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論 文 - Biblio

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論 文 - Biblio
論 文
80 Gb/s 光 I/O インタフェース ATM スイッチ MCM の開発
川野 龍介†∗a)
大木
山中 直明†
大木 英司†
岡崎 勝彦†
明†
An 80 Gb/s Optical I/O Interface ATM Switch MCM
Ryusuke KAWANO†∗a) , Naoaki YAMANAKA† , Eiji OHKI† , Katsuhiko OKAZAKI† ,
and Akira OHKI†
あらまし 本格的なマルチメディア通信の普及のためには,伝送/アクセス系の技術に加えてノード システム
の高速・大容量化が必要である.ノード システムの性能は,LSI の技術進展に合わせて向上してきたが,この急
速な技術進展により,LSI インタコネクションがボトルネックとなり,ノード システムの性能を制限しかねない
状況にある.この状況を解決し ,最大限に LSI の能力を引き出す手段としてマルチチップモジュール( MCM )
技術がある.この技術により,MCM 内では高速・多並列の信号伝送が実現できる.しかしながら,この MCM
に信号の入出力を行おうとする場合,従来の電気 I/O を用いる限り接続距離,ケーブル物理量,伝送速度,フレ
キシビリティー,対雑音性などの点でボトルネックを生じる.筆者らは,この配線ボトルネックを解消するため,
直接 MCM に光信号を入出力できる光 I/O インタフェース ATM スイッチ MCM を開発した.このモジュール
は,0.25 µm CMOS LSI 技術,40 層セラミック MCM 技術,超多並列光インタコネクション技術及び冷却技術
よりなり,220 × 174 × 15 mm3 の大きさで 80 Gb/s のスイッチスループットを有する.更に,開発した光 I/O
インタフェース ATM スイッチ MCM は,ラックにブックシェルフ実装を行い,その基本動作を確認した.
キーワード
ATM,MCM,光 I/O,並列光インタコネクション,配線ボトルネック
スイッチ LSI は ,極めて多数の高速信号の接続を必
1. ま え が き
要とするという性質から LSI 自体の進展にもかかわ
通信の本格的マルチメデ ィア化に伴い,これまでの
らず,LSI の実装技術がボトルネックとなってきてい
主流であった音声トラヒックに加えて,けた違いの情
る.具体的には,高速信号のインタコネクション技術
報量を流通させるインフラが必要になると考える.伝
である.つまり電気技術を用いて高速 I/O LSI 間を
送では WDM( Wave Division Multiplexing )技術,
接続することは接続距離及び伝送速度の点で非常に難
アクセス系では FTTH という光技術による進展が目
しくなってきており,単位スイッチを拡張していくこ
覚ましい.情報流通のためには,これらに加えて,高
とが制限されている状況にある.このボトルネックを
速・大規模スイッチの開発が必要であり,伝送技術や
解消するため筆者らは ,LSI の I/O から電気コネク
アクセス系の技術との整合を考えると,今後,数 Tb/s
タ及びケーブルをいっさい使用せず,これまでに実現
以上の高速・大規模スイッチが必要になることも考え
された報告のない,直接光でスイッチ信号の入出力が
られる [1].スイッチ性能も他の電子装置と同様に LSI
可能な 80 Gb/s のスイッチスループットを有するマル
技術の進展とともにその 性能を向上させてきた.そ
チチップモジュール( MCM )技術を用いた光 I/O イ
して,数 Tb/s 以上のスイッチシステムのためには数
ンタフェース ATM スイッチ MCM を開発した.開発
百 Gb/s 級の単位スイッチが必要と考える.ところが,
した光 I/O インタフェース ATM スイッチ MCM は,
† NTT ネットワークサービ スシステム研究所,NTT 通信エネルギー
220 × 174 × 15 mm3 の大きさで 80 Gb/s というスイッ
研究所,武蔵野市
チ容量を有する.本論文では,大容量単位スイッチ実
NTT Network Service Systems Laboratories, NTT Tele-
現の課題,80 Gb/s 光 I/O イン タフェース ATM ス
communications Energy Laboratories, 3-9-11 Midori-cho,
Musashino-shi, 180–8585 Japan
∗ 現在,NTT エレクトロニクス超高速モジュール事業部,厚木市
イッチ MCM によるそのブレークスルー,80 Gb/s 光
I/O インタフェース ATM スイッチ MCM のラック実
a) E-mail: [email protected]
電子情報通信学会論文誌 B Vol. J83–B No. 4 pp. 471–478
2000 年 4 月
471
電子情報通信学会論文誌 2000/4 Vol. J83–B No. 4
装によるシステム化,基本動作評価結果及び今後の展
望について述べる.
