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レガシー(旧式)システムからの脱却
レガシー( 旧式)システムからの脱却 AD213-01 自治体向け情報提供誌 政府決定に先駆け2003年7 月2 日に「電子政府計画案 (OS)、通信プロトコル、データベース、プログラム言語 レガシー(旧式)システム(*1)刷新」、それに続き、7 月9日 (主にCOBOL言語)、業務アプリケーション(業務AP)など 「政府、リナックス採用」という見出しが新聞紙上を賑わし 全てをメインフレームメーカに依存していたと言えます。そ ました。一般企業に留まらず、政府もメインフレーム(汎用 して、富士通、NEC、日立、IBMというメインフレームメー コンピュータ)依存体質から脱却する様相を見せ始めて カの独占的な市場を形成することとなりました。 います。 1980 年以降、自治体電算化の姿が変化を見せ始めま 今回は、レガシーシステムからの脱却が望まれる背景を す。OA化が推進されパソコンの導入が始まり、1995年、 探るとともに、今後の自治体電算化のあり方について考え Microsoft (R) Windows(R) 95 の発表によって、自治体市場に ます。 更なる変化が与えられました。脱メインフレームとして クライアント・サーバシステム(C/Sシステム)が推進され、 *1・・・レガシー(旧式)システム 中央省庁において、年間1 0億円以上の経費を要する情報システムのうち 次のいずれかに該当するシステム。①メインフレーム、オフコンを使用したシ ステム、②1994年以降随意契約が継続しているシステム。 急速なオープン化の流れに乗って独立系ソフトウェア ベンダーが急伸してきます。 自治体電算化の変遷 1990 年代終盤、“インターネット”という、よりオープンな 世界が、独占的な通信キャリア(NTTほか)から市場開放 自治体の電算化は、コンピュータ業界(メインフレーム を勝ち取ることとなりました。さらに、現在では高速通信を メーカ)と通信業界(キャリア)の歴史そのものでした。(図1) 実現するブロードバンド( * 2 )が普及し、広域ネットワーク 1960年代当初、地方行政の効率的運営のため、電算 展開に拍車を掛けています。 機導入による事務処理の合理化が積極的に進められまし *2・・・ブロードバンド 一般的に、瞬時に大容量のデータ伝送を可能とするネットワークのこと。 現在、光ファイバ網や既存の電話回線を活用したADSL、ケーブルインター ネットなどブロードバンドを利用したサービスが提供されている。 た。この時代は、ハードウェア、オペレーティングシステム 図1●自治体電算化の変遷 大量一括処理などメインフレームを 大量一括処理などメインフレームを 中心と 中心 とした電算処理 た電算処理 クライアント・サーバシステムを 中心とした業務処理 インターネットを 中心とした情報処理 小 行政と住民との距離 広範囲に渡る情報化推進 ・市町村合併 ・電子自治体 (住基ネット、LGWANなど) 行政情報化推進 ・庁内データベースの有効活用 ・電子メールによる情報流通 ・広域行政、窓口の一元化 ・介護保険 大量バッチ ・税業務 ・給与計算 大 窓口オンライン ・住民記録、印鑑 ・税業務 庁内業務OA化 広域による住民サービス 広域による住民サービス ・財務会計、起債 ・水道料金計算など の各業務 電算経費削減、地域特性を反映したサービスの提供 電算経費削減、地域特性を反映したサービスの提供 住民サービス向上 住民サービス向上 事務の省力化・ 効率化 事務の省力化・ 効率化 1960年代 1970年代 1980年代 1990年代 2000年以降 -1- e-ADWORLD News News AD213 AD213--01 足掛け43 年にわたる自治体の電算化は、組織・庁内に ①使用者財政を悪化させるITコスト 閉じた行政システムから始まり、住民・地域のためのシス メインフレームは、日本の行政サービスを支える基盤と テムへと変化してきました。今、住民・地元企業の立場に して長年にわたり貢献してきました。過去の情報資産を保 たった広域サービスの実現、それを牽引する役割をI T 有し、社会インフラとして高い信頼性のもと安定したシス 技術が担っていることはいうまでもありません。 テムとして定評があります。その一方、システムは大きくな りがちで、メインフレームの使用を余儀なくされてきました。 では、なぜメインフレームを使い続けるのか、問題は過 メインフレーム見直しの風 去のシステム資産から脱却できないことにあります。 つまり、過去のシステム資産による限定された委託先に 最近、NTTドコモや大手銀行は、相次ぎメインフレーム 依存するため、建て増し的なシステム開発になり、開発・ が実現してきた機能をオープンシステム(*3)に移植すると 保守費用が増加するといった、悪循環(図2)が繰り返さ いった、次期の情報システム像を明らかにし始めました。 