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2010年7月号 (Issue#7) - Gosat

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2010年7月号 (Issue#7) - Gosat
国立環境研究所
GOSJ AT
PRO ECT
NEWSL ETTER
独立行政法人 国立環境研究所 ( 国環研 )
GOSAT プロジェクトオフィスがお届けする、
温室効果ガス観測技術衛星(GOSAT、
「いぶき」
)プロジェクトのニュースレターです。
ISSUE #7
2010 年 7 月号
国立環境研究所 GOSAT
PROJECT NEWSLETTER ISSUE#7 JUL. 2010
CONTENTS
GREETINGS
GOSAT プロジェクト 現在と未来への思い 01
NEWS
米国ネバダ州レイルロードバレー「いぶき」の代替校正集中観測 02
INTERVIEW
日本リモートセンシング学会 建石隆太郎 前会長 03
INFORMATION 宇宙からの温室効果ガス観測シンポジウム 開催のお知らせ 05
AHA! OF THE MONTH
「今月のなるほど」
「いぶき」の観測点について 06
DATA PRODUCTS UPDATE 07
ANNOUNCEMENT 07
CALENDAR 07
PUBLISHED PAPERS 07
http://www.gosat.nies.go.jp/
GREETINGS
GOSAT プロジェクト
現在と未来への思い
図 2. IPCC パチャウ
リ議長(左)に 「い
ぶき」 データを説明
する JAXA 浜 崎 元
GOSAT プロジェク
トマネージャ
(右)
。
- 浜崎 敬 宇宙航空研究開発機構 (JAXA)
宇宙利用ミッション本部 事業推進部長
JAXA 元 GOSAT プロジェクトマネージャ
月日の経つのは早いもので、
「いぶき」の打上げから既に 1 年 感が異なっています。例えば国環研やサイエンスチームはデータの精
半が経過しました。「いぶき」の運用は極めて順調で、世界初・世界唯 度が重要ですし、JAXA は 1 日も早い成果の発表が重要、環境省は国
一の温室効果ガス観測専用衛星として、24 時間休むことなく全球の観測 の政策への反映が重要といった具合です。関係者の価値観の違いをす
を続けています。2003 年 4 月に GOSAT プロジェクトチームが発足してか りあわせるため、本当に多くの議論を積み重ねてきました。決められ
ら 2009 年 1 月の打上げまでの間、技術課題克服のための様々な挑戦の たスケジュールと予算の中で、「いぶき」 を実現することができたのは、
連続でした。中でも衛星内の機器の微小な振動や、細いケーブルの剛性 関係者の熱意の結集のたまものだと思います。
現在、各国から 「いぶき」 のデータの提供依頼が寄せられ、各
の僅かな変化がセンサーのデータ精度に影響を与えることは予想外であ
り、最後まで解決に手こずりまし 種の国際会議でも 「いぶき」 の貢献が取り上げられるようになって来
た。また、衛星の部品の故障、 ています。気候変動に関する政府間パネル (IPCC) のパチャウリ議長
製造ミスなどが何件か起き、そ も 「いぶき」 に大きな関心を示され、ご説明の直後に 「この説明パ
の都度、深夜あるいは早朝まで ネルを持ち帰っていいか」 と言われたのには驚くとともに、大変感激
対策会議や確認作業に追われ しました。今後 「いぶき」 のデータが IPCC などで活用され、「世界
たのも今となっては懐かしい思 共通の物差し」 となることを期待しています。世界を相手にした温室
効果ガス観測専用衛星の実現レースは、欧州の計画中断と、OCO1
い出です。
しかし、プロジェクトマネー の打ち上げ失敗があり、「いぶき」の圧倒的勝利となりましたが、す
ジャとして最も心血注いだこと でに第 2 ラウンドがはじまっています。NASA は OCO-2 の開発に着
は、JAXA、 国 環 研、 環 境 省、 手し、欧州・カナダ・韓国・中国などでも類似衛星の検討が開始さ
