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本編③(PDF:3904KB)

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本編③(PDF:3904KB)
第1章 広域的観点から西海岸地域の開発の検討調査
第1章 広域的観点から西海岸地域の開発の検討調査
中南部都市圏駐留軍用地跡地利用広域構想(平成 25 年1月)において、
“駐留軍用
地跡地の利用にあたっては、周辺市街地と連携しつつ、良好な生活環境の確保や新た
な産業の振興、交通体系の整備、緑化の推進など魅力ある都市空間の形成を図ると同
時に、県内各圏域の多様な機能との相互の連携により、沖縄全体の発展につなげるこ
とが必要”とされている。
そこで、
今後返還が予定されている嘉手納飛行場より南の大規模な駐留軍用地跡地
の周辺において、
広域的な観点から駐留軍用地の跡地利用も見据えた開発整備の検討
が必要となる。
検討の対象範囲は、都市が連担し駐留軍用地跡地が連続して隣接することから、跡
地利用との関連性が高いと考えられる北谷町から浦添市までの西海岸地域とする。
西海岸地域は、沖縄 21 世紀ビジョン基本計画において“海浜、公園、自転車道、
遊歩道等の一体的な整備を促進するとともに、観光関連施設の集積を図り、快適で魅
力ある世界水準の都市型オーシャンフロント・リゾート地の形成を目指す”とされて
いることを踏まえ、当地域における開発整備の検討を行った。
1.駐留軍用地返還予定地と西海岸地域との関係性の整理
フロー図
(1)西海岸地域を取り巻く環境の整理
1)沖縄県に関す
る観光政策
2)西海岸地域に
おける関連プ
ロジェクト
3)関係市町にお
ける開発・検
討状況
4)西海岸地域の
現状
(2)有識者意見聴取
・西海岸地域の開発整備の方向性の整理にあたり参考とするため、有識者意
見聴取を実施
2.駐留軍用地跡地利用計画等を踏まえた牧港補給地区と
西海岸地域の開発に向けた広域的観点からの課題の整理
(1)西海岸地域の開発整備の方向性
・西海岸地域を取り巻く環境の整理を踏まえ、有識者意見を参考に、開発整
備の方向性を整理
(2)西海岸地域の開発整備にあたっての課題及び実現方策
・上記方向性を踏まえ、開発整備の重要な要素になると考えられる「拠点機
能」
「交通」
「海岸」
「水と緑」
「景観」の観点から課題及び実現方策を整理
3.西海岸地域における開発の実現化のための検討
(1)西海岸地域の開発整備に向けたスケジュール(案)
・関連プロジェクトや関係市町における動向を考慮した今後のスケジュール
(案)の検討・整理
(2)西海岸地域の開発整備の実現に向けた戦略
・「実現化に向けた取り組みを実施するための戦略」と「施設やインフラを
整備するための戦略」を検討・整理
2
第1章 広域的観点から西海岸地域の開発の検討調査
1.駐留軍用地返還予定地と西海岸地域との関係性の整理
西海岸地域を取り巻く環境を整理するとともに、開発整備の方向性を検討するにあ
たっての参考とするため有識者からの意見聴取を実施した。
(1)西海岸地域を取り巻く環境の整理
西海岸地域を取り巻く環境について、沖縄県に関する観光政策や関連プロジェクト、
関係市町における開発・検討状況、西海岸地域の現状を以下のとおり整理した。
1)沖縄県に関する観光政策
①国の観光政策
●改正沖縄振興特別措置法(平成24年)
「民間主導の自立型経済の発展」という沖縄振興の基本方向を大きく前に進めるた
め、沖縄振興特別措置法を抜本的に改正し、沖縄振興計画の策定主体の沖縄県への変
更、一括交付金制度の新規制定など、沖縄県の主体性をより尊重した内容とするとと
もに、財政・税制面を中心とした国の支援措置を大きく拡充した内容となっている。
観光に関する内容は以下のとおりである。
■観光の振興
・観光地形成促進地域を創設(県知事が地域指定)
※従来の観光振興地域を廃止
・通訳案内士法の特例を創設(研修を受講すれば有償外国語ガイドが可能)
・エコツーリズム協定制度を継続
・特定免税店制度を拡充(免税対象に海路客を追加)
・航空機燃料税の軽減を拡充(本土と宮古島、石垣島、久米島を結ぶ路線を対
象に追加)
●沖縄振興基本方針(平成24年5月11日 内閣総理大臣決定)
沖縄振興特別措置法第3条の2に基づき、国が考える沖縄の振興の意義や方向、振
興にあたっての基本的な視点を示すとともに、沖縄県が沖縄振興計画を策定する際の
指針となるべき基本的事項や計画の推進に関する基本的事項について定めたもので
ある。観光に関する内容は以下のとおりである。
■観光、情報通信産業、農林水産業その他の産業の振興に関する基本的な事項
<観光・リゾート産業>
・沖縄のリーディング産業である観光・リゾート産業の持続的な発展に向けて、
外国人観光客の誘客拡大と観光の高付加価値化を進める。
・このため、特に、高い国際競争力を有する魅力ある観光地の形成に向けて、自
然環境や風景等の沖縄の魅力を守りつつ、観光関連施設の集積や公共施設の一
体的・重点的な整備を促進する。
・また、国内外を問わず、観光客のニーズの多様化・高度化や量的拡大に対応す
るため、質の高い人材の育成・確保等の受入体制の整備に努め、文化・芸能、
自然環境等沖縄独自の地域資源を活用した滞在型観光の推進や、スポーツ、健
康、農業等の他の分野・産業と観光との連携促進を図るとともに、国際会議等
いわゆるMICEの誘致・開催を図る。
3
第1章 広域的観点から西海岸地域の開発の検討調査
②県の観光政策
●沖縄21世紀ビジョン基本計画(平成24年5月)
