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PDFダウンロード - ベネッセ教育総合研究所
Report
これからの英語教育の
グランド・デザインの提案
こ
こ数年、日本のみならず世界中で英語教育への関心が高まっている。
日本においても、
「
『英語が使える日本人』の育成のための戦略構想」や
小学校での英語教育など、さまざまな動きが起きている。
それでは、グローバル化がますます進む今後を見据え、日本では何を目標に、
どのような枠組みで英語教育を進めればよいのか。
この問いに対して提唱された新たな理念・理論「ECF」とその活動母体である
ARCLEを紹介する。さらに、識者に今後の課題と展望をうかがう。
一貫した英語教育を実現するための実証的な研究・開発組織 ―ARCLE―
グローバル化が進む中、日本の英語教育についても改革が迫ら
として学ぶ(EFL=English as a Foreign Language)日本の英
れています。それはカリキュラムや指導法だけにとどまらず、英
語教育に対して、新たな理念・理論としての「English Curriculum
遡った根本的な課題―つまり、英語
語教育の理念・理論にまで逋
Framework(ECF)
」
を研究・開発しました。
教育を通して育てるものは何か、
そして実践的な英語コミュニケー
この理念・理論を基盤として、今後は発達段階に応じた英語教
ション能力の定義・枠組みについての問い直しを意味しています。
育の目標やコンテンツをデータベース化するなどの具体化・実体
このような課題認識の下、英語教育におけるさまざまな分野の
化とその検証を進め、さらに指導法・教材などの研究・開発を実
研究者が集まりARCLE(Action Research Center for Language
証的に進めていきます。また、公開フォーラムやワークショップ
Education)が結成されました。ARCLE では、特に英語を外国語
なども企画し、この研究活動への参画者を広げていく予定です。
図[1] 研究活動の構造
ECF 研究
ECFの理論を実証的に深めていく。
(現行のECFのimprove)
● ECFの理論的枠組みから、
さまざまな実践に汎用性ある
ツールを開発し、
その有効性を
実証していく。
研究会メンバー
● コンテント・シラバス
レベル・ディスクリプション開発
ECF
DB開発
(理念・理論)
CAN-DO※
項目開発
実践研究の
ツールとして活用
指導法・教材研究
ARCLEが場や情報を提供
研究
チーム
48
研究
チーム
研究
チーム
研究成果をARCLE紀要に掲載
Action
Research
フィードバック
応用
アレン玉井光江
[文京学院大学教授]
金森強
[愛媛大学教授]
田中茂範
[慶應義塾大学教授]
根岸雅史
[東京外国語大学大学院教授]
吉田研作
[上智大学外国語学部長・教授] 実践から理論への
フィードバック
実践研究
研究会メンバーが、各教育現場で
実践・調査(→データ収集)
研究助成
※CAN-DO(STATEMENT)
英語を使って実際にどのようなことが
できるのかを記述した項目
インタビュー
幼児から成人まで一貫した英語教育の枠組み―ECF―
●
田中茂範[慶應義塾大学環境情報学部教授]
A
RCLE の研究活動成果「English Curriculum Framework(ECF)」は、
発達的観点を取り入れ、幼児から成人まですべてを包括する、
世界でも恐らく初めての英語カリキュラム・フレームワークだ。
たなか しげのり
英語教育のグランド・デザインに関するさまざまな示唆や提案を含む ECF について、
慶應義塾大学環境情報学部教授。
●
応用言語学的な視点から、意味論、英語教育論、
編集主幹の田中茂範教授にお話をうかがった。
コミュニケーション論を展開。
主な著書に『認知意味論』
(三友社出版)
、
『コトバ
の〈意味づけ論〉
』
(共著、紀伊國屋書店)など。
英語教育を取り巻く現状と課題
世界中のさまざまな人々が使う「英語」は、何千もある言語の
中で、
「国際語」と呼ばれる言語です。この「国際語としての英
ここでいう「多文化」とは多様性のことであり、文化的個性を
備えた対話相手、他者を指します。他者とは、違いをもたらす存
