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東京オリンピック・パラリンピック のレガシーと大阪経済

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東京オリンピック・パラリンピック のレガシーと大阪経済
平成27年度 第3回
大阪府・大阪市経済動向報告会
2015年10月30⽇(⾦)
東京オリンピック・パラリンピック
のレガシーと大阪経済
経済リサーチグループ主任研究員 山本敏也
[email protected]
◆ スポーツがもたらすインパクト
✦ ラグビーW杯イングランド大会での日本の大躍進
・3勝での1次敗退はW杯史上初:「史上最強の敗者」と世界中から注目と称賛
・貴族社会的な“秩序”に挑戦:ティア1(伝統国)に有利な試合日程・対戦相手
・代表選手やラグビーへの関心高まる:観戦チケット・ジャージ等の販売増、テレビ・
雑誌等の露出増、ファンクラブ創設、競技人口・19年大会の訪日観戦客増?
⇒ 国内経済に少なからぬ影響を及ぼす
✦ ラグビーの遺産(レガシー)を「つなぎ」、新たに「つくる」
【図表1 今後数年間に行われるメガ・スポーツイベント等】
開催年
2016
2017
2019
2020
2021
イベント名
開催地
開催期間
東京・京都
10/19-10/22
札幌市・帯広市
2/19-2/26
第8回ラグビー
釜石・東京・東大阪
9/6-10/20
ワールドカップ
・福岡など12都市
(予定)
東京オリンピック
東京・横浜・埼玉
・パラリンピック
・宮城・札幌
スポーツ・文化・
ワールド・フォーラム(仮称)
第8回
冬季アジア大会
第10回ワールド
マスターズゲームズ
関⻄地域
参加国・競技数など
政府、経済団体、地方自治体、世界のトップアスリート・芸術家らが集
まり、スポーツや⽂化による国際貢献やレガシー等について議論
◆約30か国・地域(参加選手約1,200人)、5競技11種別を想定
◆第1,2,5回を日本で開催
【2011年NZ⼤会の実績】総観客数:約141万⼈、外国⼈観光客
:約13万人、TV観戦者数:約39億人
(O)7/24-8/9 ◆競技種目:(O)28競技、(P)22競技
(P)8/25-9/6 ◆半径8km圏内に85%の競技会場を配置
約10日間
◆30歳以上の一般アスリートが参加可能(多国籍チームの参加可)
◆30競技以内、参加国約100、参加選手約5万人(国内3万人)
2
◆ 東京オリンピック・パラリンピック(2020年)
✦ 56年ぶりの夏季大会
・2度目の夏季大会開催はアジア初:成熟都市での開催意義
【64年大会】①敗戦から復興した姿を世界に示し、国際社会への復帰を果たす
②都市改造プロジェクトが推進、高度経済成長の礎を築く
・コンパクトで環境・経済面に配慮した大会
・産官学連携による「オリンピック・レガシー」構築の動き
*レガシー共創協議会(発足:2014/4/25,三菱総合研究所)
✦ オリンピック・レガシーとは
・「長期にわたる、特にポジティブな影響」(IOC):2000年以降、取組を強化
【背景】84年大会以降の商業主義への偏重・大会肥大化、IOCスキャンダル(98年)
・2002年のIOC総会で、オリンピック憲章に追加
*「オリンピック競技大会の有益な遺産を、開催国と開催都市が引き継ぐよう奨励する」
⇒ IOCが近年最も注力しているオリンピック・テーマ
3
◆ オリンピック・レガシーの考え方
✦ オリンピック・レガシーの定義(下表)
出
典
IOC
"Olympic Legacy and
Impacts"
㈱三菱総合研究所
定
義
対 象 分 野
◆オリンピックが開催都市と開催国にも
たらす長期的・持続的効果(特にポジ ◆スポーツ、社会、環境、都市、経済の5分野
ティブな影響)
◆オリンピック開催を契機として社会に ◆全員活躍、健康、観光、スポーツ・文化、安心・安
生み出される持続的な効果
全、課題解決の6分野
ISO20121
◆イベントの後に残される結果
◆イベントの結果、新たに習得する知識、訓練、基準、
イベントの持続可能性に
※イベントの物理的、経済的、社会的、
ベストプラクティス、技能、組織、システム、関係、
関するマネジメントシステム
環境的影響を含む
パートナーシップ、イノベーションなどが含まれる
Cashman(2005)ほか
◆スポーツイベント自体よりも長く存在
◆スポーツ、経済、施設・設備、情報・教育、生活・
する、計画的-非計画的なもの、正-負
政治・文化、シンボル・記憶・歴史の6分野
のもの、有形-無形なものすべて
Cashmanの 類型に倣い、①計画的/非計画的、②ポジティブ/ネガティブ、
③有形/無形 の価値基準で三次元化
=『レガシー・キューブ』
4
◆ レガシーの分類と課題
✦ 3つの評価軸
・ポジティブ/ネガティブ:[競技施設の新設、インフラ整備、観光客・雇用増加][建設コストの
上昇、混雑問題、常連旅行者の減少 etc.]