これまでの沖縄振興分野を包含する総合的な基本計画であり、沖縄 21 世紀ビジョ
ンで示された県民が描く将来像の実現に向けた取り組みの方向などを踏まえ、沖縄の
福利を最大化すべく、計画における「基本方向」や「基本施策」などを明らかにした
ものである。同時に、沖縄振興特別措置法に位置づけられた沖縄振興計画としての性
格を持ち合わせている。観光に関する内容は以下のとおりである。
・沖縄の豊かな自然環境との共生が図られたエコリゾートアイランドや、歴史・
文化、スポーツで魅力ある資源を活用した沖縄独自の観光プログラム(高付加
価値型観光)を戦略的に展開するとともに、安全・安心・快適な観光地として
の基本的な旅行環境の整備等により、世界に誇れる“沖縄観光ブランド”を確
立し、世界的にも広く認知され、評価される観光リゾート地の形成
●沖縄県観光振興基本計画(第5次)(平成24年5月)
沖縄 21 世紀ビジョン基本計画を踏まえつつ、沖縄県観光振興条例第7条に基づき、
観光の振興に関する基本的な方向を指し示す計画である。
■目指す将来像:世界水準のリゾート地
・洗練された観光地としての基本的な品質が確保され、更に沖縄らしさを魅力と
して加え、アジア・太平洋地域における観光地間の競争の中で「沖縄/OKI
NAWA」が国内外の人たちに広く認められた観光リゾート地となっている状
態と定義
■施策の基本方向と展開(抜粋)
1 多様で魅力ある観光体験の提供
(1)沖縄版自然観光の推進
(2)沖縄版文化観光の推進
(4)品質保証
(5)地域の特色づけ
2 基盤となる旅行環境の整備
(1)交通網の整備
(3)観光産業にかかわる人材育成
(5)ユニバーサルデザインの推進
(3)多様なツーリズムの展開
(2)情報インフラの整備拡充
(4)観光地としての景観形成
(6)緊急時の対応強化
3 観光産業の安定性確保
(1)観光収入の確保
(2)関連産業への波及効果の増大
(3)雇用の維持・確保に向けた取組の推進 (4)責任ある産業体形成に向けた取組の推進
4 効果的なマーケティング
(1)迅速性の高い市場調査と適切な分析
(3)沖縄観光のブランドを構築
(2)戦略的な市場開拓
(4)実効性あるプロモーション
5 推進体制の再構築
(1)協働の場づくり(観光関係者、地域間、他分野との協働)
(2)県民との共創による観光まちづくり
(3)客観指標に基づいて政策を決定
4
第1章 広域的観点から西海岸地域の開発の検討調査
●観光地形成促進計画(平成24年7月)
沖縄 21 世紀ビジョン基本計画(沖縄振興計画)及び沖縄県観光振興基本計画(第5
次)を踏まえつつ、沖縄振興特別措置法第6条に基づき、観光地形成促進地域の区域
及び整備方向を明示する計画である。
観光地形成促進地域制度
概
要:高い国際競争力を有する観光地の形成を図るため、国内外からの観光
旅客に対応した観光関連施設の整備を促進することを目的に創設され
た制度(旧制度「観光振興地域制度」は、平成 24 年3月 31 日廃止。
)
区
域:自然的・地理的条件、経済、日常生活圏、社会的文化圏など総合的観
点から、地域の一体性に配慮しつつ、広域的に観光を振興する必要が
あることから、各圏域(北部、中部、南部、宮古、八重山)を単位と
して、全県を指定
優遇措置:観光関連施設の新設・増設した場合に、国税や地方税の投資税額控除な
どの特例措置が受けられる
対象施設:スポーツ・レクリエーション施設、教養文化施設、休養施設、集会施
設、販売施設、宿泊施設(税の優遇措置は対象外)
●沖縄観光振興ロードマップ(案)(※平成26年度検討中)
観光収入1兆円、
入域観光客数 1,000 万人等を目指し、官民一体となって中長期的、
段階的に誘客及び受入体制整備等の施策を推進するための基本資料となる計画であ
る。
■国内市場における戦略施策の展開
・既存需要の拡大及び確保(滞在日数の延伸、消費額の増加、再訪の促進等)
・新規需要の開拓(国内富裕層、トランジット外国人客、沖縄旅行未経験者)
・国内航空路線の提供航空座席数の確保及び増加を目指す取組
・国内航路(クルーズ)市場の獲得
■海外市場における戦略施策の展開
・沖縄観光の海外展開に向けた基本戦略の推進
・既存需要の拡大及び確保(東アジア地域からの誘客)
・新規需要の開拓(東南アジア地域、欧米等リゾート需要、海外富裕層等)
・海外航空路線の提供航空座席数の確保及び増加を目指す取組
・海外航路(クルーズ)市場の獲得
■受入体制の構築戦略
・ゲートウェイ整備
・二次交通の整備
・宿泊施設整備
・観光体験等の供給増加施策
・人材育成
5
第1章 広域的観点から西海岸地域の開発の検討調査
③西海岸地域の位置づけと役割
沖縄 21 世紀ビジョン基本計画及び沖縄県観光振興基本計画、観光地形成促進計画
において、西海岸地域は以下のように位置づけられている。
【中部圏域】
・宜野湾市から読谷村に至る西海岸地域においては、リゾートホテルや飲食・ショ
ッピング、コンベンション、マリーナ、レクリエーション等施設の集積を生かし、
国際色豊かな観光・コンベンションリゾートとしてのまちづくりを促進する。
・特に、沿岸に都市の連担する地域については、海浜、公園、自転車道、遊歩道等
の一体的な整備を促進するとともに、観光関連施設の集積を図り、快適で魅力あ
る世界水準の都市型オーシャンフロント・リゾート地の形成を目指す。
・また、良好な景観の形成、環境保全活動と経済活動が共存するルールづくり等、
魅力ある風景づくりを推進し、豊かで美しい観光・都市空間の創出を図る。
【南部圏域】
・糸満市から浦添市に至る西海岸地域においては、リゾート及び都市型ホテルや飲
