(津波堆積物痕跡がある森町以東)について示す。想定波源による
海岸線付近の津波最大水位は、ワーキンググループ提供の津波堆積物痕跡をすべて網羅・包
含する結果となっていることがわかる。また、振興局別に沿岸の津波最大水位および浸水範
囲を図 4.5-3~9 に示す。
○根室振興局
知床半島では、大きな浸水範囲はない。標津町の野付半島より浸水範囲が大きくなり、風
連湖周辺で浸水範囲は大きく広がっている。
根室半島の太平洋側では、沿岸域で最大水位が 20mを超える範囲が広がり、局所的には最
大で 30mを超える箇所も見られ大きな浸水範囲となっている。
○釧路総合振興局
沿岸の低平部を中心に広大な浸水範囲となっている。釧路市街地はそのほとんどが浸水範
囲内となり、湿原にまで浸水範囲が広がっている。ほぼ全域で沿岸の最大水位が 20m~40m
となり、厚岸湾内も浸水範囲が広がり、厚岸湖のまわりまで浸水範囲が広がっている。地形
的特徴として、釧路港周辺沿岸域や厚岸湾内においては、周辺に比べ比較的沿岸の津波水位
は相対的に低いものの 10m程度以上の津波高となっている。
○十勝総合振興局
沿岸での最大水位がほぼ全域で 20m以上となり、十勝平野の沿岸部の低平部に広大な浸水
範囲が広がり、十勝川河口の平野部では、沿岸から 10km まで浸水範囲が広がる。
○日高振興局
津波は岬などの地形に集中する特性があるため、えりも岬東側では、沿岸の最大水位が 30
m以上、百人浜では全域が浸水範囲となる。えりも岬西側においても、えりも町内および様
似町で沿岸の最大水位が 20~30m程度となる。他の地域でもほぼ全域で最大水位が 10m以
上となり、低平部において沿岸から数 km まで浸水範囲が広がる。
○胆振総合振興局
鵡川から白老町まで、低平部が一連の連続した浸水範囲となり、苫小牧市では浸水範囲が
沿岸から 5km以上まで広がっている。沿岸の最大水位はほぼ 6~10mとなっている。室蘭
港もそのほとんどが浸水する結果となった。
○渡島総合振興局
噴火湾沿岸の最大水位はおおよそ 5~10m程度となり、噴火湾奥の長万部町や八雲町の沿
岸まで浸水範囲が広がっている。鹿部町から北斗市では沿岸の最大水位が 10mを越え、函館
市から北斗市の市街地も一連の浸水範囲として大きく広がっている。
28
図 4.5-1 想定波源による沿岸の津波最大水位および津波堆積物痕跡比較(東部・中部)
29
図 4.5-2 想定波源による沿岸の津波最大水位および津波堆積物痕跡比較(西部)
30
図 4.5-3 想定波源による沿岸の津波最大水位および浸水範囲(根室振興局)
31
図 4.5-4 想定波源による沿岸の津波最大水位および浸水範囲(釧路総合振興局)
32
図 4.5-5 想定波源による沿岸の津波最大水位および浸水範囲(十勝総合振興局)
33
図 4.5-6 想定波源による沿岸の津波最大水位および浸水範囲(日高振興局)
34
図 4.5-7 想定波源による沿岸の津波最大水位および浸水範囲(胆振総合振興局)
35
図 4.5-8 想定波源による沿岸の津波最大水位および浸水範囲(胆振・渡島総合振興局)
36
図 4.5-9 想定波源による沿岸の津波最大水位および浸水範囲(渡島総合振興局)
37
想定波源による代表地点周辺における沿岸の津波最大水位および最大遡上高、水深 10m地点
で予測される津波影響開始時間・第1波到達時間について振興局別に整理した。表 4.5-1~6
に示す。
沿岸津波水位(m)
【最大遡上高】
代表地点周辺において津波が到達する最高の標高(陸域における最高到達標高)
【沿岸津波水位】
海岸線付近における T.P 基準の津波の最大高さ
【影響開始時間】
地震発生から海岸・海中の人命に影響が出る恐れのある津波による水位変動(初期水位±20cm)
が生じるまでの時間
【第1波到達時間】
地震発生から津波第1波のピークが海岸に到達するまでの時間(津波は繰り返し来襲するため
第1波が最大となるわけではないので注意が必要。)
38
表 4.5-1 根室振興局
代表地点周辺における沿岸最大水位・最大遡上高および予測される津波到達時間
影響
開始時間
(分)
±20cm
第1波
到達時間
(分)
沿岸
最大
水位