れているわけです。このように過去のシステム資産に縛ら メインフレームの使用者は、それぞれの置かれている状 れることで、投資対効果が低くなっているのではないか、 況が異なるものの、その根底には共通の“風”が吹いてい という疑念が生まれています。 るといわれています。その原因として、「使用者財政を悪 自治体にとって、情報システムはあくまでも住民サービ 化させるITコスト」と、「メインフレームメーカのCOBOL技 スを行うための道具です。本来必要なサービスに対して 術者不足」という2つの問題あります。 そのシステムがどれだけ貢献しているか、サービスの優先 順位に応じて I T投資が適切に配分されているか、開発・ *3・・・オープンシステム 一般的には、C/S方式によるシステム構成や、仕様を公開することにより、 特定メーカの製品に依存することなく、複数メーカの製品を選択できるように したシステムのこと。 保守などのI Tコストについて適切な基準設定が行われて いるかなど、あらためて見直す必要があります。 図2●メインフレームをめぐるI T コストの悪循環 図3●年代別I T 技術者が保有する技術 % 60 過去の システム資産 20代 30代 40代以上 50 40 委託先が限定 30 長年にわたり 繰り返されてきた 建て増し的な システム開発 20 委託先へ依存、 業務知識の空洞化 10 C CO BO L Pe rl XM Vis L ua lB as ic 開発・保守費用 の増加 Ja va システム規模が 肥大 C+ + 0 財団法人 日本情報処理開発協会 「2000年度情報処理教育実態調査」 技術者235名のアンケートより一部抜粋 -2- レガシー(旧式)システムからの脱却 ②メインフレーマのCOBOL技術者不足 政府レガシーシステム刷新の要旨 長きにわたりメインフレームに依存した電算化の歴史は、 COBOL の歴史でもありました。業務APは、メインフレー 2002年12月、自民党のe-Japan重点計画特命委員会が ムメーカから提供される「独自OS」「独自ミドルウェア」 発表した調査結果によると、中央省庁が保有する年間運 「COBOLプログラム」という3点セットで構築されています。 用費10 億円以上のシステムは、現日本郵政公社を含め 現在は、インターネットを中心としたオープンシステムが て86件、そのうち41件が大型コンピュータを使用する旧式 注目され、若手を中心に技術者の多くはJavaや Web 、 システムです。その運用費合計は、年 7,000億円と全体の .NET ( * 4 )などの技術習得に力を注いでいます。また、 8割を占め、同委員会は運用コストが高いなどとしてシス COBOL 技術者の高齢化が進み、メインフレーム技術者 テム刷新を求めていました。 が不足傾向にあるため、既存COBOL資産を維持すること 2003 年7 月17 日、各府省情報化統括責任者連絡会議 が難しくなっています。(図3) において、今後3 ヵ年の電子政府構築に関わる具体的な さらに、旧来のメインフレームメーカは、市場ニーズの高 取り組みとして「電子政府構築計画」が決定しました。 いUNIXやWindowsサーバの性能向上や信頼性向上を強 その中に、メインフレームを軸に構築された「レガシーシ 化し、メインフレーム上のCOBOL 資産をオープンシステ ステム」を刷新するとの一文が盛り込まれています。今後 ムに移行するサービスに力を注ぎ始めています。 のスケジュールとして、レガシーシステム(政府全体36シ 一部の専門家からは、この流れは止めようがなく、メイン ステム)について、それぞれ遅くとも2004年度までに新シ フレームからの移行は今後5年から10年で終わるだろうと ステムへの「刷新可能性調査」を終え、2005 年度中には 予想する声もあがっています。 具体的な「最適化計画」を策定し、順次、最適な業務・ システムへ移行することが発表されました。(図4) *4・・・.NET Microsoft(R)が2000年6月に発表した次世代インターネット技術。 WebサービスなどをWindows(R) 上で利用するために必要となる実行環境 「.NET Framework」と開発環境「Visual Basic .NET」などをまとめて指す。 