在であり、つまりは違いとどう向き合っていくかということが重
要となります。
語」は、昨今特に日本国内では小学校への導入をめぐってさまざ
また「多文化を生きる」ためには、
「たくましさ」と「しなやか
まな議論が行われています。しかし、それ以前に、日本の英語教
さ」が必要です。
「たくましさ」とは自分で考え、判断し、行動す
育には小学校から大学までを貫く健全なカリキュラム・フレーム
る自立性であり、主体性のある自己表現を行うということです。
ワークがないという大きな問題があります。一貫したフレームワ
そして対話相手としての他者がいます。他者と関係調整を図る
ークがなくては、例えば小学校と中学校で教える内容にずれが生
ためには自己表現力が必要であり、それには対話力が必要です。
まれてしまい、英語嫌いを生み出すことにもなりかねません。英
これが「しなやかさ」です。
「しなやかさ」がないと相手を受け入
語教育のグランド・デザインを描くことは急務なのです。
れたり、違う物と向き合うことはできません。
このような状況の中で必要なのは、発達的観点を取り入れた
「英語カリキュラム・フレームワーク」であると我々は考え、その
図[2] タスク処理と言語リソース
構築に取り組んでいます。このフレームワークの構築に当たって
は、具体的にテストや教材、教授法などに活用できるよう、発達
段階別に、何をどう教え、結果をどのように評価するかという明
「英語コミュニケーション能力」です。
タスク処理
[ task handling ]
しかし、
「英語コミュニケーション能力」についてお話しする
語彙
言語リソース
[ language resources ]
文法
2006
前に、
「英語コミュニケーション能力」を考える上での前提条件
を確認しておく必要があります。
それは「異文化」の問題です。現在の状況においては、従来の
ような「異文化理解」の考え方には無理があります。従来は「外
国語としての英語」であったため、日本文化vsアメリカ文化とい
ったことがあり得たでしょう。しかし、
「国際語としての英語」を
学ぶ現在は、世界中のさまざまな人が英語を介したやり取りを行
うため、異文化ではなく「多文化を生きる」という状況です。
Reference Book
『幼児から成人まで一貫した
英語教育のための枠組み─ ECF』
NO.03
確な指針を示さなければなりません。そのための指針となるのが
機能表現
ARCLE 編集委員会著
田中茂範ほか編集
リーベル出版
2005 年 8 月刊行
49
これからの英語教育のグランド・デザインの提案
Report
ECF が提案する
そしてこのプロセスは、発達段階が進むにつれて複雑にはなる
「英語コミュニケーション能力」
ものの、少なくとも発達段階における代表的なタスクと、それを
「英語コミュニケーション能力」については、従来からさまざ
処理するための代表的な言語リソースについては、ある程度まと
まな定義がなされています。しかし、これまでの「英語コミュニ
ケーション能力」の定義はいずれも構成要素を分類的に定義した
ものにすぎませんでした。
ECF においては、
「英語コミュニケーション能力」は
「タスク処
まった記述をすることができるでしょう。
「タスク処理」と「言語リソース」との複合として捉えた「英語
コミュニケーション能力」からは、小学校から大学まで一貫したカ
リキュラム編成や到達目標、その測定の狙いなども見えてきます。
理」
と「言語リソース」の相互運動であると捉えています。
(図2)
「タスク処理」
とは、
「どんなタスクを、どういった言語を使って、
ど
れだけ機能的にこなすことができるか」
ということです。
そして、
あ
るタスクを言語的に処理するために必要となる言語知識が、
「言語
リソース」です。
「言語リソース」は「語彙」
「機能表現」
「文法」という三つから
なり、それぞれは相互に関連します。ここで大事なのは「言語リ
ソースは語彙・機能表現・文法から構成される」というだけでな
ECF を教育実践として実現するために必要なこと
ECFは従来、枝分かれ的で分類的であったコミュニケーション
能力をタスク処理と言語リソースとして捉え、発達的観点を取り
入れた「英語カリキュラム・フレームワーク」という点で世界的
に見ても画期的なものです。