GOSAT サイエンスチーム、メー れています。残念ながら我が国は若干出遅れ気味ですが、「いぶき」
カーに、データ利用で協力して 後継機の実現に向けもうひと頑張りさせていただきたいと思っていま
くれる海外機関を加えた、いわ す。悪しからず。
ば 「オールいぶきチーム」 の総 1 Orbiting Carbon Observatory (OCO) 衛星は、米国 NASA の Earth System
力結集を図ることでした。各々 Science Pathfinder Project のミッションの一つで、大気中の CO2 とその時間変
図 1. 「いぶき」 と JAXA 浜崎元 GOSAT
プロジェクトマネージャ。
のグループは価値観やスピード
化の高精度全球観測を目的としています。2009 年 2 月 24 日に打上げが行われ
ましたが、衛星を所定の軌道に投入することが出来ず、残念ながら打上げは失
敗となりました。現在、後継機 OCO-2 の開発が始められています。
1­­
国立環境研究所 GOSAT
PROJECT NEWSLETTER ISSUE#7 JUL. 2010
NEWS
米国ネバダ州レイルロードバレー
「いぶき」の代替校正集中観測
図・文 田中智章
―国環研 地球環境研究センター (CGER)
NIES ポスドクフェロー
写真 1. RRV におけるベースキャンプ
図 1. TANSO-FTS の視野範囲(紫の円)と地
表面からの放射輝度を観測したサイト
表 1. 測定したサイトと「いぶき」のパス(表中の
サイトにおける H, M, L は反射率の高低を表す。
)
1.はじめに
Atmospheric CO2 Observations from Space
(ACOS)1、NA SA Ames Research Center
(AMES)、宇宙航空研究開発機構 (JAXA)、そ
して国立環境研究所は合同で 2010 年 6 月 21
図 2 地表面放射輝度測定の配置
計を 2 台用いて行いました。21 日、24 日は
GOSAT パス 36、また 22 日と 25 日は「いぶ
日から 25 日の間、米国ネバダ州の Railroad
ぶき」の輝度校正を行うことが RRV 集中観測
き」の パス 37 とそれぞれ同期した測定を行い
Valley ( レイルロードバレー、RRV) にて「いぶ
の目的です。
ます。また 23 日は「いぶき」の通過はなかっ
き」の代替校正のための観測を行いました。 2.観測
たのですが、ASTER3 が通過する予定だったた
今回の場合、代替校正とは衛星の通過時刻に
め M03 サイトにて同期した測定を行いました。
RRV にはベースキャンプを設営し、そこを
同期して衛星の視野内の地表面の放射輝度 を
中心に気象測器や全天カメラ等の各種観測 RRV における各測定日の測定サイトと
「いぶき」
放射計を使って測定し、測定値を比較して衛
機器を設置しました(写真1)
。地表面からの
パスを表1に示します。
星のセンサーの輝度校正を行う方法のことを
放射輝度の測定は TANSO-FTS 視野内の代表
3. 最後に
いいます。
値を求めるためにベースキャンプから 8 km 以
RRV では、ベースキャンプの設営、食事等
RRV はネバダ中東部に位置する長さ 30km、 内の複 数のサイト(図 1)について行いまし
の雑務も協力して行いました。このような作業
2
幅 20 km の playa(乾燥湖)です。その地表
た。地表面の放射輝度は FieldSpec Portable も炎天下で行ったため、体力的にはかなり厳
面は平坦で地表面反射率は空間的にほぼ一様
Spectroradiometer (フィールド携帯型分光放射
しく感じました。その中でも、参加した各人
であり、その広さは「いぶき」に搭載された
計 )(ASD Inc.) を用いて測定しました。この放
がそれぞれの任務に精力的に取り組めたと思
温室効果ガス観測センサ (TANSO-FTS) の視
射計は 350 ~ 2500 nm の波長領域における います。厳しい環境にもかかわらず、全員が
野も広いため「いぶき」の代替校正に適してい
放射輝度を測定することができます。