計画的(planned)
・計画的/偶発的:[都市計画、再開発][国際的な
評価の向上(産業を支援)、施設の維持運営・更新コスト
偶発的
による財政逼迫、テロ攻撃 etc.]
無形(intangible)
・有形/無形:[競技インフラ、経済発展][公共福祉
の改善、文化的価値観の創出、感動的な体験 etc.]
有形(tangible)
ネガティブ
(negative)
ポジティブ
(positive)
【図表3 レガシー・キューブ(Gratton & Preuss)】
✦ レガシーの把握における課題
・ポジティブ/有形/計画的な部分(着色部)に議論が集中
・事前の影響調査は、科学的根拠が乏しい:大会支持者の恣意性などバイアスの発生
・立場や時代により評価が変化:例.新幹線の開通でアクセス改善も、日帰り客が増加
⇒ レガシーの事前測定は困難
5
◆ 本調査のアプローチ
✦ レガシーをテーマに大阪・関西企業の発展機会を探る
・日本が世界に先駆けて新たなプロトタイプを示す好機
*「国際見本市」の機能を持つオリンピック
*レガシーによる喫緊の課題やニーズを明らかにし、持続的発展のためのレガシーを設計
・世界中が日本に注目し、日本の魅力を発見する可能性
*技術、衣・食・住、風習、文化など多様で独特な地域の魅力をアピール
✦ 社会経済システムの「転換点」と捉える
・一過性のイベントとして、短期的効果(目先)の議論に固執しない
*訪日外国人旅行者数、経済波及効果 etc.
✦ ポジティブ×有形×計画的 なレガシーに固執しない
・大阪発の無形レガシーの創出など
*例.長野大会(98年)の「一校一国運動」、サッカーW杯カメルーン代表と大分県
旧中津江村
6
◆ レガシー・キューブの再構築
✦ 「空間」と「時間」の要素を加味
・空間的要素(地域):開催都市(東京)/開催都市以外(大阪ほか)
・時間的要素:オリンピックの開催前/開催中/開催後
⇒ 12個の小キューブからなる「新しいレガシー・キューブ」
✦ 大阪・関西のレガシーがどう変化・継続するか
・新レガシー・キューブの上半分に注目
【図表4 新しいレガシー・キューブと2次元化】
開催都市以外
(大阪ほか)
(P×A)
(N×A)
開催都市
(東京)
開催後 (C)
開催中 (B)
開催前 (A)
ポジティブ
(P)
ネガティブ
(N)
ポジティブ
(P)
ネガティブ
(N)
P×A
N×A
開催前(A)
P×B
N×B
開催中(B)
P×C
N×C
開催後(C)
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◆ オリンピック開催前のレガシー①
✦ ポジティブ・レガシー
(P×A)
・①観光立国実現に向けたアクション・プログラム、②日本再興戦略(改訂2015)
①訪日外国人2千万人、消費額4兆円をめざす
②観光立国=五輪をテコに加速させるべきプロジェクトの分野に
・五輪関連商品や家電の受注/販売増✲、民間設備投資の活性化
*スポーツ用品・用具の受注増、ホテル等各種施設の新設/改修、新商品開発、
生産能力増強
⇒ 国内雇用を誘発する?