2. 大容量スイッチ実現のためのハード
ウェア技術
2. 1 モジュール化のコンセプト
数 Tb/s クラスの大容量スイッチのハード ウェアと
いえども,ミクロに見るとスイッチ LSI の接続による
集合体であると考えることができる.したがって,論
理的にはこれらを接続していくことで可能であるが ,
実際には,システムを実現するうえでの技術的難易度
などの観点から,その時点での技術レベルから考えら
Fig. 1
図 1 MCM による単位スイッチの構成
Unit switch construction using an MCM
technology.
れる最適な実現手段を追求することが必要となる.現
時点での LSI 技術,実装技術,光技術の三つのシステ
ム構成上のキーとなる技術を考えると,最も小型化・
高性能化に適するシステムの構成手段は,図 1 に示
すようにその時代の先端 LSI 技術を用いて,高機能集
積し ,更にそのピンネック解消のためその LSI に高速
I/O インタフェースをもたせ,これらの隣接接合には,
その高集積化及び LSI I/O 信号の伝送に優れる MCM
( Multi-chip Module )で構成する形態と考えられる.
MCM 化に際しては,どれだけ多くのチップを搭載で
きるかという MCM の製造技術の制約と,発熱の集中
という二つの条件から許容できる大きさが決まると考
Fig. 2
図 2 10 Tb/s スイッチの構成例
Example of 10 Tb/s switch construction.
えられる.したがって,大容量スイッチはこの MCM
を基本単位として接続して構成するのが,最もコンパ
クトに実現するのに適した方法と考える.コンパクト
のアーキテクチャを用いて 32 波長 WDM インタコネ
に実現できることはコストの低減にも有効である.
クションと組み合わせれば 10 Tb/s のスイッチシステ
2. 2 スケーラブル 80 Gb/s スイッチ MCM
単位スイッチの小型化を実現するため,40 チップ
の LSI をセラ ミック技術を 用いて MCM 化するこ
ムを構成することができる.
とに よって ,1 枚の MCM で ,ス イッチ スループッ
3. 320 Gb/s 単位スイッチの実現手段
前述の 80 Gb/s スイッチ MCM が 先端の 0.25 µm
トとし て 80 Gb/s を実現し ,また スイッチ規模拡大
CMOS によるスイッチ LSI を使用しても 8 個で構成
のた めの 拡 張部まで 含め ると ,ト ータル 160 Gb/s
されているように,現状で 320 Gb/s のスイッチ LSI
の I/O スループットを有する単位スイッチ [2], [3] が
を 1 チップで実現することは,集積度の点,LSI 端子
開発されており,640 Gb/s の OPTIMA( Optically
数及び発熱の観点から不可能である.したがって,こ
Interconnected Distributed Multi-stage Tb/s ATM
switching Network Architecture )システム [4] のキー
コンポーネントの一つとなっている.この 80 Gb/s 単
位スイッチを構成する LSI は,拡張性に優れる SDA
( Scalable Distributed Arbitration )[5] を採用してお
の 80 Gb/s の単位スイッチを 4 倍の 320 Gb/s に拡張
り,更なる単位スイッチの拡張が可能である.システ
ムの大容量化が急務であり,320 Gb/s の単位スイッチ
が実現できれば ,例えば図 2 に示すように OPTIMA
472
することを考えた場合,80 Gb/s 程度が MCM として
集積化するのに妥当な大きさの上限と考えると,これ
以上のスイッチ容量の拡大には MCM 間の接続が必要
になる.