食・ショッピング、コンベンション、マリーナ・人工ビーチ、レクリエーション
等施設の集積を生かしつつ、アジアをはじめとする諸外国や県内外との交流拠点
の形成を目指し、施設の充実及び受入体制の強化を促進する。
国の観光政策で謳われている“外国人観光客の誘客拡大”と“観光の高付加価値化
の推進”を踏まえ、沖縄県では“沖縄の豊かな自然環境との共生、歴史・文化、スポ
ーツなど多様で魅力ある資源を活用した沖縄独自の観光プログラム(高付加価値型観
光)の展開”により、
“沖縄観光ブランドを確立し、世界にも広く認知され、評価さ
れる世界水準の観光リゾート地の形成”を目指すとされている。
その中で、西海岸地域は“都市型オーシャンフロント・リゾート地”として、“諸
外国や県内外との交流拠点の形成”を担う役割にある。
6
第1章 広域的観点から西海岸地域の開発の検討調査
2)西海岸地域における関連プロジェクト
西海岸地域周辺の駐留軍用地跡地利用や開発動向について、以下を整理した。
那覇空港滑走路増設
①
大型MICE施設整備
②
③
凡例
白丸数字:駐留軍用地跡地利用
黒丸数字:周辺開発動向
⑥
④
⑤
⑦
⑧
⑨
図 西海岸地域周辺の駐留軍用地跡地利用や開発動向
【駐留軍用地跡地利用】
①陸軍貯油施設第1桑江タンクファーム、②キャンプ桑江南側地区、
③キャンプ瑞慶覧(施設技術部地区内の倉庫地区の一部)
北谷町において3地区
に関する跡地利用調査が
実施され、キャンプ桑江南
側地区においては跡地利
まちの中核を成し、
様々な連携が期待
される国際的
「知の拠点」
用計画の策定に資する調
査、
残り2地区においては
跡地利用に関する基礎的
調査により、
近接する3地
区間の役割分担、
機能連携
を踏まえた跡地利用計画
が検討されている。
図 3地区のイメージ
(駐留軍用地跡地利用推進
調査業務 陸軍貯油施設第
1桑江タンクファーム跡地利
用基礎調査 報告書(平成
26年3月)より)
7
第1章 広域的観点から西海岸地域の開発の検討調査
④キャンプ瑞慶覧(ロウワープラザ住宅地区)、⑤キャンプ瑞慶覧(喜舎場住宅地区の一部)、
⑥キャンプ瑞慶覧(インダストリアルコリドー等)
「中南部都市圏駐留軍用地跡地周辺整備検討調査(キャンプ瑞慶覧)」
(平成 26 年
3月)にて、キャンプ瑞慶覧返還予定地の機能や役割分担が検討されている。
図 キャンプ瑞慶覧の導入機能
(中南部都市圏駐留軍用地跡地周辺整備検討調査(キャンプ瑞慶覧)報告書(平成26年3月)より)
⑦キャンプ瑞慶覧(西普天間住宅地区)
平成 27 年3月に返還され、高度医療・研究機能の拡充、地域医療水準の向上、国
際研究交流と医療人材育成等による「国際医療拠点」として、琉球大学医学部・同附
属病院や重粒子線治療施設の立地が予定されている。
図 西普天間住宅地区跡地利用計画(修正案)(平成 26 年5月時点、宜野湾市作成)
8
第1章 広域的観点から西海岸地域の開発の検討調査
⑧普天間飛行場
普天間飛行場の跡地利用について、平成 24 年度に沖縄県及び宜野湾市で「全体計
画の中間取りまとめ」が策定され、方針に基づく具体的な検討が進められている。
図 配置方針図(全体計画の中間取りまとめ(平成25年3月)より)
⑨牧港補給地区
浦添市において牧港補給地区跡地利用基本計画が策定されており、まちづくりのテ
ーマとして「人・海・文化を活かした国際的エンターテイメント都市」と設定されて
いる。
図 牧港補給地区基本計画図(牧港補給地区 跡地利用基本計画(平成25年3月)より)
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第1章 広域的観点から西海岸地域の開発の検討調査
【周辺開発動向】
那覇空港滑走路増設
那覇空港の発着回数は年々増加しており、ピーク時間帯は処理容量に達している。
将来需要に対応するため、滑走路増設の工事が進められている。
■事業概要
・滑走路延長:2,700m
・公有水面の埋立:約 160ha
・工事着手:平成 26 年 1 月
・供用開始:平成 32 年 3 月
・総事業費:約 1,993 億円
図 那覇空港増設滑走路 計画図
(内閣府 沖縄総合事務局 開発建設部 那覇空港プロジェクト室ホームページより)
臨港道路(浦添線)
那覇港から中北部方面への臨港交通機能を強化し、港湾物流の円滑化を図るため、
「那覇港浦添ふ頭地区臨港道路(浦添線)」の整備が進められている。
■事業概要
・区間:浦添市港川∼西洲(港川で西海岸道路浦添北道路に接続)
・延長:2.5km
・総車線数:4 車線
・事業化:平成 17 年度
・供用開始:平成 29 年 4 月
図 臨港道路(浦添線) 計画図(内閣府 沖縄総合事務局 開発建設部ホームページより)
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第1章 広域的観点から西海岸地域の開発の検討調査
西海岸道路浦添北道路
那覇港・那覇空港方面へのアクセス向上と国道 58 号の混雑緩和を図るため、沖縄
西海岸道路の1区間として「浦添北道路」の整備が進められている。
■事業概要
・区間:宜野湾市宇地泊∼浦添市港川
・延長:2.0km
・総車線数:6 車線
・事業化:平成 18 年度
・供用開始:
(暫定 2 車線)平成 29 年 4 月
(本格供用)平成 32 年度以降
図 西海岸道路浦添北道路 完成予想図(浦添北道路パンフレットより)
大型MICE施設
「大型MICE施設整備と街づくりへ向けた基本構想」
(平成 26 年3月)がまとめ
られ、現在、施設建設地が選定されているところである。
■「大型 MICE 施設整備と街づくりへ向けた基本構想」の概要