・文化プログラムの地域展開
*オリンピック・ムーブメントを醸成し、
オールジャパンで取り組む
・ドリーム効果
*ビッグイベントでの気分高揚による消
費の拡大✲
【図表5 アクションプログラムの柱】
2014年
2015年
①五輪2020年大会を見据えた
観光振興
①インバウンド新時代に向けた戦略的
取組
②インバウンドのさらなる推進に向け
た戦略的展開
②観光旅行消費の一層の拡大、幅
広い産業の観光関連産業としての
取り込み、観光産業の強化
③ビザ要件の緩和など訪日旅行の
容易化
③地方創生に資する観光地域づくり、
国内観光の振興
④世界に通用する魅力ある観光地
域づくり
④先手を打っての「攻め」の受入環
境整備
⑤外国人旅行者の受入環境整備
⑤外国人ビジネス客等の積極的な取
り込み、質の高い観光交流
⑥MICEの誘致・開催の促進と外国
人ビジネス客の取り込み
⑥リオ大会後、2020年五輪、及びそ
の後を見据えた観光振興の加速
8
【参考】大阪・関西のインバウンド
✦ 関空経由の入国外国人[2014年]:317万442人(同36.5%増)
・USJハリーポッターエリアの開業(2014年)も追い風
(資料)法務省「出入国管理統計月報」、日本銀行「外国為替市況」より作成。
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◆ オリンピック開催前のレガシー②
✦ ネガティブ・レガシー
(N×A)
・訪日外国人急増による混雑悪化、物価・地価の上昇
*貸切バス:乗降スペース周辺の渋滞、台数・運転手不足
*空港:航空会社カウンター・出国審査での混雑、空港内設備の不足
*鉄道:通勤ラッシュ時の混雑、空港アクセス(深夜・早朝便)
*観光・宿泊施設、商業施設(DS等):外客急増による予約困難、免税等の手続の混雑、
料金高騰、道路渋滞、地価上昇
・建設コスト上昇による投資
の停滞
*建築資材の高騰、人手不足の顕
在化 ⇒公共工事(自治体)の入札で
不調・不落の増加、建設計画の延期
・国際規格への対応遅れ
*国産野菜・魚介類の調達困難に
*「持続可能な調達コード」の開発
【図表6 開催前のレガシー】
ポジティブ・レガシー(P)
ネガティブ・レガシー(N)
◎「観 光立国実 現に向けたアクシ ョン・プログラム
2014」による 来阪外国 人客の増加
⇒航 空を中心 とする旅客需 要の拡大
▼航空業界の競争激化(首都圏空港の機能強化)
・羽田 ・成田空港の発着容量 の拡充
・パイロット不足(2030年問題)
◎五輪開催決定 やMICE振 興策の強化に 伴う、知名度や
イメ ージの向 上(= 日本への関 心高まる)
▼施設の不足等による混雑悪化、滞在費 高騰の回避
▼他都市 への関心の高まり による来阪外 国人客の伸び
悩み、 又は減少
◎文化 プログラ ム(カルチュラ ル・オリンピアード)に
よる 地域への波及
◎五輪関連商品、家電(4Kテレ ビ等)の受注/販売の
▼他地域への五輪 関連商品・家電の受注 /販売 の分散
開
増加 [製造,卸売 ,小売]
(飲食、交通 、宿泊を除く)
催
前 ◎民間設備投資の活 性化
▼民間投資の停滞
・ホ テルの開業増加(国内外の 実業家や富裕層向け 高
・
・東北 の復興関連投資や東京の五輪関連投資の優先
級 ホテル、 サービス アパート メント等)
A
的実施
・ホ テル・賃 貸住宅、 商業施設 等の リニューアル
・新 商品開発 、能力増強(製 造、流通、サービス)
⇒建築資材の高騰 、人手不足
◎公共工事の前 倒し(例:北陸 新幹線の金沢⇔福井間の ▼五輪関連以外の公共建設事業の遅延
前倒し開 業)
・建築資材の高騰や人手 不足など供給面の制約