(m)
最大
遡上高
(m)
相泊
13
17
1.1
1.3
岬町
12
20
1.1
1.3
船見町
14
21
1.3
1.7
松法
14
22
1.3
1.7
峯浜町
21
31
2.0
2.8
薫別
28
40
2.8
3.5
忠類
31
50
2.4
3.5
標津
32
58
2.6
3.3
野付
54
81
2.7
3.5
尾岱沼
20
90
3.2
4.0
床丹
17
73
4.0
4.6
本別海
24
72
3.6
4.3
走古丹
25
70
3.2
3.6
春国岱
10
69
3.2
3.7
温根沼
7
65
3.1
4.3
穂香
5
59
3.2
4.3
岬町
4
55
3.2
3.8
弁天島
5
52
2.8
3.9
一番川
4
49
3.2
4.7
牧の内
4
49
3.4
4.1
ノッカマップ
4
41
4.4
5.6
豊里
4
38
4.8
5.4
トーサムポロ岬
5
29
5.2
10.5
温根元
5
27
7.2
11.1
納沙布
7
24
14.2
17.6
珸瑶瑁
4
24
16.7
21.7
歯舞
4
21
15.5
19.4
双沖
3
24
19.7
22.6
桂木
4
25
22.5
31.8
花咲
5
32
20.3
28.5
長節
6
25
22.5
33.7
落石
5
21
20.1
25.8
フレシマ海岸(天狗岩)
6
25
19.4
29.1
初田牛川河口
4
27
24.9
31.6
市町村名
羅臼町
標津町
別海町
根室市
地名
39
10
最大遡上高(m)
20
30
40
表 4.5-2 釧路総合振興局
代表地点周辺における沿岸最大水位・最大遡上高および予測される津波到達時間
影響
開始時間
(分)
±20cm
第1波
到達時間
(分)
沿岸
最大
水位
(m)
最大
遡上高
(m)
恵茶人
5
28
26.3
37.7
仙鳳趾
5
27
27.2
34.6
奔幌戸
7
27
15.4
19.5
幌戸
7
27
16.6
19.8
榊町
9
26
14.8
19.9
10
24
15.8
13.9
琵琶瀬湾
6
21
10.0
33.4
琵琶瀬
4
21
34.6
43.8
渡散布
4
23
30.6
32.2
火散布
4
23
27.0
29.9
藻散布
4
24
27.2
32.0
末広
4
24
28.8
34.7
床潭
11
24
16.9
23.3
若竹町
11
28
13.4
18.0
白浜町
10
29
11.2
13.4
9
29
13.4
15.0
仙鳳趾
10
26
19.1
19.5
老者舞
3
21
28.4
38.0
跡永賀
4
24
27.7
30.9
昆布森
4
24
31.5
40.3
桂恋
6
24
19.5
27.5
益浦
6
25
19.8
23.4
市町村名
浜中町
厚岸町
地名
霧多布
門静
釧路町
千代ノ浦
釧路市
白糠町
釧路市
(音別)
6
26
18.8
22.4
11
32
9.6
20.8
新釧路川河口
9
31
11.5
11.6
星が浦
8
31
14.3
15.4
阿寒川河口
7
32
13.5
16.9
庶路
6
32
15.3
21.5
刺牛
7
32
19.9
24.6
白糠漁港
7
33
17.7
23.9
茶路川河口
7
33
17.1
26.8
馬主来沼
8
30
22.4
29.5
風連別川河口
8
29
22.0
30.4
音別川河口
7
29
20.3
28.5
尺別川河口
7
30
22.0
36.6
音別町直別
8
30
27.8
35.6
釧路川河口
40
10
最大遡上高(m)
20
30
40
表 4.5-3 十勝総合振興局
代表地点周辺における沿岸最大水位・最大遡上高および予測される津波到達時間
影響
開始時間
(分)
±20cm
第1波
到達時間
(分)
沿岸
最大
水位
(m)
最大
遡上高
(m)
厚内
8
29
25.3
37.0
昆布刈石
7
30
27.0
32.3
浦幌十勝川河口
7
30
22.7
37.9
十勝川河口
8
30
19.0
22.4
大津漁港
7
31
21.6
38.0
長節湖
8
31
23.2
37.9
湧洞沼
7
31
25.3
35.8
生花苗沼
8
31
19.1