ます。RRV における地上観測データから、
「い
1 Atmospheric CO2 Observations from Space
(ACOS) は米国航空宇宙局(NASA)ジェット推進
研究所、カリフォルニア工科大学、コロラド州立大
学の研究者を含む OCO サイエンスチーム関係者
を中心に組織されたグループです。ACOS チーム
は GOSAT プロジェクトと緊密に連携し、
「いぶき」
及び OCO-2 のための CO2 算出アルゴリズム開発を
「いぶき」データを利用して進めています。
2 放射輝度:光の強さの表し方の 1 つ。単位は
。sr は単位立体
Wsr-1m-2µm-1。W は仕事率(ワット)
角(ステラジアン)
。µm は光の波長。
TANSO-FTS 視野内の放射輝度を把握する
協力して RRV での観測を成功に導くために尽
力しました。自分もその一員として参加できた
ために、観測者はサイトにおいて図 2 の様な ことを光栄に思っています。
パターンで移動しながら地表面の放射輝度を
測定しました。図中の緑線で示すグリッドの対
角線で地表面の測定を行い、赤丸の部分で放
射計の校正のためにスペクトラロンの測定を
行いました。スペクトラロンとは、測定波長領
域で高い反射率を持つ反射板のことです。
測 定は 6 月 21 日から 25 日にか けて 放 射
2­­
3 Advanced Spaceborne Thermal Emission and
Reflection Radiometer (ASTER、あすたー ) は可視
バンドからから熱赤外バンドまでの 14 チャンネル
を有する高性能光学センサーで、NASA、日本の経
済産業省、資源・環境観測解析センターによる共
同プロジェクトです。NASA Earth-Observing-System
( 地球観測システム、EOS) 計画の TERRA 衛星に搭
載されており、1999 年に打上げられました。 国立環境研究所 GOSAT
PROJECT NEWSLETTER ISSUE#7 JUL. 2010
横田(以下 Y)
:今日はお時間をいただき、ありがとうございま
す。建石先生はリモートセンシング学会の会長を 2 年間なされていまし
たが、まずはこの学会の良いところ悪いところ、それから、今後はこのよ
うになっていって欲しいというようなご希望をお聞かせ下さい。
建石(以下 T):そうですね、運営面では、良いと悪いと両方の意味が
あるのですが、この学会はローテーションが早いですね。ご存知のとお
り、役員の任期は 2 年間と限られています。最初の 1 年間で慣れて、次
の 1 年間仕事して、それでまたバトンタッチしないといけない。常にバト
ンタッチの準備が必要であるということは、ある意味運営面での悪い点
です。ただ、それをよく解釈すれば、偏らないと言えます。つまり、色々
な人に役員になっていただき、運営の機会を持っていただくということで
す。運営面ではそういう良い点と悪い点がありますね。そのような運営
の仕方にも関係しますが、開かれた学会という言い方ができます。つま
り一部の人だけが運営に参画しているということはない学会です。
Y: そうですね、この学会というのは会員の方の分野もすごく多彩です
INTERVIEW
日本リモートセンシング学会
建石隆太郎 前会長
千葉大学
環境リモートセンシング研究センター 教授
「いぶき」は宇宙から光を利用して地球大気を観
測しています。このように離れた場所から電磁波を利用
して対象物を観測する技術をリモートセンシングといいま
す。リモートセンシングは「いぶき」のように研究の分野
で用いられるだけではなく、気象、農業、林業、漁業、防
災、資源探査、地図作成などの実用的な分野でも用いられ
ています。最近では、気象衛星の画像だけでなく、Google
Earth のように高分解能の衛星画像が簡単に見られるよう
になり、リモートセンシングが身近なものになっています。
国立環境研究所 GOSAT プロジェクトニュースレターで
は、7 月号と 8 月号の 2 回にわたって、日本におけるリモー
トセンシングの発展を目的とする社団法人日本リモートセン