しかし、ECFを実践、テストや教材開発、授業へ生かすには、
く、
「語彙力・機能表現力・文法力」とは何であり、そしてそれ
ECFを具体化し、各発達段階での到達目標(レベル記述)や、そ
らがどういう関係にあるのかを、明確に示すことです。
こに到達するための学習内容(コンテント・シラバス)の開発が
「使い分けつつ使いきる力」というのは語彙力を規定する際の
必要です。そして、そのためには実践研究(図1)などの手法で
言葉ですが、例えば、speak、say、talk などの意味の近い単語の
各発達段階における典型的なタスクなど、学習者の実態に関する
使い分けや、一つの単語をさまざまな状況に応じて使うことがで
データを収集することが必要です。
きる、これが語彙力です。
前述の規定があれば、基本語を使い分ける指導やテストを作成
今後はARCLEを通して、このような活動を広げていきたいと
考えています。
する際に「どの部分を測定しているのか」を明示することができ、
これはテストの「理論的妥当性」の確保につながります。
図[3] らせん状コミュニケーション発達モデル
「発達的観点」を取り込んだ
フレームワーク
ECFの最大の特徴は「発達的観点」を取り込んだフレームワー
stage 6(18歳以上)
クにあります。
ECFでは発達段階を「らせん状のコミュニケーション発達」と
して捉え(図3)
、それぞれの上限をタスクと言語リソースの両面
から記述し、データベースとして整備しています。この「らせん
状のコミュニケーション発達」は、
「英語コミュニケーション能
力」を量的にのみ規定しようとするのではなく、質と量の両面か
stage 5(15∼17歳)
stage 4(12∼14歳)
stage 3(9∼11歳)
ら規定する重要な概念です。
すなわち、幼児には幼児に必要とされる「コミュニケーション能
力」があり、自分の関わる世界の中で生きています。その後成長し、
発達段階が進むと関わる世界や関わり方も変わってきます。しかし、
50
このプロセスは生まれてから生涯を終えるまで一生進むのです。
stage 2(6∼8歳)
stage 1(3∼5歳)
対談:こ れ か ら の 社 会 に 対 応 す る 英 語 教 育 の 在 り 方 と は
─日本の英語教育の新たな方向性を模索する─
●
平田和人[国立教育政策研究所教育課程研究センター・教育課程調査官]
吉田研作[上智大学外国語学部長・教授]
「英
語が使える」
「英語の実践的コミュニケーション能力の育成」
ということがいわれるようになって久しいが、
果たしてそれらは具体的にどういうことなのだろうか。
これからの国際社会を生きる日本の子どもたちに身に付けさせるべき英語の力とは?
そのために解決しなければならない問題とは?
そして日本の英語教育はどうなっていくのが望ましいのか。お二人の専門家にお話をうかがった。
Q
「英語が使える日本人を育てる」ということがよくいわれ
ますが、具体的にどのように捉えたらいいのでしょうか?
の方が大きなウェートを占める場合もあります。
もう一つは、モティベーションの問題が重要でしょうね。
日本という環境では、いかにモティベーションを高めるかと
平田
「実践的コミュニケーション能力」を育てることが重
いうことも絶対忘れてはいけない。実践的であればモティベ
要と思われていますが、文部科学省が「実践的」という言葉
ーションは高まります。特に中学生、高校生にとってはその
を使ったのは「どういう視点に立ってその能力を育てていく
問題が大きいと思いますね。
か」というメッセージを伝えたかったからです。学習者はそ
Q
日本という環境の中でモティベーションを、どのように
ては、挨拶できることが実践的でしょうし、大学生にとって
平田
意欲を引き出すということについては、日本の状況と
は論文を読めて要約できることになるかも知れません。この
いうのはけっこう厳しいんですね。日本という国は、日本語
ように、それぞれの段階に応じた学習内容、指導方法を考え
が非常にしっかりしていて、日常の中で英語の必要性を感じ
た方がよいでしょう。
ることが少ない。例えば、英語が使えれば給料が倍になる、
の使用の必要性に応じて学習していくことが重要です。小学
生や中学生、高校生、大学生、あるいは、ビジネスマン、そ
扱っていけばよいのでしょうか?