31.1
当縁川河口
7
31
19.5
28.3
大樹漁港
7
35
20.0
21.8
歴舟川河口
7
35
18.3
24.2
紋別川河口
7
35
18.1
23.1
豊似川河口
7
33
24.0
26.5
野塚川河口
8
30
21.8
28.4
10
36
29.4
35.5
広尾川河口
7
31
26.5
36.9
音調津
8
30
21.1
27.7
市町村名
浦幌町
豊頃町
大樹町
広尾町
地名
十勝港
41
最大遡上高(m)
10
20
30
40
表 4.5-4 日高振興局
代表地点周辺における沿岸最大水位・最大遡上高および予測される津波到達時間
影響
開始時間
(分)
±20cm
第1波
到達時間
(分)
沿岸
最大
水位
(m)
最大
遡上高
(m)
目黒
6
27
24.1
33.4
咲梅
6
26
26.4
33.1
庶野
5
32
23.4
29.3
市町村名
地名
一石一字塔
えりも町
様似町
浦河町
5
29
23.8
32.4
えりも岬漁港
13
25
28.5
38.0
襟裳岬
11
24
27.8
43.3
油駒
14
25
21.3
31.1
東洋
15
26
22.0
25.7
歌露
17
27
23.1
26.4
歌別川河口
21
30
17.6
25.2
えりも港
12
31
24.1
29.7
大和
11
31
29.8
35.7
中笛舞
8
33
28.7
34.9
旭
7
33
23.1
33.0
幌満
7
33
20.3
24.2
冬島
7
31
16.3
18.4
様似川河口
6
34
19.2
23.7
西町
7
31
14.3
21.3
鵜苫
6
31
11.2
16.9
日高幌別川河口
6
30
9.4
14.6
東町
8
29
10.8
13.8
浦河港
8
30
11.9
14.2
浜東栄
8
29
10.8
12.5
元浦川河口
8
28
9.7
12.1
三石海浜公園
10
30
10.6
14.6
鳧舞漁港
10
30
11.4
17.0
9
30
12.0
14.9
新ひだか 三石川河口
町
春立
新冠町
日高町
9
30
10.2
13.6
東静内
11
31
9.7
12.8
静内川河口
12
33
9.8
13.8
新冠川河口
13
34
9.3
13.8
節婦
14
37
9.5
12.3
厚賀
17
40
9.0
12.4
清畠
19
43
11.6
15.1
門別本町
18
41
9.0
16.3
富浜
18
43
9.6
10.2
42
10
最大遡上高(m)
20
30
40
表 4.5-5 胆振総合振興局
代表地点周辺における沿岸最大水位・最大遡上高および予測される津波到達時間
市町村名
地名
汐見
むかわ町 鵡川河口
厚真町
苫小牧市
白老町
登別市
室蘭市
伊達市
洞爺湖町
豊浦町
影響
開始時間
(分)
±20cm
第1波
到達時間
(分)
沿岸
最大
水位
(m)
最大
遡上高
(m)
23
47
7.1
8.8
26
48
6.2
7.8
晴海町
28
50
7.6
8.8
浜厚真
27
53
8.1
8.6
苫小牧港(東港)
28
55
7.8
8.5
安平川河口
26
57
8.1
9.6
苫小牧港(西港)
25
51
6.4
11.1
元町
22
51
8.5
8.9
錦岡
21
49
8.2
8.7
大町
18
47
8.8
9.8
白老港
17
46
8.7
9.7
竹浦
17
45
7.0
8.9
富浦町
18
48
8.7
11.2
桜木町
19
49
9.2
12.5
栄町
20
49
10.2
12.7
東町
21
48
8.8
15.2
舟見町
24
51
5.5
10.3
絵鞆町
20
54
5.4
6.5
室蘭港
43
86
5.3
6.1
南黄金町
39
61
4.1
4.8
舟岡町
44
70
7.2
8.6
長流川河口
46
72
6.6
7.9
向有珠町
51
78
6.6
7.9
高砂町
53
79
7.2
8.6
大磯町
54
80
5.4
6.0
船見町
55
88
7.5
10.6
大岸
55
81
7.4
9.3
礼文華
55
80
7.2
8.5
43
最大遡上高(m)
10
20
30
40
表 4.5-6 渡島総合振興局