シング学会の建石隆太郎前会長、そして六川修一新会長のイ
ンタビューをお届けいたします。
今月号のインタビューでは、建石隆太郎前会長に「リモー
トセンシングとは何か」
という観点からお話を伺いました。建
石前会長は、千葉大学環境リモートセンシング研究センター
教授でいらっしゃいます。ご専門は衛星データを利用した陸
域情報抽出・モニタリングで、具体的にはグローバルあるい
は大陸規模での土地被覆マッピングとモニタリング、日本の
国土の基盤土地被覆データ作成、そして地理空間データ蓄積
共有システムの構築、といった3つのテーマの研究をされて
います。(インタビュア: 国環研 GOSAT プロジェクト 横
田達也。5 月 27 日つくば市にて。)
ね。多分リモートセンシングと言うのは手段ですから、それを応用する
分野は、もう陸海空だけではなくて、色々なところにあります。それぞれ
の分野のひと達が手段としてのリモートセンシングという意味でこの学
会に参加されているのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
T: そうですね。分野がバラエティに富んでいる、
という特徴があると思い
ます。
私はこの 2 年間で何をやるのかということを、最初から体系的にこれ
とこれをやろうと決めて行った訳ではないのです。目の前にやらなくては
ならないことが出てきて、そしたら「こういう事も大事だ。
」「じゃ、これ
もやりましょう」と言って実行してきました。
一つの例は、従来からリモートセンシングの教科書というのはないの
で、あった方がいい、という声があった時のことです。ご存知の通り、
いくつかリモートセンシングの本はありますね。しかし講義にそのまま使
える本はないじゃないですか。そこで議論したところ、大学の講義は普
通 15 回ですから、15 章の本を作ろうという声が出て来て、教科書を作
ることになりました。横田さんにも執
筆を依頼していますね。その中で、
第 1 章でリモートセンシングとは?
について書かなくてはなりませんで
した。私が担当して書くのですけれ
ども、この本を「日本リモートセンシ
ング学会編」にしたかったので、そ
の時の理事に、リモートセンシング
の定義はこれでよいかと聞いたとこ
ろ色々な意見が出てきました。そこ
で、リモートセンシングははっきりと
は学問分野が決まっていない、とま
ず気づきました。
外国の文献をみますと "Remote sensing is science and technology
which ~~ "という書き方がしてあります。つまりリモートセンシングはこ
ういう技術であり、こういう科学である、という説明が書かれています。
日本語の「リモートセンシングは~~という技術である」
、という部分は
素直に理解できるのですが、
「リモートセンシングは~~という科学であ
3­­
国立環境研究所 GOSAT
PROJECT NEWSLETTER ISSUE#7 JUL. 2010
る」というとなんか違和感ありませんか? 科学と言うと真理探究のよ
うな、論理的に何か追求すべきものがあるような意味で使います。す
なわち、リモートセンシングを科学の一分野とは言い切れないと感じ
ました。
1
一方、リモートセンシングという分野は科研費1の分野・細目としては
ないのです。では学問分野としてリモートセンシング学という言い方は
「世界に先駆けて、二酸化炭素のデータを作って配布する
できるのか、という意見が理事から出ました。そこで今日の総会でも
というその意義の大きさは非常に高く評価しています。」
報告しましたように、リモートセンシングの学術領域を検討するために
「学術領域ワーキンググループ」というものをつくりました。教科書
2
ローバルです。MODIS2データを使って行う計画です。
を作るということから派生して、
「じゃあちょうどいい契機だから、ちょっ
と考えてみよう。」と、ワーキンググループを立ち上げたということで
Y: GOSAT はご存知だと思いますけれども、現在の印象とこれから先の
す。ここ一年かけてリモートセンシングとは、どういう学問分野になる
GOSAT プロジェクトに対するご助言をいただけないでしょうか。