そういうことはないわけです。このような状況にあってモテ
で、表層的な会話能力と受け取られた時期もあったのですが、
ィベーションを引き出すことは指導者にとって重要な側面
言語能力にはさまざまな技能が含まれ、会話に限ったことで
で、英語の知識を与えるとか、スキルをどうやって身に付け
はありません。
させるかということと同様に大事です。それが教育現場では
ゲームとかタスクにつながるのだと思います。
吉田
NO.03
それとコミュニケーション能力というと、音声に偏った形
2006
れぞれにとって何が「実践的」かは違います。小学生にとっ
同感ですね。英語を使ったコミュニケーションの場合、
英語は道具であって、英語を使って何ができるのか、それが
吉田
ゲームとかタスクというと、よく現場の先生たちは
基本的に一番大事です。思考すること、詩などを書くことま
「このタスクをやって何が覚えられるのか、このゲームをやっ
で含まれます。音声に限らず、文字でのコミュニケーション
てどういう表現が身に付くのか」ということがあります。し
51
これからの英語教育のグランド・デザインの提案
Report
よしだ けんさく
●
上智大学外国語学部英語学科教授。
外国語学部長、国際言語情報研究所所長。
専門は応用言語学。
主な著書に、
『日本語を活かした英語授業
のすすめ』
(大修館書店)など。
ひらた よりと
●
国立教育政策研究所教育課程研究セン
ター・教育課程調査官。
文部科学省初等中等教育局視学官。
主な著書に『外国語(英語)科の授業
をどう創るか』
(共著、明治図書出版)
、
『新中学校教育課程講座 外国語』(ぎ
ょうせい)など。
かし、このゲームは「英語って楽しいな」と思わせるための
か判断しにくい。どうしてもペーパーの上に出てくる点数し
ものであったり、このタスクは「英語でコミュニケーション
か見えませんから。でも実はすごくよく分かっているという
できて嬉しいな」と感じさせるものであったり、楽しいとい
場合もあるんですね。そういう生徒の内面を見ることができ
う気持ちを引き出すものであって、子どもたちが楽しんでや
る評価がすごく大事だと思います。
っていたら、意欲はそれによって増すし、モティベーション
も駆り立てられる。むしろそれが大事なのであって、言語要
平田
素が身に付くかどうか、それは二次的なもので、それをはき
欲・態度」というのは、どちらかというと、生徒の真の内面
違えている人が多いですね。
を捉えるというよりも、それが行為として表れてきたこと、
文部科学省のいう「コミュニケーションへの関心・意
というレベルにとどめています。本当に関心や意欲があるの
平田
それはたぶん評価と関わってくるのだと思います。今
かということを深く内面まで見るのは、通常の観察では難し
行われている評価というのは、目標を設定して、その目標の
い。それよりも「こういう活動をやりましょう」といったと
達成を蓄積しながら行っていくものです。楽しいことは重要
きに、ちゃんと取り組んでくれるかどうか。取り組むことに
ですが、ゲームなどは特にそうで、そのゲームの役割や目的
よって生徒たちは達成感が得られたり、言語能力が身に付い
を意識していないと、単にゲームを次から次へとやるだけの
ていったりする。それを評価の対象にするのがよいのではな
授業になってしまう場合があります。限られた時間をどう使
いかと思います。
うか、授業研究していかないといけません。少なくとも指導
者はそれを意識しないといけないと思います。
実際、生徒たちが喜んでやっているのか、取り組んでくれ
ているのかは、実は指導者側の問題も大きいですよね。意欲
を引き出すという指導者側の工夫と、生徒たちのコミュニケ
吉田
ちょっと極端なことをいいましたが、基本的に評価す
ーションへの関心・意欲・態度というのは表裏一体です。
るときはきちんと評価すればいいのであって、過程のすべて
が、結果に直接つながらないといけないと思ってしまうと、
先生にも生徒にも大きな負担になります。
Q
実際、指導する先生方の意識や指導は変わってきている
吉田
私自身 20 年ぐらい教師の研修に携わってきて、ずいぶ
のでしょうか?