代表地点周辺における沿岸最大水位・最大遡上高および予測される津波到達時間
市町村名
地名
静狩
森町
鹿部町
函館市
北斗市
木古内町
知内町
福島町
松前町
第1波
到達時間
(分)
沿岸
最大
水位
(m)
最大
遡上高
(m)
58
86
6.4
9.0
57
85
6.3
8.1
豊野
57
90
5.9
7.1
山崎
57
91
5.8
7.6
遊楽部川河口
57
93
6.8
7.5
落部
49
80
7.0
9.2
石倉町
46
77
8.4
9.7
尾白内町
42
66
4.9
7.1
砂原3丁目
40
62
7.0
9.3
砂原東3丁目
33
57
10.0
13.4
鹿部
27
53
8.6
11.4
大岩
26
51
9.1
10.2
双見町
22
46
8.6
12.1
尾札部
19
42
9.8
12.6
富浦町
13
35
9.8
14.6
元村町
14
35
10.0
14.3
古武井町
16
39
7.9
13.6
女那川町
17
38
8.2
9.5
日浦町
20
40
9.8
10.6
弁才町
25
44
8.7
11.9
新湊町
32
53
7.7
10.0
栄町
35
59
6.8
9.4
入舟町
37
66
4.2
5.6
大手町
35
79
5.4
6.2
七重浜
37
71
5.1
5.5
富川
37
71
4.6
6.0
当別
37
66
10.4
12.6
泉沢
44
71
3.8
5.5
前浜
46
75
6.2
6.8
知内町
48
76
4.2
5.0
小谷石
48
72
2.8
3.2
月崎
56
73
3.9
4.4
吉岡
57
76
3.2
3.4
白神
65
83
2.0
2.5
弁天島
79
87
1.7
2.3
静浦
87
93
1.2
1.5
江良
94
97
1.3
1.6
長万部町 長万部川河口
八雲町
影響
開始時間
(分)
±20cm
44
10
最大遡上高(m)
20
30
40
5.津波浸水予測図及びCG(動画)の作成
5.1 津波浸水予測図
津波浸水シミュレーション結果を用い津波浸水予測図を作成した。
5.1.1 津波浸水予測図の概要
計算の結果にもとづいて、表 5.1-1 に示す津波浸水予測図を作成した。津波浸水予測図の
作成にあたっては、ワーキンググループの指導のもと、浸水深別の色分け、等高線の表示な
ど、より津波対策に活かされるように配慮した。
表 5.1-1 作成した津波浸水予測図一覧
種類
背景図
対象津波
表示項目
作成単位
縮尺
振興局別図
振興局毎1面
国土地理院発行「20
万分の1地勢図」
市町村別図
国土地理院発行「2
万5千分の1地形
図」
詳細地区別図
国土地理院発行「2
万5千分の1地形
図」
イコノス衛星画像・
航空写真オルソ画像
○想定波源
○津波浸水範囲
○案内図
○津波浸水範囲
○最大浸水深分布
○津波浸水深コンター
○標高ライン(10m、20m)
○想定波源
○標高
○津波浸水範囲
○最大浸水深分布
○津波浸水深コンター
○標高分布
○想定波源
45
1/25 万
~1/35 万
市町村別
沿岸 38 市町
1/35,000
市町村別
沿岸 38 市町
1/15,000
~
1/20,000 程度
5.1.2 振興局別図
振興局別図は、対象振興局をそれぞれ一枚の図面に収め、浸水範囲を示した。
1)記入内容
(1)図題
:図上段に記載
(2)対象津波
:想定波源を対象
(3)浸水予測範囲
:50mメッシュおよび 10mメッシュによる計算結果
(4)凡例及び計算条件
:凡例として記載
(5)注記
:浸水予測図の位置づけ、注意書き
(1)図題
図題を図上部に以下のように記載した。
「津波浸水予測図
振興局別図
○○(振興局)」
46
(2)対象津波
図面には、対象津波(想定波源)の概略位置図
を表示。
(3)浸水予測範囲
想定津波の最大浸水範囲を表示。
(4)凡例及び計算条件
下図に示すようにシミュレーションの条件説
明(構造物および潮位条件)を記載した。また凡
例として、最大浸水範囲および振興局境界・市町村境界について示した。
(5)注記
:浸水予測図の位置づけ、注意書き
本浸水予測図の位置付けおよび注意書きを以下のように明記した。
47