かを検討し直そうという訳です。以上は一つの例ですけど、ある課題
T: 実は、私自身は陸域を対象として研究をしていましたので、大気と
が目の前に現れる度に、じゃあこれをしよう、あれをしよう、というこ
か温室効果ガスのことについてあまり詳しくはありません。ですから最
とで過ごして来ました。
初 GOSAT プロジェクトが立ち上がって打ち上げられたとき、実はあま
Y: リモートセンシングは広いのですけど、建石先生ご自身のご専門は
り事前知識とかそういう動きがあることは知らなくてですね、「日本は
どういうところにあたるのでしょうか。
そんなにやっているのか、その分野で。
」とちょっとびっくりしました。
T: 私は東京大学の生産技術研究所で、標高データの三次元表現、つ
ですから、あまり技術的なコメントはできないのですが、少なくとも世
まり地理空間データの表現方法についての研究を行い、博士号を取得
界に先駆けて、二酸化炭素のデータを作って配布するというその意義
しました。衛星データは地表面のパターンとして使っていました。それ
の大きさは非常に高く評価しています。まだノイズを除去する必要性
が終わった後、土地利用や土地被覆の分類と補正など、主に衛星デー
があるなどの問題点があることを聞いています。しかし、温室効果ガ
タのデータ処理に関する研究をしていました。今の研究の契機となっ
スの全球マッピングという試み自身が、多分、このタイプの衛星デー
たのは、1980 年代に科研費の重点領域研究に関わったことです。
タを今とっているのは GOSAT しかないという点で、日本として世界に
Y: 遠隔計測という研究領域がありましたね。
誇れるプロジェクトだと思います。
T: そうです、その時にグローバルな土地被覆などのマッピングに初め
Y: そうですか? ありがとうございます。確かにそれを主な目的とした
て出合いました。それからグローバルなものに興味を持つようになり
衛星は「いぶき」(GOSAT) だけですし、他の世界の研究者も目指して
ました。その後、90 年代は International Society for Photogrammetry
はいるのですが、一応先駆けているでしょうか。
and Remote Sensing ( 国際写真測量リモートセンシング学会、ISPRS)
T: 私からの印象としては、その意味でもう半分成功しているという風
の中で 50 くらいワーキンググループがあるのですが、そのうちの一つ
に見ています。データの品質はまだ、とお見受けしますけれども、非
で global environmental databases というワーキンググループのチェ
常に高く評価したい。それで、望むらくは使えるデータを配布してもら
アマンを担当しました。色々なグローバルデータをどういう風に集め
いたい、というのが希望です。エアロゾルの影響を除去するにも、必
て統合して使うかというようなワーキンググループでした。グローバル
ずしもエレガントに処理をする必要はなくて他のエアロゾルのデータ
データに非常に興味をもって、自分自身もグローバルな土地被覆に関
があれば、それを利用することでもいいと思うのです。本当は全球の
心をもっていたのですね。2000 年代になってからは、国土地理院が
マッピングをしたいのでしょうけれど、ここだけしか信頼できるデータ
地球地図プロジェクトを立ち上げて、その中の土地被覆データセット作
が使えないというのでもいいと思うのですね。既にデータが公開され
成のワーキンググループに呼ばれたのです。そのチェアマンを担当し
ているということであれば、検証をしてここは使えるとかそういう情報
て、今に至っています。ですから現在は地球地図の土地被覆データを
を付加して、続けていってもらいたいですね。
作るとか、樹木被覆率のデータを作るとか、そういったことが私の研
Y: ありがとうございます。
究の 60 パーセントぐらいを占めています。
T: おめでとうございます、と言えるようなプロジェクトだと思います。
Y: その樹木被覆率や土地被覆の地図というのは、日本だけでなく世
Y: それでは今日はありがとうございました。
界を対象にして作ろうという計画なのですか?