ゲームに限らず、どんな授業でもそうですが、おとなしく
52
てほとんど発言しない子どもなどは、分かっているのかどう
ん先生たちの意識は変わってきたと実感しています。ともか
ピーカーの音声を繰り返し練習するということはあまりしな
く先生自身がコミュニケーションすることが大事なんだと実
い。日本人は、どこまでできればよいという実感が弱いので、
感してくれていれば、それは生徒に伝わります。
完璧なものに向かって、とめどもなく進んでいくというスタイ
ルが染み込んでいる。これでよいという思い切り、あとは中身、
平田
確かにこの 10 年、20 年を見ると、先生たちの意識はず
自分のいいたいことの方が大事という発想の転換が必要です。
いぶん変わってきたと思います。これからの生徒たちにとっ
てコミュニケーションできる、英語が使えるということが必
吉田
要だということは認知されてきた。それでもなお、今の日常
いか」と聞くと、宇多田ヒカルとか、工藤夕貴とか、日本人
生活において、英語ができるとこんなに便利で楽しいよ、と
で英語をうまく使える人の名前が出てきます。クリントンと
いうことを伝えるのはかなり難しい。それは先生だけの問題
かブッシュとかは出てこない。海外の女優の名前も出てこな
ではなく、本人や家庭、社会を含む全体のシステムの問題だ
い。学習のモデルとしてはネイティブの英語でよいわけです
と思います。
が、それと目指す目標は違って、自分はここまで行きたい、
例えば、近くに海がない、川もないところで、でもやっぱ
今の中学生や高校生に「誰のような英語をしゃべりた
自分はこうなりたいという具体性のあるものが出てきます。
り泳げないと困るからプールをつくりましょう、となる。日
今は過渡期にあるのだと思います。最近は ALT の国
本国中誰でも泳げるようにしようと思ったら、この子は一生
平田
溺 れることなどないと思われる山奥にもプ
ここに住むかぎり搦
籍も多様化してきて、必ずしもネイティブでない人でも受け
ールをつくって泳げるようにするわけです。そこで泳ぐ練習
入れられるようになっています。テレビなどを見ていても、
をして、泳ぐのってけっこう楽しいよね、という体験をさせ
以前は英、米に偏っていたのが、最近はいろいろな国の人の
る。日本の英語教育が置かれている状況はそれと似ています。
英語を聞けるようになってきましたね。
吉田
吉田
性が出てきています。日本に住む外国人の数も年々増えてい
やオーストラリア人に英語を吹き込んでもらいました。昔な
る、インターネットの世界を考えてみても、その実用性が高
ら文句がたくさん来たと思いますが、実際は誰も文句をいう
まっていることは事実です。ただし、先生自身が英語で情報
人はいなかった。それだけいろいろな種類の英語ということ
収集したり、英語の新聞を読んだり、外国の人を案内したり
に対する感受性は高まっています。NHK の海外放送では日本
という体験をしたことがないと、なかなか子どもには伝わら
人のアナウンサーたちが英語をしゃべっています。それが受
ない。プールは確かによい喩えですが、
「プールでいい」とな
け入れられているのですから、日本人の英語で十分なのです。
ってしまうのは怖い。今の世の中はもう少し変わってきてい
私は、国内の外国人向けに英語で日本を紹介する放送局があ
て、
「いつまでもプールではない」という認識を先生に持って
ってもよいと思います。それを通して、日本人の英語でもよ
もらいたいし、それを生徒にも伝えてほしいと思います。
いという認識が広がっていきます。
Q
そうした日本の環境の中で、学習者は英語学習の目標を
平田
どこに置けばよいのでしょうか?
で含めて日本人らしい英語が堂々と使われるようになると思
日本に英語が本当に根付いたときには、発音、表現ま
います。英語が道具であるとすれば、日本語を使うときと同
平田
日本人として英語が使えるとはどういうことなのかと
じように、自分のいいたいことが心地よく伝えられるような
関わってきます。英語を学習として捉えると完璧性を求めて
英語が出てくる、そのような言語として考えられるようにな
ネイティブスピーカーがモデルになりますが、コミュニケー
っていることでしょう。
2006
私が関わっている英語の教材では、役に応じて日本人
NO.03
ただ、実際には、日本の現状ではもう少し英語の必要
ションの手段として捉えると、そうではなくなる。例えば、
アジアの国では実用レベルを求めているので、ネイティブス
53
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