整備の基本方針
①アジア地域を中心に増加する MICE 開催ニーズを早期に捉えるための整備
②沖縄独自の魅力を有する大規模 MICE 施設の整備
③長期の都市計画において MICE エリア形成に適した立地
④適切なエリアマネジメントによる地域が一体となった受入環境の実現
⑤利用者満足を得られる施設水準の実現と整備費用最小化への配慮
建設地の基本的考え方
①整備可能時期
③アクセス(容量、時間距離)
⑤用地特性による施設整備への影響
②用地の広さ・将来的な施設の拡張性
④MICE エリアとしての成立可能性
⑥地元自治体の協力体制
施設規模と整備・運営手法
①施設規模
・展示場(1∼2 万㎡) ・中小会議室(20∼30 室程度)
・多目的ホール(7,500 ㎡)
・音響、照明、座席等関連設備 ・併設駐車場
等
②整備・運営における民活可能性を検討
・MICE 施設は単体では減価償却までを含めた採算性の確保が困難
・設計、建設、運営の最適化を目的に、民間活力の導入を想定
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第1章 広域的観点から西海岸地域の開発の検討調査
アワセ土地区画整理事業
平成 22 年 7 月に返還されたアワセゴルフ場地区(面積約 46.8ha)において、「広
域交流拠点」
「村の新たな顔となる拠点」として「①公園・緑地の整備による環境の
創造」
「②医療施設・スポーツ施設による健康の増進」
「③リゾートショッピングモー
ルによる観光の振興」
「④病院、商業施設、スポーツ施設、LNG 設備による地域防災
拠点」を理念にまちづくりが進められている。
■主な施設
・イオンモール沖縄ライカム:
平成 27 年 4 月末開業予定
・中部徳洲会病院:
平成 28 年 4 月開院予定
図 現在の様子(H27.1.25 撮影)(アワセゴルフ場地区・跡地利用計画の概要より)
桑江伊平土地区画整理事業
平成 15 年 3 月末に返還されたキャンプ桑江北側部分(面積約 45.8ha)において、
北谷町における「町の都市核」として、町役場を中心とした業務拠点に持続発展可能
な産業の立地と良好な住環境を整備し、職住近接型のにぎわいと自然環境が調和した
快適な生活空間の創出を目指したまちづくりが進められている。
図
図 土地利用計画図(北谷町ホームページより)
12
第1章 広域的観点から西海岸地域の開発の検討調査
3)関係市町における開発・検討状況
①浦添市
●エンターテイメント性を備えたリゾートエリアの形成
臨海道路(浦添線)と西海岸道路浦添北道路の供用開始により、西海岸地域への大
幅なアクセス向上が図られることになる。
返還が予定されている牧港補給地区では、「人・海・文化を活かした国際的エンタ
ーテイメント都市」をまちづくりのテーマとして、リゾートコンベンション産業、文
化産業、健康・医療産業などの集積による跡地利用が検討されている。
那覇港浦添ふ頭の埋立てとして先行する「那覇港浦添ふ頭地区第一ステージ都市機
能用地」では、従来型の観光物産センターや商業施設とは異なるエンターテイメント
性を備えた観光型商業交流施設及びそれを補完する施設等の立地を目指している。ま
た、臨海道路(浦添線)より海側のコースタルリゾート地区では、人工ビーチやマリ
ーナ、クルーズ船バースなどの計画が検討されている。
図 牧港補給地区のイメージ
見直し中
図 港湾計画図及び第二ステージ現行計画イメージ図(浦添市ホームページより)
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第1章 広域的観点から西海岸地域の開発の検討調査
②宜野湾市
●国際競争力を持った都市型オーシャンフロント・リゾート地の形成
平成 26 年 3 月の「宜野湾市西海岸地域開発検討調査業務報告書」では、地域の既
存資源を活用しながら、スポーツ、食、医療機能等の拡充により、テーマの独自性や
質的向上により周辺地域における拠点機能と連携し、国際競争力を持つ都市的オーシ
ャンフロント・リゾート地の形成を目指している。
図 宜野湾市西海岸地域の全体構想 平面案
図 宜野湾市西海岸地域の全体構想 鳥瞰パース案
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第1章 広域的観点から西海岸地域の開発の検討調査
③北谷町
●アメリカンビレッジとフィッシャリーナ地区との連携によるさらなる魅力的な観光・商業地の形成
北谷町の西海岸では、昭和 56 年の米軍基地の返還以降、ハンビー地区、アラハビ
ーチ、運動公園、美浜タウンリゾート・アメリカンビレッジ、フィッシャリーナ地区
と整備が進められた。
美浜タウンリゾート・アメリカンビレッジは、平成 16 年に完成し、アメリカの雰
囲気を感じる商業地として賑わいをみせている。また、西海岸最後の計画地区として、
美浜タウンリゾート・アメリカンビレッジ
に隣接するフィッシャリーナ地区の事業
が進められ、
水産業とマリン産業が融合し
た新しい余暇・交流拠点となる北谷町海業
振興センター「うみんちゅワーフ」
(平成
26 年 12 月オープン)と世界的に有名なホ
テルチェーンの
「ヒルトン沖縄北谷リゾー
ト」
(平成 26 年 7 月オープン)が開業して
図 ヒルトン沖縄北谷リゾート
いる。
図 フィッシャリーナ地区イメージパース(北谷町ホームページより)
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第1章 広域的観点から西海岸地域の開発の検討調査
4)西海岸地域の現状