図4●電子政府構築計画 「 I T 化に対応した業務改革 具体的な取り組み施策」 ■各府省の個別業務・システムの体系整理を2003年8月までに実施し、業務・システムの最適化計画を 2005年度末までのできる限り早期に策定 ■レガシーシステム(政府全体36システム)見直しのための行動計画に基づき見直し、「刷新可能性調査」 結果など各段階の取組状況をインターネットで公表 2003年度 官房基幹業務 人事・給与などの業務 その他官房基幹業務 個別業務・システム (レガシーシステムを含む) 2005年度 2004年度 業務見直し、 最適化計画 (2003年12月) システム設計、開発 (主要な部分を整備) 業務見直し、 最適化計画 (2004年度早期) 府省内整理 (2003年8月) 政府全体整理 (2003年12月) 2006年度∼ 順次各府省で導入 最適な業務・ システムへ移行 レガシーシステムの刷新可能性調査 最適化計画( 2005年度末できる限り早期) 順次、最適な業務・システムへの移行 各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議 2003年7月17日 「電子政府構築計画」より一部抜粋 -3- メインフレームで構築されたシステムは、当初の購入費 国による地方交付税改革により、特に交付税への依存 用からその後の運営費を含めた長期的な費用が膨らみま が高い市町村では、合併を意識せざるを得ない状況にあ す。その一方、オープンシステムは割安な汎用ソフトを使 ります。さらに、この厳しい財政の中 「e-Japan戦略Ⅱ」に 用できる上、開発期間が短いため最新技術を導入しやす 掲げられている「24時間365日ノンストップ・ワンストップ」と いと評価されています。 いった電子自治体行政サービスを実現する時期も迫って 2003年7月9 日「政府、リナックス採用」という記事が新聞 きます。 トップに掲載されました。政府は全府省の業務AP一本化 中には、この市町村合併を契機にITコスト削減や電子 による、ITコスト削減を目指した「新標準システム」導入を 自治体行政サービスへの拡張を考慮し、メインフレーム 計画しています。それに先行し、「人事・給与システムに やオフコンからオープンシステムへ切り替える自治体も増 関する概要設計落札」の記事が、レガシーシステム見直 えてきました。既存システムにこだわるにせよ、いずれ見 しの動きと相まってトップニュースとなったのです。(後日、 直さなければいけない時期が来ることには間違いありませ 人事院はリナックスは一候補に過ぎないと説明。) ん。市町村合併は願ってもないチャンスでもあるわけです。 このように、政府のレガシーシステム見直しに関する動 きは活発であり、注目も集まっています。 日立情報のe-ADWORLD 自治体の動向 日立情報では、1 9 9 4 年に「自 治 体 向 け 行 政 情 報 化 ソリューションADWORLD」を業界初のC/Sシステムとして 昨今、2005年3 月市町村合併特例の期限に向けて、全 リリースし、これら諸問題の解決に取り組んできました。さ 国の自治体では市町村合併への動きが盛んです。「平成 らに2001年より「電子自治体ソリューションe-ADWORLD」 の大合併」と呼ばれるこの動向の背景には、地方分権の の提供を開始し、行政情報化の一層の推進を図り、市町 推進や生活圏の広域化といった理由に加え、自治体の 村合併および電子自治体実現を強力にサポートしてい 財政状況悪化という大きな理由があります。 ます。(図5) 図5●日立情報 電子自治体ソリューションe-ADWORLD ADWORLD ・1994年2月 第1号ユーザ 福岡県矢部村様 日本における総合行政システムの C/S版 第1号ユーザ ・8年の年月を経過し、 完成度の高いシステムに成長しました。 総合行政システム「 ADWORLD」から「e-ADWORLD」へ ・クライアント・サーバシステム( C/Sシステム)→ .Net対応リッチクライアントシステム ・各種機能を定期的に標準化 総合窓口(ワンストップサービス)対応 ・自治大臣賞2年連続受賞・LASDEC表彰 など サブシステムラインナップの充実(130以上のシステム) 介護、住基ネットなどへの対応 自動交付機、戸籍、家屋評価計算など連動 地理情報(GIS)との連動 バランスシート、電子決裁への対応 全国160団体以上の稼働実績 合併対応システムを保有 安全・確実な システム統合 電子自治体(e-Japan)に対応 e-ADWORLD News AD213-01 http://www.hitachijoho.com/ 【参考文献】 ○e-Japan重点計画特命委員会 2003年3月25日 「旧式(レガシー)システム改革指針」 ○日経コンピュータ 2003年3月24日号 「5年度メインフレームはなくなる」 ○週刊 行政情報化推進ニュース 2003年7月14日号 「電子自治体へ向けた『レガシーシステムとCOBOL』」 発行元;株式会社日立情報システムズ 販売企画本部 〒150-8540 東京都渋谷区道玄坂1-16-5 Tel.03-3464-5906 Fax.03-3770-5712 *記載されている内容は、予告無しに変更になる場合があります。ご了承下さい。 -4- 2003.8.28発行