T: ありがとうございました。
T: 処理するときは大陸単位で処理しますけれども、結果としてはグ
1 科研費:科学研究費補助金。日本の学術振興のため、人文・社会科学
から自然科学までのあらゆる分野で、独創的・先駆的な研究を発展させ
ることを目的とする、文部科学省及び独立行政法人日本学術振興会の研
究助成費です。
2 MODIS
(もーでぃす)
:Moderate Resolution Imaging Spectroradiometer
(中分解能撮像分光放射計)のこと。アメリカ航空宇宙局 (NASA) によっ
て開発された可視・赤外域の 36 バンドの観測波長帯を持つ光学センサー
です。NASA Earth-Observing-System ( 地球観測システム、EOS) 計画 の
TERRA 衛星と Aqua 衛星にそれぞれ搭載されています。
4­­
INFORMATION
国立環境研究所 GOSAT
PROJECT NEWSLETTER ISSUE#7 JUL. 2010
宇宙からの温室効果ガス観測シンポジウム
を開催します!
2010 年 8 月 25 日に「宇宙からの温室効果ガス観測シン
ポジウム」を開催します。これは、
「いぶき」の GOSAT プロジェク
トを進めている JAXA、国環研、及び環境省が、「いぶき」搭載の
温室効果ガス観測センサおよび雲・エアロソルセンサによって得ら
れたデータに関する話題を中心に、宇宙からの温室効果ガス観測
に関する理解を深めていただくことを目的として開催する公開シン
ポジウムです。本シンポジウムは、衛星データの利用者、研究者の
みならず、地球温暖化問題に関心をお持ちの一般の方(高校生以
上)を対象としています。「いぶき」による温室効果ガス観測デー
~温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT) の役割~
温室効果ガスを宇宙から測るための衛星「いぶき」について、
専門家が丁寧にわかりやすく解説いたします。
タの特徴などを概説するとともに、宇宙からの温室効果ガス観測の
役割と期待についての話題を紹介するものです。「いぶき」研究者
が講演や展示を通して、
「いぶき」の研究や宇宙からの地球観測に
ついて直接お話しします。会場で皆様にお会いできることを楽しみ
平成 22 年 8 月 25 日(水)
13:00 ~ 16:00
コクヨホール
東京都港区港南 1−8−35
(JR 品川駅より徒歩 5 分)
http://www.kokuyo.co.jp/showroom/hall/access
にしております。参加をご希望の方は下記シンポジウム特設ウェブ
サイトより事前登録をお願いします。
http://www.prime-pco.com/gosat2010/
定員に余裕がある場合は、当日でもご参加になれます。
第 1 部:講演会 13:00 ~15:10 司会:飯島希(いいじまほまれ)
(気象予報士・環境カウンセラー)
13:00 -13:10 開会挨拶(宇宙航空研究開発機構、環境省より)
13:10 -13:35 講演「地球温暖化と健康」
向井千秋(宇宙航空研究開発機構 宇宙飛行士・医学博士)
13:35 -14:00 講演「地球温暖化と科学者の責任」
横山裕道(淑徳大学 教授)
14:00 -14:20 講演「なぜ宇宙から二酸化炭素を測るのか」
井上元(GOSAT サイエンスチームチーフサイエンティスト/総合地球環境学研究所 教授)
14:20 -14:30 宇宙からの温室効果ガス観測のしくみの紹介
中島正勝(宇宙航空研究開発機構 GOSAT ミッションマネージャ)
14:30 -14:45「いぶき」データの紹介
横田達也(国立環境研究所 GOSAT プロジェクトリーダー)
14:45 -15:05 ビデオ講演「NASA と GOSAT プロジェクトの連携」
David Crisp(NASA Jet Propulsion Laboratory シニアリサーチサイエンティスト)
15:05 -15:10 閉会挨拶 (国立環境研究所より)
第 2 部:ふれあいタイム(展示) 15:10 ~16:00 ・「いぶき」の模型展示
・球面ディスプレイによる観測データやシミュレーション結果展示
・「いぶき」搭載センサーの試作モデルを利用した二酸化炭素濃度観測実験
・「いぶき」に関するポスター展示
・「いぶき」搭載カメラからの映像
・ディスプレイを使った「いぶき」データの利用方法紹介
・「いぶき」パンフレットやニュースレター、研究公募のお知らせの配布 など
主催:独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 (JAXA)
独立行政法人 国立環境研究所 ( 国環研 )
環境省
5­­
お問い合わせは [email protected]まで。
国立環境研究所 GOSAT
PROJECT NEWSLETTER ISSUE#7 JUL. 2010
AHA! OF THE MONTH
今月のなるほど!