▼大会の安全を脅かすリスクの可能性
・テロ、犯罪、サイバー攻撃、地震・津波、異常気
象、感染症など
◎ドリ ーム効果:ビッ グイベン トでの気分の 高揚による ▼代替効果:五輪関連以外の消費抑制 ( 観戦のた めに他
消費 の拡 大
の消費を控える)
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【参考】大阪の混雑状況の例:宿泊施設
✦ 大阪府内における宿泊施設の客室稼働率
(資料)観光庁「宿泊旅行統計調査」より作成(従業者数10人未満を含む)。
11
【参考】客室稼働率の東西比較①
✦ シティホテル(東京都・大阪府)
(資料)観光庁「宿泊旅行統計調査」より作成(従業者数10人未満を含む)。
12
【参考】客室稼働率の東西比較②
✦ ビジネスホテル(東京都・大阪府)
(資料)観光庁「宿泊旅行統計調査」より作成(従業者数10人未満を含む)。
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◆ 企業ヒアリングの内容から
✦ すでに混雑状況が慢性化しつつある
■アジアからの顧客増で活況を呈する和風旅館A社(大阪市中央区)
道頓堀で和風旅館を営むA社でも、中国・台湾・シンガポールなどからの旅⾏者が多
く、花⾒シーズンとなる4⽉の宿泊を半年前から予約する外国⼈もいる。
2014 年に⼊って、平⽇に加え、⼟⽇も外国⼈客の予約が急増し、対応が困難になっ
ている。1室4⼈程度の利⽤が多い⽇本⼈に対して、外国⼈客は2名ほどと少⼈数が多
いこともあり、土日は外国人向けのインターネット予約の受付を制限している。
■堺筋(⽇本橋)の観光バス乗降スペース問題(大阪市中央区)
ミナミの観光拠点である道頓堀を訪れる団体客のために、道頓堀東側にある日本橋の
橋上に「観光バス乗降スペース」を設置しているが、観光バス2台分の空間しかなく、
実際には⼆重・三重駐⾞が発⽣して交通渋滞などの事態が深刻化している。近隣には公
設のバス駐⾞場があるものの、道頓堀までの距離が⽇本橋上の乗降場所よりも遠いこと
から、利⽤度はそれほど⾼くない。
そこで、2015 年2⽉ 16 日から上述した橋上の「バス専用駐⾞枠」
(2台分)を「バ
ス専用停⾞枠」に変更し、速やかな乗降を促すとともに、その南側に新設する3台分の
専⽤停⾞枠と併せて5台分のスペースを設けることとなった。
(資料)大阪産業経済リサーチセンター「東京オリンピック・パラリンピックのレガシーと大阪経済」。
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◆ オリンピック開催中のレガシー
✦ ポジティブ・レガシー
(P×B)
・関西/大阪観光の誘発
*観戦前後の「ついで観光」、東京訪問回避の代替案(オリンピックに無関心な観光客)
・関連商品等の受注/販売増、民間設備投資の活性化
・ドリーム効果:選手の活躍が消費の鍵を握る
✦ ネガティブ・レガシー
(N×B)
【図表7 開催中のレガシー】
・来阪/訪日客の減少
*混雑悪化、滞在費高騰を敬遠
・代替効果
*観戦のためにオリンピック関連
以外の消費を抑制
ポジティブ・レガシー(P)
◎関西・大阪観光の誘発
・観戦前後の「ついで観光」(飲食、宿泊、買物等)
・五輪に興味のない国内外客が混雑悪化や滞在費
高騰を敬遠し、東京への訪問を中止
ネガティブ・レガシー(N)
▼観光消費(飲食、交通、宿泊、買物等)の府外流出
・国内外客の東京集中による売上減少
・施設の不足等による混雑の悪化や、滞在費の高
騰を敬遠⇒府内での消費機会の喪失
・五輪に興味のない外国人客の来日中止
開
催 ◎ドリーム効果