5.1.3 市町村別図(縮尺3万5千分の1)
市町村別図は、太平洋沿岸市町村別に津波浸水予測範囲を表示した。浸水予測範囲は、構造
物の「効果あり・なし」とする場合のケースについてシミュレーションを行い、その最大浸水
範囲を示した。津波浸水範囲を浸水深ランク別にカラーで色分け表示し、標高コンター線(標
高 10m、20m)も併記し、その地域の地形的特徴も分かり易くするように工夫をした。また、
各市町村の沿岸部に代表地点を設け、その地点における津波の影響開始時間や最大水位を表示
した。以下に市町村別図の仕様を示す。
1)記入内容
(1)図題
:図上段に記載
(2)対象津波
:想定波源を対象
(3)承認番号
:図下に記載
(4)浸水予測範囲
:50mメッシュおよび 10mメッシュによる計算結果
(5)案内図および凡例
:図面案内図等
(6)注記
:浸水予測図の位置づけ、注意書き
48
(1)図題
図題を図上部に以下のように記載した。
「津波浸水予測図
市町村別図
○○(市町村名)
」
(2)対象津波
図面には、対象津波(想定波源)の概略位置図を示した。
(3)背景画像年月日・承認番号
背景図として用いる国土地理院の数値地図 25000(地図画像)について、それを複製使用
することに対し、測量法第 29 条の規程により承認申請し、その承認番号について、図面下
部に以下のように明記した。
「この地図は、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図 25000(地図画像)を複製し
たものである。
(承認番号
(4)浸水予測範囲
H23 情複、第 892 号)
」
:10mメッシュ、50mメッシュによる計算結果
最大の浸水範囲を合わせて、その地域の地形的特徴を視覚的に分かり易くするため、標高
分布も併記した
(5)案内図および凡例
:図面案内図等
案内図を併記するとともに、浸水予測範囲を浸水深ランク別の色分けで表示した。赤系色
が、より津波に対して危険が高いことを意味する。
(6)注記
:浸水予測図の位置づけ、注意書き
本浸水予測図の位置付けおよび注意書きを以下のように明記した。
49
(1)図郭案内図
表示図郭を赤色枠で表示
(2)想定津波
想定津波の概略波源域図
(3)凡例表示
浸水深ランク別カラー
浸水深別コンター線
標高コンター線
(4)代表地点情報
市町村別の沿岸部代表地点水
深約 10m 地点における津波到
達時間や最大津波水位
※説明図を次頁に示す
(5)縮尺等
スケールバー
方位シンボル
縮尺(A3 版での縮尺)
50
※代表地点表示内容について
代表地点における標記情報について、以下にイメージ図を示す。
沿岸津波水位(m)
【最大遡上高】
代表地点周辺において津波が到達する最高の標高(陸域における最高到達標高)
【浸水深】
陸域において地盤面から水面までの高さ
【沿岸津波水位】
海岸線付近における T.P 基準の津波の最大高さ
【影響開始時間】
地震発生から海岸・海中の人命に影響が出る恐れのある津波による水位変動(初期水位±20cm)
が生じるまでの時間
【第1波到達時間】
地震発生から津波第1波のピークが海岸に到達するまでの時間(津波は繰り返し来襲するため
第1波が最大となるわけではないので注意が必要。)
51
5.1.4 詳細地区別図(縮尺1.5~2.0 万分の1)
詳細地区別図は、沿岸市町村毎に1箇所以上選定し衛星画像或いは空撮オルソ画像を背景
に津波浸水範囲を図示した。浸水予測範囲は、構造物の「効果あり・なし」とする場合のケ
ースについてシミュレーションを行い、その最大浸水範囲を示した。最大浸水深分布と合わ
せて標高分布を併記することで、分かり易い工夫をした。以下に詳細地区別図の仕様を示す。
1)記入内容
(1)図題
:図上段に記載
(2)対象津波
:想定波源を対象
(3)承認番号
:図下に記載
(4)浸水予測範囲・標高分布
:詳細地区 10mメッシュによる計算結果
(5)案内図および凡例
:図面案内図等
(6)注記
:浸水予測図の位置づけ、注意書き
(1)図題
図題を図上部に以下のように記載した。
「津波浸水予測図
詳細地区別図
○○(市町村名)」
52
(2)対象津波