3. 1 従来技術による 320 Gb/s 単位スイッチの実
装上の問題点
高速信号を扱える MCM 基板はセラミック焼成技術
論文/ 80 Gb/s 光 I/O インタフェース ATM スイッチ MCM の開発
であるため,現状の 80 Gb/s のスループットの単位ス
能になると考える.そして,この場合,ボードが分割
イッチを実現する程度の大きさがほぼ限界と考えられ
され ,冷却もボード 1 枚ご とに行えば よくなるので ,
る.したがって,図 3 に示すように分割数を 16 として,
80 Gb/s スイッチ MCM を 16 枚敷きつめて 320 Gb/s
の単位スイッチを実現することになる.MCM 基板内
の LSI 隣接間では,高速多並列信号伝送が可能である
が信号が MCM 間を渡るときには,伝送特性上,隣接
パワー及び発熱の集中を回避することができる.
そして,更に今後も LSI 技術の進展によりピンネッ
ク解消のため LSI I/O 信号の高速化が進むことが予想
され る.したがって,図 5 に示すような LSI の I/O
する 80 Gb/s スイッチ MCM 間の数 cm の距離を接続
するのが限界である.したがって,この接続距離が制
約となってしまう.また,MCM は高集積化のゆえに
そこにパワーが集中することになる.したがって,16
枚の MCM を搭載するボード は極めて大容量の電力を
扱うことが必要であり,このようなボード の実現は非
常に困難になると考えられる.そこで,図 3 の実装形
態では,前述の接続距離制約による発熱及びパワー集
中の観点から実現するのが困難となる.
3. 2 光接続によるブレークスルー技術
図 4 は ,図 3 で 示し たよ うに 80 Gb/s ス イッチ
MCM を 16 枚用いて 320 Gb/s の単位スイッチを 1 枚
のボ ード で実現するのではなく,16 枚のボ ード に分
割して構成する形態を示している.80 Gb/s スイッチ
MCM の周囲に光 I/O インタフェースを有していれ
ば ,先述の MCM 間接続距離が数 cm という制約をな
くすことができるため,図 4 に示す “本棚” のような
形態で 320 Gb/s の単位スイッチを構成することが可
図 3 電気接続による 320 Gb/s 単位スイッチの実現案
Fig. 3 320 Gb/s unit switch construction using
electrical interconnection.
図 4 光接続による 320 Gb/s 単位スイッチの構成法
Fig. 4 320 Gb/s unit switch construction using
optical interconnection.
図 5 光モジュールを使用した従来方式による MCM への
信号入出力方法
Fig. 5 Optical I/O method using conventional
optical interconnection module.
473
電子情報通信学会論文誌 2000/4 Vol. J83–B No. 4
部から電気コネクタ及びボード 内配線を介して光信号
ネル当り 622 Mb/s で動作し ,モジュール当り 40 ch
を送受する方式では,ど うしてもプ リント基板上の高
を有しており 20 Gb/s のスループットを実現できる.
速多並列電気配線や電気コネクタをなくすことができ
ここでは ,MCM との一体化にあたり小型化・低ス
ないので,この部分の信号伝送が高速伝送特性の観点
キュー化を施した専用モジュールを用いた [8], [9].冷
や配線エリアの観点からボトルネックとなると考えら
却構造は,消費電力の大きい MCM と温度条件の厳
れる.そこで,この電気コネクタ/ボード 内配線をいっ
しい光モジュールを一体化するにあたり,MCM 周辺
さい排除することが “光 I/O MCM” のコンセプトで
に光モジュールの支持と放熱をかねるメタルフレーム
ある.