①立地特性
北谷町から浦添市までの西海岸地域は、県都那覇
の北に隣接し、総延長 15km ほどの沖縄本島の西海
岸に連なる地域である。
臨海道路(浦添線)と西海岸道路浦添北道路の供
西海岸道路
用開始により、那覇港及び那覇空港から国道 58 号
を経由せずにアクセスできるようになり、交通アク
セス性が向上する。
(那覇空港から沖縄コンベンシ
ョンセンターまで車で 15 分)
西海岸地域
また、地域内の牧港補給地区のほか、普天間飛行
場、キャンプ瑞慶覧、キャンプ桑江など駐留軍用地
那覇空港
返還予定地に近接している。
図 西海岸地域の位置
②観光客動向
沖縄県における平成 25 年度の観光客数は、658 万 300 人(前年比 11.1%増)で、
国内客、外国客ともに過去最高を記録した。特に外国人は 64.0%増と急増しており、
その約 4 割が台湾からで、韓国、中国本土、香港を加えた近隣諸国からの来訪者が 8
割強を占めている。
県外客を対象にした平成 25 年度観光統計実態調査では、
「中部西海岸」の訪問は全
体の 31.3%、宿泊は 14.4%となっている。
図 県外客の訪問地域(平成 25 年度観光統計実態調査より)
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第1章 広域的観点から西海岸地域の開発の検討調査
③土地利用・観光関連施設・自然環境等
【土地利用】
・北谷町については、大部分が観光ゾーンとしての土地利用が展開されており、現在
はフィッシャリーナ地区において観光関連施設の誘致が進められている。
・宜野湾市については、西海岸の南半分はコンベンションリゾートとしての土地利用
が展開されているが、北半分は工業や流通関連施設の立地が見られる。
・浦添市については、工業や流通での利用が主であり、今後、埋立地や駐留軍用地の
跡地利用においてリゾート地の形成が検討されている。
【観光関連施設】
・人工ビーチ、商業施設、コンベンション施設等が立地しているが、大規模ホテルは
少ない。
・観光にはそぐわないと考えられる施設が点在している。
【自然環境】
・サンゴ礁海岸を有している。
・海や緑の稜線への眺望景観に優れる。
図 西海岸地域の施設立地状況
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第1章 広域的観点から西海岸地域の開発の検討調査
5)西海岸地域を取り巻く環境の総括
前項までの内容を整理すると、西海岸地域は、駐留軍用地返還予定地における新市
街地形成や西海岸道路整備による交通利便性の向上、3つのリゾートエリア形成が期
待されることから観光客誘客のポテンシャルが高い地域であるものの、現状では、海
に面している地域でありながらも海を感じることが出来ないことや、海岸部や土地利
用の連続性に欠け、開発余地にも乏しいことから世界水準のリゾート地にはなり難い
と言える。
沖縄県が目指す世界水準の観光リゾート地に対して、西海岸地域が都市型オーシャ
ンフロント・リゾート地として諸外国や県内外との交流拠点としての役割を果たすた
めには、西海岸地域が有するポテンシャルを最大限に発揮した開発整備により、特有
のリゾート地形成を目指すことが考えられる。
西海岸地域は、
沖縄県に関する観光政策
観光客誘客のポテンシャルが
高い地域である。
外国人観光客の誘客拡大
観光の高付加価値化
西海岸地域における関連プロジェクト
周辺整備によるポテンシャル
の高まり
●駐留軍用地返還予定地にお
ける新市街地形成
●西海岸道路整備による交通
利便性の向上
●地域内における3つのリゾート
エリアの形成
関係市町における開発・検討状況
3つのリゾートエリアが形成
しかし、現状では
西海岸地域の現状
空港に近く、沖縄の魅力であ
る“海”を有する地域
リゾートにはそぐわない土地利
用や滞在機能が不足
世界水準のリゾート地にはな
り難い。
●海が感じられない
●連続性に欠ける
●開発余地に乏しい
西海岸地域が有するポテンシャルを活かした開発整備
・西海岸地域が有するポテンシャルを最大限に発揮した開発整備により、特有の
リゾート地形成を目指す。
18
第1章 広域的観点から西海岸地域の開発の検討調査
(2)有識者意見聴取
1)意見聴取の結果
西海岸地域の開発整備の方向性を検討するにあたっての参考として有識者意見聴
取を実施した。有識者からの意見概要は以下のとおりである。
有識者
涌井
史郎
専門:
地域振興、造園学
所属:
東京都市大学教授
日付:
平成27年2月2日
上原
良幸
専門:
沖縄振興、観光振興
所属:
沖縄観光コンベンシ
ョンビューロー会長
日付:
平成27年2月16日
稲田
純一
専門:
ランドスケープ
所属:
㈱ウィン代表取締役
日付:
平成27年2月18日
主な意見等
・将来GDPが世界の 18 位まで後退すると予測される日本の経済危機
意識のもとで、アジアの中心に位置する沖縄の開発は、成長過程の
東南アジアの富裕層をターゲットにした開発を考えていくべき。
・沖縄本島についても、山原の北部振興と中南部開発のバランスをどう
とるのか考えていくべき。
・独自の歴史文化や精神性が沖縄の良さであり、これを世界に向けて
情報発信していけばよい。
・これからの医療は、ストレスマネジメントやヘルスケアプロモーションと
いった「心のケア」が重要となってくるので、かつて長寿県であった沖
縄に合うのではないか。また、東南アジアから感染症がもたらされる可
能性があるので、感染症の研究に特化することも一つの案である。
・普天間飛行場の最大の魅力は「最高の場所」ということにある。全体を