▼代替効果:五輪関連以外の消費抑制(観戦のために
・選手の活躍に触発されたスポーツ関連支出の増加
中
他の消費を控える)
・国内客向け五輪観戦ツアーの販売好調
・
B ◎五輪関連商品、家電(4Kテレビ等)の受注/販売の ▼他地域への五輪関連商品・家電の受注/販売の分散
増加
・安全を脅かすリスク
(飲食、交通、宿泊を除く)
▼大会の安全を脅かすリスクの可能性
・テロ、犯罪、サイバー攻撃、地震・津波、異常
気象、感染症など
*テロ、サイバー攻撃、地震・津波、感染症など
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◆ イベントによる需要変動:ロンドン五輪(2012年)
✦ 地域別訪英外国人宿泊者数の推移(対前年同期比)
(資料)ONS(英国国家統計局)、「Overseas Travel and Tourism」より作成。
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◆ イベントによる需要変動:ロンドン五輪(2012年)
✦ 地域別訪英外国人消費額の推移(対前年同期比)
(資料)ONS(英国国家統計局)、「Overseas Travel and Tourism」より作成。
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◆ オリンピック開催後のレガシー
✦ ポジティブ・レガシー
(P×C)
・ドリーム効果(選手の活躍に触発)
*スポーツ用品、家電等の支出増、スポーツへの参加
・大会/MICE振興策の成功によるブランド力向上:インバウンド誘致の追い風に
・スポーツ人口増加に伴う新領域の発展
*施設・空間マネジメント産業(フィットネスクラブ、テニススクール等)
【図表8 開催後のレガシー】
・新システム/規格/規範/
ビジネス
*交通インフラ、警備業(64年)、
ISO20121(BS8901が基礎)
✦ ネガティブ・レガシー
ポジティブ・レガシー(P)
ネガティブ・レガシー(N)
◎五輪やMICE振興策の成功による国家(地域)ブラ
ンド力の向上
・来阪外国人客の趨勢的増加(文化等の評価改善)
開
・輸出量の拡大(日本製品の評価改善)
催
後 ◎選手の活躍に触発されたスポーツ関連支出の増加 ▼投資一 巡・五輪ブームの終了に伴う景気減速
・府内スポーツ関連産業の活性化
・インフラ 投資増や家電売上増の反動減
・
C
▼開催都 市・国の安全を脅かすリスクの可能性
・テロ、 犯罪、サイバー攻撃、地震・津波、
異常気象 、感染症など
(N×C)
・投資一巡、五輪ブーム終息に伴う景気減速
*インフラ投資拡大や家電売上増の反動
・安全を脅かすリスク:発生場所・時間の予測は困難
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◆ オリンピック前後の外国人旅行者数
(資料)みずほ総合研究所
「みずほリポート」(2014年
12月)、p.27。
19
◆ 大阪のレガシーに関連する3つのテーマ
✦ 文化・芸術とスポーツの融合
・オリンピック憲章:スポーツ競技と並行し文化プログラム開催を義務付け
*2012年大会:全国民の催しとして1,000か所以上で約18万件のイベント(演劇、ダンス、美術、
文学、映画、ファッション等)⇒ 4,340万人が参加
*関西のポテンシャル(都市機能がコンパクトに集約、歴史資源が豊富 etc.)を活用
✦ 快適性、安心・安全
・プレーヤー/観戦者/地域住民にとって良い記憶を遺す
*プレーヤー:安全で使いやすい、能力を引き出せる用品・装具等の開発・提供