で囲み,メタルフレームごと液冷ジャケットによって
高性能な冷却を実現した.光ファイバは,多心テープ
4. 80 Gb/s 光 I/O インタフェース ATM
スイッチ MCM
ファイバを用いて 10 mm 程度の幅で 20 Gb/s の信号
4. 1 要素技術の概要
光モジュールはコネクタによって接続され,挿抜が可
前述のコンセプトに基づき開発した 80 Gb/s 光 I/O
能である.
伝送が可能である.また,このテープファイバとこの
イン タフェー ス ATM ス イッチ MCM を 図 6 に 示
4. 2 要素技術の詳細
す.光 I/O 部が MCM と一体化されており,LSI から
図 6 に示した 80 Gb/s ATM コアスイッチ部は 40
いっさいの電気コネクタ/ケーブルによる接続を用い
層のセラミック MCM 技術( MCM-C )によって実現
ずに MCM 間の光による直接接続を可能にした.光
している.中央の 8 個の LSI がスイッチ機能部であり,
I/O インタフェース ATM スイッチ MCM は大きく分
0.25 µm CMOS 技術で実現している.周囲の LSI は入
出力インタフェース LSI である [2].超多並列光インタ
コネクション部は,わずか幅 39 mm で 20 Gb/s 分の
信号スループットを有する.レーザ素子には VCSEL
けて,
( 1 )80 Gb/s ATM コアスイッチブ ロック,
( 2)
超多並列 イン タコネクション モジュール( ParaBIT
( Parallel inter-Board optical Interconnection Tech-
nology )[6] )
(
, 3 )冷却構造の三つの部分より構成され
る.80 Gb/s コア ATM スイッチブロックは,40 層の
( Vertical Cavity Surface Emitting Laser )アレーが
セラミック基板上に 0.25 µm CMOS スイッチ LSI [7]
を省略した固定レベルしきい値方式であり,回路の簡
及び Si バイポーラインタフェース LSI を搭載してい
素化・省電力化を行っている.また,MCM セラミッ
る.超多並列インタコネクションモジュールは,チャ
ク基板のパッド 間隔と同一の 150 µm というファイン
用いられている.また,受信側回路は DEMUX 回路
ピッチで超多並列光インタコネクションモジュール部
のパッド も形成している.図 7 は,超多並列光インタ
コネクションモジュールと MCM 基板との接合断面図
である.両者は,冷却構造をかねたフレームを支持台
として固定され,信号接続はワイヤボンデ ィングを用
いて行っている.図 8 は,80 Gb/s ATM コアスイッチ
図 6 開発し た 80 Gb/s 光 I/O インタフェース ATM ス
イッチ MCM
Fig. 6 80 Gb/s optical I/O interface ATM switch
MCM.
474
図 7 光モジュールと MCM 基板との接合断面図
Fig. 7 Cross section of the MCM.
論文/ 80 Gb/s 光 I/O インタフェース ATM スイッチ MCM の開発
部と光 I/O 部である超多並列光インタコネクションモ
を伸ばすことによって,超多並列信号伝送の場合はス
ジュールの信号接続方法を図示したものである.物理
キューが問題となる.ここでは,並列光インタコネク
的には,両者はワイヤボンディングによって接続され,
ションモジュールは,レーザの発振遅延の抑制,チャ
1 リンク 10 Gb/s 分のデータは,クロック及びフレー
ムを並走させる方式で 622 Mb/s の物理速度で 16 本に
ネル間のパワーばらつきの抑制が施されている.また,
展開することで伝送している. ここで,クロックの並
幅 5 ps 以下の低スキューのものを用いた [8].また,超
走にあたっては,クロックの周波数はデータの 2 倍で
多並列光インタコネクションモジュールから MCM へ
あることから,送信側で 1/2 速度に低減し,受信側で
入った信号は,入力インタフェース LSI からスイッチ
LSI 及び出力インタフェース LSI までパイプライン処
2 逓倍する方式を採用している.光によって接続距離
接続に用いた多心テープファイバは 10 m でスキュー
理を行っている.これらのタイミングはすべて配線の
等長設計によって実現している.冷却には,図 9 に示
すような図 6 で示したモジュールのフレームごと高性
能に冷却する液冷ジャケット用いている.冷却装置の
冷却能力は熱抵抗で 0.082◦ C/W と光モジュール部の
温度が最大でも 45◦ C 以下に押さえられる設計となっ
ている.