考え、都市機能の充実を優先させたい。
・そのためにも行政がもっと土地を取得し、公共空間の充実を図ってほ
しい。
・海外から見て、沖縄の魅力は「自然」と「歴史・文化」である。
・海外からの観光客は予測を超えるペースで増加しており、今後もこの
傾向は続くだろう。それにより、住民との問題が発生するかもしれない
が、今後は観光客のことを抜きにしたまちづくりは考えられないのでは
ないか。
・普天間飛行場を交通結節点とし、鉄軌道にこだわらず、海沿いの
LRT や普天間飛行場でのパークアンドライドなど、交通のネットワーク
を考えていく必要がある。
・普天間公園を様々な人が交流する「出会いの場」とし、「最高の公
園」、「世界に冠たる公園」としてほしい。
・全体を見据えて保全し残すことと新しく作るまちの水と緑をどう育てど
う維持管理するか、最初のコンセプトが重要。沖縄には素晴らしい海
があり、普天間では東側の台地から西海岸にかけて水と緑がつながる
ことで豊饒な海を育てることにもつながるはず。ぜひ水と緑を繋げても
らいたい。
・国際的な都市間競争力を持つためにも、緑は都市環境に必要なイン
フラで、街をきれいに緑化し維持管理する経済力がないところには投
資は集まらない。
・世界的なリゾートは景観が統一され心地よさがある。そのためにも景
観的連続性、バランスを考えることが重要になる。
・シンガポールも時間をかけて緑を創出してきたので、時間はかかるだ
ろうが沖縄らしさを魅せられれば中国文化圏から人が集まってくるだ
ろう。
・沖縄の環境(台風と塩害)を乗り越える緑を創出する特化戦略がある
とよい、例えば世界一の芝生を目指すとか。それにより管理予算のか
け方も異なる。
・また、沖縄の医療は可能性がある。国内でも名だたる名医がいて自分
も北部病院にて冠動脈ステント治療でお世話になった。
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第1章 広域的観点から西海岸地域の開発の検討調査
有識者
東
良和
専門:
観光振興、経済
所属:
沖縄ツーリスト㈱
代表取締役会長
日付:
平成27年3月3日
大谷
健太郎
専門:
観光政策
所属:
名桜大学上級准教
授
日付:
平成27年3月4日
主な意見等
・外国人観光客は、“日本”を求めている。清潔、安心・安全、日本食、
日本製品を求めている。
・沖縄のリゾート地は、 空港から近く、また、リゾート地内の横移動が少
ないことが特徴であり、家族層にとって便利なリゾート(ファミリーコンビ
ニエンスリゾート)と言える。
・“量”と“質”は相反するものではなく、“量”があってこそ“質”が保たれ
る。西海岸地域は、大きなキャパシティを持っているため、“量”を引き
寄せるために開発すべき。
・旅行業法の緩和による容易な旅行業免許の取得、旅館業法の緩和
による宿泊機能の集積が必要と考える。
・海外から見たときに、どこまでの範囲を一つの地域として設定して打
ち出していくか、エリア分けが重要な点である。北谷町までを那覇とし
て捉えるかが大きな問題である。
・富裕層の呼び込みには、その方々の生活レベルを維持できる環境が
必要であり、特に“言葉”の不自由さを感じさせないことが重要である。
・西海岸地域の海沿いを歩いて楽しめるウォーキング旅行(参考:済州
オルレ)の展開が考えられる。その際、歩行専用の道があると良く、工
場や倉庫地帯は緑やアートで隠すなどの工夫を施す。
・重粒子線治療は日本でのみの治療法であり必要性は高い。また、日
本はリハビリの先進国でもある。沖縄においては、平和の礎の心で敵
も味方も(戦争の敵国であっても)受け入れる療養施設として打ち出し
てもよいのではないか。
・外国人観光客は、沖縄のありのままの自然に魅力を感じている。あり
のままの自然を提供する北部地域との役割分担を考え、西海岸地域
は徹底した開発による都市型リゾート地の模倣となることを目指しても
よい。
・空港の着陸料の優遇が世界と比較すると低いため、その点での誘引
方策は考えられるのではないか。
・西海岸地域内において、富裕層をターゲットにした質の高いリゾート
エリアや地域に利用されるリゾートエリアなど性格の異なるリゾート地
があり、それぞれが連携するあり方がよいのではないか。
・沖縄IT津梁パークのようにビーチに近いリゾートオフィスの考えがあっ
てもよい。
・海やマリーナ、コンベンション施設がある「西海岸地域」と、コンベンシ
ョン機能を補完する宿泊施設や商業施設の導入が想定される「普天
間飛行場跡地」、国際医療拠点となる「西普天間住宅地区」の3つの
専門:
連携が重要である。
都市計画、地域づく ・空港から読谷村までをつなぐ西海岸道路の途中に位置する交通利便
り
性を活かすことが一番重要であり、那覇空港と北部のリゾート地、東海
岸地域とをつなぐ拠点となる。
所属:
・海岸に面していながらも歩けないことが欠点であり、海を見て楽しめる
N PO 沖縄の 風景 を
プロムナードの整備が必要である。
愛さする会理事長
・浦添エリアにおいては、那覇軍港との機能的な連携を考えるべきであ
る。
日付:
平成27年3月10日
池田
孝之
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第1章 広域的観点から西海岸地域の開発の検討調査
有識者
下地
芳郎
専門:
観光政策
所属:
琉球大学教授
日付:
平成27年3月30日
主な意見等
・那覇空港から北谷町までのエリアで考えるべきであり、その中で歩い
て楽しめるウォーターフロントをどうつくるかが西海岸地域の価値を高
める大きなポイントとなる。