*観戦者:言語(道路標識・案内板)、通信環境、テロ・犯罪/感染症/災害への備え
*地域住民:秩序ある国際交流(場当たり的対応⇒不安と混乱)、ローカルプライドの醸成
✦ 地域の独自性を打ち出す
・東京だけが主役ではない
*地域性ある文化プログラムを積極的に開発
*関西の歴史の厚み・多様性を再評価する機会
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◆ テーマ1‐文化・芸術とスポーツの融合
✦ スポーツに親しめる環境づくり
・大阪・関西企業の技術やアイデアを活用
*自転車速度計、義肢・装具、スポーツ用品など、一般人対象の用品・装具の開発
・ポップカルチャーをスポーツに取り込む
*ソフトパワー産業(マンガ、アニメ、映画、ドラマ)が心理的コストを低減
⇒ スポーツ人口のすそ野を拡大
■メイド・イン・ジャパンを追及する⾃転⾞部品製造業B社(大阪市東住吉区)
スピードバイク⽤の速度計メーカーB社によると、⾃転⾞競技を描いたマンガアニメ
のヒットや健康志向の⾼まりから、スポーツバイクの需要が拡⼤しており、消費税率引
上げ後も好調に推移している。⾃転⾞はランニングに⽐べて膝への負担が少なく、最近
ではセンチュリー・ライド※ に参加する中⾼年をはじめ、家族やカップルも増えている。
⾃転⾞競技の⽇本代表チームが結成された際に、先方からの依頼を受けて練習用の速
度計を提供した。ただし、オリンピック競技会場の大半が東京であることや、2021 年
の関⻄ワールドマスターズゲームズも⾃治体の⾜並みが揃っていないことから、メガ・
スポーツイベントにはそれほど高い関心を示してはいない。
B社の経営理念である「安全」
「健康」
「環境」は、メイド・イン・ジャパンのブラン
ドが持つイメージを具現化したものである。中国を筆頭に急成⻑するアジア市場を念頭
に置きつつ、日本の強みである高付加価値商品を追及したいと考えている。
※最⻑ 100 マイル(160km)をタイムや勝敗に関係なく、参加者の体⼒に合わせて⾛るツーリ
ングイベント。休憩場でのご当地グルメの提供など、まちおこし的な要素もある。
(資料)大阪産業経済リサーチセンター
「東京オリンピック・パラリンピック
のレガシーと大阪経済」。
21
◆ テーマ2‐快適性、安心・安全
✦ 来訪者が楽しく過ごすための仕組みづくり
・ピクトグラム:観光スポット、飲食店、小売店などでの導入
*64年大会で競技種目、公共施設・設備などに採用
*絵文字の国際リレーとして、受け継がれるレガシー
・ICTの活用:スマートフォン・アプリなど
*翻訳アプリ:情報通信研究機構(NICT、けいはんな学研
都市) ⇒ 20年大会での日常的な活用めざす
✦ テロ/感染症/災害等のリスク低減
・テロ対策
*防犯カメラの顔識別技術、無人飛行船による警備サービス
・感染症対策
*りんくう総合医療センター(感染症患者の受入体制)、新薬開発、拠点病院(医療通訳者)
・災害対策
*訪日客向け損害保険、災害時誘導アプリ、音声翻訳機能搭載の救急車
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◆ テーマ2‐快適性、安心・安全
✦ 各種混雑の解消
・百貨店:免税手続きカウンターの増員・免税システム導入、テレビ電話による通訳サービス、
多言語対応の接客用シート・カタログ
・CVS:ボタンで免税対応に切替え、パスポートをスキャンする新レジシステム
⇒ 5分以内に短縮(セブンイレブン)
・関西空港の入国審査
*自動化ゲート導入(2014年秋):余剰のゲートや職員を外国人審査用に振り向ける
*2015年度は入国審査官を39人増員の予定