GOSAT「いぶき」の観測日・観測点
渡辺宏 国環研 GOSAT プロジェクトオフィスマネージャ
GOSAT「いぶき」は観測点の時刻と条件がいつも同じ
になるように、太陽同期準回帰軌道で地球を周回しています。太
陽同期では、
地球が太陽の周りを 1 周する 1 公転周期の間に人工
衛星の軌道面も 1 回転します。従って太陽光線と軌道面の相対的
な位置関係は一定に保たれます。
「いぶき」では赤道を北から南に
通過する降交点通過時の地方太陽時がいつも13 時前後になるよ
うに制御されています。準回帰とは一定周期でほぼ同一の軌道に
回帰することで、
「いぶき」の場合は 1 周約 98 分で、44 周回後の 3
日で元の軌道に回帰します。各周回を「パス」と呼び、西へ行くほ
図 1.「いぶき」による観測概念図
ど増加するように 1 から 44 の番号がつけられています。
「いぶき」
の軌道は地表面から高度 666km にあり、
国際宇宙ステーションの
約 400km よりは高く、気象衛星「ひまわり」などの静止軌道の約
36000km よりはずっと低いところを周回しています。
「いぶき」による温室効果ガスの観測は、
地球全体をほぼ一様
に ( 但し高緯度ほど密になる ) カバーします。そして、搭載センサー
TANSO-FTS (Fourier Transform Spectrometer) の 1 回の観測
は、
直径約 10km の円内をターゲットとしています(図 1)
。通常はセ
ンサーの向きを少しずつ動かしながら、軌道とほぼ直交する方向
に 5 点ずつ観測する「5 点観測」を行っており、その観測点を標準
メッシュ点と呼びます。また、海域については太陽の反射光が弱い
ので、
サングリントという太陽が鏡面反射する方向を狙って観測を行
図 2. 日本付近における「いぶき」の観測点 ( 降交 )
うことがあります。5 点観測とサングリントも含めた日本付近の観測
点 ( 降交:日照時 ) の例を図 2 に示します。1 回帰で観測する点数
は、全てを 5 点観測で行った場合約 56,000 点(図 3)ありますが、
昼間 ( 日照時 ) に限れば半分の約 28,000 点になります。その中で、
温室効果ガスの解析が可能なのは反射光の信号が充分強く、雲
が含まれない観測点で、全体の数パーセントに減ります。それでも
約 200 点の地上の観測点(図 4)と比較すると多くの観測点があ
り、何よりもこれまで地上観測点が存在しなかった領域を観測でき
るという利点が生じます。観測日とパスの関係や観測点 ( 標準メッ
シュ点 ) の情報は、GOSAT プロジェクト Web サイトの「技術情報」
ページにある、
「GOSAT パスカレンダーの説明はこちらです。
」をご参
図 3.「いぶき」の「5 点観測」による全ての観測点(3 日間、44 周回分)
。
照ください。
http://www.gosat.nies.go.jp/jp/technology/technology.htm
また、GOSAT データ提供サービスの登録ユーザまたはゲスト
ユーザは「観測運用状況」で、より詳細な観測運用状況 ( 予定を
含む ) を調べることができます。
GOSAT ( い ぶき ) に 搭 載されているもう一 つ の センサ ー
TANSO-CAI (Cloud and Aerosol Imager) では、昼間 ( 日照時 ) の
地表面や雲の状態を観測しています。そのバンド 1 ~ 3 は 500m
の分解能で衛星の直下点を中心に幅約 1000km の領域を観測し
ており、バンド 4 は 1500m の分解能で約 750km の領域を観測し
ています。
図 4. 地上観測点(出典:温室効果ガス世界資料センター)(WDCGG)
6­­
国立環境研究所 GOSAT
DATA PRODUCTS UPDATE
PROJECT NEWSLETTER ISSUE#7 JUL. 2010
プロジェクトオフィスからのデータ処理状況アップデート
— 河添 史絵
国環研 GOSAT プロジェクオフィス 高度技能専門員
6 月分のデータ処理状況をお
知らせします。5 月に引き続き、FTS L1B
は V100100 として、CAI L1B、L1B+、L2
雲フラグは V00.90 として処理し、公開し
