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上腕屈筋群負荷直後におけるマッサージとストレッチの筋厚への影響

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上腕屈筋群負荷直後におけるマッサージとストレッチの筋厚への影響
上腕屈筋群負荷直後におけるマッサージとストレッチの筋厚への影響について
北海道柔道整復専門学校 2 年昼間部
○明井哲也、宇佐美勇介、木村哲也、後藤憲ニ、山本愛久、由利昌彦
<目的>
スポーツの現場では筋疲労の回復を目的として、マッサージやストレッチなどの処置が行われている
が、これらが骨格筋の形態の指標である筋束長、筋断面積、筋厚などに対しどのような影響を与えてい
るかについての報告は少ない。
今回我々は筋厚に着目し、上腕屈筋群に筋疲労を再現させた上でマッサージまたはストレッチ刺激を
行い、筋厚の変化を超音波画像を用いて測定し、筋厚に対する影響を検討したので報告する。
<方法>
被験者 24 名をコンピューターで発生させた乱数表を用いて A.マッサージ群、B.ストレッチ群、C.
コントロール群の 3 群に8名ずつランダムに振り分けた。
筋厚を測定する部位は、上腕屈筋群とした。同筋群に疲労状態を再現するため、負荷として等張性筋
力増強運動を3セットに分けて行った。負荷の重さは、各被験者が上腕屈曲運動を 10 回できて11回目
はできないという重さを事前に測定し、その重さで行った。1 セット目は 10 回、2 および3セット目は、
10 回を上限としてできなくなるまでとした。各セットの間には 60 秒の休憩を入れた。
各群の刺激方法は、A.マッサージ群は被験者を仰臥位として、施術者は被験者の上腕屈筋群の手掌揉
捻を 60 秒間行った。B.ストレッチ群は被験者を腹臥位とし、施術者は被験者の上腕中等度外転・伸展、
肘最大伸展、前腕内転を 60 秒間行った。C.コントロール群は被験者は仰臥位のまま 60 秒間安静にする、
とした。各刺激は負荷3セット終了直後から 90 秒後に開始した。
筋厚の測定は超音波装置を用いて負荷前、負荷後、刺激後の 3 回行った。使用した超音波装置は、(株)
SSB社製 PICO、プローブの周波数は 2MHzであった。ファイルシステムはウルトラ三四郎を用いた。
筋厚の測定点は、烏口突起から肘窩横紋と上腕ニ頭筋腱の交点を結ぶ線上で近位 75%の点とした。筋
厚として求めたい距離は、この筋厚測定点を通り上腕骨上縁に垂直に交わる線上にあり、上腕ニ頭筋筋
膜から上腕骨上縁までの距離でこれを筋厚 H とする。なお筋厚 H には皮膚表面から皮下組織までの距離
は含まれていない。
筋厚の測定方法は、超音波画像の左端に筋厚測定点がくるようにプローブの端を近づけた。この際プ
ローブを当てることで筋厚が変化することを防止するために、プローブが皮膚に触れなくても画像が得
られるようにゲルをたっぷりと塗り、またプローブが皮膚に触れていないことを画像で確認して画像を
得た。そして上腕骨上縁が最大輝度となることを指標としてプローブの角度や位置を調節し、その際の
画像を抽出した。その画像の上腕ニ頭筋筋膜から上腕骨上縁までの距離を測定した。これを実測値 L と
した。
この際プローブは位置や角度の関係上、上腕骨上縁と平行になっていないことが多い。よってこの実
測値Lは筋厚Hと角度の差が生じており、それをθとした。筋厚Hを求めるには、次の式に実測値 L と
θを代入することで求めた。筋厚:H=Lcos (θπ/180)
筋疲労度の主観的評価は Numerical Scale で行った。負荷後の筋疲労度を最大に疲労した状態である
「10」として認識してもらい、刺激後にどのように変化したかを整数で答えてもらった。
統計は危険率 5%で、t検定を行った。統計処理に用いたソフトは Microsoft Office Excel 2003 であ
った。
<結果>
①筋厚の変化
筋厚の変化は負荷前→負荷後→刺激後の順にそれぞれ、コントロール群は 3.05→3.43→3.43(単位:
cm 以下同様)
、マッサージ群は 3.09→3.49→3.43、ストレッチ群は 3.18→3.55→3.60 であった。統計処
理を行ったところ、負荷後は負荷前に比べ 3 群ともに有意な増加が認められた。刺激後は負荷後に比べ 3
群ともに有意な変化はなかった。
②筋疲労度の変化
負荷後の筋疲労度を 10 とすると、コントロール群は 10→10.4、マッサージ群は 10→5.5、ストレッチ
群は 10→5.9 であった。統計処理を行ったところ、コントロール群に有意差はなかったが、マッサージ
群とストレッチ群は有意な減少が認められた。
<考察>
負荷後の筋厚は、負荷前と比べて 3 群ともに有意に増加、また増加の程度は 3 群間に有意差がなかっ
た。よって筋厚の増加は 3 群同程度に再現することができたといえる。これにより本研究において 3 群
間の刺激後の筋厚の変化を比較することが可能となった。
刺激後の筋疲労度の変化は、負荷前と比べてマッサージ群およびストレッチ群において有意に減少し、
またコントロール群は有意差がなかった。よってマッサージおよびストレッチ刺激は効果があったとい
える。
しかし刺激後の筋厚は、負荷後と比べて 3 群ともに有意な変化は無かった。よってマッサージおよびストレ
ッチ刺激の筋厚への影響は少ないといえる。
<結語>
① 上腕屈筋群負荷直後におけるマッサージとストレッチの筋厚への影響について検討した。
② 刺激後に筋疲労度は有意に減少したが、筋厚は有意に変化しなかった。
③ マッサージとストレッチ共に、筋厚への影響は少ないことが示唆された。
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