・公共交通機関(バス、地下鉄、モノレール、LRT)の整備は世界的な
観光地として重要な要素であり、西海岸地域の一定区間でもよいので
公共交通機関の整備が必要である。
・西海岸地域は、自然と都市とが融合したエリアであり、沖縄本島内で
の連携だけでなく、慶良間諸島との連携も考えることで、「都市」と「自
然」と「島」の3つが重なるコンセプトが成り立つ。
・住民が一番住みやすい環境づくりを最優先し、そこで住民と観光客と
が交流するといった「住環境」との連携のほか、次世代の人材育成や
日本語の研究拠点などの「教育」、観光客に対する危機管理などの
「医療」面での連携が重要である。
・都市型とはビジネスが成り立つことであり、仕事もしながら遊ぶといっ
たように、ビーチリゾートとビジネスリゾートの組み合わせが必要であ
る。
2)意見等の整理
有識者意見より整理される西海岸地域の開発整備にあたっての参考となるキーワ
ードは、以下のとおりである。
①沖縄の魅力
・自然(海)や独自の歴史文化
②西海岸地域の役割
・交通利便性を活かした都市型のリゾート地
(ありのままの自然を提供する北部地域や周辺離島との役割分担)
・ビーチリゾートとビジネスリゾートの組み合わせ
③主なターゲット
・県外からの富裕層及び家族層
④リゾート地としての環境
・海沿いを歩いて楽しめること
・統一感や連続性に配慮した緑や景観による心地よさがあること
・住みやすい環境であること
・公共交通機関による移動が可能なこと
21
第1章 広域的観点から西海岸地域の開発の検討調査
2.駐留軍用地跡地利用計画等を踏まえた牧港補給地区と西海岸地域の
開発に向けた広域的観点からの課題の整理
前項を踏まえ、西海岸地域の開発整備の方向性を整理し、開発整備にあたっての重
要な要素になると考えられる「拠点機能」
「交通」
「海岸」
「水と緑」
「景観」の観点か
ら課題及び実現方策を整理した。
(1)西海岸地域の開発整備の方向性
西海岸地域が有するポテンシャルを最大限に発揮した開発整備により、特有のリゾ
ート地形成を目指すにあたって、有識者意見を参考に、西海岸地域の開発の方向性を
以下のように整理した。
西海岸地域の開発整備の方向性
○都市に近接する利便性や機能性と安心・安全性を備えた質の高い都市型リゾー
ト地
○那覇空港と北部地域、東海岸地域の結節拠点
○駐留軍用地返還予定地との連携
○北谷町、宜野湾市、浦添市において、それぞれが特色を持ったリゾートエリア
を形成し、それらの連携・役割分担による一体的・連続的なリゾート地形成
(2)西海岸地域の開発整備にあたっての課題及び実現方策
上記の方向性を踏まえ、開発整備にあたっての課題及び実現方策を以下の観点から
整理した。
●拠点機能:都市型リゾート地としての施設や土地利用の視点
●交
通:西海岸地域へのアクセスや地域内における移動の視点
●海
岸:沖縄の魅力である“海”を活用する視点
●水 と 緑:質の高いリゾート地としてうるおいと心地よさを提供する視点
●景
観:質の高いリゾート地としての雰囲気形成や眺望の視点
各要素について、現状と関係市町における検討状況から課題を整理し、開発整備に
向けた方針及び実現方策を次頁より示す。
22
第1章 広域的観点から西海岸地域の開発の検討調査
1)拠点機能(施設、土地利用)
①現状
北谷町及び宜野湾市において、商業施設や娯楽施設の立地によるリゾートエリアが
形成されているものの、地域内にはリゾート地にはそぐわない施設の立地も見られ、
一体的・連続的なリゾート地としての土地利用が展開されていない状況である。
また、中部及び北部の西海岸地域と比較するとリゾートホテルは少ない。
●オーシャンフロント・リゾート地形成の視点から見た現状認識
北谷町ではビーチやアミューズメント施設、ホテルが立地する観光リゾートゾーン
として、宜野湾市ではビーチやコンベンション施設、ホテルが立地するコンベンショ
ンリゾートゾーンとしての土地利用が展開されている。一方、戸建住宅や工業・流通・
商業混在エリアや工業・業務・住混在エリアなどリゾート地にはそぐはない土地利用
も見られ、一体的・連続的なリゾート地としての土地利用が図られていない状況とな
っている。
観光資源として活用されている
区間
観光にはそぐわない土地利用が
されている区間
今後の連携が考えられる区間
米軍基地
図 オーシャンフロント・リゾート地形成の視点から見た現状認識
(中南部都市圏駐留軍用地跡地周辺整備検討調査(西海岸地域)報告書 平成26年3月)
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第1章 広域的観点から西海岸地域の開発の検討調査
●市町村別宿泊施設の状況
市町村別宿泊施設の状況をみると、浦添市、宜野湾市、北谷町は他市町村と比較し
て軒数及び客室数ともに少なく、浦添市から北谷町にかけての西海岸地域は、県内に
おいて宿泊機能が弱い地域となっている。
図 市町村別宿泊施設の軒数
(平成 25 年「宿泊施設実態調査」(沖縄県文化観光スポーツ部観光政策課))
図 市町村別宿泊施設の客室数
(平成 25 年「宿泊施設実態調査」(沖縄県文化観光スポーツ部観光政策課))
24
第1章 広域的観点から西海岸地域の開発の検討調査
●沖縄県内におけるリゾートホテルの立地状況
県内におけるリゾートホテルの立地状況をみると、中部から北部にかけての西海岸
側に多く立地しているが、
浦添市から北谷町にかけての西海岸地域には5軒しか立地
しておらず、他地域と比較すると宿泊施設は少ないことが伺える。
ヒルトン沖縄北谷リゾート(346室)
図 沖縄県内リゾートホテル立地図(平成25年版観光要覧)に一部加筆
25