5. システム化
80 Gb/s 光 I/O インタフェース ATM スイッチ MCM
を用いて,これらがブックシェルフ形態で実装可能な
システムラックも開発した.図 10 は側板を取り去り,
ラックを横から見た写真である.システムラックは,
主に電源系,冷却系,制御系,MCM 搭載ボード から
構成される.MCM 搭載ボードは,FR4 基板を用いて,
高速信号以外の制御信号及び電源を専用コネクタ [10]
図 8 光 I/O 部と 80 Gb/s ATM コアスイッチ部との電気
接続の構成
Fig. 8 Detail interconnection method between the
optical I/O part and the AMM switch MCM.
図 9 高性能液冷ジャケット
Fig. 9 Liquid cooling jacket.
図 10 ラックに実装された 80 Gb/s 光 I/O インタフェー
ス ATM スイッチ MCM
Fig. 10 80 Gb/s optical I/O interface ATM switch
MCM mounted on the rack.
475
電子情報通信学会論文誌 2000/4 Vol. J83–B No. 4
Fig. 12
Fig. 11
図 12 電気・光信号変換装置
Electrical signal to optical signal converter.
図 11 MCM 搭載ボード の拡大写真
Enlargement of the mother-board of the
MCM.
を通し て MCM へ供給する.また,冷却系は ,液冷
ジャケットによる冷却を使用し ており,熱交換部は ,
システムラックから離れたところにあるため,体積が
ラック内でかさば ることがなく,液冷ジャケットの厚
みも 7 mm であるため,ボード は隣接して配置するこ
とが可能となる [11].また,スイッチの制御は,MCM
搭載ボード 上に設けた制御用サブボード を介して PC
と接続されており,これによりスイッチの制御を行う.
図 11 は MCM 搭載ボード 部の拡大写真である.
6. 評 価 結 果
図 13 1 リンク 10 Gb/s 分の出力波形の一部
Fig. 13 Output waveform of the MCM.
上記に述べたプロトタイプシステムは,すべての回
線信号が光であるため,従来の電気の信号発生器や測
定器が使用できないため,入出力信号を図 12 に示す
装置を用いてすべて光信号に変換して測定を行った.
開発した 80 Gb/s 光 I/O インタフェース ATM スイッ
いないが,正しく出力していることを確認した.
7. 今後の光 I/O MCM の展望
冒頭にも述べたように,LSI の急速な技術進展を大
チ MCM の 1 リンクに 10 Gb/s の光 ATM セルを入
容量スループット実現のためのキー技術として最大限
力し ,出力ポートより,10 Gb/s 分の光 ATM セルが
にその能力を引き出すためには,ある程度の大きさま
ルーチングの後,出力され ることを確認した.図 13
で MCM 化を行うことが有利であると考える.しか
は,上段より,クロック,フレーム及び 10 Gb/s の 1 リ
しながら,MCM 内部に機能が集約することにより,
ンクを構成する 622 Mb/s の 16 本分のデータのうち 6
MCM からの信号入出力スループットは極めて大きく
本の信号のみを示している.残りの 10 本の 622 Mb/s
なり,これを取り扱うことが 可能な MCM の高速信
のデータは,測定器の同時表示限界でここではのせて
号 I/O 部の実装技術が非常に重要になる.高速大容
476
論文/ 80 Gb/s 光 I/O インタフェース ATM スイッチ MCM の開発
量の MCM の I/O インタフェースを実現するために
[4]
E. Oki,
and T.
WDM interconnection,” Proc. ISS ’97, pp.255–260,
難になることが予想される.したがって,ここで述べ
1997.