ています。FTS L2 SWIR CO2, CH4 カラム
量についてはチェック作業を行っており
ましたが、留意事項とともに 3 月観測分
データを公開しました。3/1 ~ 3/16 観測
分は V00.80 として、3/16 ~ 3/31 観測
分は V00.90 として検索、取得が可能で
す。留意事項は、GUIG の「FTS L2 SWIR
プロダクト月別留意事項」に掲載されて
います。ご一読の上、プロダクトをご利
用下さい。
(GUIG/ プロダクト& サービス
/ ユーザ認証 / メニュー選択 /FTS L2 SWIR プロダクト月別留意事項)2010 年 4 月以降、及び、2009 年 8 月、9 月、10 月観測分につきましても、
速やかに公開していく予定です。また、2010 年 7 月 9 日時点での一般ユーザの登録数は 826 名となっています。
ANNOUNCEMENT
第 3 回研究公募(RA)がいよいよ行われます!
GOSAT プロジェクトは、2010 年 8 月後半に第 3 回研究公募を
実施します。応募資格は、GOSAT データの非営利目的かつ平和利用を目
的とする研究機関、教育機関、政府機関、私企業に属する研究者、そし
て個人の研究者です。国籍は問いません。既に過去の研究公募に採用さ
れた研究者も、別のテーマで応募することができます。第 3 回研究公募の詳細は募集の開始と同
時にホームページにてご案内いたします。なお、第 1 回及び第 2 回研究公募については、下記
Web サイトで紹介されていますので、ご参考になさってください。
2010/08/09-12
京都市 国立京都国際会館にて行わ
れる、国際写真測量とリモートセンシ
ング学会(ISPRS)第 8 部会シンポジ
ウムに参加。
2010/08/25
東京・品川 コクヨホールにて「宇宙
ム」を開催。
http://www.gosat.nies.go.jp/jp/proposal/proposal.htm
2010/08 後半
GOSAT 第 3 回 研究公募開始。
論文発表情報
2010/09/05-09
掲載誌:Atmospheric Measurement Techniques (Volume 3, Number 4, July 2010, pages 909-932)
題名:The inter-comparison of major satellite aerosol retrieval algorithms using simulated
intensity and polarization characteristics of reflected light(和訳:太陽反射光の模擬強度データ
と偏光特性を用いた衛星エアロゾル解析アルゴリズムの相互比較)
著者 : A. A. Kokhanovsky, J. L. Deuzé, D. J. Diner, O. Dubovik, F. Ducos, C. Emde, M. J. Garay, R.
G. Grainger, A. Heckel, M. Herman, I. L. Katsev, J. Keller, R. Levy, P. R. J. North, A. S. Prikhach, V. V.
Rozanov, A. M. Sayer, Y. Ota, D. Tanré, G. E. Thomas, and E. P. Zege
東京・新宿 早稲田大学早稲田キャン
パスにて行われる、2010 年度統計関
連学会連合大会(日本統計学会第 78
回大会)に参加。
2010/09/07-11
ポーランド・ポズナン市にて行われ
る、第 21 回高分解能分子分光に関す
る国際会議 - POZNAN2010 に参加。
国立環境研究所 GOSAT PROJECT NEWSLETTER ISSUE #7 JUL. 2010
編集発行:GOSAT プロジェクトオフィス
国立環境研究所
GOSJ AT
PRO ECT
NEWSL ETTER
今後の予定
からの温室効果ガス観測シンポジウ
第 1 回及び第 2 回研究公募について:
PUBLISHED PAPERS
CALENDAR
2010 年 7 月号 発行日 : 2010 年 7 月 28 日
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