図面には、対象津波(想定波源)の概略位置図
を示した。
(3)背景画像年月日・承認番号
背景図として用いる国土地理院の数値地図
25000(地図画像)について、それを複製使用す
ることに対し、測量法第 29 条の規程により、承
認申請し、その承認番号について、図面下部に以
下のように明記した。
「この地図は、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図 25000(地図画像)を複製し
たものである。
(承認番号
H23 情複、第 892 号)
」
また、衛星画像やオルソ画像については、以下に示すように、撮影年月を明記した。
(4)浸水予測範囲・標高分布
:詳細地区 10mメッシュによる計算結果
最大の浸水範囲を合わせて、その地域の地形的特徴を視覚的に分かり易くするため、標高
分布も併記した。
53
(5)案内図および凡例
:図面案内図等
案内図を併記するとともに、標高分布をカラーグラデーション、浸水予測範囲を浸水深ラ
ンク別の色分けで表示した。赤系色が、より津波に対して危険が高いことを意味する。
(6)注記
:浸水予測図の位置づけ、注意書き
本浸水予測図の位置付けおよび注意書きを以下のように明記した。
54
5.2 津波伝播CG
5.2.1 CG(動画)の概要
津波からの避難意識を高めるためには、津波の災害イメージを分かりやすく示すことが必
要である。そのため、本業務では表 5.2-1 に示すCG(動画)を作成した。
本業務では、津波が発生してから伝播して陸域に来襲する様子を動画にした津波発生伝播
CGを作成した。
表 5.2-1 作成したCG(動画)
名称
対象地域
内
北海道
津波発生伝播CG
太平洋沿岸 ○想定波源
全域
5.2.2 津波発生伝播CG
(1)時計およびタイトル表示
文字色:白
時計:hh 時間 mm 分 ss 秒
各画面左上に表示。
(2)アニメーション
地震発生から最大 2 時間 30 分までを 10 秒おきにCG化。
(3)作成ファイル仕様
Windows® WMV(codec:Microsoft©MPEG4-V2)
(4)凡例(水位)
下図のとおり
55
容
(5)画像例
56
6.GISデータ
津波シミュレーション用に作成したデータ群およびシミュレーション結果は、市町村等で
の利活用を目的にGISデータとして作成した。表 6.1-1 にGISデータ内容を示す。
表 6.1-1 GISデータ内容
GISデータ
データ種別
津波シミュレーション用データ
ファイル形式
名称
説明
地形データ
txt形式
shp形式
北海道東部中部西部 根室振興局~渡島総合振興局
沿岸市町村各一箇所:10mメッシュの地形近似モデル
構造物データ
txt形式
shp形式
海岸・漁港・港湾等の構造物を50mメッシュおよび10mメッシュの辺上に近似
したモデル
txt形式
shp形式
国土数値情報土地利用データを基に土地利用分類から作成した粗度デー
タ
粗度データ
bds形式
津波シミュレーション結果データ
浸水深データ
txt形式
shp形式
津波シミュレーション用データおよび計算結果
津波堆積物痕跡データ
痕跡データ
shp形式
平川委員提供の堆積物痕跡から推定した浸水範囲情報
その他データ
避難場所データ
市町村が現行で設定している広域避難場所情報
※データファイルの書式等の詳細については、巻末資料2「テキストデータ説明書(1.津波
シミュレーション用データ)」参照
これらのデータ群は、すべて位置情報を保有するGISデータであり、GISデータビュー
ワで容易に閲覧することが可能である。測地系は世界測地系、座標系は市町村等での取り扱い
を考慮し、根室振興局~十勝総合振興局は平面直角座標系第 13 系、日高振興局~胆振総合振
興局(むかわ町~室蘭市)は、平面直角座標系第 12 系、胆振総合振興局(伊達市~豊浦町)
~渡島総合振興局は、平面直角座標系第 11 系でデータ群を作成している。
なお、GISデータビューワの詳細については、巻末資料3「GISデータビューワのイン
ストール説明書」に記載した。
57
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