[5]
E. Oki and N. Yamanaka, “A high-speed ATM switch
based on scalable distributed arbitration,” IEICE
気コネクタ及び電気ケーブルを排除した接続のフレキ
Trans. Commun., vol.E80-B, no.9, pp.1372–1376,
シビリティーに富む光 I/O MCM によるスイッチ拡張
がますます期待される.近年,多並列光インタコネク
S. Yasukawa,
tem architecture: Based on highly statistical optical
要があり,I/O 速度が 600 MHz を超えると急激に困
たように,LSI の I/O 部分からの接続にいっさいの電
N. Yamanaka,
Kawamura, “OPTIMA: TB/S ATM switching sys-
は,狭ピッチで高速の超多並列信号伝送を実現する必
1997.
[6]
K. Katsura, M. Usui, N. Sato, A. Ohki, N. Tanaka,
ション技術もチャネル当りのスピード を上げてきてお
N. Matsuura, T. Kagawa, K. Tateno, M. Hikita,
り,1.2 Gb/s 以上のものも報告 [12] されている.この
R. Yoshimura, and Y. Ando, “Packaging for a
40-channel parallel optical interconnection module
ような,チャネル当りの速度の向上には,進展を続け
with over-25-Gb/s throughput,” Proc. 48th ECTC,
る LSI 技術に負うところが大きい.また,LSI 技術は
微細化の進展によって,1 チップで実現できる機能も
pp.755–761, 1998.
[7]
(1.25Gb/s × 8) 4 × 2 CMOS/SIMOX ATM switch,”
飛躍的な進展を続けている.そこで,LSI チップ I/O
ISSCC Digest of Technical Papers, TA 9.6, pp.170–
部周囲に,多並列伝送の問題の一つであるスキュー補
正機能を小さく作り込むなども可能と考える.このよ
172, 1999.
[8]
[9]
張の限界を打破するキー技術として今後重要になって
す び
[10]
[11]
信学総大,B-6-55, 1999.
岡崎勝彦,海津勝美,杉浦伸明,“高速伝送・大電流給電
岡崎勝彦,山中直明,原田昭男,佐々木伸一,“80-Gbit/s
ATM スイッチ MCM 用液冷システム,
” 1999 信学全大,
て,0.25 µm CMOS LSI 技術,多層セラミック MCM
技術,40 ch 622 Mb/s の超多並列光インタコネクショ
川野龍介, 山中直明, 大木 明, 碓氷光男, 佐藤信夫,
” 信学技報,EMD97-84, pp.17–22,
用 MCM コネクタ,
1998.
320 Gb/s 以上への単位スイッチ拡張に対してのボ
トルネックとそれを解消するブレークスルー技術とし
浩輔,
松浦伸昭,桂 浩輔,安東泰博,“80 Gb/s 光 I/O インタ
フェース MCM ATM スイッチモジュールの開発,
” 1999
いくと考える.
8. む
大木 明,碓氷光男,佐藤信夫,松浦伸昭,桂
川野龍介,山中直明,安東泰博,“80 Gb/s-MCM 搭載用
ParaBIT の開発,
” 1999 信学総大,SC-5-7, 1999.
うに LSI 技術の進展も取り込みながら,光 I/O MCM
技術は電気インタコネクションによる単位スイッチ拡
E. Oki, N. Yamanaka, and Y. Ohtomo, “A 10 Gb/s
B-6-56, 1999.
[12]
H.
Karstensen
et
al.,
“Parallel
Optical
Link
ン技術及びモジュール冷却技術によって 80 Gb/s のス
(PAROLI) for multichannel gigabit rate interconnec-
イッチスループットを有する光 I/O インタフェース
tions,” Proc. 48th ECTC, pp.747–754, 1998.