・宿泊施設:郊外の古民家・町家の活用による宿泊の分散も有効か
*国家戦略特区による規制緩和(建築基準法・旅館業法)
*条例による自治体の独自規制
*Airbnb などによる訪日外国人の民泊人気 ⇒ 住民トラブルの顕在化
⇒ 現場のさらなる実態把握が急務
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◆ 企業ヒアリングの内容から
✦ ブームに乗るのではなく、中・長期的視点で対応
■ハラル認証を自社の強みにするシティホテルG社(大阪市天王寺区)
中国や韓国など東アジア客が大半を占めるが、2010 年の尖閣漁船衝突事件による⽇
中関係の悪化を機に、インバウンドの専門部署を設置した。また、2014 年には対象国
を拡大し、ムスリム向けにハラル認証を取得した朝食バイキング、和食弁当を提供して
いる。
このほか、メッカの方向を示すキブラコンパス、礼拝⽤マットの無料貸し出し、ピク
トグラムによる使用食材の表示などの取組が奏功し、インドネシア、タイ、ベトナム、
フィリピンからの顧客も増えている。ハラル認証取得において、受入態勢の構築やキッ
チンの改修には、労⼒も費⽤もかかるが、ホテルのブランド(信用)にも関わるので、
中・⻑期的な視野に⽴って臨みたかったという。
今のところ、明らかなメリットを感じてはいないが、ファムトリップ※ 時のイスラム
圏の旅⾏代理店の関⼼が、認証取得前に⽐べて⾼まっているようである。
※観光地などの誘客促進のため、旅⾏関連事業者を対象に現地視察をしてもらうツアー。外
国人観光客拡大を目的に実施されることが多い。
(資料)大阪産業経済リサーチセンター「東京オリンピック・パラリンピックのレガシーと大阪経済」。
24
◆ テーマ3‐地域の独自性を打ち出す
✦ 買い物・飲食(モノ)から体験(コト)へ
・道具屋筋商店街(大阪市)
*食品サンプルの製作体験、包丁で寿司づくり体験
・体験施設KAFU(京都市)
*京町家を改装、おばんざい調理、華道・書道、利き酒等
・北野工房のまち(神戸市)
*小学校校舎を再利用、和ろうそくづくり、絵付け体験
✦ 定番とは違う面白さを提供する着地型観光
*ICTによる発信で海外メディアも注目する可能性
①工場夜景ツアー:高石市、尼崎市、姫路市
②スポーツ観光:センチュリー・ライド(瀬戸内しまなみ海道)、マラソンなど
③農業・ものづくり観光:酒蔵、伝統産業、町工場、農家体験
④商店街:大将軍商店街(京都市上京区)の百鬼夜行伝説を仮装イベントに
⇒ 地域の独自性を文化プログラムとして発信し、相乗効果を狙う
25
◆ 3テーマの関係と具体的メニュー
大阪の多様な技術やノウハウ(伝統・先端産業、食、医療、ICT 等)
◆文化・芸術、スポーツ
◆■オリンピック代表選手
・チームのサポート
◆■危機管理システム(テロ対策向け顔認識技術等)
◆■使い易いスポーツ⽤品・装具の開発
◆■☆案内表示等のリ・デザイン(ピクトグラム等)
◆■☆低炭素社会モデルの構築
○折り畳み EV(MIT:City Car)等
○レンタルサービス(⾞、バイク等)
■☆医療通訳
■快適性、安心・安全
◆☆カルチュラル・オリンピアードの誘致
○各地の隠れた歴史遺産の発⾒
○芸術家との提携による技術開発・技術革新
◆☆■郊外・関⻄への宿泊の誘導(古⺠家再利⽤等)
◆☆■着地型観光の推進
○スポーツ観光(Century Ride、マラソン等)
○町家、酒蔵、伝統産業、町工場、農業等
■☆ムスリム対応(大阪発ハラルメニュー等)
☆■インバウンド向け⾼度医療(感染症等)
☆地域の独自性
■通信・通話環境改善(Wi-Fi, SIM カード等)
26
ご清聴ありがとう
ございました
27
Fly UP