第1章 広域的観点から西海岸地域の開発の検討調査
②関係市町における検討状況
浦添市では牧港補給地区と那覇港浦添ふ頭地区の埋立てによるリゾートエリアの
形成、宜野湾市では仮設避難港の活用を中心としたオーシャンフロント・リゾートエ
リアの形成、
北谷町ではフィッシャリーナ地区とアメリカンビレッジ地区との連携に
よるさらなる魅力的な観光・商業地の形成といったように、各市町においてリゾート
地形成に向けた検討が個々に進められている。
●浦添市における検討状況
牧港補給地区では、
「人・海・文化を活かした国際的エンターテイメント都市」を
まちづくりのテーマに、西海岸側を産業振興地区とし、
「リゾートコンベンション産
業地区」
「文化産業地区」
「健康・医療産業地区」の3つの産業地区を配置している。
図 牧港補給地区跡地利用の基本計画図
(牧港補給地区跡地利用基本計画パンフレット)
浦添ふ頭地区第1ステージでは、埋立てが完了し、商業・業務・レクリエーション
及びホテル等の誘致に向けて民間事業者の公募が行われている。
浦添ふ頭地区コースタルリゾート地区では、物流から人流への転換により交流厚生
用地の拡大が検討されている。
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第1章 広域的観点から西海岸地域の開発の検討調査
見直し中
図 那覇港浦添ふ頭における埋立計画
(西海岸開発事業に係る意見交換会開催案内)
●宜野湾市における検討状況
宜野湾市では、宜野湾市西海岸地域の連続性を阻害している仮設避難港をオーシャ
ンフロント・リゾート開発の重点課題として設定し検討が進められている。
沖縄県が検討を進めている大型 MICE 施設あり・なしの両ケースにおける開発シナ
リオが設定されており、両ケースとも仮設避難港を中心にリゾート関連施設(ショッ
ピング・ホテル・アミューズメント)の誘致が検討されている。
図 大型 MICE 施設ありの場合の開発基本構想案
(宜野湾市西海岸地域開発実現化方策検討調査業務 報告書(案)より)
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第1章 広域的観点から西海岸地域の開発の検討調査
●北谷町における検討状況
フィッシャリーナ整備事業では、周辺地区の商業機能と連携のもと、水産業と観
光・海洋レクリエーションなどのマリン産業とが融合した新しい余暇・交流活動の拠
点となる総合的まちづくりをめざし、
「人にやさしい、人がやさしい」
「海を楽しめる、
落ち着いたくつろぎ空間」をテーマにホテル、商業、フィッシャーマンズワーフ等の
施設・機能の集積が進められている。
海業と産業の融合をテーマにしたマリンアクティビティの総合窓口(うみんちゅワーフ)
・ダイビング等のマリンレジャ
ー船を収容する施設、マリン
アクティビティや体験学習の
総合窓口、北谷漁業共同組合
のレストラン、直売店、市民
支援のチャレンジ店舗など、
地元・観光客の誰にでも利用
でき楽しめる海業振興施設
リゾートウェディングチャペル(建設中)
フィッシャリーナ地区
宿泊施設(ヒルトン沖縄北谷リゾート)
・地上 9 階建、客室数 346 室(う
ち約 9 割がオーシャンビュー
ルーム)、敷地内には屋外・屋
内プールと緑豊かな植栽を配
したガーデンがあり、“水と緑
による楽しみと寛ぎ”の空間を
提供
図 フィッシャリーナ地区の施設立地状況
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第1章 広域的観点から西海岸地域の開発の検討調査
③課題
●土地利用の連続性の創出、機能の連携・役割分担、滞在機能の強化
一体的・連続的なリゾート地の形成にあたっては、土地利用の連続性に配慮する必
要があり、特有のリゾート地の形成にあたっては、各地が均一のリゾート機能を提供
するのではなく、各地の特性を活かしたリゾートエリアの形成及び強化による連携・
役割分担が必要となる。
また、北谷町から浦添市にかけての西海岸地域に少ない滞在機能の強化も必要とな
る。
29
第1章 広域的観点から西海岸地域の開発の検討調査
④開発整備に向けた方針
課題を踏まえ、拠点機能における開発整備の方針を示す。
拠点機能の考え方
:
周辺都市の特性を踏まえたリゾートエリアの形成(強化)と連携・役割分担
周辺に存在する駐留軍用地返還予定地のまちづくりの方向性を踏まえ、各リゾートエリアにおいて特化すべき機能を設定し、それらが連携・役割分担することにより西海岸地域が一体的なリゾート地となる。
3つのリゾートエリアの形成
・浦添エリアにおいては、埋立地区におけるエンターテイメント性を備え
た観光型商業施設の推進及び残されている貴重な自然環境の活用を踏ま
え、
「エンターテイメント・自然学習エリア」の創出
・宜野湾エリアにおいては、新たな沖縄の振興拠点に隣接する海岸部とし
て、コンベンション施設の規模に応じたコンベンションの展開を図るこ
とから周辺への MICE サポート施設の集積による「コンベンションエリ
ア」の確立
飲食・買い物・マリンレジャーエリア
・また、キャンプ瑞慶覧(西普天間住宅地区)との連携による医療ツーリ
ズムの展開に資する「宿泊・滞在エリア」の形成
・北谷エリアにおいては、既存商業機能とフィッシャリーナ地区に展開さ
れているマリンレジャーとの連携による「飲食・買い物・マリンレジャ
ーエリア」として強化
宿泊・滞在エリア
コンベンションエリア
エンターテイメント・自然学習エリア
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