ATM スイッチ MCM を開発した.更に,これらをブッ
( 平成 11 年 5 月 21 日受付,9 月 29 日再受付)
クシェルフ形態で実装することによりシステム化を行
い,その基本動作を確認した.LSI 技術の今後の更な
る進展を生かす技術として,光 I/O MCM が今後のス
イッチ大容量化のなかで重要な技術となると考える.
文
[1]
献
光テクノロジーロード マップ情報通信分野,デバイスおよ
び基盤材料技術ワークショップ講演資料( 光産業技術振興
協会主催)
,Dec. 19, 1997.
[2]
E. Oki, N. Yamanaka, S. Yasukawa, R. Kawano, and
龍介 ( 正員)
昭 62 阪府大・工・電子卒.平 1 同大大学
院博士前期課程了.同年日本電信電話( 株)
入社.以来,超高速デ ィジタル回路設計に
関する研究開発及び超高速 ATM ノード シ
ステムの研究開発に従事.現在,NTT ネッ
cal WDM technologies for 640-Gbit/s ATM switching
トワークサービスシステム研究所研究主任.
第 8 回マイクロエレクトロニクスシンポジウム最優秀論文賞受
system,” Proc. IEEE ICC, 20B.1, June 1999.
賞.IEEE ,IMAPS ,JIEP 各会員.
K. Okazaki, “Merging advanced electronic and opti-
[3]
川野
K. Okazaki, N. Sugiura, A. Harada, N. Yamanaka,
and E. Oki, “80-Gbit/s MCM-C technologies for
high-speed ATM switching systems,” IMAPS, Proc.
International Conference on High-Density Packaging
and MCMs ’99, pp.284–288, 1999.
477
電子情報通信学会論文誌 2000/4 Vol. J83–B No. 4
山中
直明 ( 正員)
昭 56 慶大・理工・計測卒.昭 58 同大大
学院修士課程了.同年日本電信電話公社
( 現,日本電信電話( 株 ))武蔵野電気通
信研究所入所.以来,将来の Broardband
ISDN,高速・広帯域交換方式の研究開発,
ATM 網におけるトラヒックマネージ メン
トに関する研究,超高速 ATM ノード シ ステムの研究開発に
従事.現在,NTT ネットワークサービ ス研究所グループ リー
ダ・主幹研究員.工博.平 2,6,11 IEEE ECTC 40th, IEEE
ECTC 44th 及び IEEE ECTC 49th Best Paper Award,
平 7 IEEE CPMT Part・B The Best Transaction Paper
Award,平 7 電気通信普及財団テレコムシステム技術賞,平
10 マイクロエレクトニクスシンポジウム最優秀論文賞,平 11
1998 IEMT/IMT Best Paper Award,平 11 本会論文賞受
賞.IEEE Communication Serveys Broard Band Network
Area Editor ,本会英文誌エデ ィタ.IEEE シニア メンバ.
大木
英司 ( 正員)
平 3 慶大理工・計測卒.平 5 同大大学院
修士課程了.同年日本電信電話( 株)入社.
以来,ATM ネットワークアーキテクチャ,
トラヒック制御法,超高速スイッチに関す
る研究に従事.現在,NTT ネットワーク
サービ スシステム研究所研究主任.工博.
平 10 本会交換シ ステム研究賞,平 11 同論文賞受賞.IEEE
会員.
岡崎
勝彦 ( 正員)
平 5 電通大・電気通信・電子物性卒.平 7
同大大学院同研究科同専攻博士前期課程了.
同年日本電信電話( 株)入社.以来,通信
装置における高速・高密度実装技術の研究
に従事.現在,NTT ネットワークサービ
スシステム研究所勤務.IMAPS ,JIEP 各
会員.
大木
明 ( 正員)
昭 59 名大・理・物理卒.昭 61 同大大学
院工学研究科博士前期課程了.同年日本電
信電話( 株)入社.以来,化合物半導体の
結晶成長,青緑色 LD 子の開発及び並列光
インタコネクションモジュールの開発に従
事.現在,NTT 通信エネルギー研究所主
任研究員.応用物理学会員.